JP2017086276A - 積層不織布 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1に記載された不織布は、第1、第2シートからなる2層構造であり、両シートともに凹凸構造を有するものである。第1シートの第2面側に突出した第2突出部と、第2シートの第1面側に突出した第3突出部とが接合されている。また第1突出部の頂部とその開口部とを結ぶ方向に沿って繊維配向性を有している。
また特許文献2の不織布は、上層シートの凹凸形状は歯車状の部材のかみ合わせによってなされたものであるため、側壁の立ち上りが急峻な状態になっていた。また、凸部の側壁の形状が平面視して、ほぼ矩形になっている。そのため、クッション性をさらによくするために、クッション性を改善する余地があった。
前記第1面側の一方向に連続して突出していて前記第2面側に連続した内部空間を有してなる第3突出部と、前記第2面側の前記一方向に沿う方向に連続して突出していて前記第1面側に連続した内部空間を有してなる第4突出部とを備えてなり、前記第3、第4突出部が該不織布の平面視前記一方向と交差する方向に交互に複数配された第2不織布シートとを有してなり、
前記第1不織布シートの第2面側に前記第2不織布シートが配されていて、前記複数の第4突出部のうち、前記第2突出部の頂部領域に対応する第4突出部の頂部領域の裏面側と、前記第2突出部の頂部領域とが接合された積層不織布を提供する。
本発明の積層不織布10は、例えば生理用ナプキンやおむつなどの吸収性物品の表面シートに適用することが好ましい。その際、第1面側Z1を着用者の肌面側に向けて用い、第2面側Z2を物品内部の吸収体(図示せず)側に配置して用いることが好ましい。以下、図面に示した積層不織布10の第1面側Z1を着用者の肌面に向けて用いる実施態様を考慮して説明する。本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
第1不織布シート11は、平面視した側の第1面側Z1に突出していて、第1面側Z1とは反対側の第2面側Z2に開口した内部空間13を有した第1突出部12を備えている。さらに第2面側Z2に突出していて、第1面側Z1に開口した内部空間15を有してなる第2突出部14を備えている。そして第1、第2突出部12、14は、積層不織布10の平面視交差する異なる方向のそれぞれに交互に複数が連続した状態で配されている。上記異なる方向とは、一例として、x方向(x軸方向)と、このx方向とは異なるy方向(y軸方向)である。上記x軸とy軸の交差角度は、30°以上90°以下とすることが好ましく、本実施形態では90°とした。また第1面側Z1をz軸方向上方側とし、第2面側Z2をz軸方向下方側とした。
上記頂部領域14Tと頂部領域24Tの裏面側との接合は、頂部領域14Tの頂点と頂部領域24Tの頂点の裏面側との接合部の周辺領域も接合していることが好ましい。すなわち、第2突出部14における壁部16の頂点側と第4突出部24の内部空間25における壁部26の底部側とが接合していることが好ましい。
さらに、内部空間13は斜め方向に連続して繋がっている。このことから、一つの第1突出部12の内部空間13が液体で満たされて一杯になった状態で積層不織布10に外部から圧力がかかると、隣接する内部空間13に液体が流れ込む。そのため、液戻りすることが抑えられる。これによって、内部空間13による液体の保持量が十分に確保できる。しかも、この内部空間13によって、液が直接吸収体(図示せず)に到達しやすくなり、液の吸収速度が速くなる。
第1突出部12の頂部領域12Tおよび第2突出部14の頂部領域14Tは、それぞれ、丸みをもった円錐台形状もしくは半球状にされている。なお、本実施形態において、第1突出部12および第2突出部14は上記形状に限定されず、どのような突出形態でもよい。例えば、様々な錐体形状であることが実際的である。この錐体形状とは、円錐、円錐台、角錐、角錐台、斜円錐等を広く含む意味である。
また第1突出部12の頂部領域(以下、第1突出部頂部ともいう。)12T内には、その外形と相似する丸みのある円錐台形状または半球状の内部空間13を有している。同様に第2突出部14の頂部領域(以下、第2突出部頂部ともいう。)14T内には、その外形と相似する丸みのある円錐台形状または半球状の内部空間15を有している。
「環状」とは、平面視において無端の一連の形状をなしていれば特に限定されず、平面視において円、楕円、矩形、多角形など、どのような形状であってもよい。シートの連続状態を好適に維持する上では、平面視で円または楕円が好ましい。さらに「環状」を立体形状としていえば、円柱状、斜円柱状、楕円柱状、切頭円錐状、切頭斜円錐状、切頭楕円錐状、切頭四角錐状、切頭斜四角錐状など任意の環構造が挙げられる。連続したシート状態を実現する上では、円柱状、楕円柱状、切頭円錐状、切頭楕円錐状が好ましい。
第1不織布シート11は、第1突出部12の繊維密度が最も低密度であり、第2突出部14の繊維密度が最も高密度である。そして、第1突出部12から第2突出部14に向けて繊維密度が高くなる密度勾配があることがより好ましい。この繊維密度の勾配は、第1突出部12から第2突出部14に向かって繊維密度が高くなる様々な態様を広く含むものである。例えば、繊維密度の勾配が、漸次高くなる態様でもよく、段階的に高くなる態様でもよい。繊維密度は、不織布の単位面積当たりの繊維質量であり、後述する測定方法で測定される。繊維密度が高いとは、不織布の単位面積当たりに存在する繊維量が多いことを意味し、繊維間距離が短いことを意味する。繊維密度が低いとは、不織布の単位面積当たりに存在する繊維の量が少なく、繊維間距離が長いことを意味する。そのため、繊維密度が高い部分は繊維密度が低い部分よりも毛管力が高くなる。
上記各部位において、1mm2当たりの繊維本数を計測することで評価する。例えば、第1突出部12の繊維密度は、不織布表面の風合い向上という観点から、30本/mm2以上であることが好ましく、50本/mm2以上であることがより好ましい。そして、130本/mm2以下であることが好ましく、120本/mm2以下であることがより好ましい。より具体的には、30本/mm2以上130本/mm2以下、好ましくは50本/mm2以上120本/mm2以下である。一方、第2突出部14の繊維密度は、型崩れせずに確実なクッション性を有するという観点から、250本/mm2以上であることが好ましく、270本/mm2以上であることがより好ましい。そして、500本/mm2以下であることが好ましく、480本/mm2以下であることがより好ましい。より具体的には、250本/mm2以上500本/mm2以下が好ましく、270本/mm2以上480本/mm2以下がより好ましい。
第1突出部12の繊維密度と第2突出部14の繊維密度との差は、150本/mm2以上であることが好ましく、300本/mm2以上であることがより好ましい。この差は、大きいほど好ましいが、上限としては、700本/mm2程度である。
さらに、環状壁部16の繊維密度は、150本/mm2以上であることが好ましい。そして、450本/mm2以下であることが好ましく、350本/mm2以下であることがより好ましい。より具体的には、150本/mm2以上450本/mm2以下が好ましく、150本/mm2以上350本/mm2以下がより好ましい。
これによって、第1不織布シート11は第2不織布シート21よりも液透過性に優れ、液を第1突出部12の内部空間13に引き込むため、液残りが低減される。引き込まれた液は液吸収性に優れる第2不織布シート21に移行し、第3突出部22の内部空間23に引き込まれ、吸収体(図示せず)に吸収される。このため、第2不織布シート21での液戻りが低減される。
不織布の切断面を、走査電子顕微鏡を用いて、30本から60本の繊維断面を拡大観察できる150倍〜500倍の計測倍率に調整する。そして、繊維の断面数を測定し、一定面積あたりの切断面によって切断されている繊維の断面数を数える。また、観察の中心は、第1突出部12の頂部領域12Tの層厚みの中央付近であり、壁部16についてはシート厚み方向の中心付近における層厚みの中央付近である。第2突出部14については頂部領域14Tの層厚みの中央付近である。次に1mm2当たりの繊維の断面数に換算し、これを繊維密度(本/mm2)とする。測定は3ヶ所行い、平均してそのサンプルの繊維密度とする。上記走査電子顕微鏡には、日本電子株式会社製のJCM−5100(商品名)を用いることができる。
第1不織布シート11の平均繊維密度は、140本/mm2以上であり、160本/mm2以上が好ましい。そして、320本/mm2以下であり、300本/mm2以下が好ましい。より具体的には、140本/mm2以上320本/mm2以下であり、160本/mm2以上300本/mm2以下が好ましい。
第2不織布シート21の平均繊維密度は、490本/mm2以上であり、560本/mm2以上が好ましい。そして、1120本/mm2以下であり、1050本/mm2以下が好ましい。より具体的には、490本/mm2以上1120本/mm2以下であり、560本/mm2以上1050本/mm2以下が好ましい。
上記積層不織布10に、シートの全面に渡って0.05kPaの圧力がかかるように荷重をかける。このときの厚みtが、好ましくは2mm以上、より好ましくは3.5mm以上、さらに好ましくは5mm以上である。そして好ましくは14mm以下、より好ましくは9mm以下、さらに好ましくは7.5mm以下である。より具体的には、好ましくは2mm以上14mm以下であり、より好ましくは3.5mm以上9mm以下であり、さらに好ましくは5mm以上7.5mm以下である。厚みが厚すぎると吸収性物品の表面材として使用した場合、装着時の違和感となる。また、厚みが薄すぎると、クッション性が十分に得られなくなり、液戻り量が大きくなる。なお、上述の厚みTは、z軸方向でみた第1突出部12の頂点から第4突出部24の頂点までの高さの平均値をいう。
また第1不織布シート11の厚みt1は、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、さらに好ましくは3mm以上である。そして好ましくは10mm以下、より好ましくは6mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。より具体的には、好ましくは1mm以上10mm以下であり、より好ましくは2mm以上6mm以下であり、さらに好ましくは3mm以上5mm以下である。
さらに第2不織布シート21の厚みt2は、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2mm以上である。そして好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2.5mm以下である。より具体的には、好ましくは1mm以上4mm以下であり、より好ましくは1.5mm以上3mm以下であり、さらに好ましくは2mm以上2.5mm以下である。
積層不織布10の第1突出部12の壁部16(16a)を構成する繊維は、壁部16aの全周にわたって第1突出部頂部12Tと開口部12Hの縁部を結ぶ方向に繊維配向性を有する。言い換えれば、壁部16aを構成する繊維は、第1突出部頂部12Tに向かって収束する様に配向し、その起立する方向に繊維配向性を有する。また上記第2突出部14の壁部16(16b)を構成する繊維は、壁部16bの全周にわたって第2突出部頂部14Tと開口部14Hの縁部を結ぶ方向に繊維配向性を有する。したがって、第1突出部12と第2突出部14の繊維配向性は壁部16で同様になる。
これにより、第1突出部12と第2突出部14とを繋ぐ壁部16にしっかりとしたコシが生まれ、繊維が厚み方向に潰れてしまうことのない適度のクッション性が実現できる。
繊維の配向角は、色々な方向性を有する複数の繊維が全体としてどの方向に配向しているかを示す概念で、繊維の集合体の形状を数値化している。繊維の配向強度は、配向角を示す繊維の量を示す概念であり、配向強度は、1.05未満では、ほとんど配向しておらず、1.05以上で配向を有しているといえる。しかしながら、本実施形態においては、繊維配向がその部位によって変化している。すなわち、ある配向角の状態の部位から異なる配向角の部位へと変化する間に、配向強度が弱い状態や再配向することで高い状態へ至る等の様々な状態を有する。そのため、ある強い配向角を示す部位と別の方向に強い配向角を示す部位との間においては、繊維の配向強度が弱くとも繊維の配向角が変わっていることが好ましい。また配向強度が高いことがより好ましい。
配向角、配向強度について本実施形態において一例を示す。第1突出部12の壁部16aの曲面構造に対して配向角は、50°以上が好ましく、60°以上がより好ましい。そして、130°以下が好ましく、120°以下がより好ましい。より具体的には、50°以上130°以下が好ましく、60°以上120°以下がより好ましい。
配向強度は1.05以上が好ましく、1.10以上がより好ましい。そして、第2突出部14の壁部16bも同様になる。
上記のような配向強度、配向角に設定することで、厚み方向の荷重をしっかりと受け止め、高荷重下であっても、第1突出部12と第2突出部14が潰されることがなくなる。これによっても液戻り量が低減できる。
第2不織布シート21は、後述する歯溝ロールを用いて延伸加工された不織布である。例えば、図4に示すように、賦形前の第2不織布シート21は、波板状の繊維シート30である。すなわち、一直線状の凸条部31と一直線状の凹条部32とが交互に繰り返し配された不織布である。上記実施形態に用いた第2不織布シート21は、y方向に延びる凸条部31と凹条部32がx方向に交互に配されている。図5に示すように、断面視した繊維シート30は、Z方向を厚みとして、その厚みを3等分して区分する。すなわち、厚み方向(Z方向)の上方の部位を頂部域30a、厚み方向(Z方向)の中央の部位を側部域30c、厚み方向(Z方向)の下方の部位を底部域30bとする。
上記繊維シート30は、後述するように、延伸によって、側部域30cだけではなく凸条部31の頂部域30aおよび凹条部32の底部域30bも延伸される。そのため、延伸前の原料不織布より不織布全体の繊維密度が低下している。それにより、繊維シート30全体の通液性と通気性が向上している。特に延伸されやすい側部域30cの繊維密度が最も低くなっており、通液性と通気性が特に向上している。一方、頂部域30a、底部域30bは繊維密度が高くなっている。
繊維密度が高いとは、繊維シート30の単位体積あたりに存在する繊維の量が多く、繊維間距離が短いことを意味する。繊維密度が低いとは、繊維シート30の単位体積あたりに存在する繊維の量が少なく、繊維間距離が長いことを意味する。そして、繊維密度が高い部位は毛管力が高く、繊維密度が低い部位は毛管力が低くなっている。
繊維34の構成では、剛性の高まる融着部35に隣接して、大径部37よりも低剛性の小径部36が配されている。これにより、繊維34を含む第2不織布シート21の柔軟性が向上し、第1不織布シート11の形態と相俟って、積層不織布10全体の肌触りが良好となる。
小径部36の繊維径は、肌触り向上と不織布強度の低下を抑える観点から、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは6.5μm以上、特に好ましくは7.5μm以上である。そして、好ましくは28μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは16μm以下である。より具体的には、好ましくは5μm以上28μm以下、さらに好ましくは6.5μm以上20μm以下、特に好ましくは7.5μm以上16μm以下である。
大径部37の繊維径は、肌触り向上の観点から、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは13μm以上、特に好ましくは15μm以上である。そして、好ましくは35μm以下、さらに好ましくは25μm以下、特に好ましくは20μm以下である。より具体的には、好ましくは10μm以上35μm以下、さらに好ましくは13μm以上25μm以下、特に好ましくは15μm以上20μm以下である。
また、第2不織布シート21において、同一繊維中に有する繊維径が互いに異なる部位の接触角が異なることが好ましい。具体的には、図7に示す小径部36と大径部37との間において、小径部36の接触角が大径部37の接触角よりも大きいことが好ましい。この「接触角」は、以下に述べる方法で測定された繊維の接触角である。この接触角の値により繊維の「親水度」の程度がわかる。具体的には、接触角が大きいことは親水度が低いことと同義であり、接触角が小さいことは親水度が高いことと同義である。したがって、小径部36の接触角が大径部37の接触角よりも大きいことで、小径部36の親水度が大径部37の親水度よりも低いことが好ましい。
まず、第2不織布シート21の構成繊維をランダムに複数抽出する。抽出した構成繊維の中から小径部36および大径部37を備えた構成繊維を選び出し、構成繊維における小径部36の位置および大径部37の位置での水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には蒸留水を用いる。
インクジェット方式水滴吐出部から吐出される液量を15ピコリットルに設定する。インクジェット方式水滴吐出部にはクラスターテクノロジー株式会社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25を用いた。そして、水滴を、小径部36の位置および大径部37の位置それぞれの中央の真上に滴下する。
滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msecごとに画像が録画される。録画された画像において、選出された構成繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトウエアFAMASにて画像解析を行う。ソフトウエアのバージョンは2.6.2である。解析手法は液滴法であり、解析方法はθ/2法である。画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする。画像解析に基づき、水滴の空気に触れる面と繊維のなす角を算出して接触角とする。選び出された構成繊維は、繊維長1mm程度に裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。繊維1本の小径部36および大径部37につき、位置の異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の小径部16および大径部17の接触角を小数点以下1桁まで計測する。合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第1桁で四捨五入)を小径部36および大径部37の接触角と定義する。
小径部36の接触角は、60度以上が好ましく、70度以上がより好ましく、80度以上がさらに好ましい。そして、100度以下が好ましく、95度以下がより好ましく、90度以下がさらに好ましい。より具体的に小径部16の接触角は、60度以上100度以下が好ましく、70度以上95度以下がより好ましく、80度以上90度以下がさらに好ましい。
大径部37の接触角は、55度以上が好ましく、60度以上がより好ましく、65度以上がさらに好ましい。そして、90度以下が好ましく、85度以下がより好ましく、80度以下がさらに好ましい。より具体的に大径部37の接触角は、55度以上90度以下が好ましく、60度以上85度以下がより好ましく、65度以上80度以下がさらに好ましい。
積層不織布10において、第1不織布シート11および第2不織布シート21の構成繊維は、通常の不織布に用いられる繊維材料を特に制限なく用いることができる。例えば、特開2012−136791号公報の段落[0032]、特開2012‐149371号公報の段落[0034]等に記載の繊維素材などが挙げられる。
一方、第2樹脂成分は、その配向指数は、5%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。配向指数は、繊維を構成する樹脂の高分子鎖の配向の程度の指標となるものである。
すなわち、原料の段階で、構成繊維内の高伸度繊維の表面に繊維処理剤が付着していることが好ましい。繊維処理剤は、延展性のある成分を含んでいることが好ましく、延展性のある成分と親水性の成分とが含まれていることがさらに好ましい。ここで、延展性のある成分とは、繊維の表面に付着させると、繊維の表面に低温で広がり易く、低温での流動性に優れた成分のことをいう。このような延展性のある成分としては、ガラス転移点が低く、分子鎖に柔軟性のあるシリコーン樹脂が挙げられる。シリコーン樹脂として、Si−O−Si鎖を主鎖とするポリオルガノシロキサンが好ましく用いられる。延展性のある成分は、繊維を延伸させる際に広がりやすく、親水性の成分は広がりにくい。このことから、繊維の表面に付着している繊維処理剤に延展性のある成分と親水性の成分とが含まれている場合、繊維の延伸部位の親水度が変化すると考えられる。
積層不織布10は、エアースルー方式において、吹き付ける熱風の温度や風速を制御して賦形処理および熱融着処理を施して製造することができる。例えば、特開2012−136790号公報の段落[0031]に記載の方法を用いることができる。または特開2012−149371号公報の段落[0033]〜[0061]に記載の方法を用いることができる。また、賦形の際に用いる支持体には、特開2012−149370号公報の図1、2に示す支持体や特開2012−149371号公報の図1から4に示す支持体等が挙げられる。
図8に示すように、一例として支持体100を用いた製造方法を説明する。支持体100は、複数の棒状体101と、棒状体101間に離間して配置された複数の突起102と、複数の突起102に囲まれた複数の孔103とを有する。この支持体100としては、例えば特開2012−149371号公報の図1に記載のものなどが挙げられる。
まず、延伸処理された第2不織布シート21を、後述する方法により予め準備する。
次いで、第1不織布シート11の原料となる繊維融着前の繊維ウエブ50をカード機で形成しながら、第2不織布シート21とともに、支持体100に向けて搬送する。その際、支持体100の突起102に対して、繊維ウエブ50、第2不織布シート21の順に積層する。ここでは、第2不織布シート21の第3突出部22の畝状に延出される方向および第4突出部24の内部空間25の溝状に延出される方向と直角な方向を搬送方向としている。したがって、図8では、各シートの搬送方向に対し直角方向から見た側面を示しており、図面の左右方向がシートの搬送方向(MD)である。そしてこれに直交する図面の奥から手前に向かう方向がシートの幅方向(CD)である。なお、図8に示す支持体100の三つの突起102のうち、中央のものは、左右2つのものよりも奥に配置されたものである。
このように繊維シート30が配されることから、繊維シート30は繊維ウエブ50の賦形に沿って変形する。その際、繊維シート30は、凸条部31および凹条部32が延ばされ、延ばされた分が第4突出部24となる。しかし、凸条部31および凹条部32による波板形状をなしていたため、賦形時の熱風による風力に対向して、波板形状を保持しようとする力が作用する。そのため、前述の図3に示したように、第3突出部22にはy方向(CD)に緩やかな凹凸形状が形成される。
また突起102に支持された第1不織布シート11及び第2不織布シート21の部分に、熱風に伴う圧力が掛かる。そのため、第2不織布シート21の第4突出部頂部24Tおよび第1不織布シート11の第2突出部頂部14Tは押し潰されて接合される。その結果、第4突出部24の第1面側Z1(裏面側)に第2突出部頂部14Tが密着して一体化される。
以上のとおり、熱風処理により第1不織布シート11及び第2不織布シート21が賦形される。これにより、第1不織布シート11および第2不織布シート21の各繊維密度は、第2突出部頂部14Tと第4突出部頂部24Tとの接合部分で最も高密度となる。
前述のとおり、積層不織布10の製造方法おいては、第2不織布シート21は予め準備される。その第2不織布シート21の好ましい製造方法を次に説明する。
製造方法は、繊維ウエブの構成繊維同士の交点を熱融着する融着工程と、融着された繊維ウエブを一方向に延伸して筋状の凹凸形状に賦形する延伸工程とを備える。繊維ウエブは、延伸加工における繊維の小径部36および大径部37の形成の観点から、前述した繊維処理剤が付与された高伸度繊維を含むことが好ましい。以下、高伸度繊維を含むものとして説明する。
さらに、繊維シート30の畝状の凸条部31と溝状の凹条部32とが第1不織布シート21の搬送方向(MD)に対して斜め方向、例えば45度方向に作製されていてもよい。
仮に、構成繊維に弾性繊維が入っている場合、不織布が収縮されながら延伸されるため、不織布の製造方法と機械延伸倍率が同じ場合であっても、繊維径の変化が起こりにくい。そのため、構成繊維に弾性繊維が入っている場合、極端に繊維径が変化する部位である変化点38ができにくくなる。そのかわり、小径部36から大径部37へ連続的に漸次変化する部位が形成されやすくなる。このように形成される連続的に漸次変化する部位は、弾性繊維が入っているため、融着点付近で局部的に延伸されるとは限らない。局部的な延伸箇所が融着点付近というよりも、構成繊維全体にランダムに観察されるようになる。この観点からも、構成繊維に弾性繊維を含まないほうが好ましい。
製造された第2不織布シート21(繊維シート30)は、一旦巻き取られてロールの形態とされる。その後、ロールから繰り出されて、第1不織布シート11の原料となる繊維ウエブ50と積層され、積層不織布10が形成される。
表面シート1には上記実施形態の積層不織布10が適用され、その第1突出部12側が肌当接面とされている。
吸収体3としては、液保持性を有するものであれば、この種の物品に用いられる様々の態様ものを広く採用できる。例えば、パルプ繊維をコアラップシートで被覆したもの、エアレイド不織を用いたシート状のもの、高吸水性ポリマーを繊維シートで挟持してなるシート状のものなど様々ある。
またコアラップシートは、親水性の部材である。例えば、親水性のティッシュペーパー等の薄手の紙(薄葉紙)、クレープ紙、不織布を挙げることができる。
本例ではサイドシート5が配されている。サイドシート5としては、撥水性の不織布が好ましい。
さらにサイドシート5がなす横漏れ防止ギャザー7が設けられており、これにより乳幼児の運動等による股関節部分における液体等の横漏れを効果的に防止しうる。本実施形態のおむつにおいては、さらに機能的な構造部やシート材等を設けてもよい。なお、図12においては各部材の配置関係や境界を厳密には図示しておらず、この種のおむつの一般的な形態とされていれば特にその構造は限定されない。
おむつ200は、積層不織布10を表面シート1として適用したことにより、肌当接面上での液戻りの防止と肌触りの良さ、クッション感の向上の両立を図ることができる。また、積層不織布10の凹凸形状によってより高い通気性が得られる。
実施例1の積層不織布として、図13に示すものを作製した。
まず、第2不織布シート21を次の方法により作製した。
構成繊維として、普通伸度繊維のみからなり、弾性(エラストマー)を有していない繊維を用いた。具体的には、前記普通伸度繊維は、芯部がポリエチレンテレフタレートであり、鞘部がポリエチレンである同心タイプの芯鞘型複合繊維であった。普通伸度繊維は、繊度3.3dtexで、伸度55%であった。この「普通伸度繊維」とは、特定の伸度の性能を有する繊維であり、具体的には繊維の破断伸度が30%以上100%未満の性能を有する繊維を意味する。
上記構成繊維のウエブを温度133℃、風速0.7m/sec、処理時間30秒、加工速度5m/minの条件で熱風を吹き付けて融着処理を行った。
次に、上記の第2不織布シート21を、第1不織布シート11を形成する繊維ウエブ50を合わせて図8に示したように支持体100を用いて積層不織布10を作製した。支持体100における突起102のピッチは、MDピッチ10mm、CDピッチ3mmとした。
第1不織布シート11となる繊維ウエブ50には、構成繊維として、繊度2.4dtexの、芯がポリエチレンテレフタレート、鞘がポリエチレンの芯鞘構造の繊維を用いた。このような繊維を用いて、カード機により坪量20g/m2の繊維ウエブ50を作製した。次いで、図7のように、支持体100の突起102上に、第2不織布シート21、繊維ウエブ50を積層した。そして、第1エアースルー工程により賦形処理を行い、第2エアースルー工程により構成繊維同士の融着処理を行った。
第2エアースルー工程は、熱風の温度136℃、風速0.7m/sec、熱処理時間30sec、加工速度5m/minであった。
これにより得た積層不織布10は、図13に示すような、2層構造で、開孔を有さず、坪量48g/m2、厚み5mmのものとなった。
また、第2不織布シート21の層には、同一繊維内に、小径部および大径部の混在していた。これは、前述の走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製JCM−5100)を用いた測定方法により確認した。
加えて、第1不織布シート11の層には、第1突出部12が第2突出部14よりも繊維密度が低くされていた。これは、前述の走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製JCM−5100)を用いた測定方法により確認した。
実施例2は、第2不織布シート21に下記の高伸度繊維を用いた以外、実施例1と同様の製造方法により作成した。
構成繊維として、高伸度繊維のみからなり、弾性(エラストマー)を有していない繊維を用いた。具体的には、高伸度繊維は、芯部がポリエチレンテレフタレートであり、鞘部がポリエチレンである同心タイプの芯鞘型複合繊維であった。高伸度繊維は、繊度3.3dtexで、伸度350%であった。高伸度繊維に付着させる繊維処理剤として次の組成のものを用いた。
高伸度繊維に付着させる繊維処理剤として次の組成のものを用いた。
延展性のある成分:ポリオルガノシロキサン 5.0質量%
親水性成分:ポリオキシエチレン(POE)ポリオキシプロピレン(POP)変性シリコーン 19.0質量%
ポリオキシエチレン(POE)アルキルアミド 28.5質量%
ステアリルベタイン 14.3質量%
疎水性成分:アルキルリン酸エステル 23.7質量%
アニオン界面活性剤 9.5質量%
比較例1は、第2不織布シート21に歯溝加工を施さなかった以外、実施例1と同様の製造方法により作成した。
0.05kPaの圧力がかかるように荷重を加えた状態で、厚み測定器を用いて測定した。厚み測定器にはオムロン社製のレーザー変位計を用いた。厚み測定は、10点測定し、それらの平均値を算出して厚みとした。
[3kPa圧力時の厚みの測定]
3kPaの圧力がかかるように荷重を加えた状態で、厚み測定器を用いて測定した。厚み測定器にはオムロン社製のレーザー変位計を用いた。厚み測定は、10点測定し、それらの平均値を算出して厚みとした。
以下の式で計算した。数値の小さい方が潰れにくく、耐圧縮性がある。つまり、形状保持性があると評価した。
{(0.05kp時の厚み)−(3kpa時の厚み)}/0.05kpa時の厚み×100
液戻り量の測定は、評価用の乳幼児用おむつを用いた。評価用の乳幼児用おむつは、吸収性物品100の一例として乳幼児用おむつから表面シートを取り除き、その代わりに積層不織布10の試験体を用い、その周囲を固定して得た。乳幼児用おむつには、花王株式会社製のメリーズさらさらエアスルー(登録商標)Mサイズ、2012年製を用いた。なお積層不織布10の試験体は、以下、不織布試験体という。
上記不織布試験体上に3kPaの圧力を均等にかけ、試験体のほぼ中央に設置した断面積1000mm2の筒を当て、そこから人口尿を注入した。人工尿としては、生理食塩水を用い、10分ごとに40gずつ4回にわたり、計160gの人工尿を注入した。
注入完了から10分静置した後に、上述の円筒および圧力を取り除いた。そして吸収シート(質量=M1)に3kPaの圧力がかかるように調整した重りを、注入点を中心として不織布試験体上に置いた。吸収シート(質量=M1)には、アドバンテック株式会社製のろ紙No.5C(100mm×100mm)を20枚重ねて用いた。
5分静置した後に重りを取り除き、ろ紙の質量(M2)を測定し、次式のようにして、液戻り量を算出した。
液戻り量(g)=加圧後のろ紙の質量(M2)−加圧前のろ紙の質量(M1)
クッション感の評価法は、KES圧縮試験機(カトーテック株式会社製KES FB−3)を用いた。測定は、22℃65%RH環境下にて行った。KES圧縮試験機は、通常モードで5.0kPaまでの圧縮特性評価を行い、RC値を読み取った。測定値としては、3点を測定しその平均値を圧縮回復性とした。このKES圧縮試験機は、圧縮部位が面積2cm2の円形平面を持つ板である。その圧縮速度が0.02mm/sec、圧縮最大圧力が5.0kPaで、圧縮最大圧力に到達した時点で圧縮方向を反転させ回復過程に移行するものである。上記RC値は、圧縮時のエネルギーに対する回復されるエネルギーの割合を%表示したものであり、RC値が大きいほど、圧縮に対する回復性が良く、弾力性があるとされる。上記圧縮特性評価におけるRC値は、不織布の試験体に掛かる初期圧力0.05kPaがかかる時間T0から最大圧力5.0kPaがかかる時間Tmまでの圧力の時間積分値を求める。そしてその時間積分値を最大圧力5.0kPaまでの仕事量で除し、%で表示したものである。
比較例は、第2不織布シート21に歯溝加工がなされていないため、耐圧縮性が66%と高く潰れ易くなっていた。また、液戻り量が61mgと多くなっていた。さらに、クッション感が43.3%と低く、高荷重がかけられた後の圧縮回復性が低かった。
上記したように実施例1から2は、優れた、耐圧縮性、液戻り量、クッション感を同時に達成できたことがわかった。
2 裏面シート
3 吸収体
4 本体
5 サイドシート
6 ファスニングテープ
10 積層不織布
11 第1不織布シート
12 第1突出部
12H 開口部
12T 第1突出部の頂部領域(第1突出部頂部)
13 内部空間
14 第2突出部
14T 第2突出部の頂部領域(第2突出部頂部)
15 内部空間
16(16a、16b)、26 壁部
21 第2不織布シート
22 第3突出部
23 内部空間
24 第4突出部
24a、24b 小さな凸部
25 内部空間
25B 底部領域
30 繊維シート
30a 頂部域
30b 底部域
30c 側部域
31 凸条部
32 凹条部
34 繊維
35 融着部
36 小径部
37 大径部
38 変化点
30B、50 繊維ウエブ
100 支持体
101 棒状体
102 突起
103 孔
200 おむつ
T 積層不織布の厚み
T1 第1不織布シートの厚み
T2 第2不織布シートの厚み
Z1 第1面側
Z2 第2面側
301、301 凹凸ロール
303、304 凸部
303A、304A 頂部
401、401 凹凸ロール
403、404 凸部
Claims (7)
- 不織布を平面視した側の第1面側に突出していて、前記第1面側とは反対側の第2面側に内部空間を有してなる第1突出部と、前記第2面側に突出していて前記第1面側に内部空間を有してなる第2突出部とを備えてなり、前記第1、第2突出部が該不織布の平面視交差する異なる方向のそれぞれに交互に複数配された第1不織布シートと、
前記第1面側の一方向に連続して突出していて前記第2面側に連続した内部空間を有してなる第3突出部と、前記第2面側の前記一方向に沿う方向に連続して突出していて前記第1面側に連続した内部空間を有してなる第4突出部とを備えてなり、前記第3、第4突出部が該不織布の平面視前記一方向と交差する方向に交互に複数配された第2不織布シートとを有してなり、
前記第1不織布シートの第2面側に前記第2不織布シートが配されていて、前記複数の第4突出部のうち、前記第2突出部の頂部領域に対応する第4突出部の頂部領域の裏面側と、前記第2突出部の頂部領域とが接合された積層不織布。 - 前記第4突出部は前記一方向に凹凸形状を有してなる請求項1記載の積層不織布。
- 前記第1不織布シートは前記第1突出部より前記第2突出部の繊維密度が高く、
前記第2不織布シートは前記一方向と交差する方向に繊維密度の疎密が交互に存する請求項1または2に記載の積層不織布。 - 前記第2不織布シートは高伸度繊維を含んでいて、
前記第2不織布シートの繊維同士が融着していて、該繊維融着点間に太さの異なる繊度部を有してなり、
前記太さの異なる繊度部のうち太い繊度部が細い繊度部より親水度が高い請求項1から3のいずれか1項に記載の積層不織布。 - 前記第1不織布シートの平均繊維密度は前記第2不織布シートの平均繊維密度より低い請求項1から4のいずれか1項に記載の積層不織布。
- 前記複数の第4突出部のうち、前記第2突出部の頂部領域に接合されていない前記第4突出部の内部空間が、前記第1突出部の内部空間の位置に対応して配されている請求項1から5のいずれか1項に記載の積層不織布。
- 液透過性の表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配された吸収体とを有する吸収性物品であって、
前記表面シートに請求項1から6のいずれか1項に記載の積層不織布を配してなる吸収性物品。
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