JP2017104898A - PbフリーZnはんだ合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】 接合性、信頼性に特に優れ、SiCチップの動作温度250〜350℃に十分耐えることができるPbフリーZnはんだ合金を提供する。【解決手段】Znを主成分とする融点が250℃より高く450℃以下のはんだ合金であって、表面にZnはんだ合金との親和性の高い材料による0.005μm以上50μm以下のコーティング被膜層を有するフィラーを、Znはんだ合金中に含有する。【選択図】なし
Description
本発明は250℃より高く450℃以下の融点を有することで動作温度が250℃以上の高温であるSiC半導体チップを含む電子部品に適用することが出来、更にSiC半導体チップを基板上に接合不良を発生させずに固着させることが出来る高信頼性PbフリーZnはんだ合金に関する。
パワートランジスタ用素子のダイボンディングを始めとして、各種電子部品の組立工程におけるはんだ付では高温はんだ付が行われており、250℃より高く450℃以下の比較的高温の融点を有するはんだ合金(以下、「高温用のはんだ合金」とも称する)が用いられている。このようなはんだ合金としては、Pb−5質量%Sn合金に代表されるPb系はんだ合金が従来から主に用いられている。
近年、環境汚染に対する配慮からPbの使用を規制する動きが強くなってきている。こうした動きに対応して電子組立の分野においても、Pbを含まないPbフリーはんだ合金が求められている。中低温用のはんだ合金に関しては、Snを主成分とするPbフリーはんだ合金が既に実用化されている。高温用のはんだ合金に関しては、Pbフリーを実現するため、Bi系はんだ合金やZn系はんだ合金などがさまざまな機関で開発されている。
パワー半導体素子用にはSiCチップの適用が進んでおり、このSiCチップ接合にも、様々なPbフリーはんだ材が提案されている。
SiCチップは高密度電流を流すことが可能であるためパッケージの大幅な小型化が可能となるためパワー半導体素子用として用いられているが、チップ動作温度が従来のSiチップの動作温度175℃より高く、最大動作温度は250℃程度になるものが多い。車載向けパワーモジュールの一部では350℃まで上昇するものがあるため、接合部にも高耐熱性が要求されている。実際の接合部には、最大動作温度と素子接合温度上限を考慮して、250℃より高く450℃以下の温度を耐えうる接合材料が求められているが、中低温用のSn系はんだ合金では融点が低く耐熱性が不足しているため、高温用のPbフリーはんだ合金の候補材料としては、Au系はんだ合金かZn系はんだ合金が挙げられる。しかし、Au系はんだ合金は高コストであり、特に使用量が多くなる半導体チップの接合用としては好ましくない。
パワー半導体素子用にはSiCチップの適用が進んでおり、このSiCチップ接合にも、様々なPbフリーはんだ材が提案されている。
SiCチップは高密度電流を流すことが可能であるためパッケージの大幅な小型化が可能となるためパワー半導体素子用として用いられているが、チップ動作温度が従来のSiチップの動作温度175℃より高く、最大動作温度は250℃程度になるものが多い。車載向けパワーモジュールの一部では350℃まで上昇するものがあるため、接合部にも高耐熱性が要求されている。実際の接合部には、最大動作温度と素子接合温度上限を考慮して、250℃より高く450℃以下の温度を耐えうる接合材料が求められているが、中低温用のSn系はんだ合金では融点が低く耐熱性が不足しているため、高温用のPbフリーはんだ合金の候補材料としては、Au系はんだ合金かZn系はんだ合金が挙げられる。しかし、Au系はんだ合金は高コストであり、特に使用量が多くなる半導体チップの接合用としては好ましくない。
Zn系はんだ合金については、例えば次の特許文献1に、Zn−Al合金を基本とし、これにGe又はMgを添加し融点を調整した高温用Zn系はんだ合金が記載されている。特許文献1には、更にSn又はInを添加することによって、より一層融点を下げる効果があることも記載されている。
また、はんだ溶融後のチップ接合時に、溶融はんだ合金上の半導体チップ等が自重により傾いてしまう場合があり、固化後のはんだ接合体の厚みに部分的なバラツキが発生する場合がある。このようなはんだ接合体の厚みにバラツキが生じると、厚みが最小になる部分では熱応力の緩和が十分に出来ないことによるクラックが、また厚みが最大になる部分では熱応力の集中に起因するクラックが発生しやすくなり、はんだ接合体の破壊・素子特性の低下などを生じさせる場合がある。この様な半導体素子の傾きによる信頼性低下を改善する手段の一つとして、はんだ接合体の厚みを一定に保つための、フィラー入りはんだ合金が、例えば次の特許文献2で提案されている。
従来の半導体デバイスはSiチップを用いたものを対象にしたものがほとんどであり、信頼性評価試験もSiチップでの発熱を念頭に置いたものが多い。特許文献1には、接合時の温度を上げて高温処理用としたZn系はんだ合金が開示されているが、使用時の発熱はSiチップ使用を念頭に置いているため、サイクル試験の上限を150℃として評価をしている。そのため、特許文献1に示すようなZn系はんだ合金をより高温で発熱するSiCチップ使用のデバイスに用いると、より高温域での熱応力には十分対応しきれず動作時の発熱により繰り返し印加される熱応力によりクラックが発生するおそれがあり、その発生は塗布量が多くなるに従い発生しやすくなる。
また上述したクラックは、半導体チップが傾いてはんだ合金接合部の厚みが場所によって差が生じるとより顕著に発生する。高温はんだ合金であるZn系はんだ合金は、接合時の溶融温度が高く、かつ溶融時の流動性が高いため半導体チップの傾きも生じやすくなる。特許文献2には、フィラー入りはんだ合金を用いることにより、半導体チップの傾きを抑制し、はんだ接合体の厚みバラツキを低減させる技術が開示されているが、フィラー材料を単にはんだ材料よりも高融点の材質からなる粉末としただけであり、フィラーの材質によってははんだ接合体の厚みバラツキを低減させることは出来るが、クラックの発生を防止する効果は十分ではなく、逆にクラックが発生しやすくなってしまうおそれがあった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、250〜350℃の高温で動作するSiC半導体チップを含む電子部品を、基板上に接合不良を発生させずに固着させることが出来る、高信頼性PbフリーZnはんだ合金を提供することを目的としている。
本発明者は、上記した目的を達成するため、フィラー入りZn系はんだ合金のクラック発生要因について鋭意研究を重ねた結果、フィラーとZnはんだ合金との親和性が劣る場合、フィラーとZnはんだ合金との間で界面剥離を生じ、それが起点となってクラックの発生、成長に繋がっていることを見出した。そのため、フィラー表面を改質することによってZnはんだ合金との親和性を改善し、かつ、フィラーによりはんだ接合体の厚みバラツキを無くすことにより、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によるPbフリーZnはんだ合金は、Pbを含まずZnを主成分とする融点が250℃より高く450℃以下のはんだ合金であって、表面にZnはんだ合金との親和性の高い材料による0.005μm以上50μm以下のコーティング被膜層を有するフィラーを、Znはんだ合金中に含有することを特徴とする。
すなわち、本発明によるPbフリーZnはんだ合金は、Pbを含まずZnを主成分とする融点が250℃より高く450℃以下のはんだ合金であって、表面にZnはんだ合金との親和性の高い材料による0.005μm以上50μm以下のコーティング被膜層を有するフィラーを、Znはんだ合金中に含有することを特徴とする。
また、本発明のPbフリーZnはんだ合金においては、フィラー成分を0.005体積%以上3.0体積%以下含有するのが好ましい。
また、本発明のPbフリーZnはんだ合金においては、フィラー成分の平均粒径が、0.01mm以上0.3mm未満であるのが好ましい。
また、本発明のPbフリーZnはんだ合金においては、はんだ合金中にPを、0.001質量%を超えて0.5質量%以下含有しているのが好ましい。
本発明によれば、表面にZnはんだ合金と親和性の高い材料による0.005μm以上50μm以下のコーティング被膜層を有するフィラーを、Znはんだ合金中に含有することにより、Znはんだ合金とフィラーとの間の界面剥離の発生を防止することができ、これにより、SiCチップの動作温度250〜350℃が繰り返し加わる環境下でもクラックが発生することなく好適な接合状態を維持することができ、これにより、パワーモジュールのダイボンディングなど各種電子部品の組立工程でのはんだ付に好適な、接合性及び信頼性に優れたPbフリーZnはんだ合金が得られる。その結果、高温用はんだ合金を用いる製品においてもPbを使用せずに環境汚染対策をすることが可能となるため、工業的価値は非常に高い。
実施例の説明に先立ち、本発明の作用効果について詳細に説明する。本発明のPbフリーZnはんだ合金は、Pbを含まずZnを主成分とする融点が250℃より高く450℃以下のはんだ合金であって、表面にZnはんだ合金との親和性の高い材料による0.005μm以上50μm以下のコーティング被膜層を有するフィラーを、Znはんだ合金中に含有する。
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、Znはんだ合金と傾き防止用フィラーとの親和性の向上が、高温用Znはんだ合金のクラック抑制に最も効果的であることを見出した。すなわち、融点が250℃より高く450℃以下のZnはんだ合金に、表面にZnはんだ合金と親和性の高い材料によるコーティング被膜層を有するフィラーを含有させると、高温接合してもクラック発生などによる不具合の発生しないPbフリーZnはんだ合金を得ることが可能になる。
以下、本発明の実施形態のPbフリーZnはんだ合金に用いる材料について詳しく説明する。
以下、本発明の実施形態のPbフリーZnはんだ合金に用いる材料について詳しく説明する。
1.添加フィラー
本発明で称するフィラーとは、接合する半導体チップの傾きを抑制するための充填材料を指す。本発明のPbフリーZnはんだ合金に用いるフィラーは、450℃より高い融点を持つものであれば、特に限定はないが、好ましくは(1)アルミナ・シリカ等の酸化物、(2)NiやCu等の金属球、(3)黒鉛等が挙げられる。
本発明で称するフィラーとは、接合する半導体チップの傾きを抑制するための充填材料を指す。本発明のPbフリーZnはんだ合金に用いるフィラーは、450℃より高い融点を持つものであれば、特に限定はないが、好ましくは(1)アルミナ・シリカ等の酸化物、(2)NiやCu等の金属球、(3)黒鉛等が挙げられる。
本発明のPbフリーZnはんだ合金に用いるフィラーの添加量は、0.005体積%以上3.0体積%以下が好ましい。フィラーの添加量が0.005体積%未満であると、はんだ接合する際にZnはんだ合金硬化時に生じる半導体チップの傾きを十分に抑制することができず、はんだ厚みバラツキによるクラック発生防止効果が得られない。一方、3.0体積%を超える量を添加すると、フィラーの数が多過ぎてフィラー周辺にはんだが凝集してしまい、これによりはんだ濡れ広がり不足が発生し、接合不足を生じる。
また、本発明のPbフリーZnはんだ合金に用いるフィラーのサイズは、0.01mm以上0.3mm未満が好ましい。本発明のような、高温で動作する電子部品の接合に用いられるはんだ合金には、最終はんだ製品の厚さとして、0.4mm以下の厚さが求められている場合が多い。添加したフィラーのサイズが、最終はんだ製品の厚みに対して2/3以上の大きさを有していると、はんだ合金を加工して最終厚みにするまでの間に、フィラーがはんだ合金表面に露出する場合が容易に発生し、フィラーが一部変形したりフィラー表面が酸化したりしてしまう場合がある。このため、フィラーのサイズの上限は、0.3mm未満とするのが好ましい。一方、フィラーのサイズが0.01mmよりも小さくなってしまうと、Znはんだ合金の接合時に半導体チップの傾き防止効果が得られ難くなり、接合部の厚み差によるクラック発生防止効果が十分得られ難くなる。このため、フィラーのサイズの下限は、0.01mm以上にするのが好ましい。
また、近年、薄型化はより進行し接合部のはんだ厚みとしては、0.015mm以上0.15mm以下の厚みを求められることもある。このような薄いはんだ厚みで半導体チップの傾きを高精度に抑制する必要がある場合は、フィラーのサイズは0.01mm以上0.1mm未満とするのが好ましい。
また、近年、薄型化はより進行し接合部のはんだ厚みとしては、0.015mm以上0.15mm以下の厚みを求められることもある。このような薄いはんだ厚みで半導体チップの傾きを高精度に抑制する必要がある場合は、フィラーのサイズは0.01mm以上0.1mm未満とするのが好ましい。
2.フィラーのコーティング被膜
上記のような高い融点を持つフィラーは、Znはんだ合金との親和性が高くない場合が多いため、単純に添加しただけでは添加フィラーとZnはんだ合金との界面に空隙が出来てしまう場合がある。このような空隙は、Znはんだ合金接合体にクラックを生じさせ易く、クラックが成長した場合は半導体チップの接合剥がれを生じる場合がある。はんだ使用量が十分に多い場合やSiチップのように動作温度が低い場合は、フィラーとはんだ合金との間に空隙が発生しても、クラックにまで成長することが無く問題なく使用できる場合が多かったが、小型化が進みはんだ合金の絶対量が少なくなり、かつSiCチップのように動作温度が高温になると、フィラーとはんだ合金との間に発生した空隙に、従来以上の応力が集中してクラックを生じ、クラックが成長による半導体チップの接合剥がれが発現しやすくなる。
上記のような高い融点を持つフィラーは、Znはんだ合金との親和性が高くない場合が多いため、単純に添加しただけでは添加フィラーとZnはんだ合金との界面に空隙が出来てしまう場合がある。このような空隙は、Znはんだ合金接合体にクラックを生じさせ易く、クラックが成長した場合は半導体チップの接合剥がれを生じる場合がある。はんだ使用量が十分に多い場合やSiチップのように動作温度が低い場合は、フィラーとはんだ合金との間に空隙が発生しても、クラックにまで成長することが無く問題なく使用できる場合が多かったが、小型化が進みはんだ合金の絶対量が少なくなり、かつSiCチップのように動作温度が高温になると、フィラーとはんだ合金との間に発生した空隙に、従来以上の応力が集中してクラックを生じ、クラックが成長による半導体チップの接合剥がれが発現しやすくなる。
この課題を解決するため、本発明のPbフリーZnはんだ合金では、Znはんだ合金との親和性の高い材料による0.005μm以上50μm以下のコーティング被膜層をフィラー表面に形成することにより、Znはんだと添加フィラーとの親和性を改善させている。
本発明のPbフリーZnはんだ合金においてフィラー表面をコーティングする親和性の高い材料による被膜は、フィラーとZnはんだ合金との親和性を改善するためにフィラー表面への酸化・水分吸着を抑制し得るものであれば特に制限はないが、脂肪酸による被膜、金属めっきによる被膜、金属溶射による被膜から選ばれた1種類を用いることが好ましい。
本発明のPbフリーZnはんだ合金においてフィラー表面をコーティングする親和性の高い材料による被膜は、フィラーとZnはんだ合金との親和性を改善するためにフィラー表面への酸化・水分吸着を抑制し得るものであれば特に制限はないが、脂肪酸による被膜、金属めっきによる被膜、金属溶射による被膜から選ばれた1種類を用いることが好ましい。
脂肪酸による被膜は、脂肪酸としては、ラウリン酸、ミスチリン酸、パリチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸等をアルコール中等に溶解させ、カルボン酸イオンとして存在させた溶液にフィラーを投入し、フィラー表面に反応吸着させることにより行うのが好ましい。酸化物層を表面に持つフィラーに対しては、還元効果のあるギ酸とステアリン酸ナトリウムのようなカルボン酸塩を同時に投入した水溶液を作製し、フィラーを投入して表面処理することにより行うのが好ましい。その後、シランカップリング剤と脂肪酸による処理を行うことにより、より強固な被膜を作製することがより好ましい。このような被膜を形成する際、被膜層の厚さが0.005μmより薄いと、被膜がしっかり形成されない箇所を生じるおそれがあり、その部分からフィラー表面が酸化するなどしてクラックなどの不具合を発生する。一方、被膜層の厚さが50μmよりも厚くなると、Znはんだ合金圧延時に圧縮応力がかかった際の被覆層の変形量が多くなり、その部分が変形する際にフィラーとZnはんだ合金界面に空隙が出来やすくなってしまい、その部分からクラックなどの不具合を発生するおそれがある。
金属めっき被膜については、酸洗浄後、Cu、Ni、Ag、Au等のめっき被覆することでZnはんだ合金との親和性を改善することができる。特に無電解Cuめっき、無電解Niめっきは、安価である上、Znはんだ合金との親和性も高いためより好ましい。このような被膜を形成する際、被膜層の厚さが0.005μmより薄いと、被膜がしっかり形成されない箇所を生じるおそれがあり、その部分からクラックなどの不具合を発生する。一方、被膜層の厚さが50μmよりも厚くなると、Znはんだと金属皮膜との間に脆弱な反応合金層が成長してしまい、その反応合金層を起因としたクラックなどの不具合を発生するおそれがある。
金属溶射被膜に関しても、金属めっき被膜と同様の材料を用いることができる。めっきによる被膜形成を用いるか、溶射による被膜形成を用いるかは、フィラーのサイズ、量、材質などから、コストなども勘案しより好ましい方法を選択すれば良い。
なお、金属めっきや金属溶射により被膜を形成する場合、Znはんだ合金への添加は、金属被膜形成後、速やかに行う必要がある。金属被膜形成後、そのまま大気中にて保管しておくと、金属被膜表面の酸化が進行し、Znはんだ合金との親和性が悪化してしまうからである。
なお、金属めっきや金属溶射により被膜を形成する場合、Znはんだ合金への添加は、金属被膜形成後、速やかに行う必要がある。金属被膜形成後、そのまま大気中にて保管しておくと、金属被膜表面の酸化が進行し、Znはんだ合金との親和性が悪化してしまうからである。
3.フィラーの添加方法
フィラーを添加する方法としては、冷間加工時に添加する方法が一般的であるが、その他の方法としてZnはんだ合金を溶解法で得る際に、同時に投入する方法も考えられる。この場合、フィラーが600℃程度まで曝されるため、酸化や表面黒色化が進みZnはんだ合金との親和性が劣ってしまうおそれがあるが、耐熱性のある金属や合金による被膜でフィラー表面を被覆すれば、フィラーに耐熱性を持たせ、Znはんだ合金との親和性を得ることが出来る。
フィラーを添加する方法としては、冷間加工時に添加する方法が一般的であるが、その他の方法としてZnはんだ合金を溶解法で得る際に、同時に投入する方法も考えられる。この場合、フィラーが600℃程度まで曝されるため、酸化や表面黒色化が進みZnはんだ合金との親和性が劣ってしまうおそれがあるが、耐熱性のある金属や合金による被膜でフィラー表面を被覆すれば、フィラーに耐熱性を持たせ、Znはんだ合金との親和性を得ることが出来る。
4.P添加
融点が250℃より高く450℃以下であるZnはんだ合金は、加工時の酸化抑制がはんだ接合時の濡れ性に大きく影響する。加工中の酸化により濡れ性が低下すると、フィラー添加で発生する濡れ性低下がより促進されてしまい、接合不良が容易に発生してしまうおそれがある。このような酸化による濡れ性低下の不具合を改善するために、本発明のPbフリーZnはんだ合金においては、Znはんだ合金中にPを含有することがより好ましい。
融点が250℃より高く450℃以下であるZnはんだ合金は、加工時の酸化抑制がはんだ接合時の濡れ性に大きく影響する。加工中の酸化により濡れ性が低下すると、フィラー添加で発生する濡れ性低下がより促進されてしまい、接合不良が容易に発生してしまうおそれがある。このような酸化による濡れ性低下の不具合を改善するために、本発明のPbフリーZnはんだ合金においては、Znはんだ合金中にPを含有することがより好ましい。
Pは本発明のZnはんだ合金の濡れ性を向上させるために添加して良い元素である。Pが濡れ性を向上させるメカニズムは以下のとおりである。Pは還元性が強いため、はんだ合金溶融時に自らが優先的に酸化されてZnはんだ合金表面の酸化を抑制するとともに、Znはんだ合金表面に生成された酸化物や基板面を還元する結果、Znはんだ合金の濡れ性が向上する。本発明のPbフリーZnはんだ合金のように酸化されやすいZnが主成分のはんだ合金の場合は、Pの添加により効果的に濡れ性を向上させることができる。本発明のPbフリーZnはんだ合金が、更にZnより酸化されやすいAlを含有する場合は、濡れ性が更に低下するため、Pの含有による濡れ性向上の効果は大きい。
また、Pを含有させると接合時のボイドをより発生しにくくさせ接合性を向上させる効果も得られる。即ち、上述したように、Pは濡れ性を向上させる際、はんだ合金の酸化を抑制するだけでなく、はんだ合金表面に生成された酸化物や電子部品等の基板の接合面を還元することによっても濡れ性を向上させる。その結果、Znはんだ合金表面や接合面表面の酸化物が減少するため、接合体内部に残留する酸化物によって形成される隙間(ボイド)が発生しにくくなり、接合性や信頼性等を向上させることが出来る。
なお、PはZnはんだ合金や基板を還元して酸化物になると気化し、雰囲気ガスに流され、はんだや基板等に残らない。このため、Pの残渣が信頼性等に悪影響を及ぼすことはない。
なお、PはZnはんだ合金や基板を還元して酸化物になると気化し、雰囲気ガスに流され、はんだや基板等に残らない。このため、Pの残渣が信頼性等に悪影響を及ぼすことはない。
Pは微量含有させることで濡れ性向上の効果が得られる元素であり、本発明のPbフリーZnはんだ合金中のPの含有量は0.001質量%以上0.5質量%以下が好ましい。0.5質量%を超えて含有させても、濡れ性向上の効果はあまり変わらず、逆に過剰な含有によってはんだ合金溶融時にP酸化物を多量に生成し、除去しきれなかったP酸化物がボイドとなってしまったり、酸化物にならず脆弱なP化合物を生成し、その化合物が偏析することによりはんだ接合部を脆化させてしまったりして信頼性を低下させる恐れがある。また、Pの含有量を0.3重量%以下にすると、脆いP化合物を生成することがほとんどなく還元効果のみ発揮することができるので、更に好ましい。一方、Pの含有量が0.001質量%に満たない場合は、P添加による還元効果が十分に発揮されない。
このような、表面にZnはんだ合金との親和性の高い材料による0.005μm以上50μm以下のコーティング被膜層を形成したフィラーを、Znはんだ合金に添加することにより、フィラーとZnはんだ合金との密着性が良好な、フィラー入りZnはんだ合金を得ることができる。また、本発明のフィラーを含有したPbフリーZnはんだ合金によれば、Znはんだ合金により形成された接合部に応力が加わった時のクラック発生およびクラックの成長による剥がれを改善することができる。
更に、本発明のPbフリーZnはんだ合金において、脂肪酸による被膜を形成したフィラーを用いた場合は、はんだ合金溶融時にフィラーやZnはんだ合金表面の酸化に対して還元作用が働くことにより、溶融時の濡れ広がり性を改善することができより好ましい。
更に、本発明のPbフリーZnはんだ合金において、脂肪酸による被膜を形成したフィラーを用いた場合は、はんだ合金溶融時にフィラーやZnはんだ合金表面の酸化に対して還元作用が働くことにより、溶融時の濡れ広がり性を改善することができより好ましい。
以下、本発明のPbフリーZnはんだ合金の具体的な実施例について説明する。なお、本発明のPbフリーZnはんだ合金は、それらの実施例に限定されるものではない。
(Znはんだ母合金)
本実施例では原料は、それぞれ純度99.99重量%以上のZn、Al、Geを準備し、これらの原料からZn/6体積%Al/5体積%Geになるように秤量して、高周波溶解炉用のグラファイト製坩堝に入れた。上記各原料の入った坩堝を高周波溶解炉に入れ、酸化を抑制するために窒素を原料1kg当たり0.7リットル/分以上の流量で流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、原料を加熱溶融させた。金属が溶融し始めたら混合棒でよく撹拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混合した。全ての原料が十分溶融したことを確認した後、高周波電源を切り、速やかに坩堝を取り出して、坩堝内の溶湯を鋳型に流し込んで、PbフリーZnはんだ合金に用いるZnはんだ母合金を得た。
本実施例では原料は、それぞれ純度99.99重量%以上のZn、Al、Geを準備し、これらの原料からZn/6体積%Al/5体積%Geになるように秤量して、高周波溶解炉用のグラファイト製坩堝に入れた。上記各原料の入った坩堝を高周波溶解炉に入れ、酸化を抑制するために窒素を原料1kg当たり0.7リットル/分以上の流量で流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、原料を加熱溶融させた。金属が溶融し始めたら混合棒でよく撹拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混合した。全ての原料が十分溶融したことを確認した後、高周波電源を切り、速やかに坩堝を取り出して、坩堝内の溶湯を鋳型に流し込んで、PbフリーZnはんだ合金に用いるZnはんだ母合金を得た。
(フィラー)
次に、PbフリーZnはんだ合金に用いるフィラーとして、粒度分布の平均粒径(メジアン径:D50)が50μmのシリカ、アルミナ、Ni球を準備し実施例1〜18に用いた。フィラーの添加量はいずれも0.2体積%とした。評価に用いたフィラーの種類を表1に示す。
次に、PbフリーZnはんだ合金に用いるフィラーとして、粒度分布の平均粒径(メジアン径:D50)が50μmのシリカ、アルミナ、Ni球を準備し実施例1〜18に用いた。フィラーの添加量はいずれも0.2体積%とした。評価に用いたフィラーの種類を表1に示す。
(フィラー表面処理)
被膜の作製の予備処理として、フィラーの表面清浄・酸化膜除去のため、0.5%硝酸水溶液でフィラー表面を洗浄した。
被膜の作製の予備処理として、フィラーの表面清浄・酸化膜除去のため、0.5%硝酸水溶液でフィラー表面を洗浄した。
(被膜形成)
PbフリーZnはんだ合金に用いるフィラーの表面に形成する脂肪酸被膜については、アルコールに0.1体積%のステアリン酸を溶解した溶液内にフィラーを浸漬させ、温度20〜70℃で3〜10分間撹拌した後、70℃で10分乾燥することでフィラー表面に被膜を形成した。被膜の厚さは処理温度と時間を制御することにより、所定の厚みを形成した。
さらに被膜密着性を高め、被膜の厚みを増やすため、ステアリン酸の他にシランカップリング剤を溶解させた溶液内にフィラーを浸漬させ、温度20〜70℃で3〜10分間撹拌した後、120℃で10分間乾燥することにより、フィラー表面により厚みを増した被膜を任意の厚さに形成した。
PbフリーZnはんだ合金に用いるフィラーの表面に形成する脂肪酸被膜については、アルコールに0.1体積%のステアリン酸を溶解した溶液内にフィラーを浸漬させ、温度20〜70℃で3〜10分間撹拌した後、70℃で10分乾燥することでフィラー表面に被膜を形成した。被膜の厚さは処理温度と時間を制御することにより、所定の厚みを形成した。
さらに被膜密着性を高め、被膜の厚みを増やすため、ステアリン酸の他にシランカップリング剤を溶解させた溶液内にフィラーを浸漬させ、温度20〜70℃で3〜10分間撹拌した後、120℃で10分間乾燥することにより、フィラー表面により厚みを増した被膜を任意の厚さに形成した。
また、PbフリーZnはんだ合金に用いるフィラーの表面に形成するめっき被膜については、酸洗浄後、電流密度1〜4A/dm2の条件で銅めっきを行うことでフィラー表面に被膜を形成した。めっき被膜の厚さは電流密度とめっき時間を制御することにより、所定の厚みを形成した。
また、PbフリーZnはんだ合金に用いるフィラーの表面に形成する溶射被膜については、Ni基合金を用いてアーク溶射を行うことでフィラー表面に被膜を形成した。溶射被膜の厚みは、溶射時間を制御することにより、所定の厚みを形成した。
実施例1〜18のPbフリーZnはんだ合金に含有するフィラー表面に形成した各被膜の厚み及び種類を表1に示す。
実施例1〜18のPbフリーZnはんだ合金に含有するフィラー表面に形成した各被膜の厚み及び種類を表1に示す。
(フィラー入りZnはんだ合金の作製)
上記Znはんだ母合金を、圧延機で0.3mmのシート状に加工する。片側の表面をRa=1.0μmに研磨し、その研磨面を上面にしたZnはんだ母合金上に、はんだ合金全体の0.2体積%の量の添加フィラーを供給機によってはんだ母合金全面に均一に分散するよう供給し圧着ローラーを使用して添加フィラーをはんだ母合金内に圧着した。
その後、フィラーを圧着したZnはんだ母合金シートのフィラー圧着面を上面にして下側に、上側に0.3mmのZnはんだ母合金シート準備し、2枚のシートを圧延により圧着し添加フィラーが厚み中央部に分散しているはんだ合金シートを作製した。
圧着後、フィラー入りZnはんだ合金の厚みを0.4mmになるまで圧延加工し、評価用のフィラー入りZnはんだ合金シートを得た。
上記Znはんだ母合金を、圧延機で0.3mmのシート状に加工する。片側の表面をRa=1.0μmに研磨し、その研磨面を上面にしたZnはんだ母合金上に、はんだ合金全体の0.2体積%の量の添加フィラーを供給機によってはんだ母合金全面に均一に分散するよう供給し圧着ローラーを使用して添加フィラーをはんだ母合金内に圧着した。
その後、フィラーを圧着したZnはんだ母合金シートのフィラー圧着面を上面にして下側に、上側に0.3mmのZnはんだ母合金シート準備し、2枚のシートを圧延により圧着し添加フィラーが厚み中央部に分散しているはんだ合金シートを作製した。
圧着後、フィラー入りZnはんだ合金の厚みを0.4mmになるまで圧延加工し、評価用のフィラー入りZnはんだ合金シートを得た。
(評価用試料の作製)
上記のようにしてシート状に加工した各Znはんだ合金シートから、10mm角のはんだ合金材料を切り出した。次に、マニュアルダイボンダーのヒーター部にガラスカバーをして、ヒーター部の窒素を2リットル/分の流量で流した窒素雰囲気下で、ヒーター設定温度を約400℃に設定して加熱した。設定したヒーター温度が安定した後、Cu基板(板厚:約0.70mm)をヒーター部にセッティングして25秒間加熱した。
次に、10mm角にプレカットした各Znはんだ合金材料をCu基板の上に載せ、25秒間加熱した。加熱が完了した後、溶融したZnはんだ合金のスクラブをした上で、10mm角のシリコンチップをはんだ上に供給し接合した。その後接合体をヒーター部から取り上げ、十分に冷却した後、大気中に取り出して評価用試料を得た。
上記のようにしてシート状に加工した各Znはんだ合金シートから、10mm角のはんだ合金材料を切り出した。次に、マニュアルダイボンダーのヒーター部にガラスカバーをして、ヒーター部の窒素を2リットル/分の流量で流した窒素雰囲気下で、ヒーター設定温度を約400℃に設定して加熱した。設定したヒーター温度が安定した後、Cu基板(板厚:約0.70mm)をヒーター部にセッティングして25秒間加熱した。
次に、10mm角にプレカットした各Znはんだ合金材料をCu基板の上に載せ、25秒間加熱した。加熱が完了した後、溶融したZnはんだ合金のスクラブをした上で、10mm角のシリコンチップをはんだ上に供給し接合した。その後接合体をヒーター部から取り上げ、十分に冷却した後、大気中に取り出して評価用試料を得た。
本発明の効果を確認するため、フィラーを添加しないZnはんだ合金を比較例1、表面に上記のような被膜を形成しないフィラーを添加したZnはんだ合金を比較例2〜4として作製した。なお、比較例1〜4のZnはんだ合金については、フィラーの有無及びその表面状態の違い以外は実施例1〜18と同様に作製した。また、本発明のフィラー及び表面被膜処理方法を用いて、好適な範囲を超える厚みの表面被覆膜を形成したフィラーを添加したZnはんだ合金を比較例5〜7として作製した。なお、比較例5〜7のZnはんだ合金については、表面皮膜の厚み以外は実施例1〜18と同様に作製した。
≪評価1≫
<接合性の評価>
接合性の評価は、ダイシェア試験機を用いて評価用試料のシリコンチップに横方向からせん断荷重を加え接合強度を計測して行った。接合強度が30MPa未満で剥がれた場合は「×」とした。接合強度が30MPa以上を示した場合は剥離面の観察を行い、その結果、濡れ広がりが悪い状態(Znはんだ合金の接合痕が剥離面全面に濡れ広がっていなかった状態)が観察されたものは「△」、30Mpa以上の接合強度を有し且つ濡れ広がりが良い状態(Znはんだが薄く濡れ剥離面全面に広がっていた状態)が観察されたものを「○」とした。接合性の評価結果を表1に示す。
<接合性の評価>
接合性の評価は、ダイシェア試験機を用いて評価用試料のシリコンチップに横方向からせん断荷重を加え接合強度を計測して行った。接合強度が30MPa未満で剥がれた場合は「×」とした。接合強度が30MPa以上を示した場合は剥離面の観察を行い、その結果、濡れ広がりが悪い状態(Znはんだ合金の接合痕が剥離面全面に濡れ広がっていなかった状態)が観察されたものは「△」、30Mpa以上の接合強度を有し且つ濡れ広がりが良い状態(Znはんだが薄く濡れ剥離面全面に広がっていた状態)が観察されたものを「○」とした。接合性の評価結果を表1に示す。
<チップの傾きの評価>
チップの傾きの評価は、各試料のチップ四隅におけるはんだ厚みを測定し、測定した四隅のはんだ厚みの最大値から最小値を引いた値をチップの傾きとし、各試料それぞれ20点の平均値を算出した値を用いて行った。チップの傾きの平均値が30μmを超えた値のものをNGとした。チップの傾きの評価結果を表1に示す。
チップの傾きの評価は、各試料のチップ四隅におけるはんだ厚みを測定し、測定した四隅のはんだ厚みの最大値から最小値を引いた値をチップの傾きとし、各試料それぞれ20点の平均値を算出した値を用いて行った。チップの傾きの平均値が30μmを超えた値のものをNGとした。チップの傾きの評価結果を表1に示す。
<ヒートサイクル試験>
接合体の信頼性を評価する試験は、ヒートサイクル試験で確認を行った。−40℃の冷却と+250℃の加熱を1サイクルとするヒートサイクル試験を300サイクル繰り返した。その後、ヒートサイクル試験を実施した各接合体試料を樹脂に埋め込んで断面研磨を行い、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて接合面を観察した。この観察の結果、接合面に剥がれが生じるか又はZnはんだ合金部にクラックが観察された場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。ヒートサイクル試験の評価結果を表1に示す。
なお、実施例1〜18及び比較例1〜7のPbフリーZnはんだ合金の融点は、359〜382℃であった。
接合体の信頼性を評価する試験は、ヒートサイクル試験で確認を行った。−40℃の冷却と+250℃の加熱を1サイクルとするヒートサイクル試験を300サイクル繰り返した。その後、ヒートサイクル試験を実施した各接合体試料を樹脂に埋め込んで断面研磨を行い、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて接合面を観察した。この観察の結果、接合面に剥がれが生じるか又はZnはんだ合金部にクラックが観察された場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。ヒートサイクル試験の評価結果を表1に示す。
なお、実施例1〜18及び比較例1〜7のPbフリーZnはんだ合金の融点は、359〜382℃であった。
本発明の実施例1〜18の被膜を有する各フィラーを添加したZnはんだ合金では、全ての評価項目において良好な特性を示している。即ち、十分な接合強度を有する良好な接合状態が保たれ、顕著なチップの傾きも観察されなかった。その後のヒートサイクル試験における信頼性評価でも「×」は発生せず良好であった。
実施例1〜18の被膜を有する各フィラー入りZnはんだ合金において、接合性が良好であった理由は、フィラー表面に形成された各被膜によりフィラー表面に酸化物の形成や水分の吸着を生じなくなったことや、加工中にもフィラー表面を介した異物や水分の吸着が発生しなかったことが考えられる。更にはんだ溶融時に、従来、Znはんだにフィラーを添加した際に問題となっていた、Znはんだ界面とフィラーとの親和性が良くなり、界面に空隙や未接合部分、大きなボイド等が発生せず、接合性が向上し接合強度が保たれたことが原因と考えられる。
更に、ヒートサイクル試験においても、実施例1〜18の各Znはんだ合金は300回ヒートサイクルを繰り返しても割れなどが発生せず、良好な接合性と信頼性を示した理由についても、被膜を有するフィラーの添加による効果が大きく、接合性が改善されたことにより初期クラックの起因となる部位が少なくなり、さらにチップの傾きが規格内と良好であるために、温度サイクルによる熱応力が発生しても応力集中が発生しにくい状態が保たれて、クラックが発生しにくく、300サイクルでの熱応力を吸収・緩和したためであると考えられる。
一方、比較例1のフィラーを含有していないZnはんだ合金では、チップの傾きが大きく「×」となった。また、比較例2〜4のコーティングをしていないフィラーを用いたZnはんだ合金では、チップの傾きは改善されたが、フィラーとZnはんだ界面に出来た空隙等が接合不良の起因となり、チップの接合強度が弱く30MPa以上の値が得られず、接合性が「×」となった。また、比較例2〜4のZnはんだ合金では、更に、ヒートサイクル試験でも空隙やクラックが確認され、「×」となった。これは、他のはんだより酸化しやすいZnはんだ系で特に発生しやすく従来からよく観察される不良モードで、フィラー周辺に前記空隙と共に多く存在する酸化物や水分等が原因と考えられる。
また、比較例5〜7の50μmを超える厚みの被膜を有するフィラーを含有したZnはんだ合金では、接合性・信頼性の評価が好ましくない結果となった。具体的には、接合時に濡れ広がりが不足し、接合性評価後に観察される接合面積が十分得られておらず、接合強度が30MPa以上ではあったものの、他の実施例よりは低くなっており、評価は「△」であった。これは被膜が厚過ぎることにより、余分な被膜成分が脆い化合物を形成したりしたためと考えられる。また、比較例5〜7のZnはんだ合金では、更に、信頼性試験で300サイクルのヒートサイクル試験を行った接合体試料の接合部を観察した結果、多くのクラックが確認され、評価は「×」であった。
また、比較例5〜7の50μmを超える厚みの被膜を有するフィラーを含有したZnはんだ合金では、接合性・信頼性の評価が好ましくない結果となった。具体的には、接合時に濡れ広がりが不足し、接合性評価後に観察される接合面積が十分得られておらず、接合強度が30MPa以上ではあったものの、他の実施例よりは低くなっており、評価は「△」であった。これは被膜が厚過ぎることにより、余分な被膜成分が脆い化合物を形成したりしたためと考えられる。また、比較例5〜7のZnはんだ合金では、更に、信頼性試験で300サイクルのヒートサイクル試験を行った接合体試料の接合部を観察した結果、多くのクラックが確認され、評価は「×」であった。
≪評価2≫
フィラーの種類をアルミナとしそのサイズを複数用い、フィラー表面に形成する被膜を5μmの厚みのシランカップリング剤を含有したステアリン酸とした以外は実施例1〜18と同じ条件で実施例19〜23と比較例8〜10のZnはんだ合金を夫々作製した。フィラー無しの比較例1のZnはんだ合金を評価対象に加え、各試料の接合性及びチップの傾きの評価に加え、0.4mm厚のZnはんだ合金の外観観察を行なった。
フィラーの種類をアルミナとしそのサイズを複数用い、フィラー表面に形成する被膜を5μmの厚みのシランカップリング剤を含有したステアリン酸とした以外は実施例1〜18と同じ条件で実施例19〜23と比較例8〜10のZnはんだ合金を夫々作製した。フィラー無しの比較例1のZnはんだ合金を評価対象に加え、各試料の接合性及びチップの傾きの評価に加え、0.4mm厚のZnはんだ合金の外観観察を行なった。
<フィラー入りZnはんだ合金の表面状態評価>
得られたフィラー入りZnはんだ合金の外観確認の結果、フィラー入りZnはんだ合金シートの表面にフィラーの露出や長さ0.3mm以上のキズ・汚れ等の表面異常やクラックが入っていた場合を「×」、そのような不良がなく、初期のZnはんだ合金の表面状態と同様の表面状態を保っていた場合を「○」とした。
評価に供した各試料の条件と評価結果を表2に示す。
なお、実施例19〜23及び比較例8〜10のPbフリーZnはんだ合金の融点は、359〜382℃であった。
得られたフィラー入りZnはんだ合金の外観確認の結果、フィラー入りZnはんだ合金シートの表面にフィラーの露出や長さ0.3mm以上のキズ・汚れ等の表面異常やクラックが入っていた場合を「×」、そのような不良がなく、初期のZnはんだ合金の表面状態と同様の表面状態を保っていた場合を「○」とした。
評価に供した各試料の条件と評価結果を表2に示す。
なお、実施例19〜23及び比較例8〜10のPbフリーZnはんだ合金の融点は、359〜382℃であった。
実施例19〜23のZnはんだ合金では、すべての評価項目で問題がなく、良好な結果を示した。
一方、比較例8のZnはんだ合金では、製品の表面状態は問題ないが、チップの傾きがフィラーを添加していない比較例1に近い値で「×」となった。これはフィラーが厚みに対して小さすぎるため、ほとんど傾き抑制効果が出ていないと考えられる。
また、比較例9、10のZnはんだ合金では、逆にフィラーサイズが大きすぎて、0.4mm厚のZnはんだ合金シートの表面を観察したところ、添加フィラーの露出、及び表面近傍の直下に存在するフィラーによる表面の変形や亀裂の存在などの表面異常が確認された。接合性に関しても、前記表面異常部に起因すると思われる接合不良部が多数存在し、接合強度が30MPa未満となり接合性評価は「×」であった。
これは、使用する0.4mm厚のZnはんだ合金に対して、フィラーサイズが大きすぎるためフィラーの露出やZnはんだ合金表面とフィラーとの距離が極薄となった箇所で応力緩和が十分になされず亀裂が生じるなどの異常が発生し、異常部が酸化したりフィラーとZnはんだ合金との隙間に水分が入り込んだりして、接合不良の原因になったと考えられる。
一方、比較例8のZnはんだ合金では、製品の表面状態は問題ないが、チップの傾きがフィラーを添加していない比較例1に近い値で「×」となった。これはフィラーが厚みに対して小さすぎるため、ほとんど傾き抑制効果が出ていないと考えられる。
また、比較例9、10のZnはんだ合金では、逆にフィラーサイズが大きすぎて、0.4mm厚のZnはんだ合金シートの表面を観察したところ、添加フィラーの露出、及び表面近傍の直下に存在するフィラーによる表面の変形や亀裂の存在などの表面異常が確認された。接合性に関しても、前記表面異常部に起因すると思われる接合不良部が多数存在し、接合強度が30MPa未満となり接合性評価は「×」であった。
これは、使用する0.4mm厚のZnはんだ合金に対して、フィラーサイズが大きすぎるためフィラーの露出やZnはんだ合金表面とフィラーとの距離が極薄となった箇所で応力緩和が十分になされず亀裂が生じるなどの異常が発生し、異常部が酸化したりフィラーとZnはんだ合金との隙間に水分が入り込んだりして、接合不良の原因になったと考えられる。
≪評価3≫
フィラーとして平均粒径D50が50μmであり、5μmの厚みのシランカップリング剤を含有したステアリン酸被膜を有したアルミナを用い、そのフィラーの添加量を変えた以外は実施例1〜18と同じ条件で実施例24〜27と比較例11〜12のZnはんだ合金を夫々作製した。フィラー無しの比較例1のZnはんだ合金を評価対象に加え、各試料の0.4mm厚時のZnはんだ合金の外観観察、接合性及びチップの傾きを評価した。
評価に供した各試料の条件と評価結果を表3に示す。
なお、実施例24〜27及び比較例11〜12のPbフリーZnはんだ合金の融点は、359〜382℃であった。
フィラーとして平均粒径D50が50μmであり、5μmの厚みのシランカップリング剤を含有したステアリン酸被膜を有したアルミナを用い、そのフィラーの添加量を変えた以外は実施例1〜18と同じ条件で実施例24〜27と比較例11〜12のZnはんだ合金を夫々作製した。フィラー無しの比較例1のZnはんだ合金を評価対象に加え、各試料の0.4mm厚時のZnはんだ合金の外観観察、接合性及びチップの傾きを評価した。
評価に供した各試料の条件と評価結果を表3に示す。
なお、実施例24〜27及び比較例11〜12のPbフリーZnはんだ合金の融点は、359〜382℃であった。
実施例24〜27のZnはんだ合金では、すべての評価で問題がなく、良好な結果を示した。
一方、比較例11のZnはんだ合金では、製品の表面状態は問題ないが、チップの傾きの評価が「×」となった。これはフィラーの量が少なすぎるため、チップを保持するためのフィラーの量が十分でなく、フィラーのサイズのばらつき及びその分布によってはチップに傾きが生じてしまうためであると考えられる。
また、比較例12のZnはんだ合金では、逆にフィラーの量が多すぎて接合時にはんだ凝集が起こり、その個所ではんだ濡れ広がり不足による接合不良が発生し、接合強度が不足したと考えられる。
一方、比較例11のZnはんだ合金では、製品の表面状態は問題ないが、チップの傾きの評価が「×」となった。これはフィラーの量が少なすぎるため、チップを保持するためのフィラーの量が十分でなく、フィラーのサイズのばらつき及びその分布によってはチップに傾きが生じてしまうためであると考えられる。
また、比較例12のZnはんだ合金では、逆にフィラーの量が多すぎて接合時にはんだ凝集が起こり、その個所ではんだ濡れ広がり不足による接合不良が発生し、接合強度が不足したと考えられる。
≪評価4≫
はんだ原料に、上記Zn、Al、Ge以外に純度99.99重量%以上のPをZnはんだ母合金作製時に同時に添加し、フィラーとして平均粒径D50が50μmであり、5μmの厚みのシランカップリング剤を含有したステアリン酸被膜を有したアルミナを用いた以外は実施例1〜18と同じ条件で実施例28〜30と比較例15のZnはんだ合金を夫々作製した。Pを添加していない以外は本評価用に作製した試料と同条件の実施例21のZnはんだ合金を加え、各試料の0.4mm厚のZnはんだ合金の外観観察、接合性及びチップの傾き、及び300回のヒートサイクル試験に加え500回のヒートサイクル試験を行い比較評価した。
評価に供した各試料の条件と評価結果を表4に示す。
なお、実施例28〜30及び比較例13のPbフリーZnはんだ合金の融点は、359〜382℃であった。
はんだ原料に、上記Zn、Al、Ge以外に純度99.99重量%以上のPをZnはんだ母合金作製時に同時に添加し、フィラーとして平均粒径D50が50μmであり、5μmの厚みのシランカップリング剤を含有したステアリン酸被膜を有したアルミナを用いた以外は実施例1〜18と同じ条件で実施例28〜30と比較例15のZnはんだ合金を夫々作製した。Pを添加していない以外は本評価用に作製した試料と同条件の実施例21のZnはんだ合金を加え、各試料の0.4mm厚のZnはんだ合金の外観観察、接合性及びチップの傾き、及び300回のヒートサイクル試験に加え500回のヒートサイクル試験を行い比較評価した。
評価に供した各試料の条件と評価結果を表4に示す。
なお、実施例28〜30及び比較例13のPbフリーZnはんだ合金の融点は、359〜382℃であった。
実施例21のZnはんだ合金は、評価2で試験した試料であり製品の表面状態、チップの傾き及び一般的な300サイクルまでのヒートサイクル試験では問題無かったが、500サイクルまでの評価では、はんだ部にクラックが発生した。
これに対し、実施例28〜30のZnはんだ合金では、ヒートサイクル試験において、500サイクルまで問題がなく、P添加により接合性や信頼性が向上したのが確認された。
これは、Pを含有することで溶融時の還元効果により、さらに酸化物の異物が減少し、接合性が向上したことによると考えられる。なお、実施例30のZnはんだ合金では、チップの傾きが他の試料より悪化しているが、これは、過剰なPが生成したP化合物が、フィラーによるチップ支持の邪魔をしたためと考えられる。
一方、比較例13のZnはんだ合金では、逆に接合性が悪化し、信頼性も低下した。これは、過剰なPの含有によってPやP酸化物の気体が多量に発生してボイド率を上げてしまったり、Pが脆弱なP化合物を生成して、はんだ接合部を脆化して信頼性を低下させたりしたためと考えられる。また、数多く形成されたP化合物がフィラーによるチップ支持の邪魔を各所で発生させたため、チップの傾き防止の効果が全く得られなかったと考えられる。
これに対し、実施例28〜30のZnはんだ合金では、ヒートサイクル試験において、500サイクルまで問題がなく、P添加により接合性や信頼性が向上したのが確認された。
これは、Pを含有することで溶融時の還元効果により、さらに酸化物の異物が減少し、接合性が向上したことによると考えられる。なお、実施例30のZnはんだ合金では、チップの傾きが他の試料より悪化しているが、これは、過剰なPが生成したP化合物が、フィラーによるチップ支持の邪魔をしたためと考えられる。
一方、比較例13のZnはんだ合金では、逆に接合性が悪化し、信頼性も低下した。これは、過剰なPの含有によってPやP酸化物の気体が多量に発生してボイド率を上げてしまったり、Pが脆弱なP化合物を生成して、はんだ接合部を脆化して信頼性を低下させたりしたためと考えられる。また、数多く形成されたP化合物がフィラーによるチップ支持の邪魔を各所で発生させたため、チップの傾き防止の効果が全く得られなかったと考えられる。
Claims (5)
- Znを主成分とする、融点が250℃より高く450℃以下のはんだ合金であって、
表面にZnはんだ合金との親和性の高い材料による0.005μm以上50μm以下のコーティング被膜層を有するフィラーを、Znはんだ合金中に含有することを特徴とするPbフリーZnはんだ合金。 - 前記フィラー成分を0.005体積%以上3.0体積%以下含有することを特徴とする請求項1に記載のPbフリーZnはんだ合金。
- 前記フィラー成分の平均粒径が、0.01mm以上0.3mm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のPbフリーZnはんだ合金。
- 前記フィラー成分の平均粒径が、最終はんだ製品の厚みの2/3未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のPbフリーZnはんだ合金。
- Znはんだ合金中にPを、0.001質量%を超えて0.5質量%以下含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のPbフリーZnはんだ合金。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2015242608A JP2017104898A (ja) | 2015-12-11 | 2015-12-11 | PbフリーZnはんだ合金 |
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