以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明では、前、後、左、右、上および下の方向は、自動二輪車のシートに着座した運転者を基準とする。
図1を参照して、本実施形態に係る自動二輪車1の全体構成について説明する。図1は自動二輪車1を示す左側面図である。
自動二輪車1の車体フレーム211は、例えば、複数の鋼鉄製パイプを接合することにより形成されている。具体的には、車体フレーム211は、自動二輪車1の前部上側に配置されたヘッドパイプ212と、自動二輪車1の左部および右部にそれぞれ配置され、前端部がヘッドパイプ212の上部に接続され、後端側が下方に傾斜しつつ後方へ伸長する一対のメインフレーム213と、自動二輪車1の左部および右部にそれぞれ配置され、前端部がヘッドパイプ212の下部に接続され、後端側がメインフレーム213よりも大きく下方に傾斜しつつ後方へ伸長する一対のダウンチューブ214と、自動二輪車1の左部および右部にそれぞれ配置され、前端部がダウンチューブ214の中間部にそれぞれ接続され、後端側が後方へ伸長する一対のサイドフレーム215と、メインフレーム213の後端側にそれぞれ接合された一対のピボットフレーム216と、を備えている。また、メインフレーム213、ダウンチューブ214およびサイドフレーム215間には補強フレーム217が設けられている。
ヘッドパイプ212には、ステアリングシャフト(図示せず)が挿入され、ステアリングシャフトの上端部および下端部には、それぞれステアリングブラケット225が設けられている。上側のステアリングブラケット225には、ハンドル226が設けられている。上側および下側のステアリングブラケット225には、左右一対のフロントフォーク227の上部がそれぞれ支持され、これらフロントフォーク227の下端側には、前輪228が支持されている。
左右一対のピボットフレーム216間には、ピボット軸231を介してスイングアーム232の前端側が支持され、スイングアーム232の後端側には、後輪233が支持されている。後輪233の車軸には、ドリブンスプロケット234が設けられ、ドリブンスプロケット234には、後述するエンジン12の動力を伝達するチェーン235が巻回されている。
前輪228と後輪233との間には、エンジンユニット11が設けられている。エンジンユニット11は、主に、左側のメインフレーム213および左側のダウンチューブ214と、右側のメインフレーム213および右側のダウンチューブ214との間に配置され、これらのフレームに支持されている。
エンジンユニット11の上方には燃料タンク241が設けられ、燃料タンク241の後方にはシート242が設けられている。自動二輪車1の左側であってエンジンユニット11の下部後方には、サイドスタンド243が設けられている。自動二輪車1の前部上側には、アッパーカウル244が設けられている。自動二輪車1には、エンジンユニット11の主に前部下側を覆うアンダーカウル245が設けられている。
次に、図2ないし図9を参照して、エンジンユニット11について説明する。図2はエンジンユニット11を示す左側面図である。図3はエンジンユニット11を示す右側面図である。図4はエンジンユニット11(ラジエータ33を除く)を示す正面図である。図5はエンジンユニット11を示す平面図である。図6はエンジンユニット11(ラジエータ33を含む)を示す正面図である。図7はエンジン12および冷却系を示す平面図である。図8はエンジンユニット11の冷却系を模式的に示す断面図である。図9はエンジン12および冷却配管61を示す正面図である。
エンジンユニット11は、エンジン12と、エンジン12の動力を後輪233へ伝達する一次減速機構、クラッチ、トランスミッション等の駆動系の一部と、エンジン12の可動部を潤滑する潤滑系と、空気と燃料の混合気をエンジン12へ供給する吸気系(過給機113を含む)と、混合気の燃焼により発生する排気ガスをエンジン12から排出する排気系の一部と、エンジン12等を冷却する冷却系と、クランクシャフトの回転を利用して発電するACジェネレータ等と、を備えている。
本実施形態においてエンジン12は、例えば、水冷式並列2気筒の4サイクルガソリンエンジンである。図2および図3に示すように、エンジン12は、クランクシャフト(図示せず)を収容するクランクケース13と、クランクケース13の上に設けられるシリンダ14と、シリンダ14の上に設けられるシリンダヘッド15と、シリンダヘッド15の上に設けられるシリンダヘッドカバー16と、を有している。
クランクケース13の下方には、オイルパン17が設けられている。エンジン12のシリンダ軸線は、上側が下側よりも前方に位置するように傾斜している。エンジン12には、ピストンの運動により生じる振動を軽減するバランスシャフト(図示せず)が設けられている。バランスシャフトはクランクシャフトの前方に配置されている。具体的には、エンジン12のクランクケース13の前部には、バランサ室18が一体形成されている(図2参照)。バランサ室18はクランクケース13の一部を前方に拡張することによって形成されている。バランスシャフトは、このバランサ室18内に設けられている。クランクケース13の左部には、マグネト室19が設けられ(図2参照)、マグネト室19にはACジェネレータ(図示せず)が収容されている。
エンジンユニット11の駆動系の一部は、エンジン12の後部に配置されている。すなわち、クランクケース13およびシリンダ14の後側にはトランスミッションケース21が一体形成され、トランスミッションケース21内には一次減速機構およびトランスミッションが収容されている。トランスミッションケース21の右部には、クラッチを覆うクラッチカバー22が取り付けられている(図3参照)。トランスミッションケース21の左部には、ドライブスプロケットを覆うスプロケットカバー23が設けられている(図2参照)。ドライブスプロケットには、エンジン12の動力を後輪233へ伝達するチェーン235が巻回されている(図1参照)。
図2ないし図4に示すように、エンジンユニット11の潤滑系は、オイルポンプ(図示せず)、オイルフィルタ25、および水冷式のオイルクーラ26を備えている。オイルポンプは、エンジン12のオイルパン17内に貯留されたエンジンオイルを汲み上げてエンジン12の各所へ供給する。オイルフィルタ25は、エンジンオイルを濾過する。オイルクーラ26は、エンジン12に供給されるエンジンオイルを冷却する。オイルフィルタ25およびオイルクーラ26は、エンジン12の下端部前側で、左右方向(車幅方向)中央付近に並んで配置されている(図4参照)。
図2ないし図5に示すように、エンジンユニット11の吸気系は、エアクリーナ111、過給機113、インタークーラ117、排風ダクト118、サージタンク119、電子制御スロットル装置120、およびインジェクタ123を備えている。
図4および図5に示すように、エアクリーナ111は、エンジン12の上方左側に配置されている。エアクリーナ111は、外部から取り込まれた空気を濾過する装置であり、その内部にはエアフィルタ(図示せず)が設けられている。なお、図2および図5において、エアクリーナ111の吸入口112を二点鎖線により模式的に示しているが、この吸入口112の位置は適宜設定することができる。また、吸入口112には、外部の空気をエアクリーナ111に導くエアダクト(図示せず)が設けられている。
図2ないし図4に示すように、過給機113は、シリンダ14およびシリンダヘッド15の前側、且つオイルクーラ26の上方に近接して配置されている。過給機113は、エンジン12に供給される燃焼用空気を圧縮する。
図4に示すように、過給機113は、タービン部114と、コンプレッサ部115と、ベアリング部116と、を備えている。
タービン部114は、エンジン12の左右方向略中央部に配置されている。タービン部114は、タービンハウジング内で回転可能に支持されるタービンホイール(図示せず)を含んで構成されている。タービンホイールは、エンジン12からの排気ガスによって回転駆動される。コンプレッサ部115は、タービン部114の左側に配置されている。コンプレッサ部115は、コンプレッサハウジング内で回転可能に支持されるコンプレッサインペラ(図示せず)を含んで構成されている。コンプレッサインペラは、タービンホイールと共に回転し、エアクリーナ111を介して供給された空気を圧縮する。ベアリング部116は、タービン部114とコンプレッサ部115との間に配置されている。ベアリング部116は、タービンホイールとコンプレッサインペラとを中間部で軸支するベアリング(図示せず)を含んで構成されている。ベアリング部116には、オイルポンプの駆動によってエンジンオイルが供給される。なお、コンプレッサ部115は、タービン部114の右側に配置されてもよい。
図3ないし図5に示すように、インタークーラ117は、エンジン12の上方右側に配置されている。インタークーラ117は、過給機113のコンプレッサ部115に圧縮されて高温となった空気を冷却する装置である。インタークーラ117の近傍には、インタークーラ117を通過した空気(排風)を外部に放出する排風ダクト118が設けられている。図2および図5に示すように、サージタンク119は、エンジン12の上方後側に配置されている。サージタンク119は、インタークーラ117により冷却された空気の流れを整流する装置である。
電子制御スロットル装置120は、インタークーラ117を通過してエンジン12の吸気ポートへ供給される空気の量を調整する装置である。図2に示すように、電子制御スロットル装置120は、スロットルボディ121と、スロットルボディ121の内部に設けられ、スロットルボディ121内に形成された吸気通路を開閉するスロットルバルブ(図示せず)と、スロットルバルブを駆動する駆動モータ122と、を備えている。スロットルボディ121は、エンジン12の後方上側においてサージタンク119とエンジン12の吸気ポートとの間に配置されている。
インジェクタ123は、エンジン12の吸気ポートへ燃料を噴射する装置であり、インジェクタ123には、燃料タンク241からインジェクタ123へ燃料を供給するデリバリパイプ124が接続されている。
これら吸気系を構成する各部の接続は、次の通りである。図4および図5に示すように、エアクリーナ111と過給機113のコンプレッサ部115との間には、エアインテークパイプ125が接続されている。エアインテークパイプ125は、エンジン12の前方左側に配置されている。また、コンプレッサ部115とインタークーラ117との間には、エアアウトレットパイプ126が接続されている。エアアウトレットパイプ126は、エンジン12の前方左側であって、エアインテークパイプ125の右方に配置されている。図5に示すように、インタークーラ117とサージタンク119との間には、コネクティングパイプ127が接続されている。コネクティングパイプ127は、エンジン12の上方の右後側に配置されている。
図4および図5に示すように、外部から取り込まれた空気は、通常、エアクリーナ111、エアインテークパイプ125、過給機113のコンプレッサ部115、エアアウトレットパイプ126、インタークーラ117、コネクティングパイプ127、サージタンク119、および電子制御スロットル装置120のスロットルボディ121を順次通り、エンジン12の吸気ポートに供給される。過給機113の近傍には、コンプレッサ部115を迂回してエアインテークパイプ125とエアアウトレットパイプ126との間を接続するエアバイパス通路128が設けられ(図2および図4参照)、エアバイパス通路128の途中には、エアバイパス通路128の連通、遮断を切り換えるエアバイパスバルブ129が設けられている(図2および図5参照)。
図4に示すように、エンジンユニット11の排気系は、エンジン12の排気ポート(図示せず)と過給機113のタービン部114との間を接続するエキゾーストパイプ131、過給機113のタービン部114とマフラ側とを接続するマフラージョイントパイプ132、およびマフラ(図示せず)等を備えている。
エキゾーストパイプ131は、エンジンユニット11の一部を構成する。エキゾーストパイプ131は、エンジン12の前方に配置されている。本実施形態においては、エキゾーストパイプ131は、タービン部114のタービンハウジングと一体形成されている。具体的には、並列2気筒のエンジン12の2つの排気ポートには、2本のエキゾーストパイプ131の一端側がそれぞれ接続されている。これらエキゾーストパイプ131の他端側は、互いに結合して1本となり、タービン部114のタービンハウジングと一体化している。なお、エキゾーストパイプ131が、タービンハウジングと別体で構成され、タービンハウジングに連結されてもよい。一方、マフラージョイントパイプ132は、その一端側がタービン部114のタービンハウジングに接続され、他端側はエンジン12の下方右側を通過し、マフラに向かって後方へ伸長している。また、マフラは、エンジン12の後方下側に配置されている。
各排気ポートから排出された排気ガスは、エキゾーストパイプ131を介してタービン部114内へ供給される。この排気ガスによりタービン部114のタービンが回転する。続いて、タービン部114から排出された排気ガスは、マフラージョイントパイプ132を介してマフラへ供給され、マフラから外部へ排出される。
過給機113のタービン部114には、ウェイストゲートバルブ133が設けられている。すなわち、タービン部114の内部には、エキゾーストパイプ131を介して供給される排気ガスの一部をタービンへ供給せずにマフラージョイントパイプ132側へ流すゲートが形成されており、ウェイストゲートバルブ133は、このゲートの開閉を行うことによりタービンへの排気ガスの流入量を調整する。
図3に示すように、エンジンユニット11の冷却系は、ウォータジャケット(図示せず)と、ウォータポンプ30と、ラジエータ33と、冷却水流制御ユニット41と、基幹配管51と、冷却配管61と、を備えている。
ウォータジャケットは、シリンダ14およびシリンダヘッド15に設けられている。シリンダ14およびシリンダヘッド15は、ウォータジャケットを流れる冷却水によって冷却される。
図3および図4に示すように、ウォータポンプ30は、クランクケース13の右側に取り付けられている。ウォータポンプ30は、クランクシャフトよりも前方に位置するバランスシャフトに対応する位置に配置されている。ウォータポンプ30には、ポンプ流入口31が設けられている。ウォータポンプ30には、ウォータジャケットに冷却水を供給するための供給部30Aが形成されている。ウォータポンプ30の前側には、冷却水吐出口30Bが設けられている。ウォータポンプ30は、クランクシャフトの回転を利用して動作し、エンジン12(ウォータジャケット)および過給機113に冷却水を送り込む。
図2、図3および図6に示すように、ラジエータ33は、エンジン12の前側に配置されている。ラジエータ33は、走行風を受け、またはラジエータファン40を駆動し、冷却水の熱を大気に放出することによって冷却水を冷却する。ラジエータ33は、上ラジエータ34および下ラジエータ35を備えている。
上ラジエータ34と下ラジエータ35とは、互いに上下に離間して配置され、左右一対のコネクティングホース36を介して接続されている。図7に示すように、上ラジエータ34の後面には、ラジエータファン40が取り付けられている。上ラジエータ34の後面の左上側には、ラジエータ流入口37が設けられている(図2も参照)。上ラジエータ34の後面の右上側には、ラジエータ流出口38が設けられている(図3も参照)。
図3に示すように、上ラジエータ34の後面の右下側には、上方に伸長する注水ホース56が接続される冷却水供給口39が形成されている。注水ホース56の上端部には、冷却水注水口57を有する冷却水注水部58が設けられている。また、ラジエータ33には、オーバーフロー管路(図示せず)を介してリザーバタンク59が接続されている。
図6および図7に示すように、循環経路としての冷却水流制御ユニット41は、オイルクーラ26および過給機113よりも上方に配置されている。詳細には、冷却水流制御ユニット41は、シリンダヘッドカバー16の上方で右前側に配置され、エンジン12または車体フレーム211の一部に取り付けられている。冷却水流制御ユニット41は、冷却水の温度に応じてラジエータ33に流通させる冷却水の量を調整するために設けられている。これにより、冷却水を所定の適温に保つことができる。
図8に示すように、冷却水流制御ユニット41は、サーモスタットハウジング42と、サーモスタット43と、を備えている。サーモスタットハウジング42は、左側ハウジング42Lおよび右側ハウジング42Rを有している。サーモスタット43は、右側ハウジング42Rに内設されている。
左側ハウジング42Lの後側には、第1の冷却水流入口44が形成されている。左側ハウジング42Lの左側には、第2の冷却水流入口45が形成されている。左側ハウジング42Lの前側には、冷却水送出口46が形成されている。第1の冷却水流入口44、第2の冷却水流入口45および冷却水送出口46は、それぞれ、左側ハウジング42Lの内部に連通している。左側ハウジング42Lの後部左側には、内部を流通する冷却水の温度を検出する水温センサSが取り付けられている。
右側ハウジング42Rの前側には、冷却水戻り口47が形成されている。右側ハウジング42Rの後側には、冷却水流出口48が形成されている。冷却水戻り口47および冷却水流出口48は、それぞれ、右側ハウジング42Rの内部に連通している。
左側ハウジング42Lと右側ハウジング42Rとの間には、冷却水バイパス通路49が形成されている。冷却水バイパス通路49は、左側ハウジング42Lの内部と右側ハウジング42Rの内部とを連通させている。
サーモスタット43は、冷却水の温度に応じて、冷却水バイパス通路49を開閉するために設けられている。サーモスタット43は、弁座43Aと、主弁体43Bと、サーモエレメント43Cと、副弁体43Dと、を備えている。
弁座43Aは、右側ハウジング42Rの内部に固定されている。主弁体43Bと副弁体43Dとは、サーモエレメント43Cに固定されている。主弁体43Bは、弁座43Aに対して離着座するように構成されている。副弁体43Dは、冷却水バイパス通路49の開口縁部(以下、「副弁座43E」ともいう。)に対して離着座するように構成されている。サーモエレメント43Cは、冷却水の温度に応じて主弁体43Bおよび副弁体43Dを左右方向に移動させる。主弁体43Bは、冷却水戻り口47と冷却水流出口48との間の流路を開閉し、副弁体43Dは、冷却水バイパス通路49を開閉する。
図7および図8に示すように、基幹配管51は、冷却水流制御ユニット41とウォータポンプ30とを連通させ、エンジン12を冷却した冷却水をウォータポンプ30とラジエータ33とのうちの少なくとも一方に供給するために設けられている。すなわち、ウォータポンプ30、ラジエータ33、冷却水流制御ユニット41および基幹配管51は、エンジン12を冷却するための冷却水を循環させるエンジン冷却水循環構造を形成している。
図7に示すように、基幹配管51は、シリンダアウトレットホース52と、ウォータポンプインレットホース53と、ラジエータインレットホース54と、ラジエータアウトレットホース55と、を有している。なお、各ホース52〜55は、例えば、可撓性を有する合成樹脂等で形成されている。
図8に示すように、シリンダアウトレットホース52(第1の基幹配管)は、ウォータジャケットの流出部(図示せず)と冷却水流制御ユニット41の第1の冷却水流入口44との間に接続されている。シリンダアウトレットホース52は、エンジン12を冷却(ウォータジャケットから流出)した冷却水を冷却水流制御ユニット41に供給するために設けられている。
ウォータポンプインレットホース53(第2の基幹配管)は、冷却水流制御ユニット41の冷却水流出口48とウォータポンプ30のポンプ流入口31との間に接続されている(図7参照)。ウォータポンプインレットホース53は、冷却水流制御ユニット41を通過した冷却水をウォータポンプ30に供給するために設けられている。
ラジエータインレットホース54(第3の基幹配管)は、冷却水流制御ユニット41の冷却水送出口46と上ラジエータ34のラジエータ流入口37との間に接続されている(図7参照)。ラジエータインレットホース54は、冷却水流制御ユニット41を通過した冷却水をラジエータ33に供給するために設けられている。
ラジエータアウトレットホース55(第4の基幹配管)は、上ラジエータ34のラジエータ流出口38と冷却水流制御ユニット41の冷却水戻り口47との間に接続されている(図7参照)。ラジエータアウトレットホース55は、ラジエータ33を通過した冷却水を冷却水流制御ユニット41に供給するために設けられている。
ウォータポンプインレットホース53、ラジエータインレットホース54およびラジエータアウトレットホース55は、エンジン12とラジエータ33との間の空間に集約されて配置されている(図2および図3参照)。
図8および図9に示すように、冷却配管61は、ウォータポンプ30から送られた冷却水を流通させる。冷却配管61は、オイルクーラ26や過給機113を冷却した冷却水をウォータポンプ30とラジエータ33とのうちの少なくとも一方に供給するために設けられている。すなわち、ウォータポンプ30、ラジエータ33、冷却水流制御ユニット41および冷却配管61は、オイルクーラ26や過給機113を冷却するための冷却水を循環させる過給機冷却水循環構造を形成している。
冷却配管61は、正面から見てエンジン12の左右幅(車幅方向の長さ)よりも内側に配置される(図9参照)と共に、側面から見て過給機113の前端部よりも後側に配置されている(図3参照)。つまり、冷却配管61は、エンジン12とラジエータ33との間の空間に集約されて配置されている(図3参照)。このように、冷却配管61がエンジン12の前側に寄せられて集約されることで、過給機付きエンジンの小型化を図ることができる。
冷却配管61は、流入配管62と、接続配管63と、流出配管64と、を含んで構成されている。
流入配管62は、ウォータポンプ30から送られた冷却水をオイルクーラ26に供給するために設けられている。流入配管62は、ウォータポンプ30とオイルクーラ26との間に接続されている。具体的には、流入配管62の上流端部は、ウォータポンプ30の冷却水吐出口30Bに接続されている。流入配管62は、ウォータポンプ30から下方に延びた後に左方向に折れ曲がって左方向に延出している。流入配管62の下流端部は、オイルクーラ26の右側面に接続されている。なお、流入配管62は、可撓性を有する合成樹脂等で形成されることが好ましいが、金属製のパイプで形成されていてもよい。
接続配管63は、オイルクーラ26を冷却した冷却水を過給機113に供給するために設けられている。接続配管63は、過給機インレットホース63Aと、過給機インレットパイプ63Bと、を有している。なお、過給機インレットホース63Aは合成樹脂等で形成され、過給機インレットパイプ63Bは金属等で形成されることが好ましいが、接続配管63全体が、金属製のパイプで形成されてもよいし、合成樹脂製のホースで形成されてもよい。
過給機インレットホース63Aの上流端部は、オイルクーラ26の右上側面に突設される流出管26Aに接続されている。過給機インレットホース63Aは、オイルクーラ26から左斜め上方に延出している。過給機インレットパイプ63Bは、過給機インレットホース63Aの下流端部と過給機113のベアリング部116との間に接続されている。過給機インレットパイプ63Bの下流端部は、ベアリング部116の下面に突設される下側流入管116Aに接続されている。
図9に示すように、流出配管64は、過給機113を冷却した冷却水をウォータポンプ30に戻すために設けられている。流出配管64は、過給機113と冷却水流制御ユニット41との間に接続されている。流出配管64は、過給機アウトレットパイプ64Aと、傾斜ホース64Bと、を有している。なお、過給機アウトレットパイプ64Aは金属等で形成され、傾斜ホース64Bは合成樹脂等で形成されることが好ましいが、流出配管64全体が、金属製のパイプで形成されてもよいし、合成樹脂製のホースで形成されてもよい。
過給機アウトレットパイプ64Aの上流端部は、過給機113のベアリング部116の上面に突設される上側流出管116Bに接続されている。過給機アウトレットパイプ64Aは、過給機113のベアリング部116から上方に延出した後に右方向に折れ曲がっている。過給機アウトレットパイプ64Aは、過給機113とエキゾーストパイプ131との間(エキゾーストパイプ131の後側)を通って右方向に延びている。また、過給機アウトレットパイプ64Aは、左側(上流側)から右側(下流側)に向けて僅かに上り勾配になるように設けられている。過給機アウトレットパイプ64Aの下流端部は、エンジン12の右側で傾斜ホース64Bに接続されている。
傾斜ホース64Bは、ウォータポンプインレットホース53の後側で上方に折り返されて斜め左上方に延出している。傾斜ホース64Bは、エキゾーストパイプ131の上方を通ってエンジン12の左方向に延びている。すなわち、傾斜ホース64Bは、エンジン12の右側(上流側)から左側(下流側)に向けて上り勾配になるように設けられている。傾斜ホース64Bの下流端部は、冷却水流制御ユニット41の第2の冷却水流入口45に接続されている(図8参照)。すなわち、流出配管64は、冷却水流制御ユニット41を介して基幹配管51に連通している。
ここで、冷却水の流れについて説明する。エンジン12が始動すると、ウォータポンプ30も始動する。冷却水は、ウォータポンプ30(供給部30A)からエンジン12のウォータジャケットに送り込まれ、シリンダ14およびシリンダヘッド15を冷却する。図8に示すように、エンジン12の冷却に使用された冷却水は、シリンダアウトレットホース52を通って冷却水流制御ユニット41(左側ハウジング42L)の第1の冷却水流入口44に流入する。
また、図8および図9に示すように、ウォータポンプ30が始動すると、冷却水は、ウォータポンプ30の冷却水吐出口30Bから吐出され、流入配管62を流通してオイルクーラ26に供給される。オイルクーラ26に供給された冷却水は、エンジンオイルを冷却する。
オイルクーラ26(エンジンオイル)の冷却に使用された冷却水は、接続配管63を流通して過給機113のベアリング部116に供給され、ベアリングを潤滑するエンジンオイルを冷却する。過給機113の冷却に使用された冷却水は、過給機アウトレットパイプ64Aと傾斜ホース64Bとを順次流通し、冷却水流制御ユニット41(左側ハウジング42L)の第2の冷却水流入口45に流入する。オイルクーラ26および過給機113から流出した冷却水は、エンジン12から流出した冷却水と左側ハウジング42Lにて合流する。
ここで、冷却水流制御ユニット41のサーモスタット43は、サーモスタットハウジング42内に流入した冷却水の温度に応じて冷却水の流れを制御する。
図8に示すように、例えば、冷却水の温度が所定の基準温度T1以下の場合(エンジン12の始動直後等)、主弁体43Bは弁座43Aに着座し、副弁体43Dは副弁座43Eから離間する。すなわち、サーモスタット43は、冷却水戻り口47と冷却水流出口48との間の流路を全閉すると共に冷却水バイパス通路49を全開する。このとき、各冷却水流入口44,45から流入した冷却水は、ラジエータ33を流通せず、冷却水バイパス通路49を通って左側ハウジング42Lから右側ハウジング42Rに流入する。その冷却水は、冷却水流出口48からウォータポンプインレットホース53を通ってウォータポンプ30のポンプ流入口31に流入する。このように、ラジエータ33に向かう冷却水を規制することで、エンジン12の暖気運転を効率良く行うことができる。
また、例えば、冷却水の温度が基準温度T1よりも高く、所定の基準温度T2(T2>T1)以下の場合、冷却水の温度上昇に従って、主弁体43Bは弁座43Aから離れる方向に移動し、副弁体43Dは副弁座43Eに着座する方向に移動する。すなわち、サーモスタット43は、冷却水の温度上昇に従って、冷却水戻り口47と冷却水流出口48との間の流路の面積を増加させると共に、冷却水バイパス通路49の面積を減少させる。このとき、各冷却水流入口44,45から流入した冷却水は、左側ハウジング42Lの内部にてラジエータ33に向かう流れと冷却水バイパス通路49に向かう流れとに分流される。なお、冷却水の温度上昇に従って、冷却水バイパス通路49を流通する冷却水量に対し、ラジエータ33を流通する冷却水量が増加する。
詳細には、左側ハウジング42L内の冷却水は、冷却水送出口46からラジエータインレットホース54を流通し、ラジエータ流入口37(図2参照)から上ラジエータ34の内部に流入する。冷却水の一部は、上ラジエータ34によって冷却され、ラジエータ流出口38(図3参照)からラジエータアウトレットホース55を流通し、冷却水戻り口47から右側ハウジング42Rの内部に流入する。上ラジエータ34内に流入した冷却水の残部は、一方のコネクティングホース36を介して下ラジエータ35に供給され、下ラジエータ35によって冷却される。下ラジエータ35に冷却された冷却水は、他方のコネクティングホース36を介して上ラジエータ34に戻り、ラジエータ流出口38等を介して右側ハウジング42Rの内部に流入する。
一方、冷却水バイパス通路49を流通した冷却水は、ラジエータ33を流通した冷却水と右側ハウジング42Rの内部にて合流し、冷却水流出口48等を介してウォータポンプ30(ポンプ流入口31)に戻される。
また、例えば、冷却水の温度が基準温度T2よりも高い場合、主弁体43Bは弁座43Aに離間し、副弁体43Dは副弁座43Eに着座する。すなわち、サーモスタット43は、冷却水戻り口47と冷却水流出口48との間の流路を全開すると共に冷却水バイパス通路49を全閉する。このとき、各冷却水流入口44,45から左側ハウジング42Lに流入した冷却水は、冷却水バイパス通路49を流通せず、ラジエータ33を流通して右側ハウジング42R内からウォータポンプ30(ポンプ流入口31)に戻される。
なお、サーモスタット43の副弁体43Dおよび副弁座43Eは省略されていてもよい。しかしながら、本実施形態のように副弁体43D等を有するサーモスタット43を採用することで、冷却水バイパス通路49を適切に全閉することができる。これにより、左側ハウジング42L内の冷却水を、冷却水バイパス通路49に漏らすことなく、ラジエータ33に向けて流すことができる。また、副弁体43D付きのサーモスタット43は、副弁体43Dを省略したものよりも大きくなるため、サーモスタット43を収容する冷却水バイパス通路49も大きくなる。これにより、冷却水バイパス通路49を通過する冷却水の流通抵抗が低くなるため、迅速に暖気を行うことができる。
以上説明した本実施形態に係る自動二輪車1によれば、オイルクーラ26(エンジンオイル)は、ウォータポンプ30から流入配管62を介して供給される冷却水によって冷却される。これにより、他の冷却に使用されていない冷却水を用いてオイルクーラ26からエンジン12に供給されるエンジンオイルを十分に冷却することができる。例えば、エンジン12に冷却されたエンジンオイルが供給されることで、クランクシャフトを軸支するベアリング等の焼き付きを抑制することができる。また、ウォータポンプ30、オイルクーラ26および過給機113は、冷却配管61によって直列に接続されている。これにより、冷却水の循環構造(エンジンユニット11の冷却系)を簡単に形成することができる。
また、本実施形態に係る自動二輪車1によれば、過給機113は、オイルクーラ26の上方近傍(直上)に配置されているため、接続配管63の長さを短く形成することができる。これにより、自動二輪車1の軽量化および低コスト化を図ることができる。
ところで、例えば、エンジン12の停止に伴ってウォータポンプ30が停止すると、冷却配管61を流れる冷却水も停止する。その後、冷却水は、過給機113で加熱され、水蒸気を発生させる。この点、本実施形態では、流出配管64は、オイルクーラ26および過給機114よりも上方に位置する冷却水流制御ユニット41(循環経路)に接続されている。冷却水流制御ユニット41は、冷却水の流通経路の中で最も高い位置に配置されている。このため、発生した水蒸気は、流出配管64を下流側に向けて円滑に移動する。すると、過給機113と冷却配管61との圧力平衡作用によって、過給機113よりも上流側の冷却水が、過給機113に向けて押し出される。これにより、冷却水がオイルクーラ26や過給機113に供給され、エンジン12停止後も、オイルクーラ26と過給機113との冷却を継続することができる。そして、クランクシャフトを軸支するベアリング(図示せず)の焼き付きやエンジンオイルの劣化を防止することができる。
また、エンジン12、オイルクーラ26および過給機113の冷却に用いた冷却水は、冷却水流制御ユニット41に集められた後にラジエータ33によって冷却される。これにより、ラジエータ33を通過してエンジン12に供給される冷却水の温度を安定させることができる。なお、流出配管64は、冷却水流制御ユニット41に接続されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、流出配管64は、循環経路としてのエンジン12のウォータジャケットや他の配管(ホース、パイプ、分岐配管等)に接続されていてもよい。
なお、本実施形態の説明では、本発明を自動二輪車1に適用した場合を示したが、これに限らず、同様の構造を有する鞍乗型車両(例えば、前二輪、後一輪の三輪車等)に対し、本発明を適用してもよい。
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る鞍乗型車両における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態における構成要素は、適宜、既存の構成要素等との置き換えや組み合わせが可能であって、上記実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。