JP2017097230A - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】帯電安定性と、耐熱保存性と、定着性とに優れる静電潜像現像用トナーを提供する。
【解決手段】静電潜像現像用トナーは、複数のトナー粒子を含む。トナー粒子は、トナーコアと、トナーコアを被覆するシェル層とを含む。トナーコアは、結着樹脂として、結晶性樹脂と、非晶性樹脂とを含む。シェル層は、熱可塑性樹脂を含む。シェル層の厚さは、5nm以上50nm以下である。CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θが23°以上25°以下の範囲にピークを有する。ピークは、結晶性樹脂に由来するピークである。高化式フローテスターで測定される、軟化開始温度Tsが数式(1)を満たす。流出開始温度Tfbと軟化温度T1/2とが数式(2)を満たす。
55℃≦Ts≦70℃・・・(1)
20℃≦|Tfb−T1/2|≦25℃・・・(2)
【選択図】図1

Description

本発明は、静電潜像現像用トナーに関する。
トナーを構成する成分(例えば、トナーコア、シェル層、又は結着樹脂)の熱的特性を用いて、トナーの低温定着性、又は耐熱保存性等を向上させる試みがなされている。例えば、特許文献1では、トナーコアの軟化温度が40℃以上90℃以下であり、シェル層の軟化温度が50℃以上100℃以下であるトナーが記載されている。なお、これらの軟化温度は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)で測定されている。また、特許文献2では、トナーの流出開始温度Tfbと結晶性ポリエステル樹脂の融点Mpとが下記の数式(A)を満たすことが記載されている。
p≦Tfb≦Mp+12℃・・・(A)
特開2011−185973号公報 特開2008−15230号公報
しかし、特許文献1に記載のトナーは、低温で定着することは困難である。また、特許文献2に記載のトナーは、トナーの軟化温度を調整していないため、外添剤の埋没が生じ易く、また、現像装置内でのストレスによるトナー粒子のキャリアへの付着(キャリア汚染)も生じ易い。このようにこれらのトナーでは、帯電安定性、耐熱保存性、及び定着性(例えば、低温定着性)を十分に満足することができなかった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、帯電安定性と、耐熱保存性と、定着性とに優れる静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
本発明の静電潜像現像用トナーは、複数のトナー粒子を含む。トナー粒子は、トナーコアと、トナーコアを被覆するシェル層とを含む。トナーコアは、結着樹脂として、結晶性樹脂と、非晶性樹脂とを含む。シェル層は、熱可塑性樹脂を含む。シェル層の厚さは、5nm以上50nm以下である。CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θが23°以上25°以下の範囲にピークを有する。ピークは、結晶性樹脂に由来するピークである。高化式フローテスターで測定される、軟化開始温度Tsが数式(1)を満たす。高化式フローテスターで測定される、流出開始温度Tfbと軟化温度T1/2とが数式(2)を満たす。
55℃≦Ts≦70℃・・・(1)
20℃≦|Tfb−T1/2|≦25℃・・・(2)
本発明によれば、帯電安定性と、耐熱保存性と、定着性とに優れる静電潜像現像用トナーを提供することができる。
本発明の実施形態に係るトナーについて、高化式フローテスターで測定されるS字カーブの一例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定しない。
本実施形態に係る静電潜像現像用トナー(以下、単に「トナー」と記載することがある)は、多数のトナー粒子から構成される粉体である。本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の表面には、外添剤が付着してもよい。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。以下、外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載することがある。本実施形態に係るトナーは、例えば、電子写真装置(画像形成装置)で用いることができる。
画像形成装置では、トナーを含む現像剤を用いて静電潜像を現像する。例えば、画像形成装置が中間転写方式を採用する場合、現像工程では、感光体に形成された静電潜像に、帯電したトナーを付着させる。そして、続く転写工程では、付着したトナーを中間転写体(例えば、中間転写ベルト)に転写した後、さらに中間転写体上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、トナーを加熱して、記録媒体にトナーを定着させる。これにより、記録媒体に画像が形成される。
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(1)、(2)及び(3)を有する。
構成(1):トナー粒子は、トナーコアと、トナーコアを被覆するシェル層とを含む。シェル層は、熱可塑性樹脂を含む。シェル層の厚さは、5nm以上50nm以下である。
構成(2):CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θが23°以上25°以下の範囲に、結晶性樹脂に由来するピークを有する。
構成(3):高化式フローテスターで測定される軟化開始温度Tsが数式(1)を満たす。高化式フローテスターで測定される流出開始温度Tfbと軟化温度T1/2とが数式(2)を満たす。
55℃≦Ts≦70℃・・・(1)
20℃≦|Tfb−T1/2|≦25℃・・・(2)
シェル層の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子の断面のTEM撮影像を解析することによって求めることができる。具体的には、トナーの断面の略中心で直交する2本の直線を引き、これら2本の直線上の、シェル層と交差する4箇所の長さを測定する。このようにして測定される4箇所の長さの平均値を、測定対象の1個のトナー粒子が備えるシェル層の厚さとする。このようなシェル層の厚さの測定を、10個以上のトナー粒子に対して行い、測定対象の複数のトナー粒子それぞれが備えるシェル層の厚さの平均値を求める。求めた平均値を、シェル層の厚さとする。なお、シェル層の厚さが5nm以上100nm以下である場合、上記方法でシェル層の厚さを測定できる。
シェル層の厚さが1nm以上100nm以下である場合、TEM撮影と、エネルギー分散X線分光分析(EDX)とを組み合わせることで、シェル層の厚さを測定できる。具体的には、TEM画像におけるシェル層の材質(例えば、窒素原子)に特徴的な元素のマッピングにより、シェル層の厚さを計測すればよい。シェル層の厚さは、シェル層を形成するために使用される熱可塑性樹脂のような材料の使用量を調整することで、調整できる。
本明細書において「結晶性樹脂」に示すような「結晶性」とは、結晶性指数が0.90以上1.10未満であることを意味する。樹脂の結晶性指数は、樹脂を形成するモノマー(例えば、ポリエステル樹脂である場合、アルコール成分、又はカルボン酸成分)の種類、又は使用量を適宜変更することで調整できる。一方、結晶性指数が0.90未満又は1.10以上である樹脂は、非晶性(非晶質)であることを意味する。なお、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数は、結晶性ポリエステル樹脂の軟化温度T1/2と結晶性ポリエステル樹脂の融点Mpとの比率(T1/2/Mp)から求めることができる。結晶性ポリエステル樹脂の融点Mpは、示差熱量分析計(DSC、例えば、セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)で測定されるDSC曲線中での最大吸熱ピークの温度として求めることができる。
X線回折スぺクトルは、X線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標) 1100」)を用いて測定できる。X線回折スぺクトルの測定方法の詳細は、後述する。
トナーの軟化開始温度Ts、流出開始温度Tfb、及び軟化温度T1/2は、高化式フローテスター(例えば、株式会社島津製作所製「CFT−500D」)で測定されるS字カーブから読み取ることができる。トナーの軟化開始温度Ts、流出開始温度Tfb、及び軟化温度T1/2の測定方法の詳細は、後述する。
以下、図1を参照して、S字カーブからトナーの軟化開始温度Ts、流出開始温度Tfb、及び軟化温度T1/2を読み取る方法を説明する。図1は、本実施形態に係るトナーの、高化式フローテスターで測定されるS字カーブの一例を示す図である。S字カーブ中の極大点(A点)での温度がトナーの軟化開始温度Tsである。S字カーブ中の極小点(B点)での温度がトナーの流出開始温度Tfbである。S字カーブ中のC点での温度がトナーの軟化温度T1/2である。C点では、ストローク値が(S1+S2)/2となる。S1は、流出終了点(D点)でのS字カーブ中の最大のストローク値である。S2は、トナーの流出開始温度Tfbでのストローク値である。
構成(1)は、トナーの帯電安定性、及び定着性の向上に有益である。構成(1)を有するトナーでは、シェル層は熱可塑性樹脂を含む。このようなシェル層は、適度な柔軟性を有すると共に、均一にトナーコアの表面を覆うことができる。このため、構成(1)を有するトナーでは、シェル層がトナーの保管時又は輸送時に衝撃を受けても容易に破壊されない一方で、定着時に温度及び圧力が印加される場合に容易に破壊される。また、構成(1)を有するトナーでは、シェル層の厚さが5nm以上50nm以下である。シェル層の厚さが5nm以上であると、シェル層は適度な強度を有する。このため、例えば、トナーの保管時又は輸送時に衝撃を受けても、シェル層が容易に破壊されにくく、シェル層の破壊箇所からトナー粒子の表面へトナー粒子の成分が染み出しにくい。その結果、トナー粒子同士が凝集しにくい。また、シェル層の厚さが5nm以上であると、現像装置内でのストレスによるトナー粒子のキャリアへの付着(キャリア汚染)が発生しにくい。一方、シェル層の厚さが50nm以下であると、トナーの軟化及び溶融が速やかに進行し、低温域でトナーが記録媒体へ定着し易い。また、シェル層の厚さが50nm以下であると、定着時にトナーに圧力が印加されることで、シェル層が破壊され易い。よって、構成(1)は、トナーの帯電安定性、及び定着性を向上させることができる。シェル層の厚さは、シェル層を構成する熱可塑性樹脂の使用量で調整できる。
構成(2)は、トナーの帯電安定性及び耐熱保存性の向上に有益である。構成(2)を有するトナーでは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θが23°以上25°以下の範囲に、結晶性樹脂に由来するピークを有する。このようなトナーでは、結着樹脂中において結晶性樹脂が適度に分散している。よって、構成(2)は、トナーの帯電安定性及び耐熱保存性を向上させることができる。X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角23°以上25°以下の範囲に結晶性樹脂に由来するピークを有するためには、トナー中の結晶性樹脂の結晶性指数で調整できる。例えば、トナーコアを熱処理することで、トナー中の結晶性樹脂の結晶性指数を高くすることができる。熱処理の詳細は、後述する。
構成(3)は、トナーの帯電安定性、耐熱保存性、及び定着性の向上に有益である。構成(3)を有するトナーでは、トナーの軟化開始温度Tsが数式(1)を満たす。トナーの軟化開始温度Tsが55℃以上であると、トナーが凝集しにくく、耐熱保存性及び帯電安定性に優れる。また、軟化開始温度Tsが70℃以下であるトナーは、低温定着性に優れる。また、構成(3)を有するトナーでは、トナーの流出開始温度Tfbとトナーの軟化温度T1/2との差(絶対値)が20℃以上25℃以下である。差|Tfb−T1/2|が20℃以上であると、トナーの溶融速度が速すぎないため、形成される画像のグロスの低下を抑制できる。また、差|Tfb−T1/2|が20℃以上であると、定着オペレーションウィンドウを適度に広げることができるため、定着性に優れるトナーが得られる。差|Tfb−T1/2|が25℃以下であると、定着オペレーションウィンドウを適度に狭めることができ、トナーの溶融速度を適度に増加できる。このため、トナーの低温定着性を向上でき、過度にグロス値が高くなることを抑制できる。よって、構成(3)は、トナーの帯電安定性、耐熱保存性及び定着性を向上させることができる。
本明細書において、定着オペレーションウィンドウ(以下、単に「定着OW」と記載することがある)とは、オフセット(コールドオフセット及びホットオフセット)が発生しない定着温度の幅である。具体的には、定着OWは、数式(3)を用いて求めることができる。
定着OW(℃)=最高定着温度−最低定着温度・・・(3)
最高定着温度は、ホットオフセットが発生せずにトナーを記録媒体に定着できる最高温度である。最低定着温度は、コールドオフセットが発生せずにトナーを記録媒体に定着できる最低温度である。
トナーの帯電安定性、耐熱保存性及び定着性をさらに向上させるためには、トナーは、構成(1)〜(3)に加え、次に示す構成(4)を有することが好ましい。
構成(4):トナーの軟化温度T1/2は、80℃以上150℃以下である。トナーの流出開始温度Tfbは、60℃以上130℃以下である。
構成(4)を有するトナーでは、トナーの軟化温度T1/2は80℃以上150℃以下であり、85℃以上110℃以下であることが好ましい。トナーの流出開始温度Tfbは60℃以上130℃以下であり、60℃以上85℃以下であることがより好ましい。構成(4)を有するトナーは、構成(1)〜(3)を有し易い。トナーの流出開始温度Tfbは60℃以上85℃以下である場合、トナーの軟化温度T1/2は、85℃以上110℃以下であることが好ましい。
トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。より具体的には、磁性粉をトナー中に分散させ磁性トナーを作製し1成分現像剤として用いることができる。また、トナーを所望のキャリアと混合して2成分現像剤を調製してもよい。
以下、トナー粒子について説明する。さらに、トナーの製造方法を説明する。なお、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
<1.トナー粒子>
既に述べたように、トナー粒子は、トナーコアと、トナーコアの表面を被覆するシェル層とを含む。以下、トナーコア、シェル層、外添剤を説明する。
(1−1.トナーコア)
トナーコアは、結着樹脂として、結晶性樹脂と、非晶性樹脂とを含む。トナーコアは、内添剤(例えば、着色剤、又は離型剤)を含んでもよい。以下、結着樹脂、及び内添剤を説明する。
[1−1−1.結着樹脂]
結晶性樹脂としては、例えば、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、又は結晶性ポリエーテル樹脂などが挙げられる。これらの結晶性樹脂は、共重合体であってもよい。これらの結晶性樹脂は、1種単独であっても、2種以上を組み合わせてもよい。これらの結晶性樹脂のうち、結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合又は共縮重合によって得られる。アルコール成分としては2価又は3価以上のアルコールを使用できる。2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジ1,2−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリ1,2−プロパンジオール、又はポリテトラメチレングリコールのようなジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレンビスフェノールA、又はポリオキシプロピレンビスフェノールAのようなビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンのような3価以上のアルコール類が挙げられる。
これらのアルコール成分の中では、ポリエステル樹脂の結晶化を促進しやすいため、炭素原子数2以上8以下の脂肪族ジオールが好ましく、炭素原子数が2以上8以下であるα,ω−アルカンジオールがより好ましく、1,4−ブタンジオール、又は1,6−ヘキサンジオールがさらに好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、アルコール成分中の炭素原子数2以上10以下の脂肪族ジオールの割合が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。同様に、アルコール成分に最も多量に含まれる成分(単一の化合物)の含有量が70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
カルボン酸成分としては2価又は3価以上のカルボン酸を使用できる。2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、アルキルコハク酸又はアルケニルコハク酸(例えば、n−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸)のような2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸のような3価以上のカルボン酸が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、カルボン酸ハライド、カルボン酸無水物、又は低級アルキルエステルのようなエステル形成性誘導体に変形して用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数が1以上6以下であるアルキル基を意味する。
これらのカルボン酸成分の中では、ポリエステル樹脂の結晶化を促進しやすいことから、炭素原子数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素原子数が2以上16以下であるα,ω−アルカンジカルボン酸がより好ましい。また、カルボン酸成分には、さらに1価のカルボン酸を含んでもよい。1価のカルボン酸としては、例えば、ステアリン酸が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、カルボン酸成分中の炭素原子数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸が70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。同様に、カルボン酸成分に最も多量に含まれる成分(単一の化合物)の含有量が70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー粒子100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、5質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が1質量部以上15質量部以下であると、トナーの低温定着性が向上し、かつトナーが負に帯電しにくくなる。
トナーの低温定着性を向上させ、高温で定着を行う際のオフセットの発生を効果的に抑制するために、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数は、0.98以上1.05以下であることが好ましい。
非晶性樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、又は非ビニル樹脂が挙げられる。ビニル樹脂としては、例えば、ビニル基を有するモノマーの重合体(より具体的には、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、又はオレフィン系樹脂等)が挙げられる。非ビニル樹脂としては、例えば、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、又はポリエーテル樹脂が挙げられる。これらの非晶性樹脂は、共重合体であってもよい。これらの非晶性樹脂は、1種単独であっても、2種以上を組み合わせてもよい。これらの非晶性樹脂のうち、非晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂について説明する。非晶性ポリエステル樹脂を調製する場合、得られるポリエステル樹脂の結晶化を抑制する必要がある。ポリエステル樹脂の結晶化抑制方法は、特に限定されないが、一般的な結晶化抑制方法として、例えば以下の方法(1)〜(3)が挙げられる。
方法(1):結晶性ポリエステル樹脂の結晶化を促進するアルコール及びカルボン酸を少量だけ使用するか、使用しない方法。
方法(2):アルコール、及びカルボン酸として、それぞれ2種以上の化合物を使用する方法。
方法(3):ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のようなアルコール又は、アルキル置換コハク酸のようなカルボン酸を使用して結晶化を抑制する方法。
これらの結晶化抑制方法の中では、モノマーの種類が少なく非晶性ポリエステル樹脂の調製が容易であることから、方法(3)がより好ましい。方法(3)では、アルコール(例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物)及びカルボン酸(例えば、アルキル置換コハク酸)の使用量を増やすほど結晶化を抑制しやすい。しかし、これらのモノマーの使用量は、得られるポリエステルの結晶性指数と、他の物性とを考慮して、適宜調整されることが好ましい。なお、非晶性ポリエステル樹脂は単独で使用されてもよく、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー粒子100質量部に対して75質量部以上90質量部以下であることが好ましく、80質量部以上85質量部以下であることがより好ましい。
トナー粒子が結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含む場合、トナーの低温定着性を向上させ、かつホットオフセットの発生を抑制させるためには、非晶性ポリエステル樹脂の含有量Qに対する結晶性ポリエステル樹脂の含有量Pの比率P/Qは、1以下であることが好ましい。
[1−1−2.内添剤]
トナーの内添剤としては、例えば、着色剤、又は離型剤が挙げられる。以下、着色剤、及び離型剤について説明する。
トナー粒子は、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、例えば、トナーの色に合わせて公知の顔料、染料、又は磁性粉を用いることができる。着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
トナー粒子は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラック、又は磁性粉が挙げられる。磁性粉は、トナーの帯電、又はトナーのグロスを制御する目的で使用することができる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナー粒子は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤の例としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、又はアリールアミド化合物が挙げられる。イエロー着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローが挙げられる。
マゼンタ着色剤の例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物が挙げられる。マゼンタ着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)が挙げられる。
シアン着色剤の例としては、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、又は塩基染料レーキ化合物が挙げられる。シアン着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーが挙げられる。
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えばトナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
離型剤としては、例えば、ワックスが好ましい。ワックスとしては、例えば、エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、又はモンタンワックスが挙げられる。エステルワックスとしては、例えば、合成エステルワックス、又は天然エステルワックス(より具体的には、カルナウバワックス、又はライスワックス等)が挙げられる。これらの離型剤は2種以上を組み合わせて使用できる。これらのワックスのうち、エステルワックスが好ましく、合成エステルワックスがより好ましい。合成エステルワックスは、合成原料を適宜選択することで、離型剤の融点を調整し易い。
合成エステルワックスを製造する方法は、化学合成法であれば特に限定されない。例えば、合成エステルワックスは、酸触媒の存在下でのアルコールとカルボン酸との反応や、カルボン酸ハライドとアルコールとの反応のような公知の方法を用いて合成することができる。なお、合成エステルワックスの原料は、例えば、天然油脂から製造される長鎖脂肪酸のように天然物に由来するものでもよい。また、合成エステルワックスとしては、合成品として市販されているものを用いてもよい。
離型剤の融点が50℃以上100℃以下であることが好ましい。離型剤の融点が上記範囲であると、トナーの低温定着性が向上し、高温で定着を行う場合オフセットの発生を抑制し易い。離型剤の融点は、示差走査熱量計で測定されるDSC曲線における最大吸熱ピークの温度として求めることができる。
標準キャリアと、標準キャリアに対して7質量%のトナーコアとをターブラ(登録商標)ミキサーを用いて30分間混合する。混合物におけるトナーコアの摩擦帯電量は、負極性であることが好ましく、−10μC/g以下であることがより好ましい。トナーコアの摩擦帯電量の測定方法の詳細は、後述する。
(1−2.シェル層)
[1−2−1.熱可塑性樹脂]
シェル層は、熱可塑性樹脂を含む。シェル層の膜質を向上させるためには、熱可塑性樹脂は、アクリル酸系モノマー由来の繰り返し単位を含むことが好ましく、反応性を有する官能基を持つアクリル酸系モノマー由来の繰り返し単位を含むことがより好ましい。反応性を有する官能基としては、例えば、活性水素原子を有する官能基(より具体的には、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、又はカルバモバイル基(−CONH2)等)、カルボジイミド基、オキサゾリン基、又はグリシジル基が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、シェル層の形成が容易であることから、(メタ)アクリルアミド由来の繰り返し単位を含む熱可塑性樹脂(より具体的には、ポリアクリルアミド樹脂等)がさらに好ましい。
シェル層に含まれる熱可塑性樹脂の具体例としては、アクリル酸系樹脂、スチレン−アクリル酸系樹脂、シリコーン−アクリル酸系グラフト共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、又はエチレンビニルアルコール共重合体が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、官能基を有するモノマー由来の繰り返し単位を含んでもよい。官能基としては、例えば、反応性を持つ官能基(より具体的には、カルボジイミド基、オキサゾリン基、又はグリシジル基等)が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、アクリル酸系樹脂、スチレン−アクリル酸系共重合体、及びシリコーン−アクリル酸系グラフト共重合体が好ましく、アクリル酸系樹脂がより好ましい。
アクリル酸系樹脂の調製に用いることができるアクリル酸系のモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、又は(メタ)アクリル酸n−ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルのような(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸のエチレンオキシド付加物;(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物のメチルエーテル、エチルエーテル、n−プロピルエーテル、及びn−ブチルエーテルのようなアルキルエーテルが挙げられる。これらのアクリル酸系樹脂のうち、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
結着樹脂の溶解が生じにくく、及びトナーコアが離型剤を含む場合に離型剤成分の溶出が生じにくいことから、シェル層の形成は水性媒体中で行われることが好ましい。このため、シェル層の形成に用いられる熱可塑性樹脂は水溶性であることが好ましい。特に、シェル層の形成には、熱可塑性樹脂を水に溶解して用いることが好ましい。
(1−3.外添剤)
トナー粒子は、外添剤をさらに有してもよい。外添剤としては、例えば、金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)の微粒子、又はシリカの微粒子が挙げられる。例えば、カップリング剤により外添剤の表面改質(より具体的には、疎水化処理、又は正帯電処理等)をしてもよい。
外添剤の個数平均一次粒子径は、0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
<4.トナーの製造方法>
以下、トナーの製造方法について説明する。トナーの製造方法は、例えば、トナーコア準備工程と、シェル層形成工程とを含む。トナーコア準備工程では、例えば、トナーコアを作製し、トナーコアを準備する。シェル層形成工程では、水性媒体中でトナーコアの表面にシェル層を形成する。シェル形成工程における水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性溶媒との混合液等)である。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。水性媒体としては、結着樹脂の溶解又は離型剤の溶出を抑制する観点から、水が好ましい。
(4−1.トナーコア準備工程)
トナーコアを作製する方法としては、結着樹脂中に、内添剤(例えば、着色剤、又は離型剤)のような成分を良好に分散させることができれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択できる。トナーコア準備工程としては、例えば、粉砕法、又は凝集法を用いてトナーコアを作製することが好ましい。
[4−1−1.粉砕法]
粉砕法では、結着樹脂と、内添剤(例えば、着色剤、又は離型剤)とを混合する。続けて、得られた混合物を溶融し、混練する。続けて、得られた混練物を粉砕する。続けて、得られた粉砕物を分級する。その結果、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。粉砕法によれば、比較的容易にトナーコアを調製できる。トナーコアは粉砕法で作製することが好ましい。
粉砕法で作製されたトナーコアは、凝集法で作製されたトナーコアに比べ、平均円形度が小さいが、後のシェル層形成工程において平均円形度を高めることができる。詳しくは、シェル層の原料の加熱によりシェル層の硬化反応が進行する際に、やや軟化したトナーコアが表面張力によって収縮する。このため、トナーコアが球形化し、トナーコアの平均円形度が高まる。
[4−1−2.凝集法]
凝集法は、例えば、凝集工程及び合一化工程を含む。凝集工程では、トナーコアを構成する成分ごとに微粒子化された複数種の微粒子(例えば、結晶性樹脂微粒子、非晶性樹脂微粒子、離型剤微粒子、及び着色剤微粒子)を水性媒体中で凝集させて、複数種のトナーコア成分を含む凝集粒子を形成する。合一化工程では、凝集粒子に含まれる成分を水性媒体中で合一化させてトナーコアを得る。凝集法によれば、形状が均一であり、粒子径の揃ったトナーコアを得やすい。
さらに、トナーコア準備工程は、熱処理工程を含む。熱処理は、トナーコアを作製した後であっても、トナーコアを作製する途中で行ってもよい。例えば、粉砕法では、混練物に熱処理を施してもよいし、作製したトナーコアに熱処理を施してもよい。熱処理は、結晶性樹脂の結晶状態を調整する目的で施される。トナーコア中の結晶性樹脂が加熱され、結晶性樹脂の結晶化が促進される。トナーコアへの熱処理により、最終的に得られるトナーは、構成(2)を有し易くなる。熱処理の温度は40℃以上70℃以下であることが好ましく、熱処理の時間が5時間以上30時間以下であることが好ましい。
トナーコアのpH4に調整された水性媒体中で測定されるゼータ電位は、負極性であることが好ましく、−10mV以下であることがより好ましい。ゼータ電位の測定方法の詳細は、後述する。
(4−2.シェル層形成工程)
シェル形成工程では、まず、水性媒体に、トナーコア作製工程で得られたトナーコアと、シェル層の材料とを添加し、トナーコア分散液を調製する。シェル層の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂粒子を添加する。水性媒体中では、熱可塑性樹脂粒子がトナーコアの表面に付着する。
トナーコア分散液は、シェル層の材料の水溶液にトナーコアを添加して調製することが好ましい。水性媒体中にトナーコアを添加した後、水性媒体中にトナーコアを良好に分散させる方法としては、分散液を強力に攪拌できる装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスミックス(登録商標)」)を用いてトナーコアを水性媒体中に機械的に分散させる方法が挙げられる。
シェル層の材料の水溶液のpHは、トナーコアを水溶液に添加する前に、酸性物質を用いて4程度に調整されることが好ましい。水溶液のpHを酸性に調整することで、後述するシェル層の材料の重合反応が促進される。
続けて、調製したトナーコアの分散液を攪拌しながら、分散液の温度を所定の温度まで上昇させて、その温度に所定の時間保つ。これにより、トナーコアの表面に付着したシェル層の材料が重合反応して硬化する。その結果、トナーコアの表面にシェル層が形成され、トナー粒子(トナー母粒子)の分散液が得られる。
シェル層の形成を良好に進行させるためには、トナーコアの表面でシェル層を形成する際の温度は、40℃以上95℃以下であることが好ましく、50℃以上80℃以下であることがより好ましい。
シェル層を形成した後、トナー粒子(トナー母粒子)の分散液を常温(例えば、25℃)まで冷却する。トナーの製造方法は、その後、必要に応じて、洗浄工程と、乾燥工程と、外添工程とをさらに含んでもよい。例えば、洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程からなる群から選択される1以上の工程を経て、トナー粒子(トナー母粒子)は、トナー粒子(トナー母粒子)の分散液から回収される。
(4−3.洗浄工程)
洗浄工程では、トナー粒子(トナー母粒子)を洗浄する。好適な洗浄方法としては、例えば、ウェットケーキを水性媒体で洗浄する方法、又は再分散する方法が挙げられる。詳しくは、ウェットケーキを水性媒体で洗浄する方法は、まず、トナー粒子(トナー母粒子)の分散液から、固液分離によりトナー粒子(トナー母粒子)をウェットケーキとして回収する。続いて、得られるウェットケーキを、水性媒体を用いて洗浄する。再分散する方法は、トナー粒子(トナー母粒子)を含む分散液中のトナー粒子(トナー母粒子)を沈降させる。続いて、沈降した分散液の上澄み液を水性媒体と置換する。続いて、置換後にトナー粒子(トナー母粒子)を水性媒体に再分散させる。トナー粒子(トナー母粒子)の分散液中での沈降、又は再分散は、複数回行ってもよい。
(4−4.乾燥工程)
乾燥工程では、トナー粒子(トナー母粒子)を乾燥する。好適な乾燥方法としては、例えば、乾燥機(より具体的には、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、又は減圧乾燥機)を用いる方法が挙げられる。これらの方法の中では、乾燥中のトナー粒子(トナー母粒子)の凝集を抑制するため、スプレードライヤーを用いる方法が好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー母粒子の分散液と共に、シリカのような外添剤の分散液を噴霧することによって、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させることができる。
(4−5.外添工程)
外添工程では、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。好適な外添方法としては、例えば、外添剤がトナー母粒子の表面に埋没しないような条件で、混合機(より具体的には、FMミキサー、ナウターミキサー(登録商標)等)を用いて、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
<1.非晶性樹脂の調製>
(1−1.非晶性ポリエステル樹脂1の調製)
4つ口フラスコを反応容器として用いた。この反応容器は、窒素導入管、脱水管、攪拌器、加熱器、及び熱電対を備え、容量5Lの4つ口フラスコであった。反応容器内に、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(以下、BPA−POと記載することがある)1,575質量部と、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(以下、BPA−EOと記載することがある)163質量部と、フマル酸377質量部と、触媒(酸化ジブチル錫)4質量部とを反応容器に投入した。反応容器内を窒素雰囲気とした。続けて、反応容器の内容物を攪拌しながら反応容器内の温度を220℃まで昇温させた。反応容器内の温度を220℃で維持し、内容物を8時間反応させた。その後、反応容器内の圧力を60mmHgに減圧した。反応容器内の温度を220℃及び反応容器内の圧力を60mmHgに維持し、内容物をさらに反応させ、表1に示す熱特性の物性値(軟化開始温度Ts、及び軟化温度と流出開始温度との差Tfb−T1/2)になるように反応を調整した。内容物の反応は、反応温度及び反応時間により調整した。反応後に得られた反応混合物を210℃に冷却した。トリメリット酸無水物336質量部を反応容器に添加し、さらに反応させた。反応終了後、反応容器の内容物を取り出して冷却し、非晶性ポリエステル樹脂1を得た。
(1−2.非晶性ポリエステル樹脂2〜5の調製)
表1に示す熱特性の物性値(軟化開始温度Ts、及び軟化温度と流出開始温度との差Tfb−T1/2)になるように反応を調整した以外は、非晶性ポリエステル樹脂1の作製と同様にして、非晶性ポリエステル樹脂2〜5を得た。
<2.結晶性樹脂の作製>
(2−1.結晶性ポリエステル樹脂1の調製)
4つ口フラスコを反応容器として用いた。この反応容器は、窒素導入管、脱水管、攪拌器、加熱器、及び熱電対を備え、容量5Lの4つ口フラスコであった。反応容器に、1,6−ヘキサンジオール132質量部と、1,10−デカンジカルボン酸230質量部と、触媒(酸化ジブチル錫)1質量部と、ハイドロキノン0.3質量部とを投入した。次いで、反応容器内を窒素雰囲気とした。その後、反応容器の内容物を攪拌しながら反応容器内の温度を200℃まで昇温させた。反応容器内の温度を200℃に維持し、副生水を留去しながら、内容物を5時間反応させた。その後、反応容器内の圧力を5mmHg以上20mmHg以下に減圧した。反応容器内の温度を200℃及び反応容器内の圧力を5mmHg以上20mmHg以下に維持し、内容物をさらに反応させた。反応終了後、反応容器の内容物を取り出して冷却し、結晶性ポリエステル樹脂1を得た。
<3.トナーコアの調製:トナーコア準備工程>
(3−1.トナーコア1の調製)
結着樹脂として非晶性ポリエステル樹脂1:85質量部及び結晶性ポリエステル樹脂1:15質量部と、着色剤としてシアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン))5質量部と、離型剤としてエステルワックス(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−9」)5質量部とを、FMミキサー(日本コークス株式会社製「FM−20B」)を用いて混合した。得られた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融して混練し、混練物を得た。混練物を加熱し、結晶性ポリエステル樹脂の結晶状態を調整(以下、温調と記載することがある)した。温調は、55℃で12時間行った。温調後、混練物を粉砕機(株式会社ホソカワケミクロン製「ロートプレックス(登録商標)16/8型」)で粗粉砕した。粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルRS」)を用いて、粗粉砕物を微粉砕した。得られた微粉砕物をエルボージェット(日鉄鉱業株式会社製「EJ−LABO型式EJ−L−3」)で分級して、体積中位径(D50)6.0μmのトナーコア1を得た。また、トナーコア1の摩擦帯電量は、−20μC/gであった。トナーコア1のゼータ電位は、−30mVであった。
(3−2.トナーコア2〜10の調製)
温調を行った時間を12時間から表1に記載の時間に変更した以外は、トナーコア1と同様にして、それぞれトナーコア2〜3及びトナーコア7〜8を調製した。非晶性ポリエステル樹脂1を表1に記載の非晶性ポリエステル樹脂に変更した以外は、トナーコア1と同様にして、トナーコア4〜5及びトナーコア9〜10を調製した。温調を行わなかったこと以外は、トナーコア1と同様にして、トナーコア6を調製した。トナーコア2〜10の体積中位径(D50)は、いずれも6.0μmであった。トナーコア2〜10の摩擦帯電量は、いずれも−20μC/gであった。トナーコア2〜10のゼータ電位は、いずれも−30mVであった。
トナーコアの組成、及び温調の条件を表1にまとめた。なお、表1中、結晶性PESは結晶性ポリエステル樹脂を示し、非晶性PESは非晶性ポリエステル樹脂を示す。
Figure 2017097230
<4.トナー母粒子の調製:シェル層形成工程>
(4−1.トナー母粒子1の作製)
3つ口フラスコを反応容器として用いた。この反応容器は、熱電対、及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコである。反応容器に、イオン交換水300mLを入れた。その後、反応容器をウォーターバスに設置し、反応容器内の温度を30℃に保持した。次いで、反応容器内に希塩酸を加えて、反応容器内の水性媒体のpHを4に調整した。pH調整後、反応容器内に、シェル層の原料として熱可塑性樹脂水溶液(DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標) A−1」固形分濃度11質量%の水溶性ポリアクリルアミドの水溶液)4mLを添加した。次いで、反応容器内の内容物を攪拌し、シェル層の原料を水性媒体に溶解させ、シェル層の原料の水溶液(A)を得た。
シェル層の原料の水溶液に、トナーコア1:300gを添加し、反応容器内の内容物を、速度200rpmで1時間攪拌した。次いで、反応容器内に、イオン交換水300mLを追加した。その後、反応容器内の内容物を回転数100rpmで攪拌しながら、1℃/分の速度で、反応容器内の内容物の温度を70℃まで昇温した。その後、反応容器内の温度を70℃に維持し、回転数100rpmでフラスコの内容物を2時間攪拌した。その後、反応容器内に、水酸化ナトリウムを加えて、反応容器内の内容物のpHを7に調整した。次いで、反応容器内の内容物の温度を、常温(25℃)まで冷却して、トナー母粒子1を含む分散液を得た。トナー母粒子1の有するシェル層の厚さは、20nmであった。
(4−2.トナー母粒子2〜14の作製)
トナーコア1をトナーコア2〜5に変更した以外は、トナー母粒子1と同様にして、それぞれトナー母粒子2〜5を含む分散液を得た。熱可塑性樹脂水溶液の添加量以外は、トナー母粒子1と同様にして、それぞれトナー母粒子6〜7を含む分散液を得た。トナーコア1をトナーコア6〜10に変更した以外は、トナー母粒子1と同様にして、それぞれトナー母粒子R1〜R5を含む分散液を得た。熱可塑性樹脂水溶液の添加量以外は、トナー母粒子1と同様にして、それぞれトナー母粒子R6〜R7を含む分散液を得た。トナー母粒子2〜14の有するシェル層の厚さを表2にまとめた。
<5.トナー母粒子の洗浄:洗浄工程>
ブフナーロートを用いて、トナー母粒子1を含む分散液からトナー母粒子1のウェットケーキを採取した。トナー母粒子1のウェットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナー母粒子1を洗浄した。トナー母粒子1のイオン交換水による同様の洗浄を5回繰り返した。
<6.トナー母粒子の乾燥:乾燥工程>
洗浄工程を経た後、トナー母粒子1のウェットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)に供給することにより、スラリー中のトナー母粒子1を乾燥させて、トナー母粒子1を得た。連続式表面改質装置の乾燥条件は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m3/分であった。
<7.トナー粒子の作製:外添工程>
容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、乾燥工程で得られたトナー母粒子1:100質量部と、外添剤としてシリカ(日本アエロジル株式会社製「REA90」)1.0質量部とを5分間混合して外添剤を付着させた。その後、200メッシュ(目開き75μm)の篩によりトナー1を篩別した。
トナー母粒子1をトナー母粒子2〜7及びトナー母粒子R1〜R7に変更した以外は、トナー1と同様に洗浄工程、乾燥工程及び外添工程を経て、それぞれトナー2〜7及びトナーR1〜R7を作製した。表2にトナー(実施例1〜7:トナー1〜7、比較例1〜7:トナーR1〜R7)の組成をまとめた。
Figure 2017097230
[測定方法]
<8.X線回折スペクトルの測定>
試料(トナー)をX線回折装置(株式会社リガク製「RINT(登録商標) 1100」)のサンプルホルダーに充填して、以下の条件でX線回折スペクトルを測定した。得られたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θが23°以上25°以下の範囲に、結晶性樹脂に由来するピークが存在するか確認した。
X線管球:Cu
CuKα特性X線の波長:1.542Å
管電圧:40kV
管電流:30mA
測定範囲(2θ):15°以上30°以下(スタート角:15°、ストップ角:30°)
走査速度:10°/分
X線検出器:リガク株式会社製「Ultra」
<9.トナーの軟化開始温度Ts、流出開始温度Tfb、軟化温度T1/2の測定>
トナー1.1質量部を10MPaの圧力で加圧成型し、直径1cmの円柱型の成型サンプル(体積1cm3)を作製した。作製した成型サンプルを測定用試料とした。高化式フローテスターに成型サンプルをセットした。常温高湿(温度:23℃±5℃、湿度:50%RH±10%RH)環境下において、以下の条件でトナーを溶融させて流出させた。このようにしてトナーのS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を測定した。
プランジャー荷重:20kg/cm2
ダイス細孔径:1mm
ダイスの長さ:1mm
昇温速度6℃/分
予熱時間:5分
得られたS字カーブから前述の読み取り方法に基づいて、トナーの軟化開始温度Ts、流出開始温度Tfb、軟化温度T1/2を決定した。
<10.トナーコアの摩擦帯電量の測定>
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)と、標準キャリアの質量に対して7質量%のトナーコアとを、ターブラ(登録商標)ミキサーを用いて30分間混合した。得られた混合物を測定用試料とした。Q/mメーター(TREK社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて、標準キャリアと摩擦させた場合のトナーコアの摩擦帯電量を測定した。
<11.トナーコアのゼータ電位>
トナーコア0.2gと、イオン交換水80g(80mL)及び1%濃度のノニオン系界面活性剤(日本触媒株式会社製「K−85」ポリビニルピロリドン)20gとを、マグネットスターラーを用いて混合し、トナーコアを均一に溶媒に分散させて分散液を得た。その後、分散液に希塩酸を加えて、分散液のpHを4に調整し、pH4のトナーコアの分散液を得た。pH4のトナーコアの分散液を測定試料として用い、分散液中のトナーコアのゼータ電位を、ゼータ電位・粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製「Delsa Nano HC」)を用いて測定した。
[評価方法]
<12.トナーの帯電安定性>
(12−1.トナーの帯電量)
Cu−Znフェライトキャリア(パウダーテック株式会社製、体積固有抵抗値1×107Ω・cm、飽和磁化70emu/g、粒子径35μm)を、フッ素樹脂(総研化学社製「LF−40」)のキシレン溶液(固形分濃度5%)で被覆し、その後フッ素樹脂で被覆されたCu−Znフェライトキャリアを220℃で1時間焼成した。その後、得られた焼成物を冷却した後、解砕して樹脂被覆量20質量%の樹脂被覆フェライトキャリアを得た。得られた樹脂被覆フェライトキャリアと、試料(トナー)とを、ボールミルを用いて30分間混合し、トナー濃度10質量%の評価用現像剤(2成分現像剤)を調製した。
評価機としてカラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5300DN」)を用いた。評価用現像剤を評価機の現像装置に投入し、試料(トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。評価機を用いて、高温高湿(温度:32.5℃、湿度:80%RH)環境下及び線速170mm/秒にて、印字率5%で1枚印字した後に、評価機の現像装置から2成分現像剤を取り出した。さらに2成分現像剤からトナーを取り出し、試料(トナー)とした。Q/mメーター(TREK社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて、試料の帯電量を測定した。得られた帯電量を、初期のトナー帯電量とした。印字した画像は、トナー量0.4mg/cm2の正方形(30mm×30mm)のソリッド画像(0.4mg/cm2)であった。記録媒体は、カラー兼用紙(富士ゼロックス株式会社製「C2紙」70g/m2)であった。
続けて、評価機を用いて、高温高湿(温度:32.5℃、湿度:80%RH)環境下及び線速170mm/秒にて、印字率5%で10,000枚印字した後、評価機の現像装置から2成分現像剤を取り出した。さらに2成分現像剤からトナーを取り出し、試料(トナー)とした。Q/mメーター(TREK社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて、試料の帯電量を測定した。得られた帯電量を、耐刷試験後(10K)後のトナーの帯電量とした。得られた初期のトナーの帯電量、及び耐刷試験後のトナーの帯電量から、下記の基準に従ってトナーの帯電安定性を評価した。
○(良い):初期のトナーの帯電量、及び耐刷試験後のトナーの帯電量が、ともに15μC/g以上25μC/g以下であった。
×(悪い):初期のトナーの帯電量、及び耐刷試験後のトナーの帯電量のうち少なくとも一方が、15μC/g未満、又は25μC/g超であった。
(12−2.画像濃度)
トナーの帯電量測定で用いた2成分現像剤と同様の2成分現像剤(評価用現像剤)を調製した。評価機としてカラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5300DN」)を用いた。評価用現像剤を評価機の現像装置に投入し、試料(トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。評価機を用いて、常温常湿(温度:20℃、湿度:65%RH)環境下及び線速170mm/秒にて、印字率5%で1枚印字した後に、印字率100%のソリッド画像を形成した。評価用画像は、トナー量0.4mg/cm2の正方形(30mm×30mm)のソリッド画像(0.4mg/cm2)であった。記録媒体は、カラー兼用紙(富士ゼロックス株式会社製「C2紙」70g/m2)であった。形成したソリッド画像の画像濃度を、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)LT」)を用いて測定した。得られた画像濃度を初期の画像濃度とした。続けて、評価機を用いて、常温常湿(温度:20℃、湿度:65%RH)環境下及び線速170mm/秒にて、印字率5%で10,000枚印字した後、印字率100%のソリッド画像を形成した。形成したソリッド画像の画像濃度を、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)LT」)を用いて測定した。得られた画像濃度を耐刷試験(10K)後の画像濃度とした。
<13.トナーの耐熱保存性>
試料(トナー)3gを容量20mLのポリ容器に秤量し、60℃に設定された恒温器内に3時間静置することで、耐熱保存性評価用の試料を得た。その後、保存性評価用の試料を、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)のマニュアルに従い、レオスタッド目盛り2、時間30秒の条件で、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。篩別後に、篩上に残留した試料の質量を測定した。篩別前の試料の質量と、篩別後に篩上に残留した試料の質量とから、下記の数式(4)に従ってトナーの凝集度(質量%)を算出した。
凝集度(質量%)=(篩上に残留した試料の質量/篩別前の試料の質量)×100・・・(4)
算出された凝集度から、下記基準に従ってトナーの耐熱保存性を評価した。
○(良い):凝集度が10質量%以下であった。
×(悪い):凝集度が10質量%超であった。
<14.定着性>
(14−1.最低定着温度)
トナーの帯電量測定で用いた2成分現像剤と同様の2成分現像剤(評価用現像剤)を調製した。評価機としてカラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5400DN」)の改造機を用いた。この評価機は、定着装置をRoller−Roller方式の加熱加圧型に改造したカラープリンターである。評価機を用いて、線速200mm/秒、ニップ通過時間40ミリ秒、ニップ幅8mm、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、90g/m2の紙(A4サイズの評価用紙)に、大きさ25mm×25mm、印字率100%のソリッド画像を形成した。続けて、画像が形成された紙を定着装置に通し、画像を形成した。得られた定着後の画像を折り曲げ、1kgの分銅にて5往復し、折り目の剥がれた幅が1mm未満となるか確認した。折り目の剥がれた幅が1mm未満となる画像をコールドオフセットが発生しない画像であると評価した。定着温度の設定範囲は100℃以上200℃以下であった。詳しくは、定着装置の定着温度を100℃から徐々に上昇させて、コールドオフセットが発生せずにトナー(ソリッド画像)を紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を決定した。得られた最低定着温度から、下記の基準に基づいてトナーの低温定着性を評価した。
○(良い):最低定着温度が140℃以下であった。
×(悪い):最低定着温度が140℃超であった。
(14−2.定着オペレーションウィンドウ(定着OW))
定着OWを求めるには、最低定着温度及び最高定着温度が必要となる。最低定着温度は前述のように求めた。最高定着温度は、以下のようにして測定した。トナーの帯電量測定で用いた2成分現像剤と同様の2成分現像剤(評価用現像剤)を調製した。評価機としてカラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5400DN」)の改造機を用いた。この評価機は、定着装置をRoller−Roller方式の加熱加圧型に改造したカラープリンターである。評価機を用いて、線速200mm/秒、ニップ通過時間40ミリ秒、ニップ幅8mm、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、90g/m2の紙(A4サイズの評価用紙)に、大きさ25mm×25mm、印字率100%のソリッド画像を形成した。続けて、画像が形成された紙(未定着画像紙)を定着装置に通し画像を形成した。続けて、画像が形成されていない紙(未形成紙)を1枚定着装置に通し、評価用の紙とした。より具体的には、定着装置は定着ローラーを備えていた。定着ローラーの周面が、記録媒体と接触して回転しながら画像を定着した。定着ローラーが一回転することで、未定着紙上の画像が定着され、定着ローラーの次の一回転で未形成紙が定着ローラーの周面と接触した。得られた評価用の紙を目視で観察した。印字率100%のソリッド画像の一部が、定着ローラーを介して評価用の紙に移っていないか確認した。評価用の紙に印字率100%のソリッド画像の一部が移っていない場合、ホットオフセットは発生していないと評価した。定着温度の設定範囲は100℃以上200℃以下であった。詳しくは、定着装置の定着温度を200℃から徐々に降下させて、ホットオフセットが発生せずにトナー(ソリッド画像)を紙に定着できる最高温度(最高定着温度)を決定した。得られた最高定着温度、及び前述の最低定着温度から、数式(3)を用いて定着OWを求めた。得られた定着OWから、下記の基準に基づいて定着OWを評価した。
○(良い):定着OWが40℃以上であった。
×(悪い):定着OWが40℃未満であった。
(14−3.画像の光沢性(グロス性))
トナーの帯電量測定で用いた2成分現像剤と同様の2成分現像剤(評価用現像剤)を調製した。評価機としてページプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社「FS−C5300DN」)を用いた。評価用現像剤を評価機の現像機に投入し、試料(トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。評価機を用いて常温常湿(温度:20℃、湿度:65%RH)環境下及び線速170mm/秒で、評価用画像を記録媒体に形成した。評価用画像は、トナー量0.4mg/cm2の正方形(30mm×30mm)のソリッド画像(0.4mg/cm2)であった。記録媒体は、カラー兼用紙(富士ゼロックス株式会社製「C2紙」70g/m2)であった。グロスチェッカー(株式会社堀場製作所製「IG−331」)を用いて、得られた評価用画像のグロスを測定した。得られたグロス値から、下記の基準に従って画像のグロス性を評価した。
○(良い):グロス値が5以上15以下であった。
×(悪い):グロス値が5未満又は15超であった。
Figure 2017097230
Figure 2017097230
トナー1〜7(実施例1〜7に係るトナー)は、前述の構成(1)〜(3)をすべて有していた。詳しくは、トナー1〜7では、トナー粒子がコアシェル構造を有しており、シェル層の厚みが5nm以上50nm以下であった。また、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θが23°以上25°以下の範囲にピークを有していた。このピークは、結晶性樹脂に由来するピークであった。また、高化式フローテスターで測定される、軟化開始温度Tsが数式(1)を満たし、流出開始温度Tfbと軟化温度T1/2とが数式(2)を満たしていた。
トナー1〜7(実施例1〜7に係るトナー)では、帯電安定性、耐熱保存性及び定着性の評価結果がすべて○(良い)であった。
トナーR1〜R7(比較例1〜7に係るトナー)では、前述の構成(1)〜(3)の少なくとも一つを有していなかった。詳しくは、トナーR1(比較例1に係るトナー)では、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θが23°以上25°以下の範囲にピークを有しておらず、構成(2)を有していなかった。また、トナーR1(比較例1に係るトナー)は、数式(1)を満たしておらず、構成(3)を満たしていなかった。トナーR2〜R3(比較例2〜3に係るトナー)は、数式(1)を満たしておらず、構成(3)を満たしていなかった。トナーR4〜R5(比較例4〜5に係るトナー)は、数式(2)を満たしておらず、構成(3)を満たしていなかった。トナーR6〜R7(比較例6〜7に係るトナー)は、シェル層の厚さが5nm以上50nm以下でなく、構成(1)を有していなかった。
トナーR1〜R5及びトナーR7(比較例1〜5及び比較例7に係るトナー)では、帯電安定性、耐熱保存性及び定着性の評価結果のうち、少なくとも1つが×(悪い)であった。トナーR6(比較例6に係るトナー)では、シェル層形成工程において、凝集が発生しトナー粒子を作製できず、評価できなかった。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、例えば複写機又はプリンターにおいて画像を形成するために用いることができる。
s 軟化開始温度
fb 流出開始温度
1/2 軟化温度

Claims (4)

  1. 複数のトナー粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、
    前記トナー粒子は、トナーコアと、前記トナーコアを被覆するシェル層とを含み、
    前記トナーコアは、結着樹脂として、結晶性樹脂と、非晶性樹脂とを含み、
    前記シェル層は、熱可塑性樹脂を含み、
    前記シェル層の厚さは、5nm以上50nm以下であり、
    CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θが23°以上25°以下の範囲にピークを有し、前記ピークは、前記結晶性樹脂に由来するピークであり、
    高化式フローテスターで測定される軟化開始温度Tsが数式(1)を満たし、高化式フローテスターで測定される流出開始温度Tfbと軟化温度T1/2とが数式(2)を満たす、静電潜像現像用トナー。
    55℃≦Ts≦70℃・・・(1)
    20℃≦|Tfb−T1/2|≦25℃・・・(2)
  2. 前記結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂であり、
    前記非晶性樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記熱可塑性樹脂が、ポリアクリルアミド樹脂である、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記流出開始温度Tfbが60℃以上130℃以下であり、前記軟化温度T1/2が80℃以上150℃以下である、請求項1〜3の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
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