以下、図面を参照しながら本発明の施肥装置を搭載した乗用型田植機について説明する。図1は、本発明の一実施の形態の施肥装置を搭載した8条植の乗用型の田植機の側面図であり、図2は、その平面図である。
なお、本明細書においては、前後、左右の方向基準は、運転席からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。
この田植機は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して植付装置4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置100の本体部分が設けられている。
なお、該植付装置4は作業装置の一例であり、種子を供給する播種装置や、圃場を耕耘する耕耘ロータリであってもよい。
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10及び左右一対の後輪11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に前輪10がそれぞれ取り付けられている。
また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギアケース18がローリング自在に支持され、その後輪ギアケース18から外向きに突出する左右の後車軸に後輪11が各々取り付けられる。
エンジン20は、メインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST(油圧無段変速装置)23を介してミッションケース12に伝達される。
ミッションケース12に伝達された回転動力は、ミッションケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13に伝達されて左右一対の前輪10を駆動すると共に、残りが後輪ギアケース18に伝達されて左右一対の後輪11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって植付装置4へ伝達される。
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に運転席31が設置されている。運転席31の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット32があり、その上方に前輪10を操向操作する操縦ハンドル34が設けられている。また、ボンネット32の内部には施肥装置100の動作等を制御するコントローラ210を収納する。
エンジンカバー30及びボンネット32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、フロアステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下する構成となっている。
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41を備えている。上リンク40及び下リンク41は、それらの基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視で門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、それらの先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に、植付装置4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として植付装置4がローリング自在に連結されている。
メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、植付装置4がほぼ一定姿勢を保持したまま昇降する。
植付装置4は、8条植の構成で、フレームを兼ねる植付伝動ケース50、マット苗(図示省略)を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a(図2参照)に供給するとともに、横一列分の苗を全て苗取出口51aに供給すると、苗送りベルト51bにより苗を下方に移送する苗載せ台51、及び、苗取出口51aに供給された苗を苗植付具52aによって圃場に植付ける苗植付部52等を備えている。
植付装置4の下部には中央にセンターフロート55と、左右のサイドフロート56と、該左右のサイドフロート56よりも機体外側のアウタフロート57が各々設けられている。これらフロート55,56,57を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付部52により苗が植え付けられる。
施肥装置100は、肥料ホッパに貯留されている粒状の肥料を、各苗植付条毎に設けられている繰出部61によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62でセンターフロート55及びサイドフロート56の左右両側に取り付けた施肥ガイド63まで導き、施肥ガイド63の前側に設けた作溝体64によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む構成となっている。
そして、ブロア用電動モータ66で駆動するブロア67で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ68を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送する構成となっている。
また、肥料ホッパは、左側肥料ホッパ60Lと、右側肥料ホッパ60Rとに一定の隙間を空けて分離されて配置されており、該右側の肥料ホッパ60Rの左右方向の中央部付近の下方には、施肥量調節モータ400が配置されている。また、該施肥量調節モータ400は、図6に示すとおり、運転席31を載置すると共にエンジン20の周囲を覆うエンジンカバー30の右側後方に、間隔を空けて配置する。
該施肥量調節モータ400は、図3、図5及び図6で示すとおり、施肥伝動機構300を介して伝達される駆動力を利用して肥料を設定量ずつ繰り出すための繰出部61から繰り出される施肥量を調節するための機構である。
該施肥量調節モータ400を、右側肥料ホッパ60Rの左右方向中央部付近の下方に配置したことにより、施肥量調節モータ400が左右の肥料ホッパ60L,60Rへの肥料の補給等の作業に干渉しない配置となるので、作業能率が向上する。また、左右の肥料ホッパ60L,60Rの前後方向の回動を規制しないので、肥料の排出時等に左右の肥料ホッパ60L,60Rを後方傾斜させて、残留している肥料を速やかに排出させることが妨げられない。
なお、左側肥料ホッパ60Lと右側肥料ホッパ60Rとを含む構成が、本発明の貯留ホッパの一例にあたる。
植付装置4の下部には、整地ロータ27を設けている。
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく左右一対の予備苗枠38が設けられている。
図1及び図2に示すとおり、走行車体2の前側左右両側で、且つ左右の予備苗枠38よりも機体後側に、圃場に直進の目安となるガイド線を形成する左右の線引マーカ16を各々設ける。該左右の線引マーカ16は、圃場に接触する水車マーカ16aと、該水車マーカ16aを装着するガイドロッド16bと、該ガイドロッド16bを機体外側及び内側に回動させるマーカ回動モータ16cで構成する。
前記左右の線引マーカ16は、植付作業中は左右一側が下降して作業状態になると左右他側が上方に退避し、旋回走行すると左右一側が上方に退避し、左右他側が作業状態になる制御構成とする。旋回時や植付作業をしていないときは、左右の線引マーカ16のいずれも上方に退避した状態になる。左右の線引マーカ16が形成したガイド線に、走行車体2の前端部で且つ左右中央に設ける、センターマスコット17を合わせることで、前の作業位置に沿った植付作業を行なうことができるので、作業能率や植付精度が向上する。
なお、圃場の土質によっては、左右の線引マーカ16により形成したガイド線がすぐに埋もれてしまい、直進の目安が消えてしまうことがある。このとき、前記左右の線引マーカ16よりも機体後側に設ける左右のサイドマーカ19を機体外側方向に移動させ、植え付けられた苗の上方に該サイドマーカ19を位置させることで、前の作業条の苗の植え付けに合わせた植付作業が可能になる。
そして、前記左右の前輪10には、左右の前輪10間の肥料濃度を検知する肥料濃度センサ700(図1及び図7参照)が各々設けられている。
該肥料濃度センサ700は、環状の電極板で構成され、前輪10の機体内側または外側で、且つ土壌や水中に近い外周縁部付近に配置される。
前記肥料濃度センサ700に電気を流すと、前輪10の左右間の土壌、または水に含有される肥料濃度によって電気抵抗が変化するので、電気抵抗の変化がその地点の肥料濃度の信号としてコントローラ210へ送られる。なお、電気抵抗は、肥料濃度が高い、即ち電解質が多い状態では電気が流れやすいので低くなり、肥料濃度が低い、即ち電解質が少ない状態では電気が流れにくいので高くなる。
なお、前記肥料濃度センサ700は、左右の後輪11に設けてもよい。
また、前記左右の予備苗枠38の下部には、圃場の深度を検出する深度センサ720を各々設ける。該深度センサ720は、超音波や光波の反射により水面、または土壌表面までの深さを測定するものであり、測定されたその場の深さがコントローラ210に送信される。該コントローラ210は、その場所の深さに合わせて前記肥料濃度センサ700が検知した肥料濃度を補正する。
土壌面は、土の量が多い深部ほど肥料の含有量が多くなる傾向にあるので、前記肥料濃度センサ700の通電抵抗に基づく肥料濃度と実際の肥料濃度は異なることがある。この相違により実際に必要な施肥量が供給されなくなることを防止すべく、検知された肥料濃度と深さから、土壌肥沃度を算出する。土壌肥沃度は、肥料濃度/深さで算出され、この土壌肥沃度に合わせて施肥量調節モータ400を作動させ、施肥量を変更する。
しかしながら、肥料濃度センサ700は環状であるので、土壌または水と接触する箇所は一律でなく、肥料濃度と深度は完全な比例関係にはならず、土壌肥沃度の正確性が低下する。正確性を確保するには、コントローラ210により、補正係数を加える構成とする。
なお、前記肥料濃度センサ700を走行車体2の下部に2枚の矩形の電極板を圃場面に向けて、且つ左右間隔を空けて設ける構成とすると、肥料濃度と深度を比例関係として検出できるので、コントローラ210に補正処理を行わせることなく、土壌肥沃度を算出できる。
さらに、前記センターフロート55の後端部に水または土壌の温度を測定する温度センサ730を設け、該温度センサ730が測定した温度がコントローラ210に送信される。温度により電気の流れやすさが変動するので、該コントローラ210は検知された温度に基づき、肥料濃度を補正する。コントローラ210には標準温度を設定しておき、この標準温度よりも高温であれば肥料濃度を高く補正し、低温であれば低く補正すると共に、標準温度と同一であれば、肥料濃度の補正は行わない。
そして、操作ハンドル34の前方であってボンネット32の上方にはGPS(Global Positioning System)機能を備えたGPS受信機710(図2参照)が搭載されており、その受信信号はコントローラ210へ送られる(図7参照)。
上記により、走行車体2を走行させて圃場の位置毎の土壌肥沃度を検出すると、位置毎に施肥装置100の施肥量を増減させる、あるいは現在の施肥量を維持して、苗の生育に必要となる肥料を位置毎に適量供給する、所謂可変施肥作業を行うことができるので、肥料の過不足により苗の生育速度が乱れ、後工程である追肥や収穫作業の能率が低下することや、適切な時期に適切な作業が施されなかった箇所の収穫物の品質の低下が防止される。
圃場の位置毎の施肥量は、GPS受信機710が取得する位置座標情報に紐付けられ、該位置座標情報と位置毎の施肥量を記録することで、同じ圃場で次回以降に作業する時は、記録に基づき肥料を用意したり、作業時期を調整したりすることができるので、肥料の過不足が防止されると共に、前回と類似する作業条件で作業ができ、作業能率や施肥精度の向上が図られる。
上記の位置座標情報と位置毎の施肥量の記録は、図7及び図19に示すとおり、コントローラ210に設ける送受信機(図示省略)を介してタブレットコンピュータ等の情報端末800に送信し、該情報端末800の記憶装置(HDD、SSD等)に記録する。そして、該情報端末800には記録された位置座標情報と圃場情報、位置毎の施肥量のデータベース、及び作業マップを生成する作業管理アプリケーション810をインストールしておき、入力された情報を体系的且つ視覚的に纏める構成とする。
さらに、前記作業管理アプリケーション810は、情報端末800から操作可能とし、作業データや作業マップの呼び出し、コントローラ210との情報のやり取り等を操作可能とする。この操作は、タッチパネル式の画面に表示されるアイコンを操作するものとすると、作業性が向上する。
しかしながら、圃場によって肥料濃度や深度等の条件は異なるので、上記の可変施肥作業を行うには、基準となる施肥量を事前に決めておく必要がある。
この基準施肥量を算出するべく、可変施肥作業を開始する前に、作業圃場の所定区間の圃場情報、即ち、肥料濃度、深さ及び水温を測定するティーチング作業が必要となる。
図8及び図19(a)に示すとおり、ティーチング作業は、前記作業管理アプリケーション810の、第1ティーチング操作部である作業開始アイコン820を操作し、その地点から走行車体2が所定距離を走行したことが検知されたときに開始される。
上記の走行車体2の移動距離は、前記左右の後輪11の回転数を各々検出する後輪回転センサ11aの検出値から算出する。そして、前記操縦ハンドル34が旋回開始方向に操作されたことを検知するハンドルポテンショメータ34aが検知状態になると、走行が一工程分行われたと判断して、第1移動距離を記録する。さらに、操縦ハンドル34が旋回終了方向に操作されたことが検知されると、次の作業工程の移動距離の測定を開始し、その後操縦ハンドル34が旋回開始方向に操作されたことが検知されると、第2移動距離を記録する。
ここで、前記コントローラ210は、第1移動距離と第2移動距離を比較し、移動距離の差が設定値未満であれば、作業走行が行われていると判定する。移動距離の差が設定値以上であるときは、最初に取得した第1移動距離を破棄し、次工程で取得する第3移動距離と第2移動距離を比較する。
作業走行が行われていると判断されたときは、旋回走行後に後輪回転センサ11aが所定距離の前進を検知するとティーチング作業を開始し、検知された肥料濃度、圃場の深度及び水温、即ち圃場情報をコントローラ210の記録領域に、GPS位置情報に紐付けて記録する。このティーチング作業は、第1移動距離または第2移動距離、あるいはこれらの平均距離を移動したとき、あるいは操縦ハンドル34が旋回開始方向に操作されると終了し、コントローラ210は検出された圃場情報の標準偏差から、基準施肥量を算出する。
その後コントローラ210は、検出される圃場情報と基準施肥量に基づき施肥量の増減または現状維持を判断し、施肥量調節モータ400を作動させて施肥量を調節する。これにより、必要な個所に適量の肥料が供給され、苗全体の生育の均一化が図られると共に、後工程作業時期の適正化や、収穫物の品質向上が図られる。
なお、ティーチング作業が開始されるまでに検出した圃場情報は、記録しないか、あるいはデータとして記録はするが基準施肥量の算出には用いないものとし、算出される基準施肥量の正確性の向上を図る。あるいは、ティーチング作業の開始時までは、圃場情報を取得しない構成としてもよい。
ティーチングを旋回直後ではなく、所定距離移動した位置、具体的には肥料濃度や深度の差が大きい圃場端付近から離れた位置から開始することにより、標準偏差が大きくなりにくくなるので、基準施肥量の正確性が向上する。
上記のティーチング作業は、作業開始アイコン820の操作後、走行車体2が二回略等距離を移動したとき、即ち一往復した後で開始されるものとなっている。しかしながら、作業開始アイコン820の操作が、苗の植付作業開始位置に移動する前に操作されていると、第1走行距離と第2走行距離に差が生じやすく、第3走行距離を検出しないとティーチング作業が開始されず、可変施肥作業が行えない区間が長くなる問題がある。
上記の問題の発生を防止すべく、ミッションケース12から苗植付部52への伝動を入切する植付クラッチケース25に植付クラッチの入切を検知する植付入切センサ25aを設け、前記作業開始アイコン820が操作されており、且つ該植付入切センサ25aが植付クラッチ入を検知した位置を、第1移動距離の起点とする。
上記により、苗植付作業を実際に行った箇所の圃場情報に基づき施肥基準量を算出することができるので、ティーチング作業及び可変施肥作業の開始が早くなり、施肥量の安定化が図られ、後工程の作業能率や、収穫物の品質の向上が図られる。
なお、上記のティーチング作業は、図18(a)に示すとおり、走行車体2を少なくとも二回に亘って移動させる必要があり、三回目の移動時にティーチングが開始されるので、最初の二工程ではティーチングが行えない。
二工程を移動しなくてもティーチング作業を開始するには、図19(a)(b)(c)及び図20に示すとおり、前記作業管理アプリケーション810にモード切替アイコン830を設け、該モード切替アイコン830を操作すると、第2ティーチング操作部である手動計測アイコン840が表示される。該手動計測アイコン840を操作すると、その場から前記ハンドルポテンショメータ34aが旋回方向に操作されるまでに検出された圃場情報に基づき、基準施肥量が算出される。
図13に示すとおり、前記手動計測アイコン840が操作されたとき、既にティーチング作業が行われ、圃場情報が検出されているときは、手動計測アイコン840の操作を無視する構成としてもよい。
これにより、誤操作により手動計測アイコン840を操作してしまい、ティーチング作業を途中で終了させることを防止できるので、確実に圃場情報が取得され、基準施肥量の正確性が向上する。
一方、図12に示すとおり、ティーチング作業が行われている最中に手動計測アイコン840を操作すると、それまで取得した圃場情報を破棄し、手動計測アイコン840を最初に操作した位置から次に操作する位置、あるいは手動計測アイコン840を最初に操作した位置から旋回開始位置に亘って、ティーチング作業を行う構成とする。
該手動計測アイコン840の操作によりティーチング作業が開始されたときは、もう一度手動計測アイコン840が操作されるまでの間は、施肥装置100の施肥量は変更されない構成とする。
これにより、作業者がティーチングに用いたい位置のみ圃場情報を取得することができるので、算出される基準施肥量の適正化が図られ、肥料過不足による苗の生育不良や、収穫物の収量や品質の低下が防止される。
さらに、図18(b)(c)に示すとおり、最初の工程の走行、または二工程目の走行中であっても、前記手動計測アイコン840を操作するとティーチング作業を開始する構成としてもよい。このとき、一工程目、または二工程目の走行後に操縦ハンドル34が旋回操作されても、再度ティーチング作業は行われないものとし、可変施肥の開始後に基準施肥量が再度算出されることが防止され、施肥量の適正化が図られる。
なお、図19(c)に示すとおり、前記作業管理アプリケーション810には、手動計測終了アイコン850を設け、該手動計測終了アイコン850を操作すると、それまで記録した圃場情報を破棄し、ティーチング作業をやり直す構成とすると、作業者が誤って手動計測アイコン840を操作した際、簡単に記録されている圃場情報を破棄することができるので、必要な圃場情報と不要な圃場情報がコントローラ210に混在することが防止され、基準施肥量の正確性が向上する。
上記のティーチング作業の開始条件は、圃場の形状が正方形または長方形であるときは、問題なく適用されるが、圃場端部に円弧部や傾斜辺部がある、所謂変形圃場で作業するときは、各工程の移動距離に差が生じやすく、ティーチング作業が開始できないことがある。
変形圃場における作業に対応すべく、コントローラ210は、前記GPS受信器710による走行車体2の位置座標から走行車体2の移動距離を算出し、所定距離、例えば作業条一往復分の距離を走行したときの走行車体2のGPS座標と、作業開始アイコン820または手動計測アイコン840を操作したGPS座標の距離が所定距離(例:約3〜5m)以内であるときは、二工程目の作業が問題なく行われたと判断して、旋回後に所定距離前進すると、取得した圃場情報を記録し始める、ティーチング作業が行われる構成とする。
上記により、変形圃場の作業時であっても、二工程走行した後に旋回するとティーチング作業が開始されるので、一定量の肥料が供給され続けて圃場内の位置ごとに肥料濃度の過不足が生じることを防止できる。
コントローラ210に記録された複数の圃場情報、即ち肥料濃度及び深度は、完全に均一であることは稀であるので、位置ごとの圃場情報は各々異なる。これらの異なる圃場情報の平均、即ち標準偏差が大きいと、肥料濃度及び深度は圃場の各所で異なっており、位置ごとに施肥量を変更し、圃場内の肥料供給量を均質化する必要がある。このとき、施肥量の変化は大きく、具体的には1kg単位で変化することが多く、施肥量切替モータ400により、適切な量の肥料の供給が行われる。
一方、標準偏差が小さい、即ち肥料濃度及び深度が安定している圃場で、圃場情報に基づき施肥量を逐次変化させると、施肥量切替モータ400は施肥量を僅かに切り替えるべく頻繁に移動することになるので、施肥量を切り替えている間に次の施肥量の切替信号がコントローラ210から送られ、施肥量がその位置に実際に必要な量ではなく、施肥量が適切に供給されなくなることがある。
これを防止すべく、図16及び図17に示すとおり、肥料濃度及び深度の標準偏差が設定値未満となったときは、設定値を標準偏差とする構成とする。
これにより、施肥量切替モータ400が過剰に作動することを防止できるので、位置ごとの施肥量が実際に必要な施肥量と異なる施肥量となることを防止できるので、肥料の過不足による苗の生育の乱れや、収穫物の収量や品質の低下が防止される。
前記深度センサ720が検出する圃場の深さを全て記録する、または位置毎に肥料濃度の補正に用いると、僅かな施肥量の自動調節が頻繁に行われ、位置毎の施肥量がかえって不適切になることがある。これを防止すべく、所定時間内に深度センサ720が検出した複数個所の深度(例:20回分)から平均を算出する構成とする。しかしながら、複数個所の深さを検出する際、平均からかけ離れた大きい数値、及び小さい数値が混ざっていると、算出される平均値が実際の深さに対応しないことがある。
このとき、図14に示すとおり、コントローラ210は、作業開始アイコン820または手動計測アイコン840を操作してから、あるいは植付クラッチ等の作業クラッチが入になってから最初に取得した第1平均深度D1と、次に取得される第2平均深度D2を比較し、第1平均深度D1と第2平均深度D2の差が所定値(例:10cm)未満であれば、第2平均深度D2は正常な変化であると判断して取得し、次に取得される第3平均深度D3と比較する。
一方、第1平均深度D1と第2平均深度D2の差が所定値以上であるときは、あり得ない変化を誤検知したとみなし、第2平均深度D2を第1平均深度D1に置き換える。そして、置き換えられた第1平均深度D1と次に取得される第3平均深度D3を比較し、差が所定値未満であれば第3平均深度D3を取得して次の第x平均深度Dxと比較すると共に、所定値以上であれば第3平均深度D3を第1平均深度D1に置き換え、次の第x平均深度Dxと比較する。
これにより、実際の圃場と異なる深度の変化がコントローラ210に記録され、土壌肥沃度の算出に用いられることを防止できるので、施肥量が適量となり、肥料の過不足による苗の生育不良が防止されると共に、収穫物の収量や品質の低下が防止される。
しかしながら、圃場によっては、圃場の深度が実際に大きく変化し得ることがあるが、この圃場で上記の平均深度の比較を行うと、深度が大きく変化した後に取得される平均深度は除外されてしまい、深度が変化する前の平均深度が記録されることになる。これにより、検出される深度が実際の圃場の深度と異なり、誤った基準施肥量や土壌肥沃度が算出され、適量の肥料の供給が行われなくなる。
上記の問題を防止すべく、図15に示すとおり、第1平均深度D1と第2平均深度D2を比較し、平均深度の差が所定値以上であるときは、第2平均深度D2を第1平均深度D1に置き換えると共に、第2平均深度D2を記録しておく。そして、第1平均深度D1とその後の第x平均深度Dxを比較し、所定回数(例:5回)または所定時間(例:1秒)に亘り第1平均深度D1に置き換えられたときは、第2平均深度D2はあり得ない変化を誤検知したのではなく、実際に深度が大きく変化したと判断し、第2平均深度D2を取得し、次に取得される第x平均深度Dxをこの第2平均深度D2と比較する。
これにより、大きな圃場の深度の変化があるとき、誤った圃場の深度に基づき基準施肥量や土壌肥沃度が算出されることを防止できるので、施肥量の適正化が図られる。
このとき、図22に示すとおり、平均深度の算出に用いる各深度を順番に並べ、上位及び下位の複数、たとえば上位と下位から各々2つの深度(DMax1,DMax2,DMin1,DMin2)を平均値の算出から除外する制御構成としてもよい。複数の深度のうち、最大及び最小付近の数値を除外することにより、平均深度が実際の深度よりも深くなる、または浅くなることを防止できるので、ティーチング作業により算出される基準施肥量や、圃場情報に基づく土壌肥沃度が実際の圃場に適したものとなるので、施肥量の適正化がいっそう図られる。
特に、深度センサ720の誤検知により、極端に深い、または浅い深度が検出されると、平均深度と実際の深度の差が大きくなり、基準施肥量や土壌肥沃度が適正な値でなくなるので、複数の深度から上位及び下位のいくつかの深度を除外する制御構成により、施肥精度が向上する。
一つの圃場での苗植付作業が終了し、作業管理アプリケーション810の作業終了アイコン860を操作すると、その圃場で取得した圃場情報、基準施肥量、作業面積及び位置毎の施肥量は、コントローラ210及び情報端末800の記録装置に保存する。そして、コントローラ210のメモリ領域に残っている圃場情報、作業面積及び基準施肥量は消去する。但し、作業面積及び基準施肥量は、キーオフしてもメモリ領域に保持し、キーオンにより再度呼び出されるものとする。
なお、作業途中で作業終了アイコン860を誤操作すると、作業途中で作業面積及び基準施肥量が消去されてしまい、ティーチング作業をやり直す必要が生じる。
これを防止すべく、図7及び図9に示すとおり、ミッションケース12内のギア伝動機構(図示省略)を切り替えて、走行車体2の走行伝動を圃場内で作業をする際の「作業速」と、路上を移動する際の「移動速」に切り替える副変速切替レバー900を設け、該副変速切替レバー900の操作位置を検知する副変速ポジションセンサ910を設ける。
そして、該副変速ポジションセンサ910により、副変速切替レバー900が「移動速」に操作されていることが検知された状態で、作業終了アイコン860が操作されると、その圃場での作業終了とみなす構成とする。なお、先に作業終了アイコン860を操作しておき、その後副変速切替レバー900を「移動速」に操作すると、作業終了とする構成としてもよい。
なお、圃場内で副変速伝動機構を「移動速」に操作することは基本的にないので、作業が終了したとみなす基準として最適である。
上記により、誤操作により、一つの圃場の圃場情報が分割されて取得されることを防止できるので、作業マップの数が増えることが防止され、作業計画の立てやすさが損なわれることが防止される。
また、次の圃場に移動する際に副変速切替レバー900を「移動速」にすると作業終了とみなすことにより、移動中に肥料濃度センサ700や深度センサ720の検出値がコントローラ210に取得されることを防止できるので、次の圃場の作業時に余分な情報が混ざることが防止される。
キーオフしても、作業再開時にメモリ領域に保持されている作業面積や基準施肥量が呼び出されることにより、キーオンした後にティーチング作業を再度行なう必要が無く、作業能率や施肥精度が向上する。
また、作業面積や施肥量が消去されることを防止すべく、休憩時等にエンジン20を停止させずに放置しておく必要がなく、余分な燃料の消費や排気ガスの放出が防止される。
さらに、図19(c)に示す作業終了アイコン860を操作すると作業面積及び施肥量が消去されるので、異なる圃場で作業する際、ティーチング作業で得られる基準施肥量が正確なものとなるので、可変施肥作業時の施肥量の適正化が図られる。
なお、作業終了アイコン860の操作時だけでなく、作業開始アイコン820を操作したときにもメモリ領域から作業面積及び基準施肥量の基準消去を行うことにより、何らかの誤作動でメモリ領域に残っている作業面積及び施肥量をティーチング作業前に確実に除去することができるので、いっそう可変施肥作業時の施肥量の適正化が図られる。
前記作業管理アプリケーション810が作成する作業マップには、GPS位置座標毎に肥料濃度、深度、温度及び施肥量等が記録されるが、作業開始アイコン820を操作していると、作業開始位置まで移動するとき、あるいは後工程に備えて作業を中断して移動するときなど、実際には作業が行われない箇所の情報も取得される。この場所で後から作業を行うと、各情報が重複して取得されるので、作業マップが見づらいものになるおそれがある。
これを防止すべく、作業開始アイコン820を操作した後、前記植付入切センサ25aが植付クラッチ切を検知しているときの各情報は、取得してもコントローラ210や情報端末の記録装置には記録せず、作業マップに反映されないものとする。
これにより、作業を行っているときの各情報だけが作業マップの生成に用いられるので、作業マップが見やすく、且つ作業内容を把握しやすいものとなり、次回以降の作業計画が立てやすくなる。
また、前記植付入切センサ25aが植付クラッチ入を検知していても、後輪回転センサ11aが走行車体2の移動を検知していないときは、作業が中断さえていると判断できるので、停止中の各情報は取得してもコントローラ210や情報端末の記録装置には記録せず、作業マップに反映されないものとする。
これにより、作業マップ上の停止位置に複数の情報が表示されることが防止され、作業マップが見やすく、且つ作業内容を把握しやすいものとなる。
なお、作業マップにおいて、作業開始アイコン820が操作された位置、あるいは最初に植付入切センサ25aが植付クラッチ入を検知した位置には、丸印や星印等をつけて、作業開始位置であることを示す。
これにより、圃場内のどこから作業が始められたかを容易に把握することができるので、作業能率が向上すると共に、作業マップを誤って読むことが防止される。
ティーチング作業後、前記情報端末800は作業終了アイコン860を操作するまで、殆ど操作することがない。したがって、ティーチング作業が終了すると、図20に示す、情報端末の表示画面に、深度、土壌肥沃度、施肥量等の、作業情報表示870に切り替える構成とする。
該作業情報表示870は、所定時間(例:3〜5分)分の各情報を数値、またはバーグラフや線グラフで表示する。具体的には、施肥量は数値(単位:kg/所定面積)871、深度は所定時間の変化を示す線グラフ872とバーグラフ(単位:cm)873で各々表示すると共に、肥料濃度はバーグラフ(単位:mS/cm)874で表示する。
また、前記深度の線グラフ872には、ティーチング作業時に取得した深度平均値875を横線で表示し、現在の作業位置の深浅を把握できる構成とする。
これにより、作業者は作業中に圃場の情報を把握し、圃場の情報を元に走行車体2の操舵や走行速度を調節して走行の安定化を図ることができるので、苗の植付位置や施肥位置が乱れることが防止され、作業精度が向上する。
図19及び図20に示すとおり、前記作業管理アプリケーション810に、情報端末800に記録された作業マップを呼び出す、マップ表示アイコン880を設ける。該マップ表示アイコンを表示すると広域地図が表示され、この地図上において、現在位置アイコン882、各作業マップに該当する位置に記録された順番を示す番号や、地図の位置を示すマーカ883、あるいは作業マップに相当する位置を着色して表示する。そして、該当箇所のマーカ883等を操作すると、対応する作業マップ、及び作業データベースが画面に表示される構成とする。
これにより、作業者は地図上で作業マップを確認したい圃場を探すことができるので、作業マップを探す時間が短縮され、作業能率が向上する。
なお、作業マップから所定範囲、例えば基準点(作業開始位置や、圃場出入口を示す座標等)から半径5m以内に別の作業マップに該当する圃場があるときは、図21に示すとおり、画面上に各作業日時を示す作業リスト881を表示し、このリストから必要な作業マップを選択する構成とする。
作業マップを生成した圃場が近接していると、地図上に表示される番号やマーカが操作しにくく、誤操作しやすくなるので、別途作業リスト881が表示されることにより、誤操作が生じにくくなり、作業能率が向上する。
あるいは、画面に表示されている地図の一部が自動的に拡大され、番号やマーカの間隔が十分に空く構成としてもよい。
前記情報端末800の作業データベースがある圃場で作業をするとき、前回の作業の成果が良好なものであるとき、前回と同じ条件で作業を行うべく、情報端末800からコントローラ210に各情報を送信する、過去情報アイコン890を作業管理アプリケーション810に設ける。
作業マップを呼び出した状態で該過去情報アイコン890を操作すると、その圃場の過去の各情報が画面に表示されるとともに、この情報を走行車体2側のコントローラ210に送信するか否かを選択する送信アイコン891を表示し、送信が選択されると、コントローラ210は受信したデータを元に、可変施肥作業を行う。
これにより、良好な結果になり得る設定値を容易に再現できるので、異なる作業者に作業ノウハウを伝授することが可能となり、作業の均質化が図られる。
作業開始アイコン820を操作してから作業終了アイコン860が操作されるまでの間にキーオフ、即ちエンジン20を停止させると、肥料濃度センサ700や深度センサ720、温度センサ730、ならびにコントローラ210への通電は停止するので、情報端末800との短距離無線通信も停止する。その後、キーオンしてエンジン20を始動させて通電が再開されると、情報端末800は短距離無線通信を行い、コントローラ210との通信状態を自動的に接続する。
なお、情報端末800は定期的に短距離無線通信を試みており、エンジン20の始動によりコントローラ210に通電が再開され、コントローラ210が通信待機状態になると、接続が開始される構成とする。
これにより、短距離無線通信を接続し忘れて作業を行い、各情報の取得が行われず、不完全な作業マップが作成されてしまうことが防止されるので、作業マップの情報精度が向上する。
以下、施肥装置100の各部の構成について更に説明する。
図3から図6に示すとおり、右側肥料ホッパ60Rは右側の4条分が共用で、上部に開閉可能な蓋60aが取り付けられている。右側肥料ホッパ60Rの下部は施肥条数分(4条分)に分岐して漏斗状の流下部60bを形成しており、該流下部60bの下部が各繰出部61の上端に接続されている。左側肥料ホッパ60Lについても上記構成と同じである。
図4に示す通り、繰出部61は、右側肥料ホッパ60R内(又は、左側肥料ホッパ60L内)の肥料を下方に繰り出す2個の第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bを内蔵している。該第1及び第2繰出ロール73A,73Bは、外周部に溝状の凹部74が形成された回転体で、左右方向に設けた共通の繰出軸75の角軸部75a(図示例は四角軸)にそれぞれ一体回転する構成で嵌合している。なお、繰出軸75の駆動源については、図3を用いて後述する。
また、上記左右の肥料ホッパ60L及び60Rの下部の流下部60bの下方と繰出部61の間には、枠形状のシャッタケース80を各条に設け、該シャッタケース80の前後に形成された左右方向に長く上下方向に短いシャッタ穴80aに、板形状の施肥シャッタ81を摺動自在に設ける。
上記の施肥シャッタ81を設けたことにより、施肥シャッタ81を摺動させて流下部60bに落下規制部81cを臨ませておくと、作業圃場への移動時に繰出部61に肥料が溜まることを防止できるので、肥料が繰出部61内で塊になり、第1繰出しロール73Aや第2繰出しロール73Bに設定量の肥料が供給されず、肥料不足による作物の生育不良の発生が防止される。
従来は、肥料ホッパに投入された肥料は幅の狭い流下部60bを経由して、同様に幅の狭い繰出部61に落下しており、肥料の自重によって塊になり、落下しないことがあった。特に、流下部60bや繰出部61の内部の壁面に集中的に付着してブリッジ化が生じると、ブリッジ化した箇所に落下した肥料はそのまま積もってしまい、設定量の肥料が供給されなくなる問題があった。
また、繰出部61に肥料の詰まり等が生じ、メンテナンス作業の必要が生じたときに、施肥シャッタ81によって肥料の落下を規制することができるので、左右の肥料ホッパ60L,60Rに肥料を残したまま後方回動させることができ、メンテナンス作業が能率よく行える。
従来は、メンテナンス作業時には肥料ホッパ内の肥料を一旦取り除く必要があり、メンテナンス作業に要する時間を余分に要していたが、上記構成により、作業時間の短縮が図られる。
また、前記第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bが図4の矢印方向に回転することにより、左側肥料ホッパ60L(又は、右側肥料ホッパ60R)から落下供給される肥料が凹部74に収容されて下方に繰り出される。第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bにより繰り出された肥料は、下端の吐出口61aから吐出される。
繰出部61の吐出口61aには、前端部がエアチャンバ68の背面部に前後方向に挿入連結されて、後端部が繰出部61の吐出口61aに連通する接続管(図示省略)が接続されている。
一方、エアチャンバ68の左端部はエア切替管(図示省略)を介してブロア67に接続されており、該ブロア67からのエアがエアチャンバ68を経由し接続管から繰出部61の吐出口61aを通過する際に、肥料を巻き込みながら施肥ホース62側に吹き込まれる構成としている。
また、図示例の第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの凹部74の数は6個であり、両者の凹部74の位置が隣り合わない様にするために、その位相は異ならせて配置されている。これにより、第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの各凹部74が交互に肥料を繰り出すこととなり、吐出口61aから吐出される肥料の量が時間的に均等化されている。
第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの何れかを繰出軸75から外して位相を適当に変更して付け直すことにより、第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの凹部74の位相を等しくすることも出来る。これで、圃場に点状に肥料を散布するときに適用可能となる。
また、繰出部61の内部には、凹部74が下方に移動する側(前側)の第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの外周面に摺接するブラシ76が着脱自在に設けられている。このブラシ76によって第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの凹部74に肥料が摺り切り状態で収容され、第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bによる肥料繰出量が一定に保たれる。
そして、該施肥伝動駆動ロッド462から駆動力の伝達方向を機体前後方向に変更する中継ロッド463を左右方向に配置し、前記施肥伝動駆動ロッド462と中継ロッド463の間に、前記施肥伝動駆動ロッド462の上下動に連動して揺動連結支点ピン464aを支点として前後両端部が上下方向に揺動連結プレート464を配置すると共に、中継ロッド463の他端部に駆動力を後述する繰出回動アーム467に伝達するサブ駆動ロッド465を配置することにより、施肥伝動機構300が構成される。
該サブ駆動ロッド465は、右側の肥料ホッパ60Rの機体後部側の下方に配置されており、該サブ駆動ロッド465の上端部に、前記繰出軸75を施肥量に合わせて駆動回転させる繰出回動アーム467の後端部を連結する。そして、該繰出回動アーム467の前端部と前記繰出軸75を、施肥駆動アーム468で連結する。
施肥量の調節作業を容易にすると共に、前記コントローラ210が発信する信号に基づいて可変施肥作業を行うべく、図5及び図6に示すとおり、正逆自在に高速回転する施肥量調節モータ400を前記繰出回動アーム467よりも機体前側に配置する。そして、該施肥量調節モータ410にボールネジ420を回転可能に設け、該ボールネジ420の表面に形成された螺旋形状の溝に螺合して高速で機体前後方向に移動するボールナット430を設け、該ボールナット430の前後移動量を検知するストロークセンサ440を設けると共に、該ボールナット430に前記繰出回動ピン469を設ける。
前記施肥量調節モータ400は、モータケース400aに周囲を覆われており、該モータケース400aの上端面を前記施肥シャッタ81よりも機体下側に位置させて、前記右側の肥料ホッパ60Rの左右方向の中央部付近に配置している。具体的には、機体右端から数えて2条目と3条目の繰出部61,61、及び流下部60b,60bの左右間に生じている空間部に配置するものとする。
これに加えて、前記施肥量調節モータ400は、肥料を前記施肥ホース62に移動させる搬送風が通過する前記エアチャンバ68の上方で、且つ前記エンジンカバー30の機体右側後端部よりも機体右側で、且つ後方に配置するものとする。これに加えて、前記モータケース400aの前端部は、エアチャンバ68の機体前端部よりも機体前側に突出するものとする。
さらに、前記繰出回動ピン469は、前記ボールナット430の上下方向中央部よりも機体上側寄りに配置し、側面視で前記ボールネジ420とオフセットすると共に、該ボールネジ420よりも上方に位置する構成とする。
上記により、施肥量調節モータ400が施肥シャッタ81の開閉操作を妨げないので、施肥シャッタ81を作業状態に合わせて操作する際に部品の着脱等の作業を必要としないので、作業能率が向上する。
また、繰出回動ピン469よりもボールネジ420が機体下方に位置することにより、重量物である施肥量調節モータ400を機体下側寄りに配置することができるので、機体の低重心化が図られて走行姿勢が安定し、苗の植付精度や施肥精度が向上する。
そして、施肥量調節モータ400がエアチャンバ68の上方で、且つエンジンカバー30の後方で且つ機体右側に設けられることにより、施肥量調節モータ400やボールネジ420のメンテナンス作業を行う作業位置の周辺に空間部を形成することができるので、メンテナンス作業の能率が向上する。
さらに、施肥量調節モータ400のモータカバー400aがエアチャンバ68の前端部よりも機体前側に突出していることにより、作業者がエアチャンバ68に近付き過ぎることを防止できるので、作業者の足がエアチャンバ68に接触して踏み潰してしまい、肥料の搬送風が能率よく供給されなくなることが防止され、圃場に調節された施肥量に対応する肥料が供給される。
上記により、圃場に供給される肥料が不足し、苗が生育不良を起こすことが防止される。
上記の苗の植付及び施肥作業を行うときは、圃場の端に来るたびに、操縦ハンドル34を操作して約180度の旋回走行を行う必要があるが、旋回走行の終了前に操縦ハンドル34の操作量が大き過ぎる、あるいは操作量が不足していると、走行車体2が直進方向から左右にずれた方向に走行することになる。
すると、旋回直後の苗の植付位置、及び施肥位置が、旋回直前の苗の植付位置、及び施肥位置からずれてしまい、苗の植付間隔が開き過ぎる、または狭まり過ぎて、植付計画どおりに苗が植え付けられず、植付精度や作業能率を低下させる問題がある。また、施肥位置が狭まり過ぎると、隣接位置と重複して施肥が行われ、余分な肥料が供給され、肥料の消費量が増大する問題がある。
これを防止すべく、図1、図2、図7及び図23に示すとおり、走行車体2にジャイロセンサ等の角速度センサ500を設け、操縦ハンドル34が操作されたことをハンドルポテンショメータ34aが検知すると、コントローラ210はそのときの走行車体2の角度を基準値O、例えば0度として記録する。そして、前記角速度センサ500は、旋回走行中の角度を逐次検知し、旋回開始から走行車体2の向きが該基準値Oから所定値X、たとえば180度変化したことを検知したとき、あるいは、170度から180度の間で変化を検知したときに、ブザー等の報知部材501を作動させる。
これにより、作業者は操縦ハンドル34の操作を直進走行に適した位置で停止させることができるの、旋回後の走行車体2の進行方向が直進方向からずれることが防止され、苗の植付精度や施肥精度の向上が図られると共に、肥料の消費量の低減が図られる。
なお、前記角速度センサ500は、図1及び図2に示すとおり、走行車体2の左右方向の中央部で、且つ前側寄りに配置すると、旋回方向が左右のどちらであっても偏って検知することがなく、且つ走行車体2の旋回量の変化を確実に検知することができ、いっそう旋回後に操縦ハンドル34の操作を止める位置が合わせやすくなる。特に、前記左右一対の前輪10,10を操舵させるピットマンアーム(図示省略)に設けると、旋回による角度変化を略ダイレクトに検知することができる。
また、図23に示すとおり、前記報知部材501が作動したとき、該報知部材501は、例えば「ピッ」という短音SSを一回発信するか、あるいは角速度センサ500の検知する角度が一定である間は連続的に、例えば「ピー」という長音LSを発信し、一定時間が経過するか、植付クラッチが入状態になったことを植付入切センサ25aが検知するとこの長音LSを停止させるかを切り替える、報知選択スイッチ502を設けてもよい。
該報知選択スイッチ502は、図2及び図7に示すとおり、前記ボンネット32上に設けるか、あるいは前記情報端末800の作業管理アプリケーション810に操作アイコン、例えば報知選択アイコン503を設けてもよい。
これにより、作業者がわかりやすい報知部材501の作動を決定することができるので、操縦ハンドル34の操作を止めるタイミングが計りやすく、旋回後の植付精度や施肥精度の安定化が図られる。
また、長音LSの発信の有無や、長音LSの発信を停止させるタイミングを切り替えられるので、作業者が報知部材501の音に集中を乱されることが防止される。
そして、一定時間の経過か植付クラッチが入状態になると長音LSの出力が停止することにより、作業者が報知部材501を停止させる操作を行なう必要が無く、操作性や作業能率が向上する。
上記の旋回走行を行うとき、走行車体2の走行速度が速過ぎると、走行時の重心が乱れやすく、旋回走行軌跡が乱れ、角速度センサ500が走行車体2の向きが180度変わったことを検知しても、直進方向とずれた位置を向いてしまうことが考えられる。
また、旋回速度が速過ぎると、旋回開始時に苗植付部4の上昇が始まる前に走行車体2の進行方向が変わり始め、苗植付部4の旋回内側端部側が圃場面に接触したり、旋回後に進行方向は直進方向を向いているものの、植付クラッチや施肥クラッチが入状態になるタイミングが旋回前の植付及び施肥の終了位置に合わず、隣接条の苗の植付及び施肥終了位置と作業条の苗の植付及び施肥開始位置にずれが生じる問題がある。
この問題が生じると、圃場の端部、即ち枕時に苗を植え付ける際、枕時の苗の植付位置、及び枕時の施肥位置と、圃場内部の苗の植付位置、及び施肥位置との間に間隔が空いてしまい、計画通りの苗の植付や施肥が行われない問題が生じ得る。
これを防止すべく図24及び図25で示すとおり、圃場端で旋回しながら苗の植付及び施肥を行う作業時に、走行車体2が走行を開始する位置、及び旋回後に加速する位置と、旋回前に減速する位置を前記GPS受信機710が取得する座標情報に紐付けて記録する。これらの座標位置は少なくとも走行車体2の一往復分取得するので、往路では走行開始位置の座標Y1と旋回前の減速位置の座標Y2が記録され、旋回後の復路では旋回後の加速開始位置の座標Y3と第2の旋回前の減速位置の座標Y4が記録される。
そして、次の旋回後の座標Y5が、走行開始時の座標Y1及び第2の旋回前の減速位置の座標Y4と一致すると、前記コントローラ210は、無段変速装置23の出力を増減制御するサーボモータ23aを作動させ、無段変速装置23の出力を一定値まで低下させる。無段変速装置23の出力が一定以下であるときは、現在の出力を維持する。
また、次の旋回前の座標Y6が、最初の旋回前の減速位置の座標Y2及び最初の旋回後の減速位置の座標Y3と一致すると、前記コントローラ210は、無段変速装置23の出力を増減制御するサーボモータ23aを作動させ、無段変速装置23の出力を一定値まで低下させる。無段変速装置23の出力が一定以下であるときは、現在の出力を維持する。
これにより、旋回前に走行車体2の走行速度を自動的に減速させることができるので、苗植付部4が上昇を開始してから旋回方向に走行車体2の向きが変わり、苗植付部4の旋回内側端部が圃場面に接触して破損することや、圃場面を抉り、枕時での苗の植付作業時に苗の植付深さを乱すことが防止され、苗の植付精度が向上する。
また、旋回後にも走行車体2の走行速度を減速させることにより、苗の植付や施肥の開始位置が旋回前の苗の植付及び施肥の終了位置と異なる位置になることを防止できるので、苗の植付や施肥精度が向上する。
さらに、旋回走行時に移行するとき、走行車体2の走行速度が低下していることにより、走行車体2の姿勢が乱れにくく、走行時の安全性が向上する。
上記の構成は、走行速度を控えて作業している作業者にとっては不要な構成である。そこで、図2、図7及び図26に示すとおり、前記苗載せ台51の各条に苗の減少を検知する苗減少センサ51cを各々設け、該苗減少センサ51cのうち一つ以上が減少を検知しているとき、所定のY座標に到達した時にサーボモータ23aを作動させて無段変速装置23の出力を低下させる構成としてもよい。
また、図3、図5、図7及び図27に示すとおり、左側肥料ホッパ60Lと右側肥料ホッパ60R内に、貯留する肥料の減少を検知する肥料残量センサ60c,60cを各々設け、あるいは、施肥条毎に設け、該肥料残量センサ60cの少なくとも一つが肥料の減少を検知しているとき、所定のY座標に到達した時にサーボモータ23aを作動させて無段変速装置23の出力を低下させる構成としてもよい。
なお、前記苗減少センサ51cは、苗載せ台51に載置する苗が載っているときを非検知状態とし、苗が減少して苗減少センサ51cに載らなくなると検知状態になるものとする。
また、肥料残量センサ60cは、左側肥料ホッパ60Lと右側肥料ホッパ60Rの下部寄りに配置する通電センサとし、肥料が入っているときを非検知状態とし、肥料が少なくなって肥料残量センサ60cが空気に触れて通電抵抗が変更したときを検知状態とする。
これにより、苗の補充が必要であるときには走行車体2の走行速度が自動的に低速になるので、作業者が苗載せ台51に苗を補充する必要があることを認識しやすく、苗の補充を忘れて苗が植え付けられない個所や、肥料が供給されない個所発生することが防止される。これにより、苗を手作業で圃場に植え付けたり、肥料を撒いたりする作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
また、旋回走行を圃場端付近で走行速度を減少させて苗や肥料の補充の必要性を作業者に知らせることにより、旋回途中の最も圃場端に近付く位置で走行車体2を停車させたり、旋回せずに走行車体2を圃場端まで前進させたりして苗を圃場外から積み込むことができるので、苗の補充を行うべく苗の植付と施肥作業を中断して圃場端まで移動する行程が不要となり、作業能率が向上する。
そして、図1、図2、図7及び図28に示すとおり、前記運転席31に作業者の着座を検知する着座センサ31aを設け、該着座センサ31aが非検知状態、即ち作業者が運転席31から立ち上がったことを検知すると、前記サーボモータ23aを作動させて無段変速装置23の出力を低下させ、走行車体2の走行速度を減速させる構成としてもよい。
これにより、苗や肥料の補充作業等、作業者が苗の植付及び施肥作業途中に操縦席31から離れる必要があるときには、自動的に走行車体2の走行速度が減速されることにより、作業を継続しつつ、且つ安全に苗や肥料の補充作業を行うことができるので、作業能率と作業の安全性の向上が図られる。
さらに、図7、図20及び図29に示すとおり、前記第1ティーチング操作部である作業開始アイコン820を操作し、ティーチング作業を開始したときは、前記サーボモータ23aを作動させて無段変速装置23の出力を低下させ、走行車体2の走行速度を低下させる。
前記コントローラ210は、ティーチング作業中は無段変速装置23の出力を増減操作する主変速レバー(図示省略)を操作しても、サーボモータ23aは出力の低下及び後進走行出力への切替は行うものの、走行速度が一定以上になる無段変速装置23の出力には切替を行わないものとする。
これにより、ティーチング作業中に走行速度が高速になりにくいので、走行車体2の姿勢が前後または左右に乱れることが防止され、ティーチング作業による肥料濃度、深さ及び水温の検知精度が向上し、圃場内の場所ごとの施肥量の増減の適正化が図られ、肥料の余分な使用や、肥料不足が防止される。