JP2017088483A - 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子 - Google Patents

光学ガラス、プリフォーム及び光学素子 Download PDF

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Abstract

【課題】屈折率(n)及びアッベ数(ν)が所望の範囲内にありながらも、部分分散比(θg,F)の小さい光学ガラスを得る。
【解決手段】光学ガラスは、モル%で、SiO成分を20.0〜65.0%、Nb成分を1.0〜25.0%及びNaO成分を1.0〜35.0%含有し、1.62以上1.75以下の屈折率(n)と、30以上42以下のアッベ数(ν)と、0.594以下の部分分散比(θg,F)を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、光学ガラス、プリフォーム及び光学素子に関する。
デジタルカメラやビデオカメラ等の光学系は、その大小はあるが、収差と呼ばれるにじみを含んでいる。この収差は単色収差と色収差に分類されるが、特に色収差は、光学系に使用されるレンズの材料特性に強く依存している。
一般に色収差は、低分散の凸レンズと高分散の凹レンズとを組み合わせて補正されるが、この組み合わせでは赤色領域と緑色領域の収差の補正しかできず、青色領域の収差が残る。この除去しきれない青色領域の収差を二次スペクトルと呼ぶ。二次スペクトルを補正するには、青色領域のg線(435.835nm)の動向を加味した光学設計を行う必要がある。このとき、光学設計で着目される光学特性の指標として、部分分散比(θg,F)が用いられている。上述の低分散のレンズと高分散のレンズとを組み合わせた光学系では、低分散側のレンズに部分分散比(θg,F)の大きい光学材料を用い、高分散側のレンズに部分分散比(θg,F)の小さい光学材料を用いることで、二次スペクトルが良好に補正される。
部分分散比(θg,F)は、下式(1)により示される。
θg,F=(n−n)/(n−n)・・・・・・(1)
光学ガラスには、短波長域の部分分散性を表す部分分散比(θg,F)とアッベ数(ν)との間に、およそ直線的な関係がある。この関係を表す直線は、部分分散比(θg,F)を縦軸に、アッベ数(ν)を横軸に採用した直交座標上で、NSL7とPBM2の部分分散比及びアッベ数をプロットした2点を結ぶ直線で表され、ノーマルラインと呼ばれている(図1参照)。ノーマルラインの基準となるノーマルガラスは光学ガラスメーカー毎によっても異なるが、各社ともほぼ同等の傾きと切片で定義している。(NSL7とPBM2は株式会社オハラ社製の光学ガラスであり、PBM2のアッベ数(ν)は36.3,部分分散比(θg,F)は0.5828、NSL7のアッベ数(ν)は60.5、部分分散比(θg,F)は0.5436である。)
ここで、30以上42以下のアッベ数(νd)を有するガラスとしては、例えば特許文献1、2に示されるような光学ガラスが知られている。
特開2002−029777号公報 特開2008−239478号公報
しかし、特許文献1で開示されたガラスは、部分分散比が小さくなく、前記二次スペクトルを補正するレンズとして使用するには十分でなかった。また、特許文献2で開示されたガラスは、比較的小さな部分分散比を有しているものの、アッベ数が大きいため、よりアッベ数の小さいガラスが求められていた。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、屈折率(n)及びアッベ数(ν)が所望の範囲内にありながら、部分分散比(θg,F)の小さい光学ガラスを得ることにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意試験研究を重ねた結果、SiO成分及びNb成分を含有するガラスにおいて、所望の範囲内の高い屈折率や低いアッベ数(高い分散)と、低い部分分散比を有するガラスを得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) モル%で、
SiO成分を20.0〜65.0%、
Nb成分を1.0〜25.0%及び
NaO成分を1.0〜35.0%
含有し、
1.62以上1.75以下の屈折率(n)と、
30以上42以下のアッベ数(ν)と、
0.594以下の部分分散比(θg,F)を有する光学ガラス。
(2) モル和(SiO+Nb+LiO)が25.0%以上70.0%以下である(1)記載の光学ガラス。
(3) モル%で、
成分 0〜30.0%
ZrO成分 0〜20.0%
である(1)又は(2)記載の光学ガラス。
(4) モル%で、
LiO成分 0〜20.0%
TiO成分 0〜15.0%
O成分 0〜10.0%
MgO成分 0〜10.0%
CaO成分 0〜15.0%
SrO成分 0〜15.0%
BaO成分 0〜25.0%
La成分 0〜15.0%
Gd成分 0〜10.0%
成分 0〜20.0%
Yb成分 0〜10.0%
成分 0〜10.0%
GeO成分 0〜10.0%
Al成分 0〜15.0%
Ga成分 0〜10.0%
Ta成分 0〜10.0%
WO成分 0〜10.0%
Bi成分 0〜10.0%
ZnO成分 0〜20.0%
TeO成分 0〜10.0%
SnO成分 0〜5.0%
Sb成分 0〜1.0%
である(1)から(3)のいずれか記載の光学ガラス。
(5) モル比(SiO)/(SiO+B)が0.95未満である(1)から(4)のいずれか記載の光学ガラス。
(6) RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)のモル和が5.0%以上40.0%以下である(1)から(5)のいずれか記載の光学ガラス。
(7) RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)のモル和が25.0%以下であり、
Ln成分(式中、LnはY、La、Gd、Ybからなる群より選択される1種以上)のモル和が20.0%以下である(1)から(6)のいずれか記載の光学ガラス。
(8) モル比(LiO+NaO)/(RnO)が0.75以上である(1)から(7)のいずれか記載の光学ガラス。
(9) 1.62以上1.74以下の屈折率(n)と、30以上40以下のアッベ数(ν)を有する(1)から(8)のいずれか記載の光学ガラス。
(10) (1)から(9)のいずれか記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。
(11) (1)から(9)のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
本発明によれば、屈折率(n)及びアッベ数(ν)が所望の範囲内にありながら、部分分散比(θg,F)の小さい光学ガラスを得ることができる。
また、本発明によれば、ガラスを再加熱した際の失透が低減されるため、リヒートプレス成形に好適な光学ガラスを得ることができる。
部分分散比(θg,F)が縦軸でアッベ数(ν)が横軸の直交座標に表されるノーマルラインを示す図である。 本願の実施例についての部分分散比(θg,F)とアッベ数(ν)の関係を示す図である。 本願の実施例についての屈折率(nd)とアッベ数(ν)の関係を示す図である。
本発明の光学ガラスは、モル%で、SiO成分を20.0〜65.0%、Nb成分を1.0〜25.0%及びNaO成分を1.0〜35.0%含有し、1.62以上1.75以下の屈折率(n)と、30以上42以下のアッベ数(ν)と、0.594以下の部分分散比(θg,F)を有する。
SiO成分及びNb成分を含有するガラスにおいて、所望の範囲内の高い屈折率や低いアッベ数(高い分散)と、低い部分分散比を有するガラスを得られる。
そのため、所望の高い屈折率(n)及び低いアッベ数(ν)を有しながら、部分分散比(θg,F)が小さく光学系の色収差の低減に有用な光学ガラスを得ることができる。
加えて、ガラスを再加熱した際の失透が低減されるため、リヒートプレス成形に好適な光学ガラスを得ることができる。
また、比重が小さいことで光学機器の軽量化に寄与でき、また、ガラス転移点が低いことでリヒートプレス成形時における加熱温度を低くすることが可能な、光学ガラスを得ることもできる。
以下、本発明の光学ガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中で特に断りがない場合、各成分の含有量は、全て酸化物換算組成のガラスの総モル数に対するモル%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総モル数を100モル%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
<必須成分、任意成分について>
SiO成分は、安定なガラス形成を促し、光学ガラスとして好ましくない失透(結晶物の発生)を低減する必須成分である。
特に、SiO成分の含有量を20.0%以上にすることで、部分分散比を大幅に高めることなく、失透を低減できる。また、これにより再加熱時における失透や着色を低減できる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは20.0%以上、より好ましくは30.0%超、さらに好ましくは35.0%超、さらに好ましくは40.0%超、さらに好ましくは43.0%超、さらに好ましくは45.0%超とする。
他方で、SiO成分の含有量を65.0%以下にすることで、屈折率が低下し難くなることで所望の高屈折率を得易くでき、且つ、部分分散比の上昇を抑えられる。また、これによりガラス原料の熔解性の低下を抑えられる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは65.0%以下、より好ましくは60.0%未満、さらに好ましくは58.0%未満、さらに好ましくは55.0%未満とする。
SiO成分は、原料としてSiO、KSiF、NaSiF等を用いることができる。
Nb成分は、1.0%以上含有することで、ガラスの屈折率を高められ、アッベ数及び部分分散比を低くできる必須成分である。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは1.0%以上、より好ましくは3.0%超、さらに好ましくは5.0%超、さらに好ましくは7.0%超とする。
他方で、Nb成分の含有量を25.0%以下にすることで、ガラスの材料コストを低減できる。また、ガラス製造時における熔解温度の上昇を抑制し、且つNb成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは20.0%未満、さらに好ましくは15.0%未満、さらに好ましくは11.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満とする。
Nb成分は、原料としてNb等を用いることができる。
NaO成分は、1.0%以上含有することで、ガラスの部分分散比を低くでき、リヒートプレス性を高められ、ガラス転移点を低くでき、且つガラス原料の熔解性を高められる必須成分である。従って、NaO成分の含有量は、好ましくは1.0%以上、より好ましくは5.0%超、さらに好ましくは8.0%超、さらに好ましくは11.0%超、さらに好ましくは13.0%超、さらに好ましくは15.0%超とする。
他方で、NaO成分の含有量を35.0%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下を抑えられ、化学的耐久性を悪化し難くでき、且つ過剰な含有による失透を低減できる。
従って、NaO成分の含有量は、好ましくは35.0%以下、より好ましくは30.0%未満、さらに好ましくは25.0%未満、さらに好ましくは23.0%未満とする。
NaO成分は、原料としてNaCO、NaNO、NaF、NaSiF等を用いることができる。
SiO成分、Nb成分及びLiO成分の合計量(モル和)は、25.0%以上70.0%以下が好ましい。
特に、この合計量を25.0%以上にすることで、ガラスのリヒートプレス性を高められる。従って、モル和(SiO+Nb+LiO)は、好ましくは25.0%以上、より好ましくは30.0%超、さらに好ましくは40.0%超、さらに好ましくは50.0%超、さらに好ましくは54.0%超、さらに好ましくは58.05%以上とする。
他方で、この合計量を70.0%以下にすることで、ガラスの失透を低減できる。従って、モル和(SiO+Nb+LiO)は、好ましくは70.0%、より好ましくは68.0%、さらに好ましくは65.0%を上限とする。
成分は、0%超含有する場合に、安定なガラス形成を促して失透を低減でき、且つガラス原料の熔解性を高められる任意成分である。従って、B成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%超、さらに好ましくは2.0%超、さらに好ましくは4.0%超、さらに好ましくは6.0%超、さらに好ましくは7.0%超、さらに好ましくは10.0%超、さらに好ましくは12.0%超としてもよい。
他方で、B成分の含有量を30.0%以下にすることで、屈折率の低下やアッベ数の上昇を抑えられ、且つ部分分散比の上昇を抑えられる。従って、B成分の含有量は、好ましくは30.0%以下、より好ましくは25.0%未満、さらに好ましくは20.0%未満、さらに好ましくは18.0%未満とする。
成分は、原料としてHBO、Na、Na・10HO、BPO等を用いることができる。
ZrO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、アッベ数を低くし、部分分散比を低くでき、且つ失透を低減できる任意成分である。また、これにより再加熱時における失透や着色を低減できる。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%超、より好ましくは1.0%超、さらに好ましくは3.0%超、さらに好ましくは5.0%超としてもよい。
他方で、ZrO成分の含有量を20.0%以下にすることで、失透を低減でき、且つ、より均質なガラスを得易くできる。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%未満、さらに好ましくは12.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは9.0%未満とする。
ZrO成分は、原料としてZrO、ZrF等を用いることができる。
LiO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの部分分散比を低くでき、リヒートプレス性を高められ、ガラス転移点を低くでき、且つガラス原料の熔解性を高められる任意成分である。従って、LiO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.3%超、さらに好ましくは0.5%超としてもよい。
他方で、LiO成分の含有量を20.0%以下にすることで、屈折率の低下を抑えられ、化学的耐久性を悪化し難くでき、且つ過剰な含有による失透を低減できる。
従って、LiO成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%未満、さらに好ましくは12.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満とする。
LiO成分は、原料としてLiCO、LiNO、LiF等を用いることができる。
TiO成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高め、アッベ数を低くし、且つ失透を低減できる任意成分である。
他方で、TiO成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減でき、内部透過率を高められる。また、これにより部分分散比が上昇し難くなるため、所望の低い部分分散比を得易くできる。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは12.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
TiO成分は、原料としてTiO等を用いることができる。
O成分は、0%超含有する場合に、屈折率を低下させ、ガラス原料の熔解性を高められ、且つガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、KO成分の含有量を10.0%以下にすることで、部分分散比の上昇を抑えられ、失透を低減でき、且つ化学的耐久性を悪化し難くできる。また、リヒートプレス成形性の低下を抑えられる。従って、KO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.5%未満、さらに好ましくは0.5%未満とする。
O成分は、原料としてKCO、KNO、KF、KHF、KSiF等を用いることができる。
MgO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔解温度を低くできる任意成分である。
他方で、MgO成分の含有量を10.0%以下にすることで、屈折率の低下やアッベ数の上昇を抑制しつつ、失透を低減できる。従って、MgO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
MgO成分は、原料としてMgO、MgCO、MgF等を用いることができる。
CaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの材料コストを低減しつつ、失透を低減でき、且つ、ガラス原料の熔解性を高められる任意成分である。
他方で、CaO成分の含有量を15.0%以下にすることで、屈折率の低下やアッベ数の上昇、部分分散比の上昇を抑えられ、且つ失透を低減できる。従って、CaO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは2.5%未満とする。
CaO成分は、原料としてCaCO、CaF等を用いることができる。
SrO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの失透を低減でき、且つ屈折率を高められる任意成分である。
特に、SrO成分の含有量を15.0%以下にすることで、アッベ数の上昇を抑制しつつ、化学的耐久性の悪化を抑えられる。従って、SrO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
SrO成分は、原料としてSr(NO、SrF等を用いることができる。
BaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの失透を低減でき、且つ屈折率を高められ、ガラス原料の熔解性を高められ、且つ、他のアルカリ土類成分に比べてガラスの材料コストを低減できる任意成分である。また、リヒートプレス成形性の低下を抑えられる成分でもある。
他方で、BaO成分の含有量を25.0%以下にすることで、アッベ数の上昇を抑制しつつ、化学的耐久性の悪化や、失透を抑えられる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは15.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満とする。
BaO成分は、原料としてBaCO、Ba(NO等を用いることができる。
La成分、Gd成分、Y成分及びYb成分は、少なくともいずれかを0%超含有することで、屈折率を高め、且つ部分分散比を小さくできる任意成分である。
他方で、La成分の含有量を15.0%以下にすることで、アッベ数の上昇を抑えられ、比重を小さくでき、且つ失透を低減できる。従って、La成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
また、Y成分の含有量を20.0%以下にすることで、アッベ数の上昇を抑えられ、比重を小さくでき、失透を低減できる。従って、Y成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
また、Gd成分及びYb成分のそれぞれの含有量を10.0%以下にすることで、アッベ数の上昇を抑えられ、比重を小さくでき、失透を低減でき、且つ材料コストを低減できる。従って、Gd成分及びYb成分のそれぞれの含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
La成分、Gd成分、Y成分及びYb成分は、原料としてLa、La(NO・XHO(Xは任意の整数)、Y、YF、Gd、GdF、Yb等を用いることができる。
成分は、0%超含有する場合に、ガラスの失透を低減できる任意成分である。
一方で、P成分の含有量を10.0%以下にすることで、P成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、P成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
成分は、原料としてAl(PO、Ca(PO、Ba(PO、BPO、HPO等を用いることができる。
GeO成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高め、且つ失透を低減できる任意成分である。
他方で、GeO成分の含有量を10.0%以下にすることで、高価なGeO成分の使用量が低減されるため、ガラスの材料コストを低減できる。従って、GeO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
GeO成分は、原料としてGeO等を用いることができる。
Al成分及びGa成分は、少なくともいずれかを0%超含有する場合に、化学的耐久性を高め、且つガラスの失透を低減できる任意成分である。
他方で、Al成分の含有量を15.0%以下にすることで、過剰な含有による失透を低減できる。従って、Al成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは8.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
また、Ga成分の含有量を10.0%以下にすることで、過剰な含有による失透を低減できる。従って、Ga成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
Al成分及びGa成分は、原料としてAl、Al(OH)、AlF、Ga、Ga(OH)等を用いることができる。
Ta成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高め、部分分散比を下げ、且つガラスの失透を低減できる任意成分である。
他方で、Ta成分の含有量を10.0%以下にすることで、希少鉱物資源であるTa成分の使用量が減り、且つガラスがより低温で熔解し易くなるため、ガラスの生産コストを低減できる。また、これによりTa成分の過剰な含有によるガラスの失透や、アッベ数の上昇を低減できる。従って、Ta成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。特にガラスの材料コストを低減させる観点では、Ta成分の含有量を0.1%未満としてもよい。
Ta成分は、原料としてTa等を用いることができる。
WO成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高めてアッベ数を低くし、ガラスの失透を低減でき、且つガラス原料の熔解性を高められる任意成分である。
他方で、WO成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの部分分散比を上昇し難くでき、且つ、ガラスの着色を低減して内部透過率を高められる。従って、WO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
WO成分は、原料としてWO等を用いることができる。
Bi成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高めてアッベ数を低くでき、且つガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、Bi成分の含有量を10.0%以下にすることで、部分分散比を上昇し難くでき、且つ、ガラスの着色を低減して内部透過率を高めることができる。従って、Bi成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
Bi成分は、原料としてBi等を用いることができる。
ZnO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの失透を低減でき、部分分散比を低くし、且つガラス転移点を下げられる任意成分である。
他方で、ZnO成分の含有量を20.0%以下にすることで、ガラスの再加熱時における失透や着色を低減しつつ、化学的耐久性を高められる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
ZnO成分は、原料としてZnO、ZnF等を用いることができる。
TeO成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高め、部分分散比を低くでき、且つガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、TeO成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減して内部透過率を高めることができる。また、高価なTeO成分の使用を低減することで、より材料コストの安いガラスを得られる。従って、TeO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
TeO成分は、原料としてTeO等を用いることができる。
SnO成分は、0%超含有する場合に、熔解したガラスを清澄(脱泡)できる任意成分である。
一方で、SnO成分の含有量を5.0%以下にすることで、熔融ガラスの還元によるガラスの着色や、ガラスの失透を生じ難くすることができる。また、SnO成分と熔解設備(特にPt等の貴金属)との合金化が低減されるため、熔解設備の長寿命化を図ることができる。従って、SnO成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
SnO成分は、原料としてSnO、SnO、SnF、SnF等を用いることができる。
Sb成分は、0%超含有する場合に、ガラスを清澄できる任意成分である。
他方で、Sb成分の含有量を1.0%以下にすることで、ガラス熔解時における過度の発泡を生じ難くすることができるため、Sb成分を熔解設備(特にPt等の貴金属)と合金化し難くできる。従って、Sb成分の含有量は、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1未満%を上限とする。但し、光学ガラスの環境上の影響を重視する場合には、Sb成分を含有しなくてもよい。
Sb成分は、原料としてSb、Sb、NaSb・5HO等を用いることができる。
なお、ガラスを清澄する成分は、上記のSb成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
SiO成分及びB成分の合計量に対する、SiO成分の含有量の比(モル比)は、0.95未満が好ましい。これにより、ガラスのリヒートプレス成形性をより高めることができる。従って、このモル比(SiO)/(SiO+B)は、好ましくは0.95未満、より好ましくは0.90未満、さらに好ましくは0.85未満とする。
他方で、このモル比(SiO)/(SiO+B)は、好ましくは0.30、より好ましくは0.50、さらに好ましくは0.60を下限としてもよい。
RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(モル和)は、5.0%以上40.0%以下が好ましい。
特に、このモル和を5.0%以上にすることで、ガラス原料の熔解性を高め、且つガラス転移点を低くすることができる。そのため、RnO成分の合計含有量は、好ましくは5.0%以上、より好ましくは10.0%超、さらに好ましくは15.0%超、さらに好ましくは17.0%超としてもよい。
他方で、このモル和を40.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くでき、ガラス形成時の失透を低減できる。従って、RnO成分の合計含有量は、好ましくは40.0%以下、より好ましくは35.0%未満、さらに好ましくは30.0%未満、さらに好ましくは24.0%未満とする。
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(モル和)は、25.0%以下が好ましい。これにより、アッベ数の上昇を抑えられ、且つこれら成分の過剰な含有によるガラスの失透を低減できる。従って、RO成分のモル和は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは15.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは2.5%未満とする。
Ln成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(モル和)は、20.0%以下が好ましい。これにより、ガラスの失透を低減でき、アッベ数の上昇を抑えられ、且つ材料コストを低減できる。従って、Ln成分のモル和は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは7.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の合計量に対する、LiO成分及びNaO成分の合計量の比(モル比)は、0.75以上が好ましい。これにより、ガラスのリヒートプレス成形性をより高めることができる。従って、このモル比(LiO+NaO)/(RnO)は、好ましくは0.75、より好ましくは0.88、さらに好ましくは0.96を下限とする。
なお、このモル比(LiO+NaO)/(RnO)の上限は1とする。
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加できる。ただし、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
また、PbO等の鉛化合物及びAs等の砒素化合物は、環境負荷が高い成分であるため、実質的に含有しないこと、すなわち、不可避な混入を除いて一切含有しないことが望ましい。
さらに、Th、Cd、Tl、Os、Be、及びSeの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、これらを実質的に含有しないことが好ましい。
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝、石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入して粗熔融した後、金坩堝、白金坩堝、白金合金坩堝又はイリジウム坩堝に入れて1100〜1400℃の温度範囲で3〜5時間熔融し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1000〜1400℃の温度に下げてから仕上げ攪拌を行って脈理を除去し、金型に鋳込んで徐冷することにより作製される。
このとき、ガラス原料として熔解性の高いものを用いることが好ましい。これにより、より低温での熔解や、より短時間での熔解が可能になるため、ガラスの生産性を高め、生産コストを低減できる。また、成分の揮発や坩堝等との反応が低減されるため、着色の少ないガラスを得易くできる。
<物性>
本発明の光学ガラスは、高い屈折率と所定の範囲のアッベ数を有する。
本発明の光学ガラスの屈折率(n)は、好ましくは1.62、より好ましくは1.63、さらに好ましくは1.64を下限とする。この屈折率の上限は、好ましくは1.75、より好ましくは1.74、さらに好ましくは1.72、さらに好ましくは1.70、さらに好ましくは1.69であってもよい。
本発明の光学ガラスのアッベ数(ν)は、好ましくは42以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは39以下、さらに好ましくは38以下とする。他方で、本発明の光学ガラスのアッベ数(ν)は、好ましくは30、より好ましくは32、さらに好ましくは34を下限とする。
このような屈折率及びアッベ数を有する本発明の光学ガラスは光学設計上有用であり、特に高い結像特性等を図りながらも、光学系の小型化を図ることができるため、光学設計の自由度を広げることができる。
ここで、本発明の光学ガラスは、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が、(−0.012νd+2.04)≦nd≦(−0.012νd+2.14)の関係を満たすことが好ましい。本発明で特定される組成のガラスでは、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)がこの関係を満たすことで、より失透の起こり難いガラスを得られる。
従って、本発明の光学ガラスでは、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が、nd≧(−0.012νd+2.04)の関係を満たすことが好ましく、nd≧(−0.012νd+2.05)の関係を満たすことがより好ましく、nd≧(−0.012νd+2.06)の関係を満たすことがさらに好ましい。
他方で、本発明の光学ガラスでは、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が、nd≦(−0.012νd+2.14)の関係を満たすことが好ましく、nd≦(−0.012νd+2.13)の関係を満たすことがより好ましく、nd≦(−0.012νd+2.12)の関係を満たすことがさらに好ましい。
本発明の光学ガラスは、低い部分分散比(θg,F)を有する。
より具体的には、本発明の光学ガラスの部分分散比(θg,F)は、好ましくは0.594、より好ましくは0.590、さらに好ましくは0.586を上限とする。この部分分散比(θg,F)の下限は、好ましくは0.570、より好ましくは0.573、さらに好ましくは0.575であってもよい。
また、本発明の光学ガラスの部分分散比(θg,F)は、アッベ数(ν)との間で、(−0.00162×ν+0.630)≦(θg,F)≦(−0.00162×ν+0.652)の関係を満たすことが好ましい。
これにより、低い部分分散比(θg,F)を有する光学ガラスが得られるため、この光学ガラスから形成される光学素子を、光学系の色収差の低減に役立てられる。
従って、本発明の光学ガラスでは、部分分散比(θg,F)及びアッベ数(νd)が、θg,F≧(−0.00162×ν+0.630)の関係を満たすことが好ましく、θg,F≧(−0.00162×ν+0.632)の関係を満たすことがより好ましく、θg,F≧(−0.00162×ν+0.634)の関係を満たすことがさらに好ましい。
他方で、本発明の光学ガラスでは、部分分散比(θg,F)及びアッベ数(νd)が、θg,F≦(−0.00162×ν+0.652)の関係を満たすことが好ましく、θg,F≦(−0.00162×ν+0.650)の関係を満たすことがより好ましく、θg,F≦(−0.00162×ν+0.648)の関係を満たすことがさらに好ましく、θg,F≦(−0.00162×ν+0.646)の関係を満たすことがさらに好ましく、θg,F≦(−0.00162×ν+0.643)の関係を満たすことがさらに好ましい。
なお、上述の部分分散比(θg,F)及びアッベ数(νd)の関係式では、ノーマルラインと同じ傾きの直線を使ってこれらの関係を規定することで、一般的なガラスよりも部分分散比(θg,F)の小さなガラスを得られることを表している。
本発明の光学ガラスは、比重が小さいことが好ましい。より具体的には、本発明の光学ガラスの比重は3.50[g/cm]以下であることが好ましい。これにより、光学素子やそれを用いた光学機器の質量が低減されるため、光学機器の軽量化に寄与できる。従って、本発明の光学ガラスの比重は、好ましくは3.50、より好ましくは3.30、さらに好ましくは3.10を上限とする。なお、本発明の光学ガラスの比重は、概ね2.50以上、より詳細には2.70以上、さらに詳細には2.80以上であることが多い。
本発明の光学ガラスの比重は、日本光学硝子工業会規格JOGIS05−1975「光学ガラスの比重の測定方法」に基づいて測定する。
本発明の光学ガラスは、650℃以下のガラス転移点を有することが好ましい。これにより、ガラスがより低い温度で軟化するため、より低い温度でガラスをモールドプレス成形できる。また、モールドプレス成形に用いる金型の酸化を低減して金型の長寿命化を図ることもできる。従って、本発明の光学ガラスのガラス転移点は、好ましくは650℃、より好ましくは620℃、さらに好ましくは600℃を上限とする。
なお、本発明の光学ガラスのガラス転移点の下限は特に限定されないが、本発明の光学ガラスのガラス転移点は、好ましくは460℃、より好ましくは480℃、さらに好ましくは500℃を下限としてもよい。
本発明の光学ガラスは、700℃以下の屈伏点(At)を有することが好ましい。屈伏点は、ガラス転移点と同様にガラスの軟化性を示す指標の一つであり、プレス成形温度に近い温度を示す指標である。そのため、屈伏点が700℃以下のガラスを用いることにより、より低い温度でのプレス成形が可能になるため、より容易にプレス成形を行うことができる。従って、本発明の光学ガラスの屈伏点は、好ましくは700℃、より好ましくは680℃、最も好ましくは660℃を上限とする。
なお、本発明の光学ガラスの屈伏点は特に限定されないが、好ましくは500℃、より好ましくは530℃、さらに好ましくは560℃を下限としてもよい。
本発明の光学ガラスは、平均線膨張係数(α)が小さいことが好ましい。特に、本発明の光学ガラスの平均線膨張係数は、好ましくは120×10−7−1、より好ましくは110×10−7−1、さらに好ましくは100×10−7−1を上限とする。これにより、光学ガラスを成形型でプレス成形する際に、ガラスの温度変化による膨張や収縮の総量が低減される。そのため、プレス成形時に光学ガラスを割れ難くでき、光学素子の生産性を高めることができる。
本発明の光学ガラスは、リヒートプレス成形性が良好であることが好ましい。より具体的には、本発明の光学ガラスは、再加熱試験(型落し試験)の前後においても失透及び乳白が生じないことが好ましい。これにより、リヒートプレス加工を想定した再加熱試験によっても失透及び着色が起こり難くなることで、ガラスの光線透過率が失われ難くなるため、ガラスに対してリヒートプレス加工に代表される再加熱処理を行い易くできる。すなわち、複雑な形状の光学素子をプレス成形で作製できるため、製造コストが安く、且つ生産性の良い光学素子製造を実現することができる。
ここで、再加熱試験(型落し試験)は、15mm×15mm×30mmの試験片を、凹型耐火物上に載せて電気炉に入れて再加熱し、常温から150分で各試料の屈伏点(At)より80℃〜150℃高い温度(耐火物に落ち込む温度)まで昇温し、その温度で30分保温した後、常温まで冷却して炉外に取り出し、内部で観察できるように対向する2面を厚さ10mmに研磨した後、研磨したガラス試料を目視観察する方法で行うことができる。
なお、再加熱試験(型落し試験)の前後における失透及び乳白の有無は、例えば目視で確認することが可能であり、「失透及び乳白が生じない」ことは、例えば再加熱試験(型落し試験)後の試験片の波長587.56nmの光線(d線)の透過率を、再加熱試験前の試験片のd線の透過率で除した値が、概ね0.80以上であることを指す。
本発明の光学ガラスは、高い化学的耐久性を有することが好ましい。より具体的には、本発明の光学ガラスは、高い耐水性又は耐酸性を有することが好ましい。これにより、光学ガラスを研磨加工する際に、洗浄液や研磨液によるガラスの曇りが低減されるため、研磨加工をより行い易くすることができる。
なお、光学ガラスの耐水性及び耐酸性は、日本光学硝子工業会規格「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法」JOGIS06−2008による化学的耐久性(耐水性・耐酸性)において、好ましくは1〜3級、より好ましくは1〜2級、さらに好ましくは1級であることを指す。
本発明の光学ガラスは、ガラス作製時において失透が起こり難いことが好ましい。これにより、ガラス作製時におけるガラスの結晶化等による透過率の低下が抑えられるため、この光学ガラスをレンズ等の可視光を透過させる光学素子に好ましく用いることができる。なお、ガラス作製時における失透の起こり難さを示す尺度としては、例えば液相温度が低いことが挙げられる。
[プリフォーム及び光学素子]
作製された光学ガラスから、例えばリヒートプレス成形や精密プレス成形等のモールドプレス成形の手段を用いて、ガラス成形体を作製できる。すなわち、光学ガラスからモールドプレス成形用のプリフォームを作製し、このプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、例えば研磨加工を行って作製したプリフォームに対して精密プレス成形を行ってガラス成形体を作製したりできる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
このようにして作製されるガラス成形体は、様々な光学素子に有用であるが、その中でも特に、レンズやプリズム等の光学素子の用途に用いることが好ましい。これにより、光学素子が設けられる光学系の透過光における、色収差による色のにじみが低減される。そのため、この光学素子をカメラに用いた場合は撮影対象物をより正確に表現でき、この光学素子をプロジェクタに用いた場合は所望の映像をより高精彩に投影できる。
本発明の実施例(No.1〜No.29)の組成、並びに、屈折率(n)、アッベ数(ν)、部分分散比(θg,F)、ガラス転移点(Tg)、屈伏点(At)、平均線膨張係数(α)、比重、並びに再加熱試験(型落し試験)の結果を表1〜表5に示す。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。
実施例のガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度の原料を選定し、表に示した各実施例及び比較例の組成の割合になるように秤量して均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス原料の熔解難易度に応じて電気炉で1100〜1400℃の温度範囲で3〜5時間熔解し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1000〜1400℃に温度を下げて攪拌均質化してから金型に鋳込み、徐冷してガラスを作製した。
実施例のガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)及び部分分散比(θg,F)は、日本光学硝子工業会規格JOGIS01―2003に基づいて測定した。
そして、得られる屈折率(n)及びアッベ数(ν)の値から、関係式(n=−a×ν+b)における、傾きaが0.012のときの切片bを求めた。
また、得られるアッベ数(ν)及び部分分散比(θg,F)の値から、関係式(θg,F=−a´×ν+b´)における、傾きa´が0.00162のときの切片b´を求めた。
なお、本測定に用いたガラスは、徐冷降温速度を−25℃/hrとして、徐冷炉にて処理を行ったものを用いた。
実施例のガラスのガラス転移点(Tg)及び屈伏点(At)は、日本光学硝子工業会規格JOGIS08−2003「光学ガラスの熱膨張の測定方法」に従い、温度と試料の伸びとの関係を測定することで得られる熱膨張曲線より求めた。
実施例のガラスの平均線膨張係数(α)は、日本光学硝子工業会規格JOGIS08−2003「光学ガラスの熱膨張の測定方法」に従い、100〜300℃における平均線膨張係数を求めた。
実施例のガラスの比重は、日本光学硝子工業会規格JOGIS05−1975「光学ガラスの比重の測定方法」に基づいて測定した。
また、実施例のガラスについて、再加熱試験(型落し試験)の前後における失透及び乳白の有無を目視で確認した。ここで、再加熱試験後の前後における失透及び乳白の確認は、15mm×15mm×30mmの試験片を、凹型耐火物上に載せて電気炉に入れて再加熱温度まで再加熱し、その温度で30分保温した後、常温まで冷却して炉外に取り出し、内部で観察できるように対向する2面を厚さ10mmに研磨した後、研磨したガラス試料における失透及び乳白の有無を目視で観察することで行った。このとき、試験片に対して再加熱温度を(At+80℃〜130℃)にして保温したときに失透及び乳白が生じず、且つ、別の試験片に対して再加熱温度を(At+130℃超〜150℃)にして保温したときにも失透及び乳白が生じなかったガラスは、「型落し試験」を「○」にした。また、試験片に対して再加熱温度を(At+80℃〜130℃)にして保温したときに失透及び乳白が生じなかったものの、別の試験片に対して再加熱温度を(At+130℃超〜150℃)にして保温したときに失透又は乳白が生じたガラスは、「型落し試験」を「△」にした。また、試験片に対して再加熱温度を(At+80℃〜90℃)にして保温したときであっても失透又は乳白が生じたガラスは、「型落し試験」を「×」にした。
Figure 2017088483
Figure 2017088483
Figure 2017088483
Figure 2017088483
Figure 2017088483
これらの表のとおり、実施例(No.1〜No.29)の光学ガラスは、部分分散比(θg,F)が0.594以下であり、所望の範囲内であった。
ここで、本発明の実施例の光学ガラスは、部分分散比(θg,F)及びアッベ数(νd)が、(−0.00162×ν+0.630)≦(θg,F)≦(−0.00162×ν+0.652)の関係を満たしており、より詳細には(θg,F)≦(−0.00162×ν+0.651)の関係を満たしていた。そして、本願の実施例のガラスについての部分分散比(θg,F)とアッベ数(ν)の関係は、図2に示されるようになった。
従って、本発明の実施例の光学ガラスは、小さい部分分散比(θg,F)を有することが明らかになった。
本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも屈折率(n)が1.62以上、より詳細には1.64以上であるとともに、この屈折率(n)は1.75以下であり、所望の範囲内であった。
また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれもアッベ数(ν)が30以上、より詳細には34以上であるとともに、このアッベ数(ν)は42以下、より詳細には41以下であり、所望の範囲内であった。
ここで、本発明の実施例の光学ガラスは、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が、(−0.012νd+2.04)≦nd≦(−0.012νd+2.14)の関係を満たしており、より詳細には(−0.012νd+2.08)≦nd≦(−0.012νd+2.13)の関係を満たしていた。そして、本願の実施例のガラスについての屈折率(nd)及びアッベ数(νd)の関係は、図3に示されるようになった。
従って、実施例の光学ガラスは、屈折率(n)及びアッベ数(ν)が所望の範囲内にあり、且つ部分分散比(θg,F)の小さい光学ガラスであることが明らかになった。
このうち、特に実施例(No.1〜No.8)の光学ガラスは、再加熱試験(型落し試験)を行う前後の両方で、失透及び乳白が起こり難かった。他方で、実施例(No.9〜No.10)の光学ガラスは、試料の屈伏点(At)より80℃〜150℃高い温度範囲のうち、少なくとも一部の温度範囲において、失透又は乳白が生じた。従って、実施例(No.1〜No.8)の光学ガラスは、実施例(No.9〜No.10)と比べて、再加熱による失透や乳白が起こり難いため、高いリヒートプレス成形性を有することが推察される。
加えて、実施例の光学ガラスは、いずれも比重が3.50以下、より詳細には3.30以下であり、所望の範囲内であった。
また、実施例の光学ガラスは、ガラス転移点が650℃以下、より詳細には630℃以下であった。また、実施例の光学ガラスは、いずれも屈伏点が700℃以下であり、所望の範囲内であった。これらにより、より低い温度でガラスをモールドプレス成形できることが推察される。
また、実施例の光学ガラスは、平均線膨張係数(α)が120×10−7−1以下、より詳細には110×10−7−1以下であり、所望の範囲内であった。
さらに、実施例の光学ガラスを用いてレンズプリフォームを形成し、このレンズプリフォームに対してモールドプレス成形したところ、失透や乳白を起こすことなく様々なレンズ形状に加工することができた。
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。

Claims (11)

  1. モル%で、
    SiO成分を20.0〜65.0%、
    Nb成分を1.0〜25.0%及び
    NaO成分を1.0〜35.0%
    含有し、
    1.62以上1.75以下の屈折率(n)と、
    30以上42以下のアッベ数(ν)と、
    0.594以下の部分分散比(θg,F)を有する光学ガラス。
  2. モル和(SiO+Nb+LiO)が25.0%以上70.0%以下である請求項1記載の光学ガラス。
  3. モル%で、
    成分 0〜30.0%
    ZrO成分 0〜20.0%
    である請求項1又は2記載の光学ガラス。
  4. モル%で、
    LiO成分 0〜20.0%
    TiO成分 0〜15.0%
    O成分 0〜10.0%
    MgO成分 0〜10.0%
    CaO成分 0〜15.0%
    SrO成分 0〜15.0%
    BaO成分 0〜25.0%
    La成分 0〜15.0%
    Gd成分 0〜10.0%
    成分 0〜20.0%
    Yb成分 0〜10.0%
    成分 0〜10.0%
    GeO成分 0〜10.0%
    Al成分 0〜15.0%
    Ga成分 0〜10.0%
    Ta成分 0〜10.0%
    WO成分 0〜10.0%
    Bi成分 0〜10.0%
    ZnO成分 0〜20.0%
    TeO成分 0〜10.0%
    SnO成分 0〜5.0%
    Sb成分 0〜1.0%
    である請求項1から3のいずれか記載の光学ガラス。
  5. モル比(SiO)/(SiO+B)が0.95未満である請求項1から4のいずれか記載の光学ガラス。
  6. RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)のモル和が5.0%以上40.0%以下である請求項1から5のいずれか記載の光学ガラス。
  7. RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)のモル和が25.0%以下であり、
    Ln成分(式中、LnはY、La、Gd、Ybからなる群より選択される1種以上)のモル和が20.0%以下である請求項1から6のいずれか記載の光学ガラス。
  8. モル比(LiO+NaO)/(RnO)が0.75以上である請求項1から7のいずれか記載の光学ガラス。
  9. 1.62以上1.74以下の屈折率(n)と、30以上40以下のアッベ数(ν)を有する請求項1から8いずれか記載の光学ガラス。
  10. 請求項1から9いずれか記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。
  11. 請求項1から9のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
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