以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
[第1実施形態]
図1及び図2を参照して、第1実施形態の反転装置3を含む電極搬送システム1について説明する。電極搬送システム1は、リチウムイオン二次電池等の蓄電装置の製造システムに組み込まれるシステムである。具体的には、電極搬送システム1は、積層型蓄電装置の製造ラインの一部であり、電極組立体を構成するシート状の電極10を搬送するシステムである。電極10は、上記電極組立体を構成する正極又は負極である。本実施形態では一例として、反転装置3は、シート状の電極10を搬送対象のワークとして搬送する。ただし、反転装置3の搬送対象となるワークは、シート状又は板状のものであればよく、電極10に限られない。
正極は、例えばアルミニウム箔からなる矩形の金属箔の両面に正極活物質層が形成されてなる。正極活物質層は、正極活物質とバインダとを含んで形成されている。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等が挙げられる。複合酸化物には、例えばマンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。正極の一縁部には、正極端子との接続に用いられるタブが形成されている。
また、正極は、タブを除いた部分が袋状のセパレータ内に収容された状態となっていてもよい。セパレータの形成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。なお、セパレータは、袋状に限られず、シート状のものを用いてもよい。例えば、セパレータ付き正極として、正極の両面に2枚のシート状のセパレータが各々接合され、ユニット化された正極を用いてもよい。
一方、負極は、例えば銅箔からなる金属箔の両面に負極活物質層が形成されてなる。負極活物質層は、負極活物質とバインダとを含んで形成されている。負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。
バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、又はアルコキシシリル基含有樹脂であってよい。負極の一縁部には、負極端子の位置に対応してタブが形成されている。正極のタブと負極のタブとは、正極と負極とを重ねた場合に互いに重ならない位置に形成されている。
蓄電装置の製造ラインは、概略として、正極製造ライン、負極製造ライン、及び前述の工程で製造された正極と負極とを用いて蓄電装置を組立てる組立ライン、の3つのラインを含んでいる。例えば、負極製造ラインでは、帯状金属箔(銅箔)の表面に活物質層を形成した電極材料を得た後、当該電極材料を略矩形状の個片に切断することにより、負極が製造される。製造された負極は、検査にて、表面の傷や異物の混入が発見されたものを除き、組立工程に搬送される。電極搬送システム1は、例えば負極製造ラインと組立ラインの間に位置し、電極を組立ラインに搬送する。
図1に示すように、電極搬送システム1は、電極10を搬送する構成要素として、第1水平搬送部2と、第1水平搬送部2の後段に設けられる反転装置3と、反転装置3の後段に設けられる第2水平搬送部4と、を備える。
第1水平搬送部2は、電極10を水平方向に所定の搬送速度で搬送する部材である。図1及び図2に示すように、第1水平搬送部2は、互いに平行で所定距離だけ離間する一対の無端環状の搬送ベルト21,21を有する。第1水平搬送部2は、一対の搬送ベルト21,21を循環駆動させることにより、一対の搬送ベルト21,21上に載置された電極10を水平方向(図1の右方向)に搬送する。本実施形態では、電極10は、当該電極10の主面10aが上方を向くように、一対の搬送ベルト21,21上に載置される。すなわち、電極10の裏面10bが一対の搬送ベルト21,21に当接して支持される。ここで、電極10のタブ11が形成される縁部は、後述する反転装置3の外周面31aや突出部34にタブ11が接触して損傷することを防止するために、搬送ベルト21,21の搬送方向に直交する方向にタブが突出する如く配置される。なお、搬送される電極10が正極である場合と負極である場合とでは、主面10aと裏面10bにて正極活物質層又は負極活物質層の構造や形状に差異は無く、タブの位置が逆になる点のみ、差異となる。
反転装置3は、第1水平搬送部2の後段に配置され、第1水平搬送部2によって水平方向に搬送される電極10を下方から掬い上げ、当該電極10を一旦上昇させてから下降させる装置である。詳しくは後述するが、反転装置3は、多数の電極10の集積を可能とし、第1水平搬送部2からの電極10の供給が一時的に途絶えた場合や第2水平搬送部4の動作を停止する必要がある場合等において、電極10の受け取りや排出のタイミングを調整するバッファ機構としても機能する。この為、反転装置3は、バッファ機構として機能するために、鉛直方向に沿って上下に移動可能なように構成されている。
反転装置3は、搬送部材31と、複数の保持部32と、鉛直方向に離間して対向する一対のローラ対33,33と、ローラ33を回転駆動する第1駆動部35aと、搬送部材31及びローラ対33,33を昇降動作させる第2駆動部35bと、第1駆動部35a及び第2駆動部35bの動作を制御する制御部35と、を備える。
搬送部材31は、外周が上昇した後に下降する閉経路(本実施形態では鉛直方向に延びる長円状の経路)を形成するように循環する無端環状の部材である。搬送部材31は、例えばベルト状の部材であり、ローラ対33,33に巻架されている。すなわち、ローラ対33,33が回転することにより、搬送部材31は連れ回りする。図1の例では、ローラ対33,33が第1駆動部35aによって回転駆動力を付与されて時計回りに回転することによって、搬送部材31も時計回りに循環する。搬送部材31が循環する経路のうち電極10が通過する部分が電極10を搬送する搬送路となる。
保持部32は、搬送部材31が循環する循環方向(図1の時計回り方向)に沿って搬送部材31の外周面31a上に所定間隔で設けられ、搬送部材31とともに循環する板状部材である。保持部32は、循環方向に交差する互いに平行な主面32d及び裏面32eを有する。主面32dは、循環方向における前側の面であり、裏面32eは、循環方向における後側の面である。保持部32は、搬送部材31とともに循環することにより、受取位置で第1水平搬送部2から電極10を受け取って保持する。ここで、受取位置とは、保持部32の主面32d(或いは後述する突出部34)が第1水平搬送部2によって搬送される電極10の裏面10bを下方から掬い上げて電極10を受け取る位置である。
保持部32は、保持部32が搬送部材31の循環によって上昇する上昇区間(図1における搬送部材31の左側部分)のうち電極10の受取位置及び受取位置よりも上方の区間(以下「特定上昇区間」)において、基端部32aが先端部32bよりも鉛直下方(すなわち、循環方向における後方)に位置するように傾斜している。すなわち、保持部32において電極10の支持面として機能する主面32dは、保持部32の先端部32b側から基端部32a側に向かって斜め下方向に傾斜している。言い換えると、保持部32に支持された電極10は、保持部32の先端部32b側から基端部32a側に向かって斜め下方向に傾斜している。ここで、基端部32aは、保持部32の搬送部材31側の端部(すなわち、搬送部材31の外周面31aに接続される端部)であり、先端部32bは、保持部32の基端部32aとは反対側の端部である。なお、反転装置3は、上述の通りバッファ機構として動作する。具体的には、ローラ対33,33及び第1駆動部35aを図示しない同一の枠体により支持し、枠体を第2駆動部35bにより昇降動作させる。従って、上昇区間のうち保持部32が鉛直上方に移動する区間に含まれるいずれの位置も受取位置となり得る。このため、本実施形態では、保持部32が鉛直上方に移動する区間が特定上昇区間となり得る。
図1の例では、搬送部材31の循環経路が沿う鉛直面(図1の紙面に平行な平面)に直交する幅方向(図1の紙面に垂直な方向)から見て、保持部32が搬送部材31の外周面31aに直交する平面から搬送方向に向かって傾斜角度θ(0°<θ<90°)だけ傾斜するように、保持部32の基端部32aが搬送部材31の外周面31aに接続されている。すなわち、特定上昇区間において、保持部32は、先端部32b側から基端部32a側に向かって斜め下方向に傾斜する。一方、保持部32が搬送部材31の循環によって下降する下降区間のうち搬送部材31が鉛直下向きに移動する区間においては、保持部32は、基端部32a側から先端部32b側に向かって斜め下方向に傾斜する。
図2に示すように、保持部32は、先端部32b側から基端部32a側にかけて延びる切欠きを形成する一対の切欠き部32c,32cを有する。各切欠き部32cによって形成される切欠きの幅は搬送ベルト21の幅よりも大きくされている。また一対の切欠き部32c,32cは、一対の搬送ベルト21,21が一対の切欠き部32c,32cによって形成される切欠きを通ることができるように設けられている。そして、第1水平搬送部2は、切欠き部32c,32cによって形成される切欠きを搬送ベルト21,21が通り抜けることが可能な範囲で、反転装置3に近づけて配置されている。これにより、保持部32が電極10を掬い上げる受取位置まで電極10を安定して侵入させることが可能になっている。
図1及び図2に示すように、保持部32の主面32dの先端部32b側の縁部には、循環方向における前方に突出する突出部34が設けられている。本実施形態では、突出部34は、切欠き部32cによって形成される切欠き上を避けて先端部32b側の縁部全体に亘って設けられるように、3つの部分34aに分けられている。各部分34aは、幅方向から見て断面円形の円柱状をなしている。
制御部35は、第1駆動部35a及び第2駆動部35bの動作を制御する部分である。制御部35は、ローラ対33,33に回転駆動力を付与する第1駆動部35aの動作を制御することにより、搬送部材31の循環の開始及び停止並びに循環速度等を制御する。また、制御部35は、ローラ対33,33及び第1駆動部35aを支持する枠体を昇降させる第2駆動部35bの動作を制御することにより、搬送部材31の電極10の受取位置を変更する。制御部35は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力装置等を有するコンピュータから構成され、ROM上に格納された所定のプログラムをRAM上に読み出し、CPUによって当該プログラムを実行する。これにより、制御部35は、入力装置により入力されたMCT(マシンサイクルタイム)や前工程の不良品に関る検査結果を入手し、搬送部材31の適切な循環開始タイミングや循環速度、搬送部材31の上下位置等を算出する。制御部35は、このようにして算出された結果に応じて搬送部材31を駆動させるべく、第1駆動部35a及び第2駆動部35bの動作を制御する。
本実施形態では一例として、制御部35は、搬送部材31の外周面31aに向かって搬送される電極10が搬送部材31の外周面31aに接触する前に保持部32に掬い上げられるように、第1駆動部35a及び第2駆動部35bの動作を制御する。このような制御により、第1水平搬送部2によって水平方向に搬送される電極10の搬送部材31の外周面31aへの衝突を抑制できる。なお、電極10が外周面31aからあまりにも離れた状態で保持部32が電極10を掬い上げようとすると、電極10が保持部32に載らない虞がある。また、電極10の前側(外周面31a側)の一部しか保持部32に載らず、電極10が保持部32から落下してしまう虞もある。このため、制御部35は、鉛直方向から見て電極10の前側半分以上の部分が保持部32と重なる状態で電極10が保持部32に掬い上げられるように、搬送部材31の駆動を制御してもよい。
上述の制御部35の制御は、例えば第1水平搬送部2の搬送速度、搬送される電極10の搬送間隔、搬送される各電極10の基準時点における位置、各保持部32の位置等の情報に基づいて所定の計算処理を実行することにより実現できる。また、制御部35は、このような情報を、例えばオペレータからの入力や電極搬送システム1の状態を管理する図示しないコンピュータとの通信等によって取得することができる。
第2水平搬送部4は、電極10を水平方向に所定の搬送速度で搬送する部材である。第2水平搬送部4は、第1水平搬送部2と同様の構成をなしている。すなわち、第2水平搬送部4は、互いに平行で所定距離だけ離間する一対の無端環状の搬送ベルト41,41を有する。第2水平搬送部4は、切欠き部32c,32cによって形成される切欠きを搬送ベルト41,41が通り抜けることが可能な範囲で、反転装置3に近づけて配置されている。これにより、一対の搬送ベルト41,41は、上方から下降してくる保持部32の裏面32eに載置された電極10をスムーズに受け取ることが可能になっている。第2水平搬送部4は、一対の搬送ベルト41,41を循環駆動させることにより、反転装置3から受け取った電極10を水平方向(図1の右方向)に搬送する。
次に、反転装置3による電極10の受け取り及び搬送の動作について説明する。図1に示すように、第1水平搬送部2によって水平方向に搬送される電極10は、受取位置において、当該電極10よりも下方から上昇してくる保持部32によって掬い上げられる。具体的には、搬送ベルト21,21上に載置されて搬送される電極10の前側半分以上の部分と保持部32とが鉛直方向から見て重なる状態で、保持部32が下方から電極10を掬い上げることにより、電極10は、搬送ベルト21,21上から保持部32上にスムーズに移動する。
より具体的には、保持部32が基端部32a側から先端部32b側に向かって斜め上方向に傾斜しているので、上述のように保持部32に掬い上げられた電極10は、保持部32の主面32d上を先端部32b側から基端部32a側に移動(滑走)するように誘導される。さらに、電極10の前側(第1水平搬送部2による搬送方向における前側)の縁部が保持部32の主面32dに接触する一方で、電極10の裏面10bの後側の一部が突出部34に接触して押し上げられる。これにより、電極10は、保持部32の傾斜角度θよりも大きい傾斜角度で、後側から前側に向かって下向きに傾斜することになる。このように、突出部34によって、保持部32に掬い上げられた電極10は、保持部32の主面32d上を先端部32b側から基端部32a側に移動し易くなるように、傾斜させられる。その結果、搬送部材31の動作に伴う振動などを受けると、電極10は、保持部32の主面32d上の奥側(搬送部材31の外周面31a側)に誘導される。これにより、例えば電極10の一部が保持部32の先端部32b側からはみ出してしまい、当該電極10が保持部32の上昇時の振動等によって保持部32上から落下すること等を適切に抑制できる。なお、第1水平搬送部2により与えられた初速で、電極10が慣性により搬送部材31の外周面31aに突き当たり、跳ね返った場合でも、電極10は、前述の傾斜により、前述同様に保持部32の主面32d上の奥側に誘導される。
上述のように保持部32に載り移った電極10は、保持部32とともに上昇し、保持部32が搬送部材31の頂部付近で鉛直方向に延在する位置に到達すると、当該保持部32に沿って鉛直方向に延在する倒立状態(図1における破線Rが示す状態)となる。そこからさらに保持部32が時計回りに循環すると、倒立状態の電極10の裏面10bが保持部32によって水平方向に押し出され、電極10は反転する。具体的には、電極10は、重力によって前方に倒れ、それまで電極10を支持していた保持部32よりも搬送方向における前方に位置する保持部32の裏面32eに主面10aが当接して支持される状態に変化する。
上述のように反転した電極10は、搬送路の下流側(図1における搬送部材31の右側)において、電極10の主面10aが保持部32の裏面32eに当接して支持された状態で、保持部32とともに下降する。保持部32が第2水平搬送部4に対して電極10を受け渡す位置まで下降し、保持部32の裏面32e上の電極10の主面10aが第2水平搬送部4に載り上げることにより、電極10は第2水平搬送部4に受け渡される。なお、このとき、保持部32が基端部32a側から先端部32b側に向かって斜め下方向に傾斜しているため、電極10は、第2水平搬送部4上へとスムーズに移動することができる。電極10を第2水平搬送部4に受け渡した保持部32は、引き続き搬送部材31とともに循環することにより、第1水平搬送部2から排出される電極10を搬送するために再度用いられる。
次に、反転装置3がバッファ機構として機能する際の動作について説明する。例えば、上流の製造工程において不良品と判定された電極10が除かれる等により、第1水平搬送部2からの電極10の供給の抜けが1枚発生する場合が考えられる。このような場合には、制御部35は、搬送部材31の循環速度を半分に落とすとともに、半分に落とした後の循環速度と同じ速度で搬送部材31全体を下降させるように、第1駆動部35a及び第2駆動部35bの動作を制御すればよい。このような動作によって、空の保持部32が第2水平搬送部4に流れていくことを防止するとともに、反転装置3から第2水平搬送部4に対して一定の間隔で電極10を供給することが可能となる。
また、上記とは逆に、下流の製造工程において何らかの不具合が発生し、第2水平搬送部4の動作を停止する必要がある一方で、第1水平搬送部2の動作を停止させたくない場合も考えられる。このような場合には、制御部35は、搬送部材31の循環速度を半分に落とすとともに、半分に落とした後の循環速度と同じ速度で搬送部材31全体を上昇させるように、第1駆動部35a及び第2駆動部35bの動作を制御すればよい。このような動作によって、反転装置3は、第2水平搬送部4に対する電極10の供給を停止するとともに、第1水平搬送部2から供給される電極10を受け取ることができる。
以上述べた反転装置3では、保持部32が上昇する上昇区間のうち電極10の受取位置及び受取位置よりも上方の区間(すなわち、保持部32が鉛直上向きに移動する区間)において、基端部32aが先端部32bよりも鉛直下方に位置するように、保持部32が傾斜している。これにより保持部32に掬い上げられた電極10は、先端部32b側から基端部32a側に移動(滑走)するように誘導される。従って、反転装置3によれば、水平方向に搬送される電極10を下方から掬い上げる構造において、電極10を安定して受け取ることができる。例えば、仮に第1水平搬送部2によって水平方向に搬送される電極10が搬送部材31の外周面31aに衝突し、保持部32の先端部32b側へ勢いよく跳ね返った場合であっても、電極10は、再び基端部32a側に移動(滑走)するように誘導される。
さらに、保持部32の主面32dの先端部32b側の縁部に設けられた突出部34によって、受取位置において保持部32に掬い上げられた電極10は、保持部32の主面32d上を先端部32b側から基端部32a側に移動し易くなるように、傾斜させられる。これにより、電極10を先端部32b側から基端部32a側に移動するようにより適切に誘導することができる。また、保持部32に掬い上げられた電極10の先端部32b側への移動は、突出部34によって制限される。
また、反転装置3は、第1駆動部35a及び第2駆動部35bの動作を制御する制御部35を更に備える。そして、制御部35は、搬送部材31の外周面31aに向かって搬送される電極10が搬送部材31の外周面31aに接触する前に保持部32に掬い上げられるように、第1駆動部35a及び第2駆動部35bの動作を制御する。リチウムイオン二次電池の電極においては、前述の如く、帯状の電極材料を切断して形成される為、その切断により生じた端面に衝撃が加わると、活物質等が剥離する粉落ちが生じ、異物発生の原因となるが、上記構成により、水平方向に搬送される電極10の外周面31aへの衝突が抑制され、異物発生が抑制できる。また、このように電極10が搬送部材31の外周面31aに十分に近づく前に保持部32が電極10を掬い上げるように構成しても、上述した保持部32及び突出部34により、電極10を保持部32の先端部32b側から基端部32a側へと適切に誘導することができる。従って、上記構成によれば、異物の発生を抑制しつつ、電極10を安定して受け取ることができる。
また、保持部32は、先端部32b側から基端部32a側にかけて延びる切欠きを形成する切欠き部32cを有する。これにより、搬送部材31の外周面31aに向かって水平方向に電極10を搬送する一対の搬送ベルト21,21を、一対の切欠き部32c,32cによって形成される切欠きを通るように配置することができる。その結果、保持部32が電極10を掬い上げる受取位置まで電極10を安定して侵入させることができ、保持部32による電極10の受け取りをより安定化させることができる。
なお、本実施形態においては、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、突出部34の形状は、上述の形状(断面円形)に限られない。図3を参照して、突出部の2つの変形例について説明する。
図3の(a)に示す変形例に係る突出部34Aは、断面三角形状となっており、主面32dに対する高さが先端部32b側から基端部32a側に向かうにつれて低くなるように傾斜する傾斜面34bを有する。このような突出部34Aを設けた場合には、突出部34Aの傾斜面34bによって、保持部32に掬い上げられた電極10を先端部32b側から基端部32a側へとスムーズに誘導することが可能となる。
図3の(b)に示す変形例に係る突出部34Bは、保持部32Aと一体化されている。具体的には、保持部32Aの先端部32b側の一部が搬送方向側に曲げられることにより電極10が載置される主面32dに沿った平面に対して突出した部分が、突出部34Bとして機能する。なお、このようにしても、図3の(a)に示した突出部34Aと同様の傾斜面34bを形成することができる。このような突出部34Bを設ける場合には、保持部と突出部とが別部材である場合に必要となる作業(例えば保持部に突出部を接着する作業等)が不要となり、元々平らな板状の保持部の先端を曲げることにより、容易に突出部34Bを形成することができる。
また、突出部34は、電極10に接触して電極10の奥側(搬送部材31の外周面31a側)への移動を誘導可能な部分の少なくとも一部に設けられていればよく、保持部32の先端部32b側の縁部全体ではなく当該縁部の一部にのみ設けられてもよい。例えば、図2に示す突出部34を構成する3つの部分34aのうち、真中の部分34a(2つの切り欠きに挟まれる部分)のみが設けられ、それ以外の2つの部分34aが設けられない構成が採用されてもよい。
また、保持部32は、切欠き部32cを有していなくてもよい。この場合、図1に示すように第1水平搬送部2の搬送ベルト21を鉛直方向において保持部32と重なる位置に配置することはできないが、例えば第1水平搬送部2から水平方向に放出された電極10を下方から上昇する保持部32が受け取る構成とすることで、保持部32による電極10の受け取りを実現してもよい。また、反転装置3から第2水平搬送部4への電極10の受け渡しについても、例えば所定の位置で電極10を第2水平搬送部4側に押し出す機構を設ける等の任意の方法によって実現してもよい。
また、反転装置3の頂部付近において反転させられた電極10は、電極10の主面10aが保持部32の裏面32eに当接して支持された状態で、保持部32とともに下降する。このとき、保持部32は、基端部32a側から先端部32b側に向かって斜め下方向に傾斜している。このため、保持部32の傾斜角度θが大きい場合、反転装置3から第2水平搬送部4に電極10を受け渡す位置に到達する前に、電極10が保持部32の裏面32e上から滑落する虞がある。そこで、このような電極10の滑落を防止するために、裏面32eの表面を主面32dの表面よりも滑りにくくしてもよい。例えば、主面32dの表面よりも摩擦係数が高い材料で裏面32eの表面をコーティングしてもよい。或いは、後述する第3実施形態のように、保持部32の傾斜角度を上昇区間と下降区間とで変更する構成を採用してもよい。
また、上記実施形態では、保持部32が上昇する上昇区間のうち電極10の受取位置及び受取位置よりも上方の区間にて保持部32を傾斜させる構成について説明したが、保持部32は、少なくとも受取位置において傾斜していればよく、例えば受取位置よりも上方の区間においては水平にされてもよい。このような構成であっても、受取位置において、保持部32に掬い上げられた電極10は、先端部32b側から基端部32a側に移動(滑走)するように誘導されるので、水平方向に搬送される電極10を下方から掬い上げる構造において、電極10を安定して受け取ることができる。
[第2実施形態]
図4及び図5を参照して、第2実施形態の反転装置3Aについて説明する。第1実施形態では、反転装置3によって反転させられる部材は電極(正極、負極)であったが、第2実施形態の反転装置3Aにより反転されられる部材は、一例として、セパレータ・正極・セパレータ・負極の4枚を接合し、一体としたユニット体15である。図6に示すように、ユニット体15は、一対のセパレータ15Aに挟まれた正極15Bと負極15Cとが重ねて接合された構造をなす。ユニット体15では、セパレータ15A・正極15B・セパレータ15A・負極15Cの4枚がこの順に重ねられ、各々の層間の四隅が接着剤Aにより固定されている。第2実施形態の製造ラインの組立工程では、一旦ユニット体15を形成した後、ユニット体15を複数積層することで、電極組立体が得られる。第1実施形態の反転装置3が電極のバッファ機構として用いられるのに対し、第2実施形態の反転装置3Aは、ユニット体15の搬送途中で、主面15a(一例としてユニット体15の負極15C表面)と裏面15b(一例としてユニット体15のセパレータ15A表面)との位置関係を入れ替える反転機構として用いられる。
図4に示すように、反転装置3Aは、水平方向に平行な軸線周りに回転し、外周が上昇した後に下降する閉経路(本実施形態では鉛直面に沿った略円状の経路)を形成するように回転(循環)する回転体としての搬送部材51を備える。また、反転装置3は、搬送部材51が循環する循環方向(すなわち回転方向)に沿って搬送部材51の外周面51a上に所定間隔で配置され、搬送部材51とともに循環する複数の保持部52と、を備える。保持部52及び保持部52の先端側の縁部に設けられる突出部53の構成は、第1実施形態の保持部32及び突出部34と同様であるため、詳細な説明を省略する。
図4の例では、搬送部材51の循環経路が沿う鉛直面(図4の紙面に平行な平面)に直交する幅方向(図4の紙面に垂直な方向)から見て、保持部52が搬送部材51の外周面51aに直交する平面から搬送方向に向かって傾斜角度θ2(0°<θ2<90°)だけ傾斜するように、保持部52の基端部52aが搬送部材51の外周面51aに接続されている。このようにして、保持部52は、上昇区間のうちユニット体15の受取位置及び受取位置よりも上方の区間において、基端部52aが先端部52bよりも鉛直下方に位置するように傾斜している。
以上のように構成された反転装置3Aによっても、第1実施形態の反転装置3と同様に、水平方向に搬送されるユニット体15を下方から掬い上げて受け取る構造において、ユニット体15を安定して受け取ることができる。
[第3実施形態]
図6及び図7を参照して、第3実施形態の反転装置3Bについて説明する。例えば先端部32bが基端部32aよりも循環方向における前方に位置するように、搬送部材31の外周面31aに対して保持部32を傾斜させることにより、上昇区間において、保持部32を先端部32b側から基端部32a側に向かって斜め下方向に傾斜させることができる。しかし、このようにした場合、下降区間においては、保持部32は基端部32a側から先端部32b側に向かって斜め下方向に傾斜することになるので、保持部32の傾斜の度合いによっては保持部32上の電極10が滑り落ちてしまう虞がある。そこで、反転装置3Bは、上昇区間と下降区間との間で、搬送部材31の外周面31aに対する保持部32の傾斜角度が異なるように、傾斜角度を調整する傾斜角度調整機構を更に備えている。
本実施形態では一例として、反転装置3Bは、傾斜角度調整機構として、搬送部材31が循環する経路が沿う鉛直面に直交する幅方向に対向する一対の板状のガイド板61,61を有する。一対のガイド板61,61は、搬送部材31を挟むようにして対向配置され、各ガイド板61の搬送部材31側の面には、保持部32の傾斜角度を規定するための環状のガイド溝61aが形成されている。また、反転装置3Bは、傾斜角度調整機構として、各保持部32の幅方向両側縁部の先端部32b側に接続され、幅方向に延在する一対のガイドピン62,62を有する。各保持部32に接続された一対のガイドピン62,62は、一対のガイド板61,61に形成されたガイド溝61a,61aに嵌め込まれている。これにより、保持部32は、当該保持部32のガイドピン62がガイド溝61aによって規定される経路を通るように、搬送部材31とともに循環するようになっている。
具体的には、図6に示すように、幅方向から見た場合に、上昇区間におけるガイド溝61aと搬送部材31の外周面31aとの距離d1は、下降区間におけるガイド溝61aと搬送部材31の外周面31aとの距離d2よりも小さくなっている。より具体的には、距離d1は、保持部32が基端部32a側から先端部32b側に向かって斜め上方向に傾斜するように調整されている。一方、距離d2は、保持部32が略水平方向の姿勢を維持するように調整されている。
以上述べた反転装置3Bによれば、上昇区間と下降区間とで搬送部材31の外周面31aに対する保持部32の傾斜角度を異ならせることができる。具体的には、上昇区間においては保持部32が基端部32a側から先端部32b側に向かって斜め上方向に傾斜するようにする一方で、下降区間においては保持部32が搬送部材31の外周面31aに対して垂直になるようにすることができる。これにより、各区間における保持部32の傾斜角度を適切に設定することができる。すなわち、上昇区間において電極10を安定して受け取ることができるようにするとともに、下降区間において電極が意図せずに保持部32上から滑り落ちることを防止できる。