JP2017092204A - 面発光レーザアレイ、面発光レーザ、レーザ装置、点火装置、及び内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】高出力で使用しても、発光効率が低下するのを抑制することができる面発光レーザアレイを提供する。【解決手段】 面発光レーザアレイ201は、活性層105、該活性層105を挟む下部半導体DBR103と上部半導体DBR107、はんだ123によって接合される熱拡散板401とを備え、下部半導体DBR103の側面の一部は、はんだ123で覆われている。この場合は、高出力で使用しても、発光効率が低下するのを抑制することができる。そして、外周部の発熱を効率良く放熱できるため、複数の発光部における外側の発光部の劣化が抑制され、その結果、高出力での動作寿命を長くすることができる。【選択図】図5
Description
本発明は、面発光レーザアレイ、面発光レーザ、レーザ装置、点火装置及び内燃機関に係り、更に詳しくは、熱拡散部材を有する面発光レーザアレイ及び面発光レーザ、前記面発光レーザアレイを有するレーザ装置、該レーザ装置を備える点火装置及び内燃機関に関する。
垂直共振器型の面発光レーザ(VCSEL:Vertical CavitySurface Emitting Laser)は、基板に垂直な方向に光を射出するレーザである。この面発光レーザは、基板に平行な方向に光を射出する端面発光型の半導体レーザよりも低価格、低消費電力、小型、2次元デバイスに好適、かつ、高性能であることから、注目されている。
そして、複数の面発光レーザが集積された面発光レーザアレイは、高い出力でレーザ光を射出することができるため、様々な装置への応用が検討されている。
非特許文献1には、活性層で発生する熱を速やかに放熱することを目的とする面発光レーザアレイが開示されている。
しかしながら、非特許文献1に開示されている面発光レーザアレイでは、高出力で使用すると、発光効率が低下するおそれがあった。
本発明は、複数の発光部を含み、活性層、及び該活性層を挟む第1の反射鏡と第2の反射鏡を有するチップと、前記第1の反射鏡に接合部材を介して接合される熱拡散部材とを備え、前記第1の反射鏡の側面の一部は、前記接合部材で覆われている面発光レーザアレイである。
本発明の面発光レーザアレイによれば、高出力で使用しても、発光効率が低下するのを抑制することができる。
「概要」
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1には、一実施形態に係る内燃機関としてのエンジン300の主要部が模式図的に示されている。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1には、一実施形態に係る内燃機関としてのエンジン300の主要部が模式図的に示されている。
このエンジン300は、点火装置301、燃料噴出機構302、排気機構303、燃焼室304、及びピストン305などを備えている。
エンジン300の動作について簡単に説明する。
(1)燃料噴出機構302が、燃料と空気の可燃性混合気を燃焼室304内に噴出させる(吸気)。
(2)ピストン305が上昇し、可燃性混合気を圧縮する(圧縮)。
(3)点火装置301が、燃焼室304内にレーザ光を射出する。これにより、燃料に点火される(着火)。
(4)燃焼ガスが発生し、ピストン305が降下する(燃焼)。
(5)排気機構303が、燃焼ガスを燃焼室304外へ排気する(排気)。
(1)燃料噴出機構302が、燃料と空気の可燃性混合気を燃焼室304内に噴出させる(吸気)。
(2)ピストン305が上昇し、可燃性混合気を圧縮する(圧縮)。
(3)点火装置301が、燃焼室304内にレーザ光を射出する。これにより、燃料に点火される(着火)。
(4)燃焼ガスが発生し、ピストン305が降下する(燃焼)。
(5)排気機構303が、燃焼ガスを燃焼室304外へ排気する(排気)。
このように、吸気、圧縮、着火、燃焼、排気からなる一連の過程が繰り返される。そして、燃焼室304内の気体の体積変化に対応してピストン305が運動し、運動エネルギーを生じさせる。燃料には例えば天然ガスやガソリン等が用いられる。
なお、エンジン300は、該エンジン300の外部に設けられ、該エンジン300と電気的に接続されているエンジン制御装置222の指示に基づいて、上記動作を行う。
点火装置301は、一例として図2に示されるように、レーザ装置200、射出光学系210、及び保護部材212などを有している。
射出光学系210は、レーザ装置200から射出される光を集光する。これにより、集光点で高いエネルギー密度を得ることができる。
保護部材212は、燃焼室304に臨んで設けられた透明の窓である。ここでは、一例として、保護部材212の材料としてサファイアガラスが用いられている。
レーザ装置200は、面発光レーザアレイ201、第1集光光学系203、光ファイバ204、第2集光光学系205、及びレーザ共振器206を備えている。なお、本明細書では、XYZ3次元直交座標系を用い、面発光レーザアレイ201からの光の射出方向を+Z方向として説明する。
面発光レーザアレイ201は、励起用光源であり、複数の発光部を有している。各発光部は、垂直共振器型の面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)である。
面発光レーザアレイは、射出される光の、温度による波長ずれが非常に少ないため、励起波長のずれによって特性が大きく変化するQスイッチレーザを励起するのに有利な光源である。そこで、面発光レーザアレイを励起用光源に用いると、環境の温度制御を簡易なものにできるという利点がある。
第1集光光学系203は、面発光レーザアレイ201から射出される光を集光する。
光ファイバ204は、第1集光光学系203によって光が集光される位置にコアの−Z側端面の中心が位置するように配置されている。
光ファイバ204を設けることによって、面発光レーザアレイ201をレーザ共振器206から離れた位置に置くことができる。これにより配置設計の自由度を増大させることができる。また、レーザ装置200を点火装置に用いる際に、熱源から面発光レーザアレイ201を遠ざけることができるため、エンジン300を冷却する方法の幅を広げることが可能である。
光ファイバ204に入射した光はコア内を伝播し、コアの+Z側端面から射出される。
第2集光光学系205は、光ファイバ204から射出された光の光路上に配置され、該光を集光する。第2集光光学系205で集光された光は、レーザ共振器206に入射する。
レーザ共振器206は、Qスイッチレーザであり、一例として図3に示されるように、レーザ媒質206a、及び可飽和吸収体206bを有している。
レーザ媒質206aは、共振器長が8mmの直方体形状のNd:YAG結晶である。可飽和吸収体206bは、長さが2mmの直方体形状のCr:YAG結晶である。
なお、ここでは、Nd:YAG結晶とCr:YAG結晶は接合されており、いわゆるコンポジット結晶となっている。また、Nd:YAG結晶及びCr:YAG結晶は、いずれもセラミックスである。
第2集光光学系205からの光は、レーザ媒質206aに入射される。すなわち、第2集光光学系205からの光によってレーザ媒質206aが励起される。なお、面発光レーザアレイ201から射出される光の波長は、YAG結晶において最も吸収効率の高い波長808nmであることが望ましい。そして、可飽和吸収体206bは、Qスイッチの動作を行う。
レーザ媒質206aの入射側(−Z側)の面、及び可飽和吸収体206bの射出側(+Z側)の面は光学研磨処理がなされ、ミラーの役割を果たしている。なお、以下では、便宜上、レーザ媒質206aの入射側の面を「第1の面」ともいい、可飽和吸収体206bの射出側の面を「第2の面」ともいう(図3参照)。
そして、第1の面及び第2の面には、面発光レーザアレイ201から射出される光の波長、及びレーザ共振器206から射出される光の波長に応じた誘電体膜がコーティングされている。
具体的には、第1の面には、波長が808nmの光に対して十分に高い透過率を示し、波長が1064nmの光に対して十分に高い反射率を示すコーティングがなされている。また、第2の面には、波長が1064nmの光に対して所望のしきい値が得られるように選択された反射率を示すコーティングがなされている。
これにより、レーザ共振器206内で光が共振し増幅される。ここでは、レーザ共振器206の共振器長は10(=8+2)mmである。
図2に戻り、駆動装置220は、エンジン制御装置222の指示に基づいて、面発光レーザアレイ201を駆動する。すなわち、駆動装置220は、エンジン300の動作における着火のタイミングで点火装置301から光が射出されるように、面発光レーザアレイ201を駆動する。なお、面発光レーザアレイ201における複数の発光部は、同時に点灯及び消灯される。
上記実施形態において、面発光レーザアレイ201をレーザ共振器206から離れた位置に置く必要がない場合は、光ファイバ204が設けられなくても良い。
また、ここでは、内燃機関として燃焼ガスによってピストンを運動させるエンジン(ピストンエンジン)の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ロータリーエンジンや、ガスタービンエンジンや、ジェットエンジンであっても良い。要するに、燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成するものであれば良い。
また、排熱を利用して、動力や温熱や冷熱を取り出し、総合的にエネルギー効率を高めるシステムであるコジェネレーションに、点火装置301を用いても良い。
また、ここでは、点火装置301が内燃機関に用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。
また、ここでは、レーザ装置200が点火装置に用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、レーザ加工機、レーザピーニング装置、テラヘルツ発生装置などに用いることができる。
「詳細」
次に、面発光レーザアレイ201の詳細について説明する。面発光レーザアレイ201は、1万個以上の発光部が2次元配列(図4参照)されている。なお、以下では、わかりやすくするため、X軸方向に関して、3個の発光部が配列されているものとする。そして、面発光レーザアレイ201のXZ断面図が図5に示されている。
次に、面発光レーザアレイ201の詳細について説明する。面発光レーザアレイ201は、1万個以上の発光部が2次元配列(図4参照)されている。なお、以下では、わかりやすくするため、X軸方向に関して、3個の発光部が配列されているものとする。そして、面発光レーザアレイ201のXZ断面図が図5に示されている。
面発光レーザアレイ201は、図5に示されるように、バッファ層102、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109、保護膜111、上部電極113、下部電極114などを有している。ここでは、面発光レーザアレイ201は、発振波長が808nm帯の面発光レーザアレイである。
バッファ層102は、n−GaAsからなる層である。
下部半導体DBR103は、バッファ層102の+Z側に積層され、n−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを40.5ペア有している。下部半導体DBR103は、低屈折率層から始まっている。
各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。
そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
下部スペーサ層104は、下部半導体DBR103の+Z側に積層され、ノンドープのAl0.6Ga0.4Asからなる層である。
活性層105は、下部スペーサ層104の+Z側に積層され、Al0.05Ga0.95Asからなる量子井戸層と、Al0.3Ga0.7Asからなる障壁層とが交互に積層された3重量子井戸(TQW:Triple Quantum Well)構造の活性層である。
上部スペーサ層106は、活性層105の+Z側に積層され、ノンドープのAl0.6Ga0.4Asからなる層である。
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
上部半導体DBR107は、上部スペーサ層106の+Z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを25ペア有している。
各屈折率層の間には組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層108が挿入されている。この被選択酸化層108の挿入位置は、上部スペーサ層106から光学的にλ/4の距離だけ離れた位置である。
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+Z側に積層され、p−GaAsからなる層である。
なお、このように複数の半導体層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
次に、上記面発光レーザアレイ201の製造方法について説明する。
(1)有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いた結晶成長によって、基板101上に、厚さが100nmのエッチストップ層121を形成し、該エッチストップ層121の上に上記積層体を形成する(図6参照)。基板101は、n−GaAs単結晶基板である。なお、有機金属気相成長法(MOCVD法)に代えて、分子線エピタキシャル成長法(MBE法)を用いても良い。
III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、アルシン(AsH3)を用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
(2)積層体の表面にメサ形状に対応するレジストパターンを形成する。具体的には、コンタクト層109上にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、メサ形状に対応したレジストパターンを形成する。ここでは、メサの断面が一辺25μmの正方形となるようにした。なお、コンタクト層109上に塗布されるレジストはポジレジストを用い、コンタクト露光により露光を行う。
(3)ICPドライエッチングによって、略四角柱状のメサを形成する。ここでは、エッチングの底部は下部スペーサ層104中に位置するようにした。
(4)レジストパターンを除去する(図7参照)。
(5)水蒸気中で熱処理する。ここでは、メサの外周部から被選択酸化層108中のAlが選択的に酸化される。そして、メサの中央部に、Alの酸化層108aによって囲まれた酸化されていない領域108bを残留させる(図8参照)。これにより、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、酸化狭窄構造体が作成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。
(6)素子分離溝形成部のみが露出されるようリソグラフィによりレジストパターン122を形成する(図9参照)。
(7)ICPドライエッチング法を用いて分離溝を形成する。このとき、露出部では、エッチストップ層121が完全に除去されるとともに、基板101が深さ1μm程度除去されるまでエッチングを行う。
(8)レジストパターン122を除去する(図10参照)。
(9)加熱チャンバーに入れ、窒素雰囲気中に380〜400℃の温度で3分間保持する。この窒素雰囲気中での加熱処理により、大気中で表面に付着した酸素や水、もしくは加熱処理用のチャンバー内の微量な酸素や水による自然酸化膜が、安定した不動態皮膜になる。
(10)気相化学堆積法(CVD法)を用いて、SiN、SiONあるいはSiO2からなる保護膜111を形成する(図11参照)。このとき、保護膜111は、下部半導体DBR103、活性層105、上部半導体DBR107の側面にも形成される。
(11)メサ上面にコンタクトホールを形成するためのレジストパターンを作成する。ここでは、フォトレジストによるマスクを施した後、メサ上部の開口部となる部分を露光し、該部分のフォトレジストを除去する。
(12)BHF(バッファード・フッ酸)を用いたウエットエッチングにより、レジストパターンの開口部における保護膜111を除去する。このとき、工程(7)で形成した分離溝底面におけるスクライブ領域の保護膜111も除去する。
(13)レジストパターンを除去する(図12参照)。
(14)メサ上部の光射出部となる領域に一辺10μmの正方形状のレジストパターンと、電極パッドと発光部とを接続するレジストパターンを形成する。
(15)上部電極113の材料を蒸着する。ここでは、Ti/Pt/Auからなる多層金属膜が用いられる。
(16)光射出部の多層金属膜をリフトオフする。これにより、上部電極113が形成される(図13参照)。
(17)スクライブ・ブレーキングにより、チップ毎に切断する。
(18)接着材315を介して搬送用基板316とチップを接合する(図14参照)。ここでは接着材315としてワックスを用い、搬送用基板316としてガラス板を用いている。この場合、チップ上に接着材315を塗布し、その上に搬送用基板316を乗せ、真空中で加熱する。
(19)ウェットエッチング法により基板101を除去する(図15参照)。硫酸と過酸化水素水の混合液を使用する事により、エッチストップ層121を残留させて基板101のみを選択的に除去することができる。
(20)BHFに浸漬し、下部半導体DBR103の側面の一部、及び約1μmの保護膜111を除去する(図16参照)。
(21)塩酸に浸漬してエッチストップ層121を除去する(図17参照)。
(22)下部電極114を形成する(図18参照)。ここでは、下部電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
(23)ペースト状のはんだ123を用いてチップと熱拡散板401とを接合させる。熱拡散板401は、AlN(窒化アルミニウム)からなる板状部材であり、+Z側の面には、厚さ1μmのAu(金)が成膜されている領域403とAuが成膜されていない領域402とが設けられている(図19参照)。ここでは、領域403にはんだ123を塗布し、その上にチップを乗せ、200〜250℃に加熱されているホットプレート上に載置する。なお、下部半導体DBR103の側面における保護膜111が無い部分をはんだ123が覆うように(図20参照)、はんだ123の量は調整されている。
(24)有機溶剤に浸漬して接着材315を溶解させることにより、搬送用基板316及び接着材315を除去する(図21参照)。
(25)アニールし、上部電極113と下部電極114のコンタクト特性をオーミックコンタクトにする。
(26)Auからなるワイヤ404を必要な本数形成する(図22参照)。これによって、面発光レーザアレイ201となる。
図23には、比較例としての面発光レーザアレイ901が示されている。この面発光レーザアレイ901では、面発光レーザアレイ201と異なり、下部半導体DBR103の側面の全部が保護膜111で覆われている。
図24には、面発光レーザアレイ201及び面発光レーザアレイ901について、光出力と供給電流との関係が示されている。図24からわかるように、面発光レーザアレイ901では、供給電流が200A(アンペア)を超えると、光出力の増加は緩やかとなっている。そして、供給電流が250A(アンペア)になると、光出力は飽和している。一方、面発光レーザアレイ201では、供給電流が250A(アンペア)を超えても、光出力は増加している。このことから、面発光レーザアレイ201は、面発光レーザアレイ901に比べて、高出力での発光効率の低下が少ない。
ところで、高出力の面発光レーザアレイは、絶縁領域により分離された導電領域を表面に有する熱拡散板に実装される。熱拡散板の導電領域と面発光レーザアレイの上部電極をワイヤボンドにより電気的に導通させ、熱拡散板の導電領域を通して直流電源から電流を供給する。そのため、ワイヤボンドの位置から遠い発光部ほど注入される電流量が少なくなる。言い換えると、ワイヤボンドの位置に近い発光部ほど注入される電流量が大きく、活性層での発熱量が大きい。
そして、面発光レーザで200W(ワット)を超える出力を実現するためには、駆動電流が200Aを超え、また、アレイ規模が大きくなる。この場合、発光領域の1辺の長さが7mmを超える大きさとなり、発光部の個数が1万個以上の大規模なデバイスとなる。
このような規模になると、複数の発光部において、ワイヤボンドの位置からの差に由来する電流量の差が無視出来ない大きさとなり、発熱量が大きい外側の発光部の劣化が急速に進行するため、高出力での動作寿命が短くなることがわかった。
面発光レーザアレイ201は、下部半導体DBR103の側面が熱伝導率の高いはんだ123と直接接するため、一例として図25に示されるように、各発光部で発生した熱は矢線で示される経路で拡散する。この場合、ワイヤボンドに近い発光部で発生した熱は、効率良く放熱される。すなわち、面発光レーザアレイ201では、外周部の発熱を効率良く放熱できるため、外側の発光部の劣化が抑制され、その結果、高出力での動作寿命を長くすることができる。そして、面発光レーザアレイ201は、高出力での動作信頼性を高くすることができる。なお、比較のために、面発光レーザアレイ901における熱の拡散経路が図26に示されている。
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る点火装置301では、射出光学系210によって、本発明の点火装置における「レーザ装置から射出されるレーザ光を集光する光学系」が構成されている。そして、本実施形態に係るレーザ装置200では、第1集光光学系203によって、本発明のレーザ装置における「面発光レーザアレイから射出されるレーザ光を集光する光学系」が構成され、光ファイバ204によって、本発明のレーザ装置における「伝送部材」が構成されている。
以上説明したように、本実施形態に係るに面発光レーザアレイ201は、活性層105、該活性層105を挟む下部半導体DBR103と上部半導体DBR107、はんだ123によって接合される熱拡散板401とを備え、下部半導体DBR103の側面の一部は、はんだ123で覆われている。
この場合は、高出力で使用しても、発光効率が低下するのを抑制することができる。また、外周部の発熱を効率良く放熱できるため、複数の発光部における外側の発光部の劣化が抑制され、その結果、高出力での動作寿命を長くすることができる。
そして、レーザ装置200は、面発光レーザアレイ201を有しているため、安定して高出力のレーザ光を射出することができる。また、レーザ装置200の長寿命化を図ることができる。
さらに、点火装置301は、レーザ装置200を備えているため、安定した点火を行うことができる。また、点火装置301の長寿命化を図ることができる。
また、エンジン300は、点火装置301を備えているため、結果として、安定性を向上させることができる。さらに、点火装置301のメンテナンス間隔を長くすることができる。
なお、上記実施形態では、チップと熱拡散板401とを接合させる際に、はんだが用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、はんだに代えて、AuSn(金すず合金)を含む材料を用いても良い。この場合は、チップが接合される領域にAuSn薄膜が3μmの厚さで形成されている熱拡散板を用い、該AuSn薄膜上にチップを乗せ、N2雰囲気下で、適切な荷重を印加して300℃程度に加熱する。また、この場合は、フラックスが不要であり、フラックスの影響を考慮する必要がない。さらに、AuSnは安定した材料であるため、面発光レーザアレイの信頼性をさらに高めることができる。
また、例えば、はんだに代えて、Ag(銀)を含む焼結材料を用いても良い。Agの焼結体は内部に隙間が存在するため、熱拡散板とチップとの間で生じる熱応力を緩和することができ、熱膨張係数差が大きい材料を接合させるのに好適である。この場合は、チップが接合される領域にAgペーストを塗布し、該Agペースト上にチップを乗せ、適切な荷重を印加して加熱する。
また、上記実施形態では、熱拡散板401としてAlNが用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態では、バッファ層102の−Z側の面の全てが下部電極114で覆われている場合について説明したが、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態において、第1集光光学系203、第2集光光学系205及び射出光学系210は、いずれも単一のレンズからなっていても良いし、複数のレンズからなっていても良い。
また、上記実施形態では、面発光レーザアレイ201が励起用光源としてレーザ装置200に用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。面発光レーザアレイ201が励起用ではない光源としてレーザ装置に用いられても良い。
《レーザアニール装置》
一例として図27(A)及び図27(B)にレーザ装置としてのレーザアニール装置1000の概略構成が示されている。このレーザアニール装置1000は、光源1010、光学系1020、テーブル装置1030、及び不図示の制御装置などを備えている。
一例として図27(A)及び図27(B)にレーザ装置としてのレーザアニール装置1000の概略構成が示されている。このレーザアニール装置1000は、光源1010、光学系1020、テーブル装置1030、及び不図示の制御装置などを備えている。
光源1010は、面発光レーザアレイ201を有し、複数のレーザ光を射出することができる。光学系1020は、光源1010から射出された複数のレーザ光を対象物Pの表面に導光する。テーブル装置1030は、対象物Pが載置されるテーブルを有している。該テーブルは、少なくともY軸方向に沿って移動することができる。
例えば、対象物Pがアモルファスシリコン(a−Si)の場合、レーザ光が照射されると、アモルファスシリコン(a−Si)は、温度が上昇し、その後、徐々に冷却されることによって結晶化し、ポリシリコン(p−Si)になる。
そして、レーザアニール装置1000は、光源1010が面発光レーザアレイ201を有しているため、処理効率を向上させることができる。
《レーザ加工機》
一例として図28にレーザ装置としてのレーザ加工機3000の概略構成が示されている。このレーザ加工機3000は、光源3010、光学系3100、対象物Pが載置されるテーブル3150、テーブル駆動装置3160、操作パネル3180及び制御装置3200などを備えている。
一例として図28にレーザ装置としてのレーザ加工機3000の概略構成が示されている。このレーザ加工機3000は、光源3010、光学系3100、対象物Pが載置されるテーブル3150、テーブル駆動装置3160、操作パネル3180及び制御装置3200などを備えている。
光源3010は、面発光レーザアレイ201を有し、制御装置3200の指示に基づいてレーザ光を射出する。光学系3100は、光源3010から射出されたレーザ光を対象物Pの表面近傍で集光させる。テーブル駆動装置3160は、制御装置3200の指示に基づいて、テーブル3150をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動させる。
操作パネル3180は、作業者が各種設定を行うための複数のキー、及び各種情報を表示するための表示器を有している。制御装置3200は、操作パネル3180からの各種設定情報に基づいて、光源3010及びテーブル駆動装置3160を制御する。
そして、レーザ加工機3000は、光源3010が面発光レーザアレイ201を有しているため、加工(例えば、切断や溶接)の処理効率を向上させることができる。
なお、レーザ加工機3000は、複数の光源3010を有しても良い。
また、面発光レーザアレイ201は、レーザアニール装置及びレーザ加工機以外のレーザ光を利用する装置にも好適である。例えば、面発光レーザアレイ201を表示装置の光源に用いても良い。
また、上記実施形態では、面発光レーザアレイ201の発振波長が808nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、用途に応じて適切な発振波長のものを用いることができる。
また、1個の発光部を有する面発光レーザにおいて、面発光レーザアレイ201と同様に、下部半導体DBRの側面が熱伝導率の高い材料と直接接するようにすると、高出力で使用しても、発光効率が低下するのを抑制することができる。また、放熱効率を向上させることができるため、供給電流を大きくしても、寿命の低下を抑制することが可能となる。
101…基板、102…バッファ層、103…下部半導体DBR、104…下部スペーサ層、105…活性層、106…上部スペーサ層、107…上部半導体DBR、108…被選択酸化層、109…コンタクト層、111…保護膜、113…上部電極、114…下部電極、123…はんだ(接合部材)、200…レーザ装置、201…面発光レーザアレイ、203…第1集光光学系、204…光ファイバ(伝送部材)、205…第2集光光学系、206…レーザ共振器、206a…レーザ媒質、206b…可飽和吸収体、210…射出光学系(レーザ装置から射出されるレーザ光を集光する光学系)、212…保護部材、220…駆動装置、222…エンジン制御装置、300…エンジン(内燃機関)、301…点火装置、302…燃料噴出機構、303…排気機構、304…燃焼室、305…ピストン、315…接着材、316…搬送用基板、401…熱拡散板(熱拡散部材)、402…Auが成膜されていない領域、403…Auが成膜されている領域、404…ワイヤ、901…比較例の面発光レーザアレイ、1000…レーザアニール装置(レーザ装置)、1010…光源、1020…光学系、1030…テーブル装置、3000…レーザ加工機(レーザ装置)、3010…光源、3100…光学系、3150…テーブル、3160…テーブル駆動装置、3180…操作パネル、3200…制御装置、P…対象物。
Seurin, Jean Francois, et al. "Progress in high−power high−efficiency VCSEL arrays." Proc. SPIE. Vol. 7229. 2009.
Claims (17)
- 複数の発光部を含み、活性層、及び該活性層を挟む第1の反射鏡と第2の反射鏡を有するチップと、
前記第1の反射鏡に接合部材を介して接合される熱拡散部材とを備え、
前記第1の反射鏡の側面の一部は、前記接合部材で覆われている面発光レーザアレイ。 - 前記活性層、及び前記第2の反射鏡の側面は、保護膜で覆われており、
前記第1の反射鏡の側面は、前記保護膜で覆われている部分と、前記保護膜で覆われていない部分とを有し、前記保護膜で覆われていない部分が前記接合部材で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザアレイ。 - 前記保護膜で覆われていない部分は、ワイヤボンドに近い部分であることを特徴とする請求項2に記載の面発光レーザアレイ。
- 前記接合部材は、金属を含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の面発光レーザアレイ。
- 前記接合部材は、はんだ、金とスズを含む材料、及び銀を含む材料のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の面発光レーザアレイ。
- 発光部を含み、活性層、及び該活性層を挟む第1の反射鏡と第2の反射鏡を有するチップと、
前記第1の反射鏡に接合部材を介して接合される熱拡散部材とを備え、
前記第1の反射鏡の側面の一部は、前記接合部材で覆われている面発光レーザ。 - 前記活性層、及び前記第2の反射鏡の側面は、保護膜で覆われており、
前記第1の反射鏡の側面は、前記保護膜で覆われている部分と、前記保護膜で覆われていない部分とを有し、前記保護膜で覆われていない部分が前記接合部材で覆われていることを特徴とする請求項6に記載の面発光レーザ。 - 前記保護膜で覆われていない部分は、ワイヤボンドに近い部分であることを特徴とする請求項7に記載の面発光レーザ。
- 前記接合部材は、金属を含んでいることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
- 前記接合部材は、はんだ、金とスズを含む材料、及び銀を含む材料のいずれかであることを特徴とする請求項9に記載の面発光レーザ。
- 対象物にレーザ光を照射するレーザ装置であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の面発光レーザアレイと、
前記面発光レーザアレイから射出されるレーザ光を前記対象物に導光する光学系と、を備えるレーザ装置。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の面発光レーザアレイと、
前記面発光レーザアレイから射出されるレーザ光を集光する光学系と、
前記光学系を介したレーザ光を伝送する伝送部材と、を備えるレーザ装置。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の面発光レーザアレイと、
前記面発光レーザアレイからのレーザ光が入射されるレーザ共振器と、を備えるレーザ装置。 - 前記レーザ共振器は、Qスイッチレーザであることを特徴とする請求項13に記載のレーザ装置。
- 前記レーザ共振器は、レーザ媒質及び可飽和吸収体を含むことを特徴とする請求項14に記載のレーザ装置。
- 請求項13〜15のいずれか一項に記載のレーザ装置と、
前記レーザ装置から射出されるレーザ光を集光する光学系と、を備える点火装置。 - 燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する内燃機関において、
前記燃料に点火するための請求項16に記載の点火装置を備えていることを特徴とする内燃機関。
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JP2015219293A JP2017092204A (ja) | 2015-11-09 | 2015-11-09 | 面発光レーザアレイ、面発光レーザ、レーザ装置、点火装置、及び内燃機関 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2022181085A1 (ja) * | 2021-02-26 | 2022-09-01 | ソニーグループ株式会社 | 面発光レーザ及び面発光レーザの製造方法 |
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2015
- 2015-11-09 JP JP2015219293A patent/JP2017092204A/ja active Pending
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