本発明の実施の形態について、以下に詳細に説明する。本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
〔1.ポジ型硬化性組成物〕
〔実施形態1〕
本発明の第1の実施形態に係るポジ型硬化性組成物は、(A)特定の構造を有するエステル化合物と、(B)酸存在下で分解し酸性基が発現する構造を有し、一分子中に2つ以上のアルケニル基、または、SiH基を含有する化合物と、(C)一分子中に2つ以上のSiH基、または、アルケニル基を有する化合物と、(D)ヒドロシリル化触媒と、(E)光酸発生剤とを含有する。以下では、上記(A)特定の構造を有するエステル化合物を単に「(A)成分」と称し、上記(B)酸存在下で分解し酸性基が発現する構造を有し、一分子中に2つ以上のアルケニル基、または、SiH基を含有する化合物を単に「(B)成分」と称し、上記(C)一分子中に2つ以上のSiH基、または、アルケニル基を有する化合物を単に「(C)成分」と称し、上記(D)ヒドロシリル化触媒を単に「(D)成分」と称し、上記(E)光酸発生剤を単に「(E)成分」と称する場合もある。また、本明細書を通して、「硬化性組成物」は、「樹脂組成物」、「感光性組成物」、「感光性樹脂組成物」または「感光性樹脂」と称する場合もある。
本ポジ型硬化性組成物は、上記5つの成分を含有するがゆえに、電気的絶縁信頼性に優れ、かつ、タックおよびパターニング性に優れた硬化物の製造を可能にする。本硬化性組成物は、(B)〜(E)成分を含有することにより、電気的絶縁信頼性に優れた硬化物を製造することができる。一方、(A)成分を含有することにより、硬化時において露光部分の現像液に対する溶解速度を調整することができ、その結果、タックおよびパターニング性に優れた硬化物を製造することができる。
<1−1.(A)成分>
本ポジ型硬化性組成物は、(A)成分として、以下に示す化合物を含有する。本ポジ型硬化性組成物では、(A)成分を含有するために、タックおよびパターニング性に優れた硬化物の製造が可能になる。このことは、本発明者らが初めて見出した知見である。
(A)成分は、下記式(1):
R1−(COO−R2)m ・・・(1)
(式中、R1およびR2は、各々独立して、脂肪族鎖状炭化水素、脂肪族環状炭化水素または芳香族炭化水素であり、mは、2〜4の整数である)
で表されるエステル化合物である。
脂肪族鎖状炭化水素、脂肪族環状炭化水素または芳香族炭化水素は、当該技術分野における技術常識であり、当業者が通常用いるものであれば別段限定されない。
脂肪族鎖状炭化水素としては、例えば、ノルマルエチル、ノルマルプロピル、ノルマルブチル、ノルマルペンチル、ノルマルヘキシル、ノルマルへプチル、ノルマルオクチル、ノルマルノニル、ノルマルデシル、ステアリル、2エチルヘキシル、イソノニル、イソデシル、イソステアリル等が挙げられる。また、脂肪族環状炭化水素としては、例えば、シクロヘキサニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、イソボルニル等が挙げられる。さらに、芳香族炭化水素としては、例えば、フェニル、ベンジル、ノニルフェニル、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。
R1およびR2は、(B)〜(E)成分との相性の観点から、脂肪族鎖状炭化水素が好ましく用いられる。
(A)成分の例としては、例えば、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジオクチル、アゼライン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アゼライン酸ジイソノニル、アゼライン酸ジイソデシル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジイソノニル、セバシン酸ジイソデシル等が挙げられる。(A)成分は、タックおよびパターニング性を向上させるという観点から、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニルおよびアジピン酸ジイソデシルが好ましく用いられる。
(A)成分は、また、特定の沸点を有することを特徴とする。上記沸点は、5mmHgにおいて200℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、230℃以上であることがとりわけ好ましい。5mmHgにおける沸点が少なくとも200℃であれば、タックおよびパターニング性に優れた硬化物の製造が可能となる。本エステル化合物の沸点の上限は、特に限定されないが、本エステル化合物がポストベイク後に硬化膜に残存すると層間絶縁膜の耐熱性が低下することから、5mmHgにおいて400℃が好ましい。
(A)成分は、また、硬化性組成物の硬化時において、露光部分の現像液に対する溶解速度の調整が可能となるような特定の量が使用される。(A)成分の使用量は、(B)成分と(C)成分との合計100重量部に対して0.01〜5重量部であることが好ましく、0.05〜4重量部であることがより好ましい。(A)成分の使用量が前記範囲である場合、タックおよびパターニング性の両方について、十分な機能が得られるため好ましい。
<1−2.(B)成分>
本ポジ型硬化性組成物は、(B)成分として、酸存在下で分解し酸性基が発現する構造を有し、一分子中に2つ以上のアルケニル基、または、SiH基を含有する化合物を含有する。
上記(B)成分は、(E)光酸発生剤から発生する酸により分解し酸性基又は水酸基が発現することで現像液に可溶となるため、このような(B)成分を(E)成分と併せて用いることによりポジ型のパターンを形成することができる。
上記酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造としては、特に限定されないが、パターニング性及び硬化物(薄膜)の絶縁性に優れるという観点からは、官能基保護されたフェノール構造、官能基保護されたカルボン酸構造であることが好ましい。
本明細書において、官能基保護されたフェノール構造とは、フェノール構造の水酸基の水素原子が化合物残基に置換された構造をいう。
上記官能基保護されたフェノール構造は、パターニング性及び硬化物(薄膜)の絶縁性に優れるとの効果をより顕著に享受できることから、官能基保護されたビスフェノール構造であることが好ましく、トリアルキルシリル基又はブトキシカルボニル基で官能基保護されたビスフェノール構造であることがより好ましい。
また、上記化合物残基は、炭素数1〜50の有機基又は有機ケイ素基であることが好ましい。
上記化合物残基として炭素数1〜50の有機基又は有機ケイ素基を有する官能基保護されたビスフェノール構造は、下記一般式(IV)で示される。
(一般式(IV)中、R6は炭素数1〜50の有機基又は有機ケイ素基を示し、R7はビスフェノール構造として取り得る構造であればよい。また、芳香環上の水素は置換されていても良い。)
上記官能基保護されたフェノール構造(特に、一般式(IV)で示される官能基保護されたビスフェノール構造)を有する化合物を得る方法としては、例えば、活性水素と反応性に富む化合物を用いる方法、Boc化試薬を用いてtertブトキシカルボニル基により保護する方法等を用いることができる。これらの方法において、効率良く目的の化合物を得るために、適宜、溶剤や触媒を使用してもよい。
上記(B)成分が、ヒドロシリル化反応性基であるSiH基等を有する場合には、安定性の面から、活性水素と反応性に富む化合物を用いる方法が好ましい。
上記活性水素と反応性に富む化合物としては、例えば、ハロゲン化物、カルボン酸、シリル化剤等を挙げることができる。
上記活性水素と反応性に富む化合物を用いる方法としては、(E)光酸発生剤による脱保護のしやすさの観点から、シリル化剤を用いてトリアルキルシリル基により官能基を保護する方法が好ましい。
上記トリアルキルシリル基に含有されるアルキル基としては、特に限定されないが、(E)光酸発生剤による脱保護のしやすさの観点から、不飽和結合を持たない炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
シリル化剤を用いてトリアルキルシリル基により官能基を保護する場合、上記シリル化剤としては、汎用的なシリル化剤を用いることができ、具体的には、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N−メチルトリメチルシリルアセトアミド、N−メチルトリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、トリメチルシリルイミダゾール、N,N‘−ビス(トリメチルシリルウレア)、トリエチルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、トリエチルシラン等が挙げられる。これらのシリル化剤の中では、工業的に安価で製造することができる観点より、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシランが好ましい。
これらのシリル化剤は、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
本明細書において、官能基保護されたカルボン酸構造とは、カルボン酸構造のカルボキシル基の水素原子が化合物残基に置換された構造をいう。
上記官能基保護されたカルボン酸構造としては、パターニング性及び硬化物(薄膜)の絶縁性に優れるという効果をより顕著に享受できることから、アセタール結合を含有する構造、カルボン酸3級エステル結合を含有する構造であることが好ましい。
上記アセタール結合を含有する構造を有する(B)成分としては、例えば、ジアリルアセタール、ペンタナールジアリルアセタール、ベンズアルデヒドジアリルアセタール、1,1,2,2−テトラアリルオキシエタン、1,1,2,2−テトラアリルオキシプロパン、2,2−ジアリル−1,3−ジオキソラン、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸エトキシメチル、4−ビニルメトキシメチル安息香酸エステル、4−ビニルエトキシメチル安息香酸エステル等が挙げられる。
また、上記アセタール結合を含有する構造を有する(B)成分と、SiH基を有するシロキサン化合物とをあらかじめヒドロシリル化反応させて得た化合物を用いても良い。
上記カルボン酸3級エステル構造を含有する構造において、カルボン酸3級エステル構造としては、例えば、p−tertブトキシ基、p−tertブトキシカルボニル基等でカルボキシル基が保護された構造等が挙げられる。3級エステル構造としては、特に限定されず、t−ブチルエステル等公知のものを使用することができる。
上記カルボン酸3級エステル構造を含有する構造と、アルケニル基とを含有する(B)成分としては、特に限定されないが、例えば、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、t−ブチル3−ブテノエート、アクリル酸2−メチル2−アダマンチル、アクリル酸2−エチル2−アダマンチル、メタクリル酸2−メチル2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル2−アダマンチル、1,3−アダマンタンジオールジアクリレート、1,3−アダマンタンジオールジメタクリレート等が挙げられる。これらの中でも、特に耐熱性に優れる観点より2つ以上の(メタ)アクリル基を含有する化合物が好ましく、1,3−アダマンタンジオールジアクリレート、1,3−アダマンタンジオールジメタクリレートが好ましい。
また、上記カルボン酸3級エステル構造を含有する構造と、アルケニル基とを含有する(B)成分と、SiH基を有するシロキサン化合物とをあらかじめヒドロシリル化反応させて得た化合物を用いても良い。
上記カルボン酸3級エステル結合を含有する構造は、現像コントラスト、得られる薄膜の耐熱性、絶縁性に優れる点より、脂肪族環構造で保護されたカルボン酸3級エステル構造であることが好ましい。この場合、カルボン酸3級エステル構造においてカルボキシル基を保護する3級炭素は、脂肪族環構造を形成する炭素であっても良いし、脂肪族環構造を形成せず独立に存在する炭素であっても良い。上記脂肪族環構造は、現像コントラスト、露光感度の点から、アダマンタン構造であることが好ましい。
本ポジ型硬化性組成物において、上記(B)成分に含まれる酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造の含有量は、(B)成分と(C)成分との合計量を基準として、1H−NMRの測定により、標準物質をジブロモエタンとした時の当量換算で0.05〜10mmol/gであることが好ましく、0.1〜5mmol/gであることがより好ましく、0.15〜3mmol/gであることがさらに好ましい。
上記(B)成分は、上記酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造を有し、一分子中にアルケニル基又はSiH基を含有する化合物である。
また、上記(B)成分としては、後述する(F)成分((B)成分と(C)成分とのヒドロシリル化反応物)を用いても良く、特に、(B)成分と(C)成分とを予めヒドロシリル化反応させて得た、酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造を有し、アルケニル基とSiH基とを含有する化合物を上記(B)成分として用いても良い。
アルケニル基を含有する(B)成分としては、光酸発生剤による脱保護のしやすさ、入手性の観点から、下記一般式(III)で表される化合物、又は、当該化合物を後述する(B)成分と反応させて得た化合物であることが好ましい。
(一般式(III)中、R4は不飽和結合を持たない炭素数1〜6のアルキル基を表し、それぞれのR4は同一でも異なっていてもよい。R5はビスフェノール構造として取り得る構造であればよい。)
上記(B)成分がアルケニル基を含有する場合、(B)成分一分子中のアルケニル基の数は、架橋密度が上がりより強靭な薄膜を得ることができるという観点より2つ以上であることが好ましい。
SiH基を含有する(B)成分としては、例えば、上記アルケニル基を含有する(B)成分と、SiH基を一分子中に2つ以上有する化合物とをヒドロシリル化反応させて得た化合物を用いることができる。
上記SiH基を一分子中に2つ以上有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルヒドロシリル基で末端が封鎖されたシロキサン、側鎖にSiH基を有する環状シロキサン、鎖状シロキサン、籠状シロキサン等が挙げられる。これらの中では、特に絶縁性に優れる薄膜を得られる観点より、側鎖にSiH基を有する環状シロキサン化合物が好ましい。
上記側鎖にSiH基を有する環状シロキサン化合物としては、例えば、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−メチル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジメチルー5,7−ジハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジプロピル−5,7−ジハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−7−ヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等が挙げられる。これらの中では、特に入手性の観点より、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。これらの化合物は、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記ヒドロシリル化反応に用いる触媒としては、特に限定されず、公知のヒドロシリル化触媒を用いることができるが、触媒活性の点からは、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等を用いることが好ましい。
これらのヒドロシリル化触媒は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記(B)成分がSiH基を含有する場合、SiH基の含有量は、(B)成分1gあたり0.01〜15mmolであることが好ましく、0.05〜10mmolであることがより好ましく、0.1〜8mmolであることがさらに好ましく、1〜8mmolであることが特に好ましい。SiH基の含有量が0.01mmol未満であると絶縁性が低下することがあり、15mmolを超えると、(B)成分の貯蔵安定性が低下することがある。
上記(B)成分は、得られる薄膜の耐薬品性、絶縁性等を高めることができることから、ビスフェノール構造を含有することが好ましい。
上記ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA構造、ビスフェノールAP構造、ビスフェノールAF構造、ビスフェノールB構造、ビスフェノールBP構造、ビスフェノールE構造、ビスフェノールM構造、ビスフェノールF構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールPH構造、ビスフェノールC構造、ビスフェノールG構造、ビスフェノールTMC構造、ビスフェノールZ構造等が挙げられる。
これらの中でも、アルカリ現像液への溶解性に優れ、コントラストに優れるパターンを得ることができるという観点からは、ビスフェノールA構造、ビスフェノールB構造、ビスフェノールC構造、ビスフェノールE構造、ビスフェノールF構造、ビスフェノールAF構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールAP構造、ビスフェノールPH構造が好ましい。また、特に入手性の観点からはビスフェノールA構造、ビスフェノールS構造が好ましく、光酸発生剤による脱保護のしやすさの観点からは、ビスフェノールS構造、ビスフェノールF構造が好ましい。
本ポジ型硬化性組成物において、上記(B)成分は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
本ポジ型硬化性組成物において、上記(B)成分の含有量は、パターニング性及び硬化物(薄膜)の絶縁性の観点から、本ポジ型硬化性組成物中の溶剤を除く成分100重量部に対し、5〜95重量部であることが好ましく、10〜90重量部であることがより好ましく、20〜80重量部であることがさらに好ましい。
上記(B)成分は、酸存在下で分解しアルカリ可溶性となる化合物であることが好ましい。その理由は、上記(B)成分が酸存在下で分解しアルカリ可溶性となることによって、本ポジ型硬化性組成物がアルカリ可溶性となるため、本ポジ型硬化性組成物を硬化させて薄膜を得る際に、一般的に用いられる現像液であるアルカリ性現像液を用いることができるためである。
<1−3.(C)成分>
本ポジ型硬化性組成物は、(C)成分として、一分子中に2つ以上のSiH基、または、アルケニル基を有する化合物を含有する。
上記(C)成分としては、特に限定されず公知の化合物を使用することができるが、上記(B)成分がアルケニル基を有する化合物である場合は、上記(C)成分がSiH基を含有する化合物である必要があり、また、上記(B)成分がSiH基を含有する化合物である場合には、上記(C)成分はアルケニル基を含有する化合物であることが必要である。
また、上記(C)成分は、酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造を有していてもよいし、有していなくてもよい。
また、上記(C)成分としては、後述する(F)成分((B)成分と(C)成分とのヒドロシリル化反応物)を用いても良く、特に、上記(B)成分と、上記(C)成分とを予めヒドロシリル化反応させて得た、酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造を有し、アルケニル基とSiH基とを含有する化合物を(C)成分として用いても良い。
アルケニル基を含有する(C)成分としては、アルケニル基を有する有機化合物や、アルケニル基を有するシロキサン化合物等を用いることができ、具体例としては、例えば、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジアリルエーテル、ノナンジオールジアリルエーテル、1,4−シクロへキサンジメタノールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、ビニルシクロへキセン、ビニルシクロペンテン、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,5−ジアリルフェノールアリルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノプロピルイソシアヌレート、モノアリルジベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、ケイ素基に結合したビニル基(Si−CH=CH2基)を有するポリシロキサン化合物等が挙げられる。
上記ケイ素基に結合したビニル基を有するポリシロキサン化合物としては、例えば、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等が挙げられる。
上述した(B)成分の説明において、アルケニル基を含有する化合物として説明した化合物は、(B)成分との組み合わせによっては、(C)成分として用いることができる。
上記(C)成分は、透明性、耐熱性、耐光性及び絶縁性に優れた硬化物(薄膜)を形成することができるという観点から、下記式(V)で表される構造とアルケニル基とを有する化合物であることが好ましい。
上記式(V)で表される構造とアルケニル基とを有する化合物としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノプロピルイソシアヌレート、モノアリルジベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート等が挙げられる。これらの中では、入手性の観点より、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレートが好ましい。
また、上記(C)成分は、硬化物の透明性及び硬化性の観点より、アルケニル基を有するシロキサン化合物であることが好ましい。
上記アルケニル基を有するシロキサン化合物としては、化合物入手性の観点からは、ケイ素基に結合したビニル基(Si−CH=CH2基)を2つ以上有するシロキサン化合物であることが好ましく、ケイ素基に結合したビニル基を2〜6つ有するシロキサン化合物であることがより好ましい。
上記ケイ素基に結合したビニル基(Si−CH=CH2基)を2つ以上有するシロキサン化合物としては、例えば、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等が挙げられる。
上記(C)成分がアルケニル基を含有する場合、(C)成分一分子中のアルケニル基の数は、架橋密度が上がりより強靭な薄膜を得ることができるという観点より2つ以上であることが好ましい。
SiH基を含有する(C)成分としては、例えば、上記(B)成分の説明の欄で、SiH基を一分子中に2つ以上有する化合物として説明した化合物等が挙げられる。
上記(C)成分は、強靭な薄膜が得られるという観点からは、あらかじめポリシロキサン化合物同士又は有機化合物とポリシロキサン化合物との部分的反応により得たオリゴマーであることが好ましい。
上記部分的反応としては、特に限定されないが、加水分解縮合と比較して反応後に電気的及び熱的に安定なC−Si結合を形成し、また、反応制御が容易で未架橋基が残りにくいという観点からは、ヒドロシリル化反応を適用することが好ましい。上記部分的反応に用いるモノマーとしては、特に限定されず、SiH基を有するポリシロキサン化合物と、アルケニル基を有するポリシロキサン化合物又は有機化合物とを、適宜組み合わせて用いることができる。
上記(C)成分がSiH基を含有する場合、SiH基の含有量は、(C)成分1gあたり0.01〜15mmolであることが好ましく、0.05〜10mmolであることがより好ましく、0.1〜8mmolであることがさらに好ましく、1〜8mmolであることが特に好ましい。SiH基の含有量が0.01mmol未満であると硬化物(薄膜)の絶縁性が低下することがあり、15mmolを超えると、(C)成分の貯蔵安定性が低下することがある。
上記(B)成分及び/又は(C)成分に含有されるSiH基量をX、アルケニル基量をYとした場合、X/Yの値は、0.2≦X/Y≦5.0であることが好ましく、強靭な薄膜を得ることができるという観点からは、0.3≦X/Y≦3.0であることがより好ましい。
本ポジ型硬化性組成物において、上記(C)成分は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
本ポジ型硬化性組成物において、上記(B)成分は、酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造を有する、一分子中にSiH基を含有する化合物であり、かつ、上記(C)成分は、一分子中にアルケニル基を含有する化合物であることが好ましい。その理由は、硬化物(薄膜)の絶縁性に優れるためである。
本ポジ型硬化性組成物において、上記(B)成分及び上記(C)成分のうち、少なくとも一方はシロキサン系化合物であることが好ましい。また、上記(B)成分及び上記(C)成分のうち、少なくとも上記(B)成分はシロキサン系化合物であって、上記(B)成分は、環状シロキサン構造を有することがより好ましい。その理由は、硬化物(薄膜)の耐熱性に優れるためである。
また、本ポジ型硬化性組成物において、上記(B)成分及び上記(C)成分のうち少なくとも一方がシロキサン系化合物である場合、上記シロキサン系化合物は、6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造を含有することが、硬化物(薄膜)の耐熱性、絶縁性等に優れることから好ましい。以下、上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造について詳しく説明する。
(多面体骨格を有するポリシロキサン構造)
上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造としては、例えば、下記式(VI)で示される多面体骨格を有するポリシロキサン構造が挙げられる(なお、ここでは、8個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造を代表例として例示する)。
上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造を得る方法としては、例えば、一般式RSiX3(式中Rは、6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造においてケイ素原子に結合する基を表し、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)で表されるシラン化合物を加水分解縮合反応させる方法、一般式RSiX3を加水分解縮合反応させて分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成した後、さらに、同一の又は異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより閉環させる方法等が挙げられる。
上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造は、6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格及びアルケニル基を有するポリシロキサン化合物と、SiH基を有するシロキサン化合物とをヒドロシリル化反応させて得られたものであることが、他成分との相溶性が高く、透明でムラのない膜を得ることができることから好ましい。
上記SiH基を有するシロキサン化合物としては、例えば、鎖状シロキサン、環状シロキサン等が挙げられる。具体的には、上記(B)成分についての説明で記載した、SiH基を一分子中に2つ以上有する化合物(但し、籠状シロキサンを除く)等を用いることができる。また、網目状シロキサンも用いることができる。これらの中では、SiH基を一分子中に2つ以上有する環状シロキサンを用いることが、強靭で耐熱性に優れた膜を得ることができることから好ましい。
上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造は、下記式(VII)で表されるポリシロキサン構造に代表される構造であることが好ましい(なお、ここでは、8個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造を代表例として例示する)。下記式(VII)で表されるポリシロキサン構造に代表される構造においては、多面体骨格の頂点に位置するSi原子と、少なくとも1つはSiH基又はアルケニル基を含む基とが、シロキサン結合を介して結合しているため、第1の本発明のポジ型感光性組成物に含有される上記(B)成分及び上記(C)成分のうち、少なくとも一方がシロキサン系化合物である場合において、上記シロキサン系化合物として、下記式(VII)で表されるポリシロキサン構造に代表される構造を有する化合物を用いることにより、強靭な膜を得ることができる。
上記式(VII)で表されるポリシロキサン構造に代表される構造を有する化合物の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、テトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させた後、アルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させる方法等が挙げられる。この合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体骨格を有するポリシロキサン化合物が得られ、さらに得られたポリシロキサン化合物をアルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、アルケニル基を含有するシリル基が、シロキサン結合を介して多面体骨格の頂点に位置するSi原子と結合したポリシロキサン化合物を得ることが可能となる。
また、テトラアルコキシシランの代わりに、シリカや、稲籾殻等のシリカを含有する物質からも、同様の多面体骨格を有するポリシロキサン化合物を得ることが可能である。
上記テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。これらのテトラアルコキシシランは、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記4級アンモニウムヒドロキシドとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。これらの4級アンモニウムヒドロキシドは、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造は、下記一般式(I)
(一般式(I)中、R1は水素原子又は炭素数1〜10の有機基であり、R1のうち少なくとも一つは水素原子又はアルケニル基である。それぞれのR1は同一でも異なっていてもよい)で表される多面体骨格を有するポリシロキサン化合物と、下記一般式(II)、
(一般式(II)中、R2は炭素数1〜6の有機基であり、R3は水素原子又はアルケニル基である。それぞれのR2、R3は同一でも異なっていてもよい。nは0〜10、mは1〜10の数を表す)で表される環状シロキサン化合物とをヒドロシリル化反応させて得られたものであることが、強靭で耐熱性に優れた膜を得ることができることから好ましい。
なお、上記一般式(I)で表される多面体骨格を有するポリシロキサン化合物がアルケニル基を有する化合物である場合は、上記一般式(II)で表される環状シロキサン化合物がSiH基を有する化合物である必要があり、また、上記一般式(I)で表される多面体骨格を有するポリシロキサン化合物がSiH基を有する化合物である場合は、上記一般式(II)で表される環状シロキサン化合物がアルケニル基を有する化合物である必要がある。
上記6〜24個のSi原子から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン構造が、上記式(VI)で表されるポリシロキサン構造である場合、その含有量は、ポジ型感光性組成物中の溶剤を除いた成分100重量部に対し、2〜40重量%であることが好ましく、3〜30重量%であることがより好ましく、4〜20重量%であることがさらに好ましく、4〜10重量%であることが特に好ましい。含有量をこの範囲内とすることにより、強靭で耐熱性に優れるとともに、誘電率が低く、リーク電流も小さい電気的絶縁特性が良好な絶縁膜を得ることができる。
<1−4.(D)成分>
本ポジ型硬化性組成物は、(D)成分として、ヒドロシリル化触媒を含有する。上記(D)成分としては、特に限定されず公知のヒドロシリル化触媒を用いることができるが、触媒活性の点からは、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等を用いることが好ましい。
本ポジ型硬化性組成物において、上記(D)成分は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記(D)成分の含有量は、本ポジ型硬化性組成物に含有されるアルケニル基1molに対して、0.01〜5mmolであることが好ましく、0.02〜5mmolであることがより好ましい。上記(D)成分の含有量をこの範囲にすることで、第1の本発明のポジ型感光性組成物を短時間で硬化させることができ、かつ、硬化物の耐熱性及び耐光性を高めることができる。
<1−5.(E)成分>
本ポジ型硬化性組成物は、(E)成分として、光酸発生剤を含有する。本ポジ型硬化性組成物においては、上記(E)成分が露光されることによって酸が発生し、この酸により上記(B)成分が分解し酸性基又は水酸基が発現することで現像液に可溶となるため、ポジ型パターンの形成が可能となる。
上記(E)成分としては、露光によりルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができるが、アリールスルホニウム塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム塩又はヨードニウム塩、及び、II族、V族又はVI族元素の芳香族オニウム塩が好ましい。
特に、少ない露光量で高感度のポジ型硬化性組成物を得ることができるという観点からはヨードニウム塩が好ましく、ポジ型硬化性組成物の貯蔵安定性の観点からはスルホニウム塩が好ましい。
上記(E)成分に含まれるアニオンとしては、特に限定されないが、例えば、B(C6F5)4−、PF6−、SbF6−、CF3SO3−等が挙げられる。
上記(E)成分としては市販品も使用することができ、その具体例としては、例えば、FX−512(3M社製)、UVR−6990、UVR−6974(ともにユニオン・カーバイド社製)、UVE−1014、UVE−1016(ともにジェネラル・エレクトリック社製)、KI−85(デグッサ社製)、SP−152、SP−172(ともに旭電化社製)、サンエイドSI−60L、SI−80L、SI−100L(いずれも三新化学工業社製)、WPI113、WPI116(ともに和光純薬工業社製)、RHODORSIL PI2074(ローディア社製)、BBI−102、BBI−103、BBI−105、TPS−102、TPS−103、TPS−105、MDS−103、MDS−105、DTS−102、DTS−103、DTS−105(いずれもみどり化学社製)等が挙げられる。
本ポジ型硬化性組成物において、上記(E)成分は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記(E)成分の含有量は、特に限定されないが、本ポジ型硬化性組成物から溶剤を除いた総量を100重量部として、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。上記(E)成分の含有量をこの範囲にすることでパターニング性と硬化物の耐熱性及び耐光性を高めることができる。
〔実施形態2〕
本発明の第2の実施形態に係るポジ型硬化性組成物は、実施形態1の本ポジ型硬化性組成物において、(B)成分及び(C)成分に代えて、
(F)(B)成分と(C)成分とをヒドロシリル化反応させて得た化合物
を含有することを特徴とする。以下では、上記(F)(B)成分と(C)成分とをヒドロシリル化反応させて得た化合物を単に「(F)成分」と称する場合もある。
<1−6.(F)成分>
上記(F)成分は、(B)成分と(C)成分とをヒドロシリル化反応させて得た化合物である。
上記(F)成分は、(E)光酸発生剤から発生する酸により分解し酸性基又は水酸基が発現することで現像液に可溶となるため、このような(F)成分を(E)成分と併せて用いることによりポジ型のパターンを形成することができる。
実施形態2の本ポジ型硬化性組成物における、上記(F)成分を得るために用いる(B)成分、(C)成分については、上述の実施形態1の本発明のポジ型感光性組成物に用いる(B)成分、(C)成分と同様である。
(B)成分と(C)成分とをヒドロシリル化反応させて上記(F)成分を得る際には、必要に応じて、実施形態1の本ポジ型硬化性組成物における(D)成分を用いることができる。
実施形態2の本ポジ型硬化性組成物において、上記(F)成分は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
実施形態2の本ポジ型硬化性組成物に用いる(D)成分及び(E)成分は、それぞれ、実施形態1の本ポジ型硬化性組成物に用いる(D)成分及び(E)成分と同様である。
〔実施形態3〕
本発明の第3の実施形態に係るポジ型硬化性組成物は、
(G)フェノール性水酸基がトリアルキルシリル基で官能基保護されたビスフェノール構造を有する化合物、及び、
(E)光酸発生剤
を含有することを特徴とする。以下では、上記(G)フェノール性水酸基がトリアルキルシリル基で官能基保護されたビスフェノール構造を有する化合物を単に「(G)成分」と称する場合もある。
<1−7.(G)成分>
上記(G)成分は、フェノール性水酸基がトリアルキルシリル基で官能基保護されたビスフェノール構造を含有する化合物である。上記(G)成分は、(E)光酸発生剤から発生する酸により、トリアルキルシリル基が脱保護し、酸性基又は水酸基が発現することでアルカリ可溶性になるため、このような(G)成分を(E)成分と併せて用いることによりポジ型のパターンを形成することができる。
上記ビスフェノール構造としては、特に限定されず、実施形態1の本ポジ型硬化性組成物における(B)成分について説明したビスフェノール構造を用いることができる。
これらの中でも、アルカリ現像液への溶解性に優れ、コントラストに優れるパターンを得ることができるという観点からは、ビスフェノールA構造、ビスフェノールB構造、ビスフェノールC構造、ビスフェノールE構造、ビスフェノールF構造、ビスフェノールAF構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールAP構造、ビスフェノールPH構造が好ましい。また、特に入手性の観点からはビスフェノールA構造、ビスフェノールS構造が好ましく、光酸発生剤による脱保護のしやすさの観点からは、ビスフェノールS構造、ビスフェノールF構造が好ましい。
上記トリアルキルシリル基に含有されるアルキル基としては、特に限定されないが、(E)光酸発生剤による脱保護のしやすさの観点から、不飽和結合を持たない炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
フェノール性水酸基をトリアルキルシリル基で官能基保護する方法としては、第1の本発明のポジ型感光性組成物における(B)成分について説明した、シリル化剤を用いてトリアルキルシリル基により官能基を保護する方法を用いることができる。
上記(G)成分は、シロキサン構造を含有していてもよい。シロキサン構造を含有することで、透明性、耐熱性及び耐光性が高い硬化物(薄膜)を形成しやすくなる。
上記シロキサン構造としては、特に限定されず、例えば、鎖状シロキサン、環状シロキサン、網目状シロキサン、籠状シロキサン等が挙げられる。
上記(G)成分は、ポストベイクにより硬化可能な反応性官能基を含有していてもよい。ポストベイクで硬化可能な反応性官能基を含有することにより、より強靭で絶縁性が高い硬化物(薄膜)を形成しやすくなる。
上記ポストベイクにより硬化可能な反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、アクリル基、オキセタニル基、アルケニル基、SiH基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの中では、透明性、耐熱性及び耐光性が高い硬化物(薄膜)を形成することができるという観点から、SiH基及び/又はアルケニル基を含有することが好ましい。
上記(G)成分において、フェノール性水酸基がトリアルキルシリル基で官能基保護されたビスフェノール構造の占める量は、上記(G)成分1gあたり0.01〜10mmolであることが好ましく、0.05〜8mmolであることがより好ましく、0.1〜5mmolの範囲であることがさらに好ましい。この範囲の量を含有することで、アルカリ現像性が良好で、かつ、強靭な硬化物(薄膜)を得ることができる。
実施形態3の本ポジ型硬化性組成物において、上記(G)成分は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
実施形態3の本ポジ型硬化性組成物に用いる(E)成分は、実施形態1の本ポジ型硬化性組成物に用いる(E)成分と同様である。
実施形態3の本ポジ型硬化性組成物は、ヒドロシリル化触媒を含んでいても良く、特に、ポストベイク時にヒドロシリル硬化させる場合には、ヒドロシリル化触媒を含んでいることが好ましい。
上記ヒドロシリル化触媒は、実施形態1の本ポジ型硬化性組成物に用いる(D)成分と同様である。
〔実施形態4〕
本発明の第4の実施形態に係るポジ型硬化性組成物は、
(H)下記式(X1)又は(X2)で表される構造を有する化合物、
(I)酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造を有する化合物、及び、
(E)光酸発生剤
を含有することを特徴とする。
以下では、上記(H)下記式(X1)又は(X2)で表される構造を有する化合物を単に「(H)成分」と称し、上記(I)酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造を有する化合物を単に「(I)成分」と称する場合もある。
<1−8.(H)成分>
上記(H)成分は、上記式(X1)又は(X2)で表される構造を有する化合物である。
上記(H)としては、特に限定されないが、例えば、ジアリルイソシアヌル酸、モノアリルイソシアヌル酸等を挙げることができる。
実施形態4の本ポジ型硬化性組成物において、上記(H)成分は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
<1−9.(I)成分>
上記(I)成分は、酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造を有する化合物である。上記(I)成分は、(E)光酸発生剤から発生する酸により分解し酸性基又は水酸基が発現することで現像液に可溶となるため、このような(I)成分を(E)成分と併せて用いることによりポジ型のパターンを形成することができる。
上記(I)成分における、酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造については、実施形態1の本ポジ型硬化性組成物で用いる(B)成分における、酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造と同様である。
実施形態4の本ポジ型硬化性組成物において、上記(I)成分は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
実施形態4の本ポジ型硬化性組成物に用いる(E)成分は、第1の本発明のポジ型感光性組成物に用いる(E)成分と同様である。
実施形態4の本ポジ型硬化性組成物は、ヒドロシリル化触媒を含んでいても良い。
上記ヒドロシリル化触媒は、実施形態1の本ポジ型硬化性組成物に用いる(D)成分と同様である。
〔任意成分〕
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物は、それぞれ、上述した必須成分に加えて、任意に他の成分を含有していても良い。
上記他の成分としては、例えば、(J)アルカリ可溶性成分、(K)アルケニル基を含有し、酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造を有しない化合物、(L)増感剤、ヒドロシリル化反応抑制剤、溶剤等が挙げられる。以下、各成分について説明する。
<1−10.(J)成分>
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物は、さらに(J)アルカリ可溶性成分を含有することが、ポジ型感光性組成物のアルカリ現像液への溶解性が向上し、高感度なポジ型感光性組成物となることから好ましい。
上記(J)成分としては、例えば、下記式(X1)又は(X2)で表される構造を有する化合物、フェノール基を有するフェノール樹脂や、カルボキシル基を有するアクリル樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂等が挙げられる。
これらの(J)成分は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
なお、実施形態4の本ポジ型硬化性組成物は、下記式(X1)又は(X2)で表される構造を有する化合物を必須成分として含有するため、実施形態4の本ポジ型硬化性組成物が上記(J)アルカリ可溶性成分を含有する場合には、下記式(X1)又は(X2)で表される構造を有する化合物以外のアルカリ可溶性成分を含有する。
上記(J)成分は、ベイク後に絶縁性、耐熱性、耐溶剤性に優れた薄膜を得ることができるという観点より、下記式(X1)又は(X2)で表される構造を有する化合物であることが好ましく、下記式(X1)又は(X2)で表される構造を有するポリシロキサン化合物であることがより好ましい。
上記式(X1)又は(X2)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を得る方法としては、簡便な方法として、例えば、上記(X1)又は(X2)で表される構造及びアルケニル基を有する化合物と、SiH基を有するシロキサン化合物とを一部ヒドロシリル化反応させる方法等が挙げられる。あらかじめこのような方法で得た(J)成分を、実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物に用いることができる。
上記式(X1)又は(X2)で表される構造及びアルケニル基を有する化合物としては、例えば、ジアリルイソシアヌル酸、モノアリルイソシアヌル酸等を挙げることができる。上記式(X1)又は(X2)で表される構造及びアルケニル基を有する化合物は、上記(J)成分を得る際のヒドロシリル化反応に用いることもできる。
上記SiH基を有するシロキサン化合物としては、例えば、上記(B)成分の説明で、SiH基を一分子中に2つ以上有する化合物として説明した化合物等が挙げられる。
上記(J)成分が、SiH基又はアルケニル基を含有する化合物である場合において、当該(J)成分を第1の本発明のポジ型感光性組成物に含有させる場合には、実施形態1の本ポジ型硬化性組成物の(C)成分として用いることができる。また、上記(J)成分がSiH基又はアルケニル基に加えて、さらに酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造を有している場合において、当該(J)成分を実施形態1の本ポジ型硬化性組成物に含有させる場合には、実施形態1の本ポジ型硬化性組成物の(B)成分として用いることができる。
また、上記(J)成分が、フェノール性水酸基がトリアルキルシリル基で官能基保護されたビスフェノール構造を含有する場合、当該(J)成分を第3の本発明のポジ型感光性組成物に含有させる場合には、実施形態3の本ポジ型硬化性組成物の(G)成分として用いることができる。
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物が上記(J)成分を含有する場合、上記(J)成分の含有量の上限は、実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物から溶剤を除いた成分100重量部に対し、80重量部であることが好ましく、75重量部であることがより好ましい。一方、含有量の下限は、15重量部であることが好ましく、20重量部であることがより好ましく、50重量部より大きいことがさらに好ましい。上記(J)成分の含有量をこの範囲とすることで、アルカリ現像性に優れたポジ型硬化性組成物を得ることができる。
<1−11.(K)成分>
実施形態2〜4の本ポジ型硬化性組成物は、さらに(K)アルケニル基を含有し、酸存在下で分解し酸性基又は水酸基が発現する構造を有しない化合物を含有することが好ましい。上記(K)成分を用いることにより、実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物のパターニング性、及び、硬化物(薄膜)の絶縁性、耐熱性を向上させることができるためである。
上記(K)成分としては、特に限定されないが、例えば、第1の本発明のポジ型感光性組成物における(C)成分について説明した、アルケニル基を有する(C)成分として用いることのできる化合物と同様の化合物等を用いることができる。
これらの(K)成分は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
実施形態2の本ポジ型硬化性組成物が上記(K)成分を含有する場合、上記(K)成分の含有量は、上記(F)成分100重量部に対し、3〜40重量部であることが好ましく、5〜30重量部であることがより好ましい。
実施形態3の本ポジ型硬化性組成物が上記(K)成分を含有する場合、上記(K)成分の含有量は、上記(G)成分100重量部に対し、3〜40重量部であることが好ましく、5〜30重量部であることがより好ましい。
実施形態4の本ポジ型硬化性組成物が上記(K)成分を含有する場合、上記(K)成分の含有量は、上記(H)成分と上記(I)成分との合計100重量部に対し、3〜40重量部であることが好ましく、5〜30重量部であることがより好ましい。
<1−12.(L)成分>
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物は、光に対する感度、特に、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)といった短波長の光に対する感度が向上することから、(L)増感剤を添加することが好ましい。上記(L)成分を上記(E)成分と併用することにより、硬化性の調整を行うことができる。
上記(L)成分としては、例えば、アントラセン系化合物、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
上記(L)成分は、光増感効果の観点からは、アントラセン系化合物であることが好ましい。
上記アントラセン系化合物としては、例えば、アントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、1,4−ジメトキシアントラセン、9−メチルアントラセン、2−エチルアントラセン、2−tert−ブチルアントラセン、2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン、9,10−ジフェニル−2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン等が挙げられる。
これらの中で、特に入手しやすい観点からは、アントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセンが好ましい。
また、硬化物の透明性に優れる観点からはアントラセンが好ましく、他の成分との相溶性に優れる観点からは9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセンが好ましい。
上記(L)成分は、ポジ型感光性組成物の貯蔵安定性の観点からは、チオキサントン系化合物であることが好ましい。
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルジオキサントン、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。これらの中で、入手性の観点からは、2,5−ジエチルジオキサントン、イソプロピルチオキサントンが好ましい。
これらの(L)成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
実施形態1の本ポジ型硬化性組成物が(L)成分を含有する場合、その含有量は、上記(B)成分100重量部あたり、3〜50重量部であることが好ましく、5〜40重量部であることがより好ましく、7〜35重量部であることがさらに好ましい。
実施形態2の本ポジ型硬化性組成物が(L)成分を含有する場合、その含有量は、上記(F)成分100重量部あたり、3〜50重量部であることが好ましく、5〜40重量部であることがより好ましく、7〜35重量部であることがさらに好ましい。
実施形態3の本ポジ型硬化性組成物が(L)成分を含有する場合、その含有量は、上記(G)成分100重量部あたり、3〜50重量部であることが好ましく、5〜40重量部であることがより好ましく、7〜35重量部であることがさらに好ましい。
実施形態4の本ポジ型硬化性組成物が(L)成分を含有する場合、その含有量は、上記(H)成分と(I)成分との合計100重量部あたり、3〜50重量部であることが好ましく、5〜40重量部であることがより好ましく、7〜35重量部であることがさらに好ましい。
<1−13.ヒドロシリル化反応抑制剤>
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物においては、貯蔵安定性確保のため、ヒドロシリル化反応抑制剤を使用してもよい。
上記ヒドロシリル化反応抑制剤としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
上記脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、例えば、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、ジメチルマレート等のマレイン酸エステル類等が挙げられる。
上記有機リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン等のトリオルガノホスフィン類、ジオルガノホスフィン類、オルガノホスフォン類、トリオルガノホスファイト類等が挙げられる。
上記有機イオウ化合物としては、例えば、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が挙げられる。
上記スズ系化合物としては、例えば、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が挙げられる。
これらのヒドロシリル化反応抑制剤は、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
これらのヒドロシリル化反応抑制剤のうち、遅延活性が良好で原料入手が容易という観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、トリフェニルホスフィンが好ましい。
<1−14.溶剤>
上述の実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤を含有することにより、ポジ型感光性組成物を硬化させて薄膜を得る際、ポジ型感光性組成物の粘度を下げることができ、その結果、均一に塗布することが可能となるためである。
上記溶剤としては、特に限定されないが、例えば、エチルシクロヘキサン、トリメチルペンタン等の炭化水素系溶剤、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、イソ酪酸イソブチル、酪酸イソブチル等のエステル系溶剤、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤、トリフルオロトルエン等のハロゲン系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独で使用しても良いし、2種類以上の混合溶剤として用いても良い。
上記溶剤は、特に均一な膜が形成しやすい観点からは、1,4−ジオキサン、イソ酪酸イソブチル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルであることが好ましい。
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物が溶剤を含有する場合、その含有量は特に限定されず適宜設定できるが、溶剤を除くポジ型感光性組成物の総量100重量部に対し、下限が10重量部であることが好ましく、30重量部であることがより好ましく、50重量部であることがさらに好ましい。一方、上記含有量の上限は、800重量部であることが好ましく、400重量部であることがより好ましく、300重量部であることがさらに好ましい。
上記溶剤の含有量が10重量部未満であると、溶剤による低粘度化等の効果が得られないことがあり、一方、含有量が800重量部を超えると、硬化物とした際に溶剤が残留して熱クラック等の原因となることがあり、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物の調製方法は、特に限定されず、種々の方法を用いることができる。各種成分を硬化直前に混合調製しても良いし、全成分を予め混合調製した一液の状態で低温貯蔵しておいても良い。
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物は、後述するように、塗布プロセス(コーティング)により絶縁膜を形成することができる材料であり、パターン電極取り出し性に優れるとともに、絶縁信頼性等に優れることから、トランジスタに要求される特性を満足する材料として薄膜トランジスタに適用される。
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物は、後述する薄膜トランジスタにおいて、ゲート絶縁膜やパッシベーション膜等の絶縁膜の材料として用いられる。
〔2.薄膜トランジスタ〕
本発明の薄膜トランジスタは、基材上に、実施形態1〜4のいずれかの本ポジ型硬化性組成物が硬化した硬化膜を備えることを特徴とする薄膜トランジスタである。本薄膜トランジスタにおいて、実施形態1〜4のいずれかの本ポジ型硬化性組成物は、ゲート絶縁膜又はパッシベーション膜として用いられる。
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物を硬化して薄膜を得る方法としては、例えば、実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物を各種基材にコーティングした後、所望の形状のマスクを用いて実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物に露光し、露光部を溶解・除去することによりパターン状に形成された薄膜を得る方法等を用いることができる。
<2−1.フォトリソグラフィーについて>
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物を各種基材にコーティングする方法としては、均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般によく使用されるコーティング方法を使用することができ、例えば、スピンコーティング、スリットコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、スプレーコーティング、スピンキャスティング、フローコーティング、スクリーン印刷、インクジェット、ドロップキャスティング等の方法を用いることができる。
また、各種基材の状態により、適宜、溶剤による粘度調整、界面活性剤による表面張力調整等を行っても良い。
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物を各種基材にコーティングした後、溶剤除去の目的で、露光前にプリベークや真空脱揮プロセスを行っても良い。但し、熱を加えることで現像性が低下する等の問題が発生するおそれがあることから、プリベークの温度は、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
なお、真空脱揮プロセスとプリベークとは同時に行っても良い。
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物に露光するための光源としては、使用する(D)光酸発生剤や(K)増感剤の吸収波長を発光する光源を使用すればよく、通常200〜450nmの範囲の波長を含む光源、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、発光ダイオード等を使用できる。
このとき、露光量としては、特に限定されないが、1〜5000mJ/cm2であることが好ましく、1〜1000mJ/cm2であることがより好ましい。
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物に露光した後、加熱を行ってもよい。加熱を行うことにより、露光していない部分が硬化し、コントラストが明確となる。
加熱温度としては、50℃以上120℃以下であることが好ましく、コントラストがより明確となることから、60℃以上100℃以下であることがより好ましい。
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物に露光した後、露光部を溶解・除去しパターンを形成する方法としては、特に限定されず、一般的に行われる浸漬法やスプレー法等の現像方法を用いることができる。
このとき、現像液としては、一般に使用するものであれば特に限定されず使用することができ、具体例としては、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液、コリン水溶液等の有機アルカリ水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸リチウム水溶液等の無機アルカリ水溶液、これらの水溶液に溶解速度等の調整のためにアルコールや界面活性剤等を添加したもの、各種有機溶剤等を挙げることができる。
<2−2.ポストベイクについて>
また、露光部を溶解・除去した後、薄膜の強度、信頼性向上のため、ポストベイクを行っても良い。
ポストベイクの温度としては、100〜300℃であることが好ましく、150〜250℃であることがより好ましい。
なお、基材としてプラスチック基板を用いる場合には、できるだけ低い温度でポストベイクすることが好ましいが、実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物は150℃〜200℃でポストベイクが可能であるため、このような場合であっても基板に悪影響を与えることなくポストベイクを行うことができる。
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物を硬化して薄膜として得る際、露光部を溶解・除去した後に加熱してポストベイクを行うことにより、硬化反応を進行させることができ、絶縁性の高い薄膜を得ることができる。
上記硬化反応としては、例えば、ゾルゲル反応、ヒドロシリル化反応等が挙げられ、より低温で特に絶縁性に優れる薄膜を得られる観点からは、上記硬化反応はヒドロシリル化反応であることが好ましい。上記ヒドロシリル化反応は、実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物中に、アルケニル基を含有する化合物、SiH基を含有する化合物及びヒドロシリル化触媒が存在することにより進行する。
以上の方法により、実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物からなる、パターン状に形成された薄膜を得ることができる。
<2−3.絶縁性について>
上述の方法により得られた薄膜は、優れた絶縁膜として機能する。
LSI、TFT、タッチパネル等に用いる絶縁膜には、リーク電流が小さい事が要求される。上記薄膜の膜厚が1ミクロンである場合、リーク電流は、10nA/cm2以下であることが好ましく、5nA/cm2以下であることがより好ましい。
<2−4.薄膜トランジスタについて>
本明細書において、薄膜トランジスタとは、薄膜型の電界効果トランジスタ(FET)をいう。即ち、ソース、ドレイン、ゲート電極から構成される3端子型、及び、ソース、ドレイン、ゲート電極とバックゲートとから構成される4端子型のトランジスタであって、ゲート電極に電圧印加することで発生するチャネルの電界によりソース/ドレイン間の電流を制御する薄膜型のトランジスタを示す。
実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物を硬化して得られた薄膜は、本薄膜トランジスタにおいて、半導体層とゲート電極とを隔てるゲート絶縁膜、又は、半導体層を保護し、ソース/ドレイン電極と画素電極とを絶縁するパッシベーション膜として用いることができる。
薄膜トランジスタにおけるゲート絶縁膜とは、ゲート電極と半導体層との間に形成される絶縁膜であり、微小な電流リークでも動作不良に影響することから極めて高い絶縁信頼性が必要となる部材である。またパッシベーション膜は、半導体層を保護する役目を担う絶縁膜であり、ゲート絶縁膜と同様、高い絶縁信頼性が必要となる部材である。
本薄膜トランジスタの構造としては、例えば、国際公開2014/007231号公報に記載されたものが挙げられるが、特に限定されず、薄膜トランジスタを用いる表示デバイス構造に応じて様々な組み合わせ、配置で設計すれば良い。例えば、ゲート電極の配置に関してはボトムゲート型、トップゲート型等とすることができ、また、ソース/ドレイン電極の配置に関してはボトムコンタクト型、トップコンタクト型等とすることができる。
上記基板(ゲート電極)としては、特に限定されず、当該技術分野において通常用いられるものを用いることができる。
また、半導体層の材料としては、例えば、ペンタセン系化合物、オリゴチオフェン系化合物、フタロシアニン系化合物等の有機半導体化合物、Si系化合物、ZnO系化合物、IGZO系化合物等の無機半導体化合物等が挙げられる。これらの中で、低温で半導体層を形成できるため、全て低温プロセス化できるという観点からは、有機半導体化合物が好ましい。また、半導体層形成を塗布プロセス化することにより製膜のタクトタイム短縮等が見込めるという観点からは、Si系化合物やZnO系化合物等の無機半導体化合物が好ましい。
また、半導体層の厚みは、半導体層の材料が無機半導体化合物であるか有機半導体化合物であるかに関わらず、10〜500nmであることが好ましい。
上記ソース/ドレイン電極の材料としては、特に限定されないが、簡便に入手できるという点からは、例えば、Au、Al、Pt、Mo、Ti、Cr、Ni、Cu、ITO、PEDOT/PSS等の導電性高分子、導電ペースト、メタルインク等が挙げられる。
これらの中でも、抵抗が小さく、高い導電性を得られることからは、Al、Mo、Ti、Cr、Ni、Cuが好ましく、透明性が必要な箇所に適用できる観点からは、ITO、PEDOT/PSSが好ましく、電極表面が酸化されにくく安定性に優れるという観点からは、Au、Ptが好ましく、印刷プロセスにより電極を形成できることからは、PEDOT/PSS等の導電性高分子、導電ペースト、メタルインクが好ましい。
上記ゲート絶縁膜、又は、上記パッシベーション膜を作製する方法としては、上述した実施形態1〜4の本ポジ型硬化性組成物を硬化して薄膜を得る方法を採用することができる。
本薄膜トランジスタは、アクティブマトリクス型のフラットパネルディスプレイにおける画素トランジスタとして用いることができる。ディスプレイを安定的に駆動させるための画素トランジスタの特性としては、閾値電圧、キャリア移動度、ON/OFF電流比が重要である。
閾値電圧とは、トランジスタがON状態となり半導体層に電流が流れ始める電圧値を示し、トランジスタの電流伝達特性においてソース/ドレイン間に流れる電流をId、ゲート印加電圧をVgとした場合の(Id)1/2とVgとの関係を示すグラフにおいて、線形部分の延長線とVg軸との交点より算出される。
キャリア移動度は、TFTデバイスの良し悪しを示す重要な指標であり、値が大きいほどTFT素子として優れている事を示す。上記キャリア移動度は、0.5以上であることが好ましい。
ON/OFF電流比とは、トランジスタの電流伝達特性においてソース/ドレイン間に流れる電流Idの最大電流値と最小電流値との比(Ion/Ioff)で表され、大きければ大きいほどスイッチとしての機能に優れることを示す。上記ON/OFF電流比は、駆動に大電流を要する方式の駆動も可能となることから、104以上であることが好ましい。
トランジスタを実際のデバイスに用いる場合、上記特性をひとつでも満足しないものは致命的であり、全ての特性を満足する事が必要となる。
また、ON/OFF電流比及びキャリア移動度が高い素子はヒステリシスが大きくなりやすいことから、ON/OFF電流比及びキャリア移動度が高く、かつ、低ヒステリシスであるとの特性を両立するトランジスタであることが好ましい。
ソース/ドレイン電極Vd間、及び、ゲート電極に印加する電圧Vgは、特に限定されず、使用する半導体材料及び駆動方式に応じて適宜設定することができるが、トランジスタとしての消費電力が抑制できるという観点より、−50〜50Vであることが好ましく、−20〜20Vであることがより好ましい。
〔3.用途〕
本ポジ型硬化性組成物およびその硬化物は、上述の薄膜トランジスタ以外にも、種々の用途に用いることができる。従来のアクリル樹脂およびエポキシ樹脂接着剤が使用される各種用途に応用することが可能である。以下、薄膜トランジスタを含む本ポジ型硬化性組成物およびその硬化物の用途について例示する。
本ポジ型硬化性組成物およびその硬化物の用途としては、例えば、透明材料、光学材料、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、光学部品用接着剤、光導波路結合用光学接着剤、光導波路周辺部材固定用接着剤、DVD貼り合せ用接着剤、粘着剤、ダイシングテープ、電子材料、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、高電圧絶縁材料、層間絶縁膜、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、絶縁用パッキング、絶縁被覆材、接着剤、高耐熱性接着剤、高放熱性接着剤、光学接着剤、LED素子の接着剤、各種基板の接着剤、ヒートシンクの接着剤、塗料、UV粉体塗料、インク、着色インク、UVインクジェット用インク、コーティング材料(ハードコート、シート、フィルム、剥離紙用コート、光ディスク用コート、光ファイバ用コート等を含む)、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、シーリング材料、ポッティング材料、封止材料、発光ダイオード用封止材料、光半導体封止材料、液晶シール剤、表示デバイス用シール剤、電気材料用封止材料、各種太陽電池の封止材料、高耐熱シール材、レジスト材料、液状レジスト材料、着色レジスト、ドライフィルムレジスト材料、ソルダーレジスト材料、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料、光造形、太陽電池用材料、燃料電池用材料、表示材料、記録材料、防振材料、防水材料、防湿材料、熱収縮ゴムチューブ、オーリング、複写機用感光ドラム、電池用固体電解質、ガス分離膜に応用できる。また、コンクリート保護材、ライニング、土壌注入剤、蓄冷熱材、滅菌処理装置用シール材、コンタクトレンズ、酸素透過膜の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
中でも、本発明の硬化性組成物は、アルカリ現像性透明レジストとして使用できる材料であり、特にFPD用材料として好適な材料である。より具体的には、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料などが挙げられる。
〔4.その他〕
上記した以外にも、本発明は、以下の態様を含み得る。
下記成分(A)〜(E)を含有することを特徴とする、ポジ型硬化性組成物:
<1>(A)5mmHgにおける沸点が200℃以上であって、上記式(1)で表されるエステル化合物を(B)成分と(C)成分との合計100重量部に対して0.01〜5重量部、
(B)酸存在下で分解し酸性基が発現する構造を有し、一分子中に2つ以上のアルケニル基、または、SiH基を含有する化合物、
(C)一分子中に2つ以上のSiH基、または、アルケニル基を有する化合物、
(D)ヒドロシリル化触媒、および
(E)光酸発生剤。
<2>前記(B)の化合物が、酸存在下で分解して酸性基が発現する構造が官能基保護されたビスフェノール構造であることを特徴とする、<1>に記載のポジ型硬化性組成物。
<3>前記(B)の化合物の保護官能基が、トリアルキルシリル基であることを特徴とする、<2>に記載のポジ型硬化性組成物。
<4>前記(B)の化合物のビスフェノール構造が、ビスフェノールSまたはビスフェノールFであることを特徴とする、<2>または<3>に記載のポジ型硬化性組成物。
<5>前記(B)の官能基保護されたビスフェノール構造を有する化合物が、環状シロキサン構造を有することを特徴とする、<2>〜<4>のいずれかに記載のポジ型硬化性組成物。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
(タック評価)
実施例および比較例で示した樹脂組成物を用いて、タック評価サンプルを作製した。具体的には、ガラス基板に感光性樹脂組成物をスピンコーティングしたものを、100℃に加熱したホットプレート上で2分間加熱し、露光装置(高圧水銀ランプ、手動露光機、大日本科研社製)を用い、5μmのラインアンドスペースパターンが刻まれたマスクを通して、それぞれに最適な積算光量で露光し(ソフトコンタクト露光)、露光後は直ぐにマスクを剥した。
マスクの剥がれ方について、下記基準に従い評価した。
<評価基準>
○:マスクを垂直に持ち上げたときに、マスクが樹脂膜から抵抗なく剥がれる
×:マスクを垂直に持ち上げたときに、マスクが樹脂膜から剥がれない
(パターニング性評価)
実施例および比較例で示した樹脂組成物を用いて、パターニング評価サンプルを作製した。具体的には、ガラス基板に樹脂組成物をスピンコーティングしたものを、100℃に加熱したホットプレート上で2分間加熱し、露光装置(高圧水銀ランプ、手動露光機、大日本科研社製)を用い、5μmのラインアンドスペースパターンが刻まれたマスクを通して、それぞれに最適な積算光量で露光し(ソフトコンタクト露光)、露光後1分間放置した後、アルカリ性現像液(TMAH2.38%水溶液)に80秒間浸漬後、30秒間水洗して、圧縮空気または圧縮窒素で表面の水分を除去してパターンを形成した。
その後、230℃に加熱したホットプレート上で30分間加熱して評価サンプルを得た。得られた評価サンプルを、3D測定レーザー顕微鏡(LEXT OLS4000、オリンパス社製)と触針式表面形状測定器(Dektak 150、Veeco社製)を用いてパターン形状を観測し、5μmラインアンドスペースの状態を下記基準に従い評価した。
<評価基準>
○:5μmラインアンドスペースに残膜無し
△:5μmラインアンドスペースにおいて、(A)成分無添加時と比較して残膜減少
×:5μmラインアンドスペースに残膜有り、および/またはパターン形状に膜減り有り
(官能基保護したビスフェノールS化合物の合成)
100mLナスフラスコにジオキサン20g、ジアリルビスフェノールS5gを入れ、室温で攪拌した。均一溶液となったところにヘキサメチルジシラザン2.5gを添加し、2時間で反応を終了させた。溶媒のジオキサンと反応残渣を減圧留去した後、トルエンに置換し、トリメチルシリル基で保護されたジアリルビスフェノールSの50%トルエン液を13.0g(反応物1)得た。
(合成実施例)
100mL四つ口フラスコにトルエン13.4g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン5.37gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温100℃で加熱、攪拌した。上記方法で合成した反応物1(50%トルエン液)12.4g、1,3,5,7−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン1.87g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.53mg、トルエン2.6gの混合液を滴下した。滴下後1H−NMRでアリル基由来のピーク消失を確認したのち、1−エチニルシクロヘキサノール14.6mgを添加、均一化し、トルエンを減圧留去した後、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセタートに置換し、無色透明の50wt%ポリシロキサン化合物溶液「反応物A」を得た。1H−NMRの測定により、標準物質をジブロモエタンとした時の当量換算でSiH基3.0mmol/gを有するポリシロキサン系化合物であることを確認した。
(実施例1)
合成実施例で得た反応物Aに対し、表1に示される配合組成で硬化性組成物を作製し、後述の評価を行った。その結果を表1に示す。硬化性組成物の具体的な作製方法は、まずPGMEA、BBI−103および9,10−ジブトキシアントラセンを均一に溶解し、次に反応物A、トリアリルイソシアヌレートおよびエステル化合物(DOA)を均一に混合することにより作製した。
(実施例2)
DOAの組成比を変更した以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を製造した。
(実施例3)
DOAの組成比を変更した以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を製造した。
(実施例4)
DOAの組成比を変更した以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を製造した。
(実施例5)
DOAの組成比を変更した以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を製造した。
(実施例6)
DOAの代わりにDIDAを使用し、かつ、その組成比を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を製造した。
(比較例1)
DOAを使用しない(すなわち、(A)成分を含まない)こと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を製造した。
(比較例2)
DOAの組成比を変更した以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を製造した。
(比較例3)
DOAの代わりにDIBAを使用し、かつ、その組成比を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を製造した。
(結果)
実施例1〜6および比較例1〜3で得られた樹脂組成物について、タック評価およびパターニング性評価を行った結果を表1に示す。
表1に示すように、5mmHgにおける沸点が200℃以上のエステル化合物を0.01〜5重量部の範囲で含有する樹脂組成物は、タックおよびパターニング性の両方が高評価であることが確認された。したがって、5mmHgにおける沸点が200℃以上のエステル化合物を0.01〜5重量部の範囲で添加することにより、硬化時にタックおよびパターニング性の両方が優れた樹脂組成物が得られることが見出された。
なお、比較例1〜3の評価に関しては、以下のとおりである。
比較例1では、エステル化合物を添加していないため、パターニング評価で残膜が生じている。
また、比較例2では、DOAの添加量が多いため、タックがあり、パターン形状に膜減りが生じている。
比較例3では、エステル化合物の5mmHgにおける沸点が200℃未満のため、パターニング評価で残膜が生じている。