JP2017094377A - PbフリーSn系はんだ合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】 機械的特性、加工性、応力緩和性、及び接合信頼性に優れたPbフリーはんだ合金を提供する。
【解決手段】 Snを主成分とし、Agを20.0質量%以上30.0質量%以下、Sbを5.0質量%以上15.0質量%以下含有し、さらにCu、Ni、Ge及びZnのうちの少なくとも1種を、Cuの場合は0.01質量%以上1.0質量%以下、Niの場合は0.01質量%以上1.0質量%以下、Geの場合は0.01質量%以上0.8質量%以下、Znの場合は0.01質量%以上3.0質量%以下含有する。さらにAl及びMgのうちの少なくとも一方を、Alの場合は0.01質量%以上1.5質量%以下、Mgの場合は0.01質量%以上0.8質量%以下含有
してもよい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子部品等と基板との接合用などに使用されるSnを主成分とするはんだ合金に関し、より詳しくはSnを主成分とし、さらにAg及びSbを含有したはんだ合金に関する。
電子部品等と基板との接合には従来Pbを含んだはんだ合金が用いられてきたが、環境汚染に対する配慮からPbの使用を制限する動きが強くなってきており、例えばRoHS指令などではPbは規制対象物質になっている。こうした動きに対応して、電子装置などの組立工程ではPbを含まないはんだ合金、即ちPbフリー(無鉛)はんだ合金への代替が進められており、既に中低温用(約140〜230℃)のはんだ合金では、Snを主成分とするPbフリーのはんだ合金が実用化されている。
例えば、特許文献1には、Snを主成分とし、Agを1.0〜4.0質量%、Cuを2.0質量%以下、Niを0.5質量%以下、Pを0.2質量%以下含有するPbフリーのSn系はんだ合金が開示されている。この特許文献1のSn系はんだ合金は、高い強度を有すると共に熱的に安定しており、接合性も良好であると記載されている。また、特許文献2には、Agを0.5〜3.5質量%、Cuを0.5〜2.0質量%含有し、残部がSnからなるPbフリーのはんだ合金が開示されている。この特許文献2のSn系はんだ合金は、溶融温度を低くでき、濡れ性及び機械的強度に優れていると記載されている。さらに特許文献3には、Snを主成分とし、Agを23.0〜28.0質量%、Sbを8.0〜11.0質量%含有するSn系はんだ合金が開示されており、機械的強度を向上させることができると記載されている。
特開平11−077366号公報 特開平8−215880号公報 米国特許第4170472号明細書
上記のように、電子部品等と基板との接合用などに使用されるはんだ合金には、加工性、濡れ性、接合性、機械的特性などの各種特性を向上させることが常に求められている。特に近年の電子機器の小型化・高密度化による高性能化に伴い、電子機器に搭載する実装基板に用いられるはんだ合金製品も小型化しており、より高い精度で作製されたはんだ合金製品が求められている。すなわち、非常に小さなはんだ材料で十分に各種はんだ特性を発揮させるためには、各種はんだ特性の中でも、小型製品を精度良く製造するための加工性の向上が非常に重要である。また、加工性を向上させたはんだ合金は脆性も改善されることとなり、ある程度の変形能を有することが可能になり、応力緩和性も向上させることができる。
本発明は、上記した状況に鑑みてなされたものであり、電子装置に搭載される実装基板などにおいて良好な接合性及び接合信頼性を有し、更には加工性や応力緩和性に特に優れたPbフリーはんだ合金を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明が提供するSn−Ag−Sb系はんだ合金は、Snを主成分とし、Agを20.0質量%以上30.0質量%以下、Sbを5.0質量%以上15.0質量%以下含有し、さらにCu、Ni、Ge及びZnのうちの少なくとも1種を、Cuの場合は0.01質量%以上1.0質量%以下、Niの場合は0.01質量%以上1.0質量%以下、Geの場合は0.01質量%以上0.8質量%以下、Znの場合は0.01質量%以上3.0質量%以下含有することを特徴としている。
上記した本発明が提供するSn−Ag−Sb系はんだ合金は、さらにAl及びMgのうちの少なくとも一方を、Alの場合は0.01質量%以上1.5質量%以下、Mgの場合は0.01質量%以上0.8質量%以下含有してもよく、また、Inを0.30質量%以下含有してもよい。
本発明によれば、良好な接合性及び接合信頼性を有し、更に加工性や応力緩和性に特に優れたPbフリーのSn系はんだ合金を提供することができる。
Niめっき層を有するCu基板とSiチップとを各試料のはんだ合金ではんだ付けした接合体を示す模式的な断面図である。
以下、本発明の一具体例のSn−Ag−Sb系はんだ合金について説明する。この本発明の一具体例のSn−Ag−Sb系はんだ合金は、Snを主成分とし、Agを20.0質量%以上30.0質量%以下、Sbを5.0質量%以上15.0質量%以下含有し、さらにCu、Ni、Ge及びZnのうちの少なくとも1種を所定量含有することを特徴としている。
このように、本発明の一具体例のSn−Ag−Sb系はんだ合金はSn、Ag及びSbを必須成分とすることでAg−Sn金属間化合物及びAg−Sb金属間化合物を多く含む組成を基本組成とすることができ、破断強度に代表される機械的特性に優れたはんだ合金を提供することができる。加えて、Cu、Ni、Ge及びZnのうちの少なくとも1種を所定量含有することで、優れた加工性及び応力緩和性が得られる。また、必要に応じてAl及びMgのうちの少なくとも一方を含有したり、Inを含有したりすることにより更なる諸特性の改善や向上が可能になる。以下、かかる本発明のSn−Ag−Sb系はんだ合金に含まれる必須の元素及び必要に応じて添加される元素について詳しく説明する。
<Sn、Ag、Sb>
Sn、Ag及びSbは、本発明のSn−Ag−Sb系はんだ合金に含まれる必須の元素であり、これらのうち、Agの含有により得られる効果は融点の調整や信頼性の向上等にある。特に、Agを含有させることにより液相線温度を高くすることができ、はんだ合金が完全に溶けきる温度である液相線温度をSn−Ag−Cu系はんだ合金に比べて高くすることができ、リフロー時に再溶融することによって生じる問題を防ぐことができる。
すなわち、リフロー時の熱処理温度に比べて液相線温度を高くすることで、一旦接合していたはんだ合金の全てがリフロー時に再溶融することはなくなるので、溶融しないはんだ合金はSiチップの固定状態が維持され、溶融したはんだ合金は当該固定状態が維持されているSiチップとの間に発生する表面張力の働きによって大きく変形移動することなくその場に留まる状態が維持される。このような効果により、一旦接合したSiチップがリフロー工程中に少しの衝撃で移動してSiチップの剥離を生じたり、リフロー工程中に再溶融したはんだ合金がSiチップの移動と共に流れ出して配線を短絡させたりする問題を防ぐことができる。また、Agを含有させることで、主成分のSn及び後述するSbとそれぞれAg−Sn金属間化合物及びAg−Sb金属間化合物を多く生成することができ、これらの複数の微細な化合物相が存在することにより機械的特性を向上させることができ、接合後の破断強度が向上する。
上記した効果を奏させるため、Ag含有量は20質量%以上にする必要があり、22.0質量%以上であれば液相線温度を高くすることができリフロー時に溶け残るはんだ合金量のバランスが良くより一層良好な接合が得られるので好ましい。逆に、Ag含有量が20.0質量%未満では本発明のはんだ合金の特長である高い液相線温度を得ることができず、上記したように高温で処理されるリフロー時にはんだ合金が多く溶融し、僅かな衝撃や傾斜などの要因によりSiチップが動いて基板に対して傾いてしまったり配線などを短絡させてしまったりする。
更にはんだ合金の大分部が溶融すると、はんだ合金内に元々存在していた特性上は問題ない程度の小さなボイドが移動しやすくなり、Siチップが移動しない場合であっても複数の小さなボイドが集合して比較的大きなボイドが形成され、ここを起点として接合部にクラックが生じたりすることがある。リフロー時に存在する固体部分の割合が多いと上記したボイドの移動を抑制することができるので、Ag含有量を20.0質量%以上、好ましくは22.0質量%以上にして液相線温度を十分高くすることが必要である。
一方、Ag含有量の上限値は30.0質量%にする必要がある。Ag含有量が30.0質量%を超えてしまうと液相線温度と固相線温度の差が大きくなりすぎ、はんだ合金を溶かす際に、融点の低い一部の合金組成のみが分離し先に溶融してしまう溶け別れ現象が顕著に起きてしまい、濡れ広がり形状が歪になってしまうことにより良好な接合ができない場合があり好ましくない。また、凝固時に金属間化合物の微細な初晶が生成されるだけでなく、その金属間化合物の成長により大きな結晶粒が発生して機械的特性が悪化し、破断強度が低下してしまったりするので好ましくない。溶け別れ現象を抑制し、結晶粒の粗大化を抑えて十分な破断強度を得るには、28.0質量%以下がより好ましい。
Sbは本発明のSn−Ag−Sb系はんだ合金に含まれる必須の元素であり、Sbを含有させることにより得られる効果はAgと同様に融点の調整や信頼性の向上等にある。すなわち、Sbを含有させることにより効果的に液相線温度を上げることができ、さらに微細な金属間化合物が生成するので破断強度を向上させることができる。
このような効果を奏させるため、Sbの含有量は5.0質量%以上15.0質量%以下の範囲内にする。Sb含有量が5.0質量%未満の場合は、Sbの含有量が少なすぎて液相線温度を上げる効果が少なく、上記したAgの含有量が少ない場合と同様の理由により高温域のはんだ合金としての使用に適さなくなる。また、金属間化合物の生成量も不十分になるため、破断強度を十分向上させることができない。Sb含有量が8.0質量%以上になると液相線温度が十分に高くなり、機械的強度も一層向上するのでより好ましい。
一方、Sb含有量が15.0質量%を超えるとAg−Sbなどの金属間化合物が多くなり過ぎてはんだ合金が硬くなりすぎて脆くなったり、生成される金属間化合物の結晶が大きくなりすぎて十分な破断強度が得られなくなったりして、接合後の信頼性が低下する恐れがある。Sb含有量が12.0質量%以下であれば部分的にも金属間化合物が多くなりすぎることがなくなり、また、液相線と固相線の温度差が大きくなりすぎることもなくなり、破断強度が一層向上するのでより好ましい。
<Cu、Ni、Ge>
Cu、Ni及びGeは、本発明のはんだ合金においてこれら元素及び後述するZnのうちの少なくとも1種を含有しなければならない必須の元素であり、これらの元素を含有させることによって得られる主な効果は同様であり、加工性や応力緩和性の向上にある。Cu、Ni、Geは、はんだ合金が溶融してから固化する際に最初に微細合金の結晶として析出し、その微細合金の結晶を起点として様々な微細な結晶が析出していき、このため組織全体が微細結晶構造となり、加工性や応力緩和性が向上する。加工性が向上するのは、組織全体が微細結晶構造となっているため、クラックの進行が微細結晶の粒界で止められ易くなり、加工時の意図しない方向への破断が直ぐ抑えられることにより、微細な欠けなども発生しない安定した加工ができるものと考えられる。応力緩和性の向上は、接合後のはんだ合金に熱応力などの様々な応力が加わっても、微細結晶構造により粒界面積が大きくなり、ひずみが分散することによると考えられる。また、各種応力によりクラックが発生した場合においても、加工時と同様にクラックの進行が抑えられる。このため、当該はんだ合金をシート材などに加工する際にはクラック等の不良の発生が抑えられ、その結果形状の整った微細材料を得ることができ、得られた微細材料による接合部の応力緩和性も向上するため接合信頼性を向上させることができる。
Cu、Ni、Geは上記したメカニズムによって加工性向上の効果が奏されるが、これら元素の含有量が多すぎると生成される核の密度が多くなり、結晶核生成よりも結晶粒成長の方に各元素が供給され、初期析出する合金組織が微細にならず、逆に粗大化してしまい、十分な添加効果が得られなくなるため好ましくない。従って、Cuを含有させる場合はその上限値を1.0質量%とする。また、Cuの下限値は0.01質量%とする。この下限値未満であると核となる初期微細結晶の析出が少なすぎて実質的に加工性向上の効果が得られない。同様の理由によりNiを含有させる場合はその含有量は0.01質量%以上1.0質量%以下であり、Geを含有させる場合はその含有量は0.01質量%以上0.80質量%以下である。このような組成範囲とすることにより良好な加工特性を有するはんだ合金となり得る。
<Zn>
Znは本発明のはんだ合金においてZn並びに上記したCu、Ni及びGeのうちの少なくとも1種が含有されるとの条件の下で添加される元素であり、この元素を含有させることによって得られる主な効果は上記したCu、Ni、Geと同様に加工性や応力緩和性の向上にある。しかし、Znの含有により加工性等を向上させるメカニズムは上記したCu等とは異なる。すなわち、ZnはSnと共晶合金を生成するため、この共晶合金構造によって結晶構造が微細化し、上記Cu、Ni、Geの微細合金と同様の働きを示し、クラック進行の抑制や応力の分散が行われ、加工性や応力緩和性が向上すると考えられる。
しかし、Znは酸化され易い元素であるため、はんだ合金製造時の条件によってはAlやMgよりも先に酸化膜を生成し、かつ酸化が進行することにより厚い酸化膜を生成してしまう場合がある。このため、Znの含有量ははんだ合金の製造方法を含めて考慮する必要があり、その上限値は3.0質量%である。この値を超えてしまうと酸化物層の厚さが厚くなりすぎ、良好な接合が得られにくくなる。一方、Zn含有量の下限値は0.01質量%である。0.01質量%未満では含有量が少なすぎて加工性向上の効果は実質的に現れてこない。
<Al、Mg>
Al及びMgは、本発明のSn−Ag−Sb系はんだ合金において必要に応じて添加される元素であり、これら元素を含有させることによって得られる主な効果は同様であって濡れ性と加工性の向上にある。すなわち、AlやMgは、Sn、Ag、及びSbに比べて酸化され易いため、Sn−Ag−Sb系はんだ合金に添加するとはんだ合金表面に存在するこれらの元素がSn、Ag、及びSbより優先的に酸化され、はんだ表面に薄い酸化物層を生成する。酸化物層が薄いため、はんだ接合時の酸化物層の破壊が容易に行われ、破壊場所によるばらつきがほぼ無いため、濡れ性の精度が向上し、高精度なはんだ接合を行うことが出来る。また、AlやMgは、Sn−Ag−Sb系はんだ合金のSnやAg、Sbと金属間化合物などを生成して加工性を向上させる効果も有する。
より具体的には、AlはSnやAg、Sbよりも酸素と圧倒的に結合し易いため、はんだ合金表面近傍に存在するAlが優先的に酸化し、はんだ合金表面に酸化物層を生成する。生成されるAl酸化物層は薄く、その後はほとんど成長せず、かつ酸素の透過を防止する効果があるので、はんだ合金の表面酸化膜の厚みを薄いまま保持することができる。そのため、接合時に酸化膜を容易に破壊することができるためはんだ合金の新生面が出やすく、かつ至る所で容易に破壊が起きるため、等方的に均一に濡れ広がりやすくなることにより濡れ性が向上する。それにより、基板や半導体素子と溶融はんだ合金との金属成分同士が精度良く効率的に直接接触し易くなり、十分な接合性を得ることができる。また、Alは、はんだ合金内で基本的にSnやAg、Sbとの金属間化合物を生成し存在するが、微量にはSnやAg、Sbに固溶したり、逆にAlにSnやAg、Sbが固溶したりする固溶体としてはんだ合金中に存在する。このような形ではんだ合金中に存在するAl金属間化合物などは、はんだ加工時に発生したクラックの成長を止めることができるため、クラックが広がりにくくなり十分な加工性を得ることができる。
ただし、Alを必要な量よりも多く含有すると、Alによる金属間化合物や固溶体が結晶粒界に析出しすぎてはんだ合金の変形を阻害し、応力緩和性を低下させたり、機械的強度が低下したりし、加工性を低下させてしまう。このため、Alの含有量の上限値は1.5質量%であることが好ましい。1.5質量%以下であれば、上記した良好な加工性や濡れ性の向上により良好な接合性が得られ、特に0.7質量%以下であれば濡れ性の向上と加工性の向上のバランスが良く、Alを含有させる効果がより一層顕著に現れるのでより好ましい。一方、Al含有量の下限値は0.01質量%であることが好ましい。0.01質量%未満では含有量が少なすぎて上記した効果は実質的に現れてこない。特に0.3質量%以上であれば濡れ性の向上と加工性の向上をバランス良く発現することが出来るので、より好ましい。
MgはAlよりも少ない量で上記のAlの場合と同程度の機能を有する酸化膜層を生成する。Mgを必要な量よりも多くを含有させると、Alと同様に金属間化合物や固溶体が結晶粒界に析出しすぎてはんだ合金の変形を阻害し、応力緩和性を低下させたり機械的強度が低下したりし、加工性を低下させてしまう。このため、Mgの含有量の上限値は0.8質量%であることが好ましい。0.8質量%以下であれば良好な加工性や濡れ性の向上が得られ、0.3質量%以下であれば濡れ性の向上と加工性の向上のバランスが良く上記した効果がより一層顕著に現れるのでより好ましい。一方、Mg含有量の下限値は0.01質量%であることが好ましい。0.01質量%未満では少なすぎて実質的に上記した効果が現れない。0.1質量%以上であれば濡れ性の向上と加工性の向上をバランス良く発現することが出来るので、より好ましい。
上述したように共通する効果を有するAl及びMgの融点は、Alが660℃、Mgが650℃であるので、はんだ合金の液相線温度等の融点調整を行う際には、これらAl及びMgの融点を考慮して含有させる必要がある。すなわち、上記した融点調整効果や濡れ性向上の効果を考慮し、更には生成される固溶体や金属間化合物の性質を考慮して、上記添加量範囲内で目的とする特性を満たす含有量を定めればよい。
<In>
Inは本発明のはんだ合金において必要に応じて添加される元素である。Inの添加量が少ない場合、InはSn合金のSnと置換する置換型固溶による合金形態になる。Inが固溶することによる固溶強化の効果によりはんだ合金の機械的特性が向上する。また、Inが固溶することによりはんだ合金中のエネルギー状態が変化し、通常粗大な針状結晶として析出するAg−Sn金属間化合物及びAg−Sb金属間化合物の析出形態が変化し、微細な結晶状態で析出するようになる。加工時に発生するクラックは上記結晶粒界で進行が止まり、応力も分散するので、結晶が微細になることにより、機械的特性及び加工性が向上する。また、結晶が微細なため、結晶単位で生じる溶解が微細に生じるため濡れ広がり状態のばらつきが減少し良好な濡れ性を得ることもできる。
上記した効果を得るには、In含有量を0.30質量%以下とすることが好ましい。0.30質量%より多く添加すると固溶しないIn成分が多く発生し、それによる軟化及びその部分への応力集中による欠陥を生じ、機械的強度は寧ろ低下してしまう。In含有量を0.10質量%以下にすると、固溶しないIn成分の発生がほとんどなく、上記のIn添加の欠点が一切現れず高い機械的強度と加工性を有するはんだ合金を得ることができる。
[実施例1]
原料として、それぞれ純度99.99質量%以上のSn、Ag、Sb、Cu、Ni、Ge、Zn、Al、Mg、及びInを準備した。大きな薄片やバルク状の原料については、溶解後の合金においてサンプリング場所による組成のバラツキがなく均一になるようにするため、切断及び粉砕などにより3mm以下の大きさに細かくした。次に、これら原料からそれぞれ所定量を秤量して、高周波溶解炉用のグラファイト製坩堝に入れた。
上記各種原料の入った坩堝を高周波溶解炉に入れ、酸化を抑制するために窒素を原料1kg当たり0.7リットル/分以上の流量で流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、坩堝内の原料を加熱溶融させた。原料が溶融しはじめたら混合棒でよく撹拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混合した。十分溶融したことを確認した後、高周波電源を切り、速やかに坩堝を取り出して坩堝内の溶湯をはんだ母合金の鋳型に流し込んだ。
後述するように、本実施例では押出しによりワイヤを製造するため、鋳型には直径20mm×長さ200mmの円柱状の凹部を持つものを使用し、これにより直径20mm×長さ150±5mmの円柱状のはんだ母合金を成形した。このようにして、上記した各種原料の混合比率がそれぞれ異なる試料1〜37のSn系はんだ母合金を作製した。得られた試料1〜37のはんだ母合金の組成を、ICP発光分光分析器(SHIMAZU S−8100)を用いて組成分析した。その結果を下記表1に示す。
Figure 2017094377
<加工性の評価1(ワイヤへの加工性)>
次に上記試料1〜37の円柱状のはんだ母合金(直径20mm×長さ150±5mm)を、押出機(日新技研株式会社製)を用いて直径1.0mmのワイヤ形状に押出加工した。その際、押出されたワイヤの表面酸化が進まないようにワイヤ排出口には窒素を流しながら押出し、さらに押出されたワイヤを連続的に自動巻取り器でワイヤにキズなどが付かないように巻き取っていった。
このようにして得られたワイヤ状態の試料を用いて、ワイヤ加工時の不良発生具合を確認して、加工性の評価1とした。具体的には、100m押出されたワイヤ表面を確認した際、断線が無かった場合を「○」、1回の断線が確認された場合を「△」、2回以上の断線が確認された場合を「×」と評価した。この評価結果を下記表2に示す。
Figure 2017094377
上記表2の結果から分かるように、本発明の要件を満たしている試料1〜28のはんだ合金は、ほとんど断線せず、断線した試料も1回と加工不良が低く良好な加工性を示した。一方、本発明の要件を満たしていない比較例の試料29〜37のはんだ合金は、全て2回以上の断線が発生し、加工性に劣ることが確認された。
[実施例2]
実施例1と同様にしてはんだ母合金を作製したが、高周波溶解炉で溶融させた坩堝内の溶湯を流し込む鋳型には、実施例1と異なり鋳造後に圧延及びプレスを行ってリボンや打抜き品を製造するため、幅50mm×厚さ4mm×長さ250mmの直方体状の凹部を持つものを用いた。これにより幅50mm×厚さ4mm×長さ150±5mmの板状の試料38〜74のはんだ母合金を作製した。そしてはんだ母合金試料の各々に対して実施例1と同様にICP発光分光分析器(SHIMAZU S−8100)を用いて組成分析した。その組成分析結果を下記表3に示す。
Figure 2017094377
次に、これら試料38〜74の板状のはんだ母合金の各々に対して、圧延によりリボン形状に加工することで加工性の評価2を行い、得られたリボン形状の各試料をプレス機で打抜いて打抜き品を製造し、その打抜き品の収率を調べることで加工性の評価3を行った。更に、上記打抜き品を用いてSiチップをCu基板に接合して得た接合体のボイド率を測定して接合性を評価し、Cu基板上の上記打抜き品の濡れ広がりに基づいて濡れ性を評価し、上記接合体を用いたヒートサイクル試験によって信頼性を評価した。以下、これら評価方法について具体的に説明する。
<加工性の評価2(リボンへの加工性)>
はんだ合金の加工性の評価2として、圧延時の不良発生具合を確認した。まず、幅50mm×厚さ4mm×長さ150±5mmの板状のはんだ母合金の試料を温間圧延機(大野ロール株式会社製)で圧延した。圧延条件は全ての試料において同じ条件で行った。すなわち、圧延回数5回、圧延速度30〜40cm/秒とし、5回の圧延で80.0±1.5μmまで圧延した。圧延後の各試料において、リボン10m当り、クラックやバリが発生しなかった場合を「○」、クラックやバリが1〜3個以上発生した場合を「△」、クラックやバリが4個以上発生した場合を「×」として、加工性の評価とした。
<加工性の評価3(打抜き品の収率)>
上記方法でリボン状に加工した各試料をプレス機(日本オートマチックマシン株式会社製)で打抜いて打抜き品を製造し、この打抜き収率(良品率)を加工性の評価3とした。打抜き品の形状は1.5mm×1.5mmの正方形(□1.5mm品とも称する)及び直径1.0mmの円形(φ1.0mm品とも称する)として、各試料において□1.5mm品とφ1.0mm品をそれぞれ1000個ずつ打抜いて製造した。
まずリボン状の試料をプレス機にセットし、潤滑油を供給しながら所定の形状に打抜いていった。得られた打抜き品を有機溶剤の入った容器に回収し、該有機溶剤によって洗浄した後、真空乾燥機で真空引きしながら2時間かけて乾燥した。このようにして、評価用の打抜き品試料を得た。打抜き品試料にワレ、カケ、バリ、反りなどがあった場合を不良品とし、そのようなものが無くきれいな長方形もしくは円形に打抜けた場合を良品とし、長方形及び円形の良品総数を打抜き総数(2000)で割り100をかけて打抜き品の収率(%)を算出した。
<接合性の評価(ボイド率の測定)>
接合性を評価するため、上記した各はんだ合金試料の□1.5mm品を用いてSiチップと基板とを接合し、得られた接合体のボイド率を測定した。具体的には、まずダイボンダー(ウェストボンド社製、MODEL:7327C)を起動し、ヒーター部にカバーをしてヒーター部の周囲から窒素を流した(窒素流量:合計8L/分)。そして、ヒーター部の設定温度を融点より約50℃高い温度にして加熱した。
ヒーター部の温度が設定温度で安定した後、Niめっき層(膜厚:3.0μm)を有するCu基板(板厚:0.3mm)をヒーター部に載置して25秒加熱し、次に各はんだ合金試料の□1.5mm品をCu基板上に載せて25秒加熱し、さらにSiチップ(1.5mm×1.5mmの正方形)を載せて2秒間スクラブし、10秒放置した後、Siチップが接合されたCu基板をヒーター部から取り上げ、その横の窒素雰囲気が保たれている場所に一旦設置して冷却し、十分に冷却した後に大気中に取り出した。
このようにして図1に示すようなCu基板1のNiめっき層2にはんだ合金試料3を介してSiチップ4が接合された接合体を得た。この接合体の接合性を確認するため、X線透過装置(株式会社 東芝製 TOSMICRON−6125)を用いてボイド率を測定した。各はんだ合金試料でSiチップとCu基板が接合された接合体の接合面をSiチップ上部から垂直にX線を透過し、以下の計算式1を用いてボイド率(%)を算出した。
[計算式1]
ボイド率(%)=ボイド面積÷(ボイド面積+はんだ合金とCu基板の接合面積)×100
<濡れ性評価>
上記のようにして作製した各はんだ合金試料のφ1.0mm品を、NiめっきされたCu基板に接合させることで濡れ広がり性を評価した。具体的には、濡れ性試験機(住友金属鉱山株式会社製)のヒーター部分に2重のカバーをして該ヒーター部の周囲4箇所から窒素ガスを12L/分の流量で流し、ヒーター部の設定温度を融点より約50℃高い温度にして加熱した。
ヒーター部の温度が設定温度で安定した後、Niめっき層(膜厚:3.0μm)を有するCu基板(板厚:0.3mm)をヒーター部に載置して25秒加熱し、次に各はんだ合金試料のφ1.0mm品をCu基板上に載せて25秒加熱した。加熱が完了した後、Cu基板をヒーター部から取り上げ、その横の窒素雰囲気が保たれている場所に一旦設置して冷却し、十分に冷却した後に大気中に取り出した。
1)アスペクト比
このようにして得た各はんだ合金試料のφ1.0mm品が接合されたCu基板について観察し、アスペクト比(はんだ滴の直径を高さで除した値)を算出した。はんだ合金が溶融した後、表面張力などにより溶融はんだ合金はCu基板上で凸形状となり固化するが、アスペクト比が11.0以上であった場合は、十分な濡れ広がり性を維持したままであり、十分な濡れ性を有しているため評価を「◎」とした。10.0以上11.0未満であった場合は、チップ接合時にスクラブなどを用いることを考慮すると、実用上、全く問題無いため評価を「○」とした。10.0未満であった場合は、溶融した際の表面張力などによるはんだ合金の収縮が大きく、十分な濡れ広がり性が無く、濡れ性も有していない状態であるため評価を「×」とした。
2)長短比
また、アスペクト比を算出した試料を用いて、長短比(はんだ滴の直径の内最も長い長径を最も短い短径で除した値)を算出した。長短比が1.1以下であった場合は、ほとんどばらつきなく等方的な濡れ広がり性を有しているため評価を「◎」とした。1.1よりも大きく1.2以下であった場合は、実用上問題ないレベルであるため「○」とし、1.2よりも大きい場合は接合体の近くの配線との短絡の可能性が高くなるため「×」とした。
<信頼性の評価(ヒートサイクル試験)>
はんだ合金接合の信頼性を評価するためにヒートサイクル試験を行った。具体的には、上記接合性の評価と同様にして図1に示すような接合体を各試料2個ずつ作製し、これら2個の内の1個に対して−40℃の冷却と150℃の加熱を1サイクルとして、これを300サイクル繰り返し、残る1個に対しては500サイクルサイクル繰り返した。
このヒートサイクル試験後、はんだ合金が接合されたCu基板を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(日立製作所製 S−4800)により接合面の観察を行った。接合面に剥がれやはんだ合金にクラックが入っていた場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。この信頼性の評価結果を上記した加工性の評価2及び3、接合性の評価、及び濡れ性の評価と共に下記表4に示す。
Figure 2017094377
上記表4の結果から分かるように、本発明の要件を満たしている試料38〜65のはんだ合金は加工性の評価2において不良が発生せず、非常に優れた加工性を示した。また、加工性の評価3である打抜き品の収率は95%以上と良好な収率を示し、加工性に優れていることが確認された。また、接合性の評価であるボイド率の測定では全ての試料においてほとんどボイドが発生しておらず、発生しても2%以下と極めて低くかった。また、濡れ性の評価では全て「◎」又は「○」で、特にAl,Mgを添加した試料のアスペクト比は全て「◎」で、より好ましい範囲の試料は長短比も全て「◎」であった。さらに信頼性の評価であるヒートサイクル試験においても全ての試料において500サイクルまで一切不良が発生しなかった。
一方、本発明の要件を満たしていない比較例の試料66〜74のはんだ合金は、加工性の評価2であるリボンへの加工の際に不良が多発し、加工性の評価3である打抜き品の収率は67〜73%程度であった。また、接合性の評価であるボイド率の測定では全ての試料においてボイド率が10〜12%と高い値を示し、濡れ性の評価では一部の試料で「○」があるのもの、ほとんど「×」であった。さらに信頼性の評価であるヒートサイクル試験においても全ての試料において300サイクルまでに不良が発生した。
1 Cu基板
2 Niめっき層
3 はんだ合金試料
4 Siチップ


Claims (5)

  1. Snを主成分とし、Agを20.0質量%以上30.0質量%以下、Sbを5.0質量%以上15.0質量%以下含有し、さらにCu、Ni、Ge及びZnのうちの少なくとも1種を、Cuの場合は0.01質量%以上1.0質量%以下、Niの場合は0.01質量%以上1.0質量%以下、Geの場合は0.01質量%以上0.8質量%以下、Znの場合は0.01質量%以上3.0質量%以下含有することを特徴とするSn−Ag−Sb系はんだ合金。
  2. さらにAl及びMgのうちの少なくとも一方を、Alの場合は0.01質量%以上1.5質量%以下、Mgの場合は0.01質量%以上0.8質量%以下含有することを特徴とする、請求項1に記載のSn−Ag−Sb系はんだ合金。
  3. Inを0.30質量%以下さらに含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のSn−Ag−Sb系はんだ合金。
  4. Inを0.10質量%以下含有することを特徴とする、請求項3に記載のSn−Ag−Sb系はんだ合金。
  5. Agを22.0質量%以上28.0質量%以下、Sbを8.0質量%以上12.0質量%以下含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のSn−Ag−Sb系はんだ合金。


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