以下、添付図面に示す実施例を参照して本発明を実施するための形態につき説明する。なお、以下に示す実施例はあくまでも一例であり、例えば細部の構成については本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当業者が適宜変更することができる。また、本実施形態で取り上げる数値は、参考数値であって、本発明を限定するものではない。
<実施例1>
図1は、本発明を採用した生産装置モジュール101の構成の一例を示している。生産装置モジュール101は「組立てロボットセル」などの名称の製品として提供されることがある。
生産装置モジュール101はベース400上に、ワーク112に対する組立操作を行うワーク操作部を配置して構成される。このワーク操作部は、垂直あるいはパラレル構成などの多軸多関節ロボットから構成する場合もあるが、本実施例では、XYテーブル423や、およびXYテーブル423により支持された組立ハンド107、移載ハンド115のような把持装置から構成される。
生産装置モジュール101の制御に用いられる直交座標系の3軸(X、Y、Z)をどのように取るかは任意であるが、図1では同図左側に示すようにこの直交座標系の3軸(X、Y、Z)が取られている。ベース400の上面は、このX、Y軸と平行な姿勢で、下部の支柱113c、113d、113e、113fによって設置床面上に設置される。
XYテーブル423は、主としてXテーブル106、Yテーブル105から構成され、例えばXYテーブル駆動部1051に収容された駆動回路によって駆動される。XYテーブル423は、例えば支柱113a、113bを介して、ベース400の上方のベース400と平行なXY平面内で、組立ハンド107、移載ハンド115の位置を制御するよう動作する。
上記のXテーブル106(あるいは後述の116)、Yテーブル105は、直線状のガイド部材上で、移送を目的とする部材を支持するスライダ部を直動させ、所定の各座標軸上の座標位置に位置決めする構造を有する。なお、この種の、いわゆる直交ロボットを構成するXYテーブルは、XYステージなどと呼ばれることもあるが、便宜上、本実施例では、XYテーブル、X(Y)テーブル、のような用語を用いる。
Xテーブル106は、Yテーブル105のYスライダ1052によって支持され、そのY座標上の位置が決定される。Xテーブル106は、Xスライダ401を介して組立ヘッド402を支持し、この組立ヘッド402を介して、組立ヘッド402に搭載された組立ハンド107、移載ハンド115のX座標上の位置を決定する。なお、生産装置モジュール101に実行させる工程によっては、組立ヘッド402上には、ワーク操作部の一部として、例えば電動ドライバのような工具などが配置される場合もある。
なお、組立ハンド107、移載ハンド115を搭載する組立ヘッド402と、XYテーブル423の間に、組立ヘッド402を昇降させるためにZ軸昇降手段を配置する場合がある。この場合には、作業台109側を昇降させるのではなく、組立ヘッド402をZ軸方向に昇降させて、作業台109上のワーク(112)と組立ヘッド402の位置関係を制御する。
これに対して、本実施例では、組立ヘッド402、およびXYテーブル423の間にはZ軸昇降手段を設けておらず、ベース400からXYテーブル423により懸架された組立ヘッド402までのZ軸方向の高さは固定である。そして、本実施例では、作業台109と組立ヘッド402の相対位置は、作業台109をZ軸昇降装置405、およびスライダ108を介して昇降させることにより作業台109を下方から組立ヘッド402に近接、離間させることによって調節する。
このように、本実施例では、ワーク操作部である組立ハンド107、移載ハンド115と、作業台109の相対位置の調節に必要なZ軸方向の昇降を組立ヘッド402の昇降ではなく、下方から作業台109を昇降させることによって実現する。
これにより、XYテーブル423によって懸架する部材からZ軸昇降装置を除き、XYテーブル423の懸架する総重量を低減できる。これにより、それ自体位置姿勢を制御する必要があり、組立ヘッド402の位置を正確に制御しなければならないXYテーブル423の強度、剛性に関する設計条件を緩和できる。このため、例えば支柱113a、113bより上の構造を軽量化、簡略化できるようになる。また、同じXYテーブル423の強度、剛性において、動作時の振動や騒音を低減できる可能性があり、組立ハンド107、移載ハンド115の位置制御の精度を向上できる利点がある。
ワーク操作の対象であるワーク112は作業台109上に載置されて組立操作を受ける。作業台109は、ワーク112に組立部品111を組み付けるために、ワーク112を載置し、位置決め及び保持するユニットである。組立ハンド107により保持された組立部品111などがワーク112に組み付けられ、作業台109の上で半完成ないし完成アセンブリに近付いていく。
組立ハンド107は、詳細不図示の供給装置から供給される組立部品111を保持し、下方から上昇させた作業台109上のワーク112に対して組立部品111を組み付ける。
なお、この生産装置モジュールの工程でワーク112に組み付ける組立部品111を供給するための供給ユニット(不図示)は、例えば図1中、右方のベース400に配置することができる。例えば、供給ユニットは、Z軸昇降装置(不図示)によって昇降可能なトレイを有し、組立ハンド107の近傍まで上昇させることができるよう構成される。供給ユニットのトレイ上には例えば複数の、ないし異なる組立部品(111)を配列しておくことができる。組立ハンド107で特定の組立部品111を把持させる時、組立ハンド107がその組立部品111にアクセスできる高さまで供給ユニットのトレイを上昇させる。また、その際の組立ハンド107のXY座標位置は、XYテーブル423によって制御される。組立部品111を把持させた後、組立ハンド107は、XYテーブル423によって作業台109上の組立位置に移動させる。
一方、組み付けを受けるワーク112は、後に詳述する授受制御によって、移載ハンド115が作業台109上の所定位置に載置、固定される。ワーク112はワーク保持部110によって作業台109上の所定位置に位置決め、固定される。ワーク保持部110は、例えば詳細不図示のソレノイドやスプリングなどの付勢力を用いてワーク112を固定、あるいは開放可能な位置決め固定片などによって構成される。
組立部品111を把持した組立ハンド107に対して、作業台109をZ軸昇降装置405、およびスライダ108を介して上昇させて作業台109上のワーク112に対して組立部品111を組み付ける。この時の、XY軸方向の組み付け位置は、XYテーブル423によって制御される。1つの生産装置モジュールでは、ワーク112に対して1ないし数(サブ)工程分の組立操作を行なわせる。例えば、1つの生産装置モジュールは、ワーク112に対して1ないし数個の組立部品111を組み付けるよう、構成することができる。
本実施例では、図1の生産装置モジュール101の工程が終了すると、作業台109を搬送装置114によって図1のX方向に配列された後段(次段)生産装置モジュールに搬入する。
図13は、図1の生産装置モジュール101、および生産装置モジュール101とほぼ同一構成を有する生産装置モジュール201、301(…)を製造工程の順で直列的に連結して成る生産ライン(生産装置ライン)を例示している。各々の生産装置モジュール101、201、301(…)は、ベース400外への搬送装置114の突出部位を、後段モジュールの授受空間500に収容するよう直列的に順次、連結されている。なお、図1では、ベース400の下部の支柱113c、113d、113e、113fの下方の部位の図示を省略している。しかしながら、図1の支柱113c、113d、113e、113fの部位は、例えば図13のように各モジュールの下部フレーム1130の部分を構成するものであってよい。
生産装置モジュール101のワーク112を搭載した作業台109は、搬送装置114によって、後段モジュール(201)の授受空間500に送り込むことができる。そして、この授受空間500内で、引き渡し側である生産装置モジュール101側のZ軸昇降装置405、スライダ108によって作業台109を上昇させ、ワーク112を後段モジュール(201)の移載ハンド(115)に引き渡す。
このように、本実施例の特定の生産装置モジュールの作業台109は、その生産装置モジュールの生産工程で利用される作業台であるとともに、後段の生産装置モジュールへの搬送およびワーク授受手段の一部を構成する。また、作業台109を昇降させるZ軸昇降装置405、スライダ108は、その生産装置モジュールの工程で必要な作業台109の昇降手段であるとともに、後段モジュールへのワーク引き渡しの際に作業台109を昇降させる昇降手段を兼ねている。
このように、本実施例では、作業台109は、図1の生産装置モジュール101の組立ヘッド402に対する位置決め、および、後段の生産装置モジュールの移載ハンド115へのワーク授受、の2つの目的でZ軸方向に昇降できる必要がある。そこで、本実施例では、例えば次のような構造を採用している。
作業台109は、支持部109a、ガイド部404を介して搬送装置114により支持される。作業台109が、搬送装置114で移動され、X軸方向に関する移動範囲内のどこに位置していても、作業台109を昇降させることができるよう、搬送装置114とほぼ同じ長さを有するスライダ108が配置してある。スライダ108は、図示のような断面形状に例えばプレス成形などによって構成された、上部平面が低摩擦特性を有する金属板などから構成される。スライダ108は、詳細不図示の例えばレールのような支持手段によって、ベース400のXY平面に対して平行を保ったままZ軸方向に昇降可能に支持される。
そして、例えばベース400の下面などに配置したZ軸昇降装置405によりスライダ108の上面高を任意に制御することができる。Z軸昇降装置405は、モータなどの駆動力によって、例えばラック&ピニオンのような駆動系を介してスライダ108を昇降させることができるよう構成される。
一方、作業台109は、支持部109aを介してガイド部404にZ軸(上下)方向に昇降自在に支持されている。ガイド部404は、例えば詳細不図示のガイドレールなどを介して作業台109の支持部109aをZ軸に摺動自在に支持する構造である。作業台109の支持部109aを支持する。
ガイド部404は、搬送装置114を構成するXテーブル116によってX軸方向に移動させ、Xテーブル116の長さにほぼ相当する範囲内において、所望のX軸座標を占めるよう位置決めすることができる。Xテーブル116は、例えば図1奥側に配置された駆動部403によって、ガイド部404を移動させる。駆動部403と、ガイド部404の間の駆動系の構成は任意であり、この駆動系はラック&ピニオン、ボールねじ、コッグドベルト&ホイールなど任意の方式で構成することができる。
上記構成において、作業台109の支持部109aをXテーブル116によってX軸方向に移動する時、支持部109aはスライダ108の上面を滑走しつつ移動する。支持部109a、従って作業台109がX軸方向のいずれの位置に移動されていても、Z軸昇降装置405によってスライダ108のZ軸方向の高さを制御することにより、作業台109の昇降位置を決定することができる。このような構成により、スライダ108により下方から支持された作業台109、また、それによって載置されたワーク112のZ軸方向の高さを任意に選ぶことができる。
さて、搬送装置114は、上記のXテーブル116と、このXテーブル116を支持する固定部421を備えている。本実施例の搬送装置114は、作業台109を生産装置モジュール101の主工程の作業位置(例えば図1の位置)から、後段の生産装置モジュールに搬入し、引き渡すために用いられる。
搬送装置114は、図示のようにその搬送始点側(図1の左奥側)がベース400に固定され、かつ、その搬送終点側(図1の右手前側)が後段の生産装置モジュールのベース上に進入するようベース400の外部に突出して配置される。
Xテーブル116を支持する固定部421は、図1のようにベース400に対してネジ止めなどの手段によって固定される。これにより、Xテーブル116がベース400に対して固定的に装着される。また、Xテーブル116は、固定部421によって、図1の右手前側に配置される(図1では不図示の)後段の生産装置モジュールのベース上に進入するよう、ベース400から突出した状態で固定されている。
また、搬送装置114が、ベース400上に占める、X軸方向の範囲は、ベース400のX軸方向の半分(1/2)の寸法以内とする。そして、搬送装置114のX軸方向に関して後方の領域には、前段生産装置モジュールの搬送装置114で搬入されたワーク112を授受するためのワーク授受空間500(図1)が画成される。
即ち、図1の生産装置モジュール101においては、左奥側に同様の構成を有する生産装置モジュールを配設した場合、その後段の生産装置モジュールの搬送装置が、が、ワーク授受空間500が進入するよう、生産装置モジュール同士が位置決めされる。
なお、本実施例では、後段の生産装置モジュールのワーク授受空間500に進入させる前段側の搬送装置114のベースからの突出部分は、好ましくは後段の生産装置モジュールには固定しない。これにより、例えば搬送装置114を介して、前段〜後段の生産装置モジュール間で不要な振動が伝達されなくなるため、各段のモジュールの工程の精度を向上することができる。
図13に示した生産ライン(生産装置ライン)では、生産装置モジュール101、201、301(…)は、製造工程の順で直列的に連結して構成されている。この例では、製造工程の後段は、図の右方に相当し、各モジュールの工程を終了したワークないしアセンブリは、生産装置モジュール101、201、そして301へと順次引き渡される。
図13のように生産ラインを組み上げた状態では、生産装置モジュール101、201の搬送装置114、214は、それぞれ後段(図の右方)生産装置モジュール201、301のワーク授受空間500の部分に収容される。
上記のような構成により、例えば図1の作業位置では、Z軸昇降装置405によってスライダ108を上昇させ、作業台109上のワーク112に対して組立ハンド107によるワーク操作を作用させることができる。
例えば、作業台109上のワーク112に対して、組立ハンド107によって、組立部品111を組み付けることができる。この時、ワーク112と、組立部品111の相対位置は、XおよびY軸方向に関してはXYテーブル423のスライダ(401、1052)の駆動制御により調節される。一方、Z軸方向に関しては、Z軸昇降装置405でスライダ108を昇降させることにより、作業台109のZ軸方向の高さを調節することにより、作業台109と組立ヘッド402のZ軸方向に関する相対位置を調節することができる。
一方、生産装置モジュール101での工程が終了した場合は、搬送装置114のXテーブル116によって、作業台109を搬送終点側(図1の右手前側)に搬送させる。この時、作業台109の支持部109aは、スライダ108の上面を滑走しつつ移動する。これにより、ワーク112を搭載した作業台109が生産装置モジュール101のベース400の外側に搬出される。
上述のように、搬送装置114の搬送終点側(図1の右手前側)は生産装置モジュール101のベース400から突出して配置されている。これにより、ワーク112を搭載した作業台109を後段の生産装置モジュールのベース(400)上の領域まで搬入することができる。
この状態で、生産装置モジュール101のZ軸昇降装置405によってスライダ108を上昇させれば、作業台109を後段の生産装置モジュールの移載ハンド(115)に近接させ、この後段の移載ハンド(115)に対して授受することができる。
以上のように、本実施例では、搬送装置114を、その搬送始点側が生産装置モジュール101のベース400に固定され、かつ、その搬送終点側が後段の生産装置モジュールのベース上に進入するようベース400の外部に突出して配置する。このような構成によれば、生産装置モジュール間に何らかの搬送装置を配置する必要がなくなる。このため、搬送装置で発生する振動がその両側のいずれの生産装置モジュールにも伝達されてしまう問題がなく、また、搬送装置を介して組立操作の精度などに影響する振動が生産装置モジュール間で伝達されてしまう問題がない。
また、本実施例の生産装置モジュール101のベース400上には、前段の搬送装置114の突出部位を収容するための授受空間500内が画成されている。このため、搬送装置114が前段の生産装置モジュールから突出した部位を後段の生産装置モジュールの授受空間500内に収容できる。従って、前段、後段の各ベース(400)の部位を可能な限り近接した位置関係で隣接するよう、各段(各工程)の生産装置モジュールを隣接配置できる。これにより、生産装置ラインの全長を短縮できる可能性があり、生産設備の設置スペースの空間利用効率を著しく向上することができる。
ここで、図11に図1の生産装置モジュールの制御装置600の構成例を示す。同、図に示すように、制御装置600は、CPU601(演算部)、ROM602、RAM603、HDD604、各種のインタフェース(605〜608)を備えている。
CPU601には、ROM602、RAM603、HDD604、および各種インタフェース605、607、608が接続される。ROM602には、BIOS等の基本プログラムが格納される。RAM603は、CPU601の演算処理結果を一時的に記憶する記憶装置である。
HDD604は、この種の生産装置モジュールでは必須ではないが、配置した場合は、HDD604はCPU601の演算処理結果である各種のデータ等を記憶する記憶部を構成する。また、HDD604には、CPU601に各種演算処理を実行させるためのプログラムを記録したファイルを格納することができる。CPU601は、ROM602ないしHDD604に記録(格納)されたプログラムに基づいて後述の生産制御手順を実行する。
次に上記の生産装置モジュールを用いて構成された生産ラインにおける生産処理につき説明する。以下では、図13のように生産装置モジュール101、201、301(…)を直列的に配置して構成された生産ラインを例示する。
図2〜図10は、生産装置モジュール101、201、301(…)を連結して構成された生産ラインを示している。これら各図の図示の方向は、図1のY軸の矢印方向に相当し、各モジュールは各図の左から生産装置モジュール101、201、301(…)である。また、図2〜図10において、生産装置モジュール201、301は、既に図1で生産装置モジュール101のものとして説明済みものと同じ構成部材を含む。これらのうちモジュールを特定する必要がある構成部材については、生産装置モジュール101で説明済みの構成部材の参照符号の100番台の数字にそれぞれ1、2、3の数字を用いるか、または参照符号にa、b、cのアルファベットを後置して区別する。
例えば、生産装置モジュール201、301で、生産装置モジュール101の移載ハンド115に相当するのは、それぞれ移載ハンド215、315である。また、図1の生産装置モジュール101において、Z軸昇降装置405によって昇降されるスライダ108は、図2〜図10の生産装置モジュール101、201…では、それぞれ108a、108b…の参照符号を付してある。
図2〜図10に示すように、生産装置モジュール101、201、301(…)は、それぞれの搬送装置114(、214…)のベース400(図1)からの突出部位が、隣りのモジュールのワーク授受空間500に進入するよう連結されている。
図2の状態は、生産装置モジュール101における組立作業が完了したワーク112が、当該モジュール(101)の作業台109に搭載された状態である。上述のように、作業台109は、スライダ108aによりZ軸方向に昇降可能であり、また、図3に示すように、搬送装置114によって生産装置モジュール201のワーク授受空間500に進入させることができる。
図3の状態は、生産装置モジュール101の搬送装置114のXテーブル116aを矢印方向に駆動し、ワーク112を搭載した作業台109を生産装置モジュール201のワーク授受空間500に進入させた状態である。
いずれの生産装置モジュールにおいても、ワーク授受空間500は、その内部ではそのモジュールの工程の組立作業には用いないよう、確保された空間である。このため、例えば生産装置モジュール201ではそのモジュールの組立作業が続行中であっても、図3のように生産装置モジュール101の作業台109を生産装置モジュール201のワーク授受空間500に搬入することができる。このように生産装置モジュール201のワーク授受空間500に作業台109を進入させても生産装置モジュール201の工程作業に支障を生じることがなく、例えば生産装置モジュール201側の受け入れ体制が整うまでその位置で待機させることができる。
続いて、図4に示すように、生産装置モジュール201の移載ハンド215を用いて、生産装置モジュール101〜201間でワーク授受作業を行う。ここでは、図4のように、生産装置モジュール201のXYテーブル(423:図1)のXテーブル106bに懸架された移載ハンド215をYテーブル105bで矢印の方向に駆動し、移載ハンド215をワーク授受空間500に移動する。
続いて、図5に示すように生産装置モジュール101側のZ軸昇降装置(405)を駆動し、スライダ108aを介して、ガイド部(404a:図1の404)に沿って、作業台109をワーク授受空間500内で矢印のように上昇させる。当然ながら、このZ軸方向の作業台109の高さは、移載ハンド215で作業台109上のワーク112を把持できる高さに制御する。
次に、図6に示すように、移載ハンド215がワーク112を把持可能な高さで生産装置モジュール101側のZ軸昇降装置(405)の駆動を停止させる。そして、生産装置モジュール201で移載ハンド215が駆動され、移載ハンド215によって作業台109に搭載されているワーク112を把持させる。
このように、本実施例の構成では、ワーク授受空間500内で、生産装置モジュール201のXY軸と、生産装置モジュール101の搬送装置114のXZ軸を近接、ないし交差させることができる。これにより、生産装置モジュール101、201の間でワーク112を授受することができる。
なお、図2〜図10の図示は、理解を容易にするために、並行的に同時進行させることもできる動作を経時的に並べて示しているに過ぎない。従って、図2〜図10並行的に実行できる動作は、必要に応じて同時に実行させて構わない。例えば、図3の作業台109を生産装置モジュール201のベース上のワーク授受空間500への搬入と、図4の生産装置モジュール201の移載ハンド215のワーク授受空間500方向への移動などは、制御上の都合などに応じて同時に進行させてよい。このような制御タイミングの変更などについては、後述の各図においても同様である。
移載ハンド215がワーク112を把持した後、図7に示すように生産装置モジュール101側のZ軸昇降装置(405)を駆動し、スライダ108aを介して、ワーク授受空間500内で矢印のように下降させる。
続いて、図8に示すように、生産装置モジュール201で、XYテーブル(423:図1)のXテーブル106bに懸架された移載ハンド215をYテーブル105bを矢印方向に駆動する。これにより、移載ハンド215で把持されたワーク112が、図示のように、生産装置モジュール201の工程の作業位置である作業台209の上方に移動する。
その後、図9に示すように、生産装置モジュール201でZ軸昇降装置(405)を駆動し、スライダ108bを介して、ガイド部(404b:図1の404)に沿って、作業台209を矢印のように上昇させる。続いて、生産装置モジュール201で移載ハンド215の把持を解除する。これにより、図示のようにワーク112が生産装置モジュール201の作業台209上に移載される。なお、移載ハンド215の把持解除の際、ほぼ同時のタイミングにおいて、図1に示したワーク保持部110のソレノイドなどを制御して、ワーク112を作業台209上の所定位置に載置、固定する。
続いて、図10に示すように、生産装置モジュール201でZ軸昇降装置(405)を駆動し、スライダ108bを介して、ガイド部(404b:図1の404)に沿って、作業台209を矢印のように下降させる。
以上のようにして、生産装置モジュール101〜201間でワーク112が授受される。その後、作業台209上のワーク112に対する生産装置モジュール201の工程が開始される。例えば、上述のようにして不図示の供給ユニットから組立ハンド107に組立部品111が供給され、組立ハンド107と作業台209の相対位置(および姿勢)を制御することにより、組立部品111をワーク112に組み付けることができる。その際、生産装置モジュール201のXYテーブル(423)と、Z軸昇降装置(405)およびスライダ(108b)により、生産装置モジュール201の作業空間における組立部品111とワーク112の相対位置関係が制御される。
なお、図8〜図10において、生産装置モジュール101の作業台109は、生産装置モジュール201のワーク授受空間500に進入させたままの状態で図示している。しかしながら、生産装置モジュール101側での作業工程の進行に応じて、作業台109は、図8〜図10に示した生産装置モジュール201側の動作に並行して生産装置モジュール101のベース400上に復動させてよいのはいうまでもない。
その後、生産装置モジュール201での作業工程が終了した後は、上述と同様の動作によって、ワーク112を生産装置モジュール201から301に引き渡すことができる。その場合、作業台209を搬送装置214のXテーブル116bを用いて生産装置モジュール301のワーク授受空間500に進入させる。その後は、作業台209をZ軸昇降装置(405:図1)とスライダ108bによって昇降させ、生産装置モジュール301の移載ハンド315にワーク112を引き渡すことができる。生産装置モジュール301では、移載ハンド315のXY方向の制御には、Xテーブル106c、Yテーブル105cが用いられる。生産装置モジュール301の作業台309の昇降には、Z軸昇降装置(405:図1)とスライダ108cが用いられる。また、生産装置モジュール301の搬送装置314(図10)およびそのXテーブル116cを用いて後段の生産装置モジュール(不図示)のワーク授受空間500へ作業台309移動させ、ワークを搬入することができる。
図12は、図11に示した生産装置モジュールの制御系で実行される生産制御、および生産装置モジュール間のワーク授受制御を示している。
以下では、図12の左列は、例えば前段側の生産装置モジュールの制御系のCPU601によって制御される生産およびワーク授受制御、に相当するものとして説明する。その場合、同図の右列は、例えば後段側の生産装置モジュールの制御系のCPU601によって制御される生産およびワーク授受制御に相当する。
図12のステップS00は、主に同図右列に示したワーク授受手順に相当する。ステップS00では、もし、前段側の生産装置モジュールのさらに前段に他の生産装置モジュールが設置されていれば、その前段モジュールから上述ないし後述のワーク授受制御によってワークを引き取る。あるいは、ステップS00では、初期状態のワークを、上述のようにしてワーク供給ユニットから作業台(109)に供給してもよい。
ステップS10では、前段側の生産装置モジュールで、上述のワーク組立作業を行わせる。前段側の生産装置モジュールの作業工程が終了すると、ステップS11に移行する。ステップS11では、搬送装置(114)のXステージ(116)により、作業台(109)を後段側の生産装置モジュールのワーク授受空間(500)に進入させる。
ステップS12では、図12の右列に示した後段側の生産装置モジュールとの連携により、ワークの授受(S00)が行なわれる。左列に示した前段側の生産装置モジュールとの連携は、連携制御SCを介して行う。
この連携制御SCは、例えば、ワーク授受空間(500)中におけるワーク授受を行う座標、そのタイミングを制御するものである。連携制御SCは、前段側、後段側の生産装置モジュールの間で同期制御信号やコマンドを送受信して行うハンドシェイクにより行うことができる。このような同期制御信号やコマンドは、例えば図11のインターフェース607を介して生産装置モジュールの間で送受信する。また、連携制御SCは、前段側、後段側の生産装置モジュールにそれぞれ配置したカメラなどの撮像装置(不図示)で取得した画像データに対して画像認識などの画像処理を行い、その結果に応じて行うこともできる。このような、いわる視覚系を用いたロボット制御によっても、ワーク授受空間(500)中におけるワーク授受を行う座標や、タイミングを制御することができる。
上記の連携制御SCを介して、作業台(109)上のワーク(112)と、後段側の生産装置モジュールの移載ハンド(115、215)と、の位置関係が制御される。これにより、適当なタイミングで後段側の移載ハンド(115、215)によりワーク(112)を把持する(ステップS01)ことができる。その後、後段側の生産装置モジュールでは、ワーク(112)を作業台(215)に移動(ステップS02)させ、後段側の生産装置モジュールにおける作業工程(ステップS03)が開始される。
一方、前段側の生産装置モジュールでは、連携制御SCを介して後段側の移載ハンド(115、215)によるワーク(112)把持を確認すると、Z軸昇降装置(405)とスライダ(108)によって、作業台(109)を下降させる(ステップS13)。さらに、必要に応じて搬送装置(114)のXステージ(116)により、作業台(109)を前段側の生産装置モジュール側に復動(ステップS14)させる。
以上のように、本実施例の生産装置モジュールでは、搬送装置(114)は、その搬送始点側がベース(基台:400)に固定され、かつ、搬送終点側が後段の生産装置モジュールのベース(基台)上に進入するようベースの外部に突出して配置される。また、本実施例の生産装置モジュールでは、前段の生産装置モジュールとの間でワークを授受するためのワーク授受空間(500)を備える。このワーク授受空間は、ベース(基台)の内側の、前段の生産装置モジュールの搬送装置(114)の搬送終点側が進入する位置に画成される。
従って、ベース(400)から突出した搬送装置(114)を後段の生産装置モジュールのワーク授受空間(500)に進入、収容されるよう、前段、後段の生産装置モジュールを直列配置することにより、生産ラインを構成することができる。
このように、本実施例の生産装置モジュールは、搬送装置(114)とワーク授受空間(500)が前段、後段で相補的な構造を有し、複数の生産装置モジュールを近接ないし密接に直列配置して、生産ラインを構成することができる。本実施例の構成によれば、前段、後段のモジュールの間に搬送装置のための空間を必要としない。従って、生産装置モジュールの設置効率を高め、生産ラインを設置する工場の床面など設置空間の利用効率を大きく向上することができる。
また、本実施例は、後段の生産装置モジュールのワーク授受空間(500)に進入させる前段側の搬送装置(114)のベースからの突出部分を後段の生産装置モジュールに固定しない構成である。このような構成により、例えば搬送装置114を介して、前段〜後段の生産装置モジュール間で不要な振動が伝達されなくなるため、各段のモジュールの組み立て工程の精度を向上することができる。
また、本実施例では、後段の生産装置モジュールへのワークの搬入は、前段側の生産装置モジュールの搬送装置(114)を利用する。また、ワーク(112)の授受は、前段の搬送装置(114)が進入する後段モジュールのワーク授受空間(500)を用い、このワーク授受空間(500)は、後段モジュールの組み立て作業に用いる空間とは別に独立して画成される。このため、前段から後段モジュールのワーク授受空間(500)へのワーク(112)ないし作業台(109)の搬入は、後段モジュールの組み立て作業に影響を与えることなく独立して並行的に実施できる。また、例え、後段モジュールの移載ハンドなどを既にワーク授受空間(500)に進入させていたとしても、搬送装置(114)のZ軸移動位置を適宜選ぶことにより、干渉を確実に回避できる位置を設けることが可能である。
従って、本実施例によれば、後段の生産装置モジュールの組み立て工程が進行中であっても、これに影響することなく、並列的に後段のワーク授受空間(500)へワークを搭載した作業台(109)を搬入することができる。これにより、前段〜後段の生産装置モジュールのワーク授受および組み立て工程のサイクルタイムを短縮でき、生産ライン全体の生産効率を大きく向上することができる。
なお、以上では、ワーク(112)および移載ハンド(115)や組立ハンド(107)のZ軸方向の相対位置制御は、作業台(109)をZ軸昇降装置(405)とスライダ(108)によって昇降することにより行う構成を示した。しかしながら、先に触れたように、Z軸昇降手段は、移載ハンド(115)や組立ハンド(107)を備えた組立ヘッド402と、XYテーブル423の間に配置してもよい。
また、上記実施例では、CPU601が実行するプログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体はROM602やHDD604である旨、説明した。しかしながら、上述の制御手順を実現するプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であれば、いかなる記録媒体に記録されていてもよい。例えば、プログラムを供給するためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、上記のROM602、HDD604の他、何らかのI/O方式によって構成された記録ディスクなどを用いることができる。具体例を挙げて説明すると、例えば、プログラムを供給するためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体として、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスクなどを用いることができる。また、この記録媒体は、CD(DVD)−ROM、CD(DVD)−Rのような光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカードなどであってもよい。また、また、本実施例の制御を実現するプログラムを、ネットワークインターフェース(不図示)を介して、インターネット(イントラネット)などのネットワークからダウンロードしてCPU601に実行させるようにしてもよい。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、本実施例の機能が実現されるだけに限定するものではない。そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれてもよい。そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって本実施例の機能が実現される場合も含まれる。本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、本発明の制御は、1以上の機能を実現するハードウェア回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。