JP2017078168A - アクリル系樹脂フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面平滑性が良好で、低ヘイズ、低黄色度、更にフィッシュアイ欠点も少ないという特徴を有するアクリル系樹脂フィルムおよびその製造方法を提供する。【解決手段】メタクリル酸メチルに由来する構造単位を80質量%以上有し、且つ220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度(η(A))が1500〜3500Pa・sであるメタクリル樹脂(A)を70質量%以上含む。表面粗度が5nm以下、ヘイズが0.7%以下、黄色度が1.0以下、0.03mm2以上の大きさのフィッシュアイ欠点が0.2個/m2以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、表面平滑性が良好で、低ヘイズであり、変色が少なく、更にフィッシュアイ欠点も少ない特徴を有するアクリル系樹脂フィルムおよびその製造方法に関する。
アクリル系樹脂フィルムは、透明性が高い、表面硬度が高い、更に耐候性に優れる、成形加工が容易などの特徴を持っているため、看板、フラットパネルディスプレイ等の表示材料、加飾フィルムに分類される車両用内装材および外装材、建材用の内装材および外装材、インテリア部材等の様々な用途で使用されている。特に、表面特性が優れるために、各種部材の表皮材料として使用されている。しかしながら、アクリル系樹脂フィルムは非常に脆く、製膜時にフィルムを搬送する際、アキュムレーターを通過させる際、トリムカットする際、巻取りする際、巻取り後にフィルムを切断する際、加工するためにフィルムを搬送する際、熱成形で二次加工する際、熱成形後に不要部を除去するためにトリミングする際、若しくはフィルムと他の基材フィルムを貼り合わせる際に割れるなどの不具合を生じることがあった。
そこで、このアクリル系樹脂のみからなるフィルムの脆さを改善するために、各種材料をアロイ、ブレンドする方法が提案されている。特許文献1には、コア−シェル型粒子をブレンドしたアクリル系樹脂フィルムが提案されている。また、特許文献2には、ポリビニルアセタール樹脂をアロイしたアクリル系樹脂フィルムが提案されている。特許文献3においては、熱可塑性樹脂、およびポリアクリル酸アルキルエステルブロックの両末端に其々高シンジオタクチックなポリメタクリル酸アルキルエステルブロックが結合した構造を分子内に少なくとも1つ有するブロック共重合体を特定の比率で含有する重合体組成物が提案されている。更に、特許文献4においては、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位と(メタ)アクリル芳香族エステルに由来する構造を其々特定量含むアクリル酸エステル重合体ブロックを有するブロック共重合体を用いる樹脂組成物が開示されている。また、特許文献5においては、アクリル系ブロック共重合体100質量部に対し、高分子加工助剤を0.3〜3質量部配合してなるアクリル系樹脂組成物が開示されている。
ところで、近年アクリル系樹脂フィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置に用いられる偏光子の保護フィルム、または位相差フィルムとしての使用も増えてきている。これらの光学用途で使用される場合、より高い品質が求められ、特にフィッシュアイ欠点に関する要望が多く挙がっている。特許文献6、7には異物欠点が少ないアクリル系フィルムが紹介されているが、ゴム等の改質剤が入っていないため、また延伸されているために、引き裂き強度が十分ではないなどの問題を有していた。また、フィッシュアイ欠点の低減に関しては、車両用内装材および外装材に使用する場合であっても、製品歩留りを向上させるという利点から求められてきた要求事項であった。
特公昭56−27378号公報 特開2013−23599号公報 特公平10−168271号公報 国際公開第2014/073216号 特開2013−43964号公報 特開2012−82358号公報 特開2014−95926号公報
上記特許文献1〜5により、アクリル系樹脂の脆さ等の各種特性を改善することができる。また、特許文献6〜7により、異物欠点が少ないフィルムを製造できる。しかしながら、昨今フィルムへの要求性能はより高くなってきており、高い透明性、表面硬度が求められると共に、複数の特性をバランスよく併せ持つフィルムが求められている。具体的には、高い表面平滑性、透明性、耐衝撃性、更に良好な品質(フィッシュアイが少ない)のフィルムが求められている。
本発明は上記背景に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、透明性、表面平滑性、表面硬度が高く、また耐衝撃性にも優れ、更にフィッシュアイ欠点が少ないアクリル系樹脂フィルム並びにその製造方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、以下の態様を包含する発明を完成するに至った。
[1];メタクリル酸メチルに由来する構造単位を80質量%以上有し、且つ220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度(η(A))が1500〜3500Pa・sであるメタクリル樹脂(A)を70質量%以上含むアクリル系樹脂フィルムであって、
表面粗度が5nm以下、ヘイズが0.7%以下、黄色度が1.0以下、0.03mm以上の大きさのフィッシュアイ欠点が0.2個/m以下であるアクリル系樹脂フィルム。
[2];少なくとも一方の面の鉛筆硬度がHBまたはそれよりも硬い[1]に記載のアクリル系樹脂フィルム。
[3];耐衝撃性が40mJ以上である[1]または[2]に記載のアクリル系樹脂フィルム。
[4];前記アクリル系樹脂組成物が、前記アクリル系樹脂組成物100質量部に対して高分子加工助剤(C)を0.1〜3質量部含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
[5];前記高分子加工助剤(C)が、メタクリル酸メチルを60〜90質量%、アクリル酸アルキルを10〜40質量%含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
[6];前記アクリル系樹脂組成物が、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)にメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が結合したブロック共重合体(B)を含み、且つブロック共重合体(B)の220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度(η(B))が75〜1500Pa・sであり、更に、溶融粘度(η(A))と溶融粘度(η(B))の比(η(A)/η(B))の値が1〜20であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
[7];前記アクリル系樹脂組成物が、メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)との合計100質量部に対し、メタクリル樹脂(A)70〜99質量部およびブロック共重合体(B)1〜30質量部を含有する、[6]に記載のアクリル系樹脂フィルム。
[8];前記ブロック共重合体(B)が、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)30〜60質量%およびメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)40〜70質量%を含有することを特徴とする[6]または[7]に記載のアクリル系樹脂フィルム。
[9];前記ブロック共重合体(B)がトリブロック共重合体であることを特徴とする[6]〜[8]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
[10];前記トリブロック共重合体(B)において、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端に其々結合する2つのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の質量比が互いに異なるものであり、
前記2つのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)において、質量比が小さい方のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2(L))の質量比(n(L))に対する質量比が大きい方のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2(H))の質量比(n(H))の比(n(H)/n(L))の値が1.5以上であることを特徴とする[9]に記載のアクリル系樹脂フィルム。
[11];前記アクリル系樹脂組成物が、前記メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)との合計100質量部に対して、紫外線吸収剤(D)を0.1〜3質量部含有することを特徴とする[1]〜[10]に記載のいずれかのアクリル系樹脂フィルム。
[12];[1]〜[11]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルムからなる延伸フィルム。
[13];[1]〜[11]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルムまたは[12]に記載の延伸フィルムからなる光学用フィルム。
[14];[1]〜[11]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルムまたは[12]に記載の延伸フィルムを用いてなることを特徴とする偏光子保護フィルム。
[15];[14]に記載の偏光子保護フィルムを少なくとも1枚含む偏光板。
[16];[1]〜[11]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルムまたは[12]に記載の延伸フィルムのいずれか一方の表面に、加飾が施されていることを特徴とする加飾用フィルム。
[17];[1]〜[11]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルムを、Tダイを備えた押出機で製造する方法であって、前記押出機はベント、ギアポンプ、ポリマーフィルターを備えており、ベント、ギアポンプ、ポリマーフィルター、さらにTダイまでの温度を230〜290℃の範囲で制御することを特徴とするアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
本発明によれば、透明性、表面平滑性、表面硬度が高く、また耐衝撃性にも優れ、更にフィッシュアイ欠点が少ないアクリル系樹脂フィルム並びにその製造方法を提供できるという優れた効果を奏する。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本明細書で特定する数値は、後述する実施例に記載した方法により測定したときに得られる値を示す。また、本明細書で特定する数値「A〜B」とは、数値Aおよび数値Aより大きい値であって、且つ数値Bおよび数値Bより小さい値を満たす範囲を示す。また、本発明の「フィルム」とは、厚み等に限定されるものではなく、ロール状に供されるものであればよく、JISに定義される「シート」も含むものとする。
本発明のアクリル系樹脂フィルムに用いる樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を80質量%以上有し、且つ220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度(η(A))が1500〜3500Pa・sであるメタクリル樹脂(A)である。
メタクリル樹脂(A)におけるメタクリル酸メチルに由来する構造単位の割合は80質量%以上である必要があり、耐熱性の観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。つまり、メタクリル酸メチル以外の単量体に由来する構造単位の割合が、20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、全ての単量体がメタクリル酸メチルである構成も含む。
かかるメタクリル酸メチル以外の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−へキシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
メタクリル樹脂(A)の立体規則性に関して特に制限はなく、例えば、イソタクチック、ヘテロタクチック、シンジオタクチックなどの立体規則性を有するものを用いてもよい。ただ耐熱性の観点から、シンジオタクチック構造を多く有するメタクリル樹脂(A)を用いることが好ましい。
メタクリル樹脂(A)の220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度(η(A))は、1500〜3500Pa・sの範囲とする。前記溶融粘度(η(A))は、1800Pa・s以上であることがより好ましく、2000Pa・s以上であることが特に好ましい。また、3300Pa・s以下であることがより好ましく、3100Pa・s以下であることが特に好ましい。1500〜3500Pa・sの範囲とすることにより、得られる樹脂組成物の成形体またはフィルムの耐衝撃性や靭性を良好に保つことができる。
メタクリル樹脂(A)の分子量分布は、GPCで測定した際の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が1.05〜3であることが好ましい。更に好ましくは、1.3〜2.5である。分子量分布が1.05未満になると単独使用では成形加工性が困難になり、分子量分布が3以上になると物性低下が起こる。
メタクリル樹脂(A)の製造は、メタクリル酸メチルを80質量%以上含む1又は複数種の単量体を重合することによって得られる。このとき、メタクリル樹脂(A)の重合度は、開始剤および連鎖移動剤の量によって調整することができる。
本発明のメタクリル樹脂(A)には、市販品を用いてもよい。かかる市販されているメタクリル樹脂としては、例えば「パラペットH1000B」(MFR:22g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットGF」(MFR:15g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットEH」(MFR:1.3g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRL」(MFR:2.0g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRS」(MFR:2.4g/10分(230℃、37.3N))および「パラペットG」(MFR:8.0g/10分(230℃、37.3N))[いずれも商品名、クラレ社製]などが挙げられる。
ブロック共重合体(B)は、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)にメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が結合した樹脂である。(b1)と(b2)の結合状態については特に制限はなく、(b1)−(b2)で表現されるジブロック共重合体、(b1)−(b2)−(b1)、(b2)−(b1)−(b2)で表現されるトリブロック状重合体、(b1)−((b2)−(b1))n、(b1)−((b2)−(b1))n−(b2)、(b2)−((b1)−(b2))nで表現されるマルチブロック共重合体、((b1)−(b2))n−X、((b2)−(b1))n−X(Xはカップリング残基)で表現されるスターブロック共重合体いずれでもよい。高温時の粘着性およびそれに起因する成形ロールへの密着を防止する観点、並びにコストの観点、さらに耐衝撃性などの物性の観点からは、(b2)−(b1)−(b2)のトリブロック共重合体であることが好ましい。この場合、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端に結合する2つのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、構成する単量体の種類、メタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合、重量平均分子量および立体規則性の其々が独立に、同一でも異なっていてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において他の重合体ブロックが含まれていてもよい。
ブロック共重合体(B)が(b2)−(b1)−(b2)のトリブロック共重合体である場合、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端に結合する2つのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の質量比は実質的に同一であってもよいが、溶融時の流動性を向上させる観点、また均一分散を容易にさせる観点から、異なる値であることが好ましい。即ち、ブロック共重合体(B)を100質量%としたときに、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端に其々結合するメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の質量比が互いに異なるものとすることが好ましい。溶融時の流動性を向上させることにより、高品位なフィルムや成形体を得ることができ、更に均一分散させることによりフィッシュアイが低減したり、弾性率と耐衝撃性のバランスが良化する。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の質量比が互いに異なるとき、質量比が小さい方のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2(L))の質量比(n(L))に対する質量比が大きい方のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2(H))の質量比(n(H))の比(n(H)/n(L))の値が1.5以上であることがより好ましく、さらに好ましくは1.8以上であり、その上限は4以下であることが好ましく、3以下が更に好ましい。溶融時の流動性を向上させることにより、高品位なフィルムや成形体を得ることができる。
ブロック共重合体(B)を構成するアクリル酸エステル重合体ブロック(b1)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)におけるアクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%の構成も含まれる。
かかるアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどが挙げられる。これらアクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を形成できる。なかでも、コストや低温特性などの観点からアクリル酸n−ブチル単独で重合したものが好ましい。
アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、アクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)に含まれるアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下であり、全ての構造単位がアクリル酸エステルに由来する単量体である場合も含む。
かかるアクリル酸エステル以外の単量体としては、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。アクリル酸エステル以外の単量体を用いる場合には、1種単独でまたは2種以上併用して、前述のアクリル酸エステルと伴に共重合することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を形成できる。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)におけるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、全ての構造単位がメタクリル酸エステルに由来する単量体である場合も含む。
かかるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルなどを挙げることができる。これらの中でも、透明性、耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。これらメタクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を形成できる。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、メタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)に含まれるメタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の割合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
かかるメタクリル酸エステル以外の単量体としては、例えば、アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらメタクリル酸エステル以外の単量体を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて、前述のメタクリル酸エステルと伴に共重合することによって、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を形成できる。
ブロック共重合体(B)におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の割合は、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の合計100%に対して、透明性、表面硬度、成形加工性、表面平滑性、耐衝撃性の観点から、40質量%以上であることが好ましく、43質量%以上であることがより好ましく、47質量%以上であることが更に好ましい。また、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の立体規則性は、耐熱性を高める観点から、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が60%以上であることが好ましい。シンジオタクティシティを60%以上とすることにより、ガラス転移温度を高め、本発明の樹脂組成物において優れた耐熱性を示す。より好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上、最も好ましくは75%以上である。
ブロック共重合体(B)の220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度(η(B))は、75〜1500Pa・sの範囲であることが好ましい。前記溶融粘度(η(B))は、150Pa・s以上であることがより好ましく、300Pa・s以上とすることが特に好ましい。また、1000Pa・s以下であることがより好ましく、700Pa・s以下とすることが特に好ましい。75〜1500Pa・sの範囲とすることにより、溶融押出し成形において良好な溶融張力を保持し、良好な板状成形体を容易に得ることができる。また、得られた板状成形体の破断強度などの力学物性を良好に保つことができる。更に、溶融押出し成形で得られる板状成形体の表面に微細なシボ調の凹凸や未溶融物(高分子量体)に起因するブツの発生を効果的に抑制し、良好なフィルムを得ることができる。
また、溶融粘度(η(A))と溶融粘度(η(B))の比(η(A)/η(B))の値が1〜20であることが好ましく、より好ましくは5〜10、さらに好ましくは6〜8である。η(A)/η(B)の値が1〜20であることで、良好な分散性を確保でき、機械的物性、光学特性に優れたフィルムとなる。
ブロック共重合体(B)は、必要に応じて、分子鎖中または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物、アミノ基などの官能基を有していてもよい。
ブロック共重合体(B)の製造方法は、特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用することができる。例えば、各重合体ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いてアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いて有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法、有機希土類金属錯体を重合開始剤として用いて重合する方法、α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として用いて銅化合物の存在下ラジカル重合する方法などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、本発明に用いられるブロック共重合体(B)を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法のうち、特に、ブロック共重合体(B)が高純度で得られ、また分子量や組成比の制御が容易であり、且つ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いて有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が好ましい。
メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)の組成比は、表面硬度を高く保ちつつ、脆さが改善されたフィルムとする観点から、メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)との合計100質量部あたり、メタクリル樹脂(A)を70〜99質量部、ブロック共重合体(B)を1〜30質量部とすることが好ましく、メタクリル樹脂(A)を80〜92質量部、ブロック共重合体(B)を8〜20質量部とすることがより好ましい。
本発明に用いるアクリル系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤、例えば、高分子加工助剤(C)、紫外線吸収剤(D)、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、耐衝撃助剤などを添加してもよい。なお、本発明のフィルムの力学物性および表面硬度の観点から発泡剤、充填剤、艶消し剤、光拡散剤、軟化剤や可塑剤は多量に添加しないことが好ましい。
本発明に用いるアクリル系樹脂組成物には、高分子加工助剤(C)を用いるのが好ましい。高分子加工助剤(C)は、本発明の樹脂組成物を成形する際、厚さ精度、製膜安定性およびフィッシュアイの低減に効果を発揮する化合物である。高分子加工助剤(C)は、通常、乳化重合法によって製造することができる、0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子である。
該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。
高分子加工助剤(C)は、単層粒子である場合、極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。極限粘度が小さすぎると成形性の改善効果が低い。極限粘度が大きすぎると樹脂組成物の溶融流動性の低下を招きやすい。
高分子加工助剤(C)の代表的な商品としては、カネエースPAシリーズ(カネカ社製、商品名)、メタブレンPシリーズ(三菱レイヨン社製、商品名)、パラロイドKシリーズ(ダウ社製、商品名)などが挙げられる。
これらの中でも、フィルムのフィッシュアイ欠点数低減、製膜時の成形安定性、特にフィルム端部の成形安定性向上という観点から、メタクリル酸メチルを60〜90質量%、アクリル酸アルキルを10〜40質量%含有する高分子加工助剤(C)が好ましく、例えばメタブレンP530、P550、パラロイドK125が好ましく、特にメタブレンP530が好ましい。
高分子加工助剤(C)の含有量は、メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)との合計100質量部に対して、0.1〜3質量部であることが好ましい。前記高分子加工助剤(C)の含有量の下限は、用途に応じて適正量はあるが、フィッシュアイを低減する観点から、1.0質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることが更に好ましい。また、その上限はコストを抑制する観点から、2.5質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることが更に好ましく、1.5質量部以下であることがより更に好ましい。
本発明に用いるアクリル系樹脂組成物には、紫外線吸収剤(D)を用いるのが好ましい。紫外線吸収剤(D)は紫外線を吸収する能力を有する化合物であり、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。
紫外線吸収剤(D)としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、紫外線に照射された場合の樹脂劣化の抑制力が高く、樹脂との相溶性が高いことから、ベンゾトリアゾール類、ヒドロキシフェニルトリアジン類が好ましく、ヒドロキシフェニルトリアジン類が特に好ましい。
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の好適な例としては、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ブチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(BASF社製:商品名チヌビン460)、2−(4―(2−ヒドロキシ−3−2エチル)ヘキシル)オキシ)−2―ヒドロキシフェニル)−4、6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5トリアジン(BASF社製:商品名チヌビン405)、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン(BASF社製:商品名チヌビン479)、BASF社製の商品名チヌビン1477、400、477、1600などが挙げられる。また、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5‐トリアジン‐2−イル)−5−(2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ)フェノール(アデカ社製:商品名アデカスタブLA−46)、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ‐4−ヘキシルオキシ‐3−メチルフェノキシ)−1,3,5−トリアジン(アデカ社製:商品名アデカスタブLA−F70)、また、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、が挙げられる。
これらの中でも、耐候性が高いという観点で、エステル基を有するヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、例えば2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン(BASF社製:チヌビン479)が好ましい。
紫外線吸収剤(D)の含有量は、メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)との合計100質量部に対して、0.1〜3質量部配合することが好ましい。前記紫外線吸収剤(D)の含有量の下限は、用途やフィルム厚さに応じて適正量はあるが、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.4質量部以上であることが更に好ましい。また、その上限はコストを抑制する観点から、2.5質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以下であることが更に好ましい。
また、本発明に用いる樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、メタクリル樹脂(A)、ブロック共重合体(B)、高分子加工助剤(C)、紫外線吸収剤(D)以外の他の重合体と混合して用いることができる。かかる他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリー4−メチルペンテンー1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂などのスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリルゴム、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDMなどのオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
本発明に用いる樹脂組成物を調製する方法は特に制限されないが、該樹脂組成物を構成する各成分の分散性を高めるため、例えば、溶融混練して混合する方法が推奨される。メタクリル樹脂(A)およびブロック共重合体(B)を溶融混練する方法では、必要に応じてこれらと高分子加工助剤(C)、紫外線吸収剤(D)などのその他の添加剤とを同時に混合してもよいし、メタクリル樹脂(A)を、高分子加工助剤(C)、紫外線吸収剤(D)およびその他の添加剤とともに混合後、ブロック共重合体(B)と混合してもよい。混合操作は、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合または混練装置を使用して行なうことができる。特に、メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)の混練性、相溶性を向上させる観点から、二軸押出機を使用することが好ましい。溶融混練する際のせん断速度は10〜1000/secであることが好ましい。混合・混練時の温度は、使用するメタクリル樹脂(A)、ブロック共重合体(B)等の溶融温度などに応じて適宜調節するのがよく、通常110〜300℃の範囲内の温度で混合するとよく、好ましくは180〜300℃、さらに好ましくは230〜270℃の範囲内の温度で混合するとよい。二軸押出機を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し、減圧下での溶融混練または窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。このようにして、本発明の樹脂組成物を、ペレット、粉末などの任意の形態で得ることができる。ペレット、粉末などの形態の樹脂組成物は、成形材料として使用するのに好適である。
また、ブロック共重合体(B)を、メタクリル樹脂(A)の単量体単位であるアクリル系モノマーとトルエン等の溶媒の混合溶液に溶解し、該アクリル系モノマーを重合することにより、ブロック共重合体(B)を含む、本発明に用いられる樹脂組成物を調製することもできる。
本発明の樹脂組成物を成形して成るアクリル系樹脂フィルムの製造は、Tダイ法、インフレーション法、溶融流延法、カレンダー法等の公知の方法を用いて行うことができる。良好な表面平滑性、低ヘイズのフィルムが得られるという観点から、上記溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法が好ましい。この際に用いるロールまたはベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。このように押し出された溶融混練物の両面を鏡面に接触させて製膜する場合には、アクリル系樹脂フィルムを鏡面ロール若しくは鏡面ベルトで加圧し挟むことが好ましい。鏡面ロール若しくは鏡面ベルトによる挟み込み圧力は、高いほうが好ましく、線圧として10N/mm以上であることが好ましく、30N/mm以上であることがさらに好ましい。また、挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの表面温度は、60℃以上とすることが好ましく、70℃以上とすることがより好ましい。また、130℃以下とすることが好ましく、100℃以下とすることがより好ましい。アクリル系樹脂フィルムを挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの表面温度が60℃未満であると得られるアクリル系樹脂フィルムの表面平滑性、ヘイズが不足する傾向にあり、表面温度が130℃を超えるとアクリル系樹脂フィルムと鏡面ロール若しくは鏡面ベルトが密着しすぎるため、鏡面ロール若しくは鏡面ベルトからアクリル系樹脂フィルムを引き剥がす際に表面が荒れやすくなり、横皺が入るなどしてアクリル系樹脂フィルムの外観が損なわれる傾向になる。
Tダイ法による製造方法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。本発明のアクリル系樹脂フィルムを製造するための溶融押出温度は好ましくは230℃以上であり、より好ましくは240℃以上である。また、290℃以下とすることが好ましく、280℃以下とすることがより好ましい。また、溶融押出装置を使用し、溶融押出しする場合、着色抑制の観点からベントを使用して減圧下で溶融押出し、均一膜厚のフィルムを製造する観点からギアポンプを付け、更にフィッシュアイ欠点を低減させるためにポリマーフィルターを付けて溶融押出しすることが好ましい。さらに、酸化劣化を抑制する観点から窒素気流下での溶融押出しを行なうことが好ましい。
本実施形態のアクリル系樹脂フィルムを、ベント、ギアポンプ、ポリマーフィルターおよびTダイを備えた押出機で製造する場合、ベント、ギアポンプ、ポリマーフィルター、さらにTダイまでの温度を230〜290℃、さらには240〜270℃の範囲で制御することが好ましい。この温度範囲で製造することにより、劣化が少なく、フィッシュアイも少なく、機械的物性、光学特性に優れたフィルムになる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの少なくとも片面の粗度は、5.0nm以下、好ましくは3.0nm以下、更に好ましくは1.5nm以下である。これにより、表面平滑性に優れ、切断時や打抜時等での取扱い性に優れるとともに、意匠性を要求される用途に用いられる場合には表面光沢に優れ、また本発明のフィルムに印刷がされた場合には絵柄層等の鮮明さに優れる。また、光学用途においては、光線透過率、低ヘイズ等で光学特性に優れ、表面賦形を行う際、UV硬化樹脂で表面微細パターンを付ける際の精度に優れる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムのヘイズは、厚さ75μmにおいて0.7%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下である。これにより、切断時や打抜時等での取扱い性に優れるとともに、意匠性を要求される用途に用いられる場合には、表面光沢や本発明のフィルムに印刷された絵柄層の鮮明さに優れる。また、偏光板保護フィルムや導光フィルムなどの光学用途においては、光源の利用効率が高まるため好ましい。さらに、表面賦形を行う際の賦形精度に優れるため好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの黄色度(YI)は、1.0以下、好ましくは0.8以下である。これにより、意匠性を要求される用途に用いられる場合にはフィルムに印刷された絵柄層の色調変化が小さく色合いのはっきりした製品となる。また、偏光板保護フィルムや導光フィルムなどの光学用途においても、色調変化が小さく、また光源の利用効率が高まるため好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムにおける0.03mm以上の大きさのフィッシュアイ欠点は、0.2個/m以下であり、好ましくは0.15個/m以下、より好ましくは0.1個/m以下である。これにより、光学用途、また加飾フィルム用途においても高品質のフィルムを得られ、かつフィッシュアイ欠点由来の欠陥品が減り、歩留りが向上する。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの鉛筆硬度は、HBまたはそれよりも硬く、より好ましくはFまたはそれよりも硬い。表面が硬い樹脂フィルムは、傷つき難いので、意匠性の要求される成形品の表面の加飾兼表面保護フィルムとして、また偏光子保護フィルム用途においても、ラミネート加工などの製品づくりの工程中に発生する擦り傷の発生を抑制でき好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性は、好ましくは40mJ以上、より好ましくは50mJ以上である。これにより、加飾フィルム、偏光板保護フィルムなどで使用する際にも、衝撃を受けた時や加工時の割れを抑制でき好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムのヘイズ温度依存性はより小さいことが好ましい。これにより広い温度範囲において透明性を求められている用途や、高温で使用される場合において、透明性が損なわれず、優位である。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの厚さは、500μm以下であることが好ましい。500μmより厚くなると、ラミネート性、ハンドリング性、切断性・打抜き性などの二次加工性が低下し、樹脂フィルムとしての使用が困難になるとともに、単位面積あたりの単価も増大し、経済的に不利であるため好ましくない。当該アクリル系樹脂フィルムの厚さとしては30μm以上がより好ましく、50μm以上が更に好ましい。また、300μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、延伸処理が施されたものであってもよい。延伸処理によって、機械的強度が高まり、ひび割れし難い樹脂フィルムを得ることができる。延伸方法は特に限定されず、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法、圧延法などが挙げられる。延伸時の温度は、均一に延伸でき、高い強度の樹脂フィルムが得られるという観点から、下限がメタクリル樹脂のガラス転移温度より5℃高い温度であり、上限がメタクリル樹脂のガラス転移温度より40℃高い温度である。延伸温度が低すぎると延伸中に成形体が破断しやすくなり、延伸温度が高すぎると延伸処理の効果が十分に発揮されず成形品の強度が高くなりにくい。延伸は、通常、100〜5000%/分で行われる。延伸速度が小さいと強度が高くなりにくく、また生産性も低下する。また延伸速度が大きいと成形体の破断等によって均一な延伸が困難になることがある。また、延伸の後、熱固定を行うことがさらに好ましい。熱固定によって、熱収縮の少ないフィルムを得ることができる。延伸して得られるフィルムの厚さは、10〜200μmであることが好ましい。
該アクリル系樹脂フィルムは着色されていてもよい。着色法としては、アクリル系樹脂(A)とトリブロック共重合体(B)との組成物自体に、顔料又は染料を含有させて、フィルム化前の樹脂自体を着色する方法;染料が分散した液中にアクリル系樹脂フィルムを浸漬して着色させる染色法などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
アクリル系樹脂フィルムは、少なくとも一方の面に印刷が施されていてもよい。印刷によって絵柄、文字、図形などの模様、色彩が付与される。模様は有彩色のものであってもよいし、無彩色のものであってもよい。印刷は、印刷層の退色を防ぐために、後述する他の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂と接する側に施すのが好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、少なくとも一方の面に、(i)金属および/または金属酸化物よりなる層、(ii)熱可塑性樹脂層および(iii)基材層の少なくとも1層が積層されたフィルムであってもよい。他の層を積層する方法は特に限定されず、直接または接着層を介して接合することができる。基材層としては、例えば、木製基材、ケナフなどの非木質繊維等を用いてもよい。これらの層は、1層または複数層を積層することができる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、少なくとも一方の面に上述した他の層を積層することができる。本発明の積層されたフィルムの厚さは、用途により変動し得るもので限定されないが、二次加工性の観点からは500μm以下であることが好ましい。
積層に適した他の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、他の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
積層されたフィルムの製造方法は、特に制限されない。例えば、(1)アクリル系樹脂フィルムと、他の熱可塑性樹脂フィルムとを別々に用意しておき、加熱ロール間で連続的にラミネートする方法、プレスで熱圧着する方法、圧空又は真空成形すると同時に積層する方法、接着層を介在させてラミネートする方法(ウェットラミネーション);(2)アクリル系樹脂フィルムを基材にして、Tダイから溶融押出した他の熱可塑性樹脂をラミネートする方法;(3)前述のメタクリル樹脂(A)および前述のトリブロック共重合体(B)の混合物と別の熱可塑性樹脂とを共押出することにより、アクリル系樹脂フィルムと他の熱可塑性樹脂フィルムの層とが積層されたフィルムを得る方法などが挙げられる。
これらの方法のうち、(1)または(2)の方法では、ラミネート前に、樹脂フィルムまたは他の熱可塑性樹脂フィルムの貼り合せ面側にコロナ処理などの表面処理を施してもよい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、単独で用いてもよいし、内層またはその一部に用いてもよいし、最外層に用いてもよい。フィルムの積層数に関しては特に制限はない。積層に用いられる他の樹脂は、フィルムの意匠性の観点から、アクリル系樹脂などの透明な樹脂が好ましい。フィルムに傷がつきにくく、意匠性が長く持続するという観点から、最外層は、表面硬度および耐候性が高いものが好ましく、本発明のアクリル系樹脂フィルムが好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、光学用フィルムとしても好適に用いられる。具体的には、偏光子保護フィルム、それを用いた偏光板、およびその偏光板を少なくとも1枚含む液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置などに用いられる。更に、導光フィルム、モスアイフィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面フィルム、拡散フィルム、ガラス飛散防止、液晶ASFフィルム、透明導電フィルム、遮熱フィルム、各種バリアーフィルム等の光学関係の基材フィルムとして好適に用いられる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、透明性、表面平滑性、表面硬度が高く、また耐衝撃性にも優れ、更にフィッシュアイ欠点が少ないフィルムである。これらの優れた特徴を活かして、意匠性の要求される製品や光学用途に好適に用いることができる。
本発明のフィルムは、良好な取扱い性、良好な表面平滑性、少ないフィッシュアイ欠点および高表面硬度を活かして、意匠性の要求される成形品や高度な光学特性が要求される成形品、即ち、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板等の看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリア等の照明部品;家具、ペンダント、ミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根等の建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、自動車内装部材、バンパーなどの自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機、携帯電話、パソコン等の電子機器部品;保育器、レントゲン部品等の医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓等の機器関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁等の交通関係部品;その他、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスク等の表面の加飾フィルム兼保護フィルム、壁紙;マーキングフィルムに好適に用いられる。
以下に実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。また、本発明は、以上までに述べた、特性値、形態、製法、用途などの技術的特徴を表す事項を、任意に組み合わせて成るすべての態様を包含している。なお、実施例および比較例における物性値の測定等は以下の方法によって実施した。
〔各構成単位の割合〕
メタクリル樹脂およびトリブロック共重合体の各構成単位の割合は、各モノマーの仕込み量より算出した。
〔溶融粘度〕
メタクリル樹脂(A)およびブロック共重合体(B)の、220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度は、キャピログラフ(東洋精機製作所社製 型式1D)を用いて、220℃で、直径1mmΦ、長さ10mmのキャピラリーより、ピストンスピード10mm/分の速度で押出し、その際に生じるせん断応力から評価される数値とした。
〔フィルムの製造〕
ベント付の65mmΦの一軸押出機に、ギアポンプおよび濾過精度10μmのポリマーフィルターを設置し、先端に幅900mmのTダイがついた溶融押出機を用いて、押出温度250℃、吐出量40kg/hにて押出し、80℃の金属鏡面弾性ロールと、80℃の金属鏡面剛体ロールで挟み込んで製膜し、10m/分で引き取り、厚さ75μmのフィルムを製膜した。
〔表面粗度(フィルムの表面平滑性の測定)〕
前述の製膜条件より製膜されたフィルムを5mm×5mmに切り出して試験片とした。原子間力顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPI4000プローブステーションE−sweep環境制御ユニット)を用いて、表面の形状をDFMモードによって測定した。プローブはエスアイアイ・ナノテクノロジー社製SI−DF20(背面Al)を用いた。試料測定に先立ち、ピッチ10μm、段差100nmの参照試料を測定し、装置のX軸、Y軸の測定誤差が10μmに対して5%以下、Z軸の誤差が100nmに対して5%以下であることを確認した。
試料の観察領域は5μm×5μmとし、測定周波数を0.5Hzとした。スキャンライン数はX軸を512、Y軸を512とした。測定は25℃±2℃、湿度30±5%の大気環境で行った。得られた測定データを、装置に付属のデータ処理ソフトウェアにより解析し、平均面粗さRaを求めた。即ち、装置の測定ソフトウェアの[ツール]メニューの[3次傾き補正]コマンドを選択し、フィルムの傾きや大きなうねりの全面傾きを補正した後、[解析]メニューの[表面粗さ解析]コマンドを選択し、平均面粗さRaを得た。平均面粗さRaは、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値であり、以下の式により定義される。
Figure 2017078168

ここでF(X,Y)は(X,Y)座標での高さの値を表す。Z0は以下で定義されるZデータの平均値を表す。
Figure 2017078168

また、S0は、測定領域の面積を表す。
この平均面粗さRaをフィルムの両面(便宜上、A面およびB面とする)において異なる10箇所の領域で測定し、10箇所の平均面粗さRaの平均値をフィルム表面の粗度とした。3次傾き補正は、測定した試料表面を3次の曲面で最小2乗近似によってフィッティングすることによって行い、フィルム試料の傾きおよびうねりの影響を排除するために行った。
〔フィルムのヘイズ〕
前述の条件で得たフィルムを50mm×50mmに切り出して試験片とし、JIS K7136に準拠して23℃にてヘイズを測定した。
〔フィルムの黄色度〕
前述の条件で得たフィルムを50mm×50mmに切り出して試験片とし、JIS K7373に準拠して23℃にて黄色度を測定した。
〔フィルムのフィッシュアイ欠点〕
前述の条件で製造した300m巻のフィルムをオンライン欠点検査器(長瀬産業製、Scantec8000C1 System3)に通し、0.03mm以上の大きさのフィッシュアイ欠点の個数を測定し、1mあたりのフィッシュアイ欠点の個数を算定した。
〔フィルムの鉛筆硬度〕
前述の条件で製造したフィルムを10cm×10cmに切り出して試験片とし、JIS−K5600−5−4に準拠して鉛筆硬度を測定した。
[耐衝撃性]
空隙の開いた鋼製取り付け板にフィルムを貼り付け、その空隙部分のフィルムに重さ20gの鉄球を自由落下させた。自由落下させる高さを10cm刻みで変更し、その破断しない最高の高さから耐衝撃性を評価した。
[加熱温度白化(ヘイズ温度依存性)]
前述の条件で製造したフィルムを用いて、50mm×50mmの試験片を切り出し、JIS K7136に準拠してヘイズ(加熱前)を測定した後、80℃のオーブンの中に10分間放置した。試験片をオーブンから取り出し、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所社製 ヘイズメーターHM−150)によりJIS K7136に準拠してヘイズ(加熱後)を測定し、以下の評価基準で判定した。なお、ここでヘイズの変化とは、以下の式で表されるものである。
ヘイズの変化=ヘイズ(加熱後)−ヘイズ(加熱前)
優(Excellent):ヘイズの変化が0.1%以下。
良(Good):ヘイズの変化が0.1%より大きく、0.5%以下。やや白化。
不適(Poor):ヘイズの変化が0.5%より大きい。
以下に示す参考例においては、化合物は常法により乾燥精製し、窒素にて脱気したものを使用した。また、化合物の移送および供給は窒素雰囲気下で行なった。
参考例1 [メタクリル樹脂(A−1)の合成]
メタクリル酸メチル100質量部からなる単量体に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部および連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)0.21質量部を加え、溶解させて原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部および懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に、前記混合液420質量部と前記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した液を得た。なお、重合槽壁面あるいは撹拌翼にポリマーが若干付着したが、泡立ちもなく、円滑に重合反応が進んだ。
得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状のメタクリル樹脂(A)(以下「メタクリル樹脂(A−1)」と称する)を得た。
得られたメタクリル樹脂(A−1)は、メタクリル酸メチル含量が100質量%であり、220℃、せん断速度122/secの溶融粘度(η(A))は3000Pa・sであった。
参考例2 [メタクリル樹脂(A−2)の合成]
使用した単量体をメタクリル酸メチル99質量部およびアクリル酸メチル1質量部に変更し、連鎖移動剤の量を0.24質量部に変更した以外は、参考例1と同様にしてメタクリル樹脂(A−2)を重合、製造した。得られたメタクリル樹脂(A−2)は、メタクリル酸メチル含量が99質量%であり、220℃、せん断速度122/secの溶融粘度(η(A))は2780Pa・sであった。
参考例3 [トリブロック共重合体(B−1)の合成]
トルエン溶液中、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムの触媒下で、sec−ブチルリチウムを重合開始剤として重合した。20質量部のメタクリル酸メチルを滴下してメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2−1)を重合した後、50質量部のアクリル酸n−ブチルを滴下してアクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を重合、さらに30質量部のメタクリル酸メチルを滴下してメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2−2)を重合し、最後にメタノールで停止して、トリブロック共重合体(B−1)を得た。得られたトリブロック共重合体は、(b2−1)−(b1)−(b2−2)のトリブロック構造をしており、(b2−1)−(b1)−(b2−2)の組成比は、30質量%−50質量%−20質量%であった。(b2)の含有量は50質量部であった。したがって、ブロック(b2−1)とブロック(b2−2)は、トリブロック共重合体(B)を100質量%としたときに、ブロック(b2−1)の方がブロック(b2−2)より質量比の値が大きく、ブロック(b2−2)の質量比(n(L))に対するブロック(b2−1)の質量比(n(H))の比、即ちn(H)/n(L)の値は1.5であった。また、トリブロック共重合体(B−1)の220℃、せん断速度122/secの溶融粘度(η(B))は377Pa・sであった。
参考例4 [トリブロック共重合体(B−2)の合成]
参考例3と同様の溶媒、触媒条件下、重合開始剤を調整することで分子量を調整し、重合性単量体の量を調整し、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b2−1)−アクリル酸ブチル重合体ブロック(b1)−メタクリル酸メチル重合体ブロック(b2−2)の構造を有するトリブロック共重合体(B−2)を得た。(b2−1)−(b1)−(b2−2)の組成比は、15質量%−70質量%−15質量%であったので、ブロック(b2−2)の質量比に対するブロック(b2−1)の質量比の比の値は1であった。また、得られたトリブロック共重合体(B−2)の220℃、せん断速度122/secの溶融粘度(η(B))は650Pa・sであった。
参考例5[ジブロック共重合体(B−3)の合成]
参考例3と同様の溶媒、触媒条件下、重合開始剤を調整することで分子量を調整し、重合性単量体の量を調整し、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b2)−アクリル酸n−ブチル/アクリル酸ベンジル=50/50(質量比)からなるブロック(b1)の構造を有するジブロック共重合体(B−3)を得た。(b2)−(b1)の組成比は、50質量%−50質量%であった。得られたジブロック共重合体(B−3)の220℃、せん断速度122/secの溶融粘度(η(B))は87Pa・sであった。
実施例で使用した高分子加工助剤(C)を以下に記載した。なお、ここでMMAはメタクリル酸メチルに由来する構造単位を意味し、BAはアクリル酸ブチル、またはメタクリル酸ブチルに由来する構造単位を意味する。
C−1:株式会社三菱レーヨン社製の商品名メタブレンP530A(平均重合度:24455、MMA80質量%/BA20質量%)
C−2:株式会社クレハ社製の商品名パラロイドK125P(平均重合度:19874、MMA79質量%/BA21質量%)
(高分子加工助剤の平均重合度)
自動希釈型毛細管粘度計(ウベローデ型、毛細管内径=0.5mm)を用い、クロロホルムを溶媒として20℃で測定して、PMMA換算重合度で求めた。
(実施例1)
メタクリル樹脂(A−1)85質量部、トリブロック共重合体(B−1)15質量部、高分子加工助剤(C−1)1.5質量部、紫外線防止剤(BASF社製:商品名チヌビン479)1質量部を、41mmΦの二軸押出機により260℃で溶融混練し、ストランド状に押出し、ペレタイザーでカットすることで、樹脂組成物のペレットを製造した。
得られた樹脂組成物を前述したベント付の65mmΦの一軸押出機に、ギアポンプ、濾過精度10μmサイズのポリマーフィルターを設置し、先端に幅900mmのTダイがついた溶融押出し装置を用いて、押出温度250℃、吐出量40kg/hにて押出し、80℃の金属鏡面弾性ロールと80℃の金属鏡面剛体ロール間で挟み込んで製膜し、10m/分で引き取り、厚さ75μmのフィルムを製膜した。フィシュアイ欠点数は製膜時にオンラインで検査し、得られたフィルムを用いて表面粗度、ヘイズ、黄色度、鉛筆硬度、耐衝撃性、加熱温度白化(80℃)を測定した。表1にこれらの結果を示した。
(実施例2〜4)
表1に示す配合処方に従った以外は、実施例1と同じ方法でフィルムを得て、同じ方法で物性評価を行った。その結果を表1に示す。なお、表中の「紫外線吸収剤(アデカスタブLA31RG)」は、アデカ社製の商品名アデカスタブLA31RGを指す。
(比較例1〜2)
表1に示す配合処方に従った以外は、実施例1と同じ方法でフィルムを得て、同じ方法で物性評価を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2017078168

Claims (17)

  1. メタクリル酸メチルに由来する構造単位を80質量%以上有し、且つ220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度(η(A))が1500〜3500Pa・sであるメタクリル樹脂(A)を70質量%以上含むアクリル系樹脂組成物からなるアクリル系樹脂フィルムであって、表面粗度が5nm以下、ヘイズが0.7%以下、黄色度が1.0以下、0.03mm以上の大きさのフィッシュアイ欠点が0.2個/m以下であるアクリル系樹脂フィルム。
  2. 少なくとも一方の面の鉛筆硬度がHBまたはそれよりも硬い請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  3. 耐衝撃性が40mJ以上である請求項1または2に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  4. 前記アクリル系樹脂組成物が、前記アクリル系樹脂組成物100質量部に対して高分子加工助剤(C)を0.1〜3質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  5. 前記高分子加工助剤(C)が、メタクリル酸メチル60〜90質量%およびアクリル酸アルキル10〜40質量%を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  6. 前記アクリル系樹脂組成物が、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)にメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が結合したブロック共重合体(B)を含み、且つブロック共重合体(B)の220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度(η(B))が75〜1500Pa・sであり、更に、溶融粘度(η(A))と溶融粘度(η(B))の比(η(A)/η(B))の値が1〜20であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  7. 前記アクリル系樹脂組成物が、メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)との合計100質量部に対し、メタクリル樹脂(A)70〜99質量部およびブロック共重合体(B)1〜30質量部を含有することを特徴とする、請求項6に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  8. 前記ブロック共重合体(B)が、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)30〜60質量%およびメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)40〜70質量%を含有することを特徴とする請求項6または7に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  9. 前記ブロック共重合体(B)がトリブロック共重合体であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  10. 前記トリブロック共重合体(B)において、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端に其々結合する2つのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の質量比が互いに異なるものであり、
    前記2つのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)において、質量比が小さい方のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2(L))の質量比(n(L))に対する質量比が大きい方のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2(H))の質量比(n(H))の比(n(H)/n(L))の値が1.5以上であることを特徴とする請求項9に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  11. 前記アクリル系樹脂組成物が、前記メタクリル樹脂(A)と前記ブロック共重合体(B)との合計100質量部に対して、紫外線吸収剤(D)0.1〜3質量部を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルムからなる延伸フィルム。
  13. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルムまたは請求項12に記載の延伸フィルムからなる光学用フィルム。
  14. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルムまたは請求項12に記載の延伸フィルムを用いてなることを特徴とする偏光子保護フィルム。
  15. 請求項14に記載の偏光子保護フィルムを少なくとも1枚含む偏光板。
  16. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルムまたは請求項12に記載の延伸フィルムのいずれか一方の表面に、加飾が施されていることを特徴とする加飾用フィルム。
  17. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルムを、Tダイを備えた押出機で製造する方法であって、前記押出機はベント、ギアポンプ、ポリマーフィルターを備えており、ベント、ギアポンプ、ポリマーフィルター、さらにTダイまでの温度を230〜290℃の範囲で制御することを特徴とするアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
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