以下に添付図面を参照して、液体を吐出する装置及び吐出させた液体の乾燥方法の実施の形態を詳細に説明する。本願において「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。「液体を吐出する装置」には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。例えば、画像形成装置、立体造形装置、処理液塗布装置、噴射造粒装置などが該当する。以下では、「液体を吐出する装置」の一例として、画像形成装置の一つのインクジェット記録装置への適用例を示す。
(実施の形態)
図1は、実施形態にかかるインクジェット記録装置の構成例を模式的に示した図である。図1には、インクジェット記録装置1の画像形成にかかる構成として、インクジェットヘッドユニット10と、搬送機構11と、乾燥機構12と、巻き取り装置13を示している。
インクジェットヘッドユニット10は、インク吐出ヘッド100や、エネルギー発生源101や、ヘッドタンク(不図示)等を有する。エネルギー発生源101は、インク吐出ヘッド100を駆動するエネルギー発生源、例えば圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)などのことである。インク吐出ヘッド100は、ヘッドタンクからインクの供給を随時受け、圧電アクチュエータ等のエネルギー発生源101により駆動し、インク滴Aを吐出する。
本実施形態において、ヘッドタンクは、C(Cyan)、M(Magent)、Y(Yellow)、K(Black)の4色のインクタンクを有し、インク吐出ヘッド100は、各色用のノズル10−1、10−2、10−3、10−4を有する。図1において各色用のノズル10−1、10−2、10−3、10−4は、矢印Xが示す方向(副走査方向とする)に、K(Black)、C(Cyan)M(Magent)、Y(Yellow)の順に配列されている。また、各色用のノズル10−1、10−2、10−3、10−4は、図1の手前から奥(主走査方向)に、それぞれ、ノズル列として設けられている。
インク吐出ヘッド100は、各ノズル列を、記録媒体である連続紙14の主走査方向の印字幅全域に設けたラインヘッドである。圧電アクチュエータ等のエネルギー発生源101は、主走査方向の一つ又は複数のノズルを駆動単位として、ノズル10−1、10−2、10−3、10−4ごとに設けられている。エネルギー発生源101の個別駆動により、駆動対象のノズルからインク滴Aが吐出する。
搬送機構11は、ロール状に巻かれた連続紙(ロール紙15)から連続紙14を繰り出し、繰り出した連続紙14を、インクAを付着させるエリア(インク吐出エリアE)に搬送する。更に、搬送機構11は、インクの付着した連続紙14をインク吐出エリアEから乾燥機構12内に搬送し、乾燥機構12内で乾燥した連続紙14については排紙側へ排出する。
具体的に、搬送機構11は、給紙側搬送ローラ対110と、排紙側搬送ローラ対111と、プラテンローラ112を有する。給紙側搬送ローラ対110は、ロール紙15から繰り出した連続紙14を、インクを付着させる表面側とその裏面側からローラ110a、110bで挟持し、ローラ110a、110bの回転駆動により、連続紙14を矢印Xの方向へ送り出す。プラテンローラ112は複数のローラを矢印Xの方向に並列に並べたものである。プラテンローラ112は、連続紙14を裏面側から吸着し、エネルギー発生源に同期して回転駆動する。排紙側搬送ローラ対111は、乾燥後の連続紙14を、インクの付着した表面側とその裏面側からローラ111a、111bで挟持し、ローラ111a、111bの回転駆動により、巻き取り装置13のある排出方向へと送り出す。搬送機構11は、各ローラが所定のタイミングで回転駆動し、連続紙14をロール紙15から給紙して排紙側へ搬送する。
乾燥機構12は、インク吐出エリアEにおいてインク吐出ヘッド100が連続紙14の表面に付着させた各色のインクAを乾燥させる乾燥装置や機構などを有する。乾燥機構12は、例えば連続紙14を乾燥させる複数の乾燥経路(搬送経路)や、乾燥経路を通過する連続紙を乾燥させるヒータなどを有する。
巻き取り装置13は、排紙側搬送ローラ対により排紙された連続紙を巻き取る装置である。
図2は、乾燥機構12の構成例を示す図である。図2に示す一例の乾燥機構12は、乾燥経路120(120a、120b)と、排出経路121と、加熱ローラ122と、アイドルローラ123(123a、123b、123c、123d)と、ヒータ124(124a、124b、124c、124d)を有する。
図2において、連続紙14は、手前から奥に幅を有する。連続紙14は、同図の右側から乾燥機構12内に入り、乾燥経路120と排出経路121を通過して、乾燥機構12の左側へ排出されるように移動する。乾燥経路120と排出経路121は、本実施形態では、ローラを組み合わせて形成する。加熱ローラ122は、連続紙14をインクAの付着面の裏面から加熱してインクAを乾燥させる加熱可能なローラである。この加熱ローラ122を用い、プラテンローラ112側から排紙された連続紙14を、水平に保ちながら、第1の乾燥経路120aを移動させる。更に、加熱ローラ122は、第1の乾燥経路120aに導いた連続紙14の搬送方向を変えて第2の乾燥経路120bに導く反転ローラとしても機能させる。ここでは、一例として、搬送方向を180°反転させたものを示す。なお、図2中には、加熱ローラ122を一つの加熱ローラとして示しているが、連続紙14の搬送方向に対して複数の加熱ローラを組み合わせるなどして設けても良い。
第1の乾燥経路120aと第2の乾燥経路120bの設置間隔、図2においては、第1の乾燥経路120aを搬送する連続紙14と第2の乾燥経路120bを逆向きに搬送する連続紙14の相互距離は、距離の遠い側の乾燥経路を通る連続紙14に所定の熱を加えることのできる距離に設定することが望ましい。なお、第1の乾燥経路120aを通過中に連続紙14の単位領域で受けた熱量と、第2の乾燥経路120bを通過中に連続紙14の同じ領域で受けた熱量との総和は、単位領域のインクを乾燥させるのに必要な熱量以上とすることが望ましい。第1の乾燥経路120aと第2の乾燥経路120bの最適な間隔は、インクの種類や、連続紙14の紙の特性や、連続紙14の搬送速度や、ヒータ124の加熱方式や、ヒータ124と2つの乾燥経路の配置関係などの因子によって変化する。従って、それらの間隔は、各因子に従って適宜設定するものとする。
一例として、赤外線加熱方式の場合、赤外線のエネルギーは距離によって減衰する傾向がある。このため、距離の遠い側の乾燥経路を通る連続紙14を効率よく加熱するために、第1の乾燥経路120aと第2の乾燥経路120bの設置間隔を50mm〜200mmの範囲に調節することが望ましい。この距離では、距離の遠い側の乾燥経路を通る連続紙14に対する赤外線のエネルギーの弱まりが少なく、連続紙14を第1の乾燥経路120a上と第2の乾燥経路120b上の合計2回、一つのヒータ(ヒータ124a、ヒータ124b、ヒータ124c、ヒータ124d)で効率よく加熱することができる。つまり、連続紙14のインクAをより良く乾燥させることができる。
アイドルローラ123の内の第1のローラ123aは、連続紙14を第2の乾燥経路120bから排出経路121へ導くように機能する。第2のローラ123b、第3のローラ123c、及び第4のローラ123dは、排出経路121を構成し、連続紙14を乾燥機構12の排出側へ導くように機能する。連続紙14は、乾燥機構12内において、加熱ローラ122、第1のローラ123a、第2のローラ123b、第3のローラ123c、及び第4のローラ123dに所定の張力をもって渡し架けられており、給紙側搬送ローラ対110や、排紙側搬送ローラ対111や、プラテンローラ112などの回転駆動によって乾燥機構12内を上流から下流(搬送方向)に移動する。
ヒータ124は、赤外線加熱により対象物を乾燥させる加熱ユニットである。ヒータ124は、例えばセラミックヒータやシリコンラバーヒータやアルミ箔ヒータやハロゲンランプヒータ等である。ヒータ124は、連続紙14の紙幅全体を覆う形状の発熱体であり、例えば一方向に延在したニクロム線や屈曲を伴いながら一方向に延在するニクロム線等を有する。このヒータ124を、第1の乾燥経路120a上の連続紙14の紙幅全面に、赤外線の照射面が連続紙14の表面に向い合せとなるように配置する。このとき、第1の乾燥経路120a上の連続紙14の表面と第2の乾燥経路120b上の連続紙14の表面における赤外線の熱量の総和が設計値以上となるように(望ましくは最大となるように)、ヒータ124の照射面を調節するなどして固定する。
本実施形態では、2つのヒータ124a、124bを第1の乾燥経路120aに面して水平に並べて配置する。更に、別の2つのヒータ124c、124dを、第2の乾燥経路120bに面して水平に並べて配置する。各ヒータ124a、124b、124c、124dは、それぞれ、発熱体を一つ有し、単体ユニットとして構成されている。各ヒータ124c、124dは、それぞれ、第1の乾燥経路120a上のものと同様、第2の乾燥経路120b上の連続紙14の紙幅全面に、赤外線の照射面が連続紙14の表面と向い合せになるように設置する。図2に示す例では、第1の乾燥経路120a上のヒータ124a、124bと第2の乾燥経路120b上のヒータ124c、124dとを互いに対向する位置に配置して、照射範囲を重ならせているが、この限りではない。向かい合うヒータの位置を互いにずらし、互いの照射範囲を異ならせても良い。
次に、インクジェット記録装置1のハードウエアの制御ブロックの構成について説明する。
図3は、インクジェット記録装置のハードウエアの制御ブロックの一例を示す図である。図3に示すように、インクジェット記録装置1は、主制御部20と、タッチパネル21と、タッチパネルコントローラ22と、表示ディスプレイ23と、表示コントローラ24と、通信部25と、用紙搬送制御部26と、モータ27と、印字ヘッド制御部28と、ヒータ出力制御部29を有する。主制御部20と、タッチパネルコントローラ22と、表示コントローラ24と、通信部25と、用紙搬送制御部26と、印字ヘッド制御部28と、ヒータ出力制御部29は、バスB1を介して接続されている。
主制御部20は、インクジェット記録装置1全体の制御を司る制御回路である。具体的に、主制御部20は、CPUやROMやRAMを有する。CPUは、中央演算処理装置であり、ROMに記憶されているプログラムを実行し、インクジェット記録装置1の制御対象を制御する。ROMは、制御プログラムや設定プログラム等を記憶する不揮発性メモリである。RAMは、CPUがワーク領域に利用する揮発性メモリである。
タッチパネル21は、ユーザによるタッチ入力操作を受け付ける。タッチパネル21は、ユーザから受け付けたタッチ入力操作の情報(例えば印字命令ボタンの位置情報等)をタッチパネルコントローラ22を介して主制御部20に出力する。
表示ディスプレイ23は、液晶等の表示ディスプレイであり、主制御部20から表示コントローラ24を介して出力された表示情報を表示する。
通信部25は、例えばネットワークボード等の通信インタフェースであり、外部機器と通信を行い外部機器から印字データを受信する。通信部25は、受信した印字データを、内部のバッファメモリに記憶する。
用紙搬送制御部26は、モータ27(以下ではDCモータとして説明する)の回転を制御する制御回路である。用紙搬送制御部26は、主制御部20から出力される移動量を示す情報や設定速度を示す情報などを入力してモータ27を回転させる。例えば、用紙搬送制御部26は、主制御部20から出力される移動量を示す情報に基づきPWM(Pulse Width Modulation)信号をモータ27に出力する。また、用紙搬送制御部26は、主制御部20から出力される速度情報に基づきPWM信号のパルス幅を調節して回転速度を調節する。なお、連続紙14の経路上に位置検知センサを設け、位置検知センサからの検知信号を用紙搬送制御部26に入力する構成としても良い。その場合、用紙搬送制御部26は、位置検知センサからの検知信号を随時監視し、モータ27の回転開始や回転停止などの回転制御をより精密に行い、連続紙をより高精度に位置決めする。
モータ27の出力軸には、給紙側搬送ローラ対110(図1参照)や、プラテンローラ112(図1参照)や、排紙側搬送ローラ対111(図1参照)や、巻き取り装置13(図1参照)に構成される巻き取り用のローラ(不図示)など、各種ローラがギア等の伝達機構を介して接続されている。各種ローラは、モータ27の出力軸の回転により所定のギア比で回転する。
印字ヘッド制御部28は、インクジェットヘッドユニット10(図1参照)を制御する制御回路である。本実施形態において、インク吐出ヘッド100(図1参照)は、主走査方向に固定式のラインヘッドのため、移動の制御を伴わない。そのため、本実施形態の印字ヘッド制御部28は、主に、印字データをドットパターン情報に変換して対応ノズルのエネルギー発生源101(図1参照)の駆動を制御する。具体的に、印字ヘッド制御部28は、主制御部20が出力する印字データと各種設定データを入力し、その印字データを単位領域のインクの吐出色や吐出量を示すドットパターン情報に変換する。更に、印字ヘッド制御部28は、主制御部20が出力する吐出開始の命令に基づき、用紙搬送制御部26による連続紙の送り動作に同期させて、各ノズルのエネルギー発生源101を、ドットパターン情報に従って順次駆動する。この駆動により、連続紙14(図1参照)上に単位領域毎に所定の色、所定の量のインクA(図1参照)が付着し、画像が形成される。
ヒータ出力制御部29は、ヒータ124a、124b、124c、124d(図2参照)の出力を所定値に制御する制御回路である。ヒータ出力制御部29は、例えば、交流電源に1つのヒータとサイリスタ(2個の逆向きの並列接続したサイリスタ)を直列接続したものをヒータの数分(ここでは4組)有する。ヒータ出力制御部29は、主制御部20から入力される連続紙の搬送速度や連続紙の坪量などを示す設定データに基づき、各サイリスタに、それらのゲートをオンするタイミング信号を出力する。主制御部20から、変更された設定データが入力されると、ヒータ出力制御部29はタイミング信号のタイミングを設定データの変更に応じてずらすことで、サイリスタの出力電圧を変化(上昇又は下降)させる。サイリスタの出力電圧の変化(上昇又は下降)により、ヒータ124a、124b、124c、124dの端子間電圧が変化(上昇又は下降)し、ヒータ124a、124b、124c、124dの出力が所望の値に制御される。
一例として、搬送速度が「10メートル/分」の設定データが入力された場合、ヒータ出力制御部29は、ヒータ出力を「600W(ワット)」に制御する。その他の例として、坪量が「150gsm以上」の設定データが入力された場合、ヒータ出力制御部29は、ヒータ出力を「1000W(ワット)」に制御する。
次に、インクジェット記録装置1の主制御部20の機能ブロックの構成について説明する。主制御部20は、CPUによるROMのプログラムの実行により、印字処理にかかる各種機能を実現する。
図4は、主制御部20の機能ブロックの主なものを一例として示した図である。図4に示すように、主制御部20は、表示情報出力部30や、印字命令受付部31や、印字データ読込部32や、印字制御部33などを実現する。
表示情報出力部30は、印字処理に係る表示情報(印字データの指定画面や、印字の命令画面等)を表示コントローラ24を介して表示ディスプレイ23に出力する。
印字命令受付部31は、タッチパネル21から入力された印字データの格納場所を示す情報や印字命令等を、タッチパネルコントローラ22を介して受け付ける。
印字データ読込部32は、印字命令受付部31が受け付けた印字データの格納場所から印字データを読み込む。また、印字データ読込部32は、通信部25のバッファメモリに格納された未処理の印字データを読み込む。
印字制御部33は、印字動作を制御する。例えば、印字制御部33は、用紙搬送制御部26に適宜パラメータを出力し、用紙搬送制御部26により連続紙を搬送させる。また、印字制御部33は、印字開始命令や、印字データ読込部32が読み込んだ印字データを、印字ヘッド制御部28に出力し、印字ヘッド制御部28に印字を開始させる。また、印字制御部33は、ヒータ出力制御部29に適宜パラメータを出力し、ヒータ出力制御部29にヒータの加熱を制御させる。
次に、インクジェット記録装置1の印字処理の方法(乾燥方法含む)を示す。
図5は、インクジェット記録装置1の印字処理の手順の一例を示すフロー図である。先ず、インクジェット記録装置1は、印字データと印字命令を受け付ける(S1)。
続いて、インクジェット記録装置1は、ロール紙から連続紙を給紙し、印字エリアに搬送する(S2)。給紙により乾燥機構から排紙された連続紙は巻き取り装置により巻き取らせるものとする。
続いて、インクジェット記録装置1は、印字データに基づいて連続紙にインクを吐出し、画像を形成する(S3)。また、インクジェット記録装置1は、ステップS3の画像形成の開始と共に、連続紙上の画像形成を行った印字部分を、順次、乾燥機構に導き、加熱により乾燥する。
続いて、インクジェット記録装置1は、画像形成の終了後に、印字部分の終了位置が排紙動作により第2の乾燥経路から抜け出ると、第1の乾燥経路上のヒータと第2の乾燥経路上のヒータの加熱を停止する(S4)。
そして、インクジェット記録装置1は、巻き取り装置による巻き取りが終わると、連続紙の搬送動作を停止する(S5)。
図6は、インクジェット記録装置1がステップS3、S4の処理において行う乾燥手順の一例を示すフロー図である。図6に示すように、インクジェット記録装置1は、画像の形成の開始により、第1の乾燥経路上のヒータと第2の乾燥経路上のヒータを所定温度に加熱する(S11)。
続いて、インクジェット記録装置1は、インクの付着した連続紙を各ヒータの照射領域を2回通過するように搬送する(S12)。本実施形態では、連続紙を第1の乾燥経路と第2の乾燥経路を通過させることにより、各ヒータの照射領域を2回通過させる。
続いて、インクジェット記録装置1は、第2の乾燥経路をインクの付着部の最後部が通過し終えた後に第1の乾燥経路上のヒータと第2の乾燥経路上のヒータの加熱を停止する(S13)。
本実施形態では、第1の乾燥経路と第2の乾燥経路のそれぞれにヒータを設ける例を示したがこの限りではない。第1の乾燥経路または第2の乾燥経路のどちらかにヒータを設ける構成としても良い。
また、本実施形態では、乾燥経路に面して水平に2つのヒータを並べて配置した構成のものを示したがこの限りではない。ヒータは、連続紙の紙幅方向全体を覆う構成であれば一つであっても複数のものを水平に配列した構成のものであっても良い。また、紙幅方向に水平に複数のヒータを配列したものであっても良い。
また、本実施形態では、ヒータの照射範囲に2つの乾燥経路を設けた例を示したがこの限りではない。ヒータの照射範囲に3つ以上の多数の乾燥経路を設けても良い。その場合、各乾燥経路の設置間隔は、距離の遠い側の乾燥経路を通る連続紙に所定の熱を加えることのできる距離に設定することが望ましい。具体的には、各乾燥経路を通過中に連続紙の単位領域で受けた熱量の総和が、単位領域のインクを乾燥させるのに必要な熱量以上となるようにする。
また、本実施形態では、ヒータを赤外線加熱によるヒータとして説明したが、マイクロ波加熱や、誘電加熱など、その他のヒータを使用しても良い。
また、本実施形態では、乾燥経路を水平に配置した例を示したがこの限りではない。乾燥経路を水平に対して垂直となる方向や、水平から角度を付けた方向など、適宜設計して良い。
また、本実施形態では、インク吐出ヘッドを駆動するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータを使用したものを例に挙げたが、これに限定されるものではない。エネルギー発生源として、それ以外に、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用しても良い。また、噴射方式には、連続噴射式やオンデマンド式を適宜適用して良い。
また、本実施形態では、連続紙の例を示したが、連続紙の他、所定の大きさに断裁された用紙やフィルム等を乾燥機構に搬送する構成であっても良い。
また、本実施形態では、主走査方向に固定のライン式のインク吐出ヘッドを設けたインクジェット記録装置への適用例を示したが、この限りではない。インク吐出ヘッドを主走査方向に移動させるシリアル式のインクジェット記録装置に適用しても良い。この他、インク吐出ヘッドと記録媒体とが相対的に移動するインクジェット記録装置に適用しても良い。
また、本実施形態では、インクジェット記録装置への適用例を示したが、その他の画像形成装置、例えば、ファクシミリ装置や、プロッタ装置や、複写装置、プリンタ構成の画像形成装置などに適用しても良い。また、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用しても良い。
(変形例1)
実施形態のインクジェット記録装置の変形例1として、乾燥機構のその他の構成例を示す。
図7は、変形例1の乾燥機構72の構成図である。図7の乾燥機構72は、実施形態の乾燥機構12(図2参照)において乾燥経路を水平面に垂直になる向きに変形し、その乾燥経路に面してヒータを設置し直したものである。
図7に示すように、乾燥機構72は、乾燥経路720(720a、720b)と、排出経路721と、加熱ローラ722と、アイドルローラ723(723a、723b、723c、723d、723e、723f)と、ヒータ724(724a、724b、724c、724d)を有する。
図7において、連続紙14は、手前から奥に幅を有する。連続紙14は、同図の右側から乾燥機構72内に入り、乾燥経路720と排出経路721を通過して、乾燥機構72の左側へ排出されるように移動する。乾燥経路720a、720bは、それぞれ、実施形態に乾燥経路120a、120bとして説明したものに相当する。排出経路721は、実施形態に排出経路121として説明したものに相当する。加熱ローラ722は、実施形態に加熱ローラ122として説明したものに相当する。アイドルローラ723は、実施形態にアイドルローラ123として説明したものに相当する。ヒータ724a、724b、724c、724dは、それぞれ、実施形態にヒータ124a、124b、124c、124dとして説明したものに相当する。それらの機能等の説明は繰り返しになるため省略する。
なお、変形例1の乾燥機構72は、6つのアイドルローラ723(723a、723b、723c、723d、723e、723f)を備えている。アイドルローラ723aは、乾燥機構72内に水平に入った連続紙14を90°下向きに方向転換して第1の乾燥経路720aに導く機能を有する。その他の5つのアイドルローラ723b、723c、723d、723e、723fは、連続紙14を第2の乾燥経路720bから排出経路721に沿って排出側へ導くように機能する。
2つのヒータ724a、724bは第1の乾燥経路720aに面して並べて配置する。更に、別の2つのヒータ724c、724dを、第2の乾燥経路720bに面して並べて配置する。各ヒータ724a、724bは、赤外線の照射面が第1の乾燥経路720a上の連続紙14の表面と向い合せになるように設置する。各ヒータ724c、724dも同じように、赤外線の照射面が第2の乾燥経路720b上の連続紙14の表面と向い合せになるように設置する。なお、図7に示す例では、第1の乾燥経路720a上のヒータ724a、724bと第2の乾燥経路720b上のヒータ724c、724dとを互いに対向する位置に配置して、照射範囲を重ならせているが、この限りではない。向かい合うヒータの位置を互いにずらし、互いの照射範囲を異ならせても良い。
以上のように、変形例1の乾燥機構72の構成では、2つのヒータ724a、724bと、2つのヒータ724c、724dとを、それぞれ、水平面に垂直になる向きに設置するようにした。この設置向きでは、乾燥機構72の幅を狭く設計できるので、乾燥機構72に設置面積を小さくすることが可能になる。
(変形例2)
連続紙の搬送速度に応じてヒータ出力を制御するインクジェット記録装置の態様を示す。以下では、実施形態のインクジェット記録装置1と異なる箇所について主に説明する。実施形態のインクジェット記録装置1と共通する箇所については、同一番号を付すなどして適宜説明を省略する。
ヒータ出力制御部29(図3参照)に連続紙の搬送速度(印字速度ともいう)とヒータ出力との対応関係を示す情報(表1)を格納する。なお「表1」に示す値は、一例であり、搬送速度とヒータ出力の関係をこれらの値に制限するものではない。
更に、主制御部20のROMに搬送速度の設定が可能なプログラム(変形例2のプログラム)を予め記録する。主制御部20は、CPUによる変形例2のプログラムの実行により各種機能を実現する。
図8は、主制御部20が実現する主な機能の一例を示すブロック図である。図8に示すように、主制御部20は、表示情報出力部30や、印字命令受付部31や、印字データ読込部32や、印字制御部33や、速度設定部80などを実現する。
速度設定部80は、表示情報出力部30に速度の設定画面情報を出力することにより、速度設定画面情報を表示ディスプレイ23に出力させる。また、速度設定部80は、タッチパネル21におけるユーザの速度指定操作を、タッチパネルコントローラ22を介して受け付ける。速度設定部80は、速度指定操作を受け付けると、その操作が示す速度情報を印字制御部33に出力する。
印字制御部33は、速度設定部80が出力した速度情報を用紙搬送制御部26とヒータ出力制御部29に出力する。この出力により、用紙搬送制御部26は当該速度情報の示す速度で連続紙を印字及び搬送し、ヒータ出力制御部29は、「表1」において当該速度情報(印字速度)に対応するヒータ出力となるようにタイミング信号のタイミングをずらして、サイリスタの出力電圧を変化させる。
以上のように、変形例2のインクジェット記録装置では、連続紙の搬送速度をユーザが指定し、その速度に応じてヒータ出力を制御できるようにした。これにより、搬送速度が遅い場合の熱の加えすぎによる連続紙の過乾燥を抑止することができる。
(変形例3)
連続紙の坪量に応じてヒータ出力を制御するインクジェット記録装置の態様を示す。以下では、実施形態のインクジェット記録装置1と異なる箇所について主に説明する。実施形態のインクジェット記録装置1と共通する箇所については、同一番号を付すなどして適宜説明を省略する。
ヒータ出力制御部29(図3参照)に連続紙の坪量とヒータ出力との対応関係を示す情報(表2)を格納する。なお「表2」に示す値は、一例であり、坪量とヒータ出力の関係をこれらの値に制限するものではない。
更に、主制御部20のROMに坪量の設定が可能なプログラム(変形例3のプログラム)を予め記録する。主制御部20は、CPUによる変形例3のプログラムの実行により各種機能を実現する。
図9は、主制御部20が実現する主な機能の一例を示すブロック図である。図9に示すように、主制御部20は、表示情報出力部30や、印字命令受付部31や、印字データ読込部32や、印字制御部33や、坪量設定部90などを実現する。
坪量設定部90は、表示情報出力部30に坪量の設定画面情報を出力することにより、坪量設定画面情報を表示ディスプレイ23に出力させる。また、坪量設定部90は、タッチパネル21におけるユーザの坪量指定操作を、タッチパネルコントローラ22を介して受け付ける。坪量設定部90は、坪量指定操作を受け付けると、その操作が示す坪量情報を印字制御部33に出力する。
印字制御部33は、坪量設定部90が出力した坪量情報をヒータ出力制御部29に出力する。この出力により、ヒータ出力制御部29は、「表2」において当該坪量情報に対応するヒータ出力となるようにタイミング信号のタイミングをずらして、サイリスタの出力電圧を変化させる。
坪量が大きい用紙の場合、用紙の温めや赤外線を透過させるために、より多くの熱量を必要とする。変形例3のインクジェット記録装置では坪量に応じてヒータ出力を制御するため、坪量が大きい用紙において、乾燥に必要な適切なヒータ出力で加熱することが可能になる。
(変形例4)
連続紙のインク吐出量に応じてヒータ出力を制御するインクジェット記録装置の態様を示す。以下では、実施形態のインクジェット記録装置1と異なる箇所について主に説明する。実施形態のインクジェット記録装置1と共通する箇所については、同一番号を付すなどして適宜説明を省略する。
ヒータ出力制御部29(図3参照)に連続紙の最大インク吐出量(最大インク付着量)とヒータ出力との対応関係を示す情報(表3)を格納する。なお「表3」に示す値は、一例であり、最大インク吐出量とヒータ出力の関係をこれらの値に制限するものではない。
更に、主制御部20のROMに最大インク吐出量の設定が可能なプログラム(変形例4のプログラム)を予め記録する。主制御部20は、CPUによる変形例4のプログラムの実行により各種機能を実現する。
図10は、主制御部20が実現する主な機能の一例を示すブロック図である。図10に示すように、主制御部20は、表示情報出力部30や、印字命令受付部31や、印字データ読込部32や、印字制御部33や、最大インク吐出量算出部95などを実現する。
最大インク吐出量算出部95は、印字データ読込部32が読み込んだ印字データに基づいてインクジェットヘッドユニット10のインクの最大吐出量を算出する。例えば、最大インク吐出量算出部95は、印字データを所定のドットパターンデータに変換し、単位領域毎に各色インクの吐出量の合計を算出する。そして、その算出結果から、最大インク吐出量算出部95は、吐出量が最大のもの(最大インク吐出量)を抽出し、最大インク吐出量情報を印字制御部33に出力する。
印字制御部33は、最大インク吐出量算出部95が出力した最大インク吐出量情報をヒータ出力制御部29に出力する。この出力により、ヒータ出力制御部29は、「表3」において当該最大インク吐出量情報に対応するヒータ出力となるようにタイミング信号のタイミングをずらして、サイリスタの出力電圧を変化させる。
インクの付着量が少ないとインクは乾燥しやすくなるので、熱量を抑制する必要がある。変形例4のインクジェット記録装置では最大インク付着量に応じてヒータ出力を制御するため、インク付着量が少ない場合であっても、過乾燥にならない程度の適切なヒータ出力で加熱することが可能になる。
以上に示す変形例1〜4を任意に組み合わせて画像形成装置を構成しても良い。
以上のように、本実施形態及び変形例1〜4においてインクジェット記録装置として一例を示した「液体を吐出する装置」は、ヒータの照射範囲に複数の乾燥経路を有するため、ヒータに近接する乾燥経路上を通過する連続紙を加熱乾燥した後においても、他の乾燥経路上を通過し終えるまで引き続き連続紙を加熱乾燥し続けることが可能になる。一例として示した赤外線加熱では、ヒータに近接する乾燥経路上を通過する連続紙に赤外線の一部が吸収され、残りは連続紙を透過する。透過した赤外線の一部は後段の乾燥経路上を通過する連続紙に吸収されることになる。つまり、連続紙上に付着したインクを、より少ない電力により十分に乾燥させることができる。その結果、未乾燥部分によるピッキングや、オフセットや、ロール紙の巻き取り時の裏移り等、印字品質を低下させる不具合が解消されることになる。
以上のように、本実施形態では本願の「液体を吐出する装置」の一例としてインクジェット記録装置への適用例を示した。「連続紙」などが「液体が付着可能なもの」に対応する。「インク(滴)」などが「液体」に対応する。「画像」などが「液体形成物」に対応する。「インク吐出ヘッド」などが「液体吐出ヘッド」に対応する。「照射範囲」が「加熱範囲」に対応する。「照射面」が「加熱面」に対応する。「乾燥経路」が「搬送経路」に対応する。「乾燥機構」や「搬送機構」などが「搬送部」に対応する。
本実施形態では、この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装
置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形
成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像
が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパター
ン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用
紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶
液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装
置などがある。
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
各実施形態で実行されるプログラムは、ROMなどのメモリ部に予め組み込まれて提供するものとしているが、これに限定されるものではない。各実施形態で実行されるプログラムを、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータプログラムプロダクトとして提供してもよい。例えば、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルで、フレキシブルディスク、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)、ブルーレイディスク(登録商標)、半導体メモリ等の記録媒体に記録して提供してもよい。
また、各実施形態で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、各実施形態で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
以上、本発明の実施形態及び変形例を説明したが、実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及び変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。