JP2017095788A - 伸線加工用熱間圧延線材 - Google Patents
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Abstract
Description
そのため、パテンティング処理を行うことなく安定して伸線加工を行うことにより、スチールコードの素材として好適な鋼線を製造できる伸線加工用熱間圧延線材が強く望まれている。
特許文献1には、C:0.2〜0.6%、B:0.0003〜0.01%を含み、パーライト組織の面積率、初析フェライト量、アスペクト比が10以上であるラメラセメンタイトの数の割合が所定の範囲である高強度鋼線用線材が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の高強度鋼線用線材では、ラメラセメンタイトの厚さを配慮していない。このため、特許文献1に記載の技術は、伸線加工時の断線を安定して抑制する手段として満足できるものではなかった。
(c)Mnは熱間圧延線材の中心部以外でも偏析しやすい。熱間圧延線材では、圧延長手方向からの断面で見ると、Mnがバンド状に偏析しやすく、初析フェライトがバンド状に生成しやすい。そのため、伸線加工によって線材中の集合組織の発達が促進されて、伸線加工後に得られる鋼線の延性が不足する場合がある。
(e)伸線加工中の線材の断線を抑制するには、熱間圧延線材の引張り試験での絞りを高めるのがよい。特に、熱間圧延線材の絞りの最小値を高めると、伸線加工中の線材の断線を安定して抑制できる。
本発明の要旨は以下のとおりである。
C:0.30〜0.50%、
Si:0.10〜1.00%、
Mn:0.40〜1.10%、
を含有すると共に残部がFe及び不純物から成り、かつ不純物中のAl,Ti、N,P,S及びOがそれぞれ
Al:0.003%以下、
Ti:0.003%以下、
N:0.0080%以下、
P:0.030%以下、
S:0.020%以下、
O:0.0030%以下
である熱間圧延線材であり、
フェライト組織とパーライト組織の合計の体積率が90%以上である金属組織を有し、引張り強さが650〜800MPaであり、引張り試験の絞りが50%以上であり、直径が4.0〜6.0mmであり、
長さ方向に直角な切断面における中心から直径の1/10までの中心部において、1%以上のSが存在しない領域のMn濃度の最大値が、全体のMn濃度の2.0倍以下であり、
前記中心部より外側の外周部において、1%以上のSおよび/または1%以上のOが存在しない領域のMn濃度の最大値と最小値との比(最大値/最小値)が2.0以下であることを特徴とする伸線加工用熱間圧延線材。
Cr:0.03〜0.70%、
Mo:0.02〜0.20%、
B:0.0003〜0.0030%
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の伸線加工用熱間圧延線材。
「伸線加工用熱間圧延線材」
本実施形態の伸線加工用熱間圧延線材(以下「熱間圧延線材」と略記する場合がある。)は、パテンティング処理を行うことなく、十分な加工量で伸線加工を行うことにより、スチールコードの素材として好適な鋼線が得られる伸線加工用の熱間圧延線材である。伸線加工は、例えば、真歪みで5.25以上の加工量で行うことができる。
次に、本実施形態の熱間圧延線材の成分組成、金属組織、Mn偏析、引張り強さと絞り、直径について詳細に説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
C:0.30〜0.50%
Cは、鋼材の引張強度を高めるために有効な成分である。熱間圧延線材のC含有量が0.30%未満であると、引張強度が不足する。このため、熱間圧延線材を伸線加工することにより得られる鋼線に、例えば引張強さで3000MPa以上の高い強度を安定して付与することが困難となる。3200MPa以上の引張強さの鋼線を得るためには、熱間圧延線材のC含有量を0.35%以上にすることが望ましい。一方、熱間圧延線材のC含有量が多すぎると、線材が硬質化して伸線加工中に断線しやすくなるとともに、鋼線の延性の低下を招く。熱間圧延線材のC含有量が0.50%を超えると、伸線加工中の断線によって、安定して量産することが工業的に困難になる。したがって、熱間圧延線材のC含有量は0.30〜0.50%の範囲内と定めた。熱間圧延線材のC含有量は、望ましくは0.35〜0.45%である。
Siは、鋼材の強度を高めるのに有効な成分である。また、Siは、脱酸剤としても必要な成分である。しかし、熱間圧延線材のSi含有量が0.10%未満では、Siを含有することによる効果が十分に得られない。一方、熱間圧延線材のSi含有量が1.00%を超えると、伸線加工後に得られる鋼線の延性が低下する。そこで、熱間圧延線材のSi含有量は、0.10〜1.00%の範囲内と定めた。また、Siは鋼材の焼入れ性にも影響する元素である。このことから、安定して所望のミクロ組織を有する線材を得るために、熱間圧延線材のSi含有量を0.20〜0.50%の範囲内に調整することがより望ましい。
Mnは、オーステナイトからの相変態時間に影響し、安定したパーライト組織を有する熱間圧延線材を得るために有効な成分である。しかし、熱間圧延線材のMn含有量が0.40%未満であると、Mnを含有することによる効果が十分に得られない。一方、Mnは偏析しやすい元素であり、熱間圧延線材のMn含有量が1.10%を超えると、特に中心部にMnが濃化する。その結果、熱間圧延線材の中心部にマルテンサイトが生成されて、フェライト組織および/またはパーライト組織が不足し、伸線加工中に断線しやすくなってしまう。そこで、熱間圧延線材のMn含有量は0.40〜1.10%の範囲内と定めた。熱間圧延線材のMn含有量は、0.60〜0.90%であることが望ましい。
Alは、Al2O3を主成分とする酸化物系介在物を形成して、熱間圧延線材の伸線加工性を低下させる元素である。特に、熱間圧延線材のAl含有量が0.003%を超えると、前記酸化物系介在物が粗大化して伸線加工中に断線が多発し、伸線加工性の低下が著しくなる。そこで、Al含有量は0.003%以下に規制する。好ましくは、Al含有量は0.002%以下である。
Tiは、熱間圧延線材中にNとともに含まれていると、TiNを形成しやすい。TiNは、非常に硬質であり、熱間圧延や伸線加工で変形しない。このため、伸線加工中に断線の起点となりやすい。製造方法に配慮しても、熱間圧延線材のTi含有量が0.003%を超えると、伸線加工中に断線しやすくなる。そこで、Ti含有量は0.003%以下に規制する。Ti含有量は、好ましくは0.002%以下である。
Nは、熱間圧延線材中にTiとともに含まれていると、TiNを形成しやすい。TiNは、非常に硬質であり、熱間圧延や伸線加工で変形しない。このため、伸線加工中に断線の起点となりやすい。製造方法に配慮しても、熱間圧延線材のN含有量が0.0080%を超えると、伸線加工中に断線しやすくなる。そこで、N含有量は0.0080%以下に規制する。N含有量は、好ましくは0.0050%以下である。
Pは、粒界に偏析して伸線加工性を低下させてしまう元素である。特に、熱間圧延線材のP含有量が0.030%を超えると、伸線加工性の低下が著しくなる。そこで、P含有量は0.030%以下に規制する。P含有量は、好ましくは0.020%以下である。
Sは、伸線加工性を低下させてしまう元素である。熱間圧延線材のS含有量が、0.020%を超えると、伸線加工性の低下が著しくなる、このことから、S含有量は0.020%以下に規制する。S含有量は、好ましくは0.010%以下である。
O(酸素)は、酸化物を形成しやすい元素である。Oは、熱間圧延線材中にAlとともに存在していると、硬質なAl2O3を主成分とする酸化物系介在物を形成して伸線加工性を低下させる。特に、O含有量が0.0030%を超えると、Al含有量を本発明の範囲内にしても前記酸化物系介在物が粗大化して伸線加工中に断線が多発し、伸線加工性の低下が著しくなる。そこで、O含有量は0.0030%以下に規制する。好ましくは、O含有量は0.0025%以下である。
Crの添加は任意である。Crは、伸線加工後に得られる鋼線の引張強さをより高める効果を発揮する。この効果を得るには、熱間圧延線材のCr含有量を0.03%以上にすることが好ましい。しかし、Cr含有量が0.70%を超えると、マルテンサイト組織が生成しやすくなり、伸線加工性が低下する場合がある。したがって、Crを熱間圧延線材中に積極的に添加する場合のCr含有量は、0.03〜0.70%の範囲内が好ましい。より好ましいCr含有量は0.50%以下である。一方、伸線加工後に得られる鋼線の引張強さと延性をより高める観点から、熱間圧延線材のCr含有量を0.10%以上とすることがより好ましい。
Moの添加は任意である。Moは、伸線加工後に得られる鋼線の引張強さをより高める効果を発揮する。この効果を得るには、熱間圧延線材のMo含有量を0.02%以上にすることが好ましい。しかし、Mo含有量が0.20%を超えると、マルテンサイト組織が生成しやすくなり、伸線加工性が低下する場合がある。したがって、Moを熱間圧延線材中に積極的に添加する場合のMo含有量は、0.02〜0.20%の範囲内が好ましい。より好ましいMo含有量は0.10%以下である。一方、伸線加工後に得られる鋼線の引張強さと疲労寿命をより高める観点から、熱間圧延線材のMo含有量を0.04%以上とすることがより好ましい。
Bの添加は任意である。Bは、伸線加工後に得られる鋼線の引張強さをより高める効果を発揮する。この効果を得るには、熱間圧延線材のB含有量を0.0003%以上にすることが好ましい。しかし、B含有量が0.0030%を超えると、粗大なBNが生成しやすくなり、伸線加工性が低下する場合がある。したがって、Bを熱間圧延線材中に積極的に添加する場合のB含有量は、0.0003〜0.0030%の範囲内が好ましい。より好ましいB含有量は、0.0020%以下である。一方、伸線加工後に得られる鋼線の引張強さと疲労寿命をより高める観点から、熱間圧延線材のB含有量を0.0005%以上とすることがより好ましい。
熱間圧延線材は、フェライト組織とパーライト組織の合計の体積率が90%以上である金属組織を有する必要がある。このような金属組織を有する熱間圧延線材であることにより、線材にパテンティング処理を行うことなく、例えば、真歪みで5.25以上の加工量で伸線加工を行うことにより、3000MPa以上の高い引張強さと優れた延性を有する鋼線が得られる。熱間圧延線材のフェライト組織とパーライト組織との合計の体積率が90%未満であると、マルテンサイト組織やベイナイト組織の体積分率が増えるため、伸線加工中に断線しやすくなるとともに、伸線加工後に得られる鋼線の引張強さが不足する。フェライト組織とパーライト組織の合計の体積率は95%以上であることが好ましい。熱間圧延線材の金属組織おいて、フェライト組織およびパーライト組織を除く残部の組織は、ベイナイト組織とマルテンサイト組織のいずれか1種又は2種以上である。
熱間圧延線材のフェライト組織およびパーライト組織の体積率は、次の方法によって測定する。まず、熱間圧延線材の横断面(長さ方向に直角な切断面)を鏡面研磨する。その後、切断面をピクラールで腐食し、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、倍率3000倍で観察し、切断面の中心で1箇所、中心から半径の1/3の距離の位置で4箇所、中心から半径の2/3の距離の位置で4箇所の写真を撮影する。なお、1視野あたりの面積は、5.0×10−4mm2(縦20μm、横25μm)とする。次いで、撮影した各写真について、通常の画像解析によりフェライト組織およびパーライト組織以外の組織の面積率を求め、その平均値を算出する。各組織の面積率は、各組織の体積率と同じである。したがって、全体(100%)からフェライト組織およびパーライト組織以外の組織の面積率の平均値を除いた値を、フェライト組織とパーライト組織の合計の体積率とする。
熱間圧延線材の長さ方向に直角な切断面における中心から直径の1/10までの中心部(以下「中心部」という場合がある。)において、1%以上のSが存在しない領域のMn濃度の最大値は、全体のMn濃度の2.0倍以下である。中心部の1%以上のSが存在しない領域のMn濃度の最大値が、全体のMn濃度の2.0倍を超えると、Mnの偏析による中心部の変形能の低下が顕著になる。その結果、伸線加工中に断線が生じやすくなる。そこで、中心部の1%以上のSが存在しない領域のMn濃度の最大値を、全体のMn濃度の2.0倍以下とし、好ましくは1.7倍以下、さらに好ましくは1.5倍以下とする。
熱間圧延線材の中心部より外側の外周部において、1%以上のSおよび/または1%以上のOが存在しない領域のMn濃度の最大値と最小値との比(最大値/最小値)は2.0以下である。上記のMn濃度の最大値と最小値との比が2.0を超えると、熱間圧延線材において、Mnの偏析によるバンド状の初析フェライトの生成が顕著になる。そのため、伸線加工による集合組織の発達が大きく促進され、伸線加工後に得られる鋼線の延性低下が顕著になる。そこで、上記のMn濃度の最大値と最小値との比を2.0以下とし、好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.4以下とする。
熱間圧延線材の中心部の1%以上のSが存在しない領域のMn濃度は、次の方法によって測定する。まず、熱間圧延線材から、長さ200mmの間隔で5箇所の横断面(長さ方向に直角な切断面)を切り出す。次に、図1に示すように、各切断面の中心から直径の1/10までの範囲のMn、S、Oの各元素について、エネルギー分散型の電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて線分析を行ない、各切断面における各元素の濃度分布を測定する。EPMAによる線分析は、ビーム直径を1μm、走査速度を200μm/分として行う。
熱間圧延線材の引張り強さが800MPaを超えると、本発明の他の要件を満たしていても、直径が4.0〜6.0mmである熱間圧延線材を本発明の目標である直径0.32mmまで安定して伸線できない。一方、引張り強さが650MPa未満であると、熱間圧延線材を直径0.32mmまで伸線しても、伸線加工後に得られる鋼線の引張り強さの平均値が3000MPaに達しない。そこで、熱間圧延線材の引張り強さを650〜800MPaの範囲内とし、好ましくは680〜750MPaの範囲とする。
熱間圧延線材の引張り試験の絞りが50%未満であると、本発明の他の要件を満たしていても、伸線加工中の断線を十分に防止できない。このため、直径が4.0〜6.0mmである熱間圧延線材を本発明の目標である直径0.32mmまで安定して伸線できない。よって、引張り試験の絞りは50%以上とし、好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上とする。引張り試験の絞りの上限については特に規定しないが、75%以上にするには製造コストがかさむため、75%未満が好ましい。
熱間圧延線材の1m間隔で離間している10箇所の位置から、それぞれ長さ200mmの試験材を切り出す。次いで、チャック間距離を100mmとして、各試験材の引張り試験を行い、一般的な方法で引張り強さと絞りを測定する。その後、得られた10箇所の引張り強さの平均値を算出し、引張り強さとする。また、得られた10箇所の絞りの最小値を、引張り試験の絞りとする。
熱間圧延線材の直径が6.0mmを超えると、本発明の他の要件を満たしていても、本発明の目標である直径0.32mmまで伸線できなかったり、本発明の目標とする延性(鋼線の引張り試験の絞り)が得られなかったりする。一方、熱間圧延線材の直径を4.0mm未満にすると、熱間圧延での生産効率が大きく低下し、コストがかさむ。このため、伸線加工時のパテンティング処理をなくすメリットがなくなってしまう。そこで、熱間圧延線材の直径を4.0〜6.0mmの範囲内とし、好ましくは4.5〜6.0mmの範囲内、さらに好ましくは4.5〜5.5mmの範囲とする。
次に、本発明の熱間圧延線材を製造する方法の一例について説明する。なお、本発明の熱間圧延線材を製造する方法は、次に説明する方法に限られないことはもちろんである。
本発明の熱間圧延線材を製造する場合、成分組成、フェライト組織とパーライト組織の体積率、引張り強さ、絞り、Mn偏析、直径の各条件を確実に満たし得るように、各製造工程における条件を設定する。
例えば、実験のために少量の鋼を鋳造する場合、内部の平均断面積が120cm2以下である鋳型を用いて鋳造し、インゴットを得る方法が挙げられる。インゴットを得る際に用いる鋳型の材質としては、例えば、鋳鉄などが挙げられる。
次に、鋳造したインゴットを、1260〜1300℃で8〜12時間加熱し、炉内で500℃以下まで冷却する。次いで、インゴットを1200〜1250℃に加熱した後、熱間鍛造することにより鋼片を得る。
次に、鋳造した鋳片を、1260〜1300℃で8〜12時間加熱し、炉内で500℃以下まで冷却する。次いで、鋳片を1200〜1250℃に加熱した後、分塊圧延することにより鋼片を得る。
熱間圧延工程では、仕上げ圧延後、水冷と大気による風冷とを組み合わせて、平均冷却速度80℃/秒以上で650〜700℃の温度範囲に入るまで線材を冷却する。次に、上記平均冷却速度で650〜700℃の温度範囲に入るまで冷却した線材を、大気による風冷によって平均冷却速度18〜30℃/秒で600〜560℃の温度範囲に入るまで冷却する。その後、上記平均冷却速度で600〜560℃の温度範囲に入るまで冷却した線材を、線材表面の温度が500℃以下になるまで放冷する。
以上の工程を行うことにより、本実施形態の熱間圧延線材が得られる。
このため、本実施形態の熱間圧延線材では、パテンティング処理を施すことなく、十分な加工量で伸線加工を行うことにより、鋼線を安定して製造できる。具体的には、例えば、パテンティング処理を施すことなく、真歪みで5.25以上の加工量で直径0.32mmまで20kgの熱間圧延線材に湿式伸線加工を行っても、十分に断線を防止できる。また、本実施形態の熱間圧延線材を用いることで、直径が0.25〜0.35mmで、引張強さが3000MPa以上、引張試験での絞りが30%以上であるスチールコードの素材として好適な鋼線が得られる。
次に、鋳造したインゴットを表1中に示す熱処理条件で熱処理し、炉内で400℃まで冷却した。次いで、インゴットを1230℃に加熱し、熱間鍛造によって、直径80mmの鋼片にし、室温まで放冷した。
最終伸線加工を20kgの各線材に対して行い、伸線加工中の断線回数を記録した。なお、断線回数が2回になった時点で、それ以降の伸線加工を中止した。
そして、直径2.0mmから0.32mmまで20kgの線材を湿式伸線加工(最終伸線加工)した際の断線回数が0回の場合に伸線加工性が良好と評価し、断線回数が1回以上の場合に伸線加工性が悪いと評価した。その結果を表4に示す。
各鋼線について3本ずつ引張試験を行い、引張強さと絞りを測定し、その平均値を求めた。そして、引張強さが3000MPa以上である場合を、鋼線の引張強さが良好であると評価した。また、鋼線を撚り合わせて撚り鋼線を製造する際の断線の頻度は、引張試験での絞りと相関がある。絞りが30%以上であれば、撚り線時の断線を十分に防止できる。このため、絞りが30%以上の場合を、鋼線の絞り(延性)が良好と評価した。その結果を表4に示す。
また、熱間圧延線材の中心部のMn濃度の最大値が2.0倍を超え、熱間圧延線材の外周部のMn濃度の最大値と最小値との比(最大値/最小値)が2.0を超えた試験番号3、15、20、36では、熱間圧延線材の伸線加工性が悪かった。
また、Mn含有量の少ない熱間圧延線材を用いた試験番号8では、熱間圧延線材の引張強さが不十分であり、伸線加工後に得られた鋼線の引張強さも不十分であった。
C含有量の多い熱間圧延線材を用いた試験番号10では、熱間圧延線材の引張強さが高すぎて、熱間圧延線材の伸線加工性が悪かった。
不純物中のAl,Ti、N,Oのいずれかが多い熱間圧延線材を用いた試験番号11〜14では、熱間圧延線材の伸線加工性が悪かった。
熱間圧延線材の引張試験の絞りが不十分である試験番号28、32では、熱間圧延線材の伸線加工性が悪かった。
熱間圧延線材の直径が6.0mmを超える試験番号30では、熱間圧延線材の伸線加工性が悪かった。
熱間圧延線材の引張強さが不十分である試験番号31、35では、伸線加工後に得られた鋼線の引張強さも不十分であった。
マルテンサイト組織が生成し、フェライト組織とパーライト組織の合計の体積率が不足し、引張り試験の絞りも不足した試験番号34では、熱間圧延線材の伸線加工性が悪かった。
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.30〜0.50%、
Si:0.10〜1.00%、
Mn:0.40〜1.10%、
を含有すると共に残部がFe及び不純物から成り、かつ不純物中のAl,Ti、N,P,S及びOがそれぞれ
Al:0.003%以下、
Ti:0.003%以下、
N:0.0080%以下、
P:0.030%以下、
S:0.020%以下、
O:0.0030%以下
である熱間圧延線材であり、
フェライト組織とパーライト組織の合計の体積率が90%以上である金属組織を有し、引張り強さが650〜800MPaであり、引張り試験の絞りが50%以上であり、直径が4.0〜6.0mmであり、
長さ方向に直角な切断面における中心から直径の1/10までの中心部において、1%以上のSが存在しない領域のMn濃度の最大値が、全体のMn濃度の2.0倍以下であり、
前記中心部より外側の外周部において、1%以上のSおよび/または1%以上のOが存在しない領域のMn濃度の最大値と最小値との比(最大値/最小値)が2.0以下であることを特徴とする伸線加工用熱間圧延線材。 - 更に、質量%で、
Cr:0.03〜0.70%、
Mo:0.02〜0.20%、
B:0.0003〜0.0030%
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の伸線加工用熱間圧延線材。
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