以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1に、第一実施形態に係る締結装置1を示す。ここで被締結部材Hとしては、円筒状の管状部材H1と、この管状部材H1の外周に固定されるブラケットH2とを有しており、これらを締結装置1によって締結する場合を例示する。管状部材H1には、締結用の孔hp1が形成される。ブラケットH2は、管状部材H1の外周面に沿うように湾曲する板状のベースプレートh10と、このベースプレートh10に立設される柱部材h20を備えている。ベースプレートh10には、締結用の孔hp2が形成される。管状部材H1の孔hp1と、ブラケットH2の孔hp2を一致させた貫通孔HPに対して、締結装置1を挿入し、これらを締結する。なお、ここでは管状部材H1とブラケットH2を締結する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。
締結装置1は、軸方向に延びる軸部5と、軸部5の軸方向奥側に配置される挟持部10と、軸部5の軸方向手前側に配置される第一回動部15と、手前側に配置されて第一回動部15と相対回動する第二回動部20と、第二回動部20よりも挟持部10側に配置されて軸力を伝達する伝力部25と、伝力部25と挟持部10の間で軸方向に挟持される奥側係合部60と、を有する。
なお、本実施形態では、第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60及び挟持部10が、軸方向に一体的に構成される。また、伝力部25、奥側係合部60及び挟持部10は、単一の筒状部材によって一体的に構成される。従って、第二回動部20に外部から付与される回動力を、挟持部10まで伝達させることができる。また、本第一実施形態では、これらの部品又は部材は金属で構成される場合を例示するが、金属以外の部材で構成しても良く、異素材を組み合わせて構成しても良い。
第一回動部15は、特に図示しない締緩工具と係合して、この締緩工具から回動力を受ける。締緩工具との係合手法は、様々に存在するが、例えば、スパナと係合するためには、第一回動部15の外形を六角形や凸型と凹型を含めた多角形等の多面形にすれば良く、六角レンチ等の締緩工具と係合するためには、第一回動部15の端面に六角穴や六角レンチ等の締緩工具に対応した形状の穴を形成すればよい。ここでは六角レンチ用の係合穴が形成される。
第二回動部20は、被締結部材Hの部材側座部HXと係合して、その反力(回動力)を受ける。この係合構造については追って詳細に説明する。従って、第二回動部20は、締緩工具によって係合させる必要が無い。勿論、補助的に締結工具と係合可能にしてもよく、その手法は、様々に存在するが、例えば、スパナと係合するためには、第二回動部20の外形を非正円形(例えば六角形や楕円形、長円形)にすれば良い。ここでは長円形となっている。
第一回動部15と第二回動部20は、互いに相対回転すると共に、軸方向に係合する。本実施形態では、第二回動部20の手前側端面22と、第一回動部15の奥向き座部16が軸方向に係合する。
第一回動部15は、ここでは軸部5の手前側端部に一体的に設けられる。従って、第一回動部15と軸部5は供回りする。軸部5は、円柱状の部材(必ずしも円柱状である必要はなく、中実であっても中空であっても、柱状を成す物であればよい。)であり、挟持部10や螺合部30(詳細は後述)、第一回動部15等に作用する軸力を伝達する。なお、本実施形態では、軸部5は、挟持部10と自身に形成される螺合部30間で軸力を伝達する。軸部5は、被締結部材Hの厚さより長く設定される。
挟持部10は、軸部5の外周側に例えば円筒状に配置される部材となる。軸部5と挟持部10の間に螺合部30が形成される。具体的に螺合部30は、挟持部10の内周に形成される雌ねじ部31(図2(E)参照)と、軸部5の少なくとも奥側の外周に形成されて雌ねじ部31と螺合する雄ねじ部32(図2(C)参照)と、を備えて構成される。従って、挟持部10は筒状の雌ねじ体となり、軸部5が雄ねじ体となる。
第二回動部20は、奥側(奥側係合部60側)に対向する奥向き座部21を有する。この奥向き座部21は、伝力部25と一体化されると共に、被締結部材Hの手前側面(部材側座部HX)と当接する。
第二回動部20は、伝力部25、奥側係合部60及び挟持部10と一体化されることで、一緒に回動する。従って、第二回動部20を回動させると、伝力部25及び奥側係合部60を介して、挟持部10が供回りする。第一及び第二回動部15、20が相対回転すると、螺合部30によって、その相対回転が、挟持部10と伝力部25の軸方向の相対移動に変換される。
伝力部25は、ここでは略円筒状のスリーブ部材であり、内部に軸部5が挿入される。伝力部25の長さは、被締結部材Hの厚みと同等又はそれ以上に設定され、かつ、軸部5よりも短く設定される。伝力部25は、第二回動部20と奥側係合部60の間に配置されて、所謂つっかえ棒のように軸力を伝達する。ここでは第二回動部20と伝力部25と奥側係合部60が一体の場合を例示しているが、両者が別体となっていても良い。
伝力部25の最大外径、挟持部10の最大外径、拡径前の奥側係合部60の最大外径は、一致又は近似するように設定される。これらの全てを、被締結部材Hの孔HPに、手前側から挿入する必要があるからである。
奥側係合部60は、ここでは変形スリーブとなっており、半径方向外側に向かって容易に座屈させ得、半径方向外側に拡径させることで、変形後の変形スリーブの側面を利用して、手前向き座部64を出現させる。結果、締結装置1は、奥側係合部60の手前向き座部64と、第二回動部20の奥向き座部21を利用して、被締結部材Hと締結することが可能になる。
次に、第二回動部20と被締結部材Hの座部HXとの係合状態について説明する。
第二回動部20の奥向き座部21と、被締結部材Hの部材側座部HXとの間には、第一回動部15及び第二回動部20の相対回転軸に沿った回転力が作用しても互いに周方向に係合する状態が保持される回動係合機構Zが構成される。
奥向き座部21と部材側座部HXは、略合同の面状領域となっており、互いに当接して、第二回動部20の軸力を被締結部材Hに伝達する。
図3に示すように、この回動係合機構Zは、奥向き座部21に形成される回動部側傾斜面21a、及び部材側座部HXに形成される部材側傾斜面HXaを有する。
図3(B)に示すように、回動部側傾斜面21aは、相対回転軸S又は貫通孔HPの軸線上の適宜位置の軸直角断面の輪郭の一部(断面線G)が、軸心を基準として非正円状態、即ち、軸心からの距離が変位するようになっている。勿論、この回動部側傾斜面21aに当接する部材側傾斜面HXaも同様になっている。
なお、本実施形態では、部材側傾斜面HXaと回動部側傾斜面21aの双方が、相対回転軸Sに対して傾斜した軸(本実施形態では管状部材H1の軸)を有する仮想円柱の部分周面を含む曲面で構成される。
より詳細に回動部側傾斜面21aは、相対回転軸Sの一方の回転方向Xに対向する第一回動部側傾斜領域21axと、他方の回転方向Yに対向する第二回動部側傾斜領域21ayとを備える。また、特に図示しないが、部材側傾斜面HXaも、回転方向Xに対向する第一部材側傾斜領域と、回転方向Yに対向する第二部材側傾斜領域を備える。なお、回転方向Xに対向する傾斜領域は、自らが回転方向Yに移動すると相手部材と周方向に係合し得る。同様に、回転方向Yに対向する傾斜領域は、自らが回転方向Xに移動すると相手部材と係合し得る。
例えば、第一回動部10及び軸部5が右ねじの場合に、締結する為に回転方向Xに回転させると、それに連れて、第二回動部20自身が、部材側座部HXに対して回転方向Xに回転しようとするが、その結果、第二回動部側傾斜領域21ayと、第一部材側傾斜領域が互いに周方向に係合して、その相対回転が抑制される。同様に、第一回動部10及び軸部5が右ねじの場合に回転方向Y側に緩もうとすると、それに連れて第二回動部20自身が回転方向Yに回転しようするが、第一回動部材側傾斜領域21axと第二部材側傾斜領域が周方向に係合して、その相対回転が抑制される。
なお、回動部側傾斜面21aにおける第一回動部側傾斜領域21axと第二回動部側傾斜領域21ayは連続した曲面となっているが、その境界には特異点又は特異線(本実施形態では特異線)U1、U2が存在し得る。一方の特異線U1は、半径方向に完全に平行となる。他方の特異線U2は、半径方向に延びているものの、相対回転軸S方向に変位(湾曲)している。
なお、ここでは、第一回動部15が双方向X、Yに回転する際に、第二回動部20の連れ回りが抑制される構造を例示しているが、本発明はこれに限定されない。少なくとも第一回動部15が締結方向(ここでは右回り方向)に回転しようとする際に、第二回動部20と被締結部材Hとの相対回転を防止すればよい。
次に、図4乃至図14を参照して螺合部30の螺合が緩み方向に相対回転することを抑止する逆回転防止機構Vについて説明する。
図8及び図9に示すように、軸部5の雄ねじ部32は、右ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条を螺合可能に構成される右ねじと成る第一雄ねじ螺旋構造1400と、対応した左ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条を螺合可能に構成される左ねじと成る第二雄ねじ螺旋構造1500との二種類の雄ねじ螺旋構造が同一領域上に重複して形成される。
雄ねじ部32には、図8(C)に示すように、軸心(相対回転軸)Sに垂直となる面方向において周方向に延びる略三日月状のねじ山1300aが、雄ねじ部32の一方側(図の左側)及び他方側(図の右側)に交互に設けられる。ねじ山1300aをこのように構成することで、右回りに旋回する螺旋構造(図8(A)の矢印1400参照)及び左回りに旋回する螺旋構造(図8(A)の矢印1500参照)の二種類の螺旋溝を、ねじ山1300aの間に形成することが出来る。
本実施形態では、このようにすることで、第一雄ねじ螺旋構造1400及び第二雄ねじ螺旋構造1500の二種類の雄ねじ螺旋構造を、雄ねじ部32に形成している。従って、雄ねじ部32は、右ねじ及び左ねじの何れの雌ねじ体とも螺合することが可能となる。なお、二種類の雄ねじ螺旋構造が形成された雄ねじ部23の詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。
図6及び図7に示すように、挟持部10は、筒部1060と逆回転防止部1600を有する。筒部1060は、中心に貫通孔部1060aを有する。貫通孔部1060aには、右ねじとしての第一雌ねじ螺旋構造1140が形成される。即ち、筒部1060の第一雌ねじ螺旋構造1140は、軸部5の雄ねじ部32における第一雄ねじ螺旋構造1400と螺合する。
筒部1060は受部1100を有する。受部1100は、筒部1060の軸方向端面に形成されており、相対回転軸Sに対して略垂直(必ずしも垂直である必要は無い)となる当接面1100aを有する。この当接面1100aは、ここではリング状の平面となっており、逆回転防止部1600の座面部1620と当接して、該逆回転防止部1600を軸方向に受け止める。なお、このリング状の当接面1100aは、軸方向端面に凹ませるように形成しても良い。
更に、受部1100は、第一周方向係合部1200と第一軸方向係合部1300を有する。図6(B)に示すように、第一周方向係合部1200は、ここでは当接面1100aに対して軸方向に突出する突起となっており、周方向に180°の間隔で二個形成される。勿論、この第一周方向係合部1200は、必須ではないが、周方向に複数カ所分散して設けることも出来る。この第一周方向係合部1200は、逆回転防止部1600の第二周方向係合部1620aと嵌合して周方向に係合し、周方向の相対回転を規制する。なお、ここでは第一周方向係合部1200を当接面1100aに対して突出させるようにしたが、窪ませることもできる。また、第一周方向係合部1200を軸方向に凸状又は凹状とすることもできる。例えばその事例として、当接面1100a自体に、エンボス加工やローレット加工、放射状の溝等の凹凸を形成することも好ましい。
図7(B)に示すように、第一軸方向係合部1300は、当接面1100aに対して微小の隙間を有する状態で対向配置される部材である。この隙間には、逆回転防止部1600の板状の座面部1620(第二軸方向係合部1620b)が介在するように配設される。当接面1100aと第一軸方向係合部1300は、座面部1620を挟持する構造となり、この第一軸方向係合部1300が第二周方向係合部1620bと軸方向に係合する。なお、第一軸方向係合部1300は、図7(D)に示すように、組立前においては、受部1100に対して略垂直に延びる周壁状部となる。この周壁状部は、逆回転防止部1600の座面部1620の外周縁に沿うようにして周方向に立設される。組立時には、逆回転防止部1600を配設してから、点線で示すように、第一軸方向係合部1300を半径方向内側に屈曲させて、互いにカシメることで両者を軸方向に締結する。なお、第一軸方向係合部130は、ここでは周方向に90°程度の範囲となる周壁状部を、二箇所に設ける場合を例示しているが、例えば図14に示すように、全周(360°)に亘って配置することも好ましく、また、全周に亘って断続的な周壁状部を配置することも好ましい。
次に逆回転防止部1600について説明する。逆回転防止部1600は、座面部1620と、立設部1650と、突出部1680を有する。
図7(A)に示すように、座面部1620は、受部1100の当接面1100aに当接するリング状の板部であり、その一部及び/又は全部によって第二軸方向係合部1620bを構成する。この第二軸方向係合部1620bは、第一軸方向係合部1300に挟持される(軸方向に重なる)ことで互いに軸方向に係合する。座面部1620は、受部1100の当接面1100aに対して、好ましくは周方向に180°以上、例えば360°の角度範囲で当接させることで、姿勢を安定させると共に、第一軸方向係合部1300との係合状態が保持されるように構成されている。
座面部1620の外周縁には、第二周方向係合部1620aが形成される。この第二周方向係合部1620aは、座面部1620の外周縁の半径方向内側に変位する凹状の切欠きを有し、受部1100の第一周方向係合部1200と周方向に係合する。なお、ここでは半径方向内側に凹となる切欠きを例示しているが、半径方向外側に凸となる突起でもよく、軸方向に凸状又は凹状であってもよく、また必須でもない。第二周方向係合部1620aが軸方向に凸状又は凹状となる事例として、座面部1620における当接面1100aと対向する平面に、エンボス加工やローレット加工、放射状の溝等の凹凸を形成することも好ましい。
図7(B)に示すように、立設部1650は、座面部1620から軸方向に延在する略筒状部である。軸方向の延在距離Jは、周方向に沿って次第に長くなる(又は短くなる)。結果、立設部1650における座面部1620と反対側の端縁1650aは、座面部1620に対して傾斜しており、この傾斜角度αが、第二雄ねじ螺旋構造1150のリード角と対応して設定される。即ち、端縁1650aは、周方向に約360°の範囲で延設された螺旋となる。立設部1650には、軸方向の切欠き1650bを形成してもよく、形成した場合には、積極的に半径方向の剛性を低下させることで、立設部1650が半径方向外側に弾性変形し易くなるように出来る。なお、この切欠き1650bは、ここでは周方向の二か所に形成しているが、一か所でも良く、三か所以上に形成してもよく、また0カ所としてもよい。
突出部1680は、立設部1650の端縁1650aから半径方向内側に突出する板部となっている。図6(A)に示すように、この突出部1680は、立設部1650の切欠き1650bが延長されること、又は、突出部1680の端部から半径方向外向きに切り欠かれて成る凹状のスリットによって、周方向の二か所で分断された、約180°以下の角度範囲となる部分円弧状の二つの板部で構成される。各突出部1680の半径方向内側が突端となり、これにより複数の係合縁1680aが構成される。結果として、各係合縁1680aは、周方向に180°以下の角度範囲の部分円弧となり、軸部5の外周と接触する。このように、各係合縁1680aの周方向距離を180°以下にすることで、半径方向外側に変位しやすくなる。なお、係合縁1680aの直径は、軸部5の第二雄ねじ螺旋構造1500の谷径とほぼ一致させている。
また突出部1680は、半径方向に沿って、その内側が座面部1620の成す仮想平面から離れる方向に傾斜している。この半径方向の傾斜角度βは、軸部5の第二雄ねじ螺旋構造1500のねじ山1300aのフランク角と殆ど一致させており、ここでは約30°に設定している。また、係合縁1680aは、立設部1650の端縁1650aの傾斜角αに伴って、リード角αとなる左ねじの第二雌ねじ螺旋構造1150が形成される。この係合縁1680aは、軸部5の雄ねじ部32における第二雄ねじ螺旋構造1500と螺合する。
次に、この逆回転防止機構Vの作用について説明する。
図10(A)に示すように、挟持部10の筒部1060の第一雌ねじ螺旋構造1140を、軸部5の第一雄ねじ螺旋構造1400に螺合させて行くと、逆回転防止部1600の係合縁1680aが、軸部5の第二雄ねじ螺旋構造1500と接触する。しかし、第一雌ねじ螺旋構造1140を基準として筒部1060を螺進させて行くと、係合縁1680aと第二雄ねじ螺旋構造1500のねじ山が干渉状態に遷移する。
この状態で、更に筒部1060を90°回転させて、第一雌ねじ螺旋構造1140を第一雄ねじ螺旋構造1400に螺合させて行くと、図10(B)に示すように、筒部1060は締結方向に1/4ピッチ進行し、逆回転防止部1600も、同方向に回転しながら、締結方向に強制的に進行する。このとき、係合縁1680aは、座面部1620から離れる方向に傾斜していることから、ねじ山1300aのフランク面に沿って、当接面1100aから離れる軸方向及び/又は半径方向外側に弾性変形して、第二雄ねじ螺旋構造1500を乗り越えようとする。この際、好ましくは、立設部1650が半径方向外側の剛性を高めておくことで、立設部1650自体が外側に弾性変形する量は小さく又は略零に設定し、係合縁1680aが立設部1650に対して鈍角側へ弾性変形させることを優先させる。図10(A)の状態を基準として筒部1060を180°(1/2ピッチ)回転させると、図10(C)に示すように、係合縁1680aが、第二雄ねじ螺旋構造1500の一つのねじ山1300aを完全に乗り越えて、次の第二雄ねじ螺旋構造1500に嵌合する。この動作を繰り返すことで、挟持部10が180°相対回転する度に、係合部1680aが第二雄ねじ螺旋構造1500のねじ山1300aを乗り越えていき、挟持部10が螺進して伝力部25に接近する。結果、奥側係合部60が半径方向外側に向かって座屈して、手前向き座部64を発現させる。締結装置1は、奥側係合部60の手前向き座部64と、第二回動部20の奥向き座部21を利用して、被締結部材Hと締結することが可能になる。
一方、図11を参照して、挟持部10の筒部1060が、軸部5の第一雄ねじ螺旋構造1400に対して緩み方向に回転しようとする場合を考える。突出部1680は、当接面1100aの成す仮想平面に対して先端側(係合縁1680a側)が乖離するように傾斜した形状を成しており、この傾斜は、第二雄ねじ螺旋構造1500のねじ山1300aのフランク面に対応するように設定され、好ましくは当接するように設定される。また、この突出部1680の基端(立設部1650の端縁1650a)から先端(係合縁1680a)までの長さは、ねじ山1300aの頂部から谷底までの距離に対応して設定され、好ましくは当該距離と略一致するように設定される。
そのため、挟持部10の筒部1060に緩め方向の相対回転を与えると、突出部1680の傾斜面が、立設部1650に対して、当接面1100aの成す仮想平面に接近する方向(即ち、係合縁1680aが当接面1100aに接近する方向)に力を受けて弾性変形する。立設部1650の半径方向外側への剛性を高めておくことにより、当該弾性変形に伴って、突出部1680の基端から先端の仮想平面方向の距離(図11における水平方向距離)が長くなることから、係合縁1680aがねじ山1300aの谷部を狭窄するように作用し、その結果、当該緩め方向の相対回転を機械構造的に強固に防止できる。換言すると、逆回転防止部1600の係合縁1680aが、第二雄ねじ螺旋構造1500のねじ山1300aの谷に食い込み、筒部1060と逆回転防止部1600との進行のズレ若しくは相反によって相対回転を規制する。従って、軸部5は、緩み方向の相対回転ができない。逆回転防止部1600は、筒部1060の第一雌ねじ螺旋構造1140による一方向(締結方向)の軸部5との相対回転は許容し、その逆回転は確実に係止される。なお、挟持部10において、突出部1680の延設長さ即ち突出長さの設定や、立設部1650の立設長さの設定、突出部1680と立設部1650の相対角度の設定等により、所定以上の緩め方向トルクを付与することによって突出部1680を弾性変形させて、比較的容易に、軸部5と挟持部10を緩めることを可能とすることも出来る。
以上の本実施形態の締結装置1によれば、逆回転防止機構Vを備えているので、螺合部30を締結方向に相対回転させて挟持部10と伝力部25を接近させて、奥側係合部60が手前向き座部64を発現させた後は、螺合部30が緩み方向に相対回転することを規制できる。結果、振動や外力によって、螺合部30が緩もうとしても、実際に緩むことが困難になるため、挟持部10と伝力部25が接近した状態、即ち、締結装置1の締結状態を長期間に亘って維持することが可能になる。
特に本逆回転防止機構Vによれば、挟持部10の受部1100の当接面1100aを含む範囲において、軸に対する垂直方向の断面によって視た場合、この当接面1100aの断面像が、周方向複数箇所に得られる状態及び/又は断面像が環状に得られる状態になる。従って、当接面1100aによる逆回転防止部1600の保持姿勢が安定するので、組立を易しく行うことができ、更に、組立精度も向上させることができる。なお、本実施形態では、当接面1100aの断面像が環状(リング状)になるので、最も安定した状態になるといえる。
更に本実施形態のように、筒部1060の端面において、当接面1100aを回転軸に対して垂直な平面にすると、プレス、切削、転造、圧造、成型、造形等によって筒部1060を簡潔に量産できる。なお、当接面1100aを軸直角方向に対して傾斜させて、この当接面1100aを利用して係合縁1680aのリード角やリード方向を設定した周方向のスロープ状に形成しようとすると、筒部1060の製造コストが増大する。更に、スロープ状の当接面1100aを含む範囲で、軸に対する垂直方向の断面によって視た場合、その断面像は周方向に一箇所しか得られない。これは、当接面1100aによる逆回転防止部1600の保持姿勢が不安定であり、スロープに沿って逆回転防止部1600が周方向にスライドするような力が生じ易い。結局、筒部1060と逆回転防止部1600を組み立てる際に、高い位置決め精度が要求されてしまう。
因みに本実施形態では、周方向に沿って軸方向の延在距離Jが次第に長くなる立設部1650によって、第二雌ねじ螺旋構造1150のリード方向及びリード角を設定している。この構造を採用すれば、例えば、逆回転防止部1600を、板状部材を用いたプレス成型等によって量産することが可能となり、製造コストを飛躍的に低減できる。
また本挟持部10は、必須ではないが、筒部1060側の第一周方向係合部1200と、逆回転防止部1600側の第二周方向係合部1620aによって、筒部1060と逆回転防止部1600を周方向に固定可能としている。結果、逆回転防止部1600の係合縁1680aを干渉させながら、強制的に締結させる際にも、筒部1060と逆回転防止部1600の相対回転を規制できる。
同様に、筒部1060側の第一軸方向係合部1300と、逆回転防止部1600の第二軸方向係合部1620bにより、筒部1060と逆回転防止部1600が軸方向に固定されている。結果、筒部1060を強制的にねじ込んで、逆回転防止部1600の係合縁1680aを半径方向に変位させる際にも、筒部1060と逆回転防止部1600が軸方向に離脱することを防止できる。本実施形態では、組立時に第一軸方向係合部1300を屈曲させて互いにかしめるので、簡易な製造工程にもかかわらず、確実に両者を一体化できる。
とりわけ、本実施形態の逆回転防止部1600の座面部1620は、少なくとも周方向に180°以上の角度範囲で、受部1100の当接面1100aに当接している。このように、座面部1620を180°以上の角度範囲に設定すると、逆回転防止部1600に外力が作用しても、第一軸方向係合部1300との係合状態が外れ難くなる。一方で、逆回転防止部1600の係合縁1680aは、周方向に180°以下の角度範囲で軸部5と接触させることで、軸方向及び/又は半径方向外側に柔軟に変位し易くすることが出来る。即ち、本実施形態の逆回転防止部1600によれば、筒部1060と確実に一体化させつつも、係合縁1680aを容易に変位できるようにしている。また、この際に係合縁1680aを周方向に複数配置することで、挟持部10が緩み方向に回転する際に、複数の係合縁1680aが確実に軸部5と係合して、その回転を規制できる。また係合縁1680aと立設部1650の角度関係を鈍角に設定しているので、係合縁1680aは、立設部1650から離れる軸方向(両者の角度関係が180°に近づく方向)に弾性変形しやすいが、立設部1650に近づく軸方向(両者の関係が90°に近づく方向)には弾性変形しにくいという利点がある。
なお、上記実施形態の軸部5及び挟持部10では、第一雄ねじ及び雌ねじ螺旋構造1400、1140と、第二雄ねじ及び雌ねじ螺旋構造1500、1150が、互いに逆ねじの関係(リード角が同じでリード方向が反対)となっている場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図12に示すように、リード方向が同じで、リード角が異なる第一雄ねじ及び雌ねじ螺旋構造1400、1140と、第二雄ねじ及び雌ねじ螺旋構造1500、1150を採用することもできる。この場合、第一雄ねじ螺旋構造1400によって構成される螺旋状のねじ山1300aに、さらに第二雄ねじ螺旋構造1500を重畳形成することにより、リードがL1(リード角がθ1)の第一雄ねじ螺旋構造1400及びリードがL2(リード角がθ2)の第二雄ねじ螺旋構造1500を、ねじ方向を揃えて形成することが出来る。
更に上記実施形態の逆回転防止機構Vでは、当接面1100aを含む範囲の軸垂直断面の断面像が、当接面1100aと一致する平面リング状になる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図13(A)に示す逆回転防止機構Vのように、当接面1100aを、半径方向に傾斜するテーパ面とすることができる。この場合、軸垂直断面X−Xの断面像は、環状の線となる。更に例えば図13(B)に示す逆回転防止機構Vのように、当接面1100aを、軸に対して一方向傾斜する傾斜面とすることができる。この場合、当接面1100aの軸垂直断面X−Xの断面像は、二箇所の線分となる。また更に例えば図13(C)に示す逆回転防止機構Vのように、当接面1100aを、軸に対して一方向と他方向に傾斜する一対の傾斜面とすることができる。この場合、当接面1100aの軸垂直断面X−Xの断面像は、四箇所の線分となる。これらのいずれにしろ、当接面1100aを、軸垂直方向の断面によって視ると、断面像が周方向の複数箇所に得られる機会が提供されるため、逆回転防止部1600の保持姿勢を安定させることができる。
なお、ここでは、軸部5の雄ねじ部32の軸方向の全域に亘って、第一雄ねじ螺旋構造1400と第二雄ねじ螺旋構造1500を重畳形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、第一雄ねじ螺旋構造1400の一部、具体的には軸端を含むその一部において、第二雄ねじ螺旋構造1500を重畳形成することができる。第二雄ねじ螺旋構造1500は、挟持部10の端面に配置される第二雌ねじ螺旋構造1150と螺合する範囲に存在すれば十分だからである。
また、本実施形態では、締結装置1と被締結部材Hを締結する際、第二回動部20の奥向き座部21と、被締結部材Hの部材側座部HXが回動係合機構Zによって周方向に係合するので、第二回動部20をトルクレンチ等で固定することが不要となり、第一回動部15のみを回転させるだけで良い。結果、作業者の負担が大幅に軽減する。
更に、本実施形態では、互いに対向する奥向き座部21と部材側座部HXにおける、軸線上の適宜位置の軸直角断面の形状の輪郭(断面線G)が、周方向X、Yに沿って変位する領域を含んでいる。この形状によって、奥向き座部21と部材側座部HXが一旦当接すると、それ以上の周方向の相対回転が規制されると同時に、ねじ体の軸力が、互いに対向する奥向き座部21と部材側座部HXによって伝達される。即ち、奥側係合部60を半径方向外側に向かって座屈させて、被締結部材Hを挟み込む際に生じる軸力を利用して、奥向き座部21と部材側座部HXの相対回転を規制させることができるので、強く締めるほど、相対回転を確実に防止することが可能となる。
更にまた、奥向き座部21の回動部側傾斜面21aを三次元の曲面にすることで、部材側傾斜面HXaと密着させることが可能となる。結果、締結装置1における締結時において、所謂がたつきを抑制することが可能となる。とりわけ、本実施形態のように、被締結部材Hが円筒又は円柱形状の部材の場合は、この周面の形状をそのまま有効活用することが出来る。
次に、図15及び図16を参照して第二実施形態の締結装置1を示す。なお、逆回転防止機構Vを除いた他の構成については、第一実施形態の締結装置1と同一又は類似するので、ここでは主として逆回転防止機構Vを説明する。
図15に示すように、軸部5には、雄ねじ部32の螺旋構造1400と重畳するように形成される軸部側凹凸3500を有する。この軸部側凹凸3500は、軸方向から視た場合に、ねじ山の頂点に沿って形成される断面正円形の一部の円弧が、その弦に沿って又は弦から内側に凹となるように省略(又はカット)されたような形状となる。軸部側凹凸3500は、軸方向に連なるよう形成される。なお、本実施形態では、軸部側凹凸3500においても、ねじ山の谷底が残存している。結果、軸部側凹凸3500も、挟持部10と螺合する機能は残存している。具体的には、軸部側凹凸3500において、ねじ山の高さの3分の2を上限として省略することが好ましく、より好ましくは、ねじ山の高さの2分の1を上限として省略する。従って、軸部側凹凸3500の最小半径(最小距離)は、軸部5の軸心からの最小半径(谷底半径)より大きくなる。本実施形態では、周方向の複数個所に、軸部側凹凸3500が形成される。
図16に示すように、挟持部10における筒部1060の軸方向端部には、軸方向から視て内周が断面非正円形となる逆回転防止部1600が形成される。この逆回転防止部1600は、筒部1060において軸方向にリング状に飛び出して設けられているが、その形状は特に限定されず、また、内周の雌ねじ螺旋構造1140と重畳するように形成しても良い。
逆回転防止部1600は、半径方向内側に凸状となる突出部1680が、周方向に十二か所、等間隔で形成される。結果、軸部5の外周に凹んで形成される軸部側凹凸3500と周方向に係合させることができる。既に述べたように、突出部1680は、筒部1060の端面に軸方向に突出して肉薄に設けられており、半径方向外側に弾性変形できるようにしている。従って、軸部5と挟持部10を所望の力で相対回転させることで、突出部1680が外側に弾性変形して、突出部1680と軸部側凹凸3500の周方向の係合を解除することができる。従って、軸部5と挟持部10を所望の力で締まる方向に付勢すれば、突出部1680と軸部側凹凸3500が係合と解除を繰り返しながら、相対回転を許容できるので、軸部5と挟持部10を螺合途中の任意の場所で固定できる。一方、軸部5と挟持部10が緩に方向に相対回転しようとしても、突出部1680と軸部側凹凸3500が係合しているので、簡単に緩むことができない。より望ましくは、突出部1680と軸部側凹凸3500の少なくとも一方の形状を鋸刃形状にすることで、締め付け方向の回転をより円滑に許容し、緩み方向の回転はより強固に規制する所謂ラチェット機構として作用させる。
次に第三実施形態に係る締結装置1の逆回転防止機構Vを説明する。
図17に示すように、この逆回転防止機構Vは、第一回動部15の奥向き座部16と、第二回動部20の手前側端面22の間に形成される。なお、本発明は、第一回動部15と第二回動部20の相対回転によって摺動が生じ得る場所であれば、他の場所に形成することもできる。
図17(A)に示すように、第一回動部15の奥向き座部16には、第一回動部側凹凸16aが形成される。第一回動部側凹凸16aは、周方向に複数設けられる鋸刃形状と成っている。第一回動部側凹凸16aの各々が延びる方向、即ち、稜線が延びる方向は、相対回転軸Sの半径方向となっている。結果、第一回動部側凹凸16aは、軸心から放射状に延びる。
更に、この奥向き座部16は、半径方向に傾斜するテーパ面となる。このテーパ面は、中心側が軸部5側に突出するように傾斜しているので、結果として、ねじ先側に凸の円錐形状となる。このテーパ面に、第一回動部側凹凸16aが形成される。
図17(B)及び(C)に示すように、逆回転防止機構Vとして、第二回動部20の手前側端面22には、第二回動部側凹凸22aが形成される。第二回動部側凹凸22aは、周方向に複数設けられる鋸刃形状となっている。第二回動部側凹凸22aの各々が延びる方向、即ち稜線が延びる方向は、相対回転軸Sの半径方向に沿っている。結果、第二回動部側凹凸22aは、相対回転軸Sから放射状に延びる。
更に、好ましくは、この手前側端面22には、半径方向に傾斜するテーパ面が形成される。このテーパ面は、中心側が伝力部25に近づくようにすり鉢状を成しているので、結果として、ねじ先側に凹の円錐形状となる。このテーパ面に、既述の第二回動部側凹凸22aが形成される。
結果、第一回動部15と第二回動部20を締め付ける際に、逆回転防止機構Vでは、第二回動部20のテーパ面の凹内に、第一回動部15のテーパ面が進入し、第一回動部側凹凸16aと第二回動部側凹凸22aが係合する。両者の鋸歯形状は、図18(A)に示すように、締結方向Yに回転しようとすると、互いの傾斜面が当接して、両者の距離を軸方向に狭めながら、相対スライドを許容する。一方、緩み方向Xに回転しようとすると、互いの垂直面(傾斜が強い側の面)が当接して、両者の相対移動を防止する。
とりわけ本逆回転防止機構Vは、螺合部30を締め付けることによって、第一回動部15と第二回動部20の距離が縮む程、第一回動部側凹凸16aと第二回動部側凹凸22aの噛み合いが強くなり、緩み方向X側の係合強度が高められる。ここで、第一回動部15の円錐状のテーパ面の傾斜角度と、第二回動部20のすり鉢状のテーパ面の傾斜角度とを互いに異ならせることにより、それぞれのテーパ面に形成される鋸歯のピッチに因らず、ガタ付き無く締め付けることも可能となる。具体的には、第二回動部20のテーパ面の軸心からの傾斜角度(すり鉢状の傾斜角)を、第一回動部15のテーパ面の軸心からの傾斜角度(円錐状の傾斜角)よりも狭め(小さめ)に設定することが好ましい。
また、第一回動部側凹凸16aと第二回動部側凹凸22aの数量は必ずしも一致している必要はなく、更に、周方向における位相や位置も、機械的強度の要請に応じて適宜設定可能である。
なお、ここでは、逆回転防止機構Vとして、凹凸が鋸刃形状の場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図18(B)に示されるように、互いの凹凸を山形(双方とも傾斜面)にすることも可能である。このようにすると、緩み方向Xに相対回転する際、互いの傾斜面が相対移動しようとするが、この傾斜面に沿って、互いの凹凸が離れようとする。この移動距離(離れる角度α)を、螺合部30のリード角より大きく設定すれば、螺合部30が緩もうとしても、それ以上に互いの凹凸が離れようとするので、緩むことが出来なくなる。なお、この図18(B)では、断面二等辺三角形の凹凸を例示したが、図18(C)に示すように、締結回転時に当接する傾斜面の傾斜角よりも、緩み回転時に当接する傾斜面の傾斜角をなだらかにすることも好ましい。このようにすると、締結回転時に、互いに乗り越えなければならない傾斜面の周方向距離Pを短くすることが出来るので、締結後のガタ(隙間)を少なく出来る。
また、図18(A)〜(C)の応用として、図18(D)に示すように、峯と谷を湾曲させた波型の凹凸も設定可能である。締結時に滑らかな操作性を得ることが出来る。更に、本第一実施形態では、半径方向に延びる凹凸を例示したが、図19(A)に示すように、渦巻き状(スパイラル状)の溝又は山(凹凸)を形成することも出来る。また図19(B)のように、直線状に延びる溝又は山(凹凸)であっても、ねじの半径方向に対して周方向位相が変化するように傾斜配置することも出来る。また、図19(C)に示すように、微細凹凸を、ねじの周方向且つ半径方向の双方(平面状)に複数形成した、いわゆるエンボス形状を採用することも出来る。
更に本実施形態のように、互いの凹凸形状を必ずしも一致(略相似又は略合同)させる必要はない。例えば、図18及び図19の各種形状から異なるものを互いに選択して組み合わせることも出来る。
また、ここでは、奥向き座部16のテーパ面を凸形状、手前側端面22のテーパ面を凹形状にする場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、双方のテーパ面を平面形状にしたり、奥向き座部16のテーパ面を凹形状、手前側端面22のテーパ面を凸形状にしたり出来る。勿論、一方を平面にし、他方のみをテーパ面にしても良い。更には、双方のテーパ面を凸形状にしたり、双方のテーパ面を凹形状にしたりすることで、互いの弾性変形を活用して両者を密着させることが出来る。
次に、図20を用いて、第四実施形態の締結装置1を示す。なお、回動係合機構Zを除いた他の構成については、第一実施形態の締結装置1と同一又は類似するので、ここでは主として回動係合機構Zを説明する。
図20(A)乃至(C)に示すように、第二回動部20の奥向き座部21は、相対回転軸Sの軸方向に沿って中央が凸となっている。具体的には、図20(C)に示すように、相対回転軸Sに対して直角方向の断面形状が楕円に近似するような、楕円半球体(又は楕円錐)となっており、その中心に軸部5が挿入される孔が形成される。この形状を利用して、奥向き座部21の全域に、回動部側傾斜面21aが形成される。この回動部側傾斜面21aは、相対回転軸Sの軸線上の適宜位置の軸直角断面の輪郭形状(断面線G)が、相対回転軸Sの周方向X、Yに沿って軸心を基準に変位する領域(即ち非正円となる領域)を含んでいる。
また、回動部側傾斜面21aは、伝力部25の先端側に凸となるように傾斜している。なお、楕円の短軸及び長軸に沿って、特異線又は特異線Uが伸びている。
一方、図20(D)に示すように、被締結部材Hの部材側座部HXも、楕円の半球体(又は楕円錐)のような凹形状となっており、その底面の中心に孔HPが形成される。この部材側座部HXの形状を利用して部材側傾斜面HPa形成される。部材側傾斜面HPaは、相対回転軸Sの軸線上の適宜位置の軸直角断面の輪郭形状(断面線G)が、相対回転軸Sの周方向X、Yに沿って軸心を基準に変位する領域(即ち非正円となる領域)を含んでいる。従って、締結装置1の締結の際、回動部側傾斜面21aと部材側傾斜面HPaが当接し、第二回動部20と被締結部材Hの相対回転が防止される。
このように、パイプ材の一部を窪ませたような部材側座部HXの場合において、第二回動部20の奥向き座部21を、被締結部材H側に凸となる非正円形状のお椀形にすることで、両者を密着させつつ、回動方向に係合させることが出来る。特に、すり鉢形状の面接触領域によって、第二回動部20の軸力を被締結部材Hに効率的に伝達し得るようになっている。
図21に、第五実施形態の締結装置1の回動係合機構Zを示す。図21(A)乃至(C)に示すように、第二回動部20の奥向き座部21は、相対回転軸Sの軸方向に対して傾斜した単一平面となっている。この形状を利用して、奥向き座部21には、回動部側傾斜面21aが形成される。この回動部側傾斜面21aは、相対回転軸Sの軸に直角となる断面の輪郭(断面線G)の一部Gaが、相対回転軸Sの周方向に沿って軸心からの距離が変位する領域を含む。
一方、図21(D)に示すように、被締結部材Hの部材側座部HXも、相対回転軸Sの軸方向に対して傾斜した単一平面となっている。結果、この部材側座部HXの部材側傾斜面HXaは、相対回転軸Sの軸に直角となる断面形状の輪郭(断面線G)が、周方向に沿って軸心からの距離が変位する領域を含む。従って、締結装置1を締め付ければ、回動部側傾斜面21aと部材側傾斜面HXaが当接し、第二回動部20と被締結部材Hの相対回転が防止される。
このように、部材側座部HXが、軸方向に対して傾斜した平面となる場合に、この部材側座部HXと平行となる奥向き座部21を形成することで、両者を密着させつつ、回動係合機構Zとして、回動方向に係合させることが出来る。
なお、本第三実施形態では、回動部側傾斜面21aと部材側傾斜面HXaが単一平面である場合を例示したが、傾斜角度の異なる複数の平面で構成されるようにしても良い。例えば、側面V字形状となるような楔状の二つの傾斜面を組み合わせてもよく、或いは、三つ以上の傾斜面からなる多角椀形とすることも可能である。また、回動部側傾斜面21aと部材側傾斜面HXaが、平面と曲面を組み合わせて構成されるようにしても良い。
図22に第六実施形態に係る締結装置1の回動係合機構Zを示す。第二回動部20の奥向き座部21の外壁(周壁)は、相対回転軸Sの軸心に対して同心の部分円弧形状となっており、残部を弦のように直線状に切り落とした形状とすることで、この弦を回動部側当接部21bにしている。即ち、回動部側当接部21bは、奥向き座部21の周囲において、半径方向に対して直角で且つ半径方向外側に向いた平面によって構成されている。
一方、部材側座部HXは、相対回転軸Sの周囲において、半径方向に対して直角で、且つ半径方向内側に向いた平面となる部材側当接部HXbを有する。従って、回動部側当接部21bと部材側当接部HXbは対向しており、互いに当接する。
より詳細に回動部側当接部21bは、相対回転軸Sの一方の回転方向Xに対向する第一回動部側当接領域21bxと、他方の回転方向Yに対向する第二回動部側当接領域21byとを備える。部材側当接部HXbは、相対回転軸Sの回転方向Yに対向する第一部材側当接領域HXbyと、回転方向Xに対向する第二部材側当接領域HXbxを備える。
例えば、第二回動部20が被締結部材Hに対してY方向に相対回転しようとすると、第一回動部側当接領域21bxと第一部材側当接領域HXbyが当接して、その相対回転が抑制される。同様に、第二回動部20が被締結部材Hに対してX方向に相対回転しようとすると、第二回動部側当接領域21byと第二部材側当接領域HXbxが当接して、その相対回転が抑制される。なお、ここでは被締結部材Hが、部材側当接部HXbを一体的に提供する場合を例示したが、被締結部材Hと部材側当接部HXbが別部材となっていても良い。即ち、部材側当接部HXbは、第二回動部20の周囲に在る外部部材であっても良い。
なお、回動部側当接部21b及び部材側当接部HXbは、周方向の一部の角度範囲に配置される。全周に形成しようとすると、構造が複雑化して製造コストが増大し、更に互いに嵌め込む動作が複雑となる。従って、当接部を構成する角度範囲としては180°未満が好ましく、より望ましくは120°未満とする。本実施形態では、約70°の角度範囲内で配置されている。結果、残りの290°の範囲は、第二回動部20の周囲を開放できる。
更に本実施形態では、第二回動部20の部材としての厚み分を有効利用して、その側面に回動部側当接部21bを形成している。従って、製造コストを低減することが可能となる。また、被締結部材Hにおける段差(例えば、ブラケットH2におけるベースプレートh10と柱部材h20の段差)を有効利用して、その段差に部材側当接部HXbを形成することができる。
なお、上記第四実施形態において、回動部側当接部21bと部材側当接部HXbの形状は様々に応用することができ、相対回転軸Sと中心とした非正円形状であれば、回動部側当接部21bと部材側当接部HXbを周方向に係合させることが可能となる。例えば、奥向き座部21の周囲の複数個所に、回動部側当接部21bを形成することもできる。この際、部材側座部HXの周囲に形成される部材側当接部HXbも複数個所に形成すればよい。
更に例えば図23(A)及び(B)に示すように、第二回動部20の奥向き座部21の周囲の外壁が、相対回転軸Sの軸心に対して同心の部分円弧形状となっており、その一部の領域に限って、半径方向に延びる突起Tを形成することが出来る。突起Tが回動部側当接部21bとなり、突起Tにおいて、一方の回転方向Xに対向する一方の側面が第一回動部側当接領域21bxとなり、回転方向Yに対向する他方の側面が第二回動部側当接領域21byとなる。この際、部材側座部HXの周囲には、突起Tを挟み込むように、一対の柱状(ここでは円柱状)の突出部K1、K2が形成される。この突出部K1、K2が部材側当接部HXbとなる。なお特に図示しないが、突出部K1、K2等は、被締結部材Hに対してネジ構造等によって着脱自在となっていてもよい。勿論、被締結部材Hが予め有している段部を部材側当接部HXbとしても良い。
また、ここでは特に図示しないが、第二回動部20側に一対の突出部K1、K2を形成し、被締結部材H側に半径方向に延びる突起Tを形成しても良い。第二回動部20の突出部K1、K2によって、被締結部材H側の突起Tを挟み込めば、両者の相対回転を抑止できる。
図24に、第七実施形態の締結装置1の回動係合機構Zを示す。図24(B)及び(C)に示すように、第二回動部20の奥向き座部21の周囲には、回動部側段部21cが形成される。この回動部側段部21cは、奥向き座部21を基準にして、被締結部材H側に屈曲(突出)する突起の内壁によって構成される。
一方、被締結部材Hの部材側座部HXは、相対回転軸Sの軸線方向に伸びる部材側段部HXcを有する。この部材側段部HXcは、ねじ先側に落ち込むような段差となる。回動部側段部21cと部材側段部HXcの相対回転軸Sの軸心からの距離は、互いに一致している。従って、回動部側段部21cと部材側段部HXcを当接させることで互いに周方向に係合して相対回転が防止される。
このように、回動係合機構Zを、相対回転軸Sの周方向の一部の範囲であって、更に回動部側段部21cを、ねじ先側に突出形成することで、第二回動部20の全周囲を開放することが可能となる。
図25に、第八実施形態の締結装置1の回動係合機構Zを示す。図25(A)及び(B)に示すように、第二回動部20の奥向き座部21の外縁よりも内側に、回動部側段部(突起)21cが形成される。この回動部側段部21cは、奥向き座部21を基準にして、被締結部材H側に屈曲(突出)する。
一方、図25(C)に示すように、被締結部材Hの部材側座部HXの外縁よりも内側に、回動部側段部21cを収容する部材側段部(窪み)HXcが形成される。結果、回動部側段部(突起)21cと部材側段部(窪み)HXcが係合して、相対回転が防止される。
図26に、第七実施形態の締結装置1の回動係合機構Zを示す。図26(A)及び(B)に示すように、第二回動部20の奥向き座部21の周壁は、相対回転軸Sの軸心(孔の中心)に対して偏心した正円形状となっている。この周壁が、回動部側当接部21bとなる。
一方、被締結部材Hの部材側座部HXは、第二回動部20の奥向き座部21を収容するための収容凹部となっており、且つ、この収容凹部の内壁も、相対回転軸Sの軸心に対して偏心した正円形状となっている。この内壁が、部材側当接部HXbとなる。なお、回動部側当接部21bと部材側当接部HXbの偏心量は同じである。
従って、伝力部25を被締結部材Hの孔HPに挿入するようにして、第二回動部20の奥向き座部21を、被締結部材Hの収容凹部(部材側座部HX)に収容すると、相対回転軸Sを中心として回動部側当接部21bと部材側当接部HXbが周方向に係合する結果となり、両者の周方向の相対回転が規制される。即ち、この回動部側当接部21bと部材側当接部HXbが回動係合機構Zとして作用する。特にここでは、回動部側当接部21bと部材側当接部HXbを正円形状としているので、第二回動部20や収容凹部の形状加工を極めて簡単としつつも、両者の相対回転を防止出来る。
なお、図27(A)乃至(C)に示されるように、第二回動部20の奥向き座部21の周壁、及び、部材側座部HXを構成する収容凹部の内壁を、相対回転軸Sの軸心に対して同心となる部分円弧形状とし、残部を弦のように直線状に切り落とした形状とすることで、これらの弦を回動部側当接部21b及び部材側当接部HXbにすることも出来る。回動部側当接部21b及び部材側当接部HXbは、相対回転軸Sの軸心からの距離が周方向に沿って変動するので、両者が周方向に係合して相対回転が規制される。
次に、上記第一乃至第九実施形態の逆回転防止機構V及び/又は回動係合機構Zが適用され得る、所謂ワンサイドボルトの他の構成例について説明する。なお、図中において逆回転防止機構Vや回動係合機構Zが適用され得る可能性がある部位に符号V、Zを付することで、これらの説明を省略する。
図28に、第一構成例に係る締結装置1を示す。締結装置1は、軸方向に延びる軸部5と、軸部5の軸方向奥側に配置される挟持部10と、軸部5の軸方向手前側に配置される第一回動部15と、手前側に配置されて第一回動部15と相対回動する第二回動部20と、第二回動部20よりも挟持部10側に配置されて軸力を伝達する伝力部25と、伝力部25と挟持部10の間で軸方向に挟持される奥側係合部60と、を有する。なお、本第一実施形態では、これらの部品又は部材は金属で構成される場合を例示するが、金属以外の部材で構成しても良く、異素材を組み合わせて構成しても良い。
第一回動部15は、特に図示しない締緩工具と係合して、回動力を受ける。締緩工具との係合手法は、様々に存在するが、例えば、スパナと係合するためには、第一回動部15の外形を六角形や凸型と凹型を含めた多角形等の多面形にすれば良く、六角レンチ等の締緩工具と係合するためには、第一回動部15の端面に六角穴や六角レンチ等の締緩工具に対応した形状の穴を形成すればよい。
第二回動部20は、奥向き座部21に回動係合機構Zを有しており、特に図示しない被締結部材と周方向に係合する。
第一回動部15と第二回動部20は、互いに相対回転すると共に、軸方向に係合する。本実施形態では、第二回動部20の手前側端面22と、第一回動部15の奥向き座部16が軸方向に係合する。
第一回動部15は、ここでは軸部5の手前側端部に一体的に設けられる。従って、第一回動部15と軸部5は供回りする。
軸部5は、円柱状の部材(必ずしも円柱状である必要はなく、柱状を成す物であればよい。)であり、挟持部10や螺合部30、第一回動部15等に作用する軸力を伝達する。なお、本実施形態では、軸部5は、挟持部10と自身に形成される螺合部30(詳細は後述)間で軸力を伝達する。軸部5は、被締結部材Hの厚さより長く設定される。
挟持部10は、軸部5の奥側端部に一体的かつ同軸状に設けられる。
挟持部10は、軸部5の直径よりも大きな外形を有する部材、即ち、軸部5に対して半径方向外側に突出する部材となる。具体的に本実施形態では、挟持部10の外形は、円柱や円筒形又は円錐形となっている。
挟持部10は、軸部5に対して半径方向外側に突出することで、手前側に対向する受部11が形成される。ここでは、受部11が軸方向に直角となる平面で構成されるが、円錐状のテーパ面であっても良い。
軸部5と挟持部10の間に螺合部30が形成される。具体的に螺合部30は、挟持部10の内周に形成される雌ねじ部31と、軸部5の少なくとも奥側の外周に形成されて雌ねじ部31と螺合する雄ねじ部32と、を備えて構成される。従って、挟持部10は筒状の雌ねじ体となり、軸部5が雄ねじ体となる。
第二回動部20は、奥側(奥側係合部60側)に対向する奥向き座部21を有する。この奥向き座部21は、伝力部25の手前側端面27と軸方向に係合すると共に、被締結部材Hの手前側面と当接する。なお、奥向き座部21は、特に図示しないワッシャと当接し、このワッシャを介して伝力部25や被締結部材Hと軸方向に係合するようにしても良い。
挟持部10と伝力部25の間には、挟持部10と伝力部25を供回りさせると共に、この挟持部10と伝力部25を軸方向に相対移動させる連動機構90が構成される。連動機構90は、挟持部10に設けられて、奥側係合部60の内側に軸方向に延びる連動スリーブ92と、伝力部25に設けられて連動スリーブ92を収容するスリーブ収容孔94を有する。図28(C)に示すように、連動スリーブ92の外周面及びスリーブ収容孔94の内周面には、軸方向に延びて互いに周方向に係合する溝又は列状突起が、周方向に一系列以上好ましくは複数形成される。従って、連動スリーブ92とスリーブ収容孔94は、軸方向に摺動自在であると共に、周方向に係合する。なお、ここでは特に図示しないが、奥側係合部60にスリーブ収容孔94を形成し、伝力部25に連動スリーブ92を形成することも可能である。
第二回動部20は、伝力部25と一体化されることで、一緒に回動する。従って、第二回動部20を回動させると、伝力部25及び連動機構90を介して、挟持部10が供回りする。
第一及び第二回動部15、20が相対回転すると、螺合部30によって、その相対回転が、挟持部10と伝力部25の軸方向の相対移動に変換される。
伝力部25は、ここでは略円筒状のスリーブ部材であり、内部に軸部5が挿入される。伝力部25の長さは、被締結部材Hの厚みと同等又はそれ以上に設定され、かつ、軸部5よりも短く設定される。伝力部25は、第二回動部20と奥側係合部60の間に配置されて、所謂つっかえ棒のように軸力を伝達する。ここでは第二回動部20と伝力部25が一体の場合を例示しているが、両者が別体となっていても良い。
伝力部25の最大外径、挟持部10の最大外径、拡径前の奥側係合部60の最大外径は、一致又は近似するように設定される。これらの全てを、被締結部材Hの孔HPに、手前側から挿入する必要があるからである。
伝力部25は、その長さが、被締結部材Hの孔HPの内部で縮むことができる収縮構造を採用している。収収縮構造として、例えば、奥側に位置する筒状の第一伝力片28Aと、手前側に位置する筒状の第二伝力片28Bを備えるようにし、この第一伝力片28Aと第二伝力片28Bを、軸方向に摺動させつつ、周方向に係合させる。この際、第一伝力片28Aの外径に対して、第二伝力片28Bの内径を大きく設定し、第一伝力片28Aの外側に第二伝力片28Bが進入して、伝力部25の全長を収縮させる。図28(D)に示すように、第一伝力片28Aの外周と第二伝力片28Bの内周の間に、軸方向に延びて互いに周方向に係合する溝又は列状突起を、周方向に複数形成することで、第二回動部20の回動を、挟持部10まで伝達できるようにする。
せん断部(シャーワッシャ)29は、第一伝力片28Aの外周に固定されており、伝力部25が最も長い状態において、第二伝力片28Bの奥側端部がせん断部29に当接する。図28(B)に示すように、挟持部10を手前側に移動させて奥側係合部60を拡径させた後、更に、伝力部25を軸方向に縮めるように外力が付与されると、図2に示すように、せん断部29がせん断されて、第一伝力片28Aの外側に第二伝力片28Bが進入して、伝力部25の全長が短くなる。特に本事例では、第一伝力片28Aと第二伝力片28Bが、共に、被締結部材Hの孔HPよりも小さい外径に設定され、双方共に孔HP内に挿入される。また、せん断部29の外径も、孔HPより小さく設定され(又は伝力部25の最大外径以下に設定され)、伝力部25の軸方向の中央近傍に配置されることで、締結時に孔HP内に位置するようになっている。
せん断部29がせん断する際の軸力は、奥側係合部60が拡径する際に必要とする軸力よりも大きく設定される。即ち、奥側係合部60を拡径させるまでは、伝力部25が軸方向に縮まないようにして、挟持部10のみが軸方向に摺動するようにし、それより大きい軸力(即ち、締結時の軸力)が作用すると、せん断部29が積極的に破断して、伝力部25が縮む。
奥側係合部60は、ここでは変形スリーブとなっており、半径方向外側に向かって容易に座屈させることで、変形後の変形スリーブの側面を利用して、手前向き座部64を発現させる。
結果、締結装置1は、挟持部10の手前向き座部64と、第二回動部20の奥向き座部21を利用して、被締結部材Hと締結することが可能になる。なお、手前向き座部64と奥向き座部21が被締結部材Hに直接的に接触して締結する場合を例示しているが、本発明は、ワッシャ等が介在して間接的に締結する場合も含む。
奥側係合部60について更に詳細に説明する。
図28(A)に示すように、奥側係合部60は、環状の部材であって、軸方向手前側に対向する当接面63と、軸方向奥側に対向して挟持部10の受部11と当接する奥側係合面66を有する。
奥側係合部60は、外力に対して変形が容易となる易変形領域620と、外力に対して易変形領域640よりも変形しにくい難変形領域640を有する。易変形領域620と難変形領域640は、互いに物性の異なる材料で構成される。例えば本実施形態では、易変形領域620を金属生材とし、難変形領域640の少なくとも一部(場合によっては全部)を焼き入れ鋼としている。なお、ここでは、金属材料の焼き入れ状態によって、互いに物性を異ならせる場合を例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、易変形領域620を機械構造用炭素鋼(例えばS45C)とし、難変形領域640をクロムモリブデン鋼として、両者を接合することで一体化しても良い。また、易変形領域620を樹脂材料又はゴム材料とし、難変形領域640を金属材料とし、両者を一体成型しても良い。
易変形領域620、難変形領域640共に、リング状の領域となっており、これらが軸方向に連続している。具体的には、易変形領域620の軸方向両外側に、それぞれ、難変形領域640、640が配置される構造となっている。
結果、図28(B)に示すように、挟持部10と伝力部25が接近すると、軸方向中央側の易変形領域620が優先的に座屈して半径方向外側に拡張し、それに伴って、難変形領域640が半径方向外側に傾倒する。結果、難変変形領域640の側面が、手前向き座部64となって、伝力部25における軸方向奥側の奥側端面26及び被締結部材Hに当接する。
第一構成例の締結装置1によれば、奥側係合部60が易変形領域620有しているので、容易に、奥側係合部60を変形(又は座屈)させることが可能となる。一方、奥側係合部60が難変形領域640を有しているので、変形後の奥側係合部60の強度又は剛性を高めることが可能となる。結果、締結時の作業者の負担軽減と、締結力の増大を両立させることができる。
また、第一構成例の締結装置1によれば、第一伝力片28Aと第二伝力片28Bが摺動する距離(収縮距離)Mを、伝力部25の全長の四分の一以上、好ましくは三分の一以上にすることが可能となる。結果、単一の締結装置1において、被締結部材Hの厚さ変動に柔軟に対応することができる。具体的には、締結装置1の軸方向の全長Lに対して、被締結部材の厚みEの変動許容量Exを、0.2L以上にすることができ、好ましくは0.3L以上、より望ましくは0.4L以上とすることができる。また、この際の厚みEが選択し得る最大値は、0.7L以上、より望ましくは0.8L以上とすることができる。言い換えると、締結装置1の全長をコンパクトに構成しつつも、被締結部材Hの厚さ変動に柔軟に対応できることになる。
更に第一構成例の締結装置1によれば、図28(A)及び(B)の縮径状態において、第一回動部15と第二回動部20を相対回転させると、第一回動部15と共に軸部5が回動し、第二回動部20と共に挟持部10が回動する。結果、図28(C)及び(D)に示すように、軸部5と挟持部10の間の螺合部30によって、挟持部10が手前側に移動して、奥側係合部60を拡径させることができる。従って、締結後においても、軸部5が手前側に突出することが無いので、邪魔にならない。
なお、上記第一構成例では、奥側係合部60の中央のみに易変形領域620が配置される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図30(A)に示すように、奥側係合部60において、複数の易変形領域620と、複数の難変形領域640が、軸方向に沿って交互に配置されることも好ましい。このようにすると、図30(B)に示すように、奥側係合部60の特定の場所のみを座屈させて、簡単に、半径方向外側に拡張させることが可能となる。
更に上記実施形態では、易変形領域620と難変形領域640の形状が同じ(特に軸直角方向の断面形状が同じ)場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図30(C)に示すように、軸方向に連続する易変形領域620と難変形領域640を、互いの形状が異なるようにすることができる。これにより、仮に同じ物性の材料でも、易変形領域620と難変形領域640の機械的特性を異ならせる。
図30(A)では、円筒形状の部材の内周面又は外周面に、半径方向を深さとする環状のスリットを有しており、このスリットによって、外力に対して脆弱な易変形領域620A、620B、620Cが形成される。
ここでは半径方向外側に突出するように座屈させる中央部分において、外周面側にスリットを形成して内周面側に易変形領域620Aを形成し、この易変形領域620Aから難変形領域640を介して軸方向に離反した両外側において、内周面側にスリットを形成して外周面側に易変形領域620B、620Cを形成する。結果、挟持部10と伝力部25によって奥側係合部60を軸方向に挟圧すると、図17(B)に示すように、各スリットが開くようにして、易変形領域620A、620B、620Cが折れ曲がり、難変形領域640を傾倒させることができる。
一方、図31(A)に示すように、半径方向外側に突出するように座屈させる中央部分において、内周面側に幅広のスリットを形成して外周面側に易変形領域620Aを形成し、この易変形領域620Aから難変形領域640を介して軸方向に離反した両外側において、外周面側に幅広のスリットを形成して内周面側に易変形領域620B、620Cを形成しても良い。結果、挟持部10と伝力部25によって奥側係合部60を軸方向に挟圧すると、図30(B)に示すように、幅広のスリットが閉じるようにして、易変形領域620A、620B、620Cが折れ曲がり、難変形領域640を傾倒させることができる。即ち、これらの事例では、易変形領域620を薄肉とし、難変形領域640を厚肉とすることで、機械的強度を異ならせることを実現している。
なお、上記実施形態では、易変形領域620と難変形領域640が軸方向に連続する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、周方向に連続させることもできる。その事例について以下詳述する。
図32に示す奥側係合部60では、奥側係合面66は、軸直角方向に対して傾斜するテーパ面となる。従って、同じくテーパ面となる受部11と奥側係合面66が軸方向に押圧されることで、この軸力が半径方向外側に向かう拡張力に変換される。
手前向き座部64は、伝力部25における軸方向奥側の奥側端面26に予め当接する。手前向き座部64は、奥側端面26に対して摺動しながら、半径方向外側に移動する。
以上の結果、受部11に対して奥側係合面66が半径方向外側に摺動すると、それに連動して手前向き座部64が奥側端面26に対して半径方向外側に摺動する。奥側係合面66と手前向き座部64の双方が半径方向外側に移動すると、挟持部10及び伝力部25よりも半径方向外側に突出する。奥側係合部60は、拡径時に傾斜することがないので、軸方向寸法を変化させずに半径方向外側に平行移動できることになる。
図32(A)に示すように、奥側係合部60は、周方向に複数(ここでは三個)配置されて、各々が手前向き座部64と奥側係合面66を有する奥側係合片62と、手前向き座部64が半径方向外側へ移動する際の移動限界を画定する突出規制部70を有する。
奥側係合片62は、肉厚で高い剛性となっており、難変形領域640に相当する。一方、突出規制部70は、薄肉で変形容易となっており、易変形領域620に相当する。
奥側係合片62は、平面視すると、部分円弧形状となる部材であり、周方向に複数配置されることで、連環部72の場所を除き、概ね円筒形状となる。
突出規制部70は、複数の奥側係合片62を周方向に連環させる連環部72となる。連環部72は、変形容易な部材となっており、連環方向の寸法、即ち周方向の寸法(距離)が可変となる。また、連環部72は、その周方向寸法に上限が設定されており、上限に達すると、それ以上に距離が広がらない構造となっている。
具体的に連環部72は、図32(A)の奥側係合部60が縮径状態では、半径方向に往復するように屈曲することで、周方向に折り畳まれた薄肉部材となっている。また、連環部72は、奥側係合部60の外周側近傍を互いに接続し、半径方向内側に向かって屈曲している。従って、この連環部72を、図32(C)に示すように、その上限に達するまで周方向に弾性又は塑性変形させると、周方向に隣接する奥側係合片62の距離が広がり、奥側係合片62が、軸方向を維持しながら半径方向外側に平行移動する。連環部72が伸びきると、奥側係合片62の移動が停止する。
図32(D)に示すように、第一及び第二回動部15、20を相対回転させて、被締結部材Hを締結すると、その反力が、奥側係合片62の手前向き座部64を経由して、挟持部10の受部11に伝わる。結果、奥側係合片62のそれぞれが、更に、半径方向外側に移動しようとするが、連環部72の張力によってそれ以上の移動が規制され、反力を受け止めることが可能となっている。
その後、図33に示すように、せん断部29がせん断されて、第一伝力片28Aの外側に第二伝力片28Bが進入して伝力部25の全長が短くなり、奥側係合部60と第二回動部によって、被締結部材Hが締結される。
本事例では、易変形領域620となる連環部72と、難変形領域640となる奥側係合片62が、周方向に交互に連続する。従って、拡径後のワッシャとなる奥側係合片62側を肉厚設計としても、連環部72は容易に変形できるので、作業者の締結時の負担が軽減される。
また、連環部72を、変形後に復帰可能な弾性部材とすれば、締結後において、挟持部10と伝力部55を離反させると、縮径状態に復帰することが可能となり、締結装置1を被締結体Hから容易に取り出すことができる。
なお、本構成例では、平面視で薄肉となる連環部72を半径方向に屈曲させる場合を例示したが、半径方向視で薄肉となる連環部を軸方向に屈曲させて、周方向に折り畳むこともできる。
また、奥側係合片62を半径方向且つ軸方向に肉厚にすることができる。また、奥側係合片62の手前向き座部64を、そのまま半径方向外側に移動させて、手前向き座部64で被締結部材Hの反力を受けることができるので、剛性が高められて締結力を増大させることが可能となる。
特に本実施形態の奥側係合部60では、拡径時に変形する連環部72を専用配置することで、奥側係合片62側を弾性又は塑性変形させることがないので、より一層、肉厚設計が可能となる。連環部72は容易に変形できるので、作業者の締結時の負担が軽減される。
上記構成例の奥側係合部60は、奥側係合片62と突出規制部70(連環部72)を一体的に形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば図34に示すように、別部材を組み合わせることも可能である。この場合、奥側係合片62は、焼き入れ等によって表面硬度の高められた金属材を用い、連環部72は、通常の金属材あるいは弾性変形容易な金属材を用いても良い。勿論、金属以外の樹脂材を組み合わせても良い。
上記構成例の奥側係合部60は、奥側係合片62が三個配置される場合を例示したが、その数は特に限定されず、例えば図35に示すように、四個又はそれ以上に配置しても良い。二個であっても良い。また、上記構成例の奥側係合部60の連環部72は、奥側係合部60の外周側近傍を互いに接続する場合を例示したが、図35に示すように、連環部72が奥側係合部60の内周側近傍を互いに接続し、半径方向外側に向かって屈曲させておくことも好ましい。このようにすると、連環部72の伸長による奥側係合片62の半径方向外側への移動距離を大きくすることができる。
上記構成例の奥側係合部60は、連環部72が存在する場所に、奥側係合片62の手前向き座部64及び奥側係合面66が存在しないように構成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図36に示すように、奥側係合片62において、手前向き座部64及び/又は奥側係合面66の近傍を、周方向に拡張させることもできる。即ち、連環部72と、手前向き座部64及び/又は奥側係合面66とが、軸方向に重なり合うように配置しても良い。このようにすると、手前向き座部64及び/又は奥側係合面66の面積を大きくすることが可能となる。
上記構成例の締結装置1は、図32(C)及び(D)の拡径状態において、受部11及び奥側係合面66のテーパ面によって、被締結部材Hの反力を受け止める構造を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図37に示すように、受部11を、内周側のテーパ面となる第一受部11aと、第一受部11aの外周側に配置されて軸直角方向に広がる平面となる第二受部11bとを備える二段構造にする。また、奥側係合面66を、外周側のテーパ面となる第一奥側係合面66aと、第一奥側係合面66aの内周側に配置されて軸直角方向に広がる平面となる第二奥側係合面66bとを備える二段構造にする。このようにすると、図37(A)の縮径時には、第一受部11aと、第一奥側係合面66aが当接し、テーパ構造によって軸力を拡張力に変換して奥側係合部60を拡径させる。拡径終了時は、図37(B)に示すように、第一受部11aと、第一奥側係合面66aの当接が解除され、第二受部11bと第二奥側係合面66bが当接して、奥側係合片62の半径方向外側への移動を完了させる。従って、第二受部11bと第二奥側係合面66bは、本発明でいう突出規制部70の一部と定義することも可能となる。
また、第二受部11bと第二奥側係合面66bは、被締結部材Hからの軸方向反力を、垂直となる平面で受けとめることができる。同時に、拡径状態において、連環部72に作用する張力を低減又は開放することができるので、連環部72の疲労を抑制できる。なお、ここでは受部11及び奥側係合面66を二段構造にする場合を例示したが、例えば、奥側端面26と手前向き座部64をテーパ構造にする場合は、これを二段構造にすることも可能である。
更に図38に示すように、受部11及び奥側係合面66において、拡径動作完了時(拡径状態時)に互いに半径方向に係合する段部11c、66cを形成することができる。同様に、奥側端面26と手前向き座部64において、拡径動作完了時に互いに半径方向に係合する段部26c、64cを形成することができる。これらの段部により、奥側係合片62の半径方向外側への移動を規制することができるので、これらの段部も、本発明でいう突出規制部70の一部と定義することができる。
上記構成例では、手前向き座部64と奥側端面26を、軸直角方向と平行となる平面で構成しているが、本発明はこれに限定されない。例えば図39に示すように、手前向き座部64と奥側端面26をテーパ面として、軸方向の押圧力を、手前向き座部64を半径方向外側へ移動させる拡張力に変換させることも好ましい。
上記構成例では、図32(C)及び(D)の拡径状態において、手前向き座部64と奥側端面26の一部が互いに当接する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図40(B)に示すように、拡径状態において、手前向き座部64と奥側端面26の当接が解除されるようにし、伝力部25の奥側端面26を、奥側係合部60の内周側に進入させることも好ましい。このようにすると、伝力部25が奥側係合部60内に進入可能な距離Tだけ、奥側係合部60と第二回動部20による締結量(締付量)を増大できるので、被締結部材Hの厚み変化に柔軟に対応することが可能となる。
なお、上記構成例では、軸部5と挟持部10の間に螺合部30を配置して、挟持部10が手前側に移動して、奥側係合部60を拡径させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。
例えば図41(A)に示すように、軸部5の手前側に雄ねじ部32を配置して雌ねじ体とし、第二回動部20をナットとして内周面に雌ねじ部31を配置し、この雄ねじ部32と雌ねじ部31を螺合させることによって螺合部30を構成することができる。
この場合は、第一回動部15、軸部5及び挟持部30を一体的に構成することで、第二回動部20と第一回動部15を相対回転させることで、挟持部30と伝力部25を軸方向に接近させて、奥側係合部60を拡径させることができる(図41(B)参照)。なお、ここでは第二回動部20と伝力部25を別体に構成しているが、一体化してもかまわない。
伝力部25は、必ずしも軸方向に収縮させる必要はないが(その事例については図43参照)、図42に示すように、奥側係合部60が拡径した後、更に第二回動部20と第一回動部15を相対回転させて、挟持部30を手前側に移動させると、伝力部25のせん断部29がせん断されて、第一伝力片28Aの内側に第二伝力片28Bが進入して、伝力部25の全長が短くなるようにできる。このようにすると、被締結部材Hの厚さ変動に柔軟に対応できる。
また図42に示すように、手前側に配置される第二伝力片28Bの直径を、孔HPよりも大きく設定し、この第二伝力片28Bを被締結部材Hの手前側に配置して、第二回動部20の座部(座金)としても機能させても良い。この場合は、第二伝力片28Bの内周側に、第一伝力片28Aの手前側端部を進入させることで、伝力部25の全長を縮めるようにする(図42(B)参照)。
なお図41及び図42共に、せん断部29がせん断する際の軸力は、奥側係合部60が拡径する際に必要とする軸力よりも大きく設定される。即ち、奥側係合部60を拡径させるまでは、伝力部25が軸方向に縮まないようにし、それより大きい軸力(即ち、締結時の軸力)が作用すると、せん断部29が積極的に破断して、伝力部25が縮む。
また例えば図43(A)に示すように、奥側係合部60として、図32乃至図42で示した奥側係合片62(難変形領域640)及び連環部70(易変形領域620)と、その手前側に図28乃至図31で示した変形スリーブ80を組み合わせるように配置することも可能である。この際は、変形スリーブ80の軸方向の座屈荷重は、奥側係合部60の拡径荷重よりも小さく設定することが好ましい。
即ち、図43(B)に示すように、挟持部10と伝力部25を接近させると、先に変形スリーブ80が座屈して、手前側座部64を備えた所謂ワッシャとなる。座屈完了後、更に強い力で挟持部10と伝力部25を接近させると、奥側係合片62が拡径して、その手前向き座部64が、被締結部材Hと軸方向に係合する位置まで移動する。このようにすると、締結力を一層高めることが可能となる。
この際、変形スリーブ80において、軸方向中央に位置する易変領域620をやわらかい材料(例えば、金属生材)とし、座屈完了後に手前向き座部64を発現する難変形領域640を硬い材料(例えば、焼き入れ鋼)とすることが好ましい。変形を容易にしつつも、変形後の強度又は剛性を高めることができる。
次に、図44を参照して、第二構成例に係る締結装置1について説明する。なお、第一構成例で示した締結装置の部品、部材等と機能が共通するものについては、第二構成例において名称及び/又は符号等を一致させることで、説明や図示を適宜省略し、異なる点を主に説明する。
図44(A)に示すように、本締結装置1は、第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60及び挟持部10が、軸方向に一体的に構成される。従って、第二回動部20に外部から付与される回動力を、挟持部10まで伝達させることができる。なお、第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60及び挟持部10は、例えば、樹脂素材を射出成型することによって構成することも可能であり、また、金属材料を切削したり、プレス成型したりすることで構成することも可能であり、金属やその他の粉末材料を成型することで構成することも可能である。
奥側係合部60は、軸部5の外周面に接近し、半径方向外側に向かって容易に座屈可能な変形スリーブである。この変形スリーブの半径方向の肉厚は、挟持部10及び/又は伝力部25の肉厚よりも薄い。従って、図44(A)の左半分に示すように、第一回動部15と第二回動部20を相対回転させて、挟持部10と伝力部25を接近させると、奥側係合部60が座屈して半径方向外側に向かって変形し、手前向き座部64を有する所謂ワッシャとなる。
伝力部25は、図44では図示を省略するが、軸方向に収縮可能な収縮構造が採用されている。これについては後述する。
なお、本実施形態の奥側係合部60は、挟持部10と伝力部25の間に一体的に構成されることで、挟持部10と伝力部25を供回りさせると共に、挟持部25と伝力部25を軸方向に相対移動させる連動機構を兼ねることになる。
奥側係合部60は、軸方向中央に位置する中央易変形領域620Aと、伝力部25との境界に位置する手前側易変形領域620Bと、挟持部30との境界に位置する奥側易変形領域620Cを有しており、これらをやわらかい材料、薄肉の材料、又は脆弱な材料とする。一方、座屈完了後に手前向き座部64を形成(発現)する部位、即ち、中央易変形領域620Aの軸方向両外側の難変形領域640、640を硬い材料、厚肉の材料又は高剛性の材料とする。変形を容易にしつつも、変形後の強度又は剛性を高めることができるからである。
これらを金属材料で構成する場合は、例えば、中央易変形領域620A、手前側易変形領域620B、奥側易変形領域620Cを有しており、これらをやわらかい材料、薄肉の材料、又は脆弱な材料とする。一方、座屈の少なくとも一部(場合によっては全部)を金属生材とし、難変形領域640、640の少なくとも一部(場合によっては全部)を焼き入れ鋼とすることもできる。
なお、図44(A)では、奥側係合部60が軸部5の外周面に接近する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図44(B)に示すように、挟持部10と伝力部25によって座屈可能な範囲内で、軸部5から半径方向に隙間を空けた位置に奥側係合部60を配置しても良い。
次に、伝力部25の軸方向収縮構造について説明する。例えば図45(A)に示すように、伝力部25を所謂ジャバラ状に構成し、軸方向に伸縮させることが好ましい。この伝力部25の伸縮時荷重は、奥側係合部60の軸方向の座屈荷重よりも大きく設定される。このようにすると、奥側係合部60の座屈完了後において、更に強い力で挟持部10と伝力部25側に接近させると、伝力部25が収縮して、被締結部材Hと軸方向に係合することが可能となる。
他の例として図45(B)に示すように、伝力部25を、筒部材に対して半径方向外側から内側に向かう側面視V字形状の第一スリット226Aと、第一スリット226Aと180°の位相差となる第二スリット226Bを、軸方向に交互に形成することも好ましい。このようにすると、伝力部25を側面視した場合に、第一及び第二スリット226A、226Bによって軸方向に隙間を有する所謂ギザギザ状(ジグザグ状)となるので、この隙間の分だけ、軸方向に収縮することが可能となる。
このスリットの位相や数は特に限定されるものではなく、図45(C)に示すように、筒部材に対して半径方向外側から内側に向かう側面視V字形状の第一スリット226Aと、第一スリット226Aと180°の位相差となる第二スリット226Bと、第一及び第二スリット226A、226Bと、90°の位相差となる第三スリット226Cと、第三スリット226Cと180°の位相差となる第四スリット226Dを形成しても良い。第一及び第二スリット226A、226Bは互いに軸方向に同じ位置とし、第三及び第四スリット226C、226Dは、互いに軸方向に同じ位置であるが、第一及び第二スリット226A、226Bに対して軸方向にずれた位置に配置する。このようにしても、軸方向に形成される隙間の分だけ、軸方向に収縮することが可能となる。
更に、スリットの形状は特に限定されるものではない。図45(B)の応用となる図46(A)に示す伝力部25は、軸直角方向に平行となって軸方向の隙間を形成する平行形状の第一及び第二スリット226A、226Bを有する。図45(C)の応用となる図46(B)に示す伝力部25と、平行形状の第一乃至第四スリット226A、226B、226C、226Dを有する。これらにおいても、伝力部25内において軸方向に形成される隙間の分だけ、軸方向に収縮することが可能となる。
また更に、スリットの奥行(深さ)は特に限定されない。例えば、図46(A)の応用となる図47に示す伝力部25のように、第一及び第二スリット226A、226Bの最奥部(再奥面)が、スリットの開口側と反対位相(180°位相差)側に回り込むようにして、最奥部が半径方向に延びる形状としても良い。このようにすると、伝力部25の剛性が低下し、軸方向に柔軟に収縮できる。
更に図46(B)の応用となる図48に示す伝力部25のように、筒状部材に対して微細な軸方向隙間となる平行形状の第一乃至第四スリット226A、226B、226C、226Dを形成してから(図48(A)参照)、これを軸方向に塑性変形するように伸長させて(図48(B)参照)、第一乃至第四スリット226A、226B、226C、226Dを軸方向に拡張し、結果として側面視V字形状のスリットとすることも可能である。
なお、図45乃至図48で説明した伝力部25の軸方向の収縮構造は、第一構成例で説明した締結装置1の伝力部25に適用することができる。
第一構成例では、伝力部25の素材自体は軸方向に伸縮しない場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図49に示すように、伝力部25が、軸部5の外周面に接近する円筒状の薄肉部25Aを備えるようにしても良い。これにより、伝力部25と、被締結部材Hの孔HPの間に余裕隙間Mを確保することができるので、余裕隙間M内で薄肉部25Aが径方向に変形して、軸方向寸法を縮めることが可能となる。結果、奥側係合部60と第二回動部20による締結量を確保できるので、被締結部材Hの厚み変化に柔軟に対応することが可能となる。ここでは、薄肉部25Aを円筒形状としたが、軸方向に延びる複数の棒状部材を周方向に配置した籠状としても良い。
なお、図49(B)のように、薄肉部25Aを、被締結部材Hの孔HP側に接近させても良く、また、図49(C)のように、薄肉部25Aの一方の端部は被締結部材Hの孔HPに接近し、他方の端部は軸部5の外周面に接近するようにして、傾斜筒形状とすることもできる。第二回動部の図示を省略するが、図50(A)に示すように、薄肉部25Aの両端部は被締結部材Hの孔HPに接近し、中央側は軸部5の外周面に接近する湾曲した筒形状とすることもできる。図50(B)に示すように、また、薄肉部25Aの両端部は軸部5の外周面に接近し、中央側は被締結部材Hの孔HPに接近する湾曲した筒形状とすることもできる。図50(C)に示すように、薄肉部25Aの両端部から中央に向かって一定の範囲は被締結部材Hの孔HPに接近し、これらの除く中央側を軸部5の外周面に接近する湾曲形状とすることもできる。
更に図50(D)に示すように、薄肉部25Aを、断面が非正円となる筒状構造としても良い。例えば、断面形状を、星型形状、多角形状、周方向に連続する鋸刃状、ギザギザ状、ジグザグ状、波状とすることができる。この際、薄肉部25Aの途中に開口25Dを形成することで、軸方向に座屈又は変形容易な脆弱領域25Eを形成することができる。
また図50(E)に示すように、伝力部25を、リング状の部材を波形状に構成したウェーブリング片を軸方向に多段に積層するか、あるいは、線材をスパイラル状に巻きながら波形状に積層することによって構成される、所謂ウェーブばねとすることもできる。このようにすると、軸方向に弾性変形することで、伸縮することが可能である。なお、ウェーブばねではなく、所謂コイルスプリングを用いてもよい。
なお、上記図49及び図50のいずれにおいても、奥側係合部60が変形又は変位する際に必要とする軸力では、伝力部25が軸方向に縮まないようにし、それより大きい軸力(即ち、締結時の軸力)が作用すると、積極的に縮むようにする。
なお、ここでは奥側係合部60の変形スリーブが一つの場合を例示したが、別体又は一体状で軸方向に複数の変形スリーブを配置して、各変形スリーブを座屈させて多段ワッシャにすることも可能である。
更に、第一構成例では、挟持部10の受部11、及び、奥側係合部60の奥側係合面66をテーパ面として、このテーパ面を利用して奥側係合部60の奥側係合片62を半径方向外側に移動させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。
例えば図51及び図52に示すように、奥側係合部60が、手前側に配置される第一奥側係合片660、及び、奥側に配置される第二奥側係合片680、これらの奥側係合片660、680の周囲を環状に取り囲む弾性変自在の規制部610を備えるようにしても良い。規制部610は、例えばゴム等の材料で構成されており、奥側係合片660、680を半径方向内側に付勢する。なお、奥側係合片660、680が難変形領域に想到し、規制部610が易変形領域に相当することになる。
なお、ここでは、図41乃至図43で示す変形例と同様に、軸部5の手前側に雄ねじ部32を配置して雌ねじ体とし、第二回動部20をナットとして内周面に雌ねじ部を配置し、この雄ねじ部32と雌ねじ部を螺合させることによって螺合部を構成する場合を示している。
図55に示すように、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680は、共通形状となっており、それぞれ、軸方向に延びる貫通孔661、681を有し、この貫通孔661、681は、軸方向から視ると、半径方向に広がる長穴形状となっている。なお、図55においては、第一奥側係合片660は軸方向及び直径方向に反転した姿勢となっている。
第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680は、貫通孔661、681に軸部5が貫通された状態で、長円穴の分だけ半径方向にスライド自在となっている。また、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680は、互いに当接(対向)する当接面663、683を有しており、この当接面663、683が、貫通孔661、681の長穴方向に傾斜している。
図51に戻って、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680は、共通形状であるものの、互いに軸方向に反転状態かつ直径方向に反転する状態、即ち、当接面663、683が対向するような点対称状態で配置される。結果、奥側係合部60の奥側係合面66と手前向き座部64が軸直角方向に平行となり、当接面663、683が傾斜する。
従って、図53及び図54に示すように、挟持部10と伝力部25を接近させることにより、その挟持力を当接面663、683に作用させると、規制部610の付勢力に抵抗しながら、第一奥側係合片660が直径方向の一方へ移動し、第二奥側係合片680が直径方向の他方へ移動する。即ち、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680が、互いに直径方向に離反する。結果、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680にそれぞれ形成される手前向き座部64が、半径方向外側へ移動して、伝力部25よりも突出する。このように、奥側係合部60を複数部材で構成し、内部にテーパ面を配置することで、これらの複数部材を半径方向外側に離反させることも好ましい。
なお、本第二構成例の締結装置によれば、第一回動部15と第二回動部20との相対回転の回転方向を、締め付けと逆方向とすることが可能であり、この逆回転をさせると、収縮方向に対する付勢状態にあった規制部610の収縮力により第一奥側係合片660と第二奥側係合片680とを元の同軸位置に復帰させることが出来、従って、被締結部材Hに対して締結状体にあった締結装置1を被締結部材Hから取り外すことも可能となる。
また、図51乃至図55で示した上記変形例では、奥側係合部60が、挟持部10及び伝力部25に対して周方向に相対回転可能な状態で配置される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、図56及び図62に示すように、挟持部10における受部11に対して、貫通孔661、681の長円方向(軸部5の直径方向)に延びる受部用案内凹凸11xを形成し、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680の各奥側係合面66に対して、軸部5の直径方向に延びる係合片用案内凹凸664、684を形成し、受部用案内凹凸11xと係合片用案内凹凸664、684を直径方向に摺動自在、かつ、周方向に係合させることができる。このようにすると、受部11に対して、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680が周方向に係合するので、この奥側係合部60が、挟持部10に対して回動力を伝達できる。
即ち、図28等で示した事例と同様に、軸部5と挟持部10の間に螺合部30を形成して、挟持部10と軸部5を相対回転させる場合において、奥側係合部60は、挟持部10と伝力部25の間に存在して全体を供回りさせるとことができるので、本発明における連動機構を兼ねることができる。
また、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680の当接面663、683に対して、係合片用案内凹凸664、685と同方向に延びる内部案内凹凸663a、683aを形成し、互いの内部案内凹凸663a、683aを、直径方向に摺動自在、かつ、周方向に係合させることができる。このようにすると、第一奥側係合片660と第二奥側係合片680が、直径方向に摺動自在且つ周方向に係合するので、第一奥側係合片660と第二奥側係合片680の間で回動力を伝達できる。
更に第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680の手前向き座部64に対して、座部用案内凹凸64xを形成し、また、伝力部25の奥側端面26に対して、直径方向に延びる伝力部用案内凹凸26xを形成し、座部用案内凹凸64xと伝力部用案内凹凸26xを直径方向に摺動自在、かつ、周方向に係合させることができる。このようにすると、伝力部25に対して、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680が周方向に係合するので、伝力部25が、奥側係合部60に対して回動力を伝達できる。上記構成により、図57に示すように、伝力部25の回動力を、奥側係合部60を介して挟持部10に伝達できるので、第一構成例で示した連動機構90を兼ねる(省略する)ことができる。
図58及び図59に示すように、挟持部10と伝力部25を接近させてその挟持力を当接面663、683に作用させると、伝力部用案内凹凸26x、座部用案内凹凸64x、内部案内凹凸663a、683a、係合片用案内凹凸664、684、受部用案内凹凸11xによって直径方向に案内されながら、規制部610の付勢力に抗して、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680が、互いに直径方向に離反する。結果、第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680にそれぞれ形成される手前向き座部64が、半径方向外側へ移動して、伝力部25よりも突出する。
なお、上記変形例では、二つの第一奥側係合片660及び第二奥側係合片680を、伝力部25と挟持部10に対して周方向に係合させながら、直径方向に離反させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図28の第一構成例で示した奥側係合部60の各奥側係合片62の手前向き座部64と奥側係合面66に対して、半径方向に延びる案内用凹凸を形成し、この案内用凹凸を、伝力部25と受部11に対して同方向に形成される案内用凹凸と係合させるようにしても良い。即ち、互いの当接面において案内凹凸を放射状に形成することで、奥側係合部60が、伝力部25の回動力を挟持部10に伝達できるようにしても良い。
また、この半径方向に摺動自在且つ周方向に係合する案内用凹凸の形状は、例えば断面鋸刃状、断面矩形状、互いに離反不能なアリ溝等、様々な態様を選択できる。
更に上記第一乃至第二構成例では、主として、奥側係合部60が軸方向に一段の場合を例示したが、例えば図63に示すように、奥側係合部60が、軸方向に多段化された複数の奥側係合片690A、690B、690Cを備えるようにし、入れ子構造又はテレスコピック構造で軸方向に収縮しながら、各奥側係合片690A、690B、690Cを半径方向外側に拡張させることも好ましい。拡張完了状態において奥側係合片690A、690B、690Cを軸方向に係合させれば、最内周の奥側係合片690Cのみを、挟持部10及び伝力部25で挟み込むだけで、最外側に配置される奥側係合片690Aを軸方向に保持することができる。結果、最も外側に配置される奥側係合片690Aの半径方向の移動量を大きく設定することができる。これらの奥側係合片690A、690B、690Cが難変形領域となり、特に図示しない連環部が易変形領域となる。
次に、第一又は第二構成例の他の変形例について説明する。
図64(A)乃至(C)は、伝力部25又は奥側係合部60に適用可能な軸方向の収縮構造又は半径方向の拡張構造を示す。この収縮又は拡張構造は、トラス(三角形の骨格構造)を立体的に組み合わせた所謂PCCPシェル(Pseudo-Cylindrical Concave Polyhedral Shell)構造Pとなっており、三角形の頂点同士が交わる個所(頂点部)が半径方向外側に突出し、軸直角方向に延びる底辺同士が接する個所(底辺部)が、半径方向内側に凹む。三角形の斜辺同士が接する箇所(移行部)は、頂点部と底辺部を繋ぐ。この多面体により、疑似円筒を構成することができる。本PCCPシェル構造Pは、軸方向に収縮(変形)させることが可能であり、その際に、頂点部が半径方向外側に突出する。このPCCPシェル構造Pを、伝力部25又は奥側係合部60に適用しても良い。従って、三角形の面内は、難変形領域となり、三角形の各辺又は各頂点は、折り目によって容易に変形可能な易変形領域を構成することが可能である。
図64(D)乃至(F)は、伝力部25又は奥側係合部60に適用可能な軸方向の収縮構造又は半径方向の拡張構造を示す。この収縮又は拡張構造は、台形を利用したトラス(骨格構造)を立体的に組み合わせた伸縮管構造Dとなっており、軸直角方向に延びる台形の短辺同士が交わる個所(短辺部)が半径方向外側に突出し、軸直角方向に延びる長辺同士が接する個所(長辺部)が、半径方向内側に凹む。斜辺同士が接する箇所(移行部)は、短辺部と長辺部を繋ぐ。この多面体により、疑似円筒を構成することができる。本伸縮管構造Dは、軸方向に収縮(変形)させることが可能であり、その際に、短辺部が半径方向外側に突出する。この伸縮管構造Dを、伝力部25又は奥側係合部60に適用しても良い。従って、台形の面内は、難変形領域となり、台形の各辺又は各頂点は、折り目によって容易に変形可能な易変形領域を構成することが可能である。なお、台形の代わりに平行四辺形を用いることも可能である。参考として、図64(G)に、この種のPCCPシェル構造又は伸縮管構造を、軸方向に収縮させた状態を示す。なお、一般的に、伸縮管構造Dの方が、PCCPシェル構造Pよりも、軸方向に容易に変形可能である。
図64(H)は、伝力部15に、PCCSシェル構造Pと伸縮管構造Dの双方を適用した例である。この場合は、伸縮管構造Dの方が優先的に縮む。図64(I)は、伝力部25の一部に伸縮管構造Dを適用し、残部はストレートとなる断面多角形の筒とし、奥側係合部60に伸縮管構造Dを適用した例である。なお、伝力部25と奥側係合部60の境界に括れを形成している。図64(J)(K)は、共に、伝力部25に伸縮管構造Dを適用し、奥側係合部60にも伸縮管構造Dを適用した例であるが、図64(K)については、その境界に括れを形成している。
図64(L)は、第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60、挟持部10を一体形成した例であり、伝力部25にPCCPシェル構造Pを適用し、奥側係合部60に伸縮管構造Dを適用している。
65(A)は、第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60、挟持部10を一体形成した例である。ここでは更に、奥側係合部60の軸方向中央部分の外周面に、周方向のスリットを形成して易変形領域620Aとし、更に、易変形領域620Aの軸方向両外側に、難変形領域を介して、括れ構造によって易変形領域620B、620Cを形成したものである。
図65(B)は、第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60、挟持部10を一体形成した例である。ここでは更に、奥側係合部60において、軸方向中央側を半径方向外側湾曲させており、その軸方向中央部分の外周面に、周方向のスリットを形成して易変形領域620としている。
図65(C)及び(D)は、第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60、挟持部10を一体形成した例である。ここでは更に、奥側係合部60において、軸方向中央側を半径方向外側に反るように湾曲させており、その突端に向かって肉厚が薄くなるようにしている。また、軸方向中央部分には、軸方向に延びる切欠きを周方向に複数形成することで、軸方向中央部分を易変形領域620としている。なお、伝力部25は、軸方向の途中に複数の開口25Dをマトリクス状に形成することで、軸方向に座屈又は変形容易な脆弱領域を形成している。
図65(E)は、 第二回動部20、伝力部25、奥側係合部60、挟持部10を一体形成した例である。ここでは更に、奥側係合部60において、軸方向中央側を半径方向外側に湾曲させており、その突端に向かって肉厚が薄くなるようにしている。この薄肉構造によって、軸方向中央部分を易変形領域620としている。
図65(F)は、奥側係合部60において、五個以上の奥側係合片62を周方向に配置し、その間に連環部72を配置した例である。
なお、上記第一及び第二変形例では、奥側係合部が、外力に対して変形が容易となる易変形領域と、外力に対して易変形領域よりも変形しにくい難変形領域を有する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、奥側係合部全体が共通の強度又は剛性で構成される場合を含むものである。
以上説明したように、本発明は多様な構成を採り得、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。