JP6354481B2 - 鋼線材及び鋼線材の製造方法 - Google Patents

鋼線材及び鋼線材の製造方法 Download PDF

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本発明は、鋼線材及び鋼線材の製造方法に関する。
伸線加工によって高強度化される鋼線材には、金属組織をパーライトにすることを目的として、パテンティングと呼ばれる熱処理が施される。例えば、スチールコード、スチールベルトコード、ソーワイヤなどの極細鋼線は、熱間圧延後、伸線加工、最終パテンティングを施した後、必要に応じてブラスめっき処理を施し、最終伸線を行うことで製造される。また、最終パテンティングを施す前の伸線加工の途中に、中間パテンティングが施されることがある。
極細鋼線をタイヤ、ベルトコード、高圧ホース等の補強材として使用するために、複数の極細鋼線を高速で撚り合わせる撚り線加工が行われる。極細鋼線には、撚り線加工によって断線しないように、高い延性が求められる。更に、タイヤの軽量化や高性能化の要望に応えるために、スチールコードの高強度化が進められている。また、鋼線の引張強さが高くなると延性が低下し、デラミネーションと呼ばれる縦割れが発生し、撚り線加工中に断線し易くなる傾向がある。
近年、引張強さで3000MPaを超える高強度においても延性を確保し、断線しにくい高強度鋼線を得るために、種々の提案がなされている(例えば、下記特許文献1〜4を参照)。
例えば、以下の特許文献1は、表層部の平均パーライトノジュールサイズを微細にして鋼線の捻回特性を向上させる技術であり、パテンティングの加熱温度を制限し、パーライト変態前に線材の表層部温度を内部温度よりも低下させるものである。また、以下の特許文献2は、フェライトを微細化し、高強度鋼線の縦割れを抑制するために、530〜610℃でパーライト変態を生じさせる技術である。
以下の特許文献3は、デラミネーションを抑制するために、パーライトのブロック径やラメラ間隔を微細にするもので、パテンティングの加熱温度及び浴温度の好適範囲を、それぞれ、900〜1000℃及び460〜540℃としている。また、以下の特許文献4は、Crを添加して初析フェライトの生成を抑制し、パーライトのラメラ間隔を微細にすることにより、伸線加工前の鋼線材を高強度化し、鋼線表面の引張残留応力を線径に応じた値以下に抑えて、デラミネーションを抑制する技術である。
特開平11−241280号公報 特開平11−199978号公報 特開2001−279380号公報 特開2001−279381号公報
しかしながら、パテンティングの加熱温度や浴温度(パーライト変態温度)を制御しても、最終伸線を施した鋼線の強度が3800MPa以上になると、必ずしもデラミネーションの発生を防止できないことがわかった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、最終伸線後の強度が高く、デラミネーションの発生が抑制された鋼線を得るための素材となる、鋼線材及びその製造方法の提供を課題とするものである。
本発明は、高強度の鋼線の素材となる、最終パテンティング後、最終伸線前の鋼線材及び鋼線材の製造方法である。本発明は、線材長手方向にパーライトのフェライト結晶方位<110>を集合させて加工硬化を促進し、パーライトのブロック径を微細化して最終伸線の伸線加工性を高めた鋼線材に関する。また、本発明は、最終パテンティングを行うに際し、伸線加工された鋼線を急速加熱した後、パーライト変態させる温度まで加速冷却する、鋼線材の製造方法に関する。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]質量%で、C:0.60〜1.10%、Si:0.02〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、金属組織が、面積率で95%以上のパーライトを含み、前記パーライトのブロック径が、20μm以下であり、線材長手方向のフェライト結晶方位<110>の集積度が、2.0以上である、鋼線材。
[2][1]に記載された鋼線材の製造方法であって、質量%で、C:0.60〜1.10%、Si:0.02〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼片を熱間圧延し、加工歪が1.2以上の伸線加工を施し、50℃/s以上の昇温速度で昇温させ、800〜1100℃の加熱温度T[℃]で、加熱時間t[s]が式(1)を満足するように加熱した後、800℃から650℃までの冷却速度を30℃/s以上として冷却し、550〜650℃の範囲で30〜120秒保持する、鋼線材の製造方法。
−0.0038×T+5<t<−0.049×T+55 ・・・ (1)
本発明によれば、最終伸線によって、高強度、特に、3800MPa以上の引張強さを有しながら、延性の高い鋼線が得られる鋼線材及び鋼線材の製造方法を提供することができるなど、産業上の貢献が極めて顕著である。
EBSD測定箇所を説明する図である。 最終パテンティングを施す装置の一例を説明する図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
以下で説明する本発明の実施形態は、最終パテンティング後の鋼線材であって、最終伸線によって高強度化される鋼線に関し、特に、スチールコード、スチールベルトコード、ソーワイヤ等の極細鋼線の素材に使用される、最終伸線前の鋼線材及びその製造方法に関するものである。
本発明者らは、高強度鋼線のデラミネーションの発生を抑制するために、最終パテンティング後の鋼線材の組織及び製造方法について検討を重ねた。その結果、本発明者らは、下記(a)〜(c)に示す知見を得た。
(a)最終パテンティング後の鋼線材を最終伸線して高強度の鋼線を製造する場合、得られた鋼線の強度及び線径が同一であっても、最終伸線の加工度が小さいほどデラミネーションの発生が抑制される。素材となる鋼線材の加工硬化を促進させることにより、最終伸線の加工度を抑制して、高強度化を図ることができる。
(b)最終パテンティングによって、鋼線材の線材長手方向(すなわち、鋼線材の軸方向)にパーライトのフェライト結晶方位<110>の集積度を高めると、最終伸線では結晶回転が抑制され、加工硬化が促進される。最終パテンティング後、線材長手方向にパーライトのフェライト結晶方位<110>の集積度を高めるには、伸線加工された鋼線を非常に速い昇温速度で加熱(急速加熱)し、冷却してパーライト変態させることが重要である。
(c)最終パテンティング後の鋼線材のパーライトのブロック径が大き過ぎると、最終伸線における伸線加工性が低下する。最終パテンティング後、パーライトのブロック径の粗大化を防止するには、最終パテンティングにおいて、伸線加工された鋼線材を急速加熱した後、パーライト変態させる温度までの冷却速度を高めることが重要である。
ここで、フェライト結晶方位<110>の集積度とは、方位<110>を有するフェライト結晶粒の存在頻度が、完全にランダムな方位分布を持つ組織(この場合における集積度は1となる。)に対して何倍であるかを示したものである。また、パーライトのブロック径とは、パーライトを構成するフェライトの結晶方位が概ね同一である領域を意味する。
鋼線材の線材長手方向のフェライト結晶方位及びパーライトのブロック径は、図1に示すように、線材長手方向に垂直な断面を測定面とし、電子線後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction:EBSD)法によって測定する。より詳細には、線材長手方向に垂直な断面を、例えばコロイダルシリカ粒子により鏡面研磨し、径方向の中心部近傍でEBSD法による測定を行い、フェライト結晶方位のマップを作成する。マッピングの領域は、例えば、1辺がいずれも500μm以上の矩形領域で行い、ピクセル形状は、正6角形要素配置とし、ステップは、例えば0.5μm間隔で行う。
個々のピクセルの結晶方位を、{110}極点図上にプロットすると、線材長手方向のフェライト結晶方位<110>の集積度を測定することができる。より詳細には、フェライト結晶方位<110>の集積度は、EBSD法の測定結果を利用して{110}極点図を生成し、得られた極点図をTexture解析するなどして、測定することが可能である。
また、EBSD法によってフェライト結晶方位を同定すれば、それぞれの6角形状ピクセルには、フェライトの結晶方位の情報が与えられる。その結果、隣接するピクセルの境界には、結晶方位の角度差(以下、フェライト結晶方位傾角差、又は、傾角差ともいう。)の情報が定義される。二つのピクセルA,B間の境界で9°以上のフェライト結晶方位傾角差があり、ピクセルBと隣接するピクセルCとの間の境界も9°以上というように、9°以上の傾角差のあるピクセル境界が連続する場合、これらピクセルを連結して、パーライトブロック粒界として定義する。
ピクセルの3重点において、この3重点から伸びるピクセル境界での傾角差がいずれも9°以上の場合、パーライトブロック粒界は分岐する。ピクセル境界での傾角差が9°以上という条件が途中で途切れる場合、このピクセル境界はパーライトブロック粒界とは見なさず、無視する。以上の考え方に従って、9°以上のフェライト結晶方位傾角差を持つピクセル境界を全矩形領域にわたって定義し、ピクセル境界がひとつの閉じた領域を包囲する場合、この領域を一つのパーライトブロックとして定義し、ピクセル境界をパーライトブロック粒界として定義する。このようにして、フェライト結晶方位のマップ上にパーライトブロック粒界を示し、パーライトのブロック径を測定する。ただし、定義されたパーライトブロックの一つの粒が25ピクセル以下で構成される場合は、ノイズとして扱い、無視する。ここで、パーライトブロックと、パーライトノジュールとは、同義である。
(鋼線材について)
以下では、本発明の実施形態に係る鋼線材について、詳細に説明する。
<成分について>
まず、本発明の実施形態に係る鋼線材の成分について説明する。なお、以下の説明において、特に断りのない場合、「%」という表記は質量%を意味する。
本発明の実施形態に係る鋼線材は、質量%で、C:0.60〜1.10%、Si:0.02〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%を含有し、残部がFe及び不純物からなる。
[C:0.60〜1.10%]
Cは、組織をパーライトとし、強度を向上させる元素である。C量が0.60%未満であると、粒界フェライトなどの非パーライト組織が生成して伸線加工性を損ない、極細鋼線の引張強さも低下する。一方、C量が1.10%を超えると、初析セメンタイトなどの非パーライト組織が生じて、伸線加工性が劣化する。したがって、C量は、0.60〜1.10%の範囲に限定する。C量は、好ましくは0.65%以上である。
[Si:0.02〜2.0%]
Siは、鋼の脱酸に用いられる元素であり、固溶強化にも寄与する。かかる効果を得るためには、Si量を、0.02以上とする。Si量は、好ましくは0.05%以上である。一方、Si量が2.0%を超えると、熱間圧延工程で表面脱炭が発生し易くなる。従って、Si量の上限を2.0%とする。Si量は、好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.5%以下である。
[Mn:0.1〜2.0%]
Mnは、脱酸や脱硫に用いられる元素である。かかる効果を得るためには、Mn量を、0.1%以上とする。一方、Mn量が2.0%を超えると、パーライト変態が遅延し、パテンティング処理の時間が長くなる。従って、Mn量は、2.0%以下とする。Mn量は、1.0%以下であることが好ましい。
なお、本実施形態に係る鋼線材では、強度、靭性、延性などといった機械的特性の更なる向上を目的として、Cr等の任意添加元素を更に含有していてもよい。
<金属組織について>
次に、本発明の実施形態に係る鋼線材の金属組織について説明する。
○面積率
初析フェライトや初析セメンタイトなどの非パーライト組織は、最終伸線において、亀裂が発生する原因となる。従って、本発明の実施形態では、伸線加工性を高めるため、パーライトの面積率を95%以上とする。なお、残部は、初析フェライトや初析セメンタイトなどの非パーライト組織である。
なお、上記の金属組織は、線材を、線材長手方向に対して垂直に切断した断面をサンプルとして切り出し、鏡面研磨した後、走査型電子顕微鏡により観察することによって特定することができる。また、各金属組織の面積率は、走査型電子顕微鏡により観察した結果から面分法又はポイントカウンティング法を用いて求めることができる。観察倍率は、例えば1000倍以上とし、観察する面積は、例えば1000μm以上とすることが好ましい。面積率を例えばポイントカウンティング法で特定する場合、測定点を200点以上とすることが好ましい。
○パーライトのブロック径
上記知見のように、パーライトのブロック径(以下、パーライトブロック径ともいう。)は、20μmより大きくなると伸線加工性が低下するため、20μm以下とする。また、パーライトブロック径の下限は、特に規定するものではないが、パーライトブロック径は微細化されるほど好ましいため、5μm以上とすることが好ましい。これは、線径や設備によって冷却速度に上限があり、パーライトブロック径を5μm未満にすることが困難である場合があるためである。
○フェライト結晶方位<110>の集積度
また、上記知見のように、フェライト結晶方位<110>が線材長手方向に集積すると、伸線加工中の方位回転を抑制することができ、転位の蓄積が促進して、加工硬化し易くなる。従って、本発明の実施形態では、かかる効果が顕著になるフェライト結晶方位<110>の集積度を、2.0以上とした。フェライト結晶方位<110>の集積度は、好ましくは2.1以上である。フェライト結晶方位<110>の集積度は高いほど好ましいため、上限は特に規定するものではないが、最終パテンティング前の伸線加工の加工歪みを高めても、フェライト結晶方位<110>の集積度は飽和するため、上限を4.5とすることが好ましい。また、最終パテンティングの加熱によってセメンタイトを十分に溶解させようとする場合、伸線加工によって線材長手方向に集積したフェライト結晶方位<110>のランダム化が進み易くなることから、フェライト結晶方位<110>の集積度の上限は2.5以下であってもよい。
なお、パーライトブロック径及びフェライト結晶方位<110>の集積度は、上記のようなEBSD法により特定することが可能である。
本発明の実施形態に係る鋼線材は、以上のような特徴を有することにより、例えば3800MPa以上の引張強さを有しながら、高い延性を示すこととなる。
以上、本発明の実施形態に係る鋼線材について、詳細に説明した。
(鋼線材の製造方法について)
次に、本発明の実施形態に係る鋼線材の製造方法について説明する。
本発明の実施形態に係る鋼線材は、常法によって、上記のような成分を有する鋼を溶製し、鋳造して、得られた鋼片を熱間圧延し、伸線加工し、最終パテンティングを施して製造する。
鋼片は、連続鋳造で製造してもよく、鋳造後に分塊圧延を施してもよい。熱間圧延は、例えば、鋼片を1000〜1100℃に加熱して行う。熱間圧延の仕上温度は、900℃〜1100℃が好ましい範囲であり、最終の圧延速度は、60m/s〜100m/sが好ましい範囲である。仕上温度を900℃〜1100℃とし、最終の圧延速度を60m/s〜100m/sとすることで、γ粒を微細化することが可能となる。
伸線加工を施す前の線材の組織を、伸線加工性に優れるパーライトとするため、熱間圧延後、調整冷却を施すか、又は、パテンティングを施し、パーライトに恒温変態させることが好ましい。また、熱間圧延後、伸線加工を行って所定の線径とし、中間パテンティングを施してもよい。
最終パテンティングの前の伸線加工は、伸線加工歪を1.2以上として行う。これは、フェライト結晶方位<110>を線材長手方向に集積させ、パーライトのブロック径を微細化するためである。伸線加工歪みが1.2未満であると、最終パテンティング後の鋼線材の線材長手方向のフェライト結晶方位<110>の集積度が低下し、パーライトのブロック径が大きくなる。最終パテンティングの前の伸線加工は、伸線加工歪の上限は特に規定しないが、最終伸線で加工硬化させるために、熱間圧延後の線径及び最終パテンティング前の線径を考慮すると2.7以下が好ましい。
最終パテンティングでは、最終パテンティングの前の伸線加工によって線材長手方向に集積させたフェライト結晶方位<110>のランダム化を抑制するため、昇温速度及び加熱温度と、加熱時間と、が重要になる。
最終パテンティングの昇温速度が50℃/s未満であると、最終パテンティング後の鋼線材の線材長手方向のフェライト結晶方位<110>の集積度が低下する。そのため、最終パテンティングの昇温速度は、50℃/s以上とする。最終パテンティングの昇温速度の上限は特に規定するものではなく、昇温速度が速いほど好ましいが、昇温速度は線径や設備によって制約されるため、100℃/s以下とすることが好ましい。このような急速加熱を行うために、例えば、高周波加熱装置を用いることができる。
最終パテンティングの加熱温度は、800〜1100℃の範囲とする。通常、パテンティングでは、鋼の組織がオーステナイトとなる温度に加熱する必要がある。そのため、本発明の実施形態では、加熱温度を800℃以上とする。一方、最終パテンティングの加熱温度が1100℃を超えると、最終パテンティング後の鋼線材の線材長手方向のフェライト結晶方位<110>の集積度が低下する。そのため、最終パテンティングの加熱温度は、1100℃以下とする。最終パテンティングの加熱温度は、1050℃以下であることが好ましい。
更に、加熱温度が低い場合は、セメンタイトを十分に溶解させるために加熱時間を長くする必要があり、加熱温度が高い場合は、集合組織のランダム化やパーライトのブロック径の粗大化を抑制するために加熱時間を短くすることが必要である。本発明の実施形態では、パーライトの面積率を95%以上とし、線材長手方向のフェライト結晶方位<110>の集積度を2.0以上とし、パーライトのブロック径を20μm以下とするため、加熱温度T[℃]に対して、加熱時間t[s]が式(1)を満足するように、加熱することとした。加熱時間tが下記式(1)を満足することで、パーライトの面積率が95%以上となり、線材長手方向のフェライト結晶方位<110>の集積度が2.0以上となり、パーライトのブロック径が20μm以下となる。

−0.0038×T+5<t<−0.049×T+55 ・・・ (1)
パーライトのブロック径を微細にするには、650℃以下でパーライト変態させることが必要であり、加熱後、パーライト変態させる温度域まで加速冷却する。800℃から650℃までの冷却速度が30℃/s未満であると、冷却中にパーライト変態が生じ、パーライトのブロック径が粗大になるため、冷却速度の下限を30℃/s以上とする。冷却速度の上限は特に限定されるものではなく、速ければ速いほど好ましいが、冷却速度は線径や設備によって制約されるため、上限は好ましくは100℃/s以下とする。
冷却後、パーライト変態させるために、550〜650℃の範囲で、30〜120秒の間、保持する。保持する温度が550℃未満であると、パーライト変態が遅延し、パーライトの面積率が低下するため、550℃以上とする。一方、保持する温度が650℃を超えると、パーライトのブロック径が粗大になるため、650℃以下とする。保持時間は、パーライト面積率を95%以上にするために、30秒以上とする。保持時間の上限は、生産性の観点から、120秒以下とする。また、冷却後の保持温度は、550〜650℃の温度範囲内であれば、温度は一定でも、低下しても、上昇しても構わない。例えば、塩浴、鉛浴などに浸漬してもよく、保温カバーを使用して、徐冷してもよい。
<製造設備について>
次に、本発明の実施形態に係る鋼線材の製造方法を実施する設備について、具体的な例を挙げながら説明する、なお、以下の説明は本発明を説明するための例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
本発明の実施形態に係る鋼線材の製造方法で実施される最終パテンティングは、伸線加工後の鋼線材を繰り出すための元線ボビン1と、鋼線材を加熱する高周波加熱装置2と、鋼線材が脱線しないよう案内するガイドローラー3と、溶融ソルト4を保持しつつ上下するソルト浴槽5と、熱処理後の線線材を巻き取るボビン6と、によって行うことができる。
元線ボビン1には伸線加工後の鋼線材が巻き付けられている。元線ボビン1は、鋼線材の送り速度に同期して、適度な張力を維持しつつ回転する。鋼線材の送り速度は、任意に変更することができる。高周波加熱装置2は、鋼線の高速加熱が可能な加熱手段であり、また、表面と内部の温度差の無い状況を作り出すことが可能となっている。この高周波加熱装置2を用いて鋼線材の送り速度を調整することで、鋼線材を所定の昇温速度が実現された加熱温度で、上記式(1)を満足する加熱時間の間、鋼線材を加熱することができる。ソルト浴4は、所定の温度のソルト5を保持しつつ、上下する。
ソルト浴4の上下動と鋼線材の送り速度の調整によって、極短時間から長時間まで、ソルト5への浸漬時間を調整することができる。また、鋼線材の送り速度の調整により、高周波加熱装置2による加熱からソルト浴4への浸漬までの時間を短縮すると、冷却速度を確保することができる。加熱する対象が鋼線材であるため、ソルト浴4に浸漬されてから十分に短い時間で、表面と内部の温度差の無い状況を作り出すことが可能となっている。
以上、本発明の実施形態に係る鋼線材の製造方法について、詳細に説明した。
以下に、実施例を示しながら、本発明の実施形態に係る鋼線材及び鋼線材の製造方法について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の実施形態に係る鋼線材及び鋼線材の製造方法のあくまでも一例であって、本発明に係る鋼線材及び鋼線材の製造方法が下記の例に限定されるものではない。
表1に示す化学成分を有する鋼片を熱間圧延することで得られた直径5.5mmの圧延線材を、乾式伸線にて直径1.6mmから1.8mm程度に伸線加工した。比較のため、一部の圧延線材には、直径2.0mmまで伸線加工した後に、中間パテンティングを施し、1.6mmまで伸線加工して、伸線加工歪を低減させた。伸線加工後、図2に例示したような設備を用い、鋼線材を高周波加熱装置によって加熱し、ソルト浴に浸漬して保持する最終パテンティングを施した。その後、ソルトを除去し、室温まで空冷した。鋼線材の製造条件を、以下の表2に示す。
Figure 0006354481
Figure 0006354481
得られた鋼線材のパーライトの面積率(%)及びブロック径(μm)、並びに、フェライト結晶方位<110>の線材長手方向への集積度を、各々測定した。パーライト面積率は、得られた線材を切断して線材長手方向と垂直な断面を鏡面研磨した試料を硝酸とエタノールの混合液でエッチングし、線材の表面と中心との間の中央部を2000倍で観察して求めた。パーライトのブロック径、フェライト結晶方位<110>の線材長手方向への集積度は、EBSD法によって測定した。
また、最終パテンティングを施した鋼線材に湿式の最終伸線を施し、断線回数、引張強さ、及び、捻回時の縦割れ(デラミネーション)の有無を測定した。
伸線加工性は、以下の表3に示す伸線加工歪で湿式伸線を施し、20kgでの断線回数を測定した。
デラミネーションの測定には、湿式伸線後の鋼線を長さ100×D(D:直径)に切断し、1方向に速度50回転/分で捻回し、デラミネーションが発生するか否かで捻回特性を評価した。デラミネーションの発生の有無は、トルク値の急激な低下の有無で確認し、トルク値の急激な低下がある場合、デラミネーション発生と判断した。
最終伸線によって得られた鋼線から試料を採取し、引張試験をJIS Z 2241に準拠して行った。
得られた結果を、以下の表3に示す。<110>集積度は線材長手方向のフェライト結晶方位<110>の集積度であり、PBSは、パーライトのブロック径である。なお、最終伸線後の鋼線が満足すべき特性は、引張強さが3800MPa以上、デラミネーションは無し、断線回数は1回以下とした。
Figure 0006354481
No.1〜8は、本発明例であり、上記表3から明らかなように、上記の基準を満足している。
一方、No.9の例は、加熱時間が長いため、<110>集積度が低く、PBSが大きくなり、引張強さが目標に到達していない。No.10の例は、昇温速度が遅いため、<110>集積度が低く、引張強さが低下している。
No.11の例は、加熱時間が短いために、パーライトの面積率が減少し、デラミネーションが発生し、断線回数が増加している。No.12の例は、最終パテンティング前の伸線加工歪が小さいため、<110>集積度が低く、PBSが大きくなり、引張強さを高めるために最終伸線の伸線加工歪みを大きくすると、断線回数が増加し、デラミネーションが発生した。
No.13の例は、炭素量が低く、引張強さが不足している。また、No.14の例は、Mn量が高く、マルテンサイトが生成してパーライト面積率が低下し、目標とする線径0.26mmまで最終伸線を行うことができなかった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.60〜1.10%、
    Si:0.02〜2.0%、
    Mn:0.1〜2.0%
    を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
    金属組織が、面積率で95%以上のパーライトを含み、
    前記パーライトのブロック径が、20μm以下であり、
    線材長手方向のフェライト結晶方位<110>の集積度が、2.0以上である、鋼線材。
  2. 請求項1に記載された鋼線材の製造方法であって、
    質量%で、C:0.60〜1.10%、Si:0.02〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼片を熱間圧延し、
    加工歪が1.2以上の伸線加工を施し、
    50℃/s以上の昇温速度で昇温させ、
    800〜1100℃の加熱温度T[℃]で、加熱時間t[s]が式(1)を満足するように加熱した後、800℃から650℃までの冷却速度を30℃/s以上として冷却し、
    550〜650℃の範囲で30〜120秒保持する、鋼線材の製造方法。

    −0.0038×T+5<t<−0.049×T+55 ・・・ (1)
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