JP2017106066A - 封孔剤、封孔剤塗布液、耐食性被膜、高温部材及び高温部材の製造方法 - Google Patents

封孔剤、封孔剤塗布液、耐食性被膜、高温部材及び高温部材の製造方法 Download PDF

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寛典 高瀬
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Abstract

【課題】耐食性被膜の気孔を長期に亘って封孔でき、しかも基材を腐食させることのない封孔剤の提供。
【解決手段】耐食性被膜2の気孔を封孔するための封孔剤1であって、ガラス組成に占めるアルカリ金属酸化物の割合が20質量%以下であるガラスと無アルカリホウ素化合物の混合物からなる封孔剤1であり、ガラスが、ZnO−B2O3系ガラスであり、封孔剤1中に占める無アルカリホウ素化合物の割合が、5〜70質量%の封孔剤1。ZrO、Al又はSiOから選ばれる1種以を50質量%以とである耐食性被膜2。
【選択図】図2

Description

本発明は、耐食性被膜の気孔を埋めるための封孔剤と、これを用いて作製した耐食性被膜及び高温部材に関する。
火力発電では石炭や石油、LNGをボイラーで燃焼させ、その高温高圧のガスを使ってタービンを回転させたり、高温ガスの熱を使って発生させた蒸気でタービンを回転させたりすることで発電を行っている。このためガスタービンや伝熱管などの高温部材は、500〜1000℃の酸素や硫黄酸化物、硫化水素などの腐食性、酸化性の燃焼ガス雰囲気に晒される。その結果、いわゆる高温腐食による寿命低下が問題となる。
このような酸性ガスによる腐食が原因で高温部材の劣化が起こるため、高温部材の交換を頻繁に行う必要がある。高温部材の交換は発電コストを高めることになるから、より長期間劣化の起こらない高温部材が求められている。
そこでこれらの高温部材の表面に耐食性被膜を形成して劣化を防止することが検討されている。耐食性被膜によって高温部材の寿命を延ばすには、如何にして気孔のない緻密な被膜を形成するかが重要となる。つまり耐食性被膜に気孔が存在すると、気孔を通して酸性ガスが高温部材の基材に到達してしまい、高温部材を腐食させてしまう。
特開2001−152307号公報 特開昭60−194063号公報
例えば特許文献1には、下地層としてサーメットまたはセラミックスを溶射によって形成し、下地層表面に酸化物セラミックによる封孔処理を施し、さらにはガラス質被膜を形成した複合被膜が開示されている。特許文献1に記載の複合被膜は、貫通気孔が無く、腐食性ガスに対して優れた耐食性を示すだけでなく、基材の使用寿命が著しく向上されるとしている。封孔剤としては、耐熱性有機樹脂セラミックス懸濁液、加熱によってCrを生成するクロム酸、焼成することによって金属酸化物を生成する無機金属化合物の溶液およびコロイド液、金属アルコキシドアルコール溶液、金属塩化物の水溶液またはアルコール溶液、金属燐酸塩水溶液、金属水酸化物のコロイド液、金属酸化物超微粉を含むアルコールまたは水懸濁液あるいはこれらの2種以上の混合液が推奨されている。しかし、これらの封孔剤は固化後にもガスが発生し完全な封孔ができないという問題がある。また無機バインダーとして、NaSiO、NaPO、NaHSiOの使用も提案されているが、これらはアルカリ金属を含む。特許文献2に記載のように、アルカリ金属は高温腐食の原因となるので、上記した無機バインダーを使用すると、これらが基材や被膜を腐食させてしまうおそれがある。このような課題を解決するために、ガラス封孔剤が開発されているが、浸透力に課題があり、不必要にガラスの軟化点を下げる必要があるため、ガラス封孔剤の組成設計を難しくしていた。
本発明は上記事情を考慮してなされたものであり、耐食性被膜の気孔を長期に亘って封孔でき、しかも基材を腐食させることのない封孔剤を提供することを課題とする。
本発明の封孔剤は、耐食性被膜の気孔を封孔するための封孔剤であって、ガラス組成に占めるアルカリ金属酸化物の割合が20質量%以下であるガラスと無アルカリホウ素化合物の混合物からなることを特徴とする。「アルカリ金属酸化物」とは、LiO、NaO及びKOの一種以上を指す。無アルカリホウ素化合物とは、アルカリ金属酸化物の割合が5質量%以下であり、空気中で550℃に加熱した時に融液となり、その融液中のB割合が70%以上となるものを指す。
上記構成を有する封孔剤は、耐食性被膜の気孔を容易に封孔可能であるとともに、アルカリ成分が少ないため、基材を腐食させることがない。また無アルカリホウ素化合物を含むため、封孔剤が耐食性被膜に浸透しやすくなる。
本発明においては、封孔剤中に占める無アルカリホウ素化合物の割合が、質量%で5〜70%であることが好ましい。
上記構成を採用すれば、封孔性と浸透性を両立させやすくなる。
本発明においては、ガラスが、ZnO−B系ガラスであることが好ましい。ここで「ZnO−B系ガラス」とは、ZnO及びBを必須成分として含有するガラスを意味する。
本発明の封孔剤塗布液は、上記の封孔剤を含むことを特徴とする。
上記構成を採用すれば、刷毛塗り等の簡便な方法によって、封孔剤を耐食性被膜上に塗布することが容易になる。
本発明の耐食性被膜は、ZrO、Al及びSiOから選ばれる1種以上を50質量%以上含む耐食性被膜であって、上記の封孔剤からなる粉末が表面に付着していることを特徴とする。「表面に付着している」とは、封孔剤粉末が耐食性被膜に化学的、物理的に結合している状態に加え、封孔剤粉末が幾何的に耐食性被膜に引っかかり脱落しない状態を含む。
上記構成を有する耐食性被膜を採用した高温部材は、使用時の高温雰囲気を利用して耐食性被膜の気孔を封孔することが可能であるため、事前の焼成工程を省略することができる。
また本発明の耐食性被膜は、ZrO、Al及びSiOから選ばれる1種以上を50質量%以上含む耐食性被膜であって、表面に存在する気孔の一部または全体が上記の封孔剤で満たされていることを特徴とする。
上記構成を有する耐食性被膜を採用した高温部材は、封孔剤が耐食性被膜の気孔内に固定されているため、移送中や使用箇所への設置の際に、封孔剤層が脱落したり、破損したりする事態を効果的に回避できる。
本発明の高温部材は、基材の表面に、上記の耐食性被膜が形成されていることを特徴とする。
本発明の高温部材の製造方法は、基材上にZrO、Al及びSiOから選ばれる1種以上を50質量%以上含む耐食性被膜を形成する工程と、耐食性被膜上に上記の封孔剤塗布液を塗布することを特徴とする。なお塗布後に封孔剤塗布液を乾燥させることが好ましい。
本発明においては、封孔剤塗布液の塗布後(或いは乾燥後)に焼成する工程を有することが好ましい。
試料Aの耐食性被膜の×2000でのSEM観察及びEDS分析の結果を示す写真である。 試料Aの耐食性被膜の×500でのSEM観察の結果を示す写真である。 試料Bの耐食性被膜の×2000でのSEM観察及びEDS分析の結果を示す写真である。 試料Bの耐食性被膜の×500でのSEM観察の結果を示す写真である。 試料Cの耐食性被膜の×500でのSEM観察の結果を示す写真である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の封孔剤は、耐食性被膜に存在する気孔を封孔するものである。本発明の封孔剤を適用できる耐食性被膜は特に制限はなく、例えばZrO、Al及びSiOから選ばれる1種以上を50質量%以上含む耐食性被膜の封孔剤として使用できる。
封孔剤を構成するガラスは、ガラス組成中に占めるアルカリ金属酸化物の割合が20質量%以下である。アルカリ金属酸化物は、ガラスの粘度を下げて低軟化点を達成するための成分であるが、高温腐食の原因となってしまう。よってガラス組成中に含まれるアルカリ金属酸化物の総量(LiO+NaO+KO)は0〜20%であり、0〜15%、0.01〜10%、特に0.1〜7%であることが好ましい。なおLiOの含有量は0〜20%、0〜15%、0〜10%、特に0.1〜5%であることが好ましく、NaOの含有量は0〜20%、0〜15%、0.01〜10%、特に0.1〜7%であることが好ましい。KOの含有量は0〜20%、0.01〜10%、特に0.1〜7%であることが好ましい。
封孔剤を構成する無アルカリホウ素化合物は、ガラスが溶融するより低温で分解・融液化し、B融液となる。B融液は耐食性皮膜と相互作用するために、無アルカリホウ素化合物はガラス融液の耐食性被膜への浸透を促進する働きがある。またアルカリ金属酸化物の割合が少ないために、高温腐食の原因にならない。封孔剤中の無アルカリホウ素化合物の混合割合は、質量百分率で5〜70%であり、10〜65%、15〜60%、特に20〜55%であることが好ましい。無アルカリホウ素化合物としては、ホウ酸や酸化ホウ素が好適に使用できる。
封孔剤を構成するガラスは、例えばガラス組成として、質量百分率でZnO 0〜80%、B 0〜50%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜50%、LiO+NaO+KO 0〜20%、SiO 0〜50%、Al 0〜30%含有するものを使用することができる。ここで「MgO+CaO+SrO+BaO」は、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量を意味する。「LiO+NaO+KO」はLiO、NaO及びKOの合量を意味する。ガラス組成を上記のように限定した理由を以下に説明する。なお以下の記載において「%」は質量%を意味する。
ZnOは、中間酸化物としてガラス形成に寄与する成分でもある。ZnOの含有量が多すぎると失透しやすくなり、含有量が少なすぎると溶融温度が高くなって溶融し難くなったり、ガラスが不安定になったりする。ZnOの含有量は0〜80%、1〜75%、5〜72%、10〜70%、特に15〜68%であることが好ましい。
は、ガラスの網目形成酸化物である。Bの含有量が多すぎると耐水性が低くなり通常湿度での取扱いが難しくなる。Bの含有量が少なすぎるとガラスが不安定になって失透しやすくなる。Bの含有量は0〜50%、5〜50%、10超〜40%、特に15〜35%であることが好ましい。
MgO+CaO+SrO+BaOは、0〜80%、特に3〜25%であることが好ましい。MgO+CaO+SrO+BaOが多すぎると失透しやすくなる。
MgOは、ガラスの溶融温度を低下させ、また熱膨張係数を調整する成分である。MgOの含有量が多すぎると失透しやすくなり、含有量が少なすぎると溶融温度が高くなって溶融し難くなる。MgOの含有量は0〜40%、1〜25%、特に2〜10%であることが好ましい。
CaOは、ガラスの溶融温度を低下させ、また熱膨張係数を調整する成分である。CaOの含有量が多すぎると失透しやすくなり、含有量が少なすぎると溶融温度が高くなって溶融し難くなる。CaOの含有量は0〜40%、1〜30%、特に2〜20%であることが好ましい。
SrOは、ガラスの溶融温度を低下させ、また熱膨張係数を調整する成分である。SrOの含有量が多すぎると失透しやすくなり、含有量が少なすぎると溶融温度が高くなって溶融し難くなる。SrOの含有量は0〜40%、1〜30%、特に2〜20%であることが好ましい。
BaOは、ガラスの溶融温度を低下させ、また熱膨張係数を調整する成分である。BaOの含有量が多すぎると失透しやすくなり、含有量が少なすぎると溶融温度が高くなって溶融し難くなる。BaOの含有量は0〜50%、1〜40%、2〜30%、特に3〜25%であることが好ましい。
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOは10〜80%、30〜75%、特に45〜70%であることが好ましい。なお「MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO」はMgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの含有量の合量を意味する。
LiO+NaO+KOについては既述の通りであり、ここでは説明を省略する。
SiOは、ガラスの網目形成酸化物であり、ガラス形成に寄与すると同時に耐水性を上げる成分である。SiOの含有量が多すぎると失透しやすくなり、含有量が少なすぎると耐水性が低くなり、またガラスが不安定になる。SiOの含有量は0〜50%、2〜45%、特に5〜30%であることが好ましい。
Alは、耐水性を上げ、ガラスの粘度を上げる成分である。Alの含有量が多すぎると失透しやすくなり、含有量が少なすぎると耐水性が低くなって通常湿度での取扱いが難しくなる。Alの含有量は0〜30%、0.2〜20%、特に0.5〜15%であることが好ましい。
上記の成分以外にも、所望の特性を損なわない範囲でP、TiO、MnO、Fe、CoO、NiO、CuO、Y、ZrO、SnO、La、CeO、Bi等をそれぞれ10%まで含んでも良い。
封孔剤を構成するガラスは、ZnO−B系のガラスからなることが好ましい。この系のガラスは、軟化点が低く、高温部材の使用温度域で溶融状態になりやすいという特徴を有する。
封孔剤を構成するガラスは、軟化点が900℃以下、850℃以下、特に800℃以下であることが好ましい。軟化点が高すぎるとガラスが使用温度域で溶融状態となり難くなる。なお軟化点は低いほど有利であるが、低すぎると使用温度域でのガラスの粘性が低くなり過ぎて、耐食性被膜の表面から流失してしまうことがある。このような場合、軟化点は400℃以上、特に500℃以上とすることが好ましい。
封孔剤を構成するガラスは、30〜380℃における熱膨張係数が30〜120×10−7/K、特に50〜90×10−7/Kであることが好ましい。熱膨張係数が高すぎたり、低すぎたりすると、基材との熱膨張差によって生じる亀裂が大きくなり、発電設備の冷却過程で耐食性被膜表面から脱落してしまう可能性がある。
封孔剤を構成するガラスは、平均粒径が10nm〜500μm、特に1〜100μmのガラス粉末であることが好ましい。ここで「平均粒径」とは、レーザー回折散乱法によって任意の粉末の粒径を測定した際、粒子の個数基準で算出されるD50で定義されるものである。
封孔剤を構成する無アルカリホウ素化合物は、平均粒径が100nm〜1mm、特に10〜500μmの粉末であることが好ましい。
本発明の封孔剤塗布液は、封孔剤を各種樹脂や塗料、有機溶媒、ゾルゲル液、水などの無機溶媒と混ぜてペースト化又はスラリー化したものを指す。ペースト化又はスラリー化することにより、耐食性被膜上に均一に塗布し易くなる。また樹脂や塗料、ゾルゲル液には、封孔剤が軟化して耐食性被膜から脱落しなくなるまでの間、封孔剤を被膜上に固定させる働きがある。このような樹脂や塗料、ゾルゲル液として、例えば不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂、ポリブチルメタアクリレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチルメタアクリレート等のアクリル系樹脂、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、アミド系樹脂、シリコーン樹脂、ポリチタノカルボキシルシラン溶液、テトラエトキシシランなどの金属アルコキシドやその部分縮合物の溶液等を使用することができる。
本発明の耐食性被膜は、ZrO、Al及びSiOから選ばれる1種以上を50質量%以上含む耐食性被膜である。この種の耐食性被膜は、例えば500〜1000℃の酸素や硫黄酸化物、硫化水素などの腐食性、酸化性の燃焼ガス雰囲気に対して耐食性を有し得るものである。
耐食性被膜の例として、安定化ZrOを主たる構成成分とする耐食性被膜(以下、安定化ZrO系耐食性被膜という)が挙げられる。安定化ZrOは、ZrOを主成分とし、Y、MgO、CaO、SiO、CeO、Yb、Dy、HfO等から選ばれた1種類以上の安定化剤を添加したものである。具体的には、ZrOの含有量が85質量%以上、好ましくは85〜95質量%、安定化剤の含有量が15質量%以下、好ましくは5〜15質量%であるものを意味する。ZrOの含有量が85質量%以上であれば、被膜の耐食性が確保できるとともに、プラズマ溶射後の冷却過程において1000℃付近で発生するZrOの正方晶や立方晶から単斜晶への相転移も抑制することができる。なおZrOの含有量が85質量%よりも少ないと、被膜の耐食性が低下してしまう。
耐食性被膜の気孔率は5%以下、特に4%以下であることが好ましい。耐食性被膜を緻密にすることによって、酸性ガスが被膜を透過することによって生じる基材の腐食を一層防止することが可能になる。耐食性被膜の気孔率が高すぎると、封孔剤によって気孔を完全に封孔することが難しくなり、酸性ガスの透過抑制が困難になる。ここで「気孔率が5%以下」とは、耐食性被膜の断面を走査型電子顕微鏡により倍率1000倍で観察した際に、観察画面の面積に対する表面の割れや空隙の総面積の割合が5%以下であることを意味する。
耐食性被膜の膜厚は10〜1000μm、10〜500μm、50〜400μm、特に70〜300μmであることが好ましい。耐食性被膜の膜厚が小さすぎると、酸性ガスの透過抑制が困難になり易い。一方、耐食性被膜の膜厚が大きすぎると、熱サイクルによって発生する熱応力が大きくなり、耐食性被膜が剥離しやすくなる。なお耐食性被膜の気孔率は、溶射粉末(安定化ZrO粉末や無機ガラス粉末)の粒径を変えることによって調整することができる。
本発明の高温部材は、上述の耐食性被膜が形成されていることが好ましい。尚、高温部材本体(基材)の材料としては、Fe、Ni、Co、Crの少なくとも1つを主成分とする金属材料が好ましい。また耐食性被膜は基材上に直接形成されることが好ましいが、密着性等を向上させる目的で、基材と耐食性被膜の間に1層又は2層以上の下地層を設けても差し支えない。
例えばSUSからなる基材上に、上記した安定化ZrO系耐食性被膜を形成する場合、下地層として、例えばM−Cr−Al−Y系合金(M=Ni、Co、Fe)からなる層を設けることが好ましい。M−Cr−Al−Y系合金は、耐高温酸化性や耐高温腐食性に優れた性質を有するNiあるいはCoを主成分とし、Cr、Al及びYを添加した合金である。この種の合金は、SUS及び安定化ZrO系耐食性被膜の双方に密着し易いという特徴がある。
下地層の気孔率は1%以下であることが好ましい。酸性ガスの透過抑制の観点から、下地層の気孔率は低いほど有利になる。
下地層の膜厚は10〜500μm、特に50〜400μm、さらには70〜350μmであることが好ましい。酸性ガスの透過抑制の観点から、下地層の膜厚は厚いほど有利になる。また下地層は、一般に基材と耐食性被膜の界面に生じる熱膨張特性の相違に起因した熱応力を緩和する効果を有するが、下地層の膜厚が小さすぎると熱応力の緩和効果を得難くなる。一方、下地層の膜厚が大きすぎると、発電設備内部の熱サイクル等によって発生する熱応力が大きくなり、下地層が剥離し易くなる。なお下地層の気孔率は、溶射するM−Cr−Al−Y系合金粉末等の粒径を変えることによって調整することができる。
高温部材は、蒸気や空気等の流体を介して運動エネルギーや熱エネルギーを回収して発電を行う火力発電のタービンや伝熱管であることが好ましい。ただしこれらに限定されるものでない。例えば、各種エンジン等などにも好適に適用できる。
次に本発明の封孔剤を利用した高温部材の製造方法を、SUSからなる基材上に、M−Cr−Al−Y系合金からなる下地層を介して、安定化ZrO系耐食性被膜を形成する場合を例にとって説明する。なお以下の説明において、基材として金属管を用いれば、耐食性被膜付き伝熱管を作製することができる。なお本発明の製造方法は以下の説明に制限されるものではない。当然ながら下地層の形成が必須要件でないことは言うまでもない。
まずSUSからなる基材上に、M−Cr−Al−Y系合金からなる下地層を形成する。
下地層の形成は、特に制限されるものではないが、高速フレーム溶射(HVOF)のようなガス溶射によって形成されることが好ましい。高速フレーム溶射を用いることで、基材であるSUSとの密着性が良く、気孔率も低い下地層を得やすくなる。またこの際に用いる溶射粉末には、M−Cr−Al−Y系合金からなる粉末を使用することが好ましい。M−Cr−Al−Y系合金については既述の通りであり、ここではその説明を省略する。また溶射粉末の平均粒径は10〜75μm、10〜53μm、特に10〜45μmであることが好ましい。溶射粉末の粒径が大きいと、ガス溶射によって形成される下地層の気孔率が高くなる。また溶射粉末の粒径が小さいと、溶射粉末をガスあるいはプラズマに供給する噴出口(ポート)の詰まりが発生しやすくなり、任意の膜厚の溶射被膜の形成に時間がかかり、結果的に溶射コストが高くなり易い。
次にM−Cr−Al−Y系合金からなる下地層上に、安定化ZrO系耐食性被膜を形成する。
安定化ZrO系耐食性被膜は、プラズマ溶射法によって形成することができる。プラズマ溶射法としては大気圧プラズマ溶射法、真空プラズマ溶射法等の種々の方法を用いることが可能である。この際に用いる溶射粉末には、安定化ZrO粉末を使用することが好ましい。なお耐食性被膜の形成は、プラズマ溶射以外の溶射技術(例えばガス溶射)、コールドスプレー、エアロゾルデポジション法等の方法で形成することも可能である。
安定化ZrO粉末の平均粒径は10〜75μm、10〜53μm、特に10〜45μmであることが好ましい。安定化ZrO粉末の平均粒径が大きいと、プラズマ溶射によって形成される耐食性被膜の気孔率が高くなる。また安定化ZrO粉末の平均粒径が小さいと、溶射粉末をプラズマに供給する噴出口(ポート)の詰まりが発生しやすくなり、任意の膜厚の溶射被膜の形成に時間がかかり、結果的に溶射コストが高くなり易い。
続いて安定化ZrO系耐食性被膜上に、封孔剤層を形成する。
封孔剤層の形成は、例えば上記した封孔剤を含むペーストやスラリーを刷毛塗りやスプレー等の方法で耐食性被膜上に塗布し、必要に応じてさらに乾燥させる。このようにして封孔剤層を形成することができる。なお、スパッタリング、溶射等、封孔剤粉末が耐食性被膜から脱落しない方法であれば他の方法を採用することも可能である。
このようにして作製した高温部材の封孔剤層は、封孔剤粉末が耐食性被膜表面に付着した状態であり、未だ完全に気孔を塞いだ状態とはなっていないが、この状態で使用箇所に設置することが可能である。つまり、使用が開始されると高温雰囲気に晒されることになり、その熱によって封孔剤が軟化流動して耐食性被膜表面に存在する気孔を埋めるためである。
本発明の高温部材を作製するに当たり、封孔剤層を乾燥させた後(且つ、実使用の前)に焼成を行ってもよい。焼成条件としては、例えば300〜1000℃で10分〜2時間が好ましい。実使用の前に予め焼成しておくことにより、移送中や使用箇所への設置の際に、封孔剤層が脱落したり、破損したりすることを防止できる。
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
[封孔剤の調製]
表1は本発明の封孔剤の実施例(試料No.1、2)と比較例(試料No.3)を示している。
表2は実施例に用いたガラスの組成と特性を示す。
各試料は次のようにして作製した。まず表2中のガラスI及びガラスIIの組成となるように調合したガラスバッチを1300℃で1時間溶融した。次いでこれをフィルム状に成形した後、粉砕、分級して平均粒径50μmのガラス粉末を得た。続いて各ガラス粉末とホウ酸を表1中の割合となるように混合し封孔剤を得た。ホウ酸は、平均粒径100〜500μmである市販品を使用した。
なお軟化点は、示差熱分析装置を用い、山根正之著「はじめてガラスを作る人のために」に記載の方法に準じて測定した。熱膨張係数は、試料を棒状にプレス成型し、800℃で20分間焼成した後、ディラトメーターにて得られた熱膨張曲線より30〜380℃の平均線熱膨張係数として算出した。
[高温部材の作製]
次に試料No.1の封孔剤を用いて高温部材(試料A)を、試料No.2の封孔剤を用いて高温部材(試料B)を作製した。
試料Aは次のようにして作製した。まず、SUS310S基材を脱脂、洗浄後、ブラスト処理を行い、Co−Ni−Cr−Al−Y系合金からなる平均粒径10〜45μmの合金粉末を高速フレーム溶射し、耐高温酸化性・耐高温腐食性に優れた下地層(Co−Ni−Cr−Al−Y合金層)を形成した。下地層の膜厚は均一で200〜400μmであった。なお下地層の膜厚は、マイクロメーターにて測定した。また膜厚の調整は、まず溶射装置を基材と平行に移動させて溶射し、一回の溶射でどの程度の膜厚が得られるかをマイクロメーターで測定し、これを基にして溶射の回数を調節することにより行った。
次に、平均粒径10〜45μmの8%Y−ZrO粉末を、下地層上に大気圧プラズマ溶射して耐食性被膜を形成した。耐食性被膜の膜厚は均一で50〜200μmであった。なお耐食性被膜の膜厚の調整及び測定はCo−Ni−Cr−Al−Y合金を溶射する際と同様の方法で行った。
続いて以下の方法で封孔剤層を耐食性被膜上に形成した。まずテトラエトキシシラン部分縮合物溶液、ポリビニルブチラール樹脂と試料No.1の封孔剤を混ぜ、封孔剤ペーストを作製した。次に耐食性被膜上に封孔剤ペーストを刷毛塗りによって塗布した後、750℃で4日間焼成した。このようにして試料Aを得た。
試料Bは試料No.2の封孔剤を用いること、焼成温度が650℃であることを除いて、試料Aと同様にして作製した。
また対比のために高温部材試料Cを用意した。
試料Cは、封孔剤として試料No.3を用いることを除き、試料Aと同様にして作製した。
なお試料No.3は、ガラスIのみで構成される封孔剤である。またテトラエトキシシラン部分縮合溶液は、焼成後の固形重量の割合が2〜10質量%となる溶液を用いた。塗布液の調整は、封孔剤を25〜50質量%、テトラエトキシシラン部分縮合溶液を40〜70質量%、樹脂を2〜10質量%の範囲内で調整した。
このようにして得られた高温部材試料A及びB、Cについて、被膜への浸透性を評価した。結果を図1〜図5に示す。なお図1、2は試料Aの観察、分析結果であり、図3、4は試料Bの観察、分析結果であり、図5は試料Cの観察結果である。
図1〜図4から明らかなように、試料No.1、2の封孔剤を用いた試料A、Bは、気孔への浸透性に優れていた。詳細に説明すると、図1、図3からガラス融液が耐食性皮膜内に浸透していることが、図2、図4から少数の気孔しか存在せず気孔への浸透性が高いことが分かる。これに対して試料Cは、図5から明らかなように、浸透性が悪く、多数の気孔が確認された。これらの事実は、本発明の封孔剤が高い封孔性を有しており、長期安定性に優れることを示している。
なお浸透性は、切断した試料を樹脂に包埋し、切断面を研磨した後、切断面をSEM(走査電子顕微鏡)観察及びEDS(エネルギー分散型X線分析)分析を行った。なお、耐食性被膜内の全ての気孔が外部と貫通しているわけではない。従って、独立気孔が存在していても問題はない。
本発明の封孔剤を使用した耐食性被膜は、高温燃焼ガスから、蒸気や空気等の流体を介して運動エネルギーや熱エネルギーを回収して発電を行う火力発電のタービンや伝熱管の保護膜として用いることが好ましい。具体的には、ガスタービン発電、石炭火力発電、石炭ガス化複合発電、石油火力発電、廃棄物発電、地熱発電等のタービンや伝熱管などの保護膜として好適である。ただし、これらに限定されるものでなく、各種エンジン等などの保護膜としても好適である。また本発明の高温部材は、ガスタービン発電、石炭火力発電、石炭ガス化複合発電、石油火力発電、廃棄物発電、地熱発電等のタービンや伝熱管、或いは各種エンジン等として好適である。
1 封孔剤
2 耐食性被膜
3 下地層
4 樹脂

Claims (9)

  1. 耐食性被膜の気孔を封孔するための封孔剤であって、ガラス組成に占めるアルカリ金属酸化物の割合が20質量%以下であるガラスと無アルカリホウ素化合物の混合物からなることを特徴とする封孔剤。
  2. ガラスが、ZnO−B系ガラスであることを特徴とする請求項1に記載の封孔剤。
  3. 封孔剤中に占める無アルカリホウ素化合物の割合が、質量%で5〜70%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の封孔剤。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の封孔剤を含むことを特徴とする封孔剤塗布液。
  5. ZrO、Al及びSiOから選ばれる1種以上を50質量%以上含む耐食性被膜であって、請求項1〜3の何れかの封孔剤からなる粉末が表面に付着していることを特徴とする耐食性被膜。
  6. ZrO、Al及びSiOから選ばれる1種以上を50質量%以上含む耐食性被膜であって、表面に存在する気孔の一部または全体が請求項1〜3の何れかに記載の封孔剤で満たされていることを特徴とする耐食性被膜。
  7. 基材の表面に、請求項5又は6に記載の耐食性被膜が形成されていることを特徴とする高温部材。
  8. 基材上にZrO、Al及びSiOから選ばれる1種以上を50質量%以上含む耐食性被膜を形成する工程と、耐食性被膜上に請求項4に記載の封孔剤塗布液を塗布する工程とを有することを特徴とする高温部材の製造方法。
  9. 封孔剤塗布液の塗布後に焼成する工程を有することを特徴とする請求項8に記載の高温部材の製造方法。
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