JP2017109892A - 合わせガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】可視光透過率の低下を抑制することが可能な合わせガラスを提供する。【解決手段】赤外遮蔽フィルムと、赤外遮蔽フィルムを挟持する一対の透明基体とを備える合わせガラスであって、赤外遮蔽フィルムが、基材と、基材上に設けられた赤外吸収層とからなり、赤外吸収層が、タングステン酸化物と、タングステン以外の金属とを含み、赤外吸収層に、タングステン酸化物に対してタングステン以外の金属が0.0001〜0.01質量%含まれる。【選択図】図1

Description

本発明は、赤外遮蔽フィルムを備える合わせガラスに係わる。
近年、建物や車両の窓ガラス面に貼合する窓貼り用フィルムが多く利用されている。その中の一つに、赤外線の建物内への侵入を抑え、室内の温度が過剰に上昇するのを防ぐ機能を有する、赤外線遮断用の赤外遮蔽フィルムがあり、冷房の使用量を低減し、省エネルギー化に貢献している。
従来、一般的な赤外遮蔽合わせガラスとしては、中間膜として赤外(IR)吸収剤を含むポリビニルブチラール(PVB)フィルムが知られている。しかし、IR吸収剤を含むPVBフィルムでは、赤外線を遮断する能力を高めることが難しい。例えば、米国においてカリフォルニア大気資源委員会(California Air Resources Board:CARB)が自動車に用いられる合わせガラスに要求する予定であった、TTS(Total Solar Transmittance)において50%以下を達成することができない。
そこで、基材の一方の面に赤外反射層を有し、他方の面に赤外吸収材を含む層を有する赤外遮蔽フィルムを中間膜の間に挟み込む構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、この赤外遮蔽フィルムを有する合わせガラスが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この構成の赤外遮蔽フィルムによれば、TTSにおいて50%以下を達成することができる。
特開2011−195417号公報 特開2014−104643号公報
上述の構成の赤外遮蔽フィルムでは、赤外吸収材としてタングステン酸化物を用いることにより、特に高い赤外遮蔽効果を得ることができる。しかし、タングステン酸化物を含む赤外遮蔽フィルムを合わせガラスに用いると、耐候性試験後の合わせガラスが変色してしまう。このため、合わせガラスの色調の変化により、合わせガラスの可視光透過率が低下してしまう。
上述した問題の解決のため、本発明は、可視光透過率の低下を抑制することが可能な合わせガラスを提供する。
本発明の合わせガラスは、赤外遮蔽フィルムと、赤外遮蔽フィルムを挟持する一対の透明基体とを備える合わせガラスであって、赤外遮蔽フィルムが、基材と、基材上に設けられた赤外吸収層とからなり、赤外吸収層が、タングステン酸化物と、タングステン以外の金属とを含み、赤外吸収層に、タングステン酸化物に対してタングステン以外の金属が0.0001〜0.01質量%含まれる。
本発明によれば、可視光透過率の低下を抑制することが可能な合わせガラスを提供することができる。
合わせガラスの構成を示す図である。
〈1.合わせガラス〉
以下、本発明の合わせガラスの具体的な実施の形態について説明する、本発明は以下の例に限定されるものではない。
合わせガラスは、赤外遮蔽フィルムと、この赤外遮蔽フィルムを挟持する一対の透明基体とから構成される。合わせガラスに用いられる赤外遮蔽フィルムは、基材と、基材上に設けられた赤外吸収層とを有する。赤外遮蔽フィルムの赤外吸収層は、タングステン酸化物と、タングステン酸化物に対して0.0001〜0.01質量%含まれるタングステン以外の金属とを含む。
赤外吸収層が、タングステン酸化物に対して0.0001〜0.01質量%のタングステン以外の金属を含むことにより、耐候性試験後のタングステン酸化物の変色を抑制することができる。この変色抑制の原理は明らかではないが、タングステン酸化物と、タングステン以外の金属との間での電子の移動によるものと考えられる。タングステン酸化物の変色を抑制することにより、赤外遮蔽フィルム及び合わせガラスの変色を抑制し、可視光透過率の低下を抑制することができる。
タングステン以外の金属としては、例えば、鉄、銀、白金、パラジウム、ルテニウムを含むことが好ましい。特に、白金又はパラジウムを有することが好ましい。これら金属を含むことにより、タングステン酸化物の変色を抑制することができる。特に、白金又はパラジウムを含むことにより、タングステン酸化物の変色を抑制することができる。
また、赤外吸収層は、タングステンと樹脂とを含み、タングステンと樹脂との比[タングステン酸化物の質量/樹脂の質量](P/B比)が、0.20以上0.40以下であることが好ましい。P/B比を0.2以上とすることにより、合わせガラスの赤外遮蔽性を高めることができる。また、P/B比を0.4以下とすることにより、ヘイズの悪化を防ぐことができる。
また、合わせガラスにおいて、赤外遮蔽フィルムは、基材及び赤外吸収層と共に、赤外反射層を備えていてもよい。赤外遮蔽フィルムが、赤外吸収層と共に赤外反射層を有することにより、赤外線を遮蔽する能力がより高まる。また、赤外遮蔽フィルムが赤外吸収層と赤外反射層とを有する場合には、より多くの赤外線を含む光が入射する側に赤外反射層が配置されることが好ましい。このような配置とすることにより、赤外吸収層の劣化を抑制することができ、赤外遮蔽フィルムの耐候性が向上する。また、赤外吸収層での発熱を抑制でき、赤外遮蔽フィルムの耐候性が向上する。
合わせガラスの赤外遮蔽フィルムにおいて、赤外反射層は、水溶性ポリマーを含む構成であることが好ましい。赤外反射層が水溶性ポリマーを含むことにより、塗布法を用いて赤外反射層を形成することができる。また、赤外反射層が水溶性ポリマーを含む構成である場合には、赤外反射層が屈折率の異なる複数の層からなる積層構造を有する構成とすることが好ましい。このような積層構造を有することにより、赤外反射の効率を高めることができる。
[合わせガラスの構成]
図1に合わせガラスの概略構成を示す。図1に示す合わせガラス10は、第1透明基体11、第2透明基体12、及び、第1透明基体11と第2透明基体12とに挟持された赤外遮蔽フィルム13を有する。また、赤外遮蔽フィルム13は、基材14と、基材14の一方の面に設けられた赤外吸収層15と、基材14の他方の面に設けられた赤外反射層16とを有する。
合わせガラス10は、赤外遮蔽フィルム13が直接又は接着剤を介して、ガラス又はガラス代替樹脂等の透明基体(第1透明基体11、第2透明基体12)に貼合された構成を有する。合わせガラス10の透明基体としては、ガラス以外にも、ガラス代替物としての樹脂基体等の透明な基体を含む。
[赤外遮蔽フィルム]
赤外遮蔽フィルム13は、基材14と基材14上に設けられた赤外反射層16とを有する。なお、赤外遮蔽フィルム13は、基材14と赤外吸収層15とを有していればよい。また、赤外遮蔽フィルム13は、赤外吸収層15とともに、赤外反射層16を有していることが好ましい。
赤外遮蔽フィルム13は、基材14、赤外吸収層15、及び、赤外反射層16の間に他の層が形成されていてもよい。また、基材14、赤外吸収層15、及び、赤外反射層16の外側に他の層が設けられ、この他の層を介して赤外遮蔽フィルム13が合わせガラス10の第1透明基体11、第2透明基体12と貼り合わされていてもよい。
[赤外吸収層]
赤外吸収層15は、赤外吸収材料としてタングステン酸化物を含む。さらに、赤外吸収層15は、タングステン以外の金属、及び、バインダーを含む。また、赤外吸収層15は、タングステン酸化物以外の赤外吸収材料や、各種添加剤含んでいてもよい。
赤外吸収層15の厚さは特に制限されないが、好ましくは1〜10μmであり、より好ましくは1.5〜8μmである。厚さを1μm以上とすることによって、赤外吸収層は十分な赤外遮蔽性を発現できる。一方、厚さを10μm以下とすることによって、応力によるクラックの発生を防ぐことができる。
(タングステン酸化物)
タングステン酸化物には、一般式[W]で表されるタングステン酸化物の他に、一般式[M]で表される複合タングステン酸化物も含まれる。さらに、一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物以外に、タングステンが含まれる他の形態の酸化物であってもよい。以下の説明では、これらの複合タングステン酸化物やタングステンが含まれる他の形態の酸化物も含めて、タングステン酸化物と表記する。
タングステン酸化物は、一般式[W]で示され、特開2013−64042号公報や特開2010−215451号公報に記載された構成を使用できる。上記一般式中、y及びzは、タングステンと酸素との組成であり、タングステンに対する酸素の組成比[z/y]が、3未満[z/y<3]の関係を満たすことが好ましい。また、タングステンと酸素との組成比[z/y]は[2<z/y<3]の関係を満たことがより好ましく、[2.2≦z/y≦2.999]の関係を満たすことがさらに好ましい。このような[z/y]の比率であれば、材料として化学的に安定であり、高い赤外吸収能を発揮できる。
また、タングステン酸化物の組成は、特に制限されないが、安定性の観点から、一般式[M]で表される複合酸化物であることが好ましく、特開2013−64042号公報や特開2010−215451号公報に記載される構成を使用できる。上記一般式[M]中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi及び、Iから選択される1種類以上の元素を表す。アルカリ金属は、水素を除く周期表第1族元素であり、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランジウムである。アルカリ土類金属は、周期表第2族元素であり、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムである。希土類元素は、Sc、Y及びランタノイド元素(57番のランタンから71番のルテチウムまでの元素)である。特に、赤外吸収材料としての光学特性、耐候性向上効果の観点から、Mが、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、及び、Snから選択される1種類以上であることが好ましく、MがCs又はRbであることがさらに好ましい。さらに、MがCsであり、Csで表されるセシウム含有複合タングステン酸化物が特に好ましい。
一般式[M]において、x、y及びzは、タングステンとMと酸素の組成であり、タングステンに対するMの組成比[x/y]が、[0<x/y≦1]を満たし、タングステンに対する酸素の組成比[z/y]は、[2<z/y≦3]を満たすことが好ましい。また、タングステンに対するMの組成比[x/y]が、[0.001≦x/y≦1]の関係を満たし、タングステンに対する酸素の組成比[z/y]が、[2.2≦z/y≦3]の関係を満たすことが好ましい。さらに、x、y及びzが、[0.2≦x/y≦0.5]かつ[2.45≦z/y≦3]の関係を満たすことがより好ましく、[0.31≦x/y≦0.35]かつ[0.27≦z/y≦3]の関係を満たすことがさらに好ましい。
赤外吸収材料として用いるタングステン酸化物は、特に制限されないが、例えば、Cs0.33WO、Rb0.33WO等が挙げられる。特に、タングステン酸化物としては、セシウム含有ドープ酸化タングステンが好ましく、セシウム含有複合タングステン酸化物であるCs0.33WOが好ましい。
タングステン酸化物の形状は、特に制限されず、粒子状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等任意の構造であってよく、粒子状であることが好ましい。また、タングステン酸化物の大きさも特に限定されないが、タングステン酸化物が粒子状である場合には、平均粒径(平均一次粒子径、直径)が、5〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。平均粒径がこの範囲であれば、可視光の反射を抑制しつつ、熱線吸収効果を確保でき、散乱によるヘイズの劣化が生じず、透明性を確保できる。上記平均粒径は、粒子そのもの、又は、赤外吸収層15の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径を測定して単純平均値(個数平均)として求められる。個々の粒子の粒径は、投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表した、面積円相当径である。
赤外吸収層15に使用可能なタングステン酸化物の具体的な商品名としては、セシウム含有複合タングステン酸化物系としてCWO分散液(YMF−02A、住友金属鉱山社製)等が挙げられる。
(タングステン酸化物以外の赤外吸収材料)
赤外吸収層15は、タングステン酸化物以外の赤外吸収材料を含んでいてもよい。タングステン酸化物以外の赤外吸収材料としては、特に制限されず、例えば、酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、インジウムドープ酸化錫(ITO)を用いることができる。また、これらの具体的な商品名としては、例えば、酸化亜鉛系として、セルナックス(登録商標)シリーズ(日産化学工業社製)、パゼットシリーズ(ハクスイテック社製)等が挙げられる。また、酸化錫系として、ATO分散液(SR35M Advanced Nano Products社製)、ITO分散液(三菱マテリアル電子化成社製)、KHシリーズ(住友金属鉱山社製)等が挙げられる。
また、赤外吸収材料としては、ポリメチン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、金属錯体系、アミニウム系、イモニウム系、ジイモニウム系、アンスラキノン系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、インドールフェノール系、アゾ系、トリアリルメタン系の化合物等が挙げられる。金属錯体系化合物、アミニウム系化合物(アミニウム誘導体)、フタロシアニン系化合物(フタロシアニン誘導体)、ナフタロシアニン系化合物(ナフタロシアニン誘導体)、ジイモニウム系化合物(ジイモニウム誘導体)、スクワリウム系化合物(スクワリウム誘導体)等の有機物を用いることもできる。
(タングステン以外の金属)
赤外吸収層15は、上述のタングステン酸化物と共に、タングステン以外の特定の金属(以下、特定金属と称する)を含む。赤外吸収層15が特定金属を含むことにより、赤外遮蔽フィルム13が太陽光に曝された際のタングステン酸化物の色調変化を抑制し、耐候性を向上させることができる。
上記特定金属としては、鉄、銅、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及び、ニッケルを含むことが好ましい。特定金属としては、上記金属群から選択される少なくとも1種以上の金属を単独で含んでいてもよく、また、2種以上含んでいてもよい。このため、赤外吸収層15は、特定金属として上記金属群から選択される少なくとも1種以上の金属、合金、及び、金属化合物を含むことが好ましい。また、特定金属としては、鉄、銀、白金、パラジウム、及び、ルテニウムを含むことが好ましく、特に、白金、及び、パラジウムを含むことが好ましい。
上記特定金属は、下記のメカニズムにより、タングステン酸化物の着色を効果的に抑制できる推測される。なお、以下の作用効果を発揮するメカニズムは推測であり、以下の推測に限定されない。
タングステン酸化物が紫外線に曝されると、タングステン酸化物自身が青色化する。この青色化は、次のメカニズムが関係していると推測される。まず、紫外線が照射されたタングステン酸化物において、光触媒反応により自己還元が起こり合わせガラスのようなOのない環境であるとW6+→W5+となる。このW5+が赤色に吸収を持つため青色化する。
これに対し、上述の特定金属がタングステン酸化物と共存している場合、タングステン酸化物の表面に存在する(又は、タングステン酸化物の表面の近傍に存在する)特定金属が、上記のタングステン酸化物中の自己還元反応を抑制することができると考えられる。
上述の特定金属によるタングステン酸化物の着色抑制効果が非常に高いため、強い太陽光(主に紫外線)に曝されても、タングステン酸化物の着色に起因する色調変動を効果的に抑制することが可能である。よって、一定の色調変動抑制効果を得るために必要な特定金属は、比較的少量でよい。
特定金属の含有量は、タングステン酸化物の着色抑制効が発揮される限り特に制限されない。赤外吸収層15中の特定金属の含有量は、タングステン酸化物に対して一定の比率であることが好ましい。例えば、特定金属がタングステン酸化物に対して(タングステン酸化物の総量を100質量%として)0.0001〜0.01質量%含まれることが好ましい。特に、特定金属がタングステン酸化物に対して0.002〜0.1質量%含まれているとより好ましい。
タングステン酸化物に対する特定金属の含有量を多くする(0.0001質量%以上)ことにより、タングステン酸化物の青色化を抑制する効果を高めることができる。一方、タングステン酸化物に対する特定金属の含有量を少なくする(0.01質量%以下)ことにより、特定金属に起因する耐久性の低下(膜割れ)やヘイズの悪化を抑制することができる。また、特定金属の添加量を調整することで、赤外吸収層15を形成するための塗布液の調製の際に、均一な塗布液を調製しやすくなる。この結果、光学特性や色調に優れた赤外遮蔽フィルム13を作製することができる。
赤外吸収層15に含有される特定金属の形状は、特に制限されず、粒子状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等任意の構造であってよく、粒子状であることが好ましい。また、特定金属の大きさも特に限定されないが、一次粒子の比表面積換算平均粒子径が1〜9nmであることが好ましく、2〜6nmであるとさらにより好ましい。このような範囲とすることにより、散乱によるヘイズの劣化が生じず、タングステン酸化物の着色を十分に抑制することができる。
特定金属の粒子の比表面積換算平均粒子径は、以下の測定方法により測定された値を指すものとする。まず、対象となる粒子を定容量法のガス吸着量測定装置、例えば、BELSORP−mini II(日本ベル社製)を用いて測定し、BET比表面積を得る。そして、得られたBET比表面積から、その粒子を真球として一次粒子径を算出することで、比表面積換算平均粒子径を求めることができる。
赤外吸収層15中のタングステン酸化物の粒子及び特定金属の粒子の含有量は、粒子サイズに基づき、走査透過型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光分析を組み合わせた方法(STEM−EDX)により求める。STEM−EDXを用いた粒子間の組成分布測定は、以下の手順で行う。
まず、熱線反射層の断面薄片をウルトラミクロトームにより作製し、マイクログリッド上に採取し、試料とする。超薄切片の厚さは100nm以下が好適であり、本例では厚さ80nmの超薄切片を作製する。超薄切片化した試料を、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM2010F)、及び、エネルギー分散型X線分光分析装置(NORAN社製PIONEER型検出器、及び、VANTAGEデジタルマイクロアナリシスシステム)を用いて計測する。透過型電子顕微鏡の加速電圧は200kVが好ましく、倍率は適宜調整することができる。本例では5万倍で測定する。電子顕微鏡の軸調整後、走査透過モードで観察を行い、特定金属及びタングステン酸化物を含有する層を確認した後、ソフトウエア(NORAN社製VISTA)を用いて検出したい元素(例えば、タングステン、並びに、白金及びパラジウム)について元素マップを取得する。元素マップの分解能は適宜調整出来るが、256×256pixel以上とする。測定時間は少量成分元素のX線ピークが200counts以上となるまで積算する。そして、測定したX線強度と、予め標準試料から求めた感度係数とを用いて、赤外吸収層15中のタングステン酸化物及び特定金属の含有量を算出することができる。
赤外吸収層15における特定金属の含有量は、変色抑制の効果が発揮される限り特に制限されないが、赤外吸収層15の全固形分に対して、1×10−5〜1×10−1質量%であることが好ましく、5×10−5〜5×10−2質量%であることがより好ましく、1×10−4〜1×10−2質量%であることが特に好ましい。1×10−5質量%以上であれば、着色抑制特定金属としての効果を十分に発揮することができ、かつ経済的に有利である。一方で、1×10−1質量%以下とすることにより、耐久性やヘイズの観点から有利である。
特定金属の粒子は、分散剤によって安定化されていることが好ましい。このとき用いられる分散剤としては、公知のものが使用可能であり、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミドポリビニルピロリドン等が挙げられる。
(バインダー)
赤外吸収層15を構成するバインダーとしては、紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましい。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート樹脂、及び、紫外線硬化型エポキシ樹脂が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としては、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート樹脂を用いることが好ましい。
紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、一般にポリエステルポリオールとイソシアネートモノマー又はプレポリマーとを反応させて得られた生成物に、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、及び、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって得られる。例えば、特開昭59−151110号公報に記載の紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂が挙げられる。紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂としては、市販品を用いてもよく、ビームセット(登録商標)575、577(荒川化学工業社製)、紫光(登録商標)UVシリーズ(日本合成化学工業社製)等を用いることができる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート樹脂としては、例えば、一般にポリエステルポリオールと2−ヒドロキシエチルアクリレートや2−ヒドロキシアクリレート等のモノマーとの反応物を挙げることができる。具体的には、特開昭59−151112号公報に記載の紫外線硬化型ポリエステルアクリレート樹脂が挙げられる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加して反応させた反応物が挙げられ、例えば、特開平1−105738号公報に記載の紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂が挙げられる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート樹脂としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。紫外線硬化型ポリオールアクリレート樹脂としては、市販品を用いてもよく、サートマーSR295、SR399(サートマー社製)、アロニックス(登録商標)シリーズ(東亞合成化学工業社製)等を用いることができる。
また、赤外吸収層15のバインダーとしては、上記紫外線硬化性樹脂と共に、紫外線硬化性モノマーを用いることができる。紫外線硬化性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル変性シリコーン化合物が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル変性シリコーン化合物」とは、シリコーン骨格の側鎖や末端等の任意の位置に(メタ)アクリル基が導入された化合物である。(メタ)アクリル基が導入される位置は、好ましくは末端(片末端または両末端)、より好ましくは両末端である。
(メタ)アクリル変性シリコーン化合物としては、例えば、TEGORad2010/Rad2011(EVONIC社製)、SQ100/SQ200(トクシキ社製)、CN990/CN9800(サートマー社製)、EBECRYL350(ダイセル・オルネックス社製)、X−22−2445/X−22−1602(両末端アクリレートシリコン)、X−22−164/X−22−164AS/X−22−164A/X−22−164B/X−22−164C/X−22−164E(両末端メタクリレートシリコン)、X−22−174ASX/X−22−174BX/KF−2012/X−22−2426/X−22−2475(片末端メタクリレートシリコン)(以上、信越化学工業社製)、BYK UV−3500/BYK UV−3570(ビックケミー・ジャパン社製)等の従来公知の材料を用いることができる。
(メタ)アクリル変性シリコーン化合物の具体例としては、(メタ)アクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリルオキシプロピル−メチルシロキサン、及び、(メタ)アクリルオキシプロピル−メチルシロキサンと、ジメチルシロキサンとの共重合体等が挙げられる。なお、これらの化合物の(メタ)アクリル基の末端には、メチル基が導入されていてもよい。1分子中の官能基数は2つ以上が好ましいが官能基数は1つでもよい。官能基当量は100〜1000が好ましく、この範囲であれば得られる赤外吸収層15のタック性や耐熱性が良好になる。
赤外吸収層15に含まれる(メタ)アクリル変性シリコーン化合物の含有量は、例えば、0.001〜3質量%である。(メタ)アクリル変性シリコーン化合物の含有量が0.001質量%以上であれば、はじき・凹み等の塗布欠陥に起因するクラックの発生や耐擦傷性の低下を十分に抑制することができる。一方、(メタ)アクリル変性シリコーン化合物の含有量が3質量%以下であれば、赤外吸収層15が割れにくく、クラックの発生も抑えられる。赤外吸収層15に含まれる(メタ)アクリル変性シリコーン化合物の含有量は、より好ましくは0.01〜1質量%であり、さらに好ましくは0.03〜0.5質量%である。
なお、赤外吸収層15を構成するバインダーとしては、紫外線硬化型樹脂以外のバインダーを用いてもよく、例えば、熱硬化型、湿気硬化型、自硬化型のバインダー等を用いてもよい。
(重合開始剤)
赤外吸収層15を構成するバインダーとして、上述の紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、活性エネルギー線照射(好ましくは紫外線照射)により、紫外線硬化型樹脂を硬化して赤外吸収層15を作製する。この場合、紫外線硬化型樹脂と共に、光重合開始剤を用いることにより、紫外線硬化型樹脂の硬化反応を短時間で行うことができる。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)チタニウム、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、及び、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。また、これらの化合物は、単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
また、赤外吸収層15を加熱により硬化して作製する場合には、熱重合開始剤を用いることによって、塗膜の硬化反応を短時間で行うことができる。熱重合開始剤は、特に限定されない。例えば、熱によって分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生する熱重合開始剤が挙げられる。熱重合開始剤としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエール、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。また、熱重合開始剤として市販品を用いることができ、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(いずれも日油社製)等を用いることができる。これらの熱重合開始剤は、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
なお、上述の重合開始剤を用いる場合には、硬化性を向上させるために公知の各種染料や増感剤を添加することも可能である。さらに、硬化促進のため、上記の光重合開始剤や熱重合開始剤を併用してもよい。この場合、光硬化の後に加熱することにより赤外吸収層15の硬化をさらに促進することができる。
重合開始剤の含有量は、特に制限されないが、硬化性成分の総量に対し、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、さらにより好ましくは0.4〜3質量%である。重合開始剤の含有量が0.1質量%以上30質量%以下であると、適度な硬度を持つ赤外吸収層15を形成できる。
(添加剤)
赤外吸収層15は、上述の各種材料とともに、添加剤等の任意成分を含んでいてもよい。添加剤としては、水素イオン捕捉剤、金属石鹸、レベリング性、撥水性、滑り性等を付与するための界面活性剤、並びに、紫外線照射による硬化性を向上させるための染料、顔料及び増感剤等が挙げられる。
水素イオン捕捉剤を用いることにより、バインダーに存在するカルボン酸又はカルボキシラートの加水分解によって生じる水素イオンを捕捉し、赤外吸収層15の水素イオンの上昇を抑制することができる。これにより、赤外遮蔽フィルムのヘイズの経持的な悪化を抑制することができる。水素イオン捕捉剤の種類は、特に制限されないが、塩基性含窒素化合物を用いることが好ましい。塩基性含窒素化合物としては、特に制限されないが、2,4,6−トリメチルピリジン、ピリジン等の複素環化合物、アミン化合物、オキシム化合物、及び、イミン化合物等が挙げられる。これらのうち、アミン化合物、オキシム化合物、及び、イミン化合物が好ましい。塩基性含窒素化合物は、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
また、金属石鹸は塗布液乾燥剤として機能する。金属石鹸の種類としては、特に制限はなく、例えば、オクチル酸金属石鹸、及び、脂肪酸金属石鹸等が挙げられる。また、これらの具体的な商品名としては、例えば、東栄化工社製のヘキソエートコバルト8%、ヘキソエート亜鉛15%、ヘキソエートジルコニウム12%、ヘキソエートマンガン6%、ヘキソエートコバルト8%等が挙げられる。金属石鹸は、赤外吸収層15を形成するための塗布液において、溶媒を除いた成分の総質量において0.1質量%以上10質量%以下含むことが好ましい。
また、界面活性剤の種類としては、特に制限はなく、例えば、フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることができる。特に、塗布液のレベリング性、撥水性、滑り性という観点から、フッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。フッ素系界面活性剤としては、例えば、DIC社製のメガファック(登録商標)Fシリーズ(F−430、F−477、F−552〜F−559、F−561、F−562等)、DIC社製のメガファック(登録商標)RSシリーズ(RS−76−E等)、AGCセイミケミカル社製のサーフロン(登録商標)シリーズ、OMNOVA SOLUTIONS社製のPOLYFOXシリーズ、社T&K TOKAのZXシリーズ、ダイキン工業社製のオプツール(登録商標)シリーズ、(株)ネオス製のフタージェント(登録商標)シリーズ(602A、650A等)等の市販品を使用することができる。アクリル系界面活性剤としては、ポリフローシリーズ(共栄社化学社製)、ニューコールシリーズ(日本乳化剤社製)、BYK(登録商標)−354(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。シリコーン系界面活性剤としては、BYK(登録商標)−345、BYK(登録商標)−347、BYK(登録商標)−348、及び、BYK(登録商標)−349(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。界面活性剤は、赤外吸収層15を形成するための塗布液において、溶媒を除いた成分の総質量において0.01質量%以上1質量%以下含むことが好ましい。
[赤外反射層]
赤外遮蔽フィルム13を構成する赤外反射層16は、屈折率の異なる層が積層された構成を有する。この屈折率の異なる層が積層された構成とは、隣接する層同士の屈折率差を比較した場合に、相対的に一方の層の屈折率が高く、他方の層の屈折率が低い構成を表す。具体的な赤外反射層16の構成としては、相対的に屈折率が高い高屈折率層と、相対的に屈折率が低い低屈折率層とが交互に積層された積層体(ユニット)を少なくとも1つ有する構成が挙げられる。
なお、「高屈折率層」及び「低屈折率層」は、隣接した2層の屈折率差を比較した場合に、屈折率の高い方の層が高屈折率層であり、低い方の層が低屈折率層である。従って、赤外反射層16における高屈折率層及び低屈折率層は、赤外反射層16を構成する各層において、隣接する2つの層の屈折率の比較により決められる。このため、これらの構成の名称は、積層体の構成や比較対象となる層との屈折率の関係により随時置き換えることが可能である。また、隣接する2層が同じ屈折率を有する場合には、この同じ屈折率を有する2層と、この2層と隣接する層との比較により随時置き換えられる。
赤外反射層16を構成する層(高屈折率層及び低屈折率層)は、高屈折率材料と低屈折率材料とにより形成されている。これらの層を形成するための材料(層形成用組成物)は、少なくともポリマーを含むことが好ましい。特に、層形成用組成物が、ポリマーとして水溶性ポリマーを含むことが好ましい。赤外反射層16は、異なる屈折率を有する各層がポリマーのみで形成されていてもよく、ポリマーとともに無機粒子を含む層により異なる屈折率を有する各層が形成されていてもよい。
赤外反射層16を形成するための各層の形成方法としては、真空蒸着やスパッタリング等のドライプロセスがよく知られているが、その原理及び装置構成から、大面積に対して均一に成膜するのは難しい。また、ドライプロセスは、成膜レートが非常に遅いため、製造コストがかかり、量産に向かない。
これに対し、層形成用組成物が水溶性ポリマーを含むことにより、層形成に塗布やスピンコート等の成膜方法を使用できる。これらの方法は簡便であり、基材の耐熱性を問わないため選択肢が広く、特に樹脂基材に対して有効である。また、塗布法であればロール・ツー・ロール法等の大量生産方式に適用できるため、コスト面やプロセス面においても有利である。
赤外反射層16は、隣接する層の界面において、各層を構成する成分が混在する混合層が形成される場合がある。このような混合層が存在する場合には、混合層中において、相対的に屈折率の高い層を構成する成分が50質量%以上である部位の集合が高屈折率層に含まれ、相対的に屈折率の低い層を構成する成分が50質量%を超える部位の集合が低屈折率層に含まれる。なお、各層に含まれる成分の種類及び量は、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により分析できる。
赤外反射層16において、層の数(総数)は、特に制限はない。好ましくは、7〜50層の範囲であり、好ましくは13〜39層である。積層数が7層以上であれば、所望の赤外反射率が得られ、13層以上であるとより高い赤外反射率が得られ、遮熱性効果が向上する。また、積層数が50層以下であれば赤外反射層16が割れ難く、端部剥がれも抑制できる等十分な耐候性が得られる点で優れている。
赤外反射層16における隣接した層界面での反射は、層間の屈折率差に依存する。屈折率差が大きいほど、層界面での反射率が高まる。また、単層膜において、層表面での反射光と層底部での反射光との光路差が[n・d=λ/4]で表される関係になると、この特定の波長λの反射を、位相差によって強めることができる。なお、nは屈折率、dは層の物理膜厚、n・dは光学膜厚、λは波長である。この光路差を利用することで、反射を制御できる。
また、赤外反射層16において、少なくとも1組の隣接層の光学膜厚差が、100nm以上であることが好ましい。また、赤外反射層16において、他の一層を介して隣接する層同士の光学膜厚差が40nm以下であることが好ましい。
すなわち、赤外反射層16において、特定の層とこの層に隣接する層とは、光学膜厚差が大きい方が好ましい。一方、特定の層と、この特定の層から2層目の層(特定の層から他の一層を介して隣接する層)とは、光学膜厚差が小さい方が好ましい。隣接する層同士の光学膜厚差が大きいことにより、より少ない層数で高い反射率を得ることができる。また、2層毎の光学膜厚差が小さいことにより、垂直入射光と斜方入射光の色調差を小さくすることができる。
赤外反射層16において、相対的に高い屈折率を有する層の屈折率は、屈折率が1.70〜2.50であることが好ましい。さらに、好ましくは、屈折率が1.80〜2.20であり、1.90〜2.20であることがより好ましい。また、相対的に低い屈折率を有する層は、屈折率が1.10〜1.60であることが好ましい。さらに、好ましくは1.30〜1.55であり、さらに好ましくは1.30〜1.50である。
赤外反射層16の厚さ、特に限定されず、好ましくは10μmm以下、より好ましくは5.5μmm以下、特に好ましくは1.0〜4.0μmmの範囲である。赤外反射層16の膜厚が10μmm以下、特に5.5μmm以下であれば、合わせガラス10の作製が容易となる。また、赤外反射層16を構成する各層の1層あたりの厚さ(乾燥後の厚さ)は、20〜1000nmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましく、100〜300nmであることがさらにより好ましく、100〜200nmであることが特に好ましい。各層の厚さは、同じでもよく、また、異なっていてもよい。また、各層の1層あたりの厚さは、例えば、製造した赤外反射層16を切断し、その切断面を電子顕微鏡により観察することで確認することができる。この際、2つの層間の界面を明確に観測することができない場合には、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)表面分析装置により得た厚さ方向のXPSプロファイルにより界面を決定することができる。
(ポリマー;構成1)
赤外反射層16をポリマーのみで作製する場合(構成1)には、互いに屈折率の異なる少なくとも2種のポリマーを用いて、高屈折率材料と低屈折率材料とからなる少なくとも2種の層形成用組成物を作製する。この場合には、各層の層形成用組成物が類似の流動性(たとえば溶融粘度等)を有し、同時重層塗布又は多層押出成形を実施できる好適な組み合わせを選択することが望ましい。各層において、ポリマーの含有量は、いずれも、40〜100質量%、より好ましくは60〜97質量%である。
赤外反射層16をポリマーのみで形成する場合には、使用するポリマーとして、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びその異性体(例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、及び2,3−PEN)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリイミド(例えば、ポリアクリル酸イミド)、ポリエーテルイミド、アタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート(例えば、ポリイソブチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、及びポリメチルメタクリレート)、ポリアクリレート(例えば、ポリブチルアクリレート及びポリメチルアクリレート)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、シンジオタクチックポリ−α−メチルスチレン、シンジオタクチックポリジクロロスチレン、これらの任意のポリスチレンから成るコポリマー及びブレンド、セルロース誘導電体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、及びニトロセルロース)、ポリアルキレンポリマ(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、及びポリ(4−メチル)ペンテン)、フッ素化ポリマー(例えば、ペルフルオロアルコキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレン−プロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、及びポリクロロトリフルオロエチレン)、塩素化ポリマー(例えば、ポリ塩化ビニリデン及びポリ塩化ビニル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエーテルアミド、イオノマー樹脂、エラストマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びネオプレン)、並びに、ポリウレタン等が挙げられる。
また、PENのコポリマー、ポリアルキレンテレフタレートのコポリマー、スチレンコポリマー、及び、4,4’−二安息香酸及びエチレングリコールのコポリマー等が挙げられる。
PENのコポリマーとしては、例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、及び/若しくは、2,3−ナフタレンジカルボン酸又はそれらのエステルと、(a)テレフタル酸若しくはそのエステル、(b)イソフタル酸若しくはそのエステル、(c)フタル酸若しくはそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、及び/又は、(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)とのコポリマーが挙げられる。
ポリアルキレンテレフタレートのコポリマーとしては、例えば、テレフタル酸若しくはそのエステルと、(a)ナフタレンジカルボン酸若しくはそのエステル、(b)イソフタル酸若しくはそのエステル、(c)フタル酸若しくはそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、及び/又は、(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)とのコポリマーが挙げられる。
スチレンコポリマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエンコポリマ及びスチレン−アクリロニトリルコポリマーが挙げられる。
更に、個々の層にはそれぞれ、2つ以上の上記のポリマー又は、コポリマーのブレンド(例えば、SPSとアタクチックポリスチレンとのブレンド)が含まれていてもよい。
上記のうち、同時重層塗布に適しており、赤外遮蔽フィルム13として好適な屈折率を示す材料であることから、高屈折率材料としてポリアルキレンテレフタレートや、ポリエチレンナフタレートを用いることが好ましい。また、低屈折率材料としてポリメタクリレートや、ポリエチレンナフタレートのコポリマーを用いることが好ましい。特に、高屈折率材料としてポリエチレンテレフタレートを用い、低屈折率材料としてポリメチルメタクリレートを用いることが好ましい。
(ポリマー;構成2)
赤外反射層16の各層を、ポリマーと無機粒子とから作製する場合(構成2)には、ポリマーとして水溶性ポリマーを用い、この水溶性ポリマーに無機粒子を分散させて、高屈折率材料と低屈折率材料とからなる、少なくとも2種の層形成用組成物を作製する。
上述の赤外反射層16をポリマーのみで形成する場合には、各層の屈折率差がそれほど大きくならない場合がある。このような場合には、反射性能を高めるために、例えば100層以上の積層数が必要となる。一方、ポリマーとともに無機粒子を用いると、各層の屈折率差を向上させることができるため、赤外反射層16の積層数を減らすことが可能となる。
(水溶性ポリマー)
水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等の酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩、ゼラチン、並びに下記の増粘多糖類が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体が挙げられる。これらの水溶性ポリマーは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。ポリビニルアルコールの市販品としては例えば、クラレ社製PVA103、PVA235、ゼラチンの市販品としては、例えば新田ゼラチン社製HBC−P20、社ニッピ製AP−270が挙げられる。
ポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1000以上であることが好ましく、平均重合度が1500〜5000であることが特に好ましい。また、ケン化度は、70〜100モル%であることが好ましく、80〜99.9モル%であることが特に好ましい。このようなポリビニルアルコールとしては、例えば、日本酢ビ・ポバール社製のJP−45(重合度4500、ケン化度88モル%)等を用いることもできる。
変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。また、酢酸ビニル系樹脂(例えば、クラレ社製「エクセバール」)、ポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させて得られるポリビニルアセタール樹脂(例えば、積水化学工業社製「エスレック」)、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール(例えば、クラレ社製「R−1130」)、分子内にアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂(例えば、日本合成化学工業社製「ゴーセファイマー(登録商標)Z/WRシリーズ」)等も変性ポリビニルアルコールに含まれる。
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平1−206088号公報に記載のアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報及び特開昭63−307979号公報に記載のビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、特開平7−285265号公報に記載の水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載のポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載の疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基やカルボニル基、カルボキシル基等の反応性基を有する反応性基変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載の第1級〜第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖又は側鎖中に有するポリビニルアルコールが挙げられ、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%であることが好ましく、0.2〜5モル%であることがより好ましい。
エチレン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開2009−107324号公報、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のものが使用できる。又は、エクセバール(商品名:社クラレ製)等の市販品を使用してもよい。
ビニルアルコール系ポリマーとしては、エクセバール(商品名:社クラレ製)やニチゴーGポリマー(商品名:日本合成化学工業社製)等が挙げられる。
なお、上述のポリビニルアルコールは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ポリビニルアルコールは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
ポリビニルアルコールの重量平均分子量は、1000〜200000であることが好ましく、3000〜60000であることがより好ましい。なお、「重量平均分子量」の値は、静的光散乱法、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)、TOFMASS等によって測定した値を採用することができる。水溶性ポリマーの重量平均分子量が上記範囲内であると、塗布法の適用が可能となり、生産性が向上する。
水溶性ポリマーの含有量は、層の全固形分に対して、5〜75質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。水溶性ポリマーの含有量が5質量%以上であると、湿式製膜法で層を形成する場合に、塗布して得られた塗膜の乾燥の際におきやすい、膜面の乱れによる透明性の劣化を抑制できる。一方、水溶性ポリマーの含有量が75質量%以下であると、層中に無機粒子を含有する場合に好適な含有量となる。
また、水溶性ポリマーを硬化させるために、硬化剤を使用することもできる。硬化剤としては、ホウ酸及びその塩、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬、ホウ砂等が挙げられる。各層における硬化剤の含有量は、層の固形分に対して、1〜10質量%であることが好ましい。
また、塗布時の表面張力を調整するための界面活性剤を含んでもよい。ここで、界面活性剤としてアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤を用いることが好ましく、1分子中に炭素数8〜30の疎水性基とスルホン酸基又はその塩を含有するものが好ましい。各層における界面活性剤の含有量は、固形分に対して、0.01〜5質量%であることが好ましい。界面活性剤としては、例えば、ニューコールシリーズ(日本乳化剤社製)等を用いることができる。
(無機粒子)
赤外反射層16は、上述の水溶性ポリマーとともに、無機酸化物粒子、金属化合物粒子、及び、金属酸化物粒子等の無機粒子を含んで構成されていてもよい。無機粒子を含有することにより、各層の屈折率の調整が容易となる。このため、各層の屈折率差を大きくすることも可能となり、積層数を低減して赤外反射層16を薄くすることができる。また、赤外反射層16の層数を減らすことで、生産性が向上し、積層界面での散乱による透過率の低下を抑制することができる。
金属酸化物粒子としては、例えば、Ti、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi及び希土類金属からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属の酸化物を用いることができる。
また、無機酸化物粒子及び金属化合物粒子としては、二酸化ケイ素(SiO)、フッ化マグネシウム(MgF)等が挙げられる。
高い屈折率を得るためには、無機粒子として金属酸化物粒子を含むことが好ましい。特に、金属酸化物粒子として酸化チタンを含むことが好ましい。酸化チタンとともに、酸化チタン以外の金属酸化物粒子が含まれていてもよい。この場合、高い屈折率を得るためには、金属酸化物粒子として、酸化チタンを最も多い比率で有していることが好ましい。好ましくは、全粒子中において、酸化チタンを50質量%以上含むことが好ましく、さらに、酸化チタンを70質量%以上含むことが好ましく、酸化チタンを80質量%以上含むことがより好ましい。酸化チタンとしては、透明でより屈折率の高い層を形成することができるため、二酸化チタンを用いることが好ましく、特にルチル型(正方晶形)酸化チタン粒子を用いることが好ましい。
金属酸化物粒子の含有量としては、層の固形分100質量%に対して、熱線遮蔽性や色ムラ低減の観点から、20〜80質量%であることが好ましく、30〜75質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることがさらに好ましい。
金属酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化亜鉛、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル(Ta)、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズ、及び、酸化鉛、並びに、これらの複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、及び、アルミニウム・マグネシウム酸化物(MgAl)等が挙げられる。
また、希土類酸化物としては、例えば、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等を用いることができる。
金属酸化物粒子としては、屈折率が1.90以上の金属酸化物粒子を用いることが好ましい。屈折率が1.90以上の金属酸化物粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等を挙げることができる。
また、金属酸化物粒子として、金属酸化物粒子の表面にアルミニウム、珪素、ジルコニウム等が立体的障壁のある島状に担持した構成を用いることができる。例えば、酸化チタン粒子が、含ケイ素水和酸化物で被覆されたコアシェル粒子であってもよい。コアシェル粒子は、コアとなる金属酸化物粒子(酸化チタン粒子)の表面に、含ケイ素水和酸化物のシェル層が被覆した構造を有する。このようなコアシェル粒子を用いることで、シェル層の含ケイ素水和酸化物と水溶性ポリマーとの相互作用により、隣接する層界面での混合が抑制される。ここで、「被覆」とは、酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部に、含ケイ素水和酸化物が付着した状態を示す。すなわち、金属酸化物粒子として用いられる酸化チタン粒子の表面が、完全に含ケイ素水和酸化物で覆われた状態でもよく、酸化チタン粒子の表面の一部に含ケイ素水和酸化物が付着した状態でもよい。コアシェル粒子の屈折率は、含ケイ素水和酸化物の被覆量に影響を受けるため、酸化チタン粒子の表面の一部が含ケイ素水和酸化物で被覆されていることが好ましい。以下ではこのような被覆された酸化チタンのコアシェル粒子を「シリカ付着二酸化チタンゾル」とも称する。酸化チタン粒子を含ケイ素水和酸化物で被覆する方法としては、従来公知の方法により製造することができ、例えば、特開平10−158015号公報、特開2000−204301号公報、特開2007−246351号公報等に記載された方法を適用することができる。
金属酸化物粒子の体積平均粒径は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。特に、ヘイズ値が低く、可視光透過率に優れることから、体積平均粒径が1〜30nmであることが好ましく、1〜20nmであることがより好ましい。
なお、ここで体積平均粒径は、粒子そのものを観察する方法により、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、平均した値である。粒径の測定には、例えば、レーザー回折散乱法、動的光散乱法、又は、電子顕微鏡を用いて観察する方法や、層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法を用いる。そして、これらの方法により測定された1000個の任意の粒子について、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子が、それぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される値を、上述の体積平均粒径とする。
屈折率の低い層を形成するためには、無機粒子として無機酸化物粒子及び金属化合物粒子を用いることが好ましい。層における無機酸化物粒子及び金属化合物粒子の含有量としては、層の固形分に対して、屈折率の観点から、5〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。無機酸化物粒子及び金属化合物粒子は、その平均粒径が3〜100nmであることが好ましい。一次粒子の状態で分散された粒子の一次粒子の平均粒径(塗布前の分散液状態での粒径)は、3〜50nmであるのがより好ましく、3〜40nmであるのがさらに好ましく、3〜20nmであるのが特に好ましく、4〜10nmであるのが最も好ましい。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。層中の粒子の平均粒径は、粒子自体を、又は、層の断面や表面に現れた粒子を、電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求める。ここで個々の粒子の粒径は、粒子の投影面積と等しい面積の円を仮定したときの、円の直径(面積円相当径)である。
また、屈折率の低い層を形成する場合、無機粒子として二酸化ケイ素を用いることが好ましく、特にコロイダルシリカを用いることが特に好ましい。コロイダルシリカは、珪酸ナトリウム等の酸による複分解や、イオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを、加熱熟成して得られる。コロイダルシリカは、例えば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、及び、国際公開第94/26530号等に記載されている製法及び構成を適用することができる。コロイダルシリカは、その表面がカチオン変性されていてもよく、Al、Ca、Mg又はBa等で処理されていてもよい。
このようなコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、日産化学工業(株)から販売されているスノーテックスシリーズ(スノーテックスOS、OXS、S、OS、20、30、40、O、N、C等)が挙げられる。
[基材]
基材14としては、種々の樹脂フィルムを用いることができ、例えば、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができる。好ましくはポリエステルフィルムを用いる。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸等を挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオール等を挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性等の点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、及びこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
基材14の厚みは、10〜300μm、特に20〜150μmであることが好ましい。また、基材14は、2枚重ねたものであってもよく、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。さらに、基材14が、上述の赤外反射層16の機能を備える構成であってもよい。例えば、多層押出成形により作製した屈折率の異なる複数の層の積層体を、基材14とすることができる。
[透明基体]
第1透明基体11及び第2透明基体12としては、公知のガラス板を用いることができ、例えばクリアガラス板、グリーンガラス板、UVグリーンガラス板等の無機透明ガラス板、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板等のいわゆる有機透明ガラス板を用いることができる。
特に、第1透明基体11及び第2透明基体12のうち、赤外遮蔽フィルム13の光線出射側となるガラス基板についてはUVグリーンガラス板とすることが好ましい。このような構成とすることで、合わせガラス10の光学特性が良好になりやすい。UVグリーンガラス板とは、酸化物換算でSiOを68〜74質量%、Feを0.3〜1.0質量%、かつFeOを0.05〜0.5質量%含有するものであって、波長350nmの紫外線透過率が1.5%以下、かつ550〜1700nmの領域に透過率の極小値を有する紫外線吸収グリーンガラスである。
第1透明基体11及び第2透明基体12の厚さは、特に限定されるものではないが、1〜4mmが好ましく、1.8〜2.5mmがより好ましい。なお、第1透明基体11及び第2透明基体12には、撥水機能、親水機能、防曇機能等を付与するコーティングが施されていてもよい。
[接着層]
接着層は、第1透明基体11及び第2透明基体12と赤外遮蔽フィルム13とを接着するために設けられ、例えば熱可塑性樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物の接着剤から形成される。接着層の厚さは特に限定されず、例えば0.1〜1.5mmが好ましく、0.2〜1.0mmがより好ましい。
接着層を形成するための接着剤としては、従来から合わせガラスの用途に用いられている熱可塑性樹脂が挙げられ、例えば可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体系樹脂等が挙げられる。特に、紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤又は、シリコーン系粘着剤が好ましい。更に、粘着特性、コスト、剥離強さの観点から、溶剤系のアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。具体的には可塑性ポリビニルブチラール〔積水化学工業社製、三菱モンサント社製等〕、エチレン−酢酸ビニル共重合体〔デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン〕、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体〔東ソー社製、メルセンG〕等が挙げられる。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合されていてもよい。
[赤外遮蔽フィルムの製造方法]
赤外遮蔽フィルム13の製造方法は、基材14上に赤外吸収層15を形成する工程と、赤外反射層16を形成する工程とを有する。
(赤外吸収層の形成)
赤外吸収層15は、上述のタングステン酸化物、特定金属、及び、バインダーを含む赤外吸収層形成用の塗布液を、基材14の表面に塗布して形成する。また、塗布液に含まれるバインダーが光や熱によって硬化する硬化性樹脂を含む場合には、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射や、加熱、触媒等により、塗膜を硬化することによって、赤外吸収層を形成する。
(溶媒)
塗布液の調製に使用する溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、又は、その混合溶媒が好ましい。有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、及び、グリコールエーテル類等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
溶媒の含有量は、特に制限されないが、一般的には、塗布液の総質量に対して10〜80質量%程度であり、より好ましくは15〜60質量%であり、さらに好ましくは20〜40質量%である。
(塗布液の調製方法)
塗布液は、各成分を混合することによって調整する。混合の順序、混合方法等は特に限定されず、撹拌しながら各成分を順次加えて混合してもよく、撹拌しながら一度に混合してもよい。
塗布液を調製する際、タングステン酸化物とそれ以外の成分の固形分との配合比(重量比)を調節することによって、硬化後の赤外吸収層15のタングステン酸化物の含有割合(質量%)を容易に制御することができる。例えば、硬化後の赤外吸収層15におけるタングステン酸化物含量を、固形分中の15〜30質量%の範囲に制御するためには、タングステン酸化物とそれ以外の固形分との質量比率が1:2.6〜6.0となるように各成分を配合することが好ましい。
(塗布及び硬化方法)
赤外吸収層15を形成するための塗布液を塗布する方法については、特に制限はなく、公知の手法、例えば、ワイヤーバーによるコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング等の方法を用いることができる。また、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーター等の連続塗布装置も適用することができる。
また、塗布液の乾燥条件は、特に制限されない。例えば、乾燥温度は、70〜110℃であることが好ましい。また、乾燥時間は、30秒〜5分であることが好ましい。
基材上に塗布液を塗布して得られた塗膜に、紫外線を照射して硬化させる。この際の紫外線の照射波長、照度、光量等の条件は、使用するバインダーや重合開始剤の種類に合わせて適宜調整する。例えば、紫外線ランプを用いる場合、その照度は50〜1500mW/cmが好ましく、照射エネルギー量は50〜1500mJ/cmが好ましい。
(赤外反射層の形成)
赤外反射層16の形成は、赤外反射層16の各層をポリマーのみで形成する場合(構成1)と、赤外反射層16の各層をポリマーと無機粒子とから形成する場合(構成2)とで、異なる方法を用いることができる。
(構成1)
構成1の場合には、屈折率の異なるポリマーを用いた層形成用組成物を複数用意し、この層形成用組成物を、例えばロールコート法又は溶融押出し法を用いて積層することで、赤外反射層16を作製することができる。ロールコート法及び溶融押出し法は、組み合わせて使用してもよい。
ロールコート法では、例えば、ポリマーを塗布に適した粘度になるように有機溶媒に溶解させ、必要に応じて各種添加剤を添加して層形成用組成物の溶液を作製し、ロールを用いてこの溶液を塗布する。その際、それぞれ屈折率の異なる層形成用組成物の溶液を2種以上準備し、交互にロールコートすることで積層体を形成できる。
溶融押出し法では、例えば、ポリマーを200〜300℃に加熱して、押出しに適当な粘度になるように溶融させ、必要に応じて各種添加剤を添加して層形成用組成物を作製する。そして、この層形成用組成物を押出し機によって押し出す。次に、押し出されたポリマーの膜を、ガラス転移温度以上かつ溶融押出温度以下の表面温度を有する冷却ロールで巻き取り、搬送することにより冷却固化し、積層体を得る。その後、この積層体を100〜110℃程度の温度まで加熱してから二方向に延伸してもよい。
層形成用組成物に用いる有機溶媒としては、特に制限はない。例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸2−メトキシエチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。このうち、酢酸エチルが好ましく、酢酸2−メトキシエチルがより好ましい。
(構成2)
構成2の場合には、まず、ポリマーに無機粒子を分散させた層形成用組成物の塗布液を調製する。このとき、それぞれ屈折率が異なる層形成用組成物の塗布液を、複数調整する。そして、これらの塗布液を、例えば、水系同時重層塗布や多層押出成形により、基材14上に塗布して積層する。さらに、積層塗布された塗布膜を、セット(積層した塗布液をいったん冷却すること)した後、乾燥することで積層体を形成できる。
層形成用組成物の塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、又は、その混合溶媒が好ましい。有機溶媒としては、上記構成1と同様のものを挙げることができる。環境面、操作の簡便性等から、塗布液の溶媒としては、特に水、又は、水とメタノール、エタノール、若しくは酢酸エチルとの混合溶媒が好ましい。
[合わせガラスの製造方法]
合わせガラス10は、例えば、第1透明基体11、接着シート(接着層)、赤外遮蔽フィルム13、接着シート(接着層)、及び第2透明基体12をこの順に重ね合わせて積層体とした後、この積層体に対して予備圧着、本圧着を行うことにより製造することができる。
また、接着シート(接着層)、赤外遮蔽フィルム13、及び、接着シート(接着層)をこの順に重ね合わせて、例えば温度40〜80℃、圧力0.1〜1.0MPaの加熱加圧により予備積層体とした後、この予備積層体の両主面に第1透明基体11及び第2透明基体12を重ね合わせて積層体とし、この積層体に対して予備圧着、本圧着を行うことにより製造してもよい。
予備圧着は、構成部材間の脱気を目的とするものであり、例えば積層体を排気系に接続したゴムバッグのような真空バッグに入れ、内部の圧力が100kPa以下、好ましくは1〜36kPa程度となるように脱気しながら、70〜130℃で10〜90分保持することにより行うことができる。
温度を70℃以上とすることで、予備圧着を十分に行うことができる。一方、温度を130℃以下とすることで、赤外遮蔽フィルム13の過度な熱収縮によるクラックの発生を抑えることができる。より効果的に予備圧着を行う観点から、温度は90℃以上とすることが好ましく、110℃以上とすることがより好ましい。
また、時間を10分以上とすることで、予備圧着を十分に行うことができる。一方、時間を90分以下とすることで、生産性の低下を抑制することができ、また赤外遮蔽フィルム13の過度な熱収縮によるクラックの発生を抑えることができる。圧着時間は、より効果的かつ効率的に予備圧着を行う観点から、20〜60分が好ましい。
本圧着は、第1透明基体11及び第2透明基体12と赤外遮蔽フィルム13とを接着シート(接着層)により十分に接着するために行う。例えば、予備圧着により得られた予備圧着体をオートクレーブに入れ、温度120〜150℃、圧力0.98〜1.47MPaとして行うことができる。本圧着は、130〜140℃、圧力1.1〜1.4MPaで行うことがより好ましい。また、圧着時間は、30〜90分が好ましく、45〜75分がより好ましい。本圧着の温度、圧力、又は、時間を上記範囲内とすることで、十分な接着を行うことができる。また、赤外遮蔽フィルム13の過度な熱収縮によるクラックの発生を抑制し、生産性等も良好とすることができる。
以下、実施例を挙げて合わせガラスを具体的に説明するが、合わせガラスはこれらに限定されるものではない。
〈試料101の合わせガラスの作製〉
屈折率の異なる2種類の熱可塑性樹脂を積層することにより赤外反射層としての機能を有する基材を作製した後、この基材上に赤外吸収層を形成し、赤外遮蔽フィルムを作製した。そして、この赤外遮蔽フィルムを用いて、試料101の合わせガラスを作製した。
[基材(赤外反射層)の作製]
以下の方法で、2種類の熱可塑性樹脂を積層形成し、赤外反射層としての機能を有する基材を作製した。
まず、光学特性の異なる2種類の熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを準備した。
熱可塑性樹脂Aとして、固有粘度が0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。この熱可塑性樹脂Aは結晶性樹脂であり、フィルム化した後の面内平均屈折率は1.66、融点256℃であった。
熱可塑性樹脂Bとして全グリコール成分に対してスピログリコール25mol%、シクロヘキサンジカルボン酸30mol%共重合したエチレンテレフタレート(PE/SPG・T/CHDC)を用いた。なお、この熱可塑性樹脂Bの固有粘度は0.72の非晶性樹脂で、フィルム化した後の面内平均屈折率は1.55であった。
準備した熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂Bを、それぞれ2台の単軸押出機に投入し、280℃で溶融させて混練した。次に、それぞれFSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプを用いて、光学厚さの比が熱可塑性樹脂A/熱可塑性樹脂B=1になるように計量しながら、スリット数301個のスリットプレートを2枚用いた構成である601層積層装置に合流させた。これにより、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとが厚さ方向に交互に601層積層されたキャストフィルムを作製した。キャストフィルムを作製する方法は、特開2007−307893号公報の段落[0053]〜[0056]に記載の方法に準じて行った。
作製したキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸して、一軸延伸フィルムを作製し、その後一旦冷却した。さらに、冷却後の一軸延伸フィルムの両面に、空気中でコロナ放電処理を施し、一軸延伸フィルムの濡れ張力を55mN/mとした。
次に、一軸延伸フィルムの処理面に[ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂/ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂/数平均粒子径100nmのシリカ粒子]からなる積層形成膜塗液を塗布し、接着層を形成した。
接着層を形成した一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.5倍延伸した。テンター内において延伸フィルムを240℃の熱風で熱処理し、同温度条件で幅方向に2%の弛緩処理を行なった。さらに、100℃まで急冷した後に幅方向に5%の弛緩処理を行い、その後巻き取った。
以上の工程により、赤外反射層としての機能を有する基材を作製した。
[赤外吸収層の作製]
以下の方法で、赤外吸収層を形成するための塗布液を調製した。そして、この塗布液を上述の基材上に塗布して、赤外吸収層を作製した。
(塗布液の調製)
下記の材料を混合して、赤外吸収層を形成するための塗布液を調製した。
・YMF−02A(18質量%Cs0.33WO分散液、分散剤10質量%、平均粒径50nm、住友金属鉱山社):315質量部
・アロニックス(登録商標)M−305(3、4官能アクリレート、3官能成分60質量%、東亞合成社製):196質量部
・EBECRYL(登録商標)350(2官能シリコンアクリレート、ダイセル・オルネクス社製)MIBK(メチルイソブチルケトン)希釈液(1質量%):18質量部
・ヘキソエートコバルト8%(金属石鹸、東栄化工社製):3質量部
・Irgacure(登録商標)819(光重合開始剤、BASFジャパン社製):13質量部
・メガファック(登録商標)F−552(界面活性剤、DIC社製)MIBK(メチルイソブチルケトン)希釈液(1質量%):9質量部
・MIBK(メチルイソブチルケトン):446質量部
(赤外吸収層の作製)
上述の基材上に調製した塗布液を、グラビアコーターで塗布し、90℃で1分間乾燥した。次に、紫外線ランプを用いて、照度100mW/cm、照射量0.2J/cm、酸素濃度200ppmの条件で塗膜の基材から遠い面側から紫外線を照射することにより塗膜を硬化させて赤外吸収層を形成した。赤外吸収層の厚さは可視光透過率が73%になるよう適宜調整した。
[合わせガラスの作製]
上述の方法で作製した赤外反射層(基材)と赤外吸収層とを有する赤外遮蔽フィルムを、厚さ0.38mmの2枚のポリビニルブチラール(PVB)フィルム(接着シート)の間に挟持し、さらに厚さが2mmの2枚のガラス板を用い、次のようにして、合せガラスを作製した。
ガラス板(第1透明基体)、PVBフィルム(接着シート)、赤外遮蔽フィルム、PVBフィルム(接着シート)、ガラス板(第2透明基体)を順次積載し、ガラス板のエッジ部からはみ出したPVBフィルムと赤外遮蔽フィルムの余分な部分を切断及び除去した後、150℃に加熱したオートクレーブ中で30分、加圧脱気して合せ処理した。これにより、赤外遮蔽フィルムにシワやクラックの発生がなく、良好な外観を有する合わせガラスを作製した。
〈試料102の合わせガラスの作製〉
試料101の合わせガラスの作製において、赤外吸収層を形成するための塗布液を下記の方法で作製した以外は、試料101と同様の方法で試料102の合わせガラスを作製した。
(赤外吸収層用の塗布液の調製)
下記の材料を混合して、赤外吸収層を形成するための塗布液を調製した。
・YMF−02A(18質量%Cs0.33WO分散液、分散剤10質量%、平均粒径50nm、住友金属鉱山社):315質量部
・4質量%(Pt濃度)のPt−PVPコロイド溶液(田中貴金属社製、分散媒;エタノール):0.035質量部
・アロニックス(登録商標)M−305(3、4官能アクリレート、3官能成分60質量%、東亞合成社製):196質量部
・EBECRYL(登録商標)350(2官能シリコンアクリレート、ダイセル・オルネクス社製)MIBK(メチルイソブチルケトン)希釈液(1質量%):18質量部
・ヘキソエートコバルト8%(金属石鹸、東栄化工社製):3質量部
・Irgacure(登録商標)819(光重合開始剤、BASFジャパン社製):13質量部
・メガファック(登録商標)F−552(界面活性剤、DIC社製)MIBK(メチルイソブチルケトン)希釈液(1質量%):9質量部
・MIBK(メチルイソブチルケトン):446質量部
〈試料103の合わせガラスの作製〉
下記の方法で、基材上に赤外吸収層と赤外反射層とを形成し、赤外遮蔽フィルムを作製した。そして、この赤外遮蔽フィルムを用いて合わせガラスを作製した。
[赤外吸収層の作製]
上述の試料102と同様の方法で赤外吸収層を形成するための塗布液を調製した。そして、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、試料102と同様の方法で塗布液の塗布及び硬化を行い、赤外吸収層を作製した。
[赤外反射層の作製]
下記の方法で第1塗布液(低屈折率層塗布液)と第2塗布液(高屈折率層塗布液)とを調製した。そして、この第1塗布液(低屈折率層塗布液)と第2塗布液(高屈折率層塗布液)とを、基材の赤外吸収層と反対側の面に、同時重層塗布して赤外反射膜を形成した。
(第1塗布液;低屈折率層塗布液の調製)
コロイダルシリカ(日産化学社製スノーテックスOXS、粒子径4〜6nm)の10質量%水溶液650部に、ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA103、ケン化度:98.0〜99.0mol%、重合度:300)の4質量%水溶液30部、ホウ酸の3質量%水溶液150部をそれぞれ混合した後、純水で1000部に仕上げて、酸化ケイ素分散液を調製した。
次に、上記酸化ケイ素分散液を45℃に加熱し、撹拌しながら、ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA−235、ケン化度:87.0〜89.0mol%、重合度:3500)の4質量%水溶液750部と、アニオン性界面活性剤(日油製ラピゾールA30)の1質量%水溶液を40部とを混合し、低屈折率層塗布液を調製した。低屈折率層用塗布液の粘度は45℃で30mPa・s(30cP)であった。
(第2塗布液;高屈折率層塗布液の調製)
・酸化チタン粒子の調製
二酸化チタン水和物を水に懸濁させた水性懸濁液(TiO濃度100g/L)10Lに、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10モル/L)30Lを撹拌下で混合し、90℃に昇温し、5時間熟成した後、塩酸で中和、濾過、水洗した。なお、上記処理において、二酸化チタン水和物は、公知の手法に従って硫酸チタン水溶液を熱加水分解して得られたものを用いた。
塩基処理チタン化合物をTiO濃度20g/Lになるよう純水に懸濁させ、撹拌下クエン酸をTiO量に対し0.4モル%加えて昇温した。液温が90℃になったところで、濃塩酸を塩酸濃度30g/Lになるように加え、液温を維持しつつ3時間撹拌した。
得られた酸化チタンゾル液のpH及びゼータ電位を測定したところ、pHは1.4、ゼータ電位は+40mVであった。さらに、マルバーン社製ゼータサイザーナノにより粒径測定を行ったところ、平均粒径は35nm、単分散度は16%であった。また、酸化チタンゾル液を105℃で3時間乾燥させて粒子紛体を得て、日本電子データム社製JDX−3530型を用いてX線回折の測定を行い、ルチル型粒子であることを確認した。また、粒子紛体の体積平均粒径は10nmであった。
次に、体積平均粒径10nmのルチル型酸化チタン粒子を含む20.0質量%酸化チタンゾル水系分散液1kgに純水4kgを添加し、10.0質量%酸化チタンゾル水系分散液を作製した。
さらに、上記の10.0質量%酸化チタンゾル水系分散液0.5kgに純水2kgを加えた後、90℃に加熱した。次に、SiO濃度が2.0質量%のケイ酸溶液1.3kgを徐々に添加し、ついでオートクレーブ中、175℃で18時間加熱処理を行い、さらに濃縮して、ルチル型構造を有する酸化チタンで、被覆層がSiOである、20質量%の粒子を得た。
・高屈折率層塗布液の調製
上記で得られた20.0質量%の酸化チタン粒子ゾル水系分散液28.9部と、1.92質量%のクエン酸水溶液10.5部と、10質量%のポリビニルアルコール(PVA103、クラレ社製)水溶液2.0部と、3質量%のホウ酸水溶液9.0部を混合して、酸化チタン粒子分散液を調製した。
次に、酸化チタン分散液を撹拌しながら、純水16.3部と、4.0質量%のポリビニルアルコール(PVA235、クラレ社製)水溶液41.9部とを混合した。さらに、アニオン性界面活性剤(日油製ラピゾールA30)の1質量%水溶液を0.5部添加し、最後に純水で150部に仕上げて、高屈折率層塗布液を調製した。高屈折率層用塗布液の粘度は45℃で20mPa・s(20cP)であった。
(赤外遮蔽フィルムの作製)
スライドホッパー塗布装置を用い、上述の基材上に、調製した低屈折率層塗布液及び高屈折率層塗布液を45℃に保温しながら、同時重層塗布を行った。その直後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を5分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて赤外反射膜を形成し、赤外遮蔽フィルムを作製した。赤外反射膜は、光学膜厚(高屈折率層:120nm、低屈折率層:150nm)で、それぞれ交互に低屈折率層(L1〜L6)が9層、高屈折率層(H1〜H5)が8層、計17層となるように作製した。
[合わせガラスの作製]
上述の方法で作製した赤外遮蔽フィルムを、厚さ0.38mmの2枚のポリビニルブチラール(PVB)フィルムの間に挟持し、さらに厚さが2mmの2枚のガラス板を用い、次のようにして、合せガラスを作製した。
ガラス板(第1透明基体)、PVBフィルム(接着シート)、赤外遮蔽フィルム、PVBフィルム(接着シート)、ガラス板(第2透明基体)を順次積載し、ガラス板のエッジ部からはみ出したPVBフィルムと赤外遮蔽フィルムの余分な部分を切断及び除去した後、150℃に加熱したオートクレーブ中で30分、加圧脱気して合せ処理した。作製後の赤外遮蔽フィルムにはシワやクラックがなく、良好な外観を有する合わせガラスが得られた。
〈試料104の合わせガラスの作製〉
赤外吸収層を形成するための塗布液を下記のように調製した以外は、上述の試料103と同様の方法で、試料104の合わせガラスを作製した。
(赤外吸収層用の塗布液の調製)
・17質量%ITOエタノール分散液(三菱マテリアル電子化成社製):315質量部
・4質量%(Pt濃度)のPt−PVPコロイド溶液(田中貴金属社製、分散媒;エタノール):0.035質量部
・アロニックス(登録商標)M−305(3、4官能アクリレート、3官能成分60質量%、東亞合成社製):196質量部
・EBECRYL(登録商標)350(2官能シリコンアクリレート、ダイセル・オルネクス社製)MIBK(メチルイソブチルケトン)希釈液(1質量%):18質量部
・ヘキソエートコバルト8%(金属石鹸、東栄化工社製):3質量部
・Irgacure(登録商標)819(光重合開始剤、BASFジャパン社製):13質量部
・メガファック(登録商標)F−552(界面活性剤、DIC社製)MIBK(メチルイソブチルケトン)希釈液(1質量%):9質量部
・MIBK(メチルイソブチルケトン):446質量部
〈試料105の合わせガラスの作製〉
赤外吸収層を形成するための塗布液を、P/B比が0.1となるように、下記の材料の配合量を変更した以外は、上述の試料103と同様の方法で試料105の合わせガラスを作製した。
(赤外吸収層用の塗布液の調製;変更部分)
・アロニックス(登録商標)M−305(3、4官能アクリレート、3官能成分60質量%、東亞合成社製):588質量部
・EBECRYL(登録商標)350(2官能シリコンアクリレート、ダイセル・オルネクス社製)MIBK(メチルイソブチルケトン)希釈液(1質量%):54質量部
〈試料106の合わせガラスの作製〉
赤外吸収層を形成するための塗布液を、P/B比が0.5となるように、下記の材料の配合量を変更した以外は、上述の試料103と同様の方法で試料106の合わせガラスを作製した。
(赤外吸収層用の塗布液の調製;変更部分)
・アロニックス(登録商標)M−305(3、4官能アクリレート、3官能成分60質量%、東亞合成社製):113質量部
・EBECRYL(登録商標)350(2官能シリコンアクリレート、ダイセル・オルネクス社製)MIBK(メチルイソブチルケトン)希釈液(1質量%):9質量部
〈試料107の合わせガラスの作製〉
赤外吸収層を形成するための塗布液を、特定金属の赤外線吸収材料に対する添加量が0.00005質量%となるように、下記の材料の配合量を変更した以外は、上述の試料103と同様の方法で試料107の合わせガラスを作製した。
(赤外吸収層用の塗布液の調製;変更部分)
・4質量%(Pt濃度)のPt−PVPコロイド溶液(田中貴金属社製、分散媒;エタノール):0.0007質量部
〈試料108の合わせガラスの作製〉
赤外吸収層を形成するための塗布液を、特定金属の赤外線吸収材料に対する添加量が0.0001質量%となるように、下記の材料の配合量を変更した以外は、上述の試料103と同様の方法で試料108の合わせガラスを作製した。
(赤外吸収層用の塗布液の調製;変更部分)
・4質量%(Pt濃度)のPt−PVPコロイド溶液(田中貴金属社製、分散媒;エタノール):0.0014質量部
〈試料109の合わせガラスの作製〉
赤外吸収層を形成するための塗布液を、特定金属の赤外線吸収材料に対する添加量が0.01質量%となるように、下記の材料の配合量を変更した以外は、上述の試料103と同様の方法で試料109の合わせガラスを作製した。
(赤外吸収層用の塗布液の調製;変更部分)
・4質量%(Pt濃度)のPt−PVPコロイド溶液(田中貴金属社製、分散媒;水):0.14質量部
〈試料110の合わせガラスの作製〉
赤外吸収層を形成するための塗布液を、特定金属の赤外線吸収材料に対する添加量が0.015質量%となるように、下記の材料の配合量を変更した以外は、上述の試料103と同様の方法で試料110の合わせガラスを作製した。
(赤外吸収層用の塗布液の調製;変更部分)
・4質量%(Pt濃度)のPt−PVPコロイド溶液(田中貴金属社製、分散媒;エタノール):0.21質量部
〈試料111の合わせガラスの作製〉
赤外吸収層を形成するための塗布液を下記の方法で作製した以外は、試料103と同様の方法で試料111の合わせガラスを作製した。
(赤外吸収層用の塗布液の調製)
下記の材料を混合して、赤外吸収層を形成するための塗布液を調製した。
・YMF−02A(18質量%Cs0.33WO分散液、分散剤10質量%、平均粒径50nm、住友金属鉱山社):315質量部
・4質量%(Pd濃度)のPd−PVPコロイド溶液(田中貴金属社製、分散媒;イソプロピルアルコール):0.035質量部
・アロニックス(登録商標)M−305(3、4官能アクリレート、3官能成分60質量%、東亞合成社製):196質量部
・EBECRYL(登録商標)350(2官能シリコンアクリレート、ダイセル・オルネクス社製)MIBK(メチルイソブチルケトン)希釈液(1質量%):18質量部
・ヘキソエートコバルト8%(金属石鹸、東栄化工社製):3質量部
・Irgacure(登録商標)819(光重合開始剤、BASFジャパン社製):13質量部
・メガファック(登録商標)F−552(界面活性剤、DIC社製)MIBK(メチルイソブチルケトン)希釈液(1質量%):9質量部
・MIBK(メチルイソブチルケトン):446質量部
〈評価〉
作製した試料101〜111の合わせガラスについて、下記の方法で耐候性試験を行なった後、各評価を行なった。
[耐候性試験]
各試料に対し、赤外遮蔽フィルムの基材(赤外反射層)側から、キセノンウェザーメーター(温度:BPT62℃、湿度:50%RH、スガ試験機SX−75)を用いて、放射強度160W/mで2000時間照射した。
[ヘイズ]
各試料について、JIS K7136:2000に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH7000)を用いてイズを測定した。
[日射熱取得率(TTS)]
JIS S3107:2013に準拠し、分光光度計(積分球使用、社日立製作所製、U−4000型)を用いて、赤外遮蔽体の300〜2500nmの領域における5nmおきの透過率・反射率を測定した。次に、JIS R3106:1998に記載の方法に準拠し、測定値と日射反射重価係数との演算処理を行い、日射熱取得率(TTS)を算出した。この値が低いほど、赤外遮蔽性が高いことを表す。
[可視光透過率]
JIS S3107:2013に準拠し、分光光度計(積分球使用、社日立製作所製、U−4000型)を用いて、各試料の380〜780nmの領域における透過率を測定し、その平均値を求め、これを可視光透過率(%)とした。
[色差評価(耐候性試験後)]
各試料について、分光光度計U−4000型(積分球使用、日立製作所社製)を用いて、上記耐候性試験の前後における各試料の200〜2000nm領域の透過率を測定し、透過光から各試料のL値、a値、b値を計算した。そして、耐候性試験の前後での差異から色差(ΔE)を計算した。耐候性試験前後でのΔEの値が小さいほど、色差が小さいことを表す。
試料101〜111の合わせガラスについて、主要な構成と各評価結果を表1に示す。
Figure 2017109892
表1に示すように、タングステン以外の特定金属を含まない試料101の合わせガラスは、他の試料に比べて色差(ΔE)が悪い。これは、特定金属を含まないため、耐候性試験によるタングステン酸化物の変色が他の試料よりも大きかったためと考えられる。さらに、耐候性試験後のTTSも他の試料よりも悪化している。
また、赤外吸収材料としてITOを用いた試料104の合わせガラスでは、他の試料に比べて、可視光透過率が低く、色差(ΔE)も悪い。これは、赤外吸収材料としてITOを単独で用いた構成では、赤外吸収能力が十分ではないことや、特定金属による変色抑制作用がITOでは機能しないためと考えられる。
試料107の合わせガラスは、特定金属の添加量が0.00005質量%と小さいため、タングステン酸化物の変色抑制効果が小さく、色差(ΔE)が他の試料よりも悪い。また、試料110の合わせガラスは、特定金属の添加量が0.015質量%と大きいため、特定金属の光散乱により、他の試料よりもヘイズが悪い。この結果から、特定金属の添加量は、タングステン酸化物に対して、0.0001質量%〜0.001質量%とすることが好ましい。
さらに、試料103、試料107〜110の合わせガラスの結果から、赤外吸収層に添加する特定金属の量を変えても、合わせガラスのTTSに影響がない。これは、タングステン酸化物の量に比べて特定金属の添加量が非常に少ないため、また、特定金属自体に赤外吸収能力がほとんどないため、合わせガラスのTTSに影響を与えていないと考えられる。このように、赤外吸収層による合わせガラスのTTSへの影響は、特定金属の添加量にかかわらず、タングステン酸化物等の赤外吸収材料に依存することがわかる。
試料105の合わせガラスは、赤外吸収層のP/B比が0.1と小さく、タングステン酸化物の量が少ない。このため、試料103の合わせガラスに比べてTTSが悪く、TTS<50を達成できていない。また、試料106の合わせガラスは、赤外吸収層のP/B比が0.5と大きく、タングステン酸化物の量が多い。このため、試料103の合わせガラスに比べてヘイズが悪化している。この結果から、赤外吸収層のP/B比は、0.20〜0.40とすることが好ましい。
試料102の合わせガラスは、赤外反射層が熱可塑性樹脂のみから形成されているため、ポリビニルアルコールと酸化チタン又は酸化ケイ素とを用いた試料103の合わせガラスに比べてTTSが低下しているものの、色差(ΔE)は十分に小さい。このため、赤外吸収層としては、要求される赤外反射効果を有していれば、特に構成は限定されない。
また、試料111の合わせガラスのように、赤外吸収層に用いる特定金属としてパラジウムを用いても、試料103等の合わせガラスに用いた白金と同様に、タングステン酸化物の変色を抑制することができる。
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
10 合わせガラス、11 第1透明基体、12 第2透明基体、13 赤外遮蔽フィルム、14 基材、15 赤外吸収層、16 赤外反射層

Claims (6)

  1. 赤外遮蔽フィルムと、前記赤外遮蔽フィルムを挟持する一対の透明基体とを備える合わせガラスであって、
    前記赤外遮蔽フィルムが、基材と、前記基材上に設けられた赤外吸収層とからなり、
    前記赤外吸収層が、タングステン酸化物と、タングステン以外の金属とを含み、
    前記赤外吸収層に、前記タングステン酸化物に対して前記タングステン以外の金属が0.0001〜0.01質量%含まれる
    合わせガラス。
  2. 前記タングステン以外の金属が、白金又はパラジウムである請求項1に記載の合わせガラス。
  3. 前記赤外遮蔽フィルムが、赤外反射層を備える請求項1に記載の合わせガラス。
  4. 前記赤外反射層が、水溶性ポリマーを含む請求項3に記載の合わせガラス。
  5. 前記赤外反射層が、屈折率の異なる複数の層からなる積層構造を有する請求項4に記載の合わせガラス。
  6. 前記赤外吸収層が、前記タングステン酸化物と樹脂とを含み、前記タングステン酸化物と前記樹脂との比[タングステン酸化物の質量(P)/樹脂の質量(B)]が、0.20以上0.40以下である請求項1に記載の合わせガラス。
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