JP2017082359A - バグフィルター用ポリテトラフルオロエチレン繊維、およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、耐摩耗性および熱に対する寸法安定性に優れるバグフィルター用PTFE繊維、およびそれを安定して生産するための製造方法を提供する。【解決手段】本発明のバグフィルター用PTFE繊維は、数平均分子量が600万以上1,200万以下の高分子量ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記載する)樹脂からなり、繊度CVが10%以下、融解熱量が15J/g以下でかつ230℃で30分乾熱処理後の乾熱収縮率が10%以下である。また、本発明の製造方法は、数平均分子量が600万以上1,200万以下の高分子量PTFE樹脂を含むPTFE樹脂分散液とマトリックスポリマーとを含むマトリックスポリマー混合紡糸原液を口金より紡出し、焼成、延伸後、10%以上20%以下のリラックス率、300℃以上350℃以下の接糸温度、0.5秒以上5秒以下の接糸時間で熱処理を行う。【選択図】なし
Description
本発明は、耐摩耗性および熱に対する寸法安定性に優れたバグフィルター用ポリテトラフルオロエチレン繊維、およびその製造方法に関するものである。
ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記載することがある。)繊維に代表されるフッ素樹脂系繊維は、その優れた耐熱性および耐薬品性より、産業資材用途を中心に広く用いられている。その中でもごみ焼却場等で発生する煤塵の捕捉には、PTFE繊維製のバグフィルター用濾布が主に用いられている。これは、ごみ焼却等で発生する排ガスが高温であるということ、また、ごみの燃焼反応により、ダイオキシンやNOxなどの有害ガスが排ガス中に含まれていることなどから、バグフィルターには耐熱性および耐薬品性が求められており、その両方を兼ねそろえていることで知られるPTFE繊維がバグフィルター用濾布の素材に適しているからである。
通常、バグフィルター用濾布はリテーナーと呼ばれる支持体に取り付けて使用される。ごみの焼却によって発生するダストは、バグフィルター外周部に付着・捕捉されるため、長期間の使用により目詰まりを起こす。目詰まりを起こした際には、圧搾空気をバグフィルター濾布内側より瞬間的に逆流させることで、濾布を変形・振動させ、ダストを払い落とす。この払い落としでも目詰まりが解消しない場合は、寿命を迎えたものとして濾布を交換する。通常、濾布の寿命は5年前後であるが、中には長期間の使用およびダスト払い落とし時のリテーナーとの摩擦により、寿命を迎える前に濾布に穴が開くことがある。この場合、目詰まりを起こしていなくても濾布を交換する必要があるため、想定外の出費となり、また作業面においても負担が増えてしまう。
この問題を解消するためには、バグフィルター用濾布に適用しているPTFE繊維の耐摩耗性を向上させる必要がある。一般的にPTFE繊維の製造方法としては、マトリックス物質を利用して紡糸した後に焼成工程を経るマトリックス紡糸法、スプリット剥離法、あるいはペースト押出し法が知られている。
スプリット剥離法あるいはペースト押出法によって得られるPTFE繊維は、熱に対する収縮率が低く寸法安定性に優れているものの、細かく切り裂いて繊維を製造するために、最終繊維状物の断面は扁平形状となり、しかも、繊度がランダムであって均一性に劣っている。そのため、バグフィルター用濾布に加工した際には、局所的に細い繊維が存在することとなり、その部分を起点にフェルトに穴が開きやすくなるというデメリットがある。
一方、マトリックス紡糸法によって得られるPTFE繊維は繊維断面が均一で、繊度バラツキが小さいという長所があり、バグフィルター用濾布に加工しても繊度ムラによる摩耗の発生は起きにくいというメリットがある。その中において、耐摩耗性に優れた高分子量PTFE繊維の製造方法が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1の製造方法で得られる高分子量PTFE繊維は、熱に対する収縮率が比較的高いため、製品の寸法安定性に劣るという欠点がある。高温下で使用するバグフィルター用濾布においては、熱収縮を起こしやすく、収縮によりリテーナーから濾布を取り外せなくなるという欠点が想定される。
本発明の技術的課題は、上記従来技術における問題点を解消し、耐摩耗性および熱に対する寸法安定性に優れるバグフィルター用PTFE繊維、およびその製造方法を提供することにある。
本発明は、上記の課題を解決するために、次のように構成したものである。
[1]数平均分子量が600万以上1,200万以下の高分子量ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記載する)樹脂からなり、繊度CVが10%以下、融解熱量が15J/g以下でかつ230℃で30分乾熱処理後の乾熱収縮率が10%以下であることを特徴とするバグフィルター用PTFE繊維。
[2]単糸繊度が1.5〜15.0dtex、乾強度が1.2〜3.0cN/dtexである上記[1]に記載のバグフィルター用PTFE繊維。
[3]数平均分子量が600万以上1,200万以下の高分子量PTFE樹脂を含むPTFE樹脂分散液とマトリックスポリマーとを含むマトリックスポリマー混合紡糸原液を口金より紡出し、焼成、延伸後、10%以上20%以下のリラックス率、300℃以上350℃以下の接糸温度、0.5秒以上5秒以下の接糸時間で熱処理を行うことを特徴とするバグフィルター用PTFE繊維の製造方法。
[1]数平均分子量が600万以上1,200万以下の高分子量ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記載する)樹脂からなり、繊度CVが10%以下、融解熱量が15J/g以下でかつ230℃で30分乾熱処理後の乾熱収縮率が10%以下であることを特徴とするバグフィルター用PTFE繊維。
[2]単糸繊度が1.5〜15.0dtex、乾強度が1.2〜3.0cN/dtexである上記[1]に記載のバグフィルター用PTFE繊維。
[3]数平均分子量が600万以上1,200万以下の高分子量PTFE樹脂を含むPTFE樹脂分散液とマトリックスポリマーとを含むマトリックスポリマー混合紡糸原液を口金より紡出し、焼成、延伸後、10%以上20%以下のリラックス率、300℃以上350℃以下の接糸温度、0.5秒以上5秒以下の接糸時間で熱処理を行うことを特徴とするバグフィルター用PTFE繊維の製造方法。
本発明のバグフィルター用PTFE繊維は、耐摩耗性および熱に対する寸法安定性に優れる。また、本発明のバグフィルター用PTFE繊維の製造方法によれば、耐摩耗性および熱に対する寸法安定性に優れたバグフィルター用PTFE繊維を得ることができる。
以下に本発明のバグフィルター用ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記載する場合がある)繊維、およびその製造方法の詳細について説明する。
本発明のバグフィルター用PTFE繊維は、数平均分子量が600万以上1,200万以下の高分子量ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記載する)樹脂からなり、繊度CVが10%以下、融解熱量が15J/g以下でかつ230℃で30分乾熱処理後の乾熱収縮率が10%以下であることを特徴とする。
一般にフッ素系樹脂にはPTFE樹脂の他に、PTFE樹脂の共重合体である4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン重合体(FEP)、4フッ化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、4フッ化エチレンオレフィン共重合体(ETFE)などがあり、これらは溶融紡糸により生産されている。しかしながら、本発明では耐熱性や摺動性の点で最も優れるPTFE樹脂が用いられる。
本発明において、高分子量PTFE樹脂とは、数平均分子量が600万以上1,200万以下のPTFE樹脂をいう。高分子量PTFE樹脂は、数平均分子量が600万未満であると本発明のポイントとなる高度な耐摩耗性が得られない。ここでいう耐摩耗性の評価としては、フェルト状に加工したPTFE繊維を研磨紙で擦り、穴が開くまでの摩擦回数をカウントする方法などが好適に使用される。また、高分子量PTFE樹脂は、数平均分子量が1,200万を上回ると製糸性が著しく悪化し、工業的な生産が困難となるため好ましくない。
本発明のバグフィルター用PTFE繊維は、繊度CVが10%以下である。繊度CVが10%を超えるとフェルトの中に局所的に細い繊維が存在することとなり、品位が悪くなることに加え、摩擦を受けた際に細い繊維から摩滅が進み、その部分を起点にフェルトに穴が開きやすくなるため耐摩耗性が悪化する。ここで、繊度CVとは、単糸繊度の標準偏差を単糸繊度の平均値で割って100を掛けた値である。
本発明のバグフィルター用PTFE繊維は、示差走査熱量計(DSC)での測定において、融解熱量が15J/g以下である。前記融解熱量は12J/g以下であることが好ましい。融解熱量が15J/gを超えると、耐摩耗性が得られなくなる。これは融解熱量が15J/gを超えることは、融解熱量と相関関係にある非晶量が少ないことを意味しており、結晶による拘束性に依存する分子運動性が低くなるためと推測される。
本発明のバグフィルター用PTFE繊維は、230℃で30分乾熱処理後のPTFE繊維の乾熱収縮率が10%以下である。前記乾熱収縮率は8%以下であることが好ましい。バグフィルター用PTFE繊維の230℃、30分乾熱処理後の乾熱収縮率が10%を超えると、前記バグフィルター用PTFE繊維から得られるバグフィルター用濾布の熱収縮が大きくなり、寸法安定性に劣ってしまう。
本発明のバグフィルター用PTFE繊維の単糸繊度は、1.5〜15.0dtexの範囲であることが好ましい。単糸繊度が1.5dtex以上であれば、十分な太さを有するため十分な糸の強力を有し、摺動部材に適する。一方、単糸繊度が15.0dtex以下であれば、マトリックス紡糸法において、マトリックス材を焼き飛ばしてPTFE粒子を焼結させやすくなる。
本発明のバグフィルター用PTFE繊維は、乾強度が1.2〜3.0cN/dtexの範囲であることが好ましい。乾強度が1.2cN/dtex以上であると、織物を生産する際に糸切れが少なくなり加工性が良くなることや、バグフィルター用濾布として用いる際に濾布が破れにくくなる傾向がある。また乾強度が3.0cN/dtex以下であれば品質面での問題はなく、焼成工程での熱処理が短時間で済むことや、通常より高倍率での延伸を必要としないこと、延伸温度の多少の変動があっても糸切れが多発しないことなど、製造プロセス上の利点が得られやすい。
本発明のバグフィルター用PTFE繊維は、単糸繊度が1.5〜15.0dtex、乾強度が1.2〜3.0cN/dtexであることがより好ましい。
本発明のバグフィルター用PTFE繊維の製造方法は、数平均分子量が600万以上1,200万以下の高分子量PTFE樹脂を含むPTFE樹脂分散液とマトリックスポリマーとを含むマトリックスポリマー混合紡糸原液を口金より紡出し、焼成、延伸後、10%以上20%以下のリラックス率、300℃以上350℃以下の接糸温度、0.5秒以上5秒以下の接糸時間で熱処理を行うことを特徴とする。
本発明の製造方法において、マトリックスポリマー混合紡糸原液を調製する際に用いるPTFE樹脂分散液は、高分子量PTFE樹脂濃度が50〜70質量%であることが好ましく、かつ、安定剤として非イオン活性剤またはアニオン活性剤を高分子量PTFE樹脂に対して3〜10質量%含有するものが好ましい。また、PTFE樹脂分散液中の分散粒子の大きさは0.5μm以下が好ましく、より好ましくは0.3μm以下である。PTFE樹脂分散液の分散媒には、水が好ましく用いられる。
本発明の製造方法において、マトリックスポリマー紡糸混合液におけるPTFE樹脂分散液の割合は、30〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは45〜55質量%である。PTFE樹脂分散液の割合が30質量%以上であれば、マトリックスポリマー紡糸混合液中の高分子量PTFE樹脂濃度が十分な濃度となることから、生産性が向上しやすくなる。また、PTFE樹脂分散液の割合が70質量%以下であれば、高分子量PTFE樹脂が互いに衝突しにくくなるため、凝集異物による欠点が発生しにくくなり製糸性が向上しやすくなる。
本発明の製造方法において、前記マトリックスポリマー紡糸混合液におけるマトリックスポリマーの割合は、30〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは45〜55質量%である。マトリックスポリマーの割合が30質量%以上であれば、マトリックスポリマー紡糸混合液中の高分子量PTFE樹脂濃度が低く、高分子量PTFE樹脂が互いに衝突しにくくなることにより、凝集異物による欠点が発生しにくくなり製糸性が向上しやすくなる。また、マトリックスポリマーの割合が70質量%以下であれば、マトリックスポリマー紡糸混合液中の高分子量PTFE樹脂濃度が十分な濃度となることから、生産性が向上しやすくなる。
本発明の製造方法において、マトリックスポリマーは、レーヨンの製造に通常用いられるビスコースであればよい。すなわち、セルロース濃度5〜10質量%、アルカリ濃度4〜10質量%、二硫化炭素27〜32質量%(セルロースに対し)であるビスコースを使用することが好ましい。
本発明の製造方法において、マトリックスポリマー紡糸混合液は、脱泡された後に紡糸に供されることが好ましい。ここで、脱泡時の温度が15℃以下であれば、ビスコースが凝固してしまう懸念もなく、また、水分が蒸発して高分子量PTFE樹脂が凝集してしまうという懸念もない。一方、脱泡時の温度が10℃以上であれば、マトリックスポリマー紡糸混合液の粘度が下がり、脱泡が容易になる。したがって、脱泡時は10℃以上15℃以下の低温に制御することが好ましい態様である。また、その際の真空度は約10Torr以下であることが好ましい。
通常、数平均分子量が600万以上1,200万以下の高分子量PTFE樹脂を用いてマトリックス紡糸を行う場合、例えば、水分散液の状態において静置時もしくはシェアがかかった際に、ポリマーの凝集異物が容易に発生することが問題となる。凝集異物が多量に発生すると、紡糸時あるいは延伸時の糸切れが多発すること、及び品質面においても原糸の強度が低下することから好ましくない。
これらの問題点を解消するため、本発明の製造方法においては、高分子量PTFE樹脂分散液を移液する際、圧空により圧送する方法や、減圧により吸引する方法が好ましく用いられる。高分子量PTFE樹脂分散液を移液する際に、ギアポンプ等の設備を用いるとシェアがかかり凝集異物が多量に生成し易いためである。また、凝集異物を捕捉するために、紡糸パックにおけるろ材としてアルミナ製サンドを用いる方法が好ましく用いられる。より好ましくは、粗大異物を口金面から遠い位置で荒い粒径のアルミナ製サンドにより捕捉し、より微細な異物を口金面に近い位置で細かい粒径のアルミナ製サンドにより捕捉するように、粒径の異なる複数のグレードのアルミナ製サンドを配する方法が用いられる。これらの方法により、高分子量PTFE樹脂からなるPTFE繊維を安定的に製糸しやすくなる。
本発明の製造方法は、マトリックスポリマー混合紡糸液を口金より紡出する工程を含む。この紡出工程において、マトリックスポリマー混合紡糸原液は、凝固浴中に浸漬した複数の口金より吐出され、凝固浴中で凝固される。凝固浴としては、無機鉱酸または無機塩の水溶液を用いることができるが、硫酸と硫酸ソーダとを含有する混合水溶液を用いることが好ましい。このときの硫酸濃度は7〜13質量%が好ましい。硫酸濃度が7質量%以上であれば、凝固浴中で糸条が凝固する速度が十分速くなり、製造能力の向上または浸漬ラインを短くできる場合がある。一方、硫酸濃度が13質量%以下であれば、繊維表面に付着した硫酸が脱酸されやすく焼成工程で糸切れが起こりにくくなる。硫酸ソーダ濃度は7〜15質量%に調整することが好ましい。硫酸ソーダはセルロースの急激な凝固を抑制する。硫酸ソーダ濃度が7質量%以上であれば、凝固浴中で糸条が凝固する速度が十分速くなり、繊維断面のコントロールが容易になりやすい。一方、硫酸ソーダ濃度が15質量%以下であれば、凝固浴中で糸条が凝固する速度が十分速くなるため、繊維断面のコントロールが容易になりやすい。凝固浴として、上記した硫酸濃度および硫酸ソーダ濃度の両方を、上記した特定の範囲内で含有する混合水溶液を用いることは、均一なPTFE繊維を製造するために効果的である。硫酸濃度および硫酸ソーダ濃度の両方がこの範囲に入れば繊度CVが10%以下になりやすくなり、均一な高分子量PTFE繊維となる。
凝固された繊維は、次いで、精練されることが好ましい。精練としては、アルカリ塩を含有するアルカリ水溶液による洗浄を行うことが好ましい。かかる洗浄に用いられるアルカリ洗浄浴には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩から選ばれた化合物の水溶液が用いられるが、一般にはアルカリ金属塩の水溶液、中でも苛性ソーダ水溶液が好適に用いられる。これらアルカリ塩の濃度は0.08質量%以上0.18質量%以下が好ましい。より好ましくは、0.10質量%以上0.16質量%以下である。0.08質量%以上であれば焼成時にセルロースが分解しやすく、その結果、焼成後の繊維に分解しきれないセルロース分が残存しにくくなり、その後の延伸がしやすくなり、延伸工程で糸切れが起こりにくい傾向となる。一方、0.18質量%以下であれば、アルカリ洗浄時にセルロースが溶けださず、アルカリ洗浄浴中やガイドにカスが溜まりにくくなる。また、半焼成・焼成工程に入る際の未延伸糸強度が高くなり、糸切れによる工程通過トラブルが発生しにくくなる。
更にアルカリ洗浄浴の温度は20℃以下が好ましい。より好ましくは15℃以下である。アルカリ洗浄浴温度が20℃以下であれば、アルカリ濃度が一定以下の場合と同様にアルカリ洗浄にセルロースが溶け出さず、アルカリ洗浄浴中やガイドにカスが溜まりにくくなる他、半焼成・焼成工程に入る際の未延伸糸強度が高くなり、工程通過トラブルが発生しにくくなる場合がある。
精練に次いで、半焼成を行うことが好ましい。半焼成には接触タイプの焼成ローラまたは非接触タイプの焼成ヒーターを用いることができるが、好ましくは、接触タイプの焼成ローラを用いる。精練浴やアルカリ洗浄浴から導出された未延伸糸をそのままもしくはニップローラなどで絞った後、焼成ローラ間で1〜5%のリラックスを与えながら80℃以上320℃以下の温度に保った接触タイプの半焼成工程を通過させることにより半焼成を行えばよい。80℃以上320℃以下の温度に保った接触タイプの半焼成工程においてローラに導かれた未延伸糸はローラ上で急速に収縮し張力を増す。リラックス率が1%以上であれば張力が高くなりすぎず均一な繊維断面を保ちやすくなり、また、収縮による糸切れが起こりにくくなる。リラックス率が5%以下であれば糸が弛まず工程通過性に問題が生じにくくなる。前記リラックスは半焼成に入った直後のローラ間に1回だけ与えるのでもよいし、さらに、半焼成工程のローラ間や焼成工程のローラ間においても与えることでもよい。半焼成工程が行われる場合は、次いで行う焼成工程に入る前に行われる。半焼成工程のローラ温度が80℃以上であれば、次いで行う焼成工程で一気に繊維に熱がかかっても繊維断面が変形もしくは単糸間で融着が発生しにくくなる。一方、320℃以下であれば、半焼成工程で一気に繊維に熱がかかっても、繊維断面が変形もしくは単糸間での融着が発生しにくくなる。従って、半焼成工程のローラは80℃以上320℃以下の温度、より好ましくは150℃以上320℃以下である。このとき、半焼成工程の各ローラ温度は単独で変更してもよい。また、半焼成工程のローラの温度は上記範囲内で個々に異なっていてもよい。
本発明の製造方法は、紡出で得られた糸を焼成する工程を含む。焼成は320℃以上380℃以下の温度で行われることが好ましい。この焼成によりセルロースの大部分は分解されて気化飛散するので、セルロース中に分散していた高分子量PTFE樹脂の粒子は熱融着して繊維状となりPTFE未延伸糸が得られる。焼成温度が320℃以上であれば繊維内の高分子量PTFE樹脂の粒子同士の融着が十分となり、焼成後の延伸時に糸切れが起こりにくく、繊維強度も高くなる。一方、焼成温度が380℃以下であれば繊維断面形状が変形せず、均一な断面形状が得られ、単糸間の融着も生じず製品の開繊性に悪影響を及ぼさない。さらには、高分子量PTFE樹脂が熱分解せず、焼成後の延伸時に糸切れが起こりにくく、繊維強度も高くなる。焼成時の各ローラ温度は単独で変更してもよい。また、上記範囲内であれば特に限定なく設定できる。焼成して得られるPTFE未延伸糸は、いったん巻き取った後に延伸してもよいし、また、巻き取ることなく続けて延伸してもよい。
本発明の製造方法は、焼成工程で得られたPTFE未延伸糸を延伸する工程を含む。延伸は300℃以上380℃以下の温度での熱延伸することが好ましい。さらに好ましくは、310℃以上370℃以下である。300℃以上であれば延伸切れが起こりにくく、工程トラブルがないことによる収率向上に繋がる。380℃以下であれば高分子量PTFE樹脂が分解せず繊維引張強度の向上に繋がる。
本発明の製造方法は、延伸後、10%以上20%以下のリラックス率、300℃以上350℃以下の接糸温度、0.5秒以上5秒以下の接糸時間で熱処理を行う工程を含む。さらには、12%以上17%以下のリラックス率、310℃以上340℃以下の接糸温度、1秒以上4秒以下の接糸時間で熱処理を行うことが好ましい。リラックス率が10%未満であれば繊維収縮が制御され、収縮しきれないため乾熱収縮率が高くなる。20%を超えると繊維が弛み工程通過性に問題が生じやすい。接糸温度が300℃未満であれば熱による収縮効果が小さくなり収縮しきれないため乾熱収縮率が高くなる。350℃を超えてもそれ以上の繊維低収縮化の効果は小さく、引張伸度も高くなり、さらにはエネルギー原単位の悪化に繋がる。接糸時間が1秒未満であれば繊維が収縮しきれないため乾熱収縮率が高くなる。4秒を超えてもそれ以上の繊維低収縮化の効果は小さく、さらにはエネルギー原単位の悪化に繋がる。
本発明のバグフィルター用PTFE繊維は、布帛、織編物、不織布、フェルト、あるいはマットなどのいずれにでも加工することができるが、中でもバグフィルター用濾布として用いられるフェルトが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、繊維の各物性の測定方法は以下の通りである。
(1)PTFE繊維の物性
JIS L 1013:2010「化学繊維フィラメント試験方法」に準じてPTFE繊維の乾強度および乾熱収縮率を測定した。
(2)PTFE樹脂の数平均分子量
示差走査熱量計DSC(TA Instruments社製 Q1000)を用いて結晶化熱ΔHc(cal/g)を求め、下記式にて算出した。
(1)PTFE繊維の物性
JIS L 1013:2010「化学繊維フィラメント試験方法」に準じてPTFE繊維の乾強度および乾熱収縮率を測定した。
(2)PTFE樹脂の数平均分子量
示差走査熱量計DSC(TA Instruments社製 Q1000)を用いて結晶化熱ΔHc(cal/g)を求め、下記式にて算出した。
数平均分子量=2.1×1010ΔHc−5.16
(3)融解熱量
(2)と同様の方法により融解熱量ΔHm(J/g)を求めた。
(4)耐摩耗性(CUSTOM法)
米国カスタム社にて考案された摩耗試験機(以下、CUSTOM摩耗試験機と記載する場合がある)を用い、JIS L 1096:2010「織物及び編物の生地試験法」の、8.19 A−1法にもとづいて試験を実施し、長径7mmの穴が開くまでの摩耗回数を測定した。なお、ここで長径とは、穴の周上の任意の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さを表す。
(3)融解熱量
(2)と同様の方法により融解熱量ΔHm(J/g)を求めた。
(4)耐摩耗性(CUSTOM法)
米国カスタム社にて考案された摩耗試験機(以下、CUSTOM摩耗試験機と記載する場合がある)を用い、JIS L 1096:2010「織物及び編物の生地試験法」の、8.19 A−1法にもとづいて試験を実施し、長径7mmの穴が開くまでの摩耗回数を測定した。なお、ここで長径とは、穴の周上の任意の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さを表す。
[実施例1]
マトリックス材としてビスコースを用い、数平均分子量900万の高分子量PTFE樹脂の水分散液と上記のマトリックス材とを混合し、マトリックスポリマー混合紡糸原液を作製した。このマトリックスポリマー混合紡糸原液で紡糸口金を用いて湿式紡糸法により紡出した後、焼成工程にて上記のマトリックス材を焼き飛ばした。一旦未延伸糸を巻き取った後、7倍の延伸倍率で延伸後、リラックス率15%、接糸温度330℃、接糸時間1.5秒とし、繊度3.5dtex(1400dtex−400フィラメント)である繊維を作製した。得られた繊維の繊度CVは8.3%、乾強度は1.31cN/dtex、230℃で30分処理後の乾熱収縮率は2.7%であり、融解熱量は10.9J/gであった。この高分子量PTFE繊維を用い、縦:18本/インチ、横:18本/インチの織密度にて平織りして、目付け250g/m2の織物とした後、CUSTOM摩耗試験機にて耐摩耗性を測定した。その測定結果は摩耗回数が289回であった。
マトリックス材としてビスコースを用い、数平均分子量900万の高分子量PTFE樹脂の水分散液と上記のマトリックス材とを混合し、マトリックスポリマー混合紡糸原液を作製した。このマトリックスポリマー混合紡糸原液で紡糸口金を用いて湿式紡糸法により紡出した後、焼成工程にて上記のマトリックス材を焼き飛ばした。一旦未延伸糸を巻き取った後、7倍の延伸倍率で延伸後、リラックス率15%、接糸温度330℃、接糸時間1.5秒とし、繊度3.5dtex(1400dtex−400フィラメント)である繊維を作製した。得られた繊維の繊度CVは8.3%、乾強度は1.31cN/dtex、230℃で30分処理後の乾熱収縮率は2.7%であり、融解熱量は10.9J/gであった。この高分子量PTFE繊維を用い、縦:18本/インチ、横:18本/インチの織密度にて平織りして、目付け250g/m2の織物とした後、CUSTOM摩耗試験機にて耐摩耗性を測定した。その測定結果は摩耗回数が289回であった。
[比較例1]
PTFE樹脂の数平均分子量が300万であること以外は、実施例1と同様にしてPTFE繊維を得た。得られた繊維の繊度CVは8.5%、乾強度は1.17cN/dtex、230℃で30分処理後の乾熱収縮率は2.4%であり、融解熱量は18.9J/gであった。実施例1と同様の条件で織物を作成し、CUSTOM磨耗試験機にて耐摩耗性を測定した。その測定結果は摩耗回数が128回であり、実施例1の約半分程度の耐摩耗性であった。
PTFE樹脂の数平均分子量が300万であること以外は、実施例1と同様にしてPTFE繊維を得た。得られた繊維の繊度CVは8.5%、乾強度は1.17cN/dtex、230℃で30分処理後の乾熱収縮率は2.4%であり、融解熱量は18.9J/gであった。実施例1と同様の条件で織物を作成し、CUSTOM磨耗試験機にて耐摩耗性を測定した。その測定結果は摩耗回数が128回であり、実施例1の約半分程度の耐摩耗性であった。
[比較例2]
実施例1と同様な方法で延伸後、リラックス率5%、接糸温度330℃、接糸時間1.5秒とし繊度3.9dtexであるPTFE繊維を作製した。得られたPTFE繊維の繊度CVは7.9%、乾強度は1.40cN/dtex、230℃で30分処理後の乾熱収縮率は10.8%であり、融解熱量は12.3J/gであった。実施例1と同様の条件で織物を作成し、CUSTOM磨耗試験機にて耐摩耗性を測定した結果、摩耗回数が304回であった。
実施例1と同様な方法で延伸後、リラックス率5%、接糸温度330℃、接糸時間1.5秒とし繊度3.9dtexであるPTFE繊維を作製した。得られたPTFE繊維の繊度CVは7.9%、乾強度は1.40cN/dtex、230℃で30分処理後の乾熱収縮率は10.8%であり、融解熱量は12.3J/gであった。実施例1と同様の条件で織物を作成し、CUSTOM磨耗試験機にて耐摩耗性を測定した結果、摩耗回数が304回であった。
[比較例3]
数平均分子量が1300万の高分子量PTFE樹脂を用い、実施例1と同様に紡糸しようとしたところ、混合液作成時において凝集異物が多量に発生し、パックろ材の閉塞により紡出ができず、評価用PTFE繊維の採取ができなかった。
数平均分子量が1300万の高分子量PTFE樹脂を用い、実施例1と同様に紡糸しようとしたところ、混合液作成時において凝集異物が多量に発生し、パックろ材の閉塞により紡出ができず、評価用PTFE繊維の採取ができなかった。
[比較例4]
繊度CVが25%であり、乾強度が1.00cN/dtex、230℃で30分処理後の乾熱収縮率が1.8%であり、融解熱量は17.9J/gであること以外は実施例1と同様のPTFE繊維を用い、織物を作成したところ織物の品位は悪く、CUSTOM摩耗試験機にて耐摩耗性を測定した結果においても摩耗回数が106回であり、耐摩耗性は劣るものであった。
繊度CVが25%であり、乾強度が1.00cN/dtex、230℃で30分処理後の乾熱収縮率が1.8%であり、融解熱量は17.9J/gであること以外は実施例1と同様のPTFE繊維を用い、織物を作成したところ織物の品位は悪く、CUSTOM摩耗試験機にて耐摩耗性を測定した結果においても摩耗回数が106回であり、耐摩耗性は劣るものであった。
本発明の高分子量PTFE樹脂からなるPTFE繊維は耐摩耗性および熱に対する寸法安定性に優れるので、バグフィルター用途として好適に用いられる。
Claims (3)
- 数平均分子量が600万以上1,200万以下の高分子量ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記載する)樹脂からなり、繊度CVが10%以下、融解熱量が15J/g以下でかつ230℃で30分乾熱処理後の乾熱収縮率が10%以下であることを特徴とするバグフィルター用PTFE繊維。
- 単糸繊度が1.5〜15.0dtex、乾強度が1.2〜3.0cN/dtexである請求項1に記載のバグフィルター用PTFE繊維。
- 数平均分子量が600万以上1,200万以下の高分子量PTFE樹脂を含むPTFE樹脂分散液とマトリックスポリマーとを含むマトリックスポリマー混合紡糸原液を口金より紡出し、焼成、延伸後、10%以上20%以下のリラックス率、300℃以上350℃以下の接糸温度、0.5秒以上5秒以下の接糸時間で熱処理を行うことを特徴とするバグフィルター用PTFE繊維の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015212601A JP2017082359A (ja) | 2015-10-29 | 2015-10-29 | バグフィルター用ポリテトラフルオロエチレン繊維、およびその製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014080714A (ja) * | 2012-09-26 | 2014-05-08 | Toray Ind Inc | フッ素樹脂系繊維とその製造方法及びフッ素樹脂系繊維を用いた織物 |
CN112501713A (zh) * | 2020-11-24 | 2021-03-16 | 江苏川羽高分子材料科技有限责任公司 | 一种含氟聚合物复合纤维的制备方法 |
-
2015
- 2015-10-29 JP JP2015212601A patent/JP2017082359A/ja active Pending
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