JP6572410B2 - リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池電極、及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池電極、及びリチウムイオン二次電池 Download PDFInfo
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Description
以下では、「リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物」を単に「電極用バインダー組成物」又は「バインダー組成物」と略称することがある。
本発明において固形分とは、対象物を105℃、3時間の乾燥減量法に供することにより得られるものを意味する。
本発明のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物は、エチレン性不飽和単量体に由来する重合体粒子がポリビニルアルコール系樹脂水溶液中に分散しているエマルジョンを含むリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物であって、前記重合体粒子の平均粒子径が50nm以上600nm未満であることを特徴とするリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物である。
重合体粒子における重合体は、エチレン性不飽和単量体の重合体である。エチレン性不飽和単量体としては、例えば、下記の(a)〜(m)等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。
(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル。
(b)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体。
(c)カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体。
(d)エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体。
(e)メチロール基含有エチレン性不飽和単量体。
(f)アルコキシアルキル基含有エチレン性不飽和単量体。
(g)シアノ基含有エチレン性不飽和単量体。
(h)ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているエチレン性不飽和単量体。
(i)アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体。
(j)スルホン酸基を有するエチレン性不飽和単量体。
(k)リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体。
(l)芳香族エチレン性不飽和単量体。
(m)脂肪酸エステル系不飽和単量体。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜20の脂肪族(メタ)アクリレートや、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも好ましくは、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜10の脂肪族(メタ)アクリレートである。
これらラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているエチレン性不飽和単量体(h)は、一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記脂肪酸エステル系不飽和単量体(m)としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。
かかる含有量は、本発明で用いるエマルジョンの製造に際して仕込まれるモノマーの仕込み重量と一致する。かかるモノマーの仕込み重量は、目的とする重合体粒子の構成に対応し、通常、重合体粒子の5〜100重量%、好ましくは20〜100重量%、特に好ましくは30超〜80重量%である。
前記その他のモノマーの仕込み量は、目的とする重合体粒子の構成に対応し、重合体粒子に対して、通常、0〜95重量%、好ましくは0〜80重量%、特に好ましくは20重量%以上70重量%未満である。
前記重合体粒子が分散するPVA系樹脂水溶液におけるPVA系樹脂は、公知一般の水溶性のPVA系樹脂である。
かかるPVA系樹脂は、ビニルエステル系モノマーを重合し、ケン化することにより得られる。
前記アルカリ触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートを用いることができる。
通常、無水アルコール系溶媒下、アルカリ触媒を用いたエステル交換反応が反応速度の点や脂肪酸塩等の不純物を低減できるなどの点で好適に用いられる。
例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のビニル基とエポキシ基を有するモノマー;トリアリルオキシエチレン、ジアリルマレアート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル基を2個以上有するモノマー;酢酸アリル、アセト酢酸ビニルエステル、アセト酢酸アリルエステル、ジアセト酢酸アリルエステル等のアリルエステル系モノマー;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート;アセトアセトキシエチルクロトナート、アセトアセトキシプロピルクロトナート等のアセトアセトキシアルキルクロトナート;2−シアノアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(アルキル部分がC1〜C10アルキル基であり、好ましくはC1〜C6アルキル基);(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン;エチレンスルホン酸等のオレフィン系モノマー;ブタジエン−1,3、2−メチルブタジエン、1,3又は2,3−ジメチルブタジエン−1,3、2−クロロブタジエン−1,3等のジエン系モノマー;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、グリセリンモノアリルエーテル等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類、およびそのアシル化物などの誘導体;1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパンなどのヒドロキシメチルビニリデンジアセテート類;イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和酸類、その塩又はモノ若しくはジアルキルエステル;アクリロニトリル等のニトリル類、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、AMPS等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩などの化合物、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のビニルアルキルジアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のγ−(メタ)アクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン;ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ヒドロキシメチルビニリデンジアセテートが挙げられる。ヒドロキシメチルビニリデンジアセテートの具体的な例としては、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で、又は2種以上を併用してもよい。
上記方法のうち、共重合反応性及び工業的な取扱いにおいて優れるという点で(i)の方法が好ましく、特にR1〜R6が水素、Xが単結合、R7、R8がR9−CO−であり、R9がアルキル基である3,4−ジアシロキシ−1−ブテンが好ましく、その中でも特にR9がメチル基である3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましく用いられる。
なお、PVA系樹脂中の1,2−ジオール構造単位の含有率は、ケン化度100%のPVA系樹脂の1H−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができる。具体的には1,2−ジオール構造単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、およびメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトンなどに由来するピーク面積から算出することができる。
かかる有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキサイドなどのスルホキサイド、メタノール、エタノール等の炭素数1〜3の低級アルコール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。
本発明におけるエチレン性不飽和単量体に由来する重合体粒子が上記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液中に分散しているエマルジョンは、上記重合体粒子を上記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液に分散させることで得られる。
特にかかるエマルジョンは、エチレン性不飽和単量体を分散質とし、公知の分散剤を用い、上記溶媒を分散媒として乳化重合する場合、上記重合体粒子が分散媒中に分散性良く分散したエマルジョンとして効率よく得られる。
この場合、電極におけるバインダーの連続層の強度の観点から、海島構造を形成する場合はドメインサイズを小さく(通常ドメイン径1.5μm以下)制御することが好ましい。かかる観点から、第1のPVA系樹脂と第2のPVA系樹脂のケン化度差は、通常0〜15モル%、好ましくは3〜10モル%である。
前記乳化重合を実施する方法としては、i)水、分散剤及び重合触媒の存在下に、分散質たるエチレン性不飽和単量体を一時又は連続的に配合して、加熱、撹拌することにより乳化重合する方法;ii)エチレン性不飽和単量体を分散媒に混合分散させた分散液を調製し、この調製した分散液を、水、分散剤及び重合触媒が配合された系内に、一時又は連続的に配合して、加熱、撹拌して、乳化重合する方法が挙げられる。このように予め調製した分散液を用いる方法は特にプレエマルジョン法と称される。かかる方法は、重合対象のモノマー組成がたとえ複雑であっても、生産性を維持して乳化重合を行なうことが可能であるので好ましい。
その他には、重合装置の混合攪拌翼の大きさや攪拌速度、攪拌時間を制御する方法などを採用することができる。さらには、モノマーを多孔質の膜中に通すことで粒子径を制御する膜乳化法や、攪拌方法に超音波を用いる超音波乳化法などを採用することもできる。
PVA系樹脂の配合量が少なすぎると、エチレン性不飽和単量体の乳化状態が不安定となって、重合反応性が低下したり、重合により得られるエマルジョン中での粒子の乳化状態安定性が低下する傾向にある。一方、PVA系樹脂の含有量が多すぎると、反応液の粘度が増大しすぎて均一分散性が低下し、重合率を高められなかったり、得られるエマルジョンの粘度が高くなりすぎて、製造上の歩留まりが低下する傾向にある。
なお、重合開始剤の配合方法としては、特に制限はなく、初期に一括して反応液中に配合してもよいし、重合の経過に伴って連続的に添加してもよい。
分散媒、分散剤を含有する反応容器に、重合しようとするモノマーの一部を仕込み、1段目の乳化重合を行う。1段目に投入するモノマーの量は、特に限定しないが、重合に使用するモノマーの通常1〜50重量%程度であり、好ましくは5〜30重量%である。1段目の乳化重合工程の条件は、用いるモノマーの種類、組成、重合開始剤の使用量等により適宜決定すればよい。
乳化重合反応の温度は、通常30〜90℃であり、特に40〜80℃が好ましく、重合時間は1〜4時間とすることが好ましい。1段目の乳化重合工程においては、重合転化率が30%以上であることが好ましく、60%以上であることが特に好ましい。
2段目の乳化重合は、1段目の重合が終了した反応容器に、残りのモノマーを投入することにより行う。投入は、滴下しながら行うことが好ましい。また、2段目の重合に際して、重合触媒を投入してもよい。2段目の乳化重合は、重合温度が40〜80℃、重合時間が1〜6時間の条件で行う。
また、滴下するモノマー組成比を連続的に変えながら滴下するパワーフィード重合法を用いることも可能である。また、モノマーを分散剤たるPVA系樹脂の存在下で予め混合分散させた分散液を滴下しながら重合してもよい。
必要に応じて、かかる工程の後に通常1〜6時間の追い込み重合をおこなうことも可能である。かかる重合中に重合触媒を投入してもよい。
更に、フタル酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のpH調整剤等も併用され得る。
本発明のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物におけるPVA系樹脂の含有量は、固形分にて、通常10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、特に好ましくは20〜70重量%である。PVA系樹脂の含有量が少なすぎるとPC電解液が溶媒和したLiイオンからの電解液脱溶媒和効率の低下や耐熱性の低下を引き起こす傾向がある。また、PVA系樹脂含有量が多すぎるとバインダーとしての内部抵抗が大きくなる傾向がある。
また、本発明のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物におけるPVA系樹脂/重合体粒子の比率は、固形分の重量比にて、通常1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、特に好ましくは30/70〜70/30である。
本発明における重合体粒子の平均粒子径は、50nm以上600nm未満である。好ましくは200〜500nmである。なお、前記粒子の平均粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定器により、超音波照射処理の1分後に、測定時間3分間、積算回数5にて測定された体積分布の平均粒子径を採用する。
本発明のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物は上記エマルジョンを含む。
本発明のバインダー組成物には、通常、塗膜に用いられる塗料や成型用樹脂に用いられる配合剤等を配合することができる。例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤{ホウ酸、メチロール化メラミン、炭酸ジルコニュム、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)等}、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤等が挙げられる。それぞれの目的に応じて選択したり、組み合わせたりして配合することができる。なお、バインダー組成物がこれらの配合剤を含有する場合、含有する配合剤の有機分は、バインダー組成物の固形分に含まれる。
上記配合剤の配合量は、バインダー組成物における上記エマルジョンの固形分100重量部に対して通常10重量部未満、好ましくは5重量部未満である。
上記本発明の電極用バインダー組成物及び活物質を混合して、リチウムイオン二次電池電極用スラリーを調製することができる。
正極用活物質としては、例えば、オリビン型リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、三元系ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物等を用いることができる。
負極用活物質としては、炭素材料が好ましい。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛系炭素材料(黒鉛)、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。特に、リチウム含有金属複合酸化物、炭素粉末、珪素粉末、錫粉末、またはこれらの混合物を用いる場合、本発明の効果が有効に発揮されるため好ましい。スラリー中の活物質の含有量は、10〜95重量%、好ましくは20〜80重量%、特に好ましくは35〜65重量%である。
水溶性高分子としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体類;デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸又はその塩;ゼラチン;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩;ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド糖のアクリルアミド類;酢酸ビニルとマレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等の不飽和酸との共重合体;スチレンと上記不飽和酸との共重合体;ビニルエーテルと上記不飽和酸との共重合体;及び前記不飽和酸と各共重合体の塩類又はエステル類、カラギーナン、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、タマリンドシードガム等の天然多糖類が挙げられる。
電極用スラリーに用いられる増粘剤の量としては、電極用スラリーの固形分にて、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%、特に好ましくは0.5〜2重量%である。スラリーに対して用いる量が少なすぎると、上記活物質や電極用バインダー及び導電助剤などの分散安定性が悪くなり、電極が不均一になって安定な充放電が得られない傾向にある。また一方で、かかる量が多すぎると、電極用スラリーの粘度が高くなり過ぎて、電極を作成する際に集電体に均一に塗工するのが困難となる傾向がある他、作成した電池の内部抵抗が向上して充放電容量が低下する傾向がある。
電解液膨潤率が前記範囲にあると、本発明の電極用バインダー組成物に含まれる粒子は電解液に対して適度に膨潤し、効果的に内部抵抗を低下させて、より良好な充放電特性を実現できる傾向がある。さらに、大きな体積変化が発生しないため結着性にも優れる傾向がある。
電極用バインダーとして調整したアクリルエマルジョンを500μmのアプリケータを用いてPETフィルム上にキャストした後、105℃の乾燥機で3時間加熱乾燥してフィルムを得た。得られるフィルムを、所定サイズ切り出して、その重量を測定する(W0(g))。このフィルムを10gのプロピレンカーボネート(PC)、又はエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(EC/DMC)の3/7混合液(体積比)に浸漬させて60℃で3時間加熱する。室温まで冷却した後、フィルムを取り出し、フィルム表面に付着した電解液をふき取った後に、試験後の浸漬後重量W1(g))から、下式に従って、電解液膨潤率を算出する。
電解液膨潤率(%)=((W1 −W0 )/W0 )×100
上記のようにして作製される電極を備えたリチウムイオン二次電池について説明する。
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解液、セパレータを少なくとも有する。
尚、例中「部」「%」とあるのは重量基準を意味する。
はじめに、以下の実施例で採用した測定評価方法について説明する。
動的光散乱式粒度分布測定器(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製;装置名「NICOMP 380ZLS」)を用いて平均粒子径を下記のように測定した。
作製したエマルジョンを精製水で1万倍に希釈した後、超音波照射を15分間行った。かかる超音波照射処理の1分後に、測定時間3分間、積算回数5回にて測定した。得られた測定値(粒子径分布)を、NICOMP社のNICOMP処理法(多分散粒子として粒子径を計算処理する方法)を用いて処理し、体積分布の平均粒子径を算出してこれを重合体粒子の平均粒子径とした。
作製したセル(リチウムイオン二次電池)を30℃で3日間放置した後、充放電試験に供した。
電位範囲0−2.0Vで、下記に示す電流密度にて定電流充放電試験を行い、放電容量(mAh/g)、クーロン効率(%)を測定した。
1〜5サイクル:100mA/g
6〜10サイクル:200mA/g
11〜15サイクル:300mA/g
16サイクル以降:100mA/g
初回放電時の定電流値(制御電流値(mA))と設定電位に達するまでの時間(h)の積を電極活物質(黒鉛)重量(g)で除した値を初回放電容量(mAh/g)とした。
初回放電容量(mAh/g)を初回充電容量(mAh/g)で除した百分率(%)を初回クーロン効率とした。
5回目放電容量(電流密度:100mA/g)と、10回目放電容量(電流密度:200mA/g)及び15回目放電容量(電流密度:300mA/g)を比較した容量維持率にて評価した。容量維持率が高いほど、レート特性が高いことを示す。
5回目放電容量(電流密度:100mA/g)と、16回目放電容量(電流密度:100mA/g復帰時)を比較評価した。容量の変動が少ないほど、電池が安定して作動していることを示す。
〔電極用バインダー組成物の調製〕
還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗、温度計を備え付けたセパラブルフラスコに、分散媒としての水813部、分散剤として上記構造式(1a)に示す構造の側鎖1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂(ケン化度:99.06%、粘度平均重合度:310、上記構造式(1a)に示す1,2−ジオール構造単位含有率:6%)384部、酢酸ナトリウム0.63部を流し込み、撹拌しながら、フラスコ内の温度を75℃に昇温して30分間攪拌した。
得られたエマルジョンは、そのまま電極用バインダー組成物として使用した。
活物質としての天然黒鉛SNO−3(SECカーボン株式会社製)と上記で調製した電極用バインダーとを、電極用バインダー含有量10重量%(活物質:バインダー=90:10(重量比、固形分換算))で混合した後、蒸留水を配合して、ペースト状とした。ペースト中の水分量は、活物質および電極用バインダーを合わせた総重量(固形分換算)0.5gあたり1150μLとした。
対極にはリチウム箔、セパレータにはADVANTEC製のGLASS FIBER FILTER GB−100R(厚さ0.38mm)を使用し、電解質としてLiPF6(1mol・dm−1)を混合したプロピレンカーボネート(PC)を電解液に用いて、二極式2032型コインセルを作製した。なお、電極は、直径10mmの円板状、セパレータは直径18mmに加工し、電解液は300μL注入した。
還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗、温度計を備え付けたセパラブルフラスコに、分散媒としての水813部、分散剤として上記構造式(1a)に示す構造の側鎖1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂(ケン化度:99.06%、粘度平均重合度:310、上記構造式(1a)に示す1,2−ジオール構造単位含有率:6%)384部、酢酸ナトリウム0.63部を流し込み、撹拌しながら、フラスコ内の温度を75℃に昇温して30分間攪拌した。
この温浴中に、1段目の乳化重合用モノマーとして、ブチルアクリレート(BA)9部及びアクリロニトリル(AN)21部、重合開始剤として亜硫酸水素ナトリウム水溶液(5重量%)6部及び過硫酸アンモニウム水溶液(5重量%)5.4部を加えて、1段目の乳化重合を開始した。反応温度を75℃〜80℃に保持しながら、1時間重合を行った。
次に、2段目の乳化重合を行なった。1段階目の乳化重合を行った反応系の温度を75℃〜80℃の範囲に保ちながら、2段目の乳化重合用モノマーとして、ブチルアクリレート(BA)81部及びアクリロニトリル(AN)189部の混合モノマー溶液を、3時間半かけて滴下した。かかる滴下中に、過硫酸アンモニウム水溶液(5重量%)10.8部を14分割して15分毎に配合した。その後、温度を75℃に保ちながら、90分間重合を続けた。この間、過硫酸アンモニウム水溶液(5重量%)1.8部を2分割して45分毎に配合した。
2段目の乳化重合の後、反応温度を50℃まで低下させて、1時間追い込み重合を行った。かかる追い込み重合中はt−ブチルヒドロパーオキシ水溶液(13重量%)3部及びL−アスコルビン酸水溶液(10重量%)3.6部をそれぞれ2分割して30分毎に配合した。その後、室温まで冷却して、上記構造式(1a)に示す構造の側鎖1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂水溶液中にブチルアクリレート(BA)及びアクリロニトリル(AN)の重合体粒子が分散するエマルジョンを得た。かかるエマルジョンにおける固形分は45重量%であった。得られたエマルジョンの平均粒子径を測定評価した結果を表1に示す。
実施例1において、リチウムイオン二次電池の電解液をプロピレンカーボネートから、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合液(EC/DMC=3/7(体積比))に変えた以外は同様にして電池特性を評価した。
実施例2において、リチウムイオン二次電池の電解液をプロピレンカーボネートから、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合液(EC/DMC=3/7(体積比))に変えた以外は同様にして電池特性を評価した。
〔電極用バインダーの調製〕
還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗、温度計を備え付けたセパラブルフラスコに、分散媒としての水658.8部、分散剤として上記構造式(1a)に示す構造の側鎖1,2−ジオール構造単位含有PVA系樹脂(ケン化度:99.06%、粘度平均重合度:310、上記構造式(1a)に示す1,2−ジオール構造単位含有率:6%)50.4部、酢酸ナトリウム1.51部を流し込み、撹拌しながら、フラスコ内の温度を75℃に昇温して30分間攪拌した。
部及びL−アスコルビン酸水溶液(10重量%)8.64部をそれぞれ2分割して30分毎に配合した。その後、室温まで冷却して、固形分52重量%のエマルジョンを得た。得られたエマルジョンの平均粒子径を測定評価した結果を表1に示す。
比較例1において、リチウムイオン二次電池の電解液をプロピレンカーボネートから、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合液(EC/DMC=3/7(体積比))に変えた以外は同様にして電池特性を評価した。
実施例1及び比較例1における充放電サイクルと放電容量との関係を示すグラフを図1に示す。なお、セル(リチウムイオン二次電池)を30℃で3日間放置した後、充放電試験に供した。
Claims (6)
- エチレン性不飽和単量体に由来する重合体粒子がポリビニルアルコール系樹脂水溶液中に分散しているエマルジョンを含むリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物であって、
前記重合体粒子が、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体及び芳香族エチレン性不飽和単量体から選ばれる少なくとも一つのエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位と(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位とを含み、前記重合体粒子の平均粒子径が50nm以上600nm未満であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂が下記一般式(1)で示す構造単位を有するポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とするリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物。
- 上記ポリビニルアルコール系樹脂/重合体粒子の比率が、樹脂固形分の重量比にて1/99〜99/1である請求項1記載のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物。
- 上記重合体粒子の含有量が、固形分にて1〜90重量%である請求項1又は2記載のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物。
- 上記エマルジョンにおけるポリビニルアルコール系樹脂の含有量が、固形分にて10〜90重量%である請求項1〜3いずれか記載のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物。
- 請求項1〜4いずれか記載のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物を用いて得られるリチウムイオン二次電池電極。
- 請求項5記載のリチウムイオン二次電池電極を有するリチウムイオン二次電池。
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