JP2017090183A - 全自動鉱物分析装置と顕微レーザーラマン分光装置とを用いた、鉱石中に存在する鉱物粒子の同定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
前記鉱石を樹脂包埋した鉱石試料を作製して研磨し、これを鉱物分析装置に装填する。そして、研磨面の反射電子像を測定し判別できた鉱物粒子に対し、エネルギー分散X線スペクトルを測定する。前記鉱物粒子毎に測定されたエネルギー分散X線スペクトルを鉱物リストと照合し、未同定鉱物粒子を判別し、さらに所定元素含有未同定鉱物粒子を特定する。前記研磨された鉱石試料を顕微レーザーラマン分光装置に装填し、前記所定元素含有未同定鉱物粒子のラマンスペクトルを測定し、得られたラマンスペクトルを、スペクトルデータと比較し、前記所定元素含有未同定鉱物粒子を同定する。
【選択図】図1
Description
例えば工程管理上、上述した収率の悪化が生じた場合、その原因と改善策を検討するための様々な分析が行われる。当該分析の一つが、上述した尾鉱や浸出残渣といった副産物である鉱石中に存在する、回収対象の金属元素を含む鉱物の同定である。具体的には、当該回収対象の金属元素を含む鉱物が、既に同定された回収対象の金属元素を含む鉱物(本発明において「所定元素含有鉱物」と記載する場合がある。)のいずれの鉱物であるかを、同定するものである。
MLAは、上述した光学顕微鏡を用いた方法と同様な原理で、鉱物粒子同定を行う分析装置であって、エネルギー分散型X線分析器(本発明において「EDS」と記載する場合がある。)が2基備えられた走査電子顕微鏡(本発明において「SEM」と記載する場合がある。)がプラットフォームとなっている。そして、当該SEM・EDSを全自動制御し、画像処理やスペクトルマッチングを行い、鉱物粒子の同定操作を実施する制御PCを備えた分析装置である。
MLAでは、鉱物粒子と樹脂とが混合して固結した鉱石試料へ研磨を施し、得られた研磨面に対して測定を行う。MLAの測定では、まず研磨面へ電子線を照射して反射電子像(本発明において「BSE像」と記載する場合がある。)を取得し、当該研磨面に現れた鉱物粒子の位置、大きさ、研磨面形状のデータを取得する。次に、当該鉱物粒子のEDSスペクトルデータを取得する。そして、研磨面に現れた各鉱物粒子に対して、これらのデータ取得を自動測定で順番に行うものである。
ところが本発明者らの研究によると、鉱石中には、微量の所定元素含有鉱物粒子と所定元素含有未同定鉱物粒子とが混在している。そして、当該混在している所定元素含有鉱物粒子と所定元素含有未同定鉱物粒子とにおいて、その構成元素と含有量とが互いに重複している場合や、構成元素の含有量が互いに近似している場合がある。このような場合、MLAを用いた鉱石の同定方法を適用しても、当該所定元素含有未同定鉱物粒子と所定元素含有鉱物粒子とを互いに判別し、さらに、判別された所定元素含有未同定鉱物粒子を同定することは困難である、という新たな課題が見出された。
鉱石中に存在する鉱物粒子を同定する方法であって、
前記鉱石を樹脂包埋した鉱石試料を作製し、当該鉱石試料を研磨する第1の工程と、
前記研磨された鉱石試料を鉱物分析装置に装填し、前記鉱物分析装置により前記研磨された鉱石試料の研磨面における反射電子像を測定し、得られた反射電子像から前記研磨面における鉱物粒子の研磨面を判別する第2の工程と、
前記鉱物分析装置により判別された鉱物粒子の研磨面毎に、エネルギー分散X線スペクトルを測定する第3の工程と、
前記測定されたエネルギー分散X線スペクトルを、前記鉱物分析装置に予め内蔵された鉱物リストのエネルギー分散X線スペクトルと照合し、前記鉱物リストと一致しないスペクトルを有する鉱物粒子を抽出して未同定鉱物粒子とし、さらに前記未同定鉱物粒子から得られたエネルギー分散X線スペクトルを用いて、所定の元素を含有する所定元素含有未同定鉱物粒子を抽出する第4の工程と、
前記研磨された鉱石試料を前記鉱物分析装置より取出して、顕微レーザーラマン分光装置に装填し、前記所定元素含有未同定鉱物粒子のラマンスペクトルを測定する第5の工程と、
前記得られたラマンスペクトルを、前記顕微RLに内蔵された鉱物リストのラマンスペクトルデータと照合し、前記所定元素含有未同定鉱物粒子を同定する第6の工程とを有し、
前記第1から第6の工程を、当該順に実施することを特徴とする鉱石中に存在する鉱物粒子の同定方法である。
第2の発明は、
前記第4の工程において、エネルギー分散X線スペクトルを用いて、所定の元素を含有する所定元素含有未同定鉱物粒子を判別する際、K線、L線、M線から選択されるいずれかのX線スペクトルに対応するピークを用いて、所定元素の含有の有無を判別することを特徴とする鉱石中に存在する鉱物粒子の同定方法である。
第3の発明は、
前記第4工程における鉱物分析装置に予め内蔵された、鉱物リストのエネルギー分散X線スペクトルは、前記鉱物分析装置の使用者が予め入力したものであり、
前記第6工程において、前記顕微レーザーラマンに内蔵された、鉱物リストのラマンスペクトルデータは、当該顕微レーザーラマンの製造者が予め入力したものであることを特徴とする鉱石中に存在する鉱物粒子の同定方法である。
鉱石が樹脂の中に埋め込まれた鉱石試料を調製する。
この調製の際、樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化樹脂等、多様なものが使用可能であるが、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。これは、樹脂として熱可塑性樹脂や光硬化樹脂を用いた場合、鉱物の粒子が液体状態の樹脂中に分散する工程を経るからである。鉱物粒子が液体状態の樹脂中に分散すると、当該鉱物粒子の比重差により、固化した鉱石試料の位置によって、鉱物粒子の比重差による分布が生じることが考えられる。こうなると、後工程にて鉱石試料を研磨する際、研磨位置によって鉱物粒子の種類が異なることになり、正確な分析結果を得ることが困難になると考えられるからである。
当該観点から、鉱物の粒子が液体状態の樹脂中に分散する工程を経ることがない、熱硬化性樹脂、例えば、ベークライト樹脂を用いことが好ましい。
上述した研磨面を有する鉱石試料をMLAに装填して研磨面へ電子線を照射し、当該研磨面のBSE像を測定する。そして、得られた反射電子像から当該研磨面における鉱物粒子の研磨面と樹脂の研磨面とを判別し、研磨面に現れた鉱物粒子の位置、大きさと研磨面形状の情報を取得する。次に、当該判別された鉱物粒子の研磨面毎に、電子線を照射しEDSを測定する。この際、K線、L線、M線から選択されるいずれかのX線スペクトルに対応するピークを用いることが出来る。
次に、当該未同定鉱物粒子から得られたEDSを用いて、予め定めてある所定の元素を含有する未同定鉱物粒子を、所定元素含有未同定鉱物粒子として抽出する。当該抽出操作には、MLAが有しているフィルタリング機能を適用するのが便宜である。
MLA分析を終了した鉱石試料を、今度は、顕微レーザーラマンに設置する。
次に、顕微レーザーラマンにより観察される鉱石試料の研磨面の画像と、上述したMLAで得た研磨面のBSE像の写真データ、電子化データ等とを照合する。そして、当該写真データ、電子化データ等において所定元素含有未同定鉱物粒子へ付与された目印に従って、当該所定元素含有未同定鉱物粒子のラマンスペクトルを測定する。
しかし本発明においては上述の構成をとることで、測定対象を抽出され目印を付与された所定元素含有未同定鉱物粒子とし、顕微レーザーラマンを用いてラマンスペクトルを測定するため、当該所定元素含有未同定鉱物粒子の同定にとって有益なデータを、簡便に取得することが可能となった。
得られた前記目印を付与された所定元素含有未同定鉱物粒子のラマンスペクトルへ、前記MLAで得られた当該粒子の構成元素情報を加えて、顕微レーザーラマンに内蔵された、鉱物リストのラマンスペクトルとの間でパターンマッチングする。この結果、鉱石試料中に存在し同定が困難だった所定元素含有未同定鉱物粒子の同定が、便宜に可能となった。
実施例1として、ニッケル鉱石を酸で高圧浸出した後の残渣である試料(本実施例において「鉱石試料」と略記する場合がある。)中に微量含まれていた、所定元素含有未同定鉱物であるNi含有Fe酸化物が、赤鉄鉱(Fe2O3)であると同定できた例を参照しながら説明する。
実施例1に係る鉱石試料0.5cc、ベークライト樹脂10ccをそれぞれ量りとり、均一に混ざるまで混合して混合物を得た。当該混合物を圧縮成形用金具内に装填し、万力を用いて当該金具を圧縮して、直径20mm、高さ3mm程度の円柱状に圧縮成形されたペレットを作製した。
熱間埋込装置に前記ペレットを設置し、フェノール樹脂約2g加えて封入した。そして、前記ペレットを、180℃、75barの条件で5分間加温加圧し、直径25mm高さ6mm程度の円柱状の熱硬化性樹脂硬化物(固結片)である鉱石試料を得た。
尚、当該鉱物リストのEDSは、予め、MLAの使用者(研究者、操作担当者、等)が、所望の鉱物リストのEDSを、MLAに設置したものである。
次に、MLAは、そして、当該未同定鉱物粒子に対し、ニッケル元素のK線強度をフィルタリングしてニッケル元素の有無を判別し、ニッケル元素を有すると判断したものを所定元素含有未同定鉱物粒子として抽出した。そしてMLAによって、上述した鉱物粒子のBSE像中における当該所定元素含有未同定鉱物粒子へ目印を付与した写真データ図1(a)に示し、当該図1(a)において所定元素含有未同定鉱物粒子を破線で囲って示す。そして、当該所定元素含有未同定鉱物粒子のBSE像を図1(b)に示し、当該粒子のEDSデータを図2に示す。
ここで、MLAによる測定を終了した。
そして、MLAにて得られた図1(a)に示す、鉱石の研磨面の全面に現れた鉱物粒子の位置、大きさ、研磨面形状において、所定元素含有未同定鉱物粒子へ目印を付与した写真データと、図1(b)に示す抽出された当該所定元素含有未同定鉱物粒子のBSE像とを基にして、X線照射位置を当該抽出された所定元素含有未同定鉱物粒子へ設定し、ラマンスペクトルの測定を実施し、図3に示す抽出された所定元素含有未同定鉱物粒子に係るラマンスペクトルを得た。尚、図3においてラマンスペクトルA〜Dは、所定元素含有未同定鉱物粒子における4箇所の地点(A点〜D点)のラマンスペクトルであり、ラマンスペクトルEは、標準試料(Fe2O3試薬)のラマンスペクトルである。
尚、当該鉱物リストのラマンスペクトルのデータベースは、顕微レーザーラマンの製造者が予め入力したものである。
実施例1にて針鉄鉱であることが同定された所定元素含有未同定鉱物粒子を、MLAのEDSで分析した結果を図4に示す。図4のデータから当該所定元素含有未同定鉱物粒子の同定を試みた。しかし、当該所定元素含有未同定鉱物粒子がFeとOとを主成分とする鉱物であることは判明したものの、磁鉄鉱(Fe3O4)または針鉄鉱(FeO(OH))である可能性も考えられ、赤鉄鉱であるとは結論出来なかった。この結果、上述した所定元素含有未同定鉱物粒子を同定する迄には至らなかった。
Claims (3)
- 鉱石中に存在する鉱物を同定する方法であって、
前記鉱石を樹脂包埋した鉱石試料を作製し、当該鉱石試料を研磨する第1の工程と、
前記研磨された鉱石試料を鉱物分析装置に装填し、前記鉱物分析装置により前記研磨された鉱石試料の研磨面における反射電子像を測定し、得られた反射電子像から前記研磨面における鉱物粒子の研磨面を判別する第2の工程と、
前記鉱物分析装置により判別された鉱物粒子の研磨面毎に、エネルギー分散X線スペクトルを測定する第3の工程と、
前記測定されたエネルギー分散X線スペクトルを、前記鉱物分析装置に予め内蔵された鉱物リストのエネルギー分散X線スペクトルと照合し、前記鉱物リストと一致しないスペクトルを有する鉱物粒子を判別して未同定鉱物粒子とし、さらに前記未同定鉱物粒子から得られたエネルギー分散X線スペクトルを用いて、所定の元素を含有する所定元素含有未同定鉱物粒子を抽出する第4の工程と、
前記研磨された鉱石試料を前記鉱物分析装置より取出して、顕微レーザーラマン分光装置に装填し、前記所定元素含有未同定鉱物粒子のラマンスペクトルを測定する第5の工程と、
前記得られたラマンスペクトルを、前記顕微レーザーラマン分光装置に内蔵された鉱物リストのラマンスペクトルデータと照合し、前記所定元素含有未同定鉱物粒子を同定する第6の工程とを有し、
前記第1から第6の工程を、当該順に実施することを特徴とする鉱石中に存在する鉱物粒子の同定方法。 - 前記第4の工程において、エネルギー分散X線スペクトルを用いて、所定の元素を含有する所定元素含有未同定鉱物粒子を判別する際、K線、L線、M線から選択されるいずれかのX線スペクトルに対応するピークを用いて、所定元素の含有の有無を判別することを特徴とする請求項1に記載の鉱石中に存在する鉱物粒子の同定方法。
- 前記第4工程における鉱物分析装置に予め内蔵された、鉱物リストのエネルギー分散X線スペクトルは、前記鉱物分析装置の使用者が予め入力したものであり、
前記第6工程において、前記顕微レーザーラマン分光装置に内蔵された、鉱物リストのラマンスペクトルデータは、当該顕微レーザーラマン分光装置の製造者が予め入力したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の鉱石中に存在する鉱物粒子の同定方法。
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