JP2017079737A - 油脂組成物とそれを用いた食品 - Google Patents

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Abstract

【課題】ケーキやパン等の製菓製パン用のフィリング、ナッペまたはトッピングにバタークリームやマーガリン、ショートニングを用いた場合に、骨格が強固であるため残存して存在感があり、喫食時には、口溶けが良好で、ケーキやパン等の製菓製パン、特にスポンジケーキと一緒にフィリング、ナッペ、またはトッピングとして喫食した場合には同時に溶解し、製菓製パン生地との相性が良い油脂組成物とそれを用いた食品の提供。【解決手段】製菓製パンのフィリング、ナッペ、トッピングに、バタークリーム、マーガリン、ショートニングとして使用される油脂組成物であって、2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの含有量が油脂全量に対して15〜30質量%、トリグリセリドP2Oの含有量が油脂全量に対して4〜12質量%未満、トリグリセリドLLL、MLL、およびLMLの合計量が油脂全量に対して3.5〜10質量%である油脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、製菓製パンのフィリング、ナッペ、またはトッピングに、バタークリーム、マーガリン、またはショートニングとして使用される油脂組成物とそれを用いた食品に関する。
マーガリンやショートニング、これらに糖質、呈味剤、フレーバー等を添加し起泡させたバタークリームは、パン、あるいはケーキ等の製菓製パンにフィリングとして挟んだり、製菓製パンの上部に絞りトッピングとしたり、表面を覆うようにナッペされて喫食されている。例えばマーガリンやショートニング等をそのまま、あるいはごく少量起泡させ挟むことや、前述のようにこれらマーガリンやショートニングに糖質、呈味剤、フレーバー等を添加し起泡させバタークリームとして挟んで喫食されている。
このようなバタークリーム等をフィリングとして含んだ製菓製パンが製品として販売される場合、流通時にフィリングがきれいに残存していることが望まれている。
バタークリーム等をフィリングとして製菓製パンに挟んだ場合、製菓製パンの生地が多孔質であること、生地重量や、他素材(ジャム等)などにより荷重がかかることから、バタークリーム等が潰れずにきれいに残存するには、これに強固な骨格があることが必要である。
また、フィリングとしてのバタークリームやマーガリン、ショートニングは、喫食する際に口溶けが良いことが求められている。しかし、バタークリーム等を、フィリングとして含んだ製菓製パンを喫食する場合には、製菓製パンの生地との相性が必要であり、フィリングとしてのバタークリーム等と、生地とが同時に口中で溶解することが求められている。例えば、フィリングが先に口中で溶解し、生地だけが口中に残ってしまうことや、逆に口中で生地が先になくなりフィリングが残存してしまうと、一緒に味わうことができない。
しかし、生地に挟んで使用されるフィリングの場合、フィリングとしてのバタークリームやマーガリン、ショートニングの骨格がしっかりしていると、製菓製パンと喫食したときにフィリングだけが口中に残存し、生地と同時に口中で喪失しにくく、フィリングの強固な骨格と、生地との相性とを両立することは難しい。
従来、バタークリームの口溶けの改良を図るものとして、特許文献1〜4の技術が提案されている。
特許文献1、2には、構成脂肪酸が、炭素数14以下の飽和脂肪酸および炭素数16以上の飽和脂肪酸である3飽和トリグリセリドなどの油脂組成を特定範囲とすることが提案されている。しかし、ラウリン酸やラウリン酸とミリスチン酸とからなる3飽和トリグリセリドの含有量が少なく、口溶けと骨格のバランスを取ることが難しい。
特許文献3には、1位と2位または2位と3位にパルミチン酸、3位または1位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドPPOと、1位と3位にパルミチン酸、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドPOPとの質量比(PPO/POP)などの油脂組成を特定範囲とすることが提案されている。しかし、この質量比、すなわちトリグリセリドの対称性等に起因して、製菓製パンに挟んだ場合、骨格が十分なものとするのが難しい。
また、ビスケットのサンドクリーム等に使用するものとして特許文献4に記載の技術が提案されているが、PPOとPOPの合計としてのP2O量が多いこと等に起因し、良好な口溶けを得ることが難しい。
国際公開第2012/121010号 特開2013−153758号公報 国際公開第2009/150951号 国際公開第2010/026928号
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、ケーキやパン等の製菓製パンに挟んだり、被覆したり、絞ったりするフィリング、ナッペまたはトッピングにバタークリームやマーガリン、ショートニングを用いた場合に、骨格が強固であるため残存して存在感があり、喫食時には、フィリング、ナッペ、またはトッピングとしてのバタークリームやマーガリン、ショートニングの口溶けが良好で、さらにケーキやパン等の製菓製パン、特にスポンジケーキと一緒にフィリング、ナッペ、またはトッピングとしてのバタークリームやマーガリン、ショートニングを喫食した場合には同時に溶解し、製菓製パン生地との相性が良い油脂組成物とそれを用いた食品を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明の油脂組成物は、製菓製パンのフィリング、ナッペ、またはトッピングに、バタークリーム、マーガリン、またはショートニングとして使用される油脂組成物であって、2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの含有量が油脂全量に対して15〜30質量%、P2Oの含有量が油脂全量に対して4質量%以上12質量%未満(P2Oの含有量は、PPOおよびPOPの合計量であり、PPOは、1位と2位または2位と3位にパルミチン酸、3位または1位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドであり、POPは、1位と3位にパルミチン酸、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドであり、Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸を示す。)、LLL、MLL、およびLMLの合計量が油脂全量に対して3.5〜10質量%(LLLは、1位と2位と3位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドであり、MLLは、1位または3位にミリスチン酸、2位と3位または1位と2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドであり、LMLは、1位と3位にラウリン酸、2位にミリスチン酸が結合されたトリグリセリドであり、Lはラウリン酸、Mはミリスチン酸を示す。)であることを特徴としている。
本発明の菓子またはパンは、上記の油脂組成物を含むバタークリーム、マーガリン、またはショートニングを、フィリング、ナッペ、またはトッピングに用いたものである。
本発明によれば、ケーキやパン等の製菓製パンに挟んだり、被覆したり、絞ったりするフィリング、ナッペまたはトッピングとしてバタークリームやマーガリン、ショートニングを場合には、骨格が強固であるため残存して存在感があり、喫食時には、フィリング、ナッペまたはトッピングとしてのバタークリームやマーガリン、ショートニングの口溶けが良好で、さらにケーキやパン等の製菓製パン、特にスポンジケーキと一緒にフィリングとしてのバタークリームやマーガリン、ショートニングを喫食した場合には同時に溶解し、製菓製パン生地との相性が良い。
以下の記述において、P2Oは、PPOおよびPOPを示す。PPOは、1位と2位または2位と3位にパルミチン酸、3位または1位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドを示し、POPは、1位と3位にパルミチン酸、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドを示し、Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸を示す。LLLは、1位と2位と3位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドを示し、MLLは、1位または3位にミリスチン酸、2位と3位または1位と2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドを示し、LMLは、1位と3位にラウリン酸、2位にミリスチン酸が結合されたトリグリセリドを示し、Lはラウリン酸、Mはミリスチン酸を示す。
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.油脂組成物
本発明において、油脂中のトリグリセリドとは、1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合した構造を有するものである。トリグリセリドの1位、2位、3位とは、脂肪酸が結合した位置を表す。なお、トリグリセリドの構成脂肪酸の略称として、S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸、を用いる。
飽和脂肪酸Sは、油脂中に含まれるすべての飽和脂肪酸である。また、各トリグリセリド分子に結合している2つまたは3つの飽和脂肪酸Sは、同一の飽和脂肪酸であってもよいし、異なる飽和脂肪酸であってもよい。
飽和脂肪酸Sとしては、特に限定されないが、例えば、酪酸(4)、カプロン酸(6)、カプリル酸(8)、カプリン酸(10)、ラウリン酸(12)、ミリスチン酸(14)、パルミチン酸(16)、ステアリン酸(18)、アラキジン酸(20)、ベヘン酸(22)、リグノセリン酸(24)などが挙げられる。なお、上記の飽和脂肪酸についての括弧内の数値表記は、脂肪酸の炭素数である。
不飽和脂肪酸Uは、油脂中に含まれるすべての不飽和脂肪酸である。また、各トリグリセリド分子に結合している2つまたは3つの不飽和脂肪酸Uは、同一の不飽和脂肪酸であってもよいし、異なる不飽和脂肪酸であってもよい。
不飽和脂肪酸Uとしては、特に限定されないが、例えば、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、ヒラゴン酸(16:3)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、エイコセン酸(20:1)、エルカ酸(22:1)、セラコレイン酸(24:1)等が挙げられる。なお、上記不飽和脂肪酸についての括弧内の数値表記は、左側が脂肪酸の炭素数であり、右側が二重結合数を意味する。
本発明の油脂組成物に使用される油脂は、1位、2位、3位のすべてに飽和脂肪酸Sが結合した3飽和トリグリセリド(SSS)を含み、1分子のグリセロールに2分子の飽和脂肪酸Sと1分子の不飽和脂肪酸Uが結合した2飽和トリグリセリドとして、1位および3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ2位に不飽和脂肪酸Uが結合した対称型トリグリセリド(SUS)と、1位と2位、または2位と3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ3位または1位に不飽和脂肪酸Uが結合した非対称型トリグリセリド(SSU)とを含む。また、1分子のグリセロールに2分子の不飽和脂肪酸Uと1分子の飽和脂肪酸Sが結合した2不飽和トリグリセリドを含んでよく、1位、2位、3位のすべてに不飽和脂肪酸Uが結合した3不飽和トリグリセリド(UUU)を含んでよい。
2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの1、3位の構成脂肪酸は、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。2位がラウリン酸であるトリグリセリドとしては、例えば、SLS型トリグリセリド、SLU型トリグリセリド(位置異性体も含む)、ULU型トリグリセリド等が挙げられるが、特に限定されない。なお、「L」とは、トリグリセリドの構成脂肪酸であるラウリン酸を意味する。本発明の効果を得る点から、2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸である場合、炭素数4〜20の飽和脂肪酸であることが好ましい。2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合、炭素数16〜18の不飽和脂肪酸(パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)であることが好ましい。2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸である場合、上述の飽和脂肪酸(炭素数4〜20の飽和脂肪酸)と不飽和脂肪酸(炭素数16〜18の不飽和脂肪酸)であることが好ましい。
本発明の油脂組成物は、2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの含有量と、P2Oの含有量と、LLL、MLL、およびLMLの合計量を特定範囲とすることによって、ケーキやパン等の製菓製パンに挟んだり、被覆したり、絞ったりするフィリング、ナッペまたはトッピングとしてバタークリームやマーガリン、ショートニングに用いた場合には、骨格が強固であるため残存して存在感があり、喫食時には、バタークリームやマーガリン、ショートニングの口溶けが良好で、さらにケーキやパン等の製菓製パン、特にスポンジケーキと一緒にフィリング等としてのバタークリームやマーガリン、ショートニングを喫食した場合には同時に溶解し、製菓製パン生地との相性が良い。特に、フィリングとして、バタークリームやマーガリン、ショートニングの強固な骨格と、生地との相性とを両立することができる。
本発明の油脂組成物において、2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの含有量は、油脂全量に対して15〜30質量%である。2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドをこの範囲内で含有することで、P2Oの含有量と、LLL、MLL、およびLMLの合計量を特定範囲としたことと相俟って、骨格が強固でフィリング、ナッペ、トッピングの存在感があり、口溶けが良好で、生地との相性が良いバタークリームやマーガリン、ショートニングが得られる。この点を考慮すると、2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの含有量は、油脂全量に対して20〜30質量%であることが好ましい。
本発明の油脂組成物において、P2Oの含有量は、油脂全量に対して4質量%以上12質量%未満である。P2Oの含有量をこの範囲内とすることで、2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの含有量と、LLL、MLL、およびLMLの合計量を特定範囲としたことと相俟って、バタークリームやマーガリン、ショートニングの存在感、口溶け、生地との相性が良好となる。特に、良好な口溶けを得ることができる。
また、本発明の油脂組成物におけるPPOとPOPとの質量比(PPO/POP)は、1.0超〜2.2以下が好ましい。この範囲内であると、トリグリセリドの対称性が良く、製菓製パンに挟んだり、被覆したり、絞ったりした場合、骨格を十分なものとすることができる。
本発明の油脂組成物において、LLL、MLL、およびLMLの合計量は、油脂全量に対して3.5〜10質量%である。LLL、MLL、およびLMLの合計量をこの範囲内とすることで、口溶けと骨格のバランスが良好となり、口溶けが良くかつ生地に挟んだり、被覆したり、絞ったりした場合でも存在感のあるバタークリームやマーガリン、ショートニングが得られる。すなわち、飽和脂肪酸の中でもLLLやMLL、LMLといったトリグリセリドを含有することで、口溶けと骨格のバランスを取ることができる。これらの点を考慮すると、LLL、MLL、およびLMLの合計量は、油脂全量に対して5.0〜10質量%であることが好ましい。
本発明の油脂組成物において、3飽和トリグリセリドの含有量は、油脂全量に対して26〜40質量%であることが好ましい。3飽和トリグリセリドの含有量をこの範囲内とすることで、骨格が強固となりバタークリームやマーガリン、ショートニングの存在感があるものとすることができる。
本発明の油脂組成物において、飽和脂肪酸の含有量は、油脂全量に対して40〜60質量%であることが好ましい。飽和脂肪酸の含有量をこの範囲内とすることで、骨格が強固となりバタークリームやマーガリン、ショートニングの存在感があるものとすることができる。
本発明の油脂組成物において、2飽和トリグリセリドおよび3飽和トリグリセリドの合計量は、油脂全量に対して45〜65質量%であることが好ましい。2飽和トリグリセリドおよび3飽和トリグリセリドの合計量をこの範囲内とすることで、口溶けおよび生地との相性が良好となり、骨格とのバランスの良いバタークリームやマーガリン、ショートニングが得られる。
本発明の油脂組成物は、油脂の構成脂肪酸としてトランス脂肪酸を含んでもよく、含まなくてもよいが、トランス脂肪酸の摂取量が多くなると、人体に摂取された際のLDLコレステロールが増加しうる。よって、これを抑制しやすい点から、本発明においては、油脂の構成脂肪酸中のトランス脂肪酸の含有量は、油脂の構成脂肪酸全体の質量に対して10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましく、3質量%未満であることが最も好ましい。
本発明の油脂組成物の製造に用いられる油脂としては、特に限定されないが、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、シア脂、サル脂、カカオ脂、豚脂(ラード)、牛脂、乳脂、それらの分別油またはそれらの加工油(硬化およびエステル交換反応のうち1つ以上の処理がなされたもの)等が挙げられる。油脂中の2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの含有量と、P2Oの含有量と、LLL、MLL、およびLMLの合計量を適宜調整するために、これらの油脂としては、1種あるいは2種以上を選択して含有させることが好ましい。
本明細書において、ラウリン系油脂(a)およびパーム系油脂(b)は次のものを意味する。
ラウリン系油脂(a)は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30質量%以上、好ましくは40〜55質量%、より好ましくは45〜50質量%である。このようなラウリン系油脂(a)としては、パーム核油、ヤシ油、これらの分別油、硬化油、エステル交換油脂等が挙げられる。
パーム系油脂(b)は、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35質量%以上である。パーム系油脂(b)としては、パーム油、パーム分別油、これらの硬化油、エステル交換油脂等が挙げられる。パーム分別油としては、硬質部、軟質部、中融点部等が挙げられる。
本発明の油脂組成物は、好ましい態様において、2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの含有量が20〜30質量%であるエステル交換油脂(A)および極度硬化処理を経たラウリン系油脂(a)を含有する。これにより、2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの含有量と、P2Oの含有量と、LLL、MLL、およびLMLの合計量を本発明の範囲とすることが容易であるとともに、口溶けと生地との相性がより向上する。例えば、エステル交換油脂(A)5〜60質量%、極度硬化処理を経たラウリン系油脂(a)5〜30質量%、およびその他の油脂を添加して、本発明の油脂組成物を調製することができる。
エステル交換油脂(A)は、次のラウリン系油脂(a)を40質量%超60質量%以下と、パーム系油脂(b)を60質量%未満40質量%以上とをエステル交換反応して得られたものが好ましく、特にラウリン系油脂(a)を45質量%超60質量%以下と、パーム系油脂(b)を55質量%未満40質量%以上とをエステル交換反応して得られたものがより好ましい。
エステル交換油脂(A)の原料に使用されるラウリン系油脂(a)としては、パーム核油、ヤシ油、これらの分別油、硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
エステル交換油脂(A)の原料に使用されるパーム系油脂(b)としては、パーム油、パーム分別油、これらの硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。パーム分別油としては、硬質部、軟質部、中融点部等を用いることができる。
ラウリン系油脂(a)と、パーム系油脂(b)とのエステル交換反応には、エステル交換触媒として化学触媒や酵素触媒が用いられる。化学触媒としてはナトリウムメチラートや水酸化ナトリウム等が用いられ、酵素触媒としてはリパーゼ等が用いられる。リパーゼとしてはアスペルギルス属、アルカリゲネス属等のリパーゼが挙げられ、イオン交換樹脂、ケイ藻土、セラミック等の担体上に固定し固定化したものを用いても、粉末の形態として用いても良い。また位置選択性のあるリパーゼ、位置選択性のないリパーゼのいずれも用いることができるが、位置選択性のないリパーゼを用いることが好ましい。
エステル交換反応に化学触媒を用いる場合、触媒を油脂質量の0.05〜0.15質量%添加し、減圧下で80〜120℃に加熱し、0.5〜1.0時間攪拌することでラウリン系油脂(a)とパーム系油脂(b)とのエステル交換反応が平衡状態となって完了し、エステル交換油脂(A)を得ることができる。また酵素触媒を用いる場合、リパーゼ等の酵素触媒を油脂質量の0.01〜10質量%添加し、40〜80℃でエステル交換反応を行うことによりエステル交換反応が平衡状態となって完了し、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドのうち、対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)とのエステル交換油脂(A)中における質量比(SUS/SSU)が0.45〜0.55の範囲内となる。
エステル交換反応はカラムによる連続反応、バッチ反応のいずれの方法で行うこともできる。エステル交換反応後、必要に応じて脱色、脱臭等の精製を行うことができる。
エステル交換油脂(A)は、ヨウ素価が25〜40であることが好ましく、30〜38であることがより好ましい。またエステル交換油脂(A)は2位にラウリン酸が結合したトリグリセリドの含有量が、10〜30質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。エステル交換油脂(A)は、3飽和トリグリセリドの含有量が25〜40質量%であることが好ましく、25〜30質量%であることがより好ましい。エステル交換油脂(A)は、LLL、MLL、およびLMLの合計量が0.2〜5質量%であることが好ましく、2〜5質量%であることがより好ましい。
上記物性値とするには、エステル交換油脂(A)に配合する極度硬化油は、15質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下、5質量%以下とすることがより好ましい。口溶けの点を考慮すると、エステル交換油脂に極度硬化油は、配合しないことがより好ましい。
エステル交換油脂(A)とともに使用される、極度硬化処理を経たラウリン系油脂(a)としては、その原料油脂の加工工程において極度硬化処理したものであれば特に限定されるものではなく、例えば、非エステル交換油脂であるラウリン系油脂(a)に極度硬化処理したものであってもよく、非エステル交換油脂であるラウリン系油脂(a)に極度硬化処理した後、さらにエステル交換処理したものであってもよく、非エステル交換油脂であるラウリン系油脂(a)にエステル交換処理した後、さらに極度硬化処理したものであってもよい。極度硬化処理を経たラウリン系油脂(a)のヨウ素価は、0.1〜5が好ましく、0.5〜5がさらに好ましい。
極度硬化処理を経たラウリン系油脂(a)は、口溶けがより良好となることから、融点が、25〜37℃であることが好ましく、28〜37℃以下であることがより好ましく、30〜37℃以下であることがさらに好ましい。
2.油脂組成物を用いたマーガリン、ショートニング、バタークリーム
油相中に本発明の油脂組成物を調製し、この油脂組成物を用いマーガリン、ショートニングなどの可塑性油脂や、バタークリームを調製することができる。
この可塑性油脂は、油相中に本発明の油脂組成物を含有するものである。可塑性油脂における本発明の油脂組成物の含有量としては、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。
この可塑性油脂は、水相を実質的に含有しない形態と、水相を含有する形態をとることができる。水相を含有する形態としては油中水型、水中油型、油中水中油型、水中油中水型が挙げられ、油相の含有量は、好ましくは60〜99.4質量%、より好ましくは65〜98質量%であり、水相の含有量は、好ましくは0.6〜40質量%、より好ましくは2〜35質量%である。水相を含有する形態としては油中水型が好ましく、マーガリンが挙げられる。本明細書においてマーガリンとは、日本農林規格のマーガリンまたはファットスプレッドに該当するものである。
また水相を実質的に含有しない形態としてはショートニングが挙げられる。ここで「実質的に含有しない」とは日本農林規格のショートニングに該当する、水分(揮発分を含む。)の含有量が0.5質量%以下のことである。
この可塑性油脂は、水以外に、従来の公知の成分を含んでもよい。公知の成分としては、特に限定されないが、例えば、乳、乳製品、蛋白質、呈味剤(乳製品酵素処理物等)、アミノ酸、糖質、塩類、酸味料、pH調整剤、抗酸化剤、香辛料、着色成分、香料(フレーバー)、増粘剤、乳化剤、酒類等が挙げられる。乳としては、牛乳等が挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、生クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等が挙げられる。蛋白質としては、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、小麦蛋白等の植物蛋白等が挙げられる。糖質としては、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等)、オリゴ糖、糖アルコール、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、デンプン、デンプン分解物、イヌリン(アガベイヌリン等)の多糖類等が挙げられる。抗酸化剤としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコトリエノール、リグナン、ユビキノン類、キサンチン類、オリザノール、植物ステロール、カテキン類、ポリフェノール類、茶抽出物等が挙げられる。香辛料としては、カプサイシン、アネトール、オイゲノール、シネオール、ジンゲロン等が挙げられる。着色成分としては、カロテン、アナトー、アスタキサンチン等が挙げられる。香料としては、バターフレーバー、ミルクフレーバー等が挙げられる。増粘剤としては、カラギナン、キサンタンガム、アラビアガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
この可塑性油脂は、公知の方法により製造することができる。例えば水相を含有する形態のものは、本発明の油脂組成物を含む油相と水相とを適宜に加熱し混合して乳化した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。水相を含有しない形態のものは、本発明の油脂組成物を含む油相を加熱した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。冷却混合機による急冷捏和後には、必要に応じて窒素ガスなどの不活性ガスを吹き込むこともできる。また急冷捏和後に熟成(テンパリング)してもよい。
本発明の油脂組成物を用いたバタークリーム、マーガリン、ショートニングは、製菓製パンのフィリング、ナッペ、トッピングに使用される。
本発明によれば、これらに使用した際に、喫食時には、バタークリームやマーガリン、ショートニングの口溶けが良好で、さらにケーキやパン等の製菓製パン、特にスポンジケーキと一緒にバタークリームやマーガリン、ショートニングを喫食した場合には同時に溶解し、製菓製パン生地との相性が良い。スポンジケーキとしては、基本的には、穀粉と卵と糖とを質量比1:1:1で配合した生地であり、これらに油脂や起泡安定性を高めるために起泡剤や乳化脂や流動状ショートニングを加えたものであると好適である。当該比としては、スポンジケーキの形状等(スポンジ台、シート状、ブッセ)により相違し、例えば穀粉:卵:糖:油脂等(油脂、起泡剤、乳化脂、流動状ショートニング)が100:80〜250:80〜180:0〜80である。
さらに本発明によれば、ケーキやパン等の製菓製パンに挟んだり、被覆したり、絞ったりするフィリング、ナッペまたはトッピングとしてバタークリームやマーガリン、ショートニングを用いた場合には、骨格が強固であるため残存して存在感がある。ここでフィリング、ナッペまたはトッピングとしては、マーガリンやショートニングをそのままスプレッドとして用いることや、これら可塑性油脂をごく少量起泡させたもの、これら可塑性油脂に糖質、呈味剤、フレーバー等を添加し起泡させたバタークリームが挙げられる。
これらバタークリーム、マーガリン、ショートニングを製菓製パンに使用する方法としては、例えばフィリングとしては、注入、塗布、絞り、ナッペとしては塗布、トッピングとしては絞りなどが挙げられる。
バタークリームは、マーガリンやショートニング等の本発明の油脂組成物を用いた可塑性油脂と、所望により糖質等の呈味成分を加えて起泡させ、あるいはこの可塑性油脂を起泡させたものに糖質等の呈味成分などを配合したものである。
起泡(クリーミング)は、公知の方法によって行うことができる。例えば、電動式もしくは手動の泡立て器を用いて、比重が適度に軽くなるまで含気させることにより行うことができる。
バタークリームは、比重が好ましくは0.8以下、より好ましくは0.3〜0.7である。
バタークリームに配合する呈味成分としては、糖質、増粘剤、乳製品、卵類、果実、果汁、ジャム、カカオ及びカカオ製品、ナッツペースト、香辛料、コーヒーおよびコーヒー製品、酸味料、調味料、香料(フレーバー)、酒類等が挙げられる。糖質としては、液糖、粉糖、糖アルコール等であってよく、例えば、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等)、オリゴ糖、糖アルコール、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、デンプン、デンプン分解物、イヌリン(アガベイヌリン等)の多糖類、水あめ、異性化液糖等が挙げられる。増粘剤としては、カラギナン、キサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)などが挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、生クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等が挙げられる。卵類としては、全卵、卵黄、卵白、加工卵等が挙げられる。
バタークリームに呈味成分やそれ以外の成分を配合する場合は、これらの配合量は、通常、バタークリームに配合される範囲で特に制限なく配合することができる。バタークリームに糖質を配合する場合は、例えば、可塑性油脂100質量部に対して10〜200質量部の範囲内で配合することができる。
3.バタークリーム、マーガリン、ショートニングを用いた食品
本発明の油脂組成物を用いたバタークリーム、マーガリン、またはショートニングを含む食品としては、油脂組成物を含むバタークリーム、マーガリン、またはショートニングを、フィリング、ナッペ、またはトッピングに用いた菓子またはパンが挙げられる。本発明の油脂組成物を用いたバタークリーム、マーガリン、ショートニングは、骨格が強固であるため残存してフィリング、ナッペ、またはトッピングとしての存在感があり、菓子やパンに好適に用いることができる。特に、フィリングは、挟むため、生地の加重がかかることから、より好適である。そして喫食時には、バタークリームやマーガリン、ショートニングの口溶けが良好で、さらに菓子やパンと一緒にバタークリームやマーガリン、ショートニングを喫食した場合には同時に溶解し、製菓製パン生地との相性が良い。
パンとしては食パン、ドックパン、ロールパン、クロワッサン、菓子としては、スポンジケーキ、バターケーキ、シュー、パイ、ウエハース、ドーナツ、クッキー、ビスケット、クラッカー、ワッフル、ゴーフル、炭酸せんべいなどが挙げられる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(1)測定方法
2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの含有量、3飽和トリグリセリド(SSS)の含有量、P2Oの含有量(PPOおよびPOPの合計量、PPOとPOPとの質量比(PPO/POP))、LLL、MLL、およびLMLの合計量、飽和脂肪酸の含有量、2飽和トリグリセリドおよび3飽和トリグリセリドの合計量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)で測定し、それぞれ脂肪酸量を用いて計算にて求めた。なお、油脂全量を基準としている。
各油脂のヨウ素価は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1−2013ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」で測定した。 各油脂の融点は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「3.2.2.2−2013 融点(上昇融点)」で測定した。
(2)油脂組成物の製造
表3および表4に示すエステル交換油脂A1〜A4、エステル交換油脂B1、エステル交換油脂a1は次の方法で調製した。表1に示す配合で油脂を単独でまたは表1に示す割合で混合して110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、更に脱臭を行ってエステル交換油脂を得た。
尚、エステル交換油脂a1については、エステル交換油脂を得た後、水素添加し、極度硬化を行った。
エステル交換油脂A1〜A4、エステル交換油脂B1、エステル交換油脂a1の分析値も表1に併せて示した。
Figure 2017079737
表3および表4で使用したヤシ極度硬化油、パーム核極度硬化油、パーム核油のLLL、MLL、およびLMLの合計量は表2に示すとおりである。
Figure 2017079737
<マーガリンの製造>
表3および表4の油脂を80℃で溶解し混合して油脂組成物を得た。油脂組成物82質量部にモノグリセリン脂肪酸エステルを0.2質量部、ミルクフレーバー0.2質量部添加し、75℃に調温して油相とした。一方、水16.3質量部に脱脂粉乳1.5質量部を添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、該油相に該水相を添加し、プロペラ攪拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、パーフェクターによって急冷捏和して、下記の配合割合のマーガリンを得た。
〈マーガリンの配合〉
油脂組成物 82質量部
モノグリセリン脂肪酸エステル 0.2質量部
水 16.1質量部
脱脂粉乳 1.5質量部
ミルクフレーバー 0.2質量部
(3)評価
実施例および比較例の各試料について次の評価を行った。
<バタークリームの製造>
上記で得たマーガリンを15℃に調温した後、卓上ミキサー(Kitchen Aid社)を用いて、調温したマーガリン250gを多羽ホイッパーで速度1にて30秒クリーミングした後、比重0.5まで含気させ、さらに液糖(BRIX67)250gを添加し、比重0.65となるまで含気させ、バタークリームを得た。
〈バタークリームの配合〉
マーガリン 250質量部
液糖 250質量部
[口溶け]
上記で得たバタークリームの口溶けについてパネル10名で以下の基準により口溶けを評価した。
パネルは、五味(甘、酸、塩、苦、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
評価基準
◎:パネル10名中8名以上が良好であると評価した。
○:パネル10名中7〜5名が良好であると評価した。
△:パネル10名中4〜3名が良好であると評価した。
×:パネル10名中2名以下が良好であると評価した。
<ドックパンの製造>
下記の配合および製造条件によりドックパンを製造した。
まず、イーストを分散させた水、イーストフード、および油脂以外の材料をミキサーボールに投入し、フックを使用し、低速3分、中低速6分でミキシングを行った後、油脂を投入し、さらに低速2分、中高速3分ミキシングし、捏上げ温度は27℃であった。
その後、27℃、湿度75%の条件で1時間発酵を行った。発酵の終点温度は28℃であった。その後、45gに分割し、室温で20分ベンチタイムをとった後、パン生地を成型して、38℃、湿度80%のホイロで60分発酵させた後、200℃で10分間焼成してドックパンを得た。
〈ドックパンの配合〉
強力粉 90質量部
薄力粉 10質量部
砂糖 20質量部
食塩 0.8質量部
脱脂粉乳 3質量部
全卵 12質量部
油脂※1 8質量部
イースト 3.5質量部
イーストフード 0.1質量部
水 50質量部
油脂※1・・・・コクキレフレッシュ(ミヨシ油脂製)
〈ドックパンの製造条件〉
混捏: 低速3分、中高速6分、低速2分、中高速3分
捏上温度: 27℃
発酵時間: 27℃ 75% 1時間
終点温度: 28℃
分割重量: 45g
ベンチタイム 20分
成型: モルダー
ホイロ: 38℃ 80% 60分
焼成: 200℃ 10分
[バタークリームの存在感]
上記で製造したドックパンを焼成面から1.5cmのところを焼成面と平行にカットしドックパンを上部と下部にわけた。上記ドックパンの下部に、フィリングとしてバタークリームを平型口金(幅3cm、厚さ1cm)で約20gを2段に絞りだし、高さ2cmのクリームを得た。その後ドックパンの上部をのせ、35℃で2日保存した後、バタークリームの残存を以下の基準で評価した。
上部にパンをのせた直後のバタークリームの高さと2日後の高さから下記維持率を求めた。
(直後の高さ−2日後の高さ)/直後の高さ×100
評価基準
◎:100%〜90%
○:90%未満〜75%
△:75%未満〜50%
×:50%未満
[ドックパンとの相性]
上記で製造したドックパンにバタークリームを約10g絞ったパンを、上記の口溶け評価と同様のパネル10名で以下の基準により評価した。ドックパンとバタークリームが喫食時に口中で同時になくなることを良好とした。
尚、ドックパンのみで喫食したときも口溶けは良好であった。
評価基準
◎:パネル10名中8名以上が良好であると評価した。
○:パネル10名中7〜5名が良好であると評価した。
△:パネル10名中4〜3名が良好であると評価した。
×:パネル10名中2名以下が良好であると評価した。
<スポンジケーキの製造>
下記配合でスポンジケーキを製造した。
ミキサーにすべての材料を合わせ、ホイッパーで低速30秒、中高速5分撹拌し、比重0.45の生地を得た。7号丸型に500g入れ、165℃で35分焼成し、スポンジケーキを得た。
<スポンジケーキの配合>
薄力粉 100質量部
砂糖 110質量部
全卵(正味) 160質量部
ベーキングパウダー 1質量部
バニラフレーバー 0.2質量部
加水 20質量部
乳化脂 ※2 15質量部
流動状ショートニング※3 15質量部
※2 パルファンドール(ミヨシ油脂製)
※3 ケークドール(ミヨシ油脂製)
[バタークリームの存在感]
上記で製造したスポンジケーキを上部と底部をそれぞれ焼成面と平行に厚さ1cmカットし切り落とした。その後焼成面と平行に厚さ1cmにスライスし、縦×横が10cm×15cmとなるようカットし、縦×横×厚さが10cm×15cm×1cmのシート状のスポンジケーキを得た。その後、このスポンジケーキの表面にフィリングとして前述のバタークリームを平型口金(幅3cm、厚さ1cm)で横面に合わせ3回絞り、その上にさらに重ねて3回絞り、高さ2cmのクリームとした。その後、同様の大きさのシート状のスポンジケーキを重ね、35℃で2日保存した後、バタークリームの残存を以下基準で評価した。
上部にスポンジケーキをのせた直後のバタークリームの高さと2日後の高さから下記維持率を求めた。
(直後の高さ−2日後の高さ)/直後の高さ×100
評価基準
◎:100%〜85%
○:85%未満〜70%
△:70%未満〜55%
×:55%未満
[スポンジケーキとの相性]
上記で製造したシート状のスポンジケーキにバタークリームを平型口金(幅3cm、厚さ0.5mm)で、横面に合わせ3回絞り、同様の大きさのシート状のスポンジケーキを重ね、上記の口溶け評価と同様のパネル10名で以下の基準により評価した。スポンジケーキとバタークリームが喫食時に口中で同時になくなることを良好とした。
尚、スポンジケーキのみで喫食したときも口溶けは良好であった。
評価基準
◎:パネル10名中8名以上が良好であると評価した。
○:パネル10名中7〜5名が良好であると評価した。
△:パネル10名中4〜3名が良好であると評価した。
×:パネル10名中2名以下が良好であると評価した。
上記の評価結果を表3、表4に示す。
Figure 2017079737
Figure 2017079737

Claims (8)

  1. 製菓製パンのフィリング、ナッペ、またはトッピングに、バタークリーム、マーガリン、またはショートニングとして使用される油脂組成物であって、
    2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの含有量が油脂全量に対して15〜30質量%、
    P2Oの含有量が油脂全量に対して4質量%以上12質量%未満(P2Oの含有量は、PPOおよびPOPの合計量であり、PPOは、1位と2位または2位と3位にパルミチン酸、3位または1位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドであり、POPは、1位と3位にパルミチン酸、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドであり、Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸を示す。)、
    LLL、MLL、およびLMLの合計量が油脂全量に対して3.5〜10質量%(LLLは、1位と2位と3位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドであり、MLLは、1位または3位にミリスチン酸、2位と3位または1位と2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドであり、LMLは、1位と3位にラウリン酸、2位にミリスチン酸が結合されたトリグリセリドであり、Lはラウリン酸、Mはミリスチン酸を示す。)
    である油脂組成物。
  2. 3飽和トリグリセリドの含有量が油脂全量に対して26〜40質量%である請求項1に記載の油脂組成物。
  3. 飽和脂肪酸の含有量が油脂全量に対して40〜60質量%である請求項1または2に記載の油脂組成物。
  4. 2飽和トリグリセリドおよび3飽和トリグリセリドの合計量が油脂全量に対して45〜65質量%である請求項1から3のいずれかに記載の油脂組成物。
  5. 2位にラウリン酸が結合されたトリグリセリドの含有量が20〜30質量%であるエステル交換油脂および極度硬化処理を経たラウリン系油脂を含有する請求項1から4のいずれかに記載の油脂組成物。
  6. 製菓製パンの生地に挟んでフィリングとして使用される請求項1から5のいずれかに記載の油脂組成物。
  7. 製菓製パンが、スポンジケーキである請求項1から6のいずれかに記載の油脂組成物。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の油脂組成物を含むバタークリーム、マーガリン、またはショートニングを、フィリング、ナッペ、またはトッピングに用いた菓子またはパン。
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