JP2017092160A - 面発光レーザアレイチップ、面発光レーザアレイ、レーザ装置、点火装置、内燃機関、及び面発光レーザアレイの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の発光部の高密度配置を維持しつつ、放熱性を向上させることができる面発光レーザアレイを提供する。
【解決手段】 面発光レーザアレイチップは、複数の発光部、該複数の発光部における光射出部側に設けられた上部電極113を有している。そして、上部電極113上に平坦化材料126からなる層が形成されている。この平坦化材料126は、熱伝導性及び絶縁性を有するナノコンポジット材料である。この場合は、平坦化材料126が大きな熱伝導性を有しているため、発光部で生じた熱を速やかに放熱することができる。すなわち、複数の発光部の高密度配置を維持しつつ、放熱性を向上させることができる
【選択図】図25
【解決手段】 面発光レーザアレイチップは、複数の発光部、該複数の発光部における光射出部側に設けられた上部電極113を有している。そして、上部電極113上に平坦化材料126からなる層が形成されている。この平坦化材料126は、熱伝導性及び絶縁性を有するナノコンポジット材料である。この場合は、平坦化材料126が大きな熱伝導性を有しているため、発光部で生じた熱を速やかに放熱することができる。すなわち、複数の発光部の高密度配置を維持しつつ、放熱性を向上させることができる
【選択図】図25
Description
本発明は、面発光レーザアレイチップ、面発光レーザアレイ、レーザ装置、点火装置、内燃機関、及び面発光レーザアレイの製造方法に係り、更に詳しくは、複数の発光部を有する面発光レーザアレイチップ、該面発光レーザアレイチップを有する面発光レーザアレイ、該面発光レーザアレイを有するレーザ装置及び点火装置、該点火装置を備える内燃機関、前記面発光レーザアレイの製造方法に関する。
垂直共振器型の面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)は、基板に対して垂直な方向にレーザ発振を行う半導体レーザであり、温度に対する波長の安定性が非常に高く、また、集積化が容易、といった特徴を有している。
そして、複数の発光部を有する面発光レーザアレイチップは、高い出力でレーザ光を射出することができるため、様々な装置への応用が検討されている。
ところで、複数の発光部が高密度で配置された面発光レーザアレイチップでは、発生する熱の影響を考慮する必要があった。
特許文献1には、放熱性を向上させ、信頼性を高くすることを目的とした電子デバイスが開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されている電子デバイスの構造を採用した面発光レーザアレイチップでは、放熱性を低下させることなく複数の発光部を高密度で配置するのは困難であった。
本発明は、複数の発光部を有する面発光レーザアレイチップであって、前記複数の発光部における光射出部側に設けられた電極上に、熱伝導性及び絶縁性を有するナノコンポジット材料からなる層が形成されている面発光レーザアレイチップである。
本発明の面発光レーザアレイによれば、複数の発光部の高密度配置を維持しつつ、放熱性を向上させることができる。
「概要」
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1には、一実施形態に係る内燃機関としてのエンジン300の主要部が模式図的に示されている。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1には、一実施形態に係る内燃機関としてのエンジン300の主要部が模式図的に示されている。
このエンジン300は、点火装置301、燃料噴出機構302、排気機構303、燃焼室304、及びピストン305などを備えている。
エンジン300の動作について簡単に説明する。
(1)燃料噴出機構302が、燃料と空気の可燃性混合気を燃焼室304内に噴出させる(吸気)。
(2)ピストン305が上昇し、可燃性混合気を圧縮する(圧縮)。
(3)点火装置301が、燃焼室304内にレーザ光を射出する。これにより、燃料に点火される(着火)。
(4)燃焼ガスが発生し、ピストン305が降下する(燃焼)。
(5)排気機構303が、燃焼ガスを燃焼室304外へ排気する(排気)。
(1)燃料噴出機構302が、燃料と空気の可燃性混合気を燃焼室304内に噴出させる(吸気)。
(2)ピストン305が上昇し、可燃性混合気を圧縮する(圧縮)。
(3)点火装置301が、燃焼室304内にレーザ光を射出する。これにより、燃料に点火される(着火)。
(4)燃焼ガスが発生し、ピストン305が降下する(燃焼)。
(5)排気機構303が、燃焼ガスを燃焼室304外へ排気する(排気)。
このように、吸気、圧縮、着火、燃焼、排気からなる一連の過程が繰り返される。そして、燃焼室304内の気体の体積変化に対応してピストン305が運動し、運動エネルギーを生じさせる。燃料には例えば天然ガスやガソリン等が用いられる。
なお、エンジン300は、該エンジン300の外部に設けられ、該エンジン300と電気的に接続されているエンジン制御装置222の指示に基づいて、上記動作を行う。
点火装置301は、一例として図2に示されるように、レーザ装置200、射出光学系210、及び保護部材212などを有している。
射出光学系210は、レーザ装置200から射出される光を集光する。これにより、集光点で高いエネルギー密度を得ることができる。
保護部材212は、燃焼室304に臨んで設けられた透明の窓である。ここでは、一例として、保護部材212の材料としてサファイアガラスが用いられている。
レーザ装置200は、面発光レーザアレイ201、第1集光光学系203、光ファイバ204、第2集光光学系205、及びレーザ共振器206を備えている。なお、本明細書では、XYZ3次元直交座標系を用い、面発光レーザアレイ201からの光の射出方向を+Z方向として説明する。
面発光レーザアレイ201は、励起用光源であり、複数の発光部を有している。各発光部は、垂直共振器型の面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)である。
面発光レーザアレイは、射出される光の、温度による波長ずれが非常に少ないため、励起波長のずれによって特性が大きく変化するQスイッチレーザを励起するのに有利な光源である。そこで、面発光レーザアレイを励起用光源に用いると、環境の温度制御を簡易なものにできるという利点がある。
第1集光光学系203は、面発光レーザアレイ201から射出される光を集光する。
光ファイバ204は、第1集光光学系203によって光が集光される位置にコアの−Z側端面の中心が位置するように配置されている。
光ファイバ204を設けることによって、面発光レーザアレイ201をレーザ共振器206から離れた位置に置くことができる。これにより配置設計の自由度を増大させることができる。また、レーザ装置200を点火装置に用いる際に、熱源から面発光レーザアレイ201を遠ざけることができるため、エンジン300を冷却する方法の幅を広げることが可能である。
光ファイバ204に入射した光はコア内を伝播し、コアの+Z側端面から射出される。
第2集光光学系205は、光ファイバ204から射出された光の光路上に配置され、該光を集光する。第2集光光学系205で集光された光は、レーザ共振器206に入射する。
レーザ共振器206は、Qスイッチレーザであり、一例として図3に示されるように、レーザ媒質206a、及び可飽和吸収体206bを有している。
レーザ媒質206aは、共振器長が8mmの直方体形状のNd:YAG結晶である。可飽和吸収体206bは、長さが2mmの直方体形状のCr:YAG結晶である。
なお、ここでは、Nd:YAG結晶とCr:YAG結晶は接合されており、いわゆるコンポジット結晶となっている。また、Nd:YAG結晶及びCr:YAG結晶は、いずれもセラミックスである。
第2集光光学系205からの光は、レーザ媒質206aに入射される。すなわち、第2集光光学系205からの光によってレーザ媒質206aが励起される。なお、面発光レーザアレイ201から射出される光の波長は、YAG結晶において最も吸収効率の高い波長808nmであることが望ましい。そして、可飽和吸収体206bは、Qスイッチの動作を行う。
レーザ媒質206aの入射側(−Z側)の面、及び可飽和吸収体206bの射出側(+Z側)の面は光学研磨処理がなされ、ミラーの役割を果たしている。なお、以下では、便宜上、レーザ媒質206aの入射側の面を「第1の面」ともいい、可飽和吸収体206bの射出側の面を「第2の面」ともいう(図3参照)。
そして、第1の面及び第2の面には、面発光レーザアレイ201から射出される光の波長、及びレーザ共振器206から射出される光の波長に応じた誘電体膜がコーティングされている。
具体的には、第1の面には、波長が808nmの光に対して十分に高い透過率を示し、波長が1064nmの光に対して十分に高い反射率を示すコーティングがなされている。また、第2の面には、波長が1064nmの光に対して所望のしきい値が得られるように選択された反射率を示すコーティングがなされている。
これにより、レーザ共振器206内で光が共振し増幅される。ここでは、レーザ共振器206の共振器長は10(=8+2)mmである。
図2に戻り、駆動装置220は、エンジン制御装置222の指示に基づいて、面発光レーザアレイ201を駆動する。すなわち、駆動装置220は、エンジン300の動作における着火のタイミングで点火装置301から光が射出されるように、面発光レーザアレイ201を駆動する。なお、面発光レーザアレイ201における複数の発光部は、同時に点灯及び消灯される。
上記実施形態において、面発光レーザアレイ201をレーザ共振器206から離れた位置に置く必要がない場合は、光ファイバ204が設けられなくても良い。
また、ここでは、内燃機関として燃焼ガスによってピストンを運動させるエンジン(ピストンエンジン)の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ロータリーエンジンや、ガスタービンエンジンや、ジェットエンジンであっても良い。要するに、燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成するものであれば良い。
また、排熱を利用して、動力や温熱や冷熱を取り出し、総合的にエネルギー効率を高めるシステムであるコジェネレーションに、点火装置301を用いても良い。
また、ここでは、点火装置301が内燃機関に用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。
また、ここでは、レーザ装置200が点火装置に用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、レーザ加工機、レーザピーニング装置、テラヘルツ発生装置などに用いることができる。
「詳細」
次に、面発光レーザアレイ201の詳細について説明する。面発光レーザアレイ201は、一例として図4及び図5に示されるように、面発光レーザアレイチップ230及び放熱部材401などを有している。
次に、面発光レーザアレイ201の詳細について説明する。面発光レーザアレイ201は、一例として図4及び図5に示されるように、面発光レーザアレイチップ230及び放熱部材401などを有している。
面発光レーザアレイチップ230は、1万個以上(例えば、2万個)の発光部が2次元配列されている。そして、面発光レーザアレイチップ230のXZ断面図が図6に示されている。以下では、便宜上、X軸方向に関して、2個の発光部が配列されているものとする。
面発光レーザアレイチップ230は、図6に示されるように、バッファ層102、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109、保護膜111、上部電極113、下部電極114などを有している。ここでは、面発光レーザアレイ201は、発振波長が808nm帯の面発光レーザアレイである。
バッファ層102は、n−GaAsからなる層である。
下部半導体DBR103は、バッファ層102の+Z側に積層され、n−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを40.5ペア有している。下部半導体DBR103は、低屈折率層から始まっている。
各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。
そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
下部スペーサ層104は、下部半導体DBR103の+Z側に積層され、ノンドープのAl0.6Ga0.4Asからなる層である。
活性層105は、下部スペーサ層104の+Z側に積層され、Al0.05Ga0.95Asからなる量子井戸層と、Al0.3Ga0.7Asからなる障壁層とが交互に積層された3重量子井戸(TQW:Triple Quantum Well)構造の活性層である。
上部スペーサ層106は、活性層105の+Z側に積層され、ノンドープのAl0.6Ga0.4Asからなる層である。
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
上部半導体DBR107は、上部スペーサ層106の+Z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを25ペア有している。
各屈折率層の間には組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層108が挿入されている。この被選択酸化層108の挿入位置は、上部スペーサ層106から光学的にλ/4の距離だけ離れた位置である。
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+Z側に積層され、p−GaAsからなる層である。
なお、このように複数の半導体層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
次に、上記面発光レーザアレイ201の製造方法について説明する。
(1)有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いた結晶成長によって、基板101上に、厚さが100nmのエッチストップ層121を形成し、該エッチストップ層121の上に上記積層体を形成する(図7参照)。基板101は、n−GaAs単結晶基板である。なお、有機金属気相成長法(MOCVD法)に代えて、分子線エピタキシャル成長法(MBE法)を用いても良い。
III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、アルシン(AsH3)を用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
(2)積層体の表面にメサ形状に対応するレジストパターンを形成する。具体的には、コンタクト層109上にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、メサ形状に対応したレジストパターンを形成する。ここでは、メサの断面が一辺25μmの正方形となるようにした。なお、コンタクト層109上に塗布されるレジストはポジレジストを用い、コンタクト露光により露光を行う。
(3)ICPドライエッチングによって、略四角柱状のメサを形成する。ここでは、エッチングの底部は下部スペーサ層104中に位置するようにした。
(4)レジストパターンを除去する(図8参照)。
(5)水蒸気中で熱処理する。ここでは、メサの外周部から被選択酸化層108中のAlが選択的に酸化される。そして、メサの中央部に、Alの酸化層108aによって囲まれた酸化されていない領域108bを残留させる(図9参照)。これにより、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、酸化狭窄構造体が作成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。
(6)素子分離溝形成部のみが露出されるようリソグラフィによりレジストパターン122を形成する(図10参照)。
(7)ICPドライエッチング法を用いて分離溝を形成する。
(8)レジストパターン122を除去する(図11参照)。
(9)加熱チャンバーに入れ、窒素雰囲気中に380〜400℃の温度で3分間保持する。この窒素雰囲気中での加熱処理により、大気中で表面に付着した酸素や水、もしくは加熱処理用のチャンバー内の微量な酸素や水による自然酸化膜が、安定した不動態皮膜になる。
(10)気相化学堆積法(CVD法)を用いて、SiN、SiONあるいはSiO2からなる保護膜111を形成する(図12参照)。
(11)メサ上面にコンタクトホールを形成するためのレジストパターンを作成する。ここでは、フォトレジストによるマスクを施した後、メサ上部の開口部となる部分を露光し、該部分のフォトレジストを除去する。
(12)BHF(バッファード・フッ酸)を用いたウエットエッチングにより、レジストパターンの開口部における保護膜111を除去する。このとき、工程(7)で形成した分離溝底面におけるスクライブ領域の保護膜111も除去する。
(13)レジストパターンを除去する(図13参照)。
(14)メサ上部の光射出部となる領域に一辺10μmの正方形状のレジストパターンと、電極パッドと発光部とを接続するレジストパターンを形成する。
(15)上部電極113の材料を蒸着する。ここでは、Ti/Pt/Auからなる多層金属膜が用いられる。Ti(チタン)の膜厚は15nmとし、Pt(白金)の膜厚は15nmとし、Au(金)の膜厚は8μmとした。このようにAuの膜厚を厚くすると、表面の凹凸はそれにつれて大きくなることを避けられない。
(16)光射出部の多層金属膜をリフトオフする。これにより、上部電極113が形成される(図14参照)。
(17)光射出部に該光射出部を保護するための光射出部保護部材125を設ける(図15参照)。このとき、上部電極113におけるワイヤボンディングされる部分にも光射出部保護部材125を設ける(図15参照)。
なお、ここでは、光射出部保護部材125として、感光性樹脂(例えば、日本化薬株式会社製「SU−8」)を用いることができる。この場合、スピンコータを用いて感光性樹脂をコーティングし、保護すべき部分のみを露光し、ベーキング、現像、リンス、乾燥などの処理を行って、光射出部保護部材125を所定の位置に設けることができる。
(18)平坦化材料126からなる層を形成する(図16参照)。なお、平坦化材料126の詳細については後述する。
(19)スクライブ・ブレーキングにより、チップ毎に切断する。
ところで、高出力の面発光レーザアレイチップの場合、GaAs基板を除去して、エピタキシャル層を直接放熱部材に接合する構造が放熱性を高めるのに有効であり、その構造を実現するために、一時的に搬送用基板に接合して、ハンドリングできるようにする必要がある。
(20)接着材315を介して搬送用基板316とチップを接合する(図17参照)。ここでは接着材315として耐熱性液状ワックスを用い、搬送用基板316として厚さが0.6mmのテンパックスガラスを用いている。この場合、チップ上に接着材315を塗布し、その上に搬送用基板316を乗せ、真空中で加熱する。
ガラスは、充分な機械的強度を有し、各種の薬品を用いたプロセスにも適応でき、透明であるので接合時の位置あわせについても観察しながら行えるので、搬送用基板316として最適の材料である。
(21)ウェットエッチング法により基板101を除去する(図18参照)。ここでは、アンモニア水と過酸化水素水を1:20の容量比で混合し、温度を20℃に調整したエッチング液を用いる。これにより、エッチストップ層121を残留させて基板101のみを選択的に除去することができる。
(22)塩酸に浸漬してエッチストップ層121を除去する(図19参照)。
(23)下部電極114を形成する(図20参照)。ここでは、下部電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。AuGeの膜厚は20nmとし、Niの膜厚は9nmとし、Auの膜厚は2μmとした。
(24)ペースト状のはんだ123を用いてチップと放熱部材401とを接合させる。放熱部材401は、AlN(窒化アルミニウム)からなる板状部材であり、+Z側の面には、厚さ1μmのAu(金)が成膜されている領域403とAuが成膜されていない領域402とが設けられている(図21参照)。ここでは、領域403にはんだ123を塗布し、その上にチップを乗せ、200〜250℃に加熱されているホットプレート上に載置する。これにより、下部電極114と領域403とが電気的に導通される(図22参照)。
(25)有機溶剤に浸漬して接着材315を溶解させることにより、搬送用基板316及び接着材315を除去する(図23参照)。
(26)リムーバを用いて光射出部保護部材125を除去する(図24参照)。
(27)アニールし、上部電極113と下部電極114のコンタクト特性をオーミックコンタクトにする。
(28)Auからなるワイヤ404を用いたワイヤボンディングにより、配線形成を行う(図25参照)。
(29)パッケージングなどの実装を行い、面発光レーザアレイ201となる。
このようにして製造された面発光レーザアレイ201の特性評価を行ったところ、温度上昇による波長のシフトが抑制されて、所望の特性が実現できていることが確認できた。
一般に、高出力の面発光レーザアレイチップは、数万個レベルの発光部を有しており、その出力は400Wにも及ぶ。そして、このような大きな出力を得るには、注入する電流も数百アンペアという大電流が必要となるため、それに耐えうる上部電極の厚さは、電気伝導性に優れた金を用いたとしても、8μm程度の膜厚が必要になる。
このような厚い電極を表面に形成するとチップ表面の凹凸が大きくなり、搬送用基板を接合する際に接着材と搬送用基板との間に空隙が生じる(図26参照)。この状態で、搬送用基板とチップを接合すると、その後の熱プロセスなどで空隙が膨張し、最悪の場合、チップの破損を引き起こす恐れがあった。
平坦化材料126は、熱伝導特性に優れた絶縁物であることが望ましい。高出力の面発光レーザアレイチップの動作によって生じる熱を効率的に系外に放出するとともに、そのまま残して、上部電極113のパッシベーション材料としての役割も果たすことができる。
本実施形態では、平坦化材料126として、ナノコンポジット材料を用いている。一般的に絶縁材料として用いられているポリイミドやエポキシといった樹脂材料は、そのままでは熱伝導が低く、放熱材料としての機能は期待できない。そこで、熱伝導特性に優れた材料を充填した複合材料が注目される。
単純にフィラーを分散させた複合材料では、十分な熱伝導特性は得られにくい。一方、充填する材料としてナノチューブやナノファイバーといったナノマテリアルを分散させたナノコンポジット材料では、熱伝導特性を飛躍的に向上させることができる。また、ナノコンポジット材料では、樹脂が硬化しても、平坦性を高く維持することができる。
カーボンナノチューブ(CNT)を例に取ると、CNT自体の熱伝導特性が高いことに加えて、形状異方性が大きい(アスペクト比が大きい)ために球形に近い充填物に比べて、隣接するCNT間の距離が短くなり、熱の移動がしやすいという現象が期待できる。
また、窒化ホウ素のナノチューブ(BNNT)についても、CNTと同様のことが期待できる。
以下に実施例を用いて、さらに詳細に説明する。
《実施例1》
実施例1では、平坦化材料126として、ポリイミド系のワニスを無水NMP(N−メチルピロリドン)で希釈し、粘度を350mPa・s程度に低粘度化したものに、公知の手段で生成したCNTを0.25wt%の割合で混合し、超音波分散を5時間行って調整したナノコンポジット材料を用いた。
《実施例1》
実施例1では、平坦化材料126として、ポリイミド系のワニスを無水NMP(N−メチルピロリドン)で希釈し、粘度を350mPa・s程度に低粘度化したものに、公知の手段で生成したCNTを0.25wt%の割合で混合し、超音波分散を5時間行って調整したナノコンポジット材料を用いた。
このナノコンポジット材料を、80℃に加熱されたチップの表面に滴下、充填し、350℃に設定されている真空オーブン中で6時間加熱して、イミド化を促進した。
ナノコンポジット材料が形成されたチップの表面は、ナノコンポジット材料の形成前に比べてはるかに平坦化されていることを表面形状測定装置により確認した。
接着材315を介して搬送用基板316とチップを接合した後、搬送用基板316を介してチップ表面を観察すると、空隙がないことが確認できた。
《実施例2》
実施例2では、平坦化材料126として、ポリイミド中にナノマテリアルとしてBNNTを分散させたナノコンポジット材料を用いた。
実施例2では、平坦化材料126として、ポリイミド中にナノマテリアルとしてBNNTを分散させたナノコンポジット材料を用いた。
BNNTは、原料にホウ素とアンモニアを用い、いわゆるCVD法で合成した。具体的には、ホウ素は酸化マグネシウム粉末の共存下にCVD反応菅内で1300〜1500℃にて反応させる。この反応により活性反応体であるB2O2ガスと触媒となるマグネシウム微粒子が発生する。ここにキャリアガスとしてアルゴン共にアンモニアを導入することで熱CVD反応を行い,金属マグネシウム微粒子上にBNNTを成長させる。ここで生成するBNNTは,炭素等の不純物を含まず,反応後の熱処理等で残存金属も完全に除去できるため高純度化が容易である。また原料ホウ素を高効率にBNNTへ変換できるため、工業化にも有利な手法である。
そして、実施例1と同様にポリイミド系のワニスを無水NMP(N−メチルピロリドン)で希釈し、粘度を350mPa・s程度に低粘度化したものに、上記のようにして合成されたBNNTを0.55wt%の割合で混合し、超音波分散を6時間行って調整し、ナノコンポジット材料とした。
このナノコンポジット材料を、80℃に加熱されたチップの表面に滴下、充填し、350℃に設定されている真空オーブン中で6時間加熱して、イミド化を促進した。
ナノコンポジット材料が形成されたチップの表面は、ナノコンポジット材料の形成前に比べてはるかに平坦化されていることを表面形状測定装置により確認した。
接着材315を介して搬送用基板316とチップを接合した後、搬送用基板316を介してチップ表面を観察すると、空隙がないことが確認できた。
《実施例3》
実施例3では、平坦化材料126として、エポキシ樹脂中にナノマテリアルとしてCNTを分散させたナノコンポジット材料を用いた。
実施例3では、平坦化材料126として、エポキシ樹脂中にナノマテリアルとしてCNTを分散させたナノコンポジット材料を用いた。
エポキシ樹脂は、一般的なエポキシ樹脂で、主剤であるビスフェノールAと硬化剤のエピクロルヒドリンを混合して分散母材となるエポキシ樹脂を形成した。このエポキシ樹脂にCNTを0.25wt%の割合で混合し、超音波分散を5時間行って調整し、ナノコンポジット材料とした。
このナノコンポジット材料を、80℃に加熱されたチップの表面に滴下、充填し、350℃に設定されている真空オーブン中で6時間加熱して、イミド化を促進した。
ナノコンポジット材料が形成されたチップの表面は、ナノコンポジット材料の形成前に比べてはるかに平坦化されていることを表面形状測定装置により確認した。
接着材315を介して搬送用基板316とチップを接合した後、搬送用基板316を介してチップ表面を観察すると、空隙がないことが確認できた。
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る面発光レーザアレイ201の製造方法において、本発明の面発光レーザアレイの製造方法が実施されている。
以上説明したように、本実施形態に係る面発光レーザアレイチップ230は、複数の発光部、該複数の発光部における光射出部側に設けられた上部電極113を有している。そして、上部電極113上に平坦化材料126からなる層が形成されている。この平坦化材料126は、熱伝導性及び絶縁性を有するナノコンポジット材料である。
この場合は、平坦化材料126が大きな熱伝導性を有しているため、発光部で生じた熱を速やかに放熱することができる。すなわち、複数の発光部の高密度配置を維持しつつ、放熱性を向上させることができる。また、チップ表面が平坦になり、接着材315を介して搬送用基板316とチップを接合する際に、接着材315と搬送用基板316との間に空隙が生じるのを抑制することができる。
面発光レーザアレイ201では、面発光レーザアレイチップ230が放熱部材401と接合されている。この場合、面発光レーザアレイ201は、面発光レーザアレイチップ230の温度上昇をさらに抑制することができる。そこで、面発光レーザアレイチップ230の寿命を長くすることができ、その結果、面発光レーザアレイ201の長寿命化を図ることができる。
そして、レーザ装置200は、面発光レーザアレイ201を有しているため、安定して高出力のレーザ光を射出することができる。また、レーザ装置200の長寿命化を図ることができる。
さらに、点火装置301は、レーザ装置200を備えているため、安定した点火を行うことができる。また、点火装置301の長寿命化を図ることができる。
また、エンジン300は、点火装置301を備えているため、結果として、安定性を向上させることができる。さらに、点火装置301のメンテナンス間隔を長くすることができる。
なお、上記実施形態では、チップと放熱部材401とを接合させる際に、はんだが用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、はんだに代えて、AuSn(金すず合金)を含む材料を用いても良い。この場合は、チップが接合される領域にAuSn薄膜が3μmの厚さで形成されている熱拡散板を用い、該AuSn薄膜上にチップを乗せ、N2雰囲気下で、適切な荷重を印加して300℃程度に加熱する。また、この場合は、フラックスが不要であり、フラックスの影響を考慮する必要がない。さらに、AuSnは安定した材料であるため、面発光レーザアレイの信頼性を高めることができる。
また、例えば、はんだに代えて、Ag(銀)を含む焼結材料を用いても良い。Agの焼結体は内部に隙間が存在するため、熱拡散板とチップとの間で生じる熱応力を緩和することができ、熱膨張係数差が大きい材料を接合させるのに好適である。この場合は、チップが接合される領域にAgペーストを塗布し、該Agペースト上にチップを乗せ、適切な荷重を印加して加熱する。
また、上記実施形態では、放熱部材401としてAlNが用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態において、第1集光光学系203、第2集光光学系205及び射出光学系210は、いずれも単一のレンズからなっていても良いし、複数のレンズからなっていても良い。
また、上記実施形態では、面発光レーザアレイ201が励起用光源としてレーザ装置200に用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。面発光レーザアレイ201が励起用ではない光源としてレーザ装置に用いられても良い。
《レーザアニール装置》
一例として図27(A)及び図27(B)にレーザ装置としてのレーザアニール装置1000の概略構成が示されている。このレーザアニール装置1000は、光源1010、光学系1020、テーブル装置1030、及び不図示の制御装置などを備えている。
一例として図27(A)及び図27(B)にレーザ装置としてのレーザアニール装置1000の概略構成が示されている。このレーザアニール装置1000は、光源1010、光学系1020、テーブル装置1030、及び不図示の制御装置などを備えている。
光源1010は、面発光レーザアレイ201を有し、複数のレーザ光を射出することができる。光学系1020は、光源1010から射出された複数のレーザ光を対象物Pの表面に導光する。テーブル装置1030は、対象物Pが載置されるテーブルを有している。該テーブルは、少なくともY軸方向に沿って移動することができる。
例えば、対象物Pがアモルファスシリコン(a−Si)の場合、レーザ光が照射されると、アモルファスシリコン(a−Si)は、温度が上昇し、その後、徐々に冷却されることによって結晶化し、ポリシリコン(p−Si)になる。
そして、レーザアニール装置1000は、光源1010が面発光レーザアレイ201を有しているため、処理効率を向上させることができる。
《レーザ加工機》
一例として図28にレーザ装置としてのレーザ加工機3000の概略構成が示されている。このレーザ加工機3000は、光源3010、光学系3100、対象物Pが載置されるテーブル3150、テーブル駆動装置3160、操作パネル3180及び制御装置3200などを備えている。
一例として図28にレーザ装置としてのレーザ加工機3000の概略構成が示されている。このレーザ加工機3000は、光源3010、光学系3100、対象物Pが載置されるテーブル3150、テーブル駆動装置3160、操作パネル3180及び制御装置3200などを備えている。
光源3010は、面発光レーザアレイ201を有し、制御装置3200の指示に基づいてレーザ光を射出する。光学系3100は、光源3010から射出されたレーザ光を対象物Pの表面近傍で集光させる。テーブル駆動装置3160は、制御装置3200の指示に基づいて、テーブル3150をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動させる。
操作パネル3180は、作業者が各種設定を行うための複数のキー、及び各種情報を表示するための表示器を有している。制御装置3200は、操作パネル3180からの各種設定情報に基づいて、光源3010及びテーブル駆動装置3160を制御する。
そして、レーザ加工機3000は、光源3010が面発光レーザアレイ201を有しているため、加工(例えば、切断や溶接)の処理効率を向上させることができる。
なお、レーザ加工機3000は、複数の光源3010を有しても良い。
また、面発光レーザアレイ201は、レーザアニール装置及びレーザ加工機以外のレーザ光を利用する装置にも好適である。例えば、面発光レーザアレイ201を表示装置の光源に用いても良い。
また、上記実施形態では、面発光レーザアレイ201の発振波長が808nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、用途に応じて適切な発振波長のものを用いることができる。
101…基板、102…バッファ層、103…下部半導体DBR、104…下部スペーサ層、105…活性層、106…上部スペーサ層、107…上部半導体DBR、108…被選択酸化層、109…コンタクト層、111…保護膜、113…上部電極、114…下部電極、123…はんだ、125…射出部保護部材、126…平坦化材料(ナノコンポジット材料)、200…レーザ装置、201…面発光レーザアレイ、203…第1集光光学系、204…光ファイバ(伝送部材)、205…第2集光光学系、206…レーザ共振器、206a…レーザ媒質、206b…可飽和吸収体、210…射出光学系(レーザ装置から射出されるレーザ光を集光する光学系)、212…保護部材、220…駆動装置、222…エンジン制御装置、230…面発光レーザアレイチップ、300…エンジン(内燃機関)、301…点火装置、302…燃料噴出機構、303…排気機構、304…燃焼室、305…ピストン、315…接着材、316…搬送用基板、401…放熱部材、402…Auが成膜されていない領域、403…Auが成膜されている領域、404…ワイヤ、1000…レーザアニール装置(レーザ装置)、1010…光源、1020…光学系、1030…テーブル装置、3000…レーザ加工機(レーザ装置)、3010…光源、3100…光学系、3150…テーブル、3160…テーブル駆動装置、3180…操作パネル、3200…制御装置、P…対象物。
Claims (14)
- 複数の発光部を有する面発光レーザアレイチップであって、
前記複数の発光部における光射出部側に設けられた電極上に、熱伝導性及び絶縁性を有するナノコンポジット材料からなる層が形成されている面発光レーザアレイチップ。 - 前記ナノコンポジット材料における母材は、ポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザアレイチップ。
- 前記ナノコンポジット材料における母材は、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザアレイチップ。
- 前記ナノコンポジット材料におけるナノ材料は、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の面発光レーザアレイチップ。
- 前記ナノコンポジット材料におけるナノ材料は、窒化ホウ素ナノチューブであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の面発光レーザアレイチップ。
- 前記ナノコンポジット材料におけるナノ材料は、窒化アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の面発光レーザアレイチップ。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の面発光レーザアレイチップと、
前記面発光レーザアレイチップと接合される放熱部材と、を有する面発光レーザアレイ。 - 対象物にレーザ光を照射するレーザ装置であって、
請求項7に記載の面発光レーザアレイと、
前記面発光レーザアレイから射出されるレーザ光を前記対象物に導光する光学系と、を備えるレーザ装置。 - 請求項7に記載の面発光レーザアレイと、
前記面発光レーザアレイからのレーザ光が入射されるレーザ共振器とを備えるレーザ装置。 - 前記レーザ共振器は、Qスイッチレーザであることを特徴とする請求項9に記載のレーザ装置。
- 前記レーザ共振器は、レーザ媒質及び可飽和吸収体を含むことを特徴とする請求項10に記載のレーザ装置。
- 請求項9〜11のいずれか一項に記載のレーザ装置と、
前記レーザ装置から射出された光を集光する光学系と、を備える点火装置。 - 燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する内燃機関において、
前記燃料に点火するための請求項12に記載の点火装置を備えていることを特徴とする内燃機関。 - 複数の発光部を有する面発光レーザアレイの製造方法であって、
前記複数の発光部における光射出部側に設けられた電極上に、熱伝導性及び絶縁性を有するナノコンポジット材料からなる層を形成する工程と、
前記ナノコンポジット材料からなる層に搬送用基板を接合する工程と、を含む面発光レーザアレイの製造方法。
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JP2019135748A (ja) * | 2018-02-05 | 2019-08-15 | 住友電気工業株式会社 | 垂直共振型面発光レーザ |
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2015
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