JP2017087280A - インバータ式抵抗溶接機 - Google Patents

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Abstract

【課題】内蔵する大容量コンデンサ容量を縮減し、さらに、安定して効率良く溶接ができる廉価な装置を提供すること。
【解決手段】溶接電流を供給する大容量コンデンサ7と降圧昇圧充電回路6を内蔵しインバータ用溶接トランス21の定格電圧を超えた値に大容量コンデンサ7を充電し、かつ、インバータ用溶接トランス21の印加電圧の平均値が定格電圧を超えないようパルス幅を制限して制御し、また、コンデンサの充電電圧を調整する機能を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、鋼板などの金属板をスポット溶接するインバータ式抵抗溶接機に関する。
スポット溶接は、自動車などの車両の製造ラインから一般産業に使われる制御装置の筐体接合などに広く使われている。
スポット溶接は、一般的には上下の電極で鋼板などの被溶接物を挟持し電流が印加され溶接される。(特許文献1、特許文献2、特許文献3、参照)
また、受電設備が大容量化せず、瞬時の大電流で溶接するコンデンサ式抵抗溶接機は上記の一般的な抵抗溶接機と比べ、熱歪や焼け跡が比較的少ないといわれている。(特許文献4、特許文献5、参照)
特開2008−105041号公報 特開2009−291827号公報 特開2011−5544号公報 特開2011−212699号公報 特開2011−230177号公報
本発明は、コンデンサ内蔵式インバータ抵抗溶接機において、効率の良い溶接方法として実施でき、かつ、コンパクトで廉価な装置を提供することを課題とする。
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
溶接電流を供給する大容量コンデンサ7と降圧昇圧充電回路6を内蔵しインバータ用溶接トランス21の定格電圧を超えた値に大容量コンデンサ7を充電し、また、インバータ用溶接トランス21の印加電圧の平均値がインバータ用溶接トランス21の定格電圧を超えないようにパルス幅を制限して制御することを特徴とする、コンデンサ内蔵式インバータ抵抗溶接機。
〈構成2〉
構成1に記載のコンデンサ内蔵式インバータ抵抗溶接機において、溶接電流が小さくインバータのPWM(Pulse Width Modulation)制御範囲を下回る時には、コンデンサの充電電圧をPWM制御範囲となるように調整する機能を有するコンデンサ内蔵式インバータ抵抗溶接機。
〈構成1の効果〉
大容量コンデンサ7の容量を小さくでき、コンデンサ内蔵式インバータ抵抗溶接機が安価で構成でき、小型化も可能となる。
〈構成2の効果〉
大容量コンデンサ7を適正な電圧に充電することで、PWM制御を安定に行うことができ、使用できる溶接電流適応範囲を広げることが可能となる。
本発明を含めたコンデンサ内蔵式インバータ抵抗溶接機の構成例 本発明に用いた降圧昇圧充電回路例 (a)はインバータ用溶接トランスの1次側に供給される電流を制御するための制御パルス、(b)は1次電流、(c)は整流後の溶接電流を示す。 2次電圧の違いによる電流の立ち上がり時間の差を示す インバータ電流波形(1次電流)の極性の切り替わり時間の差 充電電圧の違いによる通電可能時間の比較 PWMパルス幅制限処理のフローチャート 溶接電流波形と制御電流での電流の傾き 設定溶接電流で充電電圧を計算する処理のフローチャート
以下、本発明の実施の形態を実施例1で詳細に説明する。
抵抗溶接は、通電により母材の抵抗と接触抵抗による発熱を利用する。抵抗溶接において溶接電流の立ち上がり部分は、通電時間が短く全体に占める割合が多い場合は特に、溶接結果に与える影響が大きく重要である。例えば通電時間が30msec(ミリ秒)で溶接電流の立ち上がり部分が10%の場合、溶接電流の立ち上がり部分は3msec(ミリ秒)となり溶接品質への影響は大きくなり、ワーク表面の仕上がりや溶接強度のばらつき要因となる。通電開始時は母材の抵抗よりも接触抵抗による発熱の方が大きく、通電開始時の溶接電流の立ち上がりの速さと安定度は溶接結果に大きく影響する。接触抵抗は通電を開始し発熱すると共に急激に減少する。
大電流を安定に流すためには大容量の受電設備が必要となるが、小容量の受電設備で大電流が流せるようにするために、大容量のコンデンサを内蔵し溶接電流をコンデンサから供給する図1の事例に示すようなコンデンサ内蔵式インバータ抵抗溶接機が製品化されている。このコンデンサ内蔵式インバータ抵抗溶接機を使用すれば、電源の電圧降下の影響を受けることなく溶接電流を安定に速く立ち上げることができる。しかしながら大容量コンデンサ7は高価で外形も大きく、製品が高価で大きくなる。
図1は、本発明を含めたコンデンサ内蔵式インバータ抵抗溶接機の構成例である。コンデンサ内蔵式インバータ抵抗溶接機は、三相電源を整流し直流に変換する整流器4、溶接電流を供給する大容量コンデンサ7、大容量コンデンサ7を充電する降圧昇圧充電回路6、溶接電流を制御するインバータ回路1(インバータ制御回路2を含む)、大電流を流すインバータ用溶接トランス21、溶接機本体22で構成される。三相電源を整流した直流電圧を使用し、降圧昇圧充電回路6で大容量コンデンサ7を充電する。充電は前回の通電終了から今回の通電開始までの間に行う。溶接制御回路3で起動を受け付け、溶接機本体22でワークを加圧し、充電された大容量コンデンサ7のエネルギを使用してインバータ制御回路2、インバータ回路1によりインバータ用溶接トランス21にPWM制御された図3(a)スイッチング波形電圧を印加し、図3(b)の1次電流が流れ、溶接機本体22に流れる図3(c)の溶接電流を制御する。
図2は、本発明で用いている降圧昇圧充電回路6の一例である。降圧制御用スイッチ33、昇圧制御用スイッチ35、整流器34、36、リアクトル31、電流センサ32、電圧センサ37、降圧昇圧制御回路38で構成し、大容量コンデンサ7を電源電圧以下まで降圧制御で充電し、電源電圧以上に昇圧制御で充電する。
例えば電源電圧AC200Vの場合、整流した約283Vまでは降圧制御で大容量コンデンサ7を充電し283V以上は昇圧制御で充電する。大容量コンデンサ7の電圧が283Vに近づくと充電電流が低下するため、早めに昇圧制御に切り替える。従来は溶接制御回路3の指令に従い、インバータ用溶接トランス21の定格電圧まで充電するが、本発明ではインバータ用トランスの定格電圧を超えた値に充電する。図6は充電電圧による通電可能時間を比較したものであるが、従来は大容量コンデンサ7をインバータ用トランスの定格電圧、例えば600Vに充電していたが、本発明では定格電圧を超えた値の700Vに充電する。
大容量コンデンサ7の電圧は図6のように通電の経過とともに徐々に降下するが、溶接電流が立ち上がり定常状態となり、定常状態の溶接電流を通電の最後まで維持するためには、定常状態の溶接電流を流すに必要な最低電圧、図6の場合であれば400Vを維持できる大容量コンデンサ7の容量が必要となる。
コンデンサの仕様に充放電耐久性として繰り返し使用可能な充放電電圧差(充電電圧から放電後の電圧を差し引いた値)が規定されていて、過度の放電はコンデンサの寿命を短くするため、溶接によるコンデンサの放電での電圧降下の制限が必要となる。通電間隔や周囲温度にもよるが通常、充放電電圧差は200V〜300V程度の値が規定されている。
大容量コンデンサ7に必要となるコンデンサ容量は次のように決定する。大容量コンデンサ7の容量は、溶接機の最大電流、最大通電時間、インバータ用溶接トランス21の巻数比、コンデンサの充電電圧、溶接時のコンデンサ放電による電圧降下を元に計算し、ばらつきなどを考慮して決定される。
例えば最大電流:50KA、最大通電時間:30msec、インバータ用溶接トランス21の巻数比:50、コンデンサの充電電圧:DC600V(インバータ用溶接トランス21の定格電圧とする)、溶接電流供給によるコンデンサ放電の電圧降下:200V、その時のPWM制御のデューティを100%とする場合。コンデンサ容量の単位はF。
実際の概算を示すと、溶接機本体22の概算抵抗は、
(600V−200V)/50/50KA=160μΩ
コンデンサ容量は、(160μΩ×50KA×50KA)×30msec×2/(600V×600V−400V×400V)=0.12F
実際にはこの値に余裕を持たせた値となる。
溶接電流の立ち上がりを速くするためには、大容量コンデンサ7の容量に余裕を持たせることが重要である。図4はインバータ用溶接トランス21の2次電圧16の違いによる溶接電流の立ち上がり時間の差を示したものである。溶接電流の波形は一般的なLR回路(インダクタンスと抵抗)の波形となる。インバータ回路1で直流電圧を交流信号に変換しインバータ用溶接トランス21に印加しインバータ用溶接トランス21の2次側の整流器で整流しているため、実際の溶接電流波形図3(c)は極性の切り替わり部分でリップルがあるが、図4の波形とは概略同じとなる。溶接電流波形の傾きは、通電開始直後は急であるが、最大電流に近づくに従い緩やかとなる。最大電流付近で使用する場合、溶接電流の立ち上がりは非常に遅くなる。例えば最大電流に対して15%程度低いところで制御を行う場合は、溶接電流をより速く立ち上げることができる。図4では最大電流に対する余裕を5%(最大電流:52.6KA、2次電圧:10V)と14%(最大電流:57.9KA:2次電圧:11V)で比較したもので、50KAに達する電流の立ち上がり時間は4.2msecと6.3msecとなる。最大電流の比率が1.1倍であるが、立ち上がり時間の比率は1.5倍となる。最大電流が大きいほど溶接電流の立ち上がりは速くなり、最大電流を大きくするためには大容量コンデンサ7の電圧が高いほど大きくなる。大容量コンデンサ7の電圧(1次電圧15)と2次電圧16には概略、2次電圧=1次電圧/インバータ用溶接トランスの巻数比の関係がある。大容量コンデンサ7の電圧は溶接の経過とともに降下するが、溶接電流が立ち上がるまでは、定常状態の溶接電流を流すに必要な電圧に対して大容量コンデンサ7の電圧は十分に高く維持しなければならない。溶接による大容量コンデンサ7の電圧降下が性能に支障がないよう大容量コンデンサ7の容量を十分確保していればよいが、コンデンサは高価で、必要最小限となっているのが現状である。
効率のよいPWM制御を行う上でも大容量コンデンサ7の容量の余裕は重要である。インバータ回路1で、PWM制御する場合制御周波数で極性が切り替わる。インバータ用溶接トランス21の2次側の溶接電流波形は、図3(c)となるが、極性の切り替わり部分で溶接電流が降下し、溶接電流の立ち上がり時間は遅くなる。
極性の切り替わり時間は、インバータ用溶接トランス21及び1次ケーブルのインダクタンスによる電圧降下が関係し、インバータ用溶接トランス21に印加する電圧に逆比例し、電圧を高くすれば短くできる。図5に一例を示す。図5は図3(a)のデューティ100%のPWM制御のスイッチング波形で、インバータ用溶接トランス21の1次側の電流波形で、W1(A1、B1)の波形はW2(A2、B2)の波形に対して印加電圧は高く、切り替わり時間のB1、B2はB1(印加電圧が高い側)の方が短く、効率が良い。大容量コンデンサ7の電圧は溶接経過とともに降下するので、PWM制御の効率は徐々に悪くなる。大容量コンデンサ7の容量に余裕があり電圧降下が少ない方が効率は良くなる。
前記のように溶接電流の立ち上がりを安定に短時間で立ち上げるためには定常状態の溶接電流を流すに必要な電圧に対して大容量コンデンサ7の電圧が十分余裕があることが重要で、さらに効率のよいPWM制御を行うためには極性の切り替わる部分の時間をより短くする必要がありそのためには大容量コンデンサ7の電圧が高い方がよく、定常状態の溶接電流を維持するためには最低電圧の維持が必要で、大容量コンデンサ7の容量に余裕を設けることがとても重要となるが、コンデンサは高価であり余裕を設けることは難しい。
そこで本発明ではコンデンサの充電電圧をできる限り高くすることを考えるが、従来はインバータ用溶接トランス21の定格電圧を超えた値にコンデンサを充電して使用することはできなかったが、コンデンサの充電電圧をインバータ用溶接トランス21の定格電圧を超えた値に充電して使用できればコンデンサを効率よく使用することが可能となる。コンデンサの充電電圧を高くすると蓄積されるエネルギは大きくなり、溶接電流として供給できるエネルギも大きくなる。蓄積されるエネルギは(1/2)×コンデンサの容量F×充電電圧の2乗 となり、電圧の2乗に比例する。
インバータ用溶接トランス21の定格電圧は絶縁性とインバータ用溶接トランス21のコアの磁束密度により規定されている。絶縁性は一般的に絶縁耐圧が2000V以上確保されている。コアの磁束密度は、印加電圧の時間による積分値で制限を受け、インバータ用溶接トランス21は定格電圧、定格周波数で使用できるように設計されている。
例えば定格電圧600V、周波数1KHzのインバータ用溶接トランス21の場合、600V、0.5msecのパルス電圧を印加でき、スイッチング波形図3(a)の場合、印加電圧×印加時間=600V×0.5msecで制限される。750Vの場合、0.5msec×(600/750)=0.4msecの時間は印加できる。平均電圧は750V×(0.4msec/0.5msec)=600Vでとなり、印加時間は平均電圧で管理できる。従来はインバータ用溶接トランス21の定格電圧を超えた値の電圧を印加することは考えなかったが、平均電圧がインバータ用溶接トランス21の定格電圧を越えなければ磁気飽和することもなく正常に使用できる。前記の例の場合は許容されるパルス幅は0.5msec×平均電圧/現在のコンデンサ電圧となる。
大容量コンデンサ7は通常流通性のよい定格電圧450Vの電解コンデンサを2直列で使用する。インバータ回路1の許容電源電圧は通常AC480V程度、直流電圧に換算すると約680Vで、インバータ回路1に使用するスイッチング素子の耐圧は1200V品が使用されており、スイッチングノイズに対する余裕を考慮すると、コンデンサの充電してよい電圧の上限は750V〜800V程度となる。
本発明では、溶接制御回路3、インバータ回路1、降圧昇圧充電回路6で大容量コンデンサ7の電圧を溶接トランスの定格電圧を超えた値、例えば750Vに充電しPWM制御で計算されたパルス幅Tpwmを、図7のPWMパルス幅制限処理フローチャートに従い、大容量コンデンサ7の電圧Vcを計測し、Vcがインバータ用溶接トランス21の定格電圧VTRを超えている時は制限パルス幅TPを平均電圧が定格電圧となるようTP = TT × VTR/Vcで計算(TTはインバータ用溶接トランス21の定格電圧の時の許容パルス幅)し、TPを超えている時はTPで制限する。これにより大容量コンデンサ7をインバータ用トランスの定格電圧を超えた値に充電して使用することが可能となり、大容量コンデンサ7を効率よく使用することが可能となる。
大容量コンデンサ7がインバータ用溶接トランス21の定格電圧を超えてパルス幅を制限する具体例を示す。定格電圧600V、制御周波数1000Hzのインバータ用溶接トランス21を使用する場合、PWM制御の片側のパルス幅は0.5msecとなり、大容量コンデンサ7の充電電圧が750Vで通電開始した場合、許容パルス幅は0.5msec×600V/750V=0.4msec、通電経過により大容量コンデンサ7の電圧が700Vに降下した状態では、0.5msec ×600V/700V=約0.43msec、さらに通電経過により大容量コンデンサ7の電圧が650Vに降下した状態では、0.5msec ×600V/650V=約0.46msec、大容量コンデンサ7の電圧が600V以下に降下した場合は、平均電圧が定格電圧以下となるので、0.5msecとなる。溶接電流が立ち上がり定常状態になれば、インバータのPWM制御で定常状態の溶接電流を流すに必要なパルス幅で制御される。
溶接電流、通電時間が同じ場合の具体的な事例として、前記の大容量コンデンサの必要容量の計算例でコンデンサの充電電圧(インバータ用溶接トランスの定格電圧)600Vをインバータ用溶接トランスの定格電圧を超えた値の700Vにした場合を示す。コンデンサの充電電圧600Vの場合の必要容量は0.12Fであった。
前記と同様に計算すると、コンデンサ容量は、(160μΩ×50KA×50KA)×30msec×2/(700V×700V−400V×400V)=0.073F、0.073F/0.12F=約60% となり、本発明のインバータ用溶接トランス21の定格電圧を超えた値にコンデンサを充電することで、大幅にコンデンサ容量を低減できる。
溶接電流、大容量コンデンサ7の容量が同じ場合の具体的な事例として、図6を示す。従来のようにインバータ用溶接トランス21定格電圧600Vと本発明の定格電圧を超えた値の700Vに大容量コンデンサ7を充電した場合で、通電による放電で大容量コンデンサ7の電圧が400Vまで降下するまでの通電可能時間を比較すると35msecと58msecで、約1.7倍と大幅な増加となる。本発明のインバータ用溶接トランス21の定格電圧を超えた値にコンデンサを充電することで、通電時間を大幅に増加できる。
インバータ回路1によりPWM制御された溶接電流は、大容量コンデンサ7の充電電圧に関係なく設定電流となるが、コンデンサからの供給電流はPWM制御されているので、連続電流ではなく図3(b)のようにパルス電流となり大容量コンデンサ7の充電電圧が高ければ高いほどパルス幅は短く、コンデンサからの供給電流は小さくなり、大容量コンデンサ7の充放電電圧差も小さく、大容量コンデンサ7の発熱も小さくなり、大容量コンデンサ7の寿命は温度との相関が有り、寿命が長くなる。
大容量コンデンサ7の充電電圧を高くすることにより効率よくエネルギを蓄積できるようになるが、使用する溶接電流に対して過度にインバータ用溶接トランス21の2次側の電圧が高くなるとPWM制御が難しくなる。インバータ用溶接トランス21の2次側の電圧が高くなると最大電流も大きくなり、溶接電流に対して過度に最大電流が大きいと(最大電流に対して使用する溶接電流が小さ過ぎると)、電流変化の大きいところで溶接電流を制御することになり、分解能の不足や過大なリップルなどによりインバータのPWM制御の動作が不安定になり制御が難しくなる。図8に、図4の2次電圧(図1の16)を8V、10Vにした拡大図を示す。図8は溶接電流波形と溶接電流波形の傾きの一例で、PWM制御で5KAの溶接電流を制御する場合にインバータ用溶接トランス21の2次電圧16の8Vと10Vの違いを示したものであるが、制御する溶接電流が小さくなると溶接電流の傾きが大きくなり、パルス幅のわずかな変化で溶接電流が大きく変化する。8Vの場合には0.1msec当たり約1.7KA,10Vの場合には約2.3KAとなる。
一般的に最大電流の5%から15%を最低制御電流の目安にしている。例えば最大電流が50KAの場合、2.5KA〜7.5KAが最低制御電流の目安となる。大容量コンデンサ7の充電電圧を高くすれば最大電流も高くなり、最低制御電流も高くなる。そのため、本発明のように大容量コンデンサ7をインバータ用溶接トランス21の定格電圧を超えた値に充電して使用する場合、特に使用する溶接電流に応じて大容量コンデンサ7の充電電圧の制限が必要となる。例えば大容量コンデンサ7の電圧が600Vで最大電流50KAの場合、750Vにすると最低制御電流は2.5KA〜7.5KAが、3.1KA〜9.4KAとなり、大容量コンデンサ7の充電電圧を高くすると溶接電流の適応範囲が狭くなる。
そこで本発明では、使用する溶接電流に応じて充電電圧を制限する。充電電圧の制限方法はいろいろあるが、例えば、図9で設定溶接電流により充電電圧を計算する処理のフローチャートを示すように最大電流の15%が設定溶接電流となる値を求め、その最大電流となる充電電圧を計算し、最大充電電圧以下となるように制限する。最大充電電圧を750V、インバータ用溶接トランス21の定格電圧を600V、最大電流を50KA、設定溶接電流を5KAの場合、最大電流の15%が設定溶接電流となる値=5KA/15%=33.3KA、大容量コンデンサ7の充電電圧=600V×33.3KA/50KA=約400Vとなり、最大充電電圧の750V以下となるので、大容量コンデンサ7の充電電圧は400Vとなる。
大容量コンデンサ7を750Vに充電して使用できるのは、750V/600V×50KA×15%=9.4KA 以上の溶接電流で大容量コンデンサ7を750Vに充電して使用できる。PWM制御では溶接電流が定常状態に到達するまでは、前記のインバータ用溶接トランス21に平均値の定格電圧以下となるようにパルス幅を制限する以外はPWM制御のパルス幅は固定となるため、その間の大容量コンデンサ7の放電による電圧降下がありPWM制御の低い溶接電流に対する充電電圧の制限には余裕がある。目安とする15%の値にも余裕がり、設定値として調整してもよい。
本発明では、設定溶接電流で充電電圧を制限することで、低い溶接電流でもPWM制御を安定に行うことができ、溶接機の溶接電流の適応範囲を広げることが可能となる。
抵抗溶接機において大容量コンデンサ7の容量を低減しても小容量の受電設備を使用でき、安定した電流の立ち上がりと溶接電流により、品質の安定した溶接を提供できる。
1 インバータ回路
2 インバータ制御回路
3 溶接制御回路
4 整流器
6 降圧昇圧充電回路
7 大容量コンデンサ
13 電流センサ
14 大容量コンデンサの電圧
15 1次電圧
16 2次電圧
21 インバータ用溶接トランス
22 溶接機本体
31 リアクトル
32 電流センサ
33 降圧制御用スイッチ
34 整流器
35 昇圧制御用スイッチ
36 整流器
37 電圧センサ
38 降圧昇圧制御回路

Claims (2)

  1. 溶接電流を供給する大容量コンデンサ7と降圧昇圧充電回路6を内蔵しインバータ用溶接トランス21の定格電圧を超えた値に大容量コンデンサ7を充電し、また、インバータ用溶接トランス21の印加電圧の平均値がインバータ用溶接トランス21の定格電圧を超えないようにパルス幅を制限して制御することを特徴とする、コンデンサ内蔵式インバータ抵抗溶接機。
  2. 請求項1に記載のコンデンサ内蔵式インバータ抵抗溶接機において、溶接電流が小さくインバータのPWM(Pulse Width Modulation)制御範囲を下回る時には、コンデンサの充電電圧をPWM制御範囲となるように調整する機能を有するコンデンサ内蔵式インバータ抵抗溶接機。
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