JP2017101020A - 高純度フェノール化合物の製造方法 - Google Patents

高純度フェノール化合物の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2017101020A
JP2017101020A JP2016223028A JP2016223028A JP2017101020A JP 2017101020 A JP2017101020 A JP 2017101020A JP 2016223028 A JP2016223028 A JP 2016223028A JP 2016223028 A JP2016223028 A JP 2016223028A JP 2017101020 A JP2017101020 A JP 2017101020A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
compound
group
distillation
reaction
aromatic aldehyde
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2016223028A
Other languages
English (en)
Inventor
恵輔 木村
Keisuke Kimura
恵輔 木村
大森 潔
Kiyoshi Omori
潔 大森
鈴枝 改田
Suzue Kaida
鈴枝 改田
浩輔 西村
Kosuke Nishimura
浩輔 西村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ube Corp
Original Assignee
Ube Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ube Industries Ltd filed Critical Ube Industries Ltd
Publication of JP2017101020A publication Critical patent/JP2017101020A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07DHETEROCYCLIC COMPOUNDS
    • C07D317/00Heterocyclic compounds containing five-membered rings having two oxygen atoms as the only ring hetero atoms
    • C07D317/08Heterocyclic compounds containing five-membered rings having two oxygen atoms as the only ring hetero atoms having the hetero atoms in positions 1 and 3
    • C07D317/44Heterocyclic compounds containing five-membered rings having two oxygen atoms as the only ring hetero atoms having the hetero atoms in positions 1 and 3 ortho- or peri-condensed with carbocyclic rings or ring systems
    • C07D317/46Heterocyclic compounds containing five-membered rings having two oxygen atoms as the only ring hetero atoms having the hetero atoms in positions 1 and 3 ortho- or peri-condensed with carbocyclic rings or ring systems condensed with one six-membered ring
    • C07D317/48Methylenedioxybenzenes or hydrogenated methylenedioxybenzenes, unsubstituted on the hetero ring
    • C07D317/62Methylenedioxybenzenes or hydrogenated methylenedioxybenzenes, unsubstituted on the hetero ring with hetero atoms or with carbon atoms having three bonds to hetero atoms with at the most one bond to halogen, e.g. ester or nitrile radicals, directly attached to atoms of the carbocyclic ring
    • C07D317/64Oxygen atoms

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Heterocyclic Compounds That Contain Two Or More Ring Oxygen Atoms (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Abstract

【課題】高純度フェノール化合物の製造方法。【解決手段】芳香族メチルアルコール式(1)と過酸化物を反応させる芳香族アルデヒド式(2)を製造する工程1、酸触媒存在下で式(2)を過酸化物と反応させるフェノール式(3)を製造する工程2、並びに式(3)を精製する高純度フェノールの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、高純度フェノール化合物の製造方法に関する。
フェノール化合物は、医薬品や機能性材料等の原料として有用な化合物である。例えば、3,4−(メチレンジオキシ)フェノール(以下、セサモール(Sesamol)とも称する。)は、白色結晶であり、血圧降下剤等の医薬品の製造原料として重要であり、酸化防止剤、抗菌剤、除草剤、化粧品原料等の用途がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
このセサモールの製造方法として、例えば、ハロゲン化物よりグリニャール試薬を用いて製造する方法(例えば、特許文献3参照)、胡麻油脱臭留出物から抽出する方法(例えば、特許文献4参照)、ヘリオトロピン(ピペロナールとも称する)の酸化反応及び加水分解反応により製造する方法(例えば、特許文献2及び非特許文献1参照)等が知られている。
また、前記製造方法のうち、原料となる芳香族アルデヒド化合物の製造方法として、例えば、芳香族メチルハライド化合物を用いて、芳香族メチルアルコール化合物を製造し、さらにヘリオトロピン等の芳香族アルデヒド化合物を製造する方法が知られている(例えば、特許文献5及び6参照)。
特許第4897801号 特開2002−138087号 特許第2614812号 特開平3−231996号公報 WO2011/105565号 WO2010/041643号
Journal of Organic Chemistry 49 (1984) 4740−4741.
特許文献3においては、反応性が高く、危険なグリニャール試薬が用いられている。また、特許文献4においては、イオン交換樹脂による吸着により精製していることから、スケールアップすることが難しく、胡麻油脱臭留出物中の不純物含量により、セサモールの品質にも悪影響を及ぼす。したがって、これらの製造方法は工業的に好適な製造方法であるとは言えない。
また、特許文献2及び非特許文献1においては、セサモールの製造に用いられる原料として、純度の高いヘリオトロピンが用いられている。高純度ヘリオトロピンが用いられる理由として、純度の低いヘリオトロピンを用いた場合、不純物によって酸化反応が阻害されること、医薬品やその原料としてのセサモールの品質に大きな悪影響があること等が考えられる。したがって、純度の低いヘリオトロピンを用いて、セサモールを合成することは通常考えられない。
また、ヘリオトロピン等の芳香族アルデヒド化合物の製造方法において、高純度な化合物を得るためには、蒸留等の方法により精製する必要があるが、芳香族アルデヒド化合物と不純物とを完全に分離することは困難であるため、一部の芳香族アルデヒド化合物を廃棄せざるを得ない。したがって、より工業的に好適な製造方法とするため、この芳香族アルデヒド化合物を含む粗体を有効に利用することが望まれる。
上記の実情を鑑み、本発明の課題は、芳香族アルデヒド化合物を含む粗体を有効活用すること、及び芳香族アルデヒド化合物を含む粗体を用いて、複雑な工程を経ることなく、高純度フェノール化合物を製造する方法を提供することである。
本発明は以下の1〜5に関する。
1.下記一般式(1)で示される芳香族メチルアルコール化合物と過酸化物とを反応させることで、下記一般式(2)で示される芳香族アルデヒド化合物を製造する工程1、
酸触媒存在下で当該芳香族アルデヒド化合物を含有する粗体と過酸化物とを反応させることで、下記一般式(3)で示されるフェノール化合物を製造する工程2、
並びに当該フェノール化合物を蒸留、再結晶、及び抽出からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法により精製することで高純度フェノール化合物を製造する工程3、
を有することを特徴とする、高純度フェノール化合物の製造方法。

(式中、Rは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12の炭化水素基、炭素原子数1〜12のアルキルオキシ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ベンジルオキシ基又はフェネチルオキシ基を示す。なお、これらの基は、置換基を有していてもよい。nは0から5の整数を示す。また、nが2以上の場合、Rは互いに結合して、環を形成してもよい。)

(式中、R及びnは前記と同義である。)

(式中、R及びnは前記と同義である。)
2.前記一般式(1)で示される芳香族メチルアルコール化合物が下記式(4)で示される化合物であり、前記一般式(2)で示される芳香族アルデヒド化合物が下記式(5)で示される化合物であり、前記一般式(3)で示されるフェノール化合物が下記式(6)で示される化合物である、前記1に記載の高純度フェノール化合物の製造方法。
3.工程2において、芳香族アルデヒド化合物を含有する粗体と反応させる過酸化物が過酸化水素である、前記1又は2に記載の高純度フェノール化合物の製造方法。
4.工程3において、フェノール化合物を蒸留、再結晶、及び抽出からなる群より選ばれる少なくとも2種の方法により精製する、前記1〜3のいずれか1つに記載の高純度フェノール化合物の製造方法。
5.工程2で用いる芳香族アルデヒド化合物を含有する粗体が、工程1において、得られた芳香族アルデヒド化合物をさらに蒸留精製し、得られた初留を含む、前記1〜4のいずれか1つに記載の高純度フェノール化合物の製造方法。
本発明の製造方法によれば、純度の低い芳香族アルデヒド化合物を廃棄することなく、高純度フェノール化合物の原料として用いることができる。さらに、本発明の製造方法によれば、複雑な工程を経ることなく、高純度フェノール化合物を製造する方法を提供することができる。
以下、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
まず、本発明は、以下の3つの工程を有する。
工程1.前記一般式(1)で示される芳香族メチルアルコール化合物と過酸化物とを反応させることで、前記一般式(2)で示される芳香族アルデヒド化合物を製造する工程。
工程2.酸触媒存在下で、当該芳香族アルデヒド化合物を含有する粗体と過酸化物とを反応させることで、前記一般式(3)で示されるフェノール化合物を製造する工程。
工程3.当該フェノール化合物を蒸留、再結晶、及び抽出からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法により精製することで高純度フェノール化合物を製造する工程。
なお、工程2で用いられる芳香族アルデヒド化合物は、工程1で製造された化合物であるが、別の方法で製造した芳香族アルデヒド化合物が混合していてもよい。また、工程2で用いられる芳香族アルデヒド化合物は、工程1で製造された化合物であればよく、必ずしも工程1の直後に、工程2を実施する必要もない。
工程1で使用される過酸化物と工程2で使用される過酸化物は同じであっても異なっていてもよい。以下、工程1で使用される過酸化物を過酸化物A、工程2で使用される過酸化物を過酸化物Bとする。
本発明において、「純度が低い」とは、「芳香族アルデヒド化合物に対する不純物の含量が高い」ということを意味する。
また、粗体とは、芳香族アルデヒド化合物を主成分とする、芳香族アルデヒド化合物と不純物の混合物を示す。不純物は複数種あってもよい。本発明において、具体的には、芳香族メチルアルコール化合物から製造した後精製していない芳香族アルデヒド化合物、精製後に不純物が残存した芳香族アルデヒド化合物、精製後に芳香族アルデヒド化合物が多く含まれる残渣、芳香族アルデヒド化合物の蒸留精製により得られた初留や釜残等が挙げられる。当該粗体として、得られるフェノール化合物の収率や純度を向上させる観点から、好ましくは芳香族アルデヒド化合物の蒸留精製により得られた初留や釜残が挙げられる。
以下、工程1、工程2及び工程3について、それぞれ説明する。
<工程1>
本工程は、前記一般式(1)で示される芳香族メチルアルコール化合物と過酸化物Aとを反応させることで、前記一般式(2)で示される芳香族アルデヒド化合物を製造する工程である。本工程は、後述の通り、芳香族アルデヒド化合物を精製する操作も含む。
(芳香族メチルアルコール化合物)
本発明の製造方法において使用する芳香族メチルアルコール化合物は、下記一般式(1)で示される。
式中、Rは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12の炭化水素基、炭素原子数1〜12のアルキルオキシ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ベンジルオキシ基又はフェネチルオキシ基を示す。なお、これらの基は、置換基を有していてもよい。nは0から5の整数を示す。また、nが2以上の場合、Rは互いに結合して、環を形成してもよい。
一般式(1)中、Rである、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。
一般式(1)中、Rである、炭素原子数1〜12の炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、s−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基及びシクロヘキシル基等)、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、及びフェネチル基等)、及び芳香族基が結合した脂肪族基(アラルキル基:例えば、ベンジル基、フェネチル基等)が挙げられる。なお、これらの基は各種異性体を含む。
一般式(1)中、Rである、炭素原子数1〜12のアルキルオキシ基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基が酸素原子に結合した基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、シクロブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、i−ペンチルオキシ基、s−ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等)である。なお、これらの基は各種異性体を含む。
また、前記炭化水素基、アルキルオキシ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ベンジルオキシ基又はフェネチルオキシ基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基(各種異性体を含む)、炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基(各種異性体を含む)が挙げられる。なお、これらの置換基は、前記炭化水素基に対して一種以上有していてもよい。
更に、nが2以上の場合、Rは互いに結合して、隣接するベンゼン環の炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。このような環としては、例えば、一般式(1)中のベンゼン環と一緒になった、クロマン環、アルキレンジオキシ環、ナフタレン環、インダン環、テトラヒドロナフタレン環等が挙げられる。
前記一般式(1)で示される芳香族メチルアルコール化合物として、好ましくは下記一般式(7)〜(11)で示される化合物が挙げられる。
ここで、一般式(7)〜一般式(10)において、R及びRは、水素原子、炭素原子数1〜12の炭化水素基、炭素原子数1〜12のアルキルオキシ基、フェニルオキシ基又はナフチルオキシ基、ベンジルオキシ基又はフェネチルオキシ基を示す。なお、これらの基は、置換基を有していてもよい。mは1又は2を示す。
及びRにおける炭素原子数1〜12の炭化水素基、炭素原子数1〜12のアルキルオキシ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ベンジルオキシ基又はフェネチルオキシ基、及びこれら基が有していてもよい置換基は、前記一般式(1)のものと同義である。また、R及びRにおける、好ましい炭素原子数1〜12の炭化水素基及び炭素原子数1〜12のアルキルオキシ基は、前記Rと同義である。
以上、前記一般式(1)で示される芳香族メチルアルコール化合物は、好ましくは、前記一般式(1)中のnが1又は2であり、Rがヒドロキシル基、炭素原子数1〜12のアルキルオキシ基、フェニルオキシ基又はナフチルオキシ基、ベンジルオキシ基又はフェネチルオキシ基である化合物であり、より好ましくは、前記一般式(7)〜(11)で示される化合物であり、さらに好ましくは、前記一般式(11)でmが1である化合物(ピペロニルアルコール)である。なお、ピペロニルアルコールは、下記一般式(4)で表される。
(芳香族アルデヒド化合物)
本発明の製造方法により得られる芳香族アルデヒド化合物は、下記一般式(2)で示される。
一般式(2)中、R及びnは、前記一般式(1)と同義である。
前記一般式(2)で示される芳香族アルデヒド化合物としては、例えば、ベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒド、テトラヒドロナフチルアルデヒド、クロマンカルボアルデヒド、下記一般式(12)〜(16)で示される化合物が挙げられる。
式中、R及びRは、前記一般式(7)〜一般式(10)と同義である。
以上、前記一般式(2)で示される芳香族アルデヒド化合物は、好ましくは、前記一般式(2)中のnが1又は2であり、Rがヒドロキシル基、炭素原子数1〜12のアルキルオキシ基、フェニルオキシ基又はナフチルオキシ基、ベンジルオキシ基又はフェネチルオキシ基である化合物であり、より好ましくは、前記一般式(12)〜(16)で示される化合物であり、さらに好ましくは、前記一般式(16)でmが1である化合物(ピペロナール)である。なお、ピペロナールは、下記一般式(5)で表される。
(過酸化物A)
工程1の反応において使用される過酸化物Aは、芳香族メチルアルコール化合物より、芳香族アルデヒド化合物を製造する際に用いる。過酸化物Aとしては、無機過酸化物及び有機過酸化物が挙げられる。無機過酸化物としては、例えば、過酸化水素水;過硫酸、過硫酸水素ナトリウム、過硫酸水素カリウム等の過硫酸化合物等が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルハイドロペルオキシド、メタクロロ過安息香酸、過ギ酸、過酢酸、過プロピオン酸等が挙げられる。中でも好ましくは過酸化水素が使用される。前記過酸化物Aは単独で使用しても、二種類以上を混合使用してもよい。また、過酸化物Aは、そのまま使用しても、水、アルコール等の有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒に溶解又は懸濁させて使用してもよい。
過酸化物Aの使用量は、芳香族メチルアルコール化合物1モルに対して、好ましくは0.1〜5モル、より好ましくは0.2〜3モル、さらに好ましくは0.8〜2.1モル、特に好ましくは0.9〜1.5モル、特により好ましくは0.95〜1.3モルである。
例えば、過酸化物Aとして過酸化水素水を過剰に用いた場合、その過剰分は反応中又は反応終了後に分解し酸素が発生することがわかっている。発生する酸素の量が多くなればなるほど、溶媒や芳香族メチルアルコール化合物、芳香族アルデヒド化合物の蒸気と引火性、爆発性の混合気体を作りやすくなり、操作の安全性に深刻な問題を与える。従って、本発明の方法では、芳香族メチルアルコール化合物1モルに対して過酸化水素の使用量は、5モルを越えない範囲で反応の進行状況に併せてなるべく少ない量で行うことが望ましい。
一方、芳香族メチルアルコール化合物1モルに対して過酸化水素の使用量が少ないと、反応後に残存する未反応の芳香族メチルアルコール化合物を、蒸留等で分離、回収する時に分解や副反応が起こる。特に芳香族環にアルコキシ基やメチレンジオキシ基等の電子供与性の置換基が入った芳香族メチルアルコール化合物の場合は、深刻な問題となることがある。従って、芳香族メチルアルコール化合物1モルに対する過酸化水素の使用量は、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.2モル以上、さらに好ましくは0.8モル以上である。
前記過酸化物Aとして過酸化水素水を使用する場合、その濃度は特に制限はないが、好ましくは10重量%〜90重量%水溶液、より好ましくは30重量%〜80重量%水溶液であり、さらに好ましくは40重量%〜70重量%水溶液である。
また、本発明の製造方法は、過酸化水素水溶液を、最後に反応系へと加える操作にて行うことも出来る。即ち、本発明は、例えば、反応中に過酸化物Aの消費状態を確認したり、反応の進行状態を制御したりする目的で、過酸化物Aを連続的又は段階的に滴下する等の方法で加える操作を行うことが出来る製造方法でもある。
従って、本発明の製造方法は、上記のような操作法を行うことにより、例えば、市販品の30%過酸化水素水溶液をそのまま使用することも出来るが、60%過酸化水素水溶液等のような、より高濃度の当該水溶液を使用した場合においても、安全、かつ反応後の廃液量を削減した方法にて芳香族アルデヒド化合物を製造することが出来る。
(金属化合物)
工程1の反応は、モリブデン化合物及びタングステン化合物から選ばれる少なくとも一種の金属化合物の存在下にて行われることが好ましく、モリブデン化合物存在下にて行われることがさらに好ましい。
工程1の反応で使用できるモリブデン化合物としては、例えば、水酸化モリブデン;モリブデン酸リチウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム等のモリブデン酸アルカリ化合物;モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム等のモリブデン酸アルカリ土類金属化合物;モリブデン酸セリウム、モリブデン酸鉄等のモリブデンと第IIIb族、第IVb族、第Vb族または第VIb族元素とからなるモリブデン化合物;モリブデン酸アンモニウム;二酸化モリブデン;三酸化モリブデン;三硫化モリブデン;六塩化モリブデン;ケイ化モリブデン;ホウ化モリブデン;窒化モリブデン;炭化モリブデン;リンモリブデン酸;リンモリブデン酸ナトリウム等のリンモリブデン酸アルカリ化合物;リンモリブデン酸アンモニウム;ヘキサカルボニルモリブデン;モリブデン酸銀;モリブデン酸コバルト等が挙げられる。なお、これらのモリブデン化合物は、例えば、モリブデン酸ナトリウム二水和塩、モリブデン酸カリウム二水和塩等のように水和物であってもよい。
モリブデン化合物として、好ましくは上記のうちモリブデン酸アニオンを生成しやすいモリブデン化合物であるが、具体的には、より好ましくはモリブデン酸アルカリ化合物、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸アルカリ化合物、ヘキサカルボニルモリブデン、特に好ましくはモリブデン酸ナトリウム二水和塩、モリブデン酸カリウム二水和塩、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、ヘキサカルボニルモリブデン、特により好ましくはモリブデン酸ナトリウム二水和塩、モリブデン酸カリウム二水和塩、二酸化モリブデン、ヘキサカルボニルモリブデンである。
工程1の反応で使用できるタングステン化合物としては、例えば、タングステン酸;タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム等のタングステン酸アルカリ化合物;テトラオキソタングステン(IV)酸コバルト(II)、オキシタングステン酸第二鉄等のタングステンと第IIIb族、第IVb族、第Vb族または第VIb族元素とからなるタングステン化合物;タングステン酸アンモニウム;二酸化タングステン;三酸化タングステン;三硫化タングステン;六塩化タングステン;ケイ化タングステン;ホウ化タングステン;窒化タングステン;炭化タングステン;リンタングステン酸;リンタングステン酸ナトリウム等のリンタングステン酸アルカリ化合物;リンタングステン酸アンモニウム;ヘキサカルボニルタングステン;タングステン酸銀;タングステン酸コバルト等が挙げられる。なお、これらのタングステン化合物は、例えば、タングステン酸ナトリウム二水和塩、タングステン酸カリウム二水和塩等のように水和物であってもよい。
タングステン化合物として、好ましくは上記のうちタングステン酸アニオンを生成し易いタングステン化合物であるが、具体的には、より好ましくはタングステン酸アルカリ化合物、三酸化タングステン、リンタングステン酸、リンタングステン酸アルカリ化合物、ヘキサカルボニルタングステン、特に好ましくはタングステン酸ナトリウム二水和塩、タングステン酸カリウム二水和塩である。
前記モリブデン化合物及びタングステン化合物から選ばれる少なくとも一種以上の金属化合物は、それぞれ単独で使用しても、それぞれから選ばれる二種類以上を混合して使用してもよい。また、本発明の反応をより効率的に行うために、例えば、スカンジウム、セリウム、チタン、ジルコニウム、鉄、アルミニウム、ルテニウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、ビスマス、アンチモン等の遷移金属等の金属触媒を組み合わせて用いることもできる。また、モリブデン化合物、タングステン化合物は、そのまま使用しても、水、アルコール等の有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒に溶解又は懸濁させて使用してもよい。
工程1において、モリブデン化合物及びタングステン化合物から選ばれる少なくとも一種の金属化合物の使用量は、芳香族メチルアルコール化合物1モルに対して、好ましくは0.0001〜0.10モル、より好ましくは0.0005〜0.08モル、さらに好ましくは0.001〜0.05モルである。この範囲とすることで、不純物を増加させることなく、工業的に好適な反応速度で芳香族アルデヒド化合物を製造することができる。
(第四級アンモニウム塩及び有機ホスホニウム塩)
工程1の反応は、第四級アンモニウム塩及び有機ホスホニウム塩から選ばれる少なくとも一種の塩の存在下にて行われることが好ましい。
工程1で使用できる第四級アンモニウム塩は、第四級アンモニウム硫酸水素塩及び/又は第四級アンモニウムハライドが挙げられる。
第四級アンモニウム硫酸水素塩としては、例えば、硫酸水素テトラプロピルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラn−へキシルアンモニウム、硫酸水素ベンジルトリメチルアンモニウム、硫酸水素ベンジルトリエチルアンモニウム、硫酸水素ラウリルトリメチルアンモニウム、硫酸水素ステアリルトリメチルアンモニウム、硫酸水素ジラウリルジメチルアンモニウム、硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム、硫酸水素エチルトリオクチルアンモニウム、硫酸水素N−ラウリルピリジニウム、硫酸水素N−セチルピリジニウム、硫酸水素N−ラウリルピコリニウム、硫酸水素N−セチルピコリニウム、硫酸水素N−ラウリルキノリウム硫酸水素N−セチルキノリウム等が挙げられる。
第四級アンモニウムハライドとしては、クロリド又はブロマイドを有する第四級アンモニウムハライドが好ましく、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、エチルトリオクチルアンモニウムクロリド、N−ラウリルピリジニウムクロリド、N−セチルピリジニウムクロリド、N−ラウリルピコリニウムクロリド、N−セチルピコリニウムクロリド、N−ラウリルキノリウムクロリドN−セチルキノリウムクロリド等が挙げられる。
なお、これらの第四級アンモニウム塩は、水和物であってもよい。
第四級アンモニウム塩として、より好ましくは硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラn−へキシルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミドが挙げられる。
なお、前記第四級アンモニウム塩は、単独又は二種以上を混合して使用してもよい。また、第四級アンモニウム塩は、そのまま使用しても、水、アルコール等の有機溶媒これらの混合溶液として使用してもよい。
工程1において、第四級アンモニウム塩の使用量は、芳香族メチルアルコール化合物1モルに対して、好ましくは0.0001〜0.10モル、より好ましくは0.0005〜0.08モル、特に好ましくは0.001〜0.05モルである。この範囲とすることで、不純物を増加させることなく、工業的に好適な反応速度で芳香族アルデヒド化合物を製造することができる。
工程1で使用できる有機ホスホニウム塩は、芳香族置換基及び/又はアルキル置換基を有する有機ホスホニウム塩が挙げられる。
有機ホスホニウム塩としては、例えば、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムヨージド、テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨージド等が挙げられるが、好ましくはテトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミドである。
なお、前記有機ホスホニウム塩は、単独又は二種以上を混合して使用してもよい。また、有機ホスホニウム塩は、そのまま使用しても、水、アルコール等の有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒に溶解又は懸濁させて使用してもよい。
工程1において、有機ホスホニウム塩の使用量は、芳香族メチルアルコール化合物1モルに対して、好ましくは0.0001〜0.10モル、より好ましくは0.0005〜0.08モル、特に好ましくは0.001〜0.05モルである。
(緩衝剤)
工程1の反応は、例えば、pHの調整を簡便にする、過酸化物Aを安定化させる等の目的で反応液にリン酸化合物、ホウ酸化合物及び炭酸化合物から選ばれる少なくとも一種の緩衝剤を添加して反応を行ってもよい。
工程1の反応で使用できるリン酸化合物としては、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸等のリン酸;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸のアルカリ塩;リン酸カルシウム等のリン酸のアルカリ土類塩;リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム等のリン酸水素化合物のアルカリ塩、及びリン酸アンモニウムが挙げられる。
工程1の反応で使用できるホウ酸化合物としては、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等のホウ酸;ホウ酸カリウム四ホウ酸カルシウム等のホウ酸のアルカリ塩ホウ酸のアルカリ土類塩、及びホウ酸アンモニウムが挙げられる。
工程1の反応で使用できる炭酸化合物としては、例えば、炭酸;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸のアルカリ塩;炭酸カルシウム等の炭酸のアルカリ土類塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素化合物のアルカリ塩等が挙げられる。
なお、前記リン酸化合物、ホウ酸化合物及び炭酸化合物は、単独又は二種以上を混合して使用してもよい。また、これらの化合物は、そのまま使用しても、水、アルコール等の有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒に溶解又は懸濁させて使用してもよい。
前記化合物にうち、反応中の過酸化物Aの安定化という観点から、好ましくは、リン酸化合物が使用される。なお、リン酸化合物、ホウ酸化合物、及び炭酸化合物から選ばれる少なくとも一種の緩衝剤の使用量は、芳香族メチルアルコール化合物1モルに対して、好ましくは0.0001〜0.005モル、より好ましくは0.0003〜0.05モル、特に好ましくは、0.0005〜0.03モルである。
(溶媒)
工程1の反応は、溶媒の非存在下、又は溶媒の存在下で行うことできる。
使用される溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、水;ギ酸;酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等の脂肪族カルボン酸類;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機スルホン酸類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルコール類;アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;n−ペンタン、n−へキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−メチレンジオキシベンゼン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;ニトロベンゼン等のニトロ化芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のカルボン酸エステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホン類等が挙げられる。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用してもよい。
前記溶媒を使用する場合、その使用量は、反応液の均一性や撹拌性等により適宜調節されるが、例えば、芳香族メチルアルコール化合物1gに対して、好ましくは0.1〜1000gであり、より好ましくは、0.3〜500g、特に好ましくは0.5〜200g、特により好ましくは、0.5〜100gである。
(pHの調整)
工程1の反応溶液のpH値の範囲は、好ましくはpH0.01以上、10未満である。金属化合物としてモリブデン化合物を使用した場合は、好ましくはpH0.01〜10、より好ましくはpH0.01以上9未満、特に好ましくはpH0.1以上9未満、特により好ましくはpH0.5以上9未満、特に更に好ましくはpH0.8以上9未満、特により更に好ましくはpH1以上9未満である。一方、金属化合物としてタングステン化合物を使用した場合は、好ましくはpH3以上8未満、より好ましくはpH4〜7.5、特に好ましくはpH5〜7である。
例えば、工程1の反応は、反応液のpH値が、pH0.01未満でも収率よく製造することは可能であると考えられる。しかし、本発明は、工業的に好適な製造方法の提供を課題としており、実際には、pH0.01未満のpHを正確に測定する装置を汎用的に使用することは一般的でないことから、汎用的な測定装置の検出限界値であるpH0.01以上を本発明の反応の反応液のpH値の下限とした。一方、反応液のpH値が、pH10以上は、原料である過酸化物Aが分解しやすいため好ましくはない。従って、本発明は、上記のような反応液のpHの範囲で反応を行うことにより、従来の製法と比べて、より高い転化率、より高い反応選択率により、良好な収率にて芳香族アルデヒド化合物を製造することができる。
特に、芳香族環にアルコキシ基やメチレンジオキシ基等の電子供与性の置換基が入った芳香族メチルアルコール化合物を用いる場合は、より反応性が高い傾向があるため、上記のようなpHの範囲で反応を行わなければ、より副生成物を与える可能性も高いと考えられる。即ち、本発明の反応においては、反応液のpHの調整は特に重要である。
工程1の反応において、例えば、反応液等のpH調整に用いる化合物(以下、pH調整剤と称することがある。)は反応を阻害しなければ特に限定されない。
pH調整剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ルビジウムメトキシド、セシウムメトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;カルシウムメトキシド、マグネシウムメトキシド等のアルカリ土類金属のアルコキシド;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム等のアルカリ金属のカルボン酸塩;アルカリ土類金属のカルボン酸塩;リン酸ナトリウム等のアルカリ金属のリン酸塩;アルカリ土類金属のリン酸塩;リン酸、塩酸、硫酸、ホウ酸等が挙げられる。pH調整剤として前記緩衝剤を用いることもできる。
pH調整剤として、好ましくは、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のリン酸塩、アルカリ土類金属のリン酸塩、リン酸、ホウ酸である。なお、上記のpH調整剤は、単独又は二種以上を混合して使用してもよい。また、上記化合物は、そのまま使用しても、水、アルコール等の有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒に溶解又は懸濁させて使用してもよい。
(温度)
工程1の反応温度は、特に限定されないが、冷却、昇温など操作面の煩雑さを避けるために、好ましくは20℃〜150℃、より好ましくは40℃〜140℃、特に好ましくは60℃〜130℃で行う。
(圧力)
工程1の反応の反応圧力は、特に限定されない。また、反応環境も特に限定されないが、本発明の反応は、使用する過酸化水素の分解に伴う酸素の発生により、前記安全性が問題になる場合があるので、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)気流下、又は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
(精製方法)
本実施形態の反応によって得られる芳香族アルデヒド化合物は、反応終了後、精製することなく、工程2の原料として用いることもできる。また、例えば、濾過、抽出、蒸留、昇華、再結晶、カラムクロマトグラフィー等による一般的な方法によって単離・精製した後の濾液や釜残等を工程2の原料として用いることもできる。精製方法は使用する溶媒や基質等により適宜調節されるが、例えば、抽出洗浄、蒸留、及び再結晶により精製することができる。
蒸留精製においては、連続方式、半回分式、回分式(バッチ式)のいずれの方法でもよいが、回分式が好ましい。また、蒸留装置は単蒸留装置、精留段を持つ蒸留装置のいずれでも構わない。また、精留段を持つ蒸留装置を使用する場合、その精留段の段数には制限はないが、効率よく芳香族アルデヒド化合物を精製し、回収率を向上させるという点で、精留段は1〜10段であることが好ましい。また、精留段を持つ蒸留装置を使用する場合、還流比(還流量を留出量で割った値を示す。)は、適宜調節される。
蒸留において、反応溶液中から沸点が同程度のものを分離するとき、沸点が低いものから順に、軽沸、初留、主留とし、蒸留後に反応容器に残存したものを釜残とする。一般的に、反応容器中の圧力の変化や凝結する前の気体の温度等を測定することにより、軽沸、初留、主留等の切り替えを行うことができる。
蒸留条件については、軽沸、初留、主留を取得する順に、蒸留圧力は低くなり、蒸留温度は高くなる。粗生成物の成分によって適宜決められるが、主留を取得する場合、好ましくは40℃〜300℃、より好ましくは50℃〜250℃、さらにより好ましくは60℃〜200℃である。この範囲とすることで、不純物を増加させることなく、効率的に芳香族アルデヒド化合物と不純物とを分離することができる。
蒸留圧力は、温度や混入している低沸点及び高沸点の不純物の量に依存するため、特に制限されないが、例えば、好ましくは0.01kPa〜5kPa、より好ましくは0.05kPa〜2kPaである。この範囲とすることで、効率的に芳香族アルデヒド化合物と不純物を分離することができる。
蒸留の回数は、混入している低沸点及び高沸点の不純物の種類や量に依存するため、特に制限されないが、複数回蒸留することにより、芳香族アルデヒド化合物の純度を向上させることができる。しかしながら、蒸留回数を増やすとコストがかかることから、蒸留回数は好ましくは1回又は2回、より好ましくは1回である。
軽沸については、水分が多く、他にも芳香族アルデヒド化合物より沸点の低い不純物が多く含まれるため、廃棄することが好ましい。
本明細書において、初留とは、蒸留操作において得られる、水分より沸点が高く、芳香族アルデヒド化合物より沸点が低い化合物の混合物を示す。したがって、初留中には、芳香族アルデヒド化合物より沸点の低い有機化合物が含まれることがある。そのため、初留中の不純物を除去するため、再度蒸留することにより、不純物が除去される芳香族アルデヒド化合物を得ることができ、芳香族アルデヒド化合物の収率を向上させることができる。または、本初留を後述する工程2に用いてもよい。なお、再度蒸留する際の圧力や温度等の条件は、前述と同様である。
主留中には、芳香族アルデヒド化合物が高純度で含まれるため、これ以上蒸留する必要がない。不純物が混入する場合は、再度蒸留してもよい。
また、釜残中にも芳香族アルデヒド化合物が多く含まれることがあるため、再度蒸留してもよい。再度蒸留する際の圧力や温度等の条件は、前述と同様である。釜残を再度蒸留する際、釜残を反応溶液に混ぜて1回目の蒸留と同時に行ってもよいし、初留と混ぜて再蒸留してもよい。
しかしながら、蒸留回数を増やすとコストがかかることから、初留及び釜残、好ましくは初留については再度蒸留することなく、後述する工程2の原料として用いる。したがって、工程2で用いる芳香族アルデヒド化合物を含有する粗体は、工程1において、蒸留精製により得られた初留を含むことが好ましい。
不純物の残存量や精留段数等に応じて、再蒸留の有無や蒸留の条件等を適宜調節する。再蒸留の回数は複数回であっても構わない。
以上の精製により、高純度な芳香族アルデヒド化合物を製造することができる。なお、以上の精製方法は、製造される芳香族アルデヒド化合物の沸点等の物性に応じて適宜変更されるが、芳香族アルデヒド化合物の中でも前記一般式(16)においてmが1である化合物(ピペロナール)を精製する際に、特に好適に適用される。
<工程2>
工程2は、酸触媒存在下で、前記一般式(2)で示される芳香族アルデヒド化合物を含有する粗体と過酸化物Bとを反応させることで、前記一般式(3)で示されるフェノール化合物を製造する工程である。
(芳香族アルデヒド化合物)
工程2で用いられる粗体中の芳香族アルデヒド化合物は、前記一般式(2)で示され、前述の工程1により製造されるものである。当該芳香族アルデヒド化合物を含有する粗体は、前述の工程1により合成された後、精製することなく、工程2の原料として用いるものでもよいし、蒸留精製により得られた初留や釜残を工程2の原料として用いてもよい。また、前記粗体は、本発明とは異なる方法により製造された芳香族アルデヒド化合物を含んでいてもよい。なお、本発明において、芳香族アルデヒド化合物を含有する粗体とは、芳香族アルデヒド化合物以外の不純物が、全重量に対し1重量%〜20重量%含まれる粗体を示す。本工程で用いるためには、芳香族アルデヒド化合物以外の不純物が、全重量に対し、好ましくは2重量%〜15重量%、より好ましくは3重量%〜12重量%、さらに好ましくは3重量%〜10重量%である粗体を用いる。
芳香族アルデヒド化合物以外の不純物を含んでいても反応が進行し、工程3による精製により高純度フェノール化合物を得られる。したがって、含量の低い芳香族アルデヒド化合物や廃棄物を有効利用できるという点で、本発明の製造方法は、工業的に好適な製造方法である。
(フェノール化合物)
本発明の製造方法により得られるフェノール化合物は、前記一般式(3)で示される。一般式(3)において、R及びnは前記一般式(1)及び(2)と同義である。
一般式(3)で示されるフェノール化合物として、例えば、フェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−オール、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−オール、クロマン−7−オール、クロマン−8−オール、下記一般式(17)〜一般式(21)に示される化合物が挙げられる。
式中、R及びRは、前記一般式(7)〜一般式(10)と同義である。
以上、前記一般式(3)で示されるフェノール化合物は、好ましくは、nが1又は2であり、Rはヒドロキシル基、炭素原子数1〜12のアルキルオキシ基、フェニルオキシ基又はナフチルオキシ基、ベンジルオキシ基又はフェネチルオキシ基である化合物であり、より好ましくは、前記一般式(17)〜(21)で示される化合物であり、さらに好ましくは、前記一般式(21)でmが1である化合物〔3,4−(メチレンジオキシ)フェノール(セサモールとも称する)〕であることがさらにより好ましい。なお、3,4−(メチレンジオキシ)フェノールは下記式(6)で表される。
(過酸化物B)
工程2の反応において使用される過酸化物Bは、芳香族アルデヒド化合物より、フェノール化合物を製造する際に用いる。過酸化物Bとしては、無機過酸化物及び有機過酸化物が挙げられる。無機過酸化物としては、例えば、過酸化水素水;過硫酸、過硫酸水素ナトリウム、過硫酸水素カリウム等の過硫酸化合物等が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルハイドロペルオキシド、メタクロロ過安息香酸、過ギ酸、過酢酸、過プロピオン酸等が挙げられる。中でも好ましくは過酸化水素が使用される。前記過酸化物Bは単独で使用しても、二種類以上を混合使用してもよい。また、過酸化物Bは、そのまま使用しても、水、アルコール等の有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒に溶解又は懸濁させて使用してもよい。
過酸化物Bの使用量は、芳香族アルデヒド化合物1モルに対して、好ましくは0.1モル〜5モル、より好ましくは0.2モル〜3モル、さらに好ましくは0.8モル〜2.5モル、特に好ましくは0.9モル〜2.0モル、特により好ましくは1.0モル〜1.8モルである。
例えば、過酸化物Bとして過酸化水素水を過剰に用いた場合、その過剰分は反応中又は反応終了後に分解し酸素が発生することがわかっている。発生する酸素の量が多くなればなるほど、溶媒や芳香族アルデヒド化合物、フェノール化合物の蒸気と引火性、爆発性の混合気体を作りやすくなり、操作の安全性に深刻な問題を与える。従って、本発明の方法では、芳香族アルデヒド化合物1モルに対して過酸化水素の使用量は、5モルを越えない範囲で反応の進行状況に併せてなるべく少ない量で行うことが望ましい。
一方、芳香族アルデヒド化合物1モルに対して過酸化水素の使用量が少ないと、反応後に残存する未反応の芳香族アルデヒド化合物を、蒸留等で分離、回収する時に分解や副反応が起こる。特に芳香族環にアルコキシ基やメチレンジオキシ基等の電子供与性の置換基が入った芳香族アルデヒド化合物の場合は、深刻な問題となることがある。従って、芳香族アルデヒド化合物1モルに対する過酸化水素の使用量は、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.2モル以上、さらに好ましくは0.8モル以上である。
前記過酸化物Bとして過酸化水素水を使用する場合、その濃度は特に制限はないが、好ましくは10重量%〜90重量%水溶液、より好ましくは30重量%〜80重量%水溶液であり、さらに好ましくは40重量%〜70重量%水溶液である。
また、本発明の製造方法は、過酸化水素水溶液を、最後に反応系へと加える操作にて行うことも出来る。即ち、本発明は、例えば、反応中に過酸化物Bの消費状態を確認したり、反応の進行状態を制御したりする目的で、過酸化物Bを連続的又は段階的に滴下する等の方法で加える操作を行うことが出来る製造方法でもある。
従って、本発明の製造方法は、上記のような操作法を行うことにより、例えば、市販品の30%過酸化水素水溶液をそのまま使用することも出来るが、60%過酸化水素水溶液等のような、より高濃度の当該水溶液を使用した場合においても、安全、かつ反応後の廃液量を削減した方法にて芳香族アルデヒド化合物を製造することが出来る。
(酸触媒)
工程2の反応において使用する酸触媒は、具体的には、例えば、無機酸として塩化水素、臭化水素などのハロゲン化水素の水溶液;過塩素酸、塩素酸などのハロゲンオキソ酸類;硫酸、フルオロスルホン酸などの硫酸類;リン酸、ヘキサフルオロリン酸などのリン酸類;ホウ酸、テトラフルオロホウ酸などのホウ酸類;他にも硝酸、クロム酸、ヘキサフルオロアンチモン酸などが挙げられる。また、有機酸としてはメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸類;酢酸、ギ酸、クエン酸、安息香酸などのカルボン酸類;クレゾール、カテコールなどのフェノール類が挙げられる。中でも好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、更に好ましくは硫酸が使用される。なお、これらの酸は単独又は二種以上を混合して使用してもよい。
工程2の反応において使用する酸の使用量は、芳香族アルデヒド化合物1モルに対して、好ましくは0.03モル〜0.3モル、更に好ましくは0.05モル〜0.15モルである。この範囲とすることで、反応選択性を下げることなく、高い反応速度を維持することができる。
(溶媒)
工程2の反応は、溶媒の非存在下、又は溶媒の存在下で行うことできる。
使用される溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、水、ギ酸、脂肪族カルボン酸類(例えば、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等)、有機スルホン酸類(例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン)、脂肪族炭化水素類(例えば、n−ペンタン、n−へキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、尿素類(N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−メチレンジオキシベンゼン等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化芳香族炭化水素類(例えば、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン等)、ニトロ化芳香族炭化水素類(例えば、ニトロベンゼン等)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)等が挙げられるが、中でも、水中の過酸化水素との反応を向上させる観点から、水、アルコール類、水溶性のエーテル類(テトラヒドロフラン等)が好ましい。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用してもよい。
前記溶媒を使用する場合、その使用量は、反応液の均一性や撹拌性等により適宜調節されるが、例えば、芳香族アルデヒド化合物1gに対して、好ましくは0.1〜1000gであり、より好ましくは、0.3〜500g、さらに好ましくは0.5〜200g、さらにより好ましくは、0.5〜100gである。
工程2の反応温度は、特に限定されないが、冷却、昇温など操作面の煩雑さを避けるために、好ましくは20℃〜100℃、より好ましくは30℃〜80℃、特に好ましくは40℃〜70℃で行う。
工程2の反応時間は、用いる溶媒や反応温度等に応じて適宜調節されるが、好ましくは0.5時間〜5時間、より好ましくは1時間〜3時間で行う。
工程2の反応の反応圧力は、特に限定されない。また、反応環境も特に限定されないが、本発明の反応は、使用する過酸化水素の分解に伴う酸素の発生により、前記安全性が問題になる場合があるので、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)気流下、又は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
<工程3>
工程3は、工程2で得られたフェノール化合物を蒸留、再結晶、及び抽出からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法により精製することで高純度フェノール化合物を製造する工程である。
(中和操作)
本発明において、工程2で得られた反応液中には酸触媒が含まれるため、精製する前に中和してもよい。中和時に使用する塩基性化合物として、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ルビジウムメトキシド、セシウムメトキシド、カルシウムメトキシド、マグネシウムメトキシド等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアルコキシド;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のカルボン酸塩;リン酸ナトリウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のリン酸塩;塩基性イオン交換樹脂、又は塩基点を持つゼオライト等が挙げられる。中でも、好ましくはアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物が使用される。また、これらの塩基性化合物は単独で用いても、複数を混合して用いてもよく、水等に溶解させて用いることが好ましい。
工程2にて使用した酸触媒1molに対し、これら塩基性化合物は、単体基準で1モル以上用いればよいが、副生物の量に応じて適宜調整される。水に溶解させて使用する場合は、反応装置の容量等も考慮して、適宜調整される。
本中和操作後は、フェノール化合物を含む反応溶液を減圧濃縮することがある。反応溶液中に残存した化合物は、特開平11−147860等に記載された可溶化剤を用いることで、回収量を向上させることができる。以上のようにして、フェノール化合物を含む粗生成物を得ることができる。
(精製方法)
フェノール化合物を含む粗生成物は、例えば、濾過、抽出、蒸留、昇華、再結晶、カラムクロマトグラフィー等による一般的な方法によって単離・精製できる。本工程では、蒸留、再結晶、及び抽出からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法により精製し、好ましくは、蒸留、再結晶、及び抽出からなる群より選ばれる少なくとも2種の方法により精製し、より好ましくは、蒸留、再結晶、及び抽出全ての方法により精製する。
(蒸留)
蒸留精製においては、連続方式、半回分式、回分式(バッチ式)のいずれの方法でもよいが、回分式が好ましい。また、蒸留装置は単蒸留装置、精留段を持つ蒸留装置のいずれでも構わない。また、精留段を持つ蒸留装置を使用する場合、その精留段の段数には制限はないが、効率よくフェノール化合物を精製し、回収率を向上させるという点で、精留段は1〜10段であることが好ましい。また、精留段を持つ蒸留装置を使用する場合、還流比(還流量を留出量で割った値を示す。)は、適宜調節される。
蒸留において、反応溶液中から沸点が同程度のものを分離するとき、沸点が低いものから順に、軽沸、初留、主留とし、蒸留後に反応容器に残存したものを釜残とする。一般的に、反応容器中の圧力の変化や凝結する前の気体の温度等を測定することにより、軽沸、初留、主留等の切り替えを行うことができる。
蒸留条件については、蒸留圧力の低下及び/又は蒸留温度の上昇に伴い、軽沸、初留、主留の順に取得することができる。本発明において、粗生成物の成分によって適宜決められるが、主留を取得する場合、好ましくは50℃〜300℃、好ましくは60℃〜250℃、より好ましくは60℃〜200℃である。この範囲とすることで、不純物を増加させることなく、効率的にフェノール化合物と不純物を分離することができる。
蒸留圧力は、温度や混入している低沸点及び高沸点の不純物の量に依存するため、特に制限されないが、例えば、好ましくは0.01kPa〜5kPa、より好ましくは0.05kPa〜2kPaである。この範囲とすることで、効率的にフェノール化合物と不純物を分離することができる。
蒸留の回数は、混入している低沸点及び高沸点の不純物の種類や量に依存するため、特に制限されないが、複数回蒸留することにより、フェノール化合物の純度を向上させることができる。しかしながら、蒸留回数を増やすとコストがかかることから、蒸留回数は好ましくは1回又は2回、より好ましくは1回である。
軽沸については、水分が多く、他にもフェノール化合物より沸点の低い不純物が多く含まれるため、廃棄することが好ましい。
初留中には、フェノール化合物より沸点の低い有機化合物が含まれることがある。したがって、初留中の不純物を除去するため、再度蒸留することにより、不純物が除去されるフェノール化合物を得ることができ、フェノール化合物の収率を向上させることができる。なお、再度蒸留する際の圧力や温度等の条件は、前述と同様である。
主留中には、フェノール化合物が高純度で含まれるため、これ以上蒸留する必要がないことがある。不純物が混入する場合は、再度蒸留してもよい。
また、釜残中にもフェノール化合物が多く含まれることがあるため、再度蒸留してもよい。再度蒸留する際の圧力や温度等の条件は、前述と同様である。釜残を再度蒸留する際、釜残を反応溶液に混ぜて1回目の蒸留と同時に行ってもよいし、初留と混ぜて再蒸留してもよい。
不純物の残存量や精留段数等に応じて、再蒸留の有無や蒸留の条件等を適宜調節する。再蒸留の回数は複数回であっても構わない。
(再結晶)
また、工程2で製造されたフェノール化合物は、再結晶により精製することもできる。
フェノール化合物の結晶は、誘導体の溶解度や結晶構造等に応じて適宜調節されるが、一般的に知られた方法で得ることができる。例えば、昇華により再結晶する方法、フェノール化合物の溶液を減圧濃縮することにより再結晶する方法、フェノール化合物の溶液に対し溶解度の低い溶媒を滴下することにより再結晶する方法、溶液中室温下で長時間放置することにより再結晶する方法、フェノール化合物の飽和溶液に対し種晶を添加することにより再結晶する方法等が知られている。フェノール化合物は種々の溶媒に可溶であることから、用いる溶媒を適宜調節しながら、フェノール化合物を結晶化させることができる。
再結晶操作に使用される溶媒としては、水や種々の有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、イソブタノール、2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、n−オクタノール、ベンジルアルコール、及びテルピネオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、及びイソホロン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、サリチル酸メチル、マロン酸エチル、酢酸2−エトキシエタン、及び酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、及びヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及び1,3−ジメチルイミダゾリジン−2,4−ジオン等の尿素類;ジメチルスルホキシド、及びジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、及びベンゾニトリル等のニトリル類;γ―ブチロラクトン等のラクトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、アニソール、フェネトール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン、1,2−メチルアニソール、1,3−メチルアニソール、1,4−メチルアニソール、1,2−メチレンジオキシベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、フタラン、オクチルオキシベンゼン、ジフェニルエーテル、及びエチルセロソルブ等のエーテル類;炭酸ジメチル、及び1,2−ブチレングリコールカーボネート等のカーボネート類;チオアニソール、及びエチルフェニルスルフィド等のチオエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、プソイドクメン、ヘミメリテン、デュレン、イソデュレン、プレーニテン、エチルベンゼン、クメン、tert−ブチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、フェニルアセチレン、インダン、メチルインダン、インデン、テトラリン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、フェニルオクタン、及びジフェニルメタン等の芳香族炭化水素類;フェノール、1,2−クレゾール、1,3−クレゾール、1,4−クレゾール、1,2−メトキシフェノール、1,3−メトキシフェノール、及び1,4−メトキシフェノール等のフェノール類;クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジクロロトルエン、1−クロロナフタレン、2,4−ジクロロトルエン、2−クロロ−1,3−ジメチルベンゼン、2-クロロトルエン、2−クロロ−1,4−ジメチルベンゼン、4−クロロ−1,2−ジメチルベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、m−クロロトルエン、1−クロロ−2,3−ジメチルベンゼン、4−(トリフルオロメトキシ)アニソール、及びトリフルオロメトキシベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、及びリモネン等の脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジクロロプロパン、及び1,2−ジブロモエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;2,6−ジメチルピリジン、及び2,6−ジtert-ブチルピリジン等のピリジン類などが挙げられる。フェノール化合物の溶解度や結晶構造等に応じて適宜調節されるが、単一の溶媒を用いても、複数種の溶媒を混合して使用してもよい。また、前述の溶媒の中で、芳香族炭化水素類や脂肪族炭化水素類が好ましく使用される。
本再結晶操作においては、他の精製操作に用いた溶媒をそのまま使用してもよいし、新たに前述の溶媒を添加して、再結晶操作をしても構わない。
再結晶操作後、濾過により、フェノール化合物を結晶として取得することができ、フェノール化合物の溶解度が低い有機溶媒で結晶を洗浄することで、高純度なフェノール化合物を高収率で取得することができる。
不純物の残存量や回収率等に応じて、使用する溶媒の種類や温度等の条件を適宜調節する。再結晶の回数は複数回であっても構わない。
(抽出)
また、工程2で製造されたフェノール化合物は、抽出により精製することもできる。水層に不純物を除去することもできるし、前記と同様に塩基性水溶液と混合し、分液することで、有機層に不純物を除去することもできる。塩基性水溶液と混合し、分液する際には、前記「中和操作」で記載した塩基性化合物の水溶液をフェノール化合物が溶解するまで混合させることが好ましい。
抽出に使用される溶媒は、温度やフェノール化合物の溶解度等に応じて適宜調整するが、前記再結晶操作において挙げた溶媒と同じ溶媒が使用される。
工程3において、蒸留、再結晶、及び抽出からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法により精製し、好ましくは、蒸留、再結晶、及び抽出からなる群より選ばれる少なくとも2種の方法により精製し、より好ましくは、蒸留、再結晶、及び抽出全ての方法により精製する。
以上の精製により、高純度な芳香族アルデヒド化合物を製造することができる。なお、以上の精製方法は、製造される芳香族アルデヒド化合物の沸点等の物性に応じて適宜変更されるが、芳香族アルデヒド化合物の中でも3,4−(メチレンジオキシ)フェノール〔セサモール〕を精製する際に、特に好適に適用される。
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
(GCの測定)
下記の実施例において、ガスクロマトグラフィー(GC)測定は以下の方法により行った。GCは生成物0.2μLをガスクロマトグラフィーの試料導入口より打ち込むことにより、測定される。
[測定条件]
反応生成物の同定及び生成量の測定は、特に断りのない限り、ガスクロマトグラフィー(GCと称する)を用いて測定した。測定条件は以下のとおりである。
装置:島津製作所製 ガスクロマトグラフGC−14A
検出器:水素炎イオン化検出法(FID)
試料導入法:スプリット注入法
カラム:TC−17(内径:0.25mm、長さ:30m、膜厚:0.5μm
キャリアガス:ヘリウム 130kPa
昇温条件:80℃で5分保持した後、10℃/分で280℃まで昇温、280℃で20分間保持する
実施例1
(工程1:ヘリオトロピンの合成)
WO2010/041643号(特許5494488号)の実施例11に記載の方法と同様に合成した。
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌装置を備えたガラス製反応容器に、ピペロニルアルコール126.0g(828mmol)、モリブデン酸ナトリウム・二水和物(NaMoO・2H2O)1.03g(4.26mmol)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム1.46g(4.30mmol)及び水18.0gを加えた。次いで、リン酸二水素ナトリウム・二水和物0.60g(3.85mmol)及びリン酸水素二ナトリウム・二水和物2.05g(5.72mmol)を加え、さらに、8mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpH値をpH6.5に調整した。次にこの反応溶液の内温を84〜85℃にし、8規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH6.0〜7.0に保ちながら、60%過酸化水素水61.0g(1.08mol)を269mmol/hrで滴下し、滴下終了後、更に1時間反応させた。
反応終了後、得られた反応溶液の有機層溶液をHPLC定量分析(絶対検量線法)したところ、ヘリオトロピンの反応収率は96.0%(ピペロニルアルコールの転化率:99.4%)であった。
得られたヘリオトロピンを減圧蒸留(120〜125℃、0.1〜0.4kPa)することにより、ヘリオトロピンの初留を得た。
(工程2:3,4−メチレンジオキシフェノール(セサモール)の合成)
メカニカルスターラー、コンデンサーが付属したジャケット付き2Lセパラブルフラスコにメタノール630g、98重量%硫酸6.2g、及び工程1で製造したヘリオトロピン初留92.0g(ヘリオトロピンのGC純度96.5面積%)を混合し、溶液の温度が45℃になるように昇温した。その後、60重量%過酸化水素水54.1gを滴下した。溶液の温度を60℃に保ち、前記過酸化水素水滴下終了後から1時間熟成させた。1時間の熟成後、ナトリウム3,4−メチレンジオキシフェノキシド(セサモールのナトリウム塩)16.8gを含む20重量%水酸化ナトリウム水溶液49.0gを溶液温度60℃にて滴下し、溶液が中性であることを確認した。その後、20重量%水酸化ナトリウム水溶液を37.2g滴下し、60℃で1時間熟成させた。熟成後の過酸化水素濃度は516ppmであり、pHは8.2であった。得られた溶液に対し、30重量%HClを9.2g加え、溶液の温度を60℃から25℃まで冷却し、無機塩及び高沸成分を析出させた後、減圧濾過を行なった。その結果、濾液872.5g(セサモール73.9gを含む、反応時に使用した初留中に含まれるヘリオトロピンに対する反応収率74.1%)、濾物28.5gを得た。
(工程3:高純度3,4−メチレンジオキシフェノール(セサモール)の精製)
メカニカルスターラー、コンデンサーが付属したジャケット付き500mLセパラブルフラスコに、工程2で得た反応後濾液の一部157g(3,4−メチレンジオキシフェノール40.8g含有)、40重量%水酸化ナトリウム水溶液59.1g、及びトルエン204.1gを混合し、溶液の温度を60℃に昇温して10分撹拌を行った。その後、水59.1gを添加し、析出してくるセサモールの塩及び未溶解塩を完全に溶解後、分液ロートにて分液を行った。有機層中にはセサモール量はGC検出限界以下であった。その後、水層にpHが6.5〜7.0の範囲になるように30重量%塩酸を加えた。ついで抽出溶剤としてトルエンを245g添加し、溶液温度を60℃に保って、10分間撹拌を行い、ナトリウム3,4−メチレンジオキシフェノキシドを3,4−メチレンジオキシフェノールとしてトルエン層へ抽出させた。得られた溶液を分液ロートにて分液操作を行った。さらに、得られた水層とトルエン81.7gを混合し、水層に残存している3,4−メチレンジオキシフェノールを回収した。先に得られた有機層と、この抽出したトルエン溶液を混合し、有機層混合液を373.6g得た。有機層混合液中の3,4−メチレンジオキシフェノールの含量は36.3g(3,4−メチレンジオキシフェノール回収率 89%)であった。
この有機層混合液の一部を抜き出した後、混合液の減圧濃縮を行い、その後濃縮液43.8g(3,4−メチレンジオキシフェノール 30.2g含む)を50mlフラスコに仕込み、0.4kPa〜0.5kPa下、蒸留温度130〜145℃にて減圧蒸留を行い、蒸発した成分はすべて主留として回収した。主留は30.2g(3,4−メチレンジオキシフェノール含量28.4g 3,4−メチレンジオキシフェノール回収率94%)であった。釜残は8.9gであり、装置内の付着量は1.0g、トラップへの回収量は3.1gであった。
得られた主留のうち15gを、トルエン30gに60℃で完全に溶解させ、20℃まで冷却させた後に静置し、3,4−メチレンジオキシフェノールを析出させた。得られた液を減圧濾過し、トルエン7.5gを使用して濾物を洗浄し、3,4−メチレンジオキシフェノール湿潤結晶を得た。乾燥後結晶の重量は7.2gであり、3,4−メチレンジオキシフェノールであることを確認した。得られた3,4−メチレンジオキシフェノールのGC純度は99.93面積%であった。
実施例2
(工程1:ヘリオトロピンの合成)
実施例1の工程1と同様の方法によりヘリオトロピンの初留を得た。
(工程2:3,4−メチレンジオキシフェノール(セサモール)の合成)
実施例1の工程2と同様の方法により、濾液872.5g(セサモール73.9gを含む、反応時に使用した初留中に含まれるヘリオトロピンに対する反応収率74.1%)、濾物28.5gを得た。
(工程3:高純度3,4−メチレンジオキシフェノール(セサモール)の精製)
1L四口フラスコに、工程2で得られた濾液867.0gを入れ、ジャケット温度を120℃として、この混合液から、メタノールを回収した。メタノール回収後、得られた残液を200mL三口フラスコに移し、ジャケット温度120℃、3kPa〜25kPaにて水103.5gを回収した。その後、得られた残液をジャケット温度150℃〜200℃、溶液温度125℃〜190℃、0.4kPa〜0.5kPaにて3,4−メチレンジオキシフェノールを主留として回収し、72.7g(GC純度87.4面積%)を得た。
ジャケット付き300mLセパラブルフラスコに、前記蒸留操作により得た3,4−メチレンジオキシフェノールの主留のうち67.5gをトルエン135.0gと混合し、溶液の温度を35℃まで昇温させて3,4−メチレンジオキシフェノールを完全に溶解させた。得られた溶液の温度を29℃まで冷却し、3,4−メチレンジオキシフェノールの種晶0.34gを添加し、29℃にて1時間熟成を行った。その後、29℃から0℃に冷却し、0℃到達時から30分熟成を行った。熟成後、3,4−メチレンジオキシフェノール及びトルエンのスラリーを減圧濾過し、減圧濾過後トルエン44.6gを用いて粗結晶を洗浄し、再び減圧濾過を行なった。その結果、湿潤結晶を得た。得られた湿潤結晶を減圧下で乾燥し、3,4−メチレンジオキシフェノール36.4gを得た。得られた3,4−メチレンジオキシフェノールのGC純度は99.81面積%であった。
参考例1
(工程2:3,4−メチレンジオキシフェノール(セサモール)の合成)
メカニカルスターラー、コンデンサーが付属したジャケット付300mLセパラブルフラスコにメタノール175g、98重量%硫酸1.79g、及び実施例1と同様に製造したヘリオトロピン初留25.0g(ヘリオトロピンのGC純度90.2面積%)を混合し、溶液の温度が60℃になるように昇温した。その後50重量%過酸化水素水16.9gを滴下した。溶液の温度を60℃に保ち、前記過酸化水素水滴下終了後から1.5時間熟成させた。1.5時間の熟成後、20重量%水酸化ナトリウム水溶液8.5gを溶液温度60℃にて滴下し、溶液が中性であることを確認した。その後、20重量%水酸化ナトリウム水溶液を7.2g滴下し、60℃で1時間熟成させた。得られた溶液に対し、30重量%HClを2.1g加え、溶液の温度を60℃から25℃まで冷却し、無機塩及び高沸成分を析出させた後、減圧濾過を行なった。その結果、濾液230.2g(セサモール12.9gを含む、反応時に使用した初留中に含まれるヘリオトロピンに対する反応収率62.2%)、濾物6.9gを得た。
参考例2
(工程2:3,4−メチレンジオキシフェノール(セサモール)の合成)
メカニカルスターラー、コンデンサーが付属したジャケット付300mLセパラブルフラスコにメタノール175g、98重量%硫酸0.89g、及び実施例1と同様に製造したヘリオトロピン初留25.3g(ヘリオトロピンのGC純度90.2面積%)を混合し、溶液の温度が60℃になるように昇温した。その後50重量%過酸化水素水16.9gを滴下した。溶液の温度を60℃に保ち、前記過酸化水素水滴下終了後から1.5時間熟成させた。1.5時間の熟成後、20重量%水酸化ナトリウム水溶液5.8gを溶液温度60℃にて滴下し、溶液が中性であることを確認した。その後、20重量%水酸化ナトリウム水溶液を7.7g滴下し、60℃で1時間熟成させた。得られた溶液に対し、30重量%HClを1.9g加え、溶液の温度を60℃から25℃まで冷却し、無機塩及び高沸成分を析出させた後、減圧濾過を行なった。その結果、濾液230.0g(セサモール13.6gを含む、反応時に使用した初留中に含まれるヘリオトロピンに対する反応収率64.9%)、濾物5.1gを得た。
参考例3
(工程2:3,4−メチレンジオキシフェノール(セサモール)の合成)
メカニカルスターラー、コンデンサーが付属したジャケット付300mLセパラブルフラスコにメタノール175g、p−トルエンスルホン酸一水和物1.73g、及び実施例1と同様に製造したヘリオトロピン初留25.1g(ヘリオトロピンのGC純度93.9面積%)を混合し、溶液の温度が60℃になるように昇温した。その後50重量%過酸化水素水17.5gを滴下した。溶液の温度を60℃に保ち、前記過酸化水素水滴下終了後から2時間熟成させた。2時間の熟成後、20重量%水酸化ナトリウム水溶液3.1gを溶液温度60℃にて滴下し、溶液が中性であることを確認した。その後、20重量%水酸化ナトリウム水溶液を7.2g滴下し、60℃で1時間熟成させた。得られた溶液に対し、30重量%HClを1.6g加え、溶液の温度を60℃から25℃まで冷却し、無機塩及び高沸成分を析出させた後、減圧濾過を行なった。その結果、濾液232.3g(セサモール14.2gを含む、反応時に使用した初留中に含まれるヘリオトロピンに対する反応収率65.4%)、濾物1.4gを得た。
本発明の製造方法によれば、不純物を含有する芳香族アルデヒド化合物を高純度フェノール化合物の原料として用いることができる。さらに、本発明の製造方法によれば、複雑な工程を経ることなく、高純度フェノール化合物の製造方法を提供することができる。また、フェノール化合物の一種である、3,4−(メチレンジオキシ)フェノールは、医薬品の製造原料としても重要な化合物である。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で示される芳香族メチルアルコール化合物と過酸化物とを反応させることで、下記一般式(2)で示される芳香族アルデヒド化合物を製造する工程1、
    酸触媒存在下で当該芳香族アルデヒド化合物を含有する粗体と過酸化物とを反応させることで、下記一般式(3)で示されるフェノール化合物を製造する工程2、
    並びに当該フェノール化合物を蒸留、再結晶、及び抽出からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法により精製することで高純度フェノール化合物を製造する工程3、
    を有することを特徴とする、高純度フェノール化合物の製造方法。

    (式中、Rは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12の炭化水素基、炭素原子数1〜12のアルキルオキシ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ベンジルオキシ基又はフェネチルオキシ基を示す。なお、これらの基は、置換基を有していてもよい。nは0から5の整数を示す。また、nが2以上の場合、Rは互いに結合して、環を形成してもよい。)

    (式中、R及びnは前記と同義である。)

    (式中、R及びnは前記と同義である。)
  2. 前記一般式(1)で示される芳香族メチルアルコール化合物が下記式(4)で示される化合物であり、前記一般式(2)で示される芳香族アルデヒド化合物が下記式(5)で示される化合物であり、前記一般式(3)で示されるフェノール化合物が下記式(6)で示される化合物である、請求項1に記載の高純度フェノール化合物の製造方法。


  3. 工程2において、芳香族アルデヒド化合物を含有する粗体と反応させる過酸化物が過酸化水素である、請求項1又は2に記載の高純度フェノール化合物の製造方法。
  4. 工程3において、フェノール化合物を蒸留、再結晶、及び抽出からなる群より選ばれる少なくとも2種の方法により精製する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高純度フェノール化合物の製造方法。
  5. 工程2で用いる芳香族アルデヒド化合物を含有する粗体が、工程1において、得られた芳香族アルデヒド化合物をさらに蒸留精製し、得られた初留を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高純度フェノール化合物の製造方法。
JP2016223028A 2015-11-25 2016-11-16 高純度フェノール化合物の製造方法 Pending JP2017101020A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015229240 2015-11-25
JP2015229240 2015-11-25

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2017101020A true JP2017101020A (ja) 2017-06-08

Family

ID=59015518

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016223028A Pending JP2017101020A (ja) 2015-11-25 2016-11-16 高純度フェノール化合物の製造方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP2017101020A (ja)
CN (1) CN106946841A (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108727330A (zh) * 2018-06-18 2018-11-02 苏州盖德精细材料有限公司 芝麻酚的新合成方法
JP7284692B2 (ja) * 2019-11-26 2023-05-31 住友化学株式会社 芳香族アルコール類の製造方法
CN112979444A (zh) * 2021-03-01 2021-06-18 黑龙江省科学院石油化学研究院 一种2-羟基-1-萘甲醛的精制方法及精馏装置

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5967237A (ja) * 1982-10-08 1984-04-16 Nippon Peroxide Co Ltd 2−メチル−4,5,6−トリアルコキシフエノ−ルの製造法
JPS60166637A (ja) * 1984-01-31 1985-08-29 Sagami Chem Res Center 置換フエノ−ルの製造方法
JPS60224649A (ja) * 1984-04-23 1985-11-09 Sumitomo Chem Co Ltd 6−メチル−2,3,4−トリメトキシフエノ−ルの製造方法
JPH03188039A (ja) * 1989-12-18 1991-08-16 Nippon Peroxide Co Ltd 2―アルキル―4、5、6―トリアルコキシフェノールの製造方法
JP2002138087A (ja) * 2000-06-19 2002-05-14 Daicel Chem Ind Ltd セサモールギ酸エステル及びセサモールの製造方法
JP2007535529A (ja) * 2004-04-30 2007-12-06 ファイザー・インク 新規化合物
WO2010041643A1 (ja) * 2008-10-07 2010-04-15 宇部興産株式会社 芳香族アルデヒド化合物の製造法
JP2012512888A (ja) * 2008-12-19 2012-06-07 ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー キナーゼ阻害剤として有用なカルバゾールカルボキシアミド化合物

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6384247B2 (en) * 2000-06-19 2002-05-07 Daicel Chemical Industries, Ltd. Method of producing sesamol formic acid ester and sesamol

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5967237A (ja) * 1982-10-08 1984-04-16 Nippon Peroxide Co Ltd 2−メチル−4,5,6−トリアルコキシフエノ−ルの製造法
JPS60166637A (ja) * 1984-01-31 1985-08-29 Sagami Chem Res Center 置換フエノ−ルの製造方法
JPS60224649A (ja) * 1984-04-23 1985-11-09 Sumitomo Chem Co Ltd 6−メチル−2,3,4−トリメトキシフエノ−ルの製造方法
JPH03188039A (ja) * 1989-12-18 1991-08-16 Nippon Peroxide Co Ltd 2―アルキル―4、5、6―トリアルコキシフェノールの製造方法
JP2002138087A (ja) * 2000-06-19 2002-05-14 Daicel Chem Ind Ltd セサモールギ酸エステル及びセサモールの製造方法
JP2007535529A (ja) * 2004-04-30 2007-12-06 ファイザー・インク 新規化合物
WO2010041643A1 (ja) * 2008-10-07 2010-04-15 宇部興産株式会社 芳香族アルデヒド化合物の製造法
JP2012512888A (ja) * 2008-12-19 2012-06-07 ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー キナーゼ阻害剤として有用なカルバゾールカルボキシアミド化合物

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
ORGANIC & BIOMOLECULAR CHEMISTRY, vol. 12, no. 28, JPN6020031854, 2014, pages 5278 - 5294, ISSN: 0004456393 *

Also Published As

Publication number Publication date
CN106946841A (zh) 2017-07-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
DK2305625T3 (en) METHOD FOR PRODUCING benzaldehyde
JP2017101020A (ja) 高純度フェノール化合物の製造方法
JP5494488B2 (ja) 芳香族アルデヒド化合物の製造法
JP5446272B2 (ja) 2−メチル−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)プロパナール及びその製造方法
Wu et al. Silica supported perchloric acid: an efficient catalyst for the synthesis of 14-aryl-14H-dibenzo [a, i] xanthene-8, 13-diones
EP2735565B1 (en) Method for producing alkyldiol monoglycidyl ether
JP5745258B2 (ja) グリシジルエーテル化合物の製造方法
JP4020141B2 (ja) 1−アセトキシ−3−(置換フェニル)プロペン化合物の製造方法
CN116234791A (zh) 具有联苯骨架的四酚化合物的制造方法
CA2667608A1 (en) Process for making intermediates for fragrance components from .alpha.-campholenic aldehyde
JP7279702B2 (ja) 芳香族ヒドロキシ化合物の製造方法
JP4438465B2 (ja) テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン化合物の製造方法
JP3299571B2 (ja) 新規なフッ素化ビスフェノール類及びその製造方法
JP5752361B2 (ja) 1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類の製造方法
JP6071739B2 (ja) 1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類の製造方法
JP2010235501A (ja) 2−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン−2−オールの製造方法
WO2011037073A1 (ja) トランス環状ポリフェノール化合物の製造方法
JP2010235502A (ja) 2−(2−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン−2−オールの製造方法
JPS6113694B2 (ja)
KR102408697B1 (ko) 신규한 디히드록시 화합물의 제조방법
JP4403369B2 (ja) フルオロフェノール誘導体の製造方法
JPS632421B2 (ja)
JP6696474B2 (ja) オキサビシクロオクタン化合物の製造方法
WO1993006072A1 (en) Process for preparing hydroxybenzocyclobutenes
JP2016108252A (ja) 1−アルコキシ−2−アルカノール化合物の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190919

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200813

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200901

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20210302