JP2017081134A - 繊維強化プラスチック成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
FRP成形品においては、樹脂マトリックス中の強化繊維の分散状態によって機械特性が大きく変化する。例えば、樹脂マトリックス中の強化繊維に方向性を持たせた場合、繊維方向の引張りに対しての強度が高められる。
例えば、繊維フィラーと樹脂とを含有する抄造材料を用いて抄造法によりFRPを得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
抄造法は紙抄きの技術であり、この方法を応用することで、樹脂マトリックス中に強化繊維を均一に分散させやすく、かつ、強化繊維に方向性を容易に持たせることができ、成形品特性の改善が図られる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、新規な繊維強化プラスチック成形品の製造方法を提供すること、を課題とする。
あるいは、前記工程(ii)において、前記中間成形体部分が、前記抄造プリプレグ成形体部分及び前記樹脂組成物成形体部分の一方の成形体部分に隣接するように前記の成形を行うことが好ましい。
例えば、本発明によって、機械特性がより高められたFRP成形品を製造することができる。
本実施形態の繊維強化プラスチック成形品(FRP成形品)の製造方法は、下記の抄造プリプレグを得る工程(i)と、繊維強化プラスチック成形品を得る工程(ii)と、を有する。
工程(i):第1の樹脂と繊維と分散媒とを含有する抄造材料から分散媒を除去して作製される素形体を、乾燥させて抄造プリプレグを得る工程
工程(ii):前記抄造プリプレグに、第2の樹脂を含有する樹脂組成物を接触させた状態で、前記抄造プリプレグ及び前記樹脂組成物を成形して、抄造プリプレグ成形体部分又は樹脂組成物成形体部分と、これらの少なくとも一方の成形体部分に隣接し、前記抄造材料中の成分及び前記樹脂組成物中の成分を含む中間成形体部分と、を備えた繊維強化プラスチック成形品を得る工程
本実施形態に用いられる抄造材料は、樹脂(第1の樹脂)と繊維と分散媒とを含有する。
抄造材料に用いられる樹脂(第1の樹脂)としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。
第1の樹脂における熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
第1の樹脂における熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
これらの中でも、機械的強度又は耐薬品性などの点から、熱硬化性樹脂が好ましく、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂がより好ましく、幅広い用途に用いることができる点から、フェノール樹脂が特に好ましい。
これらの中でも、コスト及び成形性の点から、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
フェノール樹脂の重量平均分子量が、前記の好ましい範囲の下限値未満であると、樹脂の粘度が低すぎて成形が難しい場合があり、前記の好ましい範囲の上限値を超えると、樹脂の溶融粘度が高くなるため、成形性が低下することがある。
フェノール樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算の重量分子量として特定することができる。
これらの中でも、高流動性や成形性等の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
この中でも、比較的分子量の低いビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。また、耐熱性の点から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がさらに好ましく、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。
但し、前記ビスマレイミド樹脂は、分子鎖の両末端以外にマレイミド基を有していてもよい。
R5は、好ましくはメチレン基と芳香環とエーテル結合(−O−)とが任意の順序で結合した主鎖構造を有し、主鎖上に置換基及び/又は側鎖を有していてもよい。主鎖構造に含まれるメチレン基と芳香環とエーテル結合との合計数は15個以下である。上記の置換基又は側鎖としては、例えば、炭素数3個以下の炭化水素基、マレイミド基、フェニレン基等が挙げられる。
抄造材料中の第1の樹脂の含有量は、抄造材料(高分子凝集剤を除く)の固形分総量(100体積%)に対して10〜60体積%が好ましく、より好ましくは20〜55体積%、さらに好ましくは30〜55体積%である。
第1の樹脂の含有量が前記の好ましい範囲内であれば、抄造材料を成形した場合に、外観が良好で、かつ、樹脂偏在の少ない成形体が得られやすくなる。
また、第1の樹脂の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、抄造プリプレグ成形体部分の強度が確保されやすくなる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、抄造材料の取扱い性がより良好となる。
抄造材料に用いられる繊維としては、有機繊維、無機繊維、金属繊維などが挙げられる。
例えば、繊維としては、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、高強度ポリプロピレン繊維などの合成繊維、アクリル繊維、フェノール繊維、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ロックウール、チタン酸カリウム繊維、バサルト繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、アルミニウム繊維、銅繊維、黄銅繊維、青銅繊維などが挙げられる。
繊維としてアラミド繊維、炭素繊維を用いた場合、FRP成形品の機械的強度をより高めることができるとともに、成形品をより軽量化することができる。
繊維としてガラス繊維を用いた場合、単位体積当たりの抄造材料の均一性がより高まり、抄造材料の成形性が特に良好となる。さらに、抄造材料の均一性が高まることで、形成されたFRP成形品における内部応力の均一性が向上して、成形品のうねりがより抑えられる。加えて、高負荷による成形品の耐摩耗性がより高まる。
炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系の炭素繊維又はピッチ系の炭素繊維のいずれであってもよいが、成形品の強度をより高められる点からは、PAN系の炭素繊維が好ましい。また、成形品表面に熱伝導性を付与させるという点からは、ピッチ系の炭素繊維が好ましい。
これらの中でも、繊維の高弾性化が図れ、その熱膨張係数をより小さくしやすいことから、Eガラス、Tガラス、Sガラスが好ましい。
繊維としては、曲げ強度や耐衝撃性などの強度を向上させる点から、チョップドストランドを用いることが好ましい。また、繊維としては、歩留まり向上の点から、ビーターもしくはホモジナイザー等の機械的なせん断力によって叩解したもの、又はフィブリル化したもの(パルプ)を、チョップドストランドと併用することが好ましい。前記パルプは、繊維表面積が大きく、物理的に樹脂の捕捉能力が高いため、このパルプを用いることによって化学的に高分子凝集剤と作用しやすくなる。
ここでいう長繊維とは、長さ1mm以上(好ましくは1〜50mm)の繊維をいい、短繊維とは、長さ0.1〜0.5mmの繊維をいう。
繊維の平均の長さが、前記の好ましい下限値以上であると、繊維による特性が発現しやすくなる。前記の好ましい上限値以下であると、成形加工性が確保されやすくなる。
中でも、繊維による特性が発揮されるとともに成形加工性が確保されやすくなることから、繊維の平均の長さは1mm以上、特には3mm以上、8mm以下であることが好ましい。
繊維の平均径が、前記の好ましい下限値以上であると、成形品に剛性が付与されやすくなる。前記の好ましい上限値以下であると、成形加工性が確保されやすくなる。
繊維の長さ及び径は、FRPを電子顕微鏡で観察することにより測定できる。
抄造材料中の繊維の含有量は、抄造材料(高分子凝集剤を除く)の固形分総量(100体積%)に対して20〜80体積%が好ましく、より好ましくは30〜70体積%、さらに好ましくは35〜60体積%である。
繊維の含有量が前記の好ましい範囲内であれば、FRP成形品の機械特性を、より効率よく高められる。また、繊維の含有量が前記の好ましい下限値以上であると、耐衝撃性などが向上しやすくなる。前記の好ましい上限値以下であると、軽量性、加工性を維持しやすくなる。
かかる繊維の表面処理の方法としては、例えば、カップリング剤処理、酸化処理、オゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、ブラスト処理などが挙げられる。これらの中でも、カップリング剤処理が施された繊維が好ましい。
抄造材料に用いられる分散媒としては、特に限定されないが、揮発しにくいこと、脱溶媒をしやすいこと等の点から、沸点が50〜200℃であるものが好ましい。
分散媒としては、例えば、水;エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、ジオキサン、フルフラールなどのエーテル類等が挙げられる。
これらの中でも、安価、環境負荷が低い、安全性も高く扱いやすいことから、水が特に好ましい。
分散媒は、1種を単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
抄造材料中の分散媒の含有量は、抄造材料(高分子凝集剤を除く)の固形分総量(100質量%)に対して0.05〜3質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜2質量%である。
抄造材料(高分子凝集剤を除く)の固形分濃度は、好ましくは0.2〜2.0質量%、より好ましくは0.3〜1.0質量%である。
抄造材料は、樹脂(第1の樹脂)、繊維及び分散媒以外の成分(任意成分)を含有してもよい。
抄造材料における任意成分としては、例えば、表面処理剤、イオン交換能を有する粉末状物質、高分子凝集剤、上記繊維を除くフィラー粉末などが挙げられる。
表面処理剤としては、公知のものが挙げられ、繊維又は樹脂の種類に応じて種々のカップリング剤を用いることができる。
カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シリコーンオイル系カップリング剤などが挙げられる。
これらの中でも、繊維と樹脂との密着性をより高められることから、シラン系カップリング剤が好ましい。
シラン系カップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、メタクリルシランカップリング剤、クロロシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤などが挙げられる。
抄造材料は、さらに、イオン交換能を有する粉末状物質を含有してもよい。この粉末状物質を併有することで、繊維の繊維長を長く維持しつつ、高い収率で、繊維と樹脂との凝集体が効率よく調製される、また、繊維と樹脂との配合比率を広範囲に調整することが可能となる。このため、要求される特性に応じて、繊維の特性と樹脂の特性とのバランスに優れたFRPを、より効率的に得ることができる。
粘土鉱物としては、天然物でも合成されたものでも特に限定されるものではないが、例えば、スメクタイト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウム等が挙げられる。
ハイドロタルサイト類としては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質などが挙げられる。
フッ素テニオライトとしては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、リチウム型フッ素テニオライト、ナトリウム型フッ素テニオライトなどが挙げられる。
膨潤性合成雲母としては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム型四珪素フッ素雲母、リチウム型四珪素フッ素などが挙げられる。
これらの中でも、粘土鉱物がより好ましく、天然物から合成物まで存在し、選択の幅が広いという点から、スメクタイトがさらに好ましい。
モンモリロナイトは、アルミニウムの含水ケイ酸塩であるが、モンモリロナイトを主成分とし、他に石英や雲母、長石、ゼオライトなどの鉱物を含んでいるベントナイトであってもよい。着色や不純物を気にする用途に用いる場合などには、不純物が少ない合成スメクタイトが好ましい。
イオン交換能を有する粉末状物質は、1種を単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
抄造材料は、さらに、高分子凝集剤を含有してもよい。この高分子凝集剤を併有することで、繊維と樹脂とをよりフロック状に凝集させ得る。
高分子凝集剤は、特にイオン性などにより限定されるものではなく、カチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤などを用いることができる。
例えば、高分子凝集剤としては、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、ホフマンポリアクリルアミド、マンニックポリアクリルアミド、両性共重合ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、両性澱粉、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
高分子凝集剤における、ポリマー構造や分子量、水酸基やイオン性基などの官能基量などは、要求される特性によらず、特に制限されるものではない。
高分子凝集剤としては、例えば、和光純薬工業(株)製、関東化学工業(株)製又は住友精化(株)製のポリエチレンオキシド;ハリマ化成(株)製のカチオン性PAMであるハリフィックス、アニオン性PAMであるハーマイドB−15、両性PAMであるハーマイドRB−300;三和澱粉工業(株)製カチオン化澱粉であるSC−5等が市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。
高分子凝集剤は、1種を単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
抄造材料は、特性を調整する目的として、さらに、上記繊維を除くフィラー粉末を含有してもよい。
かかるフィラー粉末としては、無機粉末、金属粉末が挙げられる。
無機粉末としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウムなどの酸化物類、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素などの窒化物類、硫酸バリウム、硫酸鉄、硫酸銅などの硫化物類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物類、カオリナイト、タルク、天然マイカ、合成マイカなどの鉱物類、炭化ケイ素などの炭化物類、又はこれらに要求される特性に応じてカップリング剤などで表面処理を施したものが挙げられる。
金属粉末としては、単独の金属で構成される金属粉末であっても、複数の金属で構成される合金粉末であってもよい。金属粉末を構成する金属としては、アルミニウム、銀、銅、マグネシウム、鉄、クロム、ニッケル、チタン、亜鉛、錫、モリブデン、タングステン等が挙げられる。
本実施形態に用いられる樹脂組成物は、樹脂(第2の樹脂)を含有する。
樹脂組成物に用いられる樹脂(第2の樹脂)としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、反応性硬化樹脂、嫌気硬化性樹脂などの硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、特に、硬化後の線膨張率や弾性率などの機械特性がより高められることから、熱硬化性樹脂が好ましい。
第2の樹脂における熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、機械的強度又は耐薬品性などの点から、熱硬化性樹脂が好ましく、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂がより好ましく、幅広い用途に用いることができる点から、フェノール樹脂が特に好ましい。
フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂についての説明は、上記説明と同様である。
樹脂組成物中の第2の樹脂の含有量は、樹脂組成物の固形分総量(100質量%)に対して5〜60質量%が好ましく、より好ましくは20〜55質量%、さらに好ましくは30〜50質量%である。
第2の樹脂の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、樹脂組成物成形体部分の強度が確保されやすくなる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、樹脂組成物の取扱い性がより良好となる。
樹脂組成物は、樹脂(第2の樹脂)以外の成分(任意成分)を含有してもよい。
樹脂組成物における任意成分としては、例えば、繊維、硬化剤、硬化助剤、充填材、離型剤、カップリング剤、難燃剤、カーボンブラック等の着色剤等が挙げられる。
樹脂組成物は、さらに、繊維を含有してもよい。樹脂組成物が含有してもよい繊維としては、抄造材料が含有する繊維と同様のものが挙げられる。
樹脂組成物が含有してもよい繊維の平均の長さは、要求される特性に応じて適宜決定され、例えば、500μm以下が好ましく、10〜300μmがより好ましい。繊維の平均の長さが、前記の好ましい上限値以下であると、成形加工性が確保されやすくなる。前記の好ましい下限値以上であると、繊維による特性が発現しやすくなる。
樹脂組成物が含有してもよい繊維の平均径は、5〜20μmが好ましく、6〜18μmがより好ましく、7〜16μmがさらに好ましい。繊維の平均径が、前記の好ましい下限値以上であると、成形品に剛性が付与されやすくなる。前記の好ましい上限値以下であると、成形加工性が確保されやすくなる。
樹脂組成物が含有してもよい繊維は、1種を単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物が繊維を含有する場合、樹脂組成物中の繊維の含有量は、樹脂組成物の固形分総量(100質量%)に対して30〜80質量%が好ましく、より好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%である。
樹脂組成物は、第2の樹脂の種類等に応じて、さらに、硬化剤を併有してもよい。
例えば、第2の樹脂としてノボラック型フェノール樹脂を用いる場合、硬化剤としては、通常、ヘキサメチレンテトラミンが用いられる。
例えば、第2の樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ジシアミンジアミドなどのアミン化合物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物などの酸無水物、ノボラック型フェノール樹脂などのポリフェノール化合物のほか、イミダゾール化合物などが挙げられる。これらの中でも、取扱い性、環境面から、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。特に、エポキシ樹脂としてフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤としては、硬化物の耐熱性がより向上しやすいことから、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
例えば、第2の樹脂としてビスマレイミド樹脂を用いる場合、硬化剤としては、イミダゾール化合物が挙げられる。
樹脂組成物が含有してもよい硬化剤は、1種を単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物が硬化剤を含有する場合、樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、樹脂組成物の固形分総量(100質量%)に対して1〜20質量%が好ましく、より好ましくは2〜15質量%である。
硬化助剤としては、例えば、イミダゾール化合物、三級アミン化合物、有機リン化合物、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
充填材には、無機充填材、有機充填材を用いることができる。
例えば、充填材としては、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、マイカ、タルク、ワラストナイト、ガラスビーズ、ミルドカーボン、グラファイト、ポリビニルブチラール、アクリロニトリルブタジエンゴム、木粉等が挙げられる。
離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
カップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。
難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;アンチモン化合物、ハロゲン化合物、リン化合物、窒素化合物、ホウ素化合物等が挙げられる。
かかる製造方法により、抄造プリプレグ成形体部分又は樹脂組成物成形体部分と、これらの少なくとも一方の成形体部分に隣接し、前記抄造材料中の成分及び前記樹脂組成物中の成分を含む中間成形体部分と、を備えたFRP成形品が製造される。
かかる製造方法としては、例えば後述する第1〜3の実施形態が好適に挙げられる。
図1は、第1の実施形態の製造方法によって製造されたFRP成形品を示している。
図1に示すFRP成形品10は、仮想線(―・―)で区切られる3つの部分からなり、第1の成形体部分12、第2の成形体部分16、及び、第1の成形体部分12と第2の成形体部分16とにそれぞれ隣接する第3の成形体部分14を有する。
第1の成形体部分12は、抄造プリプレグ成形体部分(第1の樹脂と繊維とを含有する硬化物:抄造プリプレグの完全硬化物)から構成される。すなわち、第1の成形体部分12では、第1の樹脂に由来する樹脂マトリックスに繊維が分散している。
第2の成形体部分16は、樹脂組成物成形体部分(第2の樹脂を含有する硬化物)から構成される。すなわち、第2の成形体部分16には、第2の樹脂に由来する樹脂マトリックスが形成されている。
第3の成形体部分14は、抄造材料と樹脂組成物とが混ざり合う中間成形体部分から構成される。
本工程(i)では、上記の抄造材料から分散媒を除去して作製される素形体を、乾燥させて抄造プリプレグを得る。すなわち、抄造法により抄造プリプレグを得る。
この抄造プリプレグの完全硬化物(第1の成形体部分12)を備えるため、FRP成形品10においては、機械的強度等の機械特性がより高められる。かかる効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、繊維(好ましくは長繊維)同士の絡み合いが形成されているため、であると考えられる。
・抄造材料を調製する操作について
上述した第1の樹脂と、繊維と、必要に応じて任意成分(高分子凝集剤を除く。)と、を分散媒に加えて混合し、分散液を調製する。
前記の原料を分散媒に分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ディスパーザー、ホモジナイザー等で撹拌する方法が挙げられる。
その後、前記分散液に、好ましくは高分子凝集剤を添加する。尚、任意成分としてイオン交換能を有する粉末状物質を添加した場合、この粉末状物質の効果により、第1の樹脂と繊維とが凝集状態を形成しやすくなり、分散液中の原料がフロック状に、よりいっそう凝集しやすくなる。
以上のようにして、分散媒中に原料が凝集しつつ分散した抄造材料が調製される。
次いで、底面にスクリーン(メッシュ)が配置されたチャンバー(抄造槽)に、抄造材料を入れて、スクリーンを介して分散媒を除去する。これにより、凝集物と分散媒とが固液分離される(抄造操作)。
その後、チャンバーから凝集物を取り出すことにより、素形体が得られる。
次いで、得られた素形体を、乾燥炉に入れて乾燥させることにより、分散媒をさらに除去する。この際の乾燥温度は、好ましくは50〜70℃とされる。
以上のようにして、第1の樹脂に由来する樹脂マトリックスに繊維及び任意成分が分散した抄造プリプレグが得られる。
本工程(ii)では、第1−工程(i)で得られた抄造プリプレグに、上記の樹脂組成物を接触させた状態で、前記抄造プリプレグ及び前記樹脂組成物を成形する。これによって、FRP成形品10が得られる。
第1−工程(ii)は、例えば以下のようにして行われる。
金型内で、一方の熱プレート上に、第1−工程(i)で得られた抄造プリプレグを配置する。そして、前記抄造プリプレグの一方の全面に接触するように、前記抄造プリプレグと他方の熱プレートとの間に樹脂組成物を注入等によって配置する。
次いで、金型内にある抄造プリプレグ及び樹脂組成物を加熱しつつ加圧する。その際、好ましくは、熱プレートで抄造プリプレグを押圧するように、金型内にある抄造プリプレグ及び樹脂組成物を加圧する。これによって、第3の成形体部分14がより形成されやすくなる。
前記の加熱条件として、温度は、使用原料等によって適宜決定され、例えばフェノール樹脂が用いられている場合、150〜200℃とすることが好ましく、160〜180℃とすることがより好ましい。
前記の加圧条件として、圧力は、10〜80MPaとすることが好ましく、30〜60MPaとすることがより好ましい。加圧時間は、好ましくは1〜10分間程度とされる。
かかる第1の実施形態の製造方法により製造されるFRP成形品10は、隣接する両方の成形体部分(第1の成形体部分12、第2の成形体部分16)に含まれる成分が混ざり合った中間成形体部分(第3の成形体部分14)を備えるため、抄造プリプレグの完全硬化物単独、及び樹脂組成物の硬化物単独に比べて、曲げ強度等の機械特性がより高められている。
第1の実施形態の製造方法により、例えば、第1の成形体部分12の厚さが、好ましくは100〜4000μm、第2の成形体部分16の厚さが、好ましくは1000〜4000μm、第3の成形体部分14の厚さが、好ましくは50〜300μmとされるFRP成形品10を製造できる。
例えば、第3の成形体部分14は、第1の樹脂に由来する樹脂マトリックスに繊維が分散しているところに、第2の成形体部分16に含まれる成分(第2の樹脂、任意成分)が混ざり合うことにより形成されている。あるいは、第3の成形体部分14は、第1の成形体部分12に含まれる繊維と、第2の成形体部分16に含まれる第2の樹脂及び任意成分と、が混ざり合うことにより形成されている。
このことは、本発明者らによる光学顕微鏡(落射画像、偏光フィルター越の画像)観察、及び、EDS(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)測定によって確認されている。
図2は、FRP成形品10の断面を示す写真であり、前記写真の左半分が光学顕微鏡の落射画像、前記写真の右半分が光学顕微鏡の偏光フィルター越の画像である。
このFRP成形品10は、下記の抄造材料と樹脂組成物とを用い、上記<第1の実施形態>によって製造されたものである。
樹脂組成物:第2の樹脂としてノボラック型フェノール樹脂と、第2の繊維としてガラス繊維と、ヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミンと略す)と、ステアリン酸カルシウムと、酸化マグネシウムと、カーボンブラックと、ステアリン酸マグネシウムと、を含有する組成物。
製造されたFRP成形品に対するEDS測定(マッピング画像)から、第1の成形体部分12と第2の成形体部分16との間に位置する部分(第3の成形体部分14)において、樹脂組成物にのみ含まれるMgの存在が認められた。
すなわち、この界面13で、第1の成形体部分12を構成する樹脂マトリックス(レゾール型フェノール樹脂)と、抄造プリプレグに含浸して硬化した樹脂マトリックス(ノボラック型フェノール樹脂とヘキサミンとの縮合物)と、が接している。
すなわち、この界面15で、第1の成形体部分12及び第3の成形体部分14に含まれる繊維12f(アラミド繊維)と、第2の成形体部分16に含まれる繊維16f(ガラス繊維)と、が接している。
図3において、第1の成形体部分12及び第3の成形体部分14に含まれる繊維12f(アラミド繊維)は、X−Y方向(面方向)に、平行かつランダムに配向している。加えて、繊維12f(アラミド繊維)は、T方向(厚さ方向)に、前記の平行かつランダムに配向した繊維12f(アラミド繊維)が積み重なるように配向している。これにより、特に、X−Y方向(面方向)の引張りに対しての強度が高められる。
このように繊維12fが配向しているのは、第1の成形体部分12及び第3の成形体部分14の前駆体(硬化前の抄造プリプレグ)が抄造法によって作製されているため、である。
図4は、第2の実施形態の製造方法によって製造されたFRP成形品を示している。
図4に示すFRP成形品20は、仮想線(―・―)で区切られる2つの部分からなり、第2’の成形体部分26、及び、第3’の成形体部分24を有する。
第2’の成形体部分26は、樹脂組成物成形体部分(第2の樹脂と繊維とを含有する硬化物)から構成される。すなわち、第2’の成形体部分26では、第2の樹脂に由来する樹脂マトリックスに繊維が分散している。
第3’の成形体部分24は、抄造材料と樹脂組成物とが混ざり合う中間成形体部分から構成される。
第2−工程(i)は、上述した第1−工程(i)と同様にして行えばよい。
第2−工程(ii)では、第2−工程(i)で得られた抄造プリプレグに、上記の樹脂組成物を接触させた状態で、前記抄造プリプレグ及び前記樹脂組成物を成形する。これによって、FRP成形品20が得られる。
第2−工程(ii)における成形は、例えば下記2a)〜2c)を適宜採用する以外は、第1−工程(ii)における成形と同様にして行えばよい。下記2a)〜2c)を適宜採用して成形を行うことによって、抄造プリプレグの全体に樹脂組成物が充分に行き渡って硬化した、第3’の成形体部分24が形成されやすくなる。
2b)金型内で抄造プリプレグに接触するように樹脂組成物を注入等してから、加熱・加圧するまでの放置時間を長くする。
2c)加熱条件又は加圧条件を変更する。
FRP成形品20において、第3’の成形体部分24は、抄造材料と樹脂組成物とが混ざり合う中間成形体部分から構成されている。すなわち、第3’の成形体部分24は、第1の樹脂に由来する樹脂マトリックスに繊維が分散しているところに、第2’の成形体部分26に含まれる成分(樹脂組成物中の成分)が混ざり合うことにより形成されている。
また、FRP成形品20は、第2’の成形体部分26と第3’の成形体部分24との間に、界面25が存在する。この場合、第2’の成形体部分26の繊維と、第3’の成形体部分24の繊維と、は配向状態が相違し、両方の繊維はこの界面25で接している。第3’の成形体部分24は、硬化前の抄造プリプレグが抄造法によって作製されていることから、第3’の成形体部分24の繊維は、面方向に、平行かつランダムに配向し、かつ、厚さ方向に、前記の平行かつランダムに配向した繊維が積み重なるように配向している。これに対して、第2’の成形体部分26の繊維は、面方向及び厚さ方向にランダムに配向している。
かかる第2の実施形態の製造方法により製造されるFRP成形品20は、抄造プリプレグの完全硬化物単独、及び樹脂組成物の硬化物単独に比べて、曲げ強度等の機械特性がより高められている。
第2の実施形態の製造方法により、例えば、第2’の成形体部分26の厚さは、好ましくは100〜4000μm、第3’の成形体部分24の厚さは、好ましくは100〜300μmとされるFRP成形品20を製造できる。
第3’の成形体部分24の厚さ/第2’の成形体部分26の厚さ、で表される厚さの比率は、好ましくは0.001〜3、より好ましくは0.001〜2、さらに好ましくは0.001〜1とされる。かかる厚さの比率が前記の好ましい範囲内であれば、第2’の成形体部分26と、第3’の成形体部分24と、の積層構造が容易に形成される。
図5は、第3の実施形態の製造方法によって製造されたFRP成形品を示している。
図5に示すFRP成形品30は、仮想線(―・―)で区切られる2つの部分からなり、第1”の成形体部分32、及び、第3”の成形体部分34を有する。
第1”の成形体部分32は、抄造プリプレグ成形体部分(第1の樹脂と繊維とを含有する硬化物:抄造プリプレグの完全硬化物)から構成される。すなわち、第1”の成形体部分32では、第1の樹脂に由来する樹脂マトリックスに繊維が分散している。
第3”の成形体部分34は、抄造材料と樹脂組成物とが混ざり合う中間成形体部分から構成される。
第3−工程(i)は、上述した第1−工程(i)と同様にして行えばよい。
第3−工程(ii)では、第3−工程(i)で得られた抄造プリプレグに、上記の樹脂組成物を接触させた状態で、前記抄造プリプレグ及び前記樹脂組成物を成形する。これによって、FRP成形品30が得られる。
第3−工程(ii)における成形は、例えば下記3a)〜3c)を適宜採用する以外は、第1−工程(ii)における成形と同様にして行えばよい。下記3a)〜3c)を適宜採用して成形を行うことによって、樹脂組成物の全量が抄造プリプレグに含浸して硬化した、第3”の成形体部分34が形成されやすくなる。
3b)金型内で抄造プリプレグに接触するように樹脂組成物を注入等してから、加熱・加圧するまでの放置時間を短くする。
3c)加熱条件又は加圧条件を変更する。
FRP成形品30において、第3”の成形体部分34は、抄造材料と樹脂組成物とが混ざり合う中間成形体部分から構成されている。
例えば、第3”の成形体部分34は、第1の樹脂に由来する樹脂マトリックスに繊維が分散しているところに、樹脂組成物中の成分(第2の樹脂、任意成分)が混ざり合うことにより形成されている。あるいは、第3”の成形体部分34は、第1”の成形体部分32に含まれる繊維と、樹脂組成物中の成分(第2の樹脂、任意成分)と、が混ざり合うことにより形成されている。
また、FRP成形品30は、第1”の成形体部分32と第3”の成形体部分34との間に、界面33が存在する。この場合、第1”の成形体部分32を構成する樹脂マトリックスと、抄造プリプレグに含浸して硬化した樹脂マトリックスと、は相違し、両方の樹脂マトリックスはこの界面33で接している。
かかる第3の実施形態の製造方法により製造されるFRP成形品30は、抄造プリプレグの完全硬化物単独、及び樹脂組成物の硬化物単独に比べて、曲げ強度等の機械特性がより高められている。
第3の実施形態の製造方法により、例えば、第1”の成形体部分32の厚さは、好ましくは100〜4000μm、第3”の成形体部分34の厚さは、好ましくは100〜300μmとされるFRP成形品30を製造できる。
第3”の成形体部分34の厚さ/第1”の成形体部分32の厚さ、で表される厚さの比率は、好ましくは0.001〜3、より好ましくは0.001〜2、さらに好ましくは0.001〜1とされる。かかる厚さの比率が前記の好ましい範囲内であれば、第1”の成形体部分32と、第3”の成形体部分34と、の積層構造が容易に形成される。
上述した本実施形態では、工程(ii)において、工程(i)で得られた抄造プリプレグの一方の全面に接触するように樹脂組成物を注入等して、シート状のFRP成形品が製造されていたが、これに限定されず、抄造プリプレグ上の一部に接触するように樹脂組成物を注入等によって配置してもよい。例えば、抄造プリプレグに、部分的に又はパターン形状に接触するように樹脂組成物を配置し、抄造プリプレグ成形体部分上に中間成形体部分を介してリブ形状等の樹脂組成物成形体部分を設けることもできる。
あるいは、工程(ii)において、工程(i)で得られた抄造プリプレグの両方の面に接触するように樹脂組成物を注入等し、抄造プリプレグ成形体部分の両面に、その全面にもしくは部分的に又はパターン形状に、中間成形体部分を介して樹脂組成物成形体部分を設けることもできる。
加えて、本実施形態のFRP成形品の製造方法は、用途に応じて要求特性を容易に付与でき、形状の自由度が高いことからも有用な方法である。
(実施例1)
上述した<第1の実施形態>の製造方法と同様にして、第1の成形体部分12、第2の成形体部分16、及び、第1の成形体部分12と第2の成形体部分16とにそれぞれ隣接する第3の成形体部分14を有するFRP成形品10を製造した。
・抄造材料を調製する操作について
レゾール型フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製、品番PR−51723)45体積%[抄造材料の固形分総量(100体積%)に対し、以下同じ]と、繊維の平均径12μm、繊維の平均の長さ3mmのアラミド繊維(帝人株式会社製、品番T32PNW)50体積%と、アラミドパルプ(デュポン社製、品番パラアラミドアルプ)5体積%と、ハイドロタルサイト(堺化学工業株式会社製、品番STABIACE HT−1)5体積%と、を水に加え、ディスパーザーで20分間撹拌し、分散液(固形分濃度0.6質量%)を得た。
次に、得られた分散液に、あらかじめ水に溶解させた凝集剤(ポリエチレンオキシド、分子量1000000)を、前記分散液の固形分100質量部に対して0.5質量部を添加し、フロック状に凝集させて、抄造材料を調製した。
次いで、抄造材料を、40メッシュの金属網(スクリーン)でろ過し、凝集物を圧力3MPaで脱水プレスして、水を除去した。
その後、凝集物を取り出して、素形体を得た。
次いで、得られた素形体を、50℃で5時間乾燥させて、シート状の抄造プリプレグを得た。
・樹脂組成物を調製する操作について
成形材料として、ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製、品番A−1084 )と、硬化剤であるヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミンと略す)と、ガラス繊維(日東紡績株式会社製カットファイバー、繊維の平均径11μm)と、 離型剤であるステアリン酸カルシウムと、硬化助剤である酸化マグネシウムと、着色剤であるカーボンブラックと、を含有する樹脂組成物、を以下のようにして調製した。
成形材料全体に対して、樹脂マトリックスを構成するものとしてノボラック型フェノール樹脂とヘキサミンとの混合物47質量%(ノボラック型フェノール樹脂40質量%、ヘキサミン7質量%)と、ガラス繊維50質量%と、硬化助剤1質量%と、着色剤1質量%と、離型剤1質量%と、を配合し、予備混合して混合物を得た。得られた混合物を、105℃で、回転速度の異なった加熱ロールにより溶融混練し、シート状に冷却したものを粉砕して、顆粒状の樹脂組成物を調製した。
金型として、上下一対の熱プレートを有する金型を用いた。
一方の熱プレート上に、工程(i)で得られた抄造プリプレグを配置した。次に、前記抄造プリプレグの一方の全面に接触するように、前記抄造プリプレグと他方の熱プレートとの間に樹脂組成物を注入した。
次いで、金型内にある抄造プリプレグ及び樹脂組成物を加熱しつつ加圧した。その際、熱プレートで抄造プリプレグを押圧するように、金型内にある抄造プリプレグ及び樹脂組成物を加圧した。
前記の加熱条件として温度180℃、加圧条件として圧力30MPa、加圧時間を10分間に設定して成形を行った。
これによって、縦80mm×横50mm×高さ(厚さ)4mm(このうち第1の成形体部分12(抄造プリプレグ成形体部分のみ)の厚さ1mm)のFRP成形品10を得た。
第1の成形体部分12(抄造プリプレグ成形体部分のみ)の厚さを0.5mmとした他は、実施例1と同様にして、縦80mm×横50mm×高さ(厚さ)4mmのFRP成形品10を得た。
第1の成形体部分12(抄造プリプレグ成形体部分のみ)の厚さを0.25mmとした他は、実施例1と同様にして、縦80mm×横50mm×高さ(厚さ)4mmのFRP成形品10を得た。
実施例1で用いられた金型内で、樹脂組成物のみを、実施例1と同じ加熱条件、加圧条件、加圧時間で加熱しつつ加圧して成形を行った。
これによって、縦80mm×横50mm×高さ(厚さ)4mmの樹脂組成物成形体を得た。
実施例1の工程(i)で得られた抄造プリプレグを、実施例1と同じ加熱条件、加圧条件、加圧時間で加熱しつつ加圧して成形を行った。
これによって、縦80mm×横50mm×高さ(厚さ)4mmの抄造プリプレグ成形体を得た。
各例の製造方法によって製造された成形品に対し、図6に示すような3点曲げ試験を行い、曲げ強度、曲げ弾性率をそれぞれ測定した。その結果を表1に示した。
曲げ強度、曲げ弾性率は、ISO178に準拠した方法により測定した。
かかる状態の試験片40の上面40c中央に、荷重(太矢印)が掛けられることにより、曲げ試験が行われる。
図6は、試験片40として、実施例の製造方法によって製造されたFRP成形品10を用いた場合を示している。この場合、試験片40の下面40d側に抄造プリプレグ成形体部分42、上面40c側に樹脂組成物成形体部分46、これらの間に中間成形体部分44が位置するように配置される。
Claims (3)
- 第1の樹脂と繊維と分散媒とを含有する抄造材料から分散媒を除去して作製される素形体を、乾燥させて抄造プリプレグを得る工程(i)、並びに、
前記抄造プリプレグに、第2の樹脂を含有する樹脂組成物を接触させた状態で、前記抄造プリプレグ及び前記樹脂組成物を成形して、抄造プリプレグ成形体部分又は樹脂組成物成形体部分と、これらの少なくとも一方の成形体部分に隣接し、前記抄造材料中の成分及び前記樹脂組成物中の成分を含む中間成形体部分と、を備えた繊維強化プラスチック成形品を得る工程(ii)
を有する、繊維強化プラスチック成形品の製造方法。 - 前記工程(ii)において、前記中間成形体部分が、前記抄造プリプレグ成形体部分と前記樹脂組成物成形体部分とにそれぞれ隣接するように前記の成形を行う、請求項1に記載の繊維強化プラスチック成形品の製造方法。
- 前記工程(ii)において、前記中間成形体部分が、前記抄造プリプレグ成形体部分及び前記樹脂組成物成形体部分の一方の成形体部分に隣接するように前記の成形を行う、請求項1に記載の繊維強化プラスチック成形品の製造方法。
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