JP2017076596A - 高分子化合物、中間組成物、負極電極、蓄電装置、負極電極用スラリー、高分子化合物の製造方法、及び負極電極の製造方法 - Google Patents

高分子化合物、中間組成物、負極電極、蓄電装置、負極電極用スラリー、高分子化合物の製造方法、及び負極電極の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】負極活物質層の密着性を向上させる。【解決手段】蓄電装置の負極用バインダーとして用いられる高分子化合物は、ポリアクリル酸と、下記一般式(1)に示す多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とが縮合してなる。(Yは、炭素数1〜4の直鎖アルキル基、フェニレン基、又は酸素原子であり、R1,R2はそれぞれ独立して、単数又は複数の水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基である。)【選択図】なし

Description

本発明は、蓄電装置の負極用バインダーとして用いられる高分子化合物、その高分子化合物の中間組成物、負極電極、蓄電装置、負極電極用スラリー、高分子化合物の製造方法、及び負極電極の製造方法に関する。
二次電池を用いた製品は増加の一途を辿っており、携帯電話やノート型パソコン等の携帯機器には二次電池が多用されている。また、二次電池は電気自動車用の大型電源としても注目されている。
ところで、二次電池の電極は、例えば、銅やアルミニウム等の金属材料により形成された集電体と、その集電体上に結着された活物質層とから構成されている。そして、活物質層には、活物質を集電体に結着させるための電極用バインダー(結着剤)が含まれることが一般的である。近年、この電極用バインダーとして、安価な高分子化合物であるポリアクリル酸を利用する試みがなされている。例えば、特許文献1には、ポリアクリル酸リチウム塩やポリアクリル酸ナトリウム塩を含む電極用バインダーが開示されている。特許文献2には、ポリアクリル酸とポリエチレンイミンとを含む電極用バインダーが開示されている。特許文献3には、ポリアクリル酸とアミン化合物とを含む電極用バインダーが開示されている。
特開2009−080971号公報 特開2009−135103号公報 特開2003−003031号公報
本研究者らによる鋭意研究の結果、ポリアクリル酸と、特定の分子構造を有する多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを縮合してなる高分子化合物を、二次電池等の蓄電装置の負極用バインダーとして用いることにより、負極活物質層の密着性が向上することを見出した。
この発明の目的は、蓄電装置の負極用バインダーとして用いた場合に、負極活物質層の密着性を向上させることのできる高分子化合物を提供すること、及びその高分子化合物を得るための中間組成物を提供することにある。また、その高分子化合物を負極バインダーとして用いた負極電極、蓄電装置、及び負極電極用スラリーを提供することにある。また、その高分子化合物の製造方法、及び負極電極の製造方法を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、蓄電装置の負極用バインダーとして用いられる高分子化合物であって、ポリアクリル酸と、下記一般式(1)に示す多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とが縮合してなることを特徴とする。
(Yは、炭素数1〜4の直鎖アルキル基、フェニレン基、又は酸素原子であり、R1,R2はそれぞれ独立して、単数又は複数の水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基である。)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の高分子化合物において、前記多官能カルボン酸は、カルボキシル基を有する2以上の炭素骨格からなる環状構造が連結された多環式の多官能カルボン酸であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、蓄電装置の負極用バインダーとして用いられる高分子化合物であって、ポリアクリル酸により構成される鎖状構造と、前記鎖状構造内又は鎖状構造間におけるカルボン酸側鎖同士を接続する架橋構造とを有し、前記架橋構造は、下記一般式(2)〜(4)から選ばれる少なくとも一種の架橋構造であることを特徴とする。
(PAAは、ポリアクリル酸により構成される鎖状構造を示し、Xは、下記一般式(5)に示す構造である。)
(Yは、炭素数1〜4の直鎖アルキル基、フェニレン基、又は酸素原子であり、R1,R2はそれぞれ独立して、単数又は複数の水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基であり、Zは、炭素骨格からなる環状構造であり、A1,A2はそれぞれ独立して水素原子又はカルボニル炭素であり、nは1〜5の整数である。)
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の高分子化合物において、前記架橋構造におけるZは、2以上の炭素骨格からなる環状構造が連結された多環式の環状構造であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、蓄電装置の負極用バインダーとして用いられる高分子化合物の中間組成物であって、ポリアクリル酸と、下記一般式(1)に示す多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸と、非水溶媒とを含有し、液状をなすことを特徴とする。
(Yは、炭素数1〜4の直鎖アルキル基、フェニレン基、又は酸素原子であり、R1,R2はそれぞれ独立して、単数又は複数の水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基である。)
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の中間組成物において、前記多官能カルボン酸は、カルボキシル基を有する2以上の炭素骨格からなる環状構造が連結された多環式の多官能カルボン酸であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の高分子化合物の製造方法であって、ポリアクリル酸と、下記一般式(1)に示す多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを、150℃〜230℃の温度で加熱することを特徴とする。
(Yは、炭素数1〜4の直鎖アルキル基、フェニレン基、又は酸素原子であり、R1,R2はそれぞれ独立して、単数又は複数の水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基である。)
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の高分子化合物の製造方法において、前記ポリアクリル酸と、前記多官能アミンと、前記多官能カルボン酸と、非水溶媒とを含有する中間組成物を、40℃〜140℃の温度で予備加熱した後に、150℃〜230℃の温度で加熱することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、蓄電装置の負極電極であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子化合物を含有する負極用バインダーと、負極活物質とを備え、前記負極活物質として、リチウムを吸蔵及び放出し得る炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、及びリチウムと合金化可能な元素を有する化合物から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の負極電極において、前記負極活物質として、CaSiから脱カルシウム化反応を経て得られるシリコン材料、Si、及びSiO(0>v>2)から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする。
請求項11に記載の発明の蓄電装置は、請求項9又は請求項10に記載の負極電極と、非水電解質とを備えることを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、蓄電装置の負極電極の製造に用いられる負極電極用スラリーであって、請求項5又は請求項6に記載の中間組成物と、負極活物質と、溶剤とを含有し、前記負極活物質として、リチウムを吸蔵及び放出し得る炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、及びリチウムと合金化可能な元素を有する化合物から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする。
請求項13に記載の発明は、蓄電装置の負極電極の製造方法であって、請求項12に記載の負極電極用スラリーを用いて、集電体に対して負極活物質層を形成することを特徴とする。
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の負極電極の製造方法において、前記負極電極用スラリーは、前記負極活物質として、CaSiから脱カルシウム化反応を経て得られるシリコン材料、Si、及びSiO(0>v>2)から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする。
本発明によれば、負極活物質層の密着性を向上させることができる。
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の高分子化合物は、(A)ポリアクリル酸と、(B)多官能アミンと、(C)多官能カルボン酸とが縮合してなる高分子化合物である。
(A)ポリアクリル酸は、アクリル酸を構成単位とするホモポリマーである。ポリアクリル酸の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、10,000〜2,000,000の範囲であることが好ましく、25,000〜1,800,000の範囲であることがより好ましく、50,000〜1,500,000の範囲であることが更に好ましい。
(B)多官能アミンは、下記一般式(1)に示す構造を有する化合物である。
一般式(1)において、Yは炭素数1〜4の直鎖アルキル基、フェニレン基、又は酸素原子である。また、各ベンゼン環におけるYの結合位置は、アミノ基に対するオルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。
Yが直鎖アルキル基及びフェニレン基である場合において、当該構造を構成する炭素原子には置換基が結合されていてもよい。例えば、直鎖アルキル基を構成する炭素原子に結合される置換基としては、メチル基、エチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、オキソ基が挙げられる。これらの置換基は、一種のみが結合されていてもよいし、二種以上が結合されていてもよい。また、一つの炭素原子に結合される置換基の数は、一つであってもよいし、二つであってもよい。また、直鎖アルキル基及びフェニレン基を構成する炭素原子に結合される置換基は、アミノ基、又はアミノ基を含む置換基であってもよく、この場合には、3以上のアミノ基を有する多官能アミンとなる。
一般式(1)において、R1,R2は、それぞれ独立して、単数又は複数の水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基である。R1がメチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基である場合において、R1の結合位置は、アミノ基に対するオルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。R2についても同様である。
(B)多官能アミンの具体例について記載する。
Yが直鎖アルキル基である多官能アミンとしては、例えば、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、9、9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、パラローズアニリンが挙げられる。
Yがフェニレン基である多官能アミンとしては、例えば、1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼンが挙げられる。Yが酸素原子である多官能アミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが挙げられる。なお、1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン、及びパラローズアニリンは、3つのアミノ基を有する三官能アミンである。上記の多官能アミンのうちの一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
(B)多官能アミンの配合割合は、(B)多官能アミンのアミノ基の数に応じて設定される。すなわち、(A)ポリアクリル酸におけるカルボキシル基の数が、(B)多官能アミンにおけるアミノ基の数よりも多くなるように上記配合割合は設定される。換言すると、(B)多官能アミンにおけるアミノ基1当量に対して、(A)ポリアクリル酸におけるカルボキシル基が1当量以上となるように上記配合割合は設定される。なお、(A)ポリアクリル酸のカルボキシル基の数と(B)多官能アミンのアミノ基の数との比率(カルボキシル基/アミノ基比率)は、1〜15の範囲であることが好ましく、3〜10の範囲であることがより好ましい。
(C)多官能カルボン酸は、分子構造内に炭素骨格からなる環状構造を有し、当該環状構造に2つ以上のカルボキシル基が結合した化合物である。
炭素骨格からなる環状構造としては、例えば、4員環〜8員環の単環式の構造や、複数(例えば、2〜3)の4員環〜8員環が組み合わされた多環式の環状構造が挙げられる。4員環以上(環を構成する原子が4以上)の構造を採用することにより、加熱処理時における多官能カルボン酸の分解が抑制される。8員環以下の構造を採用することにより、環の運動が大きすぎるために、高分子化合物の熱収縮を抑制する効果が低下することが抑制される。
なお、炭素骨格からなる環状構造は、炭素原子のみからなる環状構造(炭素環構造)であってもよいし、炭素原子と他の原子とからなる環状構造(複素環構造)であってもよい。また、炭素骨格からなる環状構造には置換基が結合されていてもよい。
炭素骨格からなる環状構造に結合されるカルボキシル基は、1又は2以上の酸無水物構造であってもよい。
また、多環式の環状構造は、複数の環状構造の間で環状構造を構成する一部の原子が共有された融合型の多環式の環状構造であってもよいし、2以上の環状構造が連結された連結型の多環式の環状構造であってもよい。融合型の多環式の環状構造を有する多官能カルボン酸を用いた場合には、負極活物質層の密着性の向上効果がより大きなものとなる。
また、連結型の多環式の環状構造を有する多官能カルボン酸の中では、カルボキシル基を有する2以上の炭素骨格からなる環状構造が連結された多官能カルボン酸が好ましい。カルボキシル基を有する2以上の炭素骨格からなる環状構造が連結された多官能カルボン酸において、環状構造同士は、直接連結されていても、特定の連結構造を介して連結されていてもよいが、特定の連結構造を介して連結されていることがより好ましい。特定の連結構造を介して連結されている場合には、当該構造部分における柔軟性が高くなる。特定の連結構造としては、例えば、直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の炭素数1〜4の炭素鎖、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、フェニレン基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。また、これらの連結構造には、置換基が結合されていてもよい。
(C)多官能カルボン酸の具体例としては、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,1,3−シクロペンタントリカルボン酸、1,2,4−シクロペンタントリカルボン酸、1,3,4−シクロペンタントリカルボン酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
融合型の多環式の環状構造を有する多官能カルボン酸の具体例としては、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
カルボキシル基を有する2以上の炭素骨格からなる環状構造が直接、連結された多官能カルボン酸の具体例としては、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ビフタル酸無水物が挙げられる。
炭素骨格からなる環状構造同士が特定の連結構造を介して連結された多官能カルボン酸の具体例としては、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4’−オキシジフタル酸、4,4’−(エチン−1,2−ジイル)ジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物が挙げられる。
上記の多官能カルボン酸のうちの一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
(C)多官能カルボン酸の配合割合は、モル比において、(B)多官能アミンと(C)多官能カルボン酸との比率(多官能アミンのアミノ基の数/多官能カルボン酸のカルボキシル基の数)が、7〜25の範囲となる配合割合であることが好ましく、5〜15の範囲となる配合割合であることがより好ましい。
また、(C)多官能カルボン酸の配合割合は、モル比において、(B)多官能アミンに対する比率(多官能カルボン酸のモル数/多官能アミンのモル数)が、0.05以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。上記比率の上限値は、例えば、1.2である。当該比率を高く設定するほど、蓄電装置のサイクル特性が向上する一方、調製時に多官能カルボン酸が結晶化しやすい傾向がある。そのため、当該比率は、調製時に多官能カルボン酸が結晶化しない範囲において、高い値に設定することが好ましい。
なお、カルボキシル基を有する2以上の炭素骨格からなる環状構造が連結された多官能カルボン酸や、トリメリット酸(トリメリット酸無水物)等の非対称の分子構造を有する多官能カルボン酸は、他の多官能カルボン酸と比較して結晶化が生じ難く、上記比率をより高い値に設定することができる。そのため、蓄電装置のサイクル特性をより高めることができる。
本実施形態の高分子化合物は、(A)ポリアクリル酸、(B)多官能アミン、及び(C)多官能カルボン酸を溶媒中で混合する混合工程と、混合工程にて得られた中間組成物を加熱処理する加熱工程とを経ることにより得られる。
混合工程は、(A)ポリアクリル酸と(B)多官能アミンと(C)多官能カルボン酸と溶媒とが混合されてなる液状の中間組成物を得る工程である。混合工程に用いる溶媒としては、(A)ポリアクリル酸、(B)多官能アミン、及び(C)多官能カルボン酸が溶解する溶媒を適宜選択して用いることができる。特に、溶解性向上の観点においては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、エタノール、プロパノール等の非水溶媒を用いることが好ましい。
加熱工程は、中間組成物を加熱処理することにより、中間組成物に含有される(A)ポリアクリル酸と(B)多官能アミンと(C)多官能カルボン酸とを縮合させる工程である。加熱工程における加熱温度は、架橋構造の形成を促進させる観点、すなわちアミド結合部やイミド結合部の効率的な形成の観点においては、150〜230℃の範囲であることが好ましく、180〜200℃の範囲であることがより好ましい。
中間組成物を加熱する際に、アミド結合及びイミド結合を形成する縮合反応を進行させるため、又は縮合反応の反応速度を高めるために、中間組成物に触媒を添加してもよい。上記触媒としては、例えば、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−カルボニルジイミダゾール、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジフェニルリン酸アジド、BOP試薬等の脱水縮合触媒を好適に用いることができる。
なお、加熱工程に供される中間組成物は、予備加熱処理された中間組成物であることが好ましい。予備加熱処理の温度は、40〜140℃の範囲であることが好ましく、60〜130℃の範囲であることがより好ましい。予備加熱処理を行うことにより、中間組成物に含有される(A)ポリアクリル酸、(B)多官能アミン、及び(C)多官能カルボン酸が会合して、カルボキシル基とアミノ基の縮合反応が進行しやすい状態が形成される。その結果、加熱工程において、縮合反応を効率的に進行させることができる。予備加熱処理により、カルボキシル基とアミノ基の縮合反応が部分的に進行して、アミド結合部やイミド結合部が形成されてもよい。
また、予備加熱処理された中間組成物を用いる場合、加熱工程は、中間組成物に含有される溶媒を除去した状態で行うことが好ましい。この場合には、(A)ポリアクリル酸と(B)多官能アミンと(C)多官能カルボン酸との縮合反応が進行しやすくなる。
そして、加熱工程を経ることにより、(A)ポリアクリル酸と(B)多官能アミンと(C)多官能カルボン酸とが縮合してなる高分子化合物が得られる。この高分子化合物は、(A)ポリアクリル酸のカルボキシル基と(B)多官能アミンのアミノ基との間にアミド結合又はイミド結合が形成されるとともに、(B)多官能アミンのアミノ基と(C)多官能カルボン酸のカルボキシル基との間にアミド結合又はイミド結合が形成されて、(A)ポリアクリル酸同士が架橋された構造をなしていると考えられる。つまり、高分子化合物は、ポリアクリル酸により構成される鎖状構造と、その鎖状構造内又は鎖状構造間におけるカルボン酸側鎖同士を接続する架橋構造とを有している。そして、その架橋構造は、下記一般式(2)〜(4)から選ばれる少なくとも一種の架橋構造である。
一般式(2)〜(4)において、PAAは、ポリアクリル酸により構成される鎖状構造を示している。また、Xは、下記一般式(5)に示す構造である。なお、イミド構造を有する一般式(3)〜(4)において、一つのイミド構造を構成する二つのカルボニル基は、それぞれ異なる鎖状構造に結合されるカルボニル基であってもよいし、同一の鎖状構造に結合されるカルボニル基であってもよい。例えば、イミド構造を構成する二つのカルボキニル基が、同一の鎖状構造における隣接する炭素に結合されるカルボニル基である場合、イミド構造としてマレイミド構造が形成される。
一般式(5)において、Yは炭素数1〜4の直鎖アルキル基、フェニレン基、又は酸素原子である。また、各ベンゼン環におけるYの結合位置は、アミノ基に対するオルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。なお、一般式(5)におけるYは、一般式(1)におけるYに準じた構造となる。
一般式(5)において、R1,R2は、それぞれ独立して、単数又は複数の水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基である。R1がメチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基である場合において、R1の結合位置は、アミノ基に対するオルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。R2についても同様である。なお、一般式(5)におけるR1,R2は、一般式(1)におけるR1,R2に準じた構造となる。
一般式(5)において、Zは炭素骨格からなる環状構造である。炭素骨格からなる環状構造としては、例えば、4員環〜8員環の単環式の構造や、複数の4員環〜8員環が組み合わされた多環式の構造が挙げられる。多環式の環状構造は、複数の環状構造の間で環状構造を構成する一部の原子が共有された融合型の多環式の環状構造であってもよいし、2以上の環状構造が連結された連結型の多環式の環状構造であってもよい。融合型の多環式の環状構造である場合には、負極活物質層の密着性の向上効果がより大きなものとなる。
また、連結型の多環式の環状構造においては、2以上の炭素骨格からなる環状構造が連結された構造であることが好ましい。2以上の炭素骨格からなる環状構造が連結された構造において、環状構造同士は、直接連結されていても、特定の連結構造を介して連結されていてもよいが、特定の連結構造を介して連結されていることがより好ましい。特定の連結構造を介して連結されている場合には、当該構造部分における柔軟性が高くなる。特定の連結構造としては、例えば、直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の炭素数1〜4の炭素鎖、酸素原子、硫黄原子、フェニレン基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。また、これらの連結構造には、置換基が結合されていてもよい。
なお、炭素骨格からなる環状構造は、炭素原子のみからなる環状構造(炭素環構造)であってもよいし、炭素原子と他の原子とからなる環状構造(複素環構造)であってもよい。また、炭素骨格からなる環状構造には置換基が結合されていてもよい。なお、一般式(5)におけるZは、(C)多官能カルボン酸に準じた構造となる。
一般式(5)において、A1,A2は、それぞれ独立して、水素原子、又はカルボニル炭素である。A1が水素原子である場合、A1に結合する窒素原子は、アミド構造を構成し、A1がカルボニル炭素である場合、A1に結合する窒素原子は、イミド構造を構成する。A2についても同様である。なお、カルボニル炭素としては、ポリアクリル酸由来のカルボニル炭素、及び多官能カルボン酸由来のカルボニル炭素が該当する。多官能カルボン酸由来のカルボニル炭素は、一般式(2)〜(4)の架橋構造における一般式(5)に示す部分を構成するカルボニル炭素であってもよい。すなわち、架橋構造同士が網目状に結合した構造であってもよい。
一般式(5)において、nは1〜5の整数である。
高分子化合物は、その架橋構造において、アミド結合部及びイミド結合部の両方を有するものであることが好ましい。つまり、架橋構造として、少なくとも一般式(2)及び一般式(4)の架橋構造を有している、又は少なくとも一般式(3)の架橋構造を有していることが好ましい。
また、高分子化合物は、二つのカルボキシル基が脱水縮合することにより形成される酸無水物構造(CO−O−CO)を分子構造内に有するものであってもよい。酸無水物構造は、同一の鎖状構造(PAA)内に形成される構造であってもよいし、異なる鎖状構造(PAA)間に形成される構造であってもよい。すなわち、酸無水物構造に含まれる二つのカルボニル炭素が、同一の鎖状構造(PAA)に結合されていてもよいし、それぞれ異なる鎖状構造(PAA)に結合されていてもよい。
また、本実施形態の高分子化合物は、一般式(5)に示す構造以外のその他の架橋構造を更に有するものであってもよい。その他の架橋構造としては、例えば、一般式(5)において「n=0」である架橋構造や、一般式(1)に該当しないその他の多官能アミンに由来する架橋構造が挙げられる。その他の架橋構造を付加することにより、高分子化合物の強度や柔軟性等の物性を調整することができる。
なお、その他の多官能アミンとしては、例えば、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、2−アミノアニリン(1,2−フェニレンジアミン)、3−アミノアニリン(1,3−フェニレンジアミン)、4−アミノアニリン(1,4−フェニレンジアミン)、2,4−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,6-ジアミノピリジン、1,3−ジイミノイソインドリンが挙げられる。
次に、本実施形態の高分子化合物を負極用バインダーとして用いた負極電極を製造する方法の一例について記載する。
まず、負極活物質、負極用バインダー、溶剤を混合してスラリーを調製する。その際、必要に応じて導電助剤等の他の成分を更に混合してもよい。
負極活物質としては、二次電池等の蓄電装置の負極活物質として用いられる公知の物質、例えば、炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、及びリチウムと合金化可能な元素を有する化合物を用いることができる。
炭素系材料としては、例えば、リチウムを吸蔵及び放出可能な炭素系材料を用いることができ、その具体例としては、難黒鉛化性炭素、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭素、カーボンブラック類が挙げられる。
リチウムと合金化可能な元素としては、例えば、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biが挙げられる。これらのなかでも、Siが特に好ましい。
リチウムと合金化可能な元素を有する化合物としては、例えば、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biから選ばれる元素を有する化合物が挙げられる。これらのなかでも、Siを有する化合物であるシリコン系材料が特に好ましい。
シリコン系材料としては、例えば、SiB、SiB、MgSi、NiSi、TiSi、MoSi、CoSi、NiSi、CaSi、CrSi、CuSi、FeSi、MnSi、NbSi、TaSi、VSi、WSi、ZnSi、SiC、Si、SiO、SiO(0<V≦2)、SnSiO、LiSiOが挙げられる。これらのなかでも、SiO(0<V≦2)が特に好ましい。
また、シリコン系材料として、国際公開2014/080608号に開示される、CaSiから脱カルシウム化反応を経て得られるシリコン材料を用いることもできる。上記シリコン材料は、例えば、CaSiを酸(例えば、塩酸やフッ化水素)で処理して得られる層状ポリシランを、脱カルシウム化(例えば、300〜1000℃の加熱処理)して得られるシリコン材料である。本実施形態の高分子化合物は、充放電時における膨張収縮の度合が大きい負極活物質であるシリコン系材料と組み合わせて用いることが特に好ましい。なお、負極活物質として、上記の物質のうちの一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
スラリーに混合される負極用バインダーとしては、上記中間組成物が用いられる。
また、負極用バインダーとして、他の負極用バインダーを併用してもよい。他の負極用バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化エチレン、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイミド、ポリアミドイミド、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、メタクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、変性ポリフェニレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、フェノール樹脂が挙げられる。
また、他の負極用バインダーとして、ポリアクリル酸と、一般式(1)に示す構造の多官能アミンとが縮合してなる高分子化合物、すなわちポリアクリル酸からなる鎖状構造と、一般式(5)において「n=0」である架橋構造とを有する高分子化合物とを有する高分子化合物を用いてもよい。
これらの他の負極用バインダーのうち、一種のみを併用してもよいし、二種以上を併用してもよい。なお、他の負極用バインダーを併用する場合には、負極用バインダーの総固形分に対して、中間組成物の固形分が1質量%以上含まれていることが好ましく、10質量%以上含まれていることがより好ましい。
負極活物質と負極用バインダーとの質量比における配合割合(負極活物質:負極用バインダー)は、負極活物質及び負極用バインダーの種類に応じて適宜設定することができる。上記配合割合は、例えば、5:3〜99:1の範囲であることが好ましく、3:1〜97:3の範囲であることがより好ましく、16:3〜95:5の範囲であることが更に好ましい。
溶剤としては、二次電池等の蓄電装置の電極の作製時に用いられる公知の溶剤を、負極活物質及び負極用バインダーの種類に応じて適宜用いることができる。溶剤の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
導電助剤としては、二次電池等の蓄電装置の負極電極に用いられる公知の導電助剤を用いることができる。導電助剤の具体例としては、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック等が挙げられる。これらの導電助剤のうち、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
なお、スラリー中に導電助剤を含有させる場合には、導電助剤と共に分散剤を含有させることが好ましい。分散剤の具体例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、トリアジン化合物等が挙げられる。これらの分散剤のうち、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
次いで、上記のスラリーを集電体に塗布して、集電体の表面にスラリーからなる負極活物質層を形成する。その後、負極活物質層に含有される溶媒(スラリーの溶剤、及び上記中間組成物に含有される溶媒)を除去して、負極活物質層を乾燥させるとともに、加熱処理することにより負極活物質層を硬化させる。この加熱処理により、上記中間組成物に含有される(A)ポリアクリル酸と(B)多官能アミンと(C)多官能カルボン酸とが縮合して、負極活物質層中に本実施形態の高分子化合物が形成される。なお、上記加熱処理は、負極活物質層に溶媒が含まれている状態で行うこともできるが、先に乾燥処理を行い、負極活物質層を乾燥させた状態として行うことがより好ましい。
乾燥処理及び加熱処理の具体的方法としては、例えば、常圧下又は減圧下において、熱風、赤外線、マイクロ波、高周波等の熱源を用いて加熱する方法が挙げられる。加熱処理を行う際には、負極活物質層側から加熱するよりも集電体側から加熱することが好ましい。また、乾燥処理は、高温で素早く加熱するよりも、低温でゆっくりと加熱することが好ましく、加熱処理は、低温でゆっくり加熱するよりも、高温で素早く加熱することが好ましい。このように加熱することにより、蓄電装置の特性(初期効率やサイクル特性)を高めることができる。
集電体としては、二次電池等の蓄電装置の負極用の集電体として用いられる公知の金属材料を用いることができる。集電体として利用できる金属材料としては、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、モリブデン、ステンレスが挙げられる。
本実施形態の高分子化合物を負極用バインダーとして用いた負極電極は、電解質として非水電解質を備える非水系の蓄電装置に好適に用いることができる。蓄電装置としては、例えば、二次電池、電気二重層コンデンサ、リチウムイオンキャパシタが挙げられる。また、こうした蓄電装置は、電気自動車及びハイブリッド自動車のモータ駆動用の非水系二次電池や、パソコン、携帯通信機器、家電製品、オフィス機器、産業機器等に利用される非水系二次電池として有用である。
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)本実施形態の高分子化合物は、(A)ポリアクリル酸と、(B)多官能アミンと、(C)多官能カルボン酸とが縮合してなる高分子化合物である。また、本実施形態の高分子化合物は、ポリアクリル酸により構成される鎖状構造と、鎖状構造内又は鎖状構造間におけるカルボン酸側鎖同士を接続する架橋構造とを有し、架橋構造は、上記一般式(2)〜(4)から選ばれる少なくとも一種の架橋構造である。
本実施形態の高分子化合物を負極用バインダーとして用いることにより、負極活物質層の密着性が向上する。
ポリアクリル酸により構成される鎖状構造は、熱を加えられた際に熱収縮しやすい性質を有している。そして、負極用バインダーとして用いられる高分子化合物において、ポリアクリル酸により構成される鎖状構造が熱収縮した状態となると、局所的に作用する応力負荷を緩和するという鎖状構造の能力が弱められてしまう。例えば、負極活物質層を硬化させる加熱処理時に加えられる熱や、縮合時(アミド結合の形成時)に生じる反応熱によって、ポリアクリル酸により構成される鎖状構造が熱収縮する場合がある。
本実施形態の高分子化合物は、ポリアクリル酸により構成される鎖状構造の間に、(B)多官能アミン由来の複数のベンゼン環構造と、(C)多官能カルボン酸由来の炭素骨格からなる環状構造とが介在されることによって、鎖状構造同士が接近し難くなっている。そのため、加熱処理時など、鎖状構造が高温下に曝されたとしても、鎖状構造の熱収縮が抑制されて、鎖状構造の応力を緩和する能力を好適に維持させることができる。したがって、本実施形態の高分子化合物は、応力を緩和する能力に優れたものであり、負極用バインダーとして用いることによって、負極活物質層の密着性を向上させることができる。また、負極活物質層の密着性が向上することにより、蓄電装置のサイクル特性も向上する。
(2)上記一般式(5)に示す架橋構造の部分構造において、Yは炭素数1〜4の直鎖アルキル基、フェニレン基、又は酸素原子である。
上記構成によれば、架橋構造内に運動が可能な部分構造を有することにより、高分子化合物の伸縮性が向上する。これにより、本実施形態の高分子化合物を用いた負極用バインダーは、リチウム等の吸蔵及び放出に伴う膨張及び収縮による体積変化に対して追従しやすいものとなる。その結果、蓄電装置の電池特性が高められる。
(3)上記一般式(5)に示す架橋構造の部分構造において、Zは、複数の環状構造の間で環状構造を構成する一部の原子が共有された融合型の多環式の環状構造である。
上記構成によれば、当該高分子化合物を負極用バインダーとして用いた際に、負極活物質層の密着性が更に向上する。
(4)上記一般式(5)に示す架橋構造の部分構造において、2以上の環状構造が連結された連結型の多環式の環状構造である。そして、(B)多官能アミンに由来する構造部分に対する(C)多官能カルボン酸に由来する構造部分の割合が、0.15以上である。
上記構成によれば、当該高分子化合物を負極用バインダーとして用いた際に、蓄電装置のサイクル特性が更に向上する。
(5)本実施形態の高分子化合物は、ポリアクリル酸のカルボキシル基と、多官能アミンのアミノ基とがアミド結合により結合した部位と、イミド結合により結合した部位とを有する。また、本実施形態の高分子化合物は、架橋構造として、少なくとも上記一般式(2)及び上記一般式(4)の架橋構造を有する、又は少なくとも上記一般式(3)の架橋構造を有する。
上記構成によれば、負極活物質と混合されて負極電極を形成する状態において、その電極構造の強度が高められる。これにより、リチウム等の吸蔵及び放出に伴う膨張及び収縮による体積変化に対して、電極構造が維持されやすくなる。その結果、蓄電装置の特性を高める作用をより確実に得ることができる。
また、上記構成によれば、非水電解質等の有機物に対する高分子化合物の溶解性が低下する。そのため、電気化学反応中の非水電解質への高分子化合物の溶出を抑制する効果も得られると考えられる。
以下に、上記実施形態をさらに具体化した実施例について説明する。
<試験1>
ポリアクリル酸と、特定の分子構造を有する多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを縮合してなる高分子化合物を負極用バインダーとして用いた場合における負極活物質層の剥離強度、及び蓄電装置のサイクル特性について評価した。
また、比較として、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸を縮合していない高分子化合物、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸に代えて、非環状の分子構造を有する多官能カルボン酸を縮合させた高分子化合物、及びポリカルボン酸を負極用バインダーとして用いた場合における負極活物質層の剥離強度、及び蓄電装置のサイクル特性についても評価した。
なお、以下では、ポリアクリル酸を「PAA」、N−メチル−2−ピロリドンを「NMP」と、それぞれ表記する。
(実施例1:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+トリメリット酸)
重量平均分子量80万のPAAをNMPに溶解させて、10質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液60g(PAAのモノマー換算で83.3mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内にトリメリット酸600mg(2.85mmol)を加えて室温にて30分間撹拌した後、更に4,4’−ジアミノジフェニルメタンの50質量%NMP溶液8.2g(20.1mmol)を滴下して、室温にて30分間撹拌した。その後、ディーン・スターク装置を用いて、110℃にて3時間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例1の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(参考例1:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン)
重量平均分子量80万のPAAをNMPに溶解させて、10質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液62.1g(PAAのモノマー換算で86.2mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内に4,4’−ジアミノジフェニルメタンの50質量%NMP溶液8.2g(20.1mmol)を滴下して、室温にて30分間撹拌した。その後、ディーン・スターク装置を用いて、110℃にて3時間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、参考例1の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(参考例2:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+1,3,5−プロパントリカルボン酸)
重量平均分子量80万のPAAをNMPに溶解させて、10質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液60g(PAAのモノマー換算で83.3mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内に1,3,5−プロパントリカルボン酸502g(2.85mmol)を加えて室温にて30分間撹拌した後、更に4,4’−ジアミノジフェニルメタンの50質量%NMP溶液8.2g(20.1mmol)を滴下して、室温にて30分間撹拌した。その後、ディーン・スターク装置を用いて、110℃にて3時間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、参考例2の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(シリコン材料の作製)
0℃で氷浴したフッ化水素を1質量%の濃度で含有する濃塩酸20mlに、CaSi5gを加えて1時間撹拌した後、水を加えて更に5分間撹拌した。反応液を濾過して得られた黄色粉体を水及びエタノールで洗浄し、これを減圧乾燥することにより、層状ポリシランを得た。得られた層状ポリシランをアルゴン雰囲気下で500℃に加熱することにより、ポリシランから水素が離脱したシリコン材料を得た。
(電極シートの作製)
上記シリコン材料70質量部、天然黒鉛15質量部、アセチレンブラック5質量部、実施例1の中間組成物のNMP溶液10質量部を混合するとともに、この混合物にNMPを加えてスラリーを調製した。集電体としての30μmの電解銅箔の表面に対して、ドクターブレード法を用いてスラリーを膜状に塗布した。そして、スラリー中のNMPを揮発させて除去することにより、電解銅箔上に負極活物質層を形成した。次いで、ロールプレス機を用いて、負極活物質層の厚さが20μmとなるように電解銅箔及び負極活物質層を圧縮することにより、電解銅箔と負極活物質層を強固に密着接合させた。
その後、NMPが除去されて乾燥した状態の負極活物質層に対して、真空中(減圧下)にて180℃、2時間の加熱処理を行うことにより、負極活物質層に含まれる中間組成物を縮合反応させるとともに、負極活物質層を加熱硬化させた。これにより、架橋構造を有する高分子化合物を負極用バインダーとして含有する電極シートを得た。
また、実施例のNMP溶液に代えて、PAA、参考例1、2の中間組成物を用いて同様の電極シートを作製した。
(剥離強度の評価)
得られた電極シートを2.5cm×4cmに裁断したものを測定サンプルとして、剥離試験装置(MINEBEA社製、LTS−50N−S300)を用いて、JIS K 6854−1に準拠した90度剥離試験を行った。90度剥離試験にて測定された強度を線幅(2.5cm)で除算することにより、測定サンプルの剥離強度を算出した。その結果を表1に示す。なお、使用した剥離試験装置により測定可能な測定サンプルの剥離強度の上限値は1.8N/cmであり、この値を超えた場合については、「>1.8」とした。
(リチウムイオン二次電池の作製)
電極シートを直径11mmの円形に裁断してなる負極電極(評価極)と、厚さ500μmの金属リチウム箔を直径13mmの円形に裁断してなる正極電極との間にセパレータを挟装して電極体電池とした。電池ケース内に、電極体電池を収容するとともに非水電解質を注入して、電池ケースを密閉することにより、リチウムイオン二次電池を得た。なお、セパレータとしては、ヘキストセラニーズ社製ガラスフィルター及びセルガード社製celgard2400を用いた。非水電解質としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比1:1で混合した混合溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウムを1Mの濃度となるように溶解させた非水電解質を用いた。
(電池特性の評価)
得られたリチウムイオン二次電池について、直流電流0.2mAで負極電極における正極電極に対する電圧が0.01Vになるまで放電を行い、放電が終了してから10分後に、直流電流0.2mAで負極電極における正極電極に対する電圧が1.0Vになるまで充電を行った。上記の放電及び充電を1サイクルとして規定サイクルの充放電を行い、下記式に基づいてサイクル特性を算出した。その結果を表1に示す。
サイクル特性(%)=(規定サイクル後の充電容量/初期充電容量)×100
表1に示すように、PAAを負極用バインダーとして用いた試験例2と比較して、実施1の中間組成物から得られる高分子化合物を負極用バインダーとして用いた試験例1においては、負極活物質層の剥離強度が向上することが確認できた。そして、試験例3、4の結果から、上記の剥離強度の向上効果は、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸を縮合していない高分子化合物を負極用バインダーとして用いた試験例3、及び環状の分子構造を有する多官能カルボン酸に代えて、非環状の分子構造を有する多官能カルボン酸を縮合させた高分子化合物を負極用バインダーとして用いた試験例4においては得られないことが確認できた。
また、PAAを負極用バインダーとして用いた試験例2と比較して、特定の分子構造を有する多官能アミンが縮合されている高分子化合物を負極用バインダーとして用いた試験例1、3、4においては、二次電池のサイクル特性が向上することが確認できた。そして、これら試験例1、3、4の中でも、特定の分子構造を有する多官能アミンと環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とが縮合されている高分子化合物を負極用バインダーとして用いた試験例1が、特に高いサイクル特性を示すことが確認できた。
<試験2>
次に、PAAと、特定の分子構造を有する多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを縮合してなる高分子化合物を負極用バインダーとして用いた場合において、中間組成物の調製時における予備加熱処理の条件を異ならせた場合における負極活物質層の剥離強度の変化について評価した。
(実施例1A:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+トリメリット酸)
重量平均分子量80万のPAAをNMPに溶解させて、10質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液60g(PAAのモノマー換算で83.3mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内にトリメリット酸600mg(2.85mmol)を加えて室温にて30分間撹拌した後、更に4,4’−ジアミノジフェニルメタンの50質量%NMP溶液8.2g(20.1mmol)を滴下して、室温にて30分間撹拌した。その後、ディーン・スターク装置を用いて、130℃にて3時間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例1Aの中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(剥離強度の評価)
実施例1Aの中間組成物を用いて、中間組成物から得られる高分子化合物を負極バインダーとする電極シートを作製し、得られた電極シートにおける負極活物質層の剥離強度を評価した。その結果を表2に示す。なお、電極シートの作製方法及び剥離強度の評価方法は、試験1の方法と同じである。
表2に示すように、中間組成物の調製時に行う予備加熱処理の温度を高めることにより、負極活物質層の剥離強度が更に向上することが確認できた。
<試験3>
次に、PAAと、特定の分子構造を有する多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを縮合してなる高分子化合物を負極用バインダーとして用いた場合において、PAAの分子量を異ならせた場合における負極活物質層の剥離強度の変化について評価した。
(実施例2:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+トリメリット酸)
重量平均分子量10万のPAA水溶液に対して、真空乾燥とアセトンによる溶媒置換により水分量が1質量%以下になるまで水分を除去した。水分を除去したPAAをNMPに溶解させて、10質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液60g(PAAのモノマー換算で83.3mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内にトリメリット酸600mg(2.85mmol)を加えて室温にて30分間撹拌した後、更に4,4’−ジアミノジフェニルメタンの50質量%NMP溶液8.2g(20.1mmol)を滴下して、室温にて30分間撹拌した。その後、ディーン・スターク装置を用いて、130℃にて3時間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例2の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(剥離強度の評価)
実施例2の中間組成物を用いて、中間組成物から得られる高分子化合物を負極バインダーとする電極シートを作製し、得られた電極シートにおける負極活物質層の剥離強度を評価した。その結果を表3に示す。なお、電極シートの作製方法及び剥離強度の評価方法は、試験1の方法と同じである。
表3に示すように、PAAの分子量を異ならせた場合においても、負極活物質層の剥離強度に大きな差は確認されなかった。この結果から、PAAと、特定の分子構造を有する多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを縮合してなる高分子化合物において、PAAからなる鎖状構造部分の長さは、高分子化合物の分子構造に対して大きな影響を与えないことが示唆される。
<試験4>
次に、PAAと、特定の分子構造を有する多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを縮合してなる高分子化合物を負極用バインダーとして用いた場合において、特定の分子構造を有する多官能アミンの種類を異ならせた場合における負極活物質層の剥離強度の変化及び蓄電装置のサイクル特性の変化について評価した。
(実施例3:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルエーテル+トリメリット酸)
重量平均分子量80万のPAAをNMPに溶解させて、10質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液60g(PAAのモノマー換算で83.3mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内にトリメリット酸600mg(2.85mmol)を加えて室温にて30分間撹拌した後、更に4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの50質量%NMP溶液8.1g(20.1mmol)を滴下して、室温にて30分間撹拌した。その後、ディーン・スターク装置を用いて、130℃にて3時間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例3の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(実施例4:PAA+4,4’−ジアミノベンゾフェノン+トリメリット酸)
重量平均分子量80万のPAAをNMPに溶解させて、10質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液60g(PAAのモノマー換算で83.3mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内にトリメリット酸600mg(2.85mmol)を加えて室温にて30分間撹拌した後、更に4,4’−ジアミノベンゾフェノンの50質量%NMP溶液8.5g(20.1mmol)を滴下して、室温にて30分間撹拌した。その後、ディーン・スターク装置を用いて、130℃にて3時間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例4の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(剥離強度の評価、及び電池特性の評価)
実施例1A、3、4の中間組成物を用いて、中間組成物から得られる高分子化合物を負極バインダーとする電極シートを作製し、得られた電極シートにおける負極活物質層の剥離強度を評価した。また、得られた電極シートを用いてリチウムイオン二次電池を作製し、そのリチウムイオン二次電池のサイクル特性を評価した。その結果を表4に示す。なお、電極シートの作製方法、リチウムイオン二次電池の作製方法、剥離強度の評価方法、及びリチウムイオン二次電池のサイクル特性の評価方法は、試験1の方法と同じである。
表4に示すように、特定の分子構造を有する多官能アミンの種類を異ならせた場合においても、負極活物質層の剥離強度、及び二次電池のサイクル特性に大きな差は確認されなかった。この結果から、PAAと、特定の分子構造を有する多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを縮合してなる高分子化合物において、上記多官能アミンの構造は、高分子化合物の分子構造に対して大きな影響を与えないことが示唆される。
<試験5>
次に、PAAと、特定の分子構造を有する多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを縮合してなる高分子化合物を負極用バインダーとして用いた場合において、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸の種類を異ならせた場合における負極活物質層の剥離強度の変化及び蓄電装置のサイクル特性の変化について評価した。
(実施例5:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+1,2,4−シクロへキサントリカルボン酸)
重量平均分子量80万のPAAをNMPに溶解させて、10質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液60g(PAAのモノマー換算で83.3mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内に1,2,4−シクロへキサントリカルボン酸616.1mg(2.85mmol)を加えて室温にて30分間撹拌した後、更に4,4’−ジアミノジフェニルメタンの50質量%NMP溶液8.2g(20.1mmol)を滴下して、室温にて30分間撹拌した。その後、ディーン・スターク装置を用いて、110℃にて3時間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例5の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(実施例6:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸)
重量平均分子量80万のPAAをNMPに溶解させて、10質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液60g(PAAのモノマー換算で83.3mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内に2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸707.2mg(2.85mmol)を加えて室温にて30分間撹拌した後、更に4,4’−ジアミノジフェニルメタンの50質量%NMP溶液8.2g(20.1mmol)を滴下して、室温にて30分間撹拌した。その後、ディーン・スターク装置を用いて、110℃にて3時間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例6の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(実施例7:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+1,4−シクロへキサンジカルボン酸)
重量平均分子量80万のPAAをNMPに溶解させて、10質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液60g(PAAのモノマー換算で83.3mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内に1,4−シクロへキサンジカルボン酸490.7mg(2.85mmol)を加えて室温にて30分間撹拌した後、更に4,4’−ジアミノジフェニルメタンの50質量%NMP溶液8.2g(20.1mmol)を滴下して、室温にて30分間撹拌した。その後、ディーン・スターク装置を用いて、110℃にて3時間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例7の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(実施例8:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物)
重量平均分子量80万のPAAをNMPに溶解させて、10質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液60g(PAAのモノマー換算で83.3mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内にビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物707.3mg(2.85mmol)を加えて室温にて30分間撹拌した後、更に4,4’−ジアミノジフェニルメタンの50質量%NMP溶液8.2g(20.1mmol)を滴下して、室温にて30分間撹拌した。その後、ディーン・スターク装置を用いて、110℃にて3時間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例8の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(実施例9:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物)
重量平均分子量80万のPAAをNMPに溶解させて、10質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液60g(PAAのモノマー換算で83.3mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内に3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物1.118mg(2.85mmol)を加えて室温にて30分間撹拌した後、更に4,4’−ジアミノジフェニルメタンの50質量%NMP溶液8.2g(20.1mmol)を滴下して、室温にて30分間撹拌した。その後、ディーン・スターク装置を用いて、110℃にて3時間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例9の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(剥離強度の評価、及び電池特性の評価)
実施例5〜9の中間組成物を用いて、中間組成物から得られる高分子化合物を負極バインダーとする電極シートを作製し、得られた電極シートにおける負極活物質層の剥離強度を評価した。また、得られた電極シートを用いてリチウムイオン二次電池を作製し、そのリチウムイオン二次電池のサイクル特性を評価した。その結果を表5に示す。なお、電極シートの作製方法、リチウムイオン二次電池の作製方法、剥離強度の評価方法、及びリチウムイオン二次電池のサイクル特性の評価方法は、試験1の方法と同じである。
表5に示すように、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸の種類を異ならせた場合においても、トリメリット酸を用いた試験例1と比較して、同等以上の負極活物質層の剥離強度、及び二次電池のサイクル特性が得られることが確認できた。
特に、融合型の多環式の分子構造を有する多官能カルボン酸を用いた試験例14においては、より高い剥離強度が得られた。この結果から、融合型の多環式の分子構造は、PAAにより構成される鎖状構造同士の接近を規制して、鎖状構造の熱収縮を抑制する性質が特に高いことが示唆される。
<試験6>
次に、PAAと、特定の分子構造を有する多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを縮合してなる高分子化合物を負極用バインダーとして用いた場合において、その他の負極用バインダーを併用した場合における負極活物質層の剥離強度の変化及び蓄電装置のサイクル特性の変化について評価した。その他の負極用バインダーとしては、PAAと特定の分子構造を有する多官能アミンとを縮合してなる高分子化合物(参考例1の中間組成物から得られる高分子化合物)を用いた。
(電極シートの作製)
上記シリコン材料70質量部、天然黒鉛15質量部、アセチレンブラック5質量部、中間組成物のNMP溶液10質量部を混合するとともに、この混合物にNMPを加えてスラリーを調製した。集電体としての30μmの電解銅箔の表面に対して、ドクターブレード法を用いてスラリーを膜状に塗布した。そして、スラリー中のNMPを揮発させて除去することにより、電解銅箔上に負極活物質層を形成した。次いで、ロールプレス機を用いて、負極活物質層の厚さが20μmとなるように電解銅箔及び負極活物質層を圧縮することにより、電解銅箔と負極活物質層を強固に密着接合させた。
その後、NMPが除去されて乾燥した状態の負極活物質層に対して、真空中(減圧下)にて180℃、2時間の加熱処理を行うことにより、負極活物質層に含まれる中間組成物を縮合反応させるとともに、負極活物質層を加熱硬化させた。これにより、架橋構造を有する高分子化合物を負極用バインダーとして含有する電極シートを得た。
本試験では、上記中間組成物のNMP溶液として、実施例1Aの中間組成物のNMP溶液と、参考例1の中間組成物とを表6に示す比率(質量比)にて併用した。表6において、第1高分子化合物は、PAAと、特定の分子構造を有する多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを縮合してなる高分子化合物を示し、第2高分子化合物は、PAAと、特定の分子構造を有する多官能アミンとを縮合してなる高分子化合物を示す。
(剥離強度の評価、及び電池特性の評価)
得られた電極シートにおける負極活物質層の剥離強度を評価した。また、得られた電極シートを用いてリチウムイオン二次電池を作製し、そのリチウムイオン二次電池のサイクル特性を評価した。その結果を表6に示す。なお、リチウムイオン二次電池の作製方法、剥離強度の評価方法、及びリチウムイオン二次電池のサイクル特性の評価方法は、試験1の方法と同じである。
表6に示すように、負極用バインダーとして、PAAと特定の分子構造を有する多官能アミンとを縮合してなる高分子化合物(第2高分子化合物)を併用した場合においても、高い剥離強度が得られることが確認できた。
<試験7>
次に、PAAと、特定の分子構造を有する多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを縮合してなる高分子化合物を負極用バインダーとして用いた場合において、試験5とは別の環状の分子構造を有する多官能カルボン酸を用いた場合における負極活物質層の剥離強度の変化及び蓄電装置のサイクル特性の変化について評価した。
(実施例10:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+ピロメリット酸無水物)
重量平均分子量25万のPAAをNMPに溶解させて、15質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液12.7g(PAAのモノマー換算で26.5mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内に4,4’−ジアミノジフェニルメタンの50質量%NMP溶液2.58g(6.5mmol)を加えて室温にて30分間撹拌した後、100℃にて1時間撹拌した。その後、フラスコ内の反応混合物を室温まで冷却した。そして、フラスコ内にピロメリット酸無水物の10質量%NMP溶液1.93g(0.91mmol)を加えて、80℃にて30分間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例10の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(実施例11:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物)
重量平均分子量25万のPAAをNMPに溶解させて、15質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液12.7g(PAAのモノマー換算で26.5mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内に4,4’−ジアミノジフェニルメタンの50質量%NMP溶液2.58g(6.5mmol)を加えて室温にて30分間撹拌した後、100℃にて1時間撹拌した。その後、フラスコ内の反応混合物を室温まで冷却した。そして、フラスコ内に3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物の10質量%NMP溶液3.0g(0.91mmol)を加えて、80℃にて30分間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例11の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。
(剥離強度の評価、及び電池特性の評価)
実施例10,11の中間組成物を用いて、中間組成物から得られる高分子化合物を負極バインダーとする電極シートを作製し、得られた電極シートにおける負極活物質層の剥離強度を評価した。また、電極シートを用いてリチウムイオン二次電池を作製し、そのリチウムイオン二次電池のサイクル特性を評価した。さらに、実施例のNMP溶液に代えて、PAAを用いて電極シート及びリチウムイオン二次電池を作製し、負極活物質層の剥離強度及びリチウムイオン二次電池のサイクル特性を評価した。その結果を表7に示す。なお、電極シートの作製方法、リチウムイオン二次電池の作製方法、剥離強度の評価方法、及びリチウムイオン二次電池のサイクル特性の評価方法は、試験1の方法と同じである。
表6に示すように、実施例10,11の中間組成物から得られる高分子化合物を負極用バインダーとして用いた試験例17,18においても、PAAを負極用バインダーとして用いた試験例19と比較して、負極活物質層の剥離強度、及び二次電池のサイクル特性が向上することが確認できた。
<試験8>
次に、PAAと、特定の分子構造を有する多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを縮合してなる高分子化合物を負極用バインダーとして用いた場合において、多官能アミンに対する環状の分子構造を有する多官能カルボン酸の配合割合を変化させた場合における負極活物質層の剥離強度の変化、並びに蓄電装置の初期効率及びサイクル特性の変化について評価した。
(実施例11−1〜11−8:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物)
実施例11の中間組成物について、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及び3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物の配合量を異ならせて、多官能アミンに対する多官能カルボン酸の配合割合の異なる実施例11−1〜11−8の中間組成物を調製した。各実施例における多官能アミン及び多官能カルボン酸の配合量は表8及び表9に示すとおりである。なお、実施例11−2については、上記実施例11と同一の中間組成物である。実施例11−1,11−3〜10−8については、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及び3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物の配合量が異なる点を除いて、実施例11と同様の方法により調製した。
(実施例10−1〜10−2:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+ピロメリット酸無水物)
実施例10の中間組成物について、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及びピロメリット酸無水物の配合量を異ならせて、多官能アミンに対する多官能カルボン酸の配合割合の異なる実施例10−1〜10−2の中間組成物を調製した。各実施例における多官能アミン及び多官能カルボン酸の配合量は表9に示すとおりである。なお、実施例10−1については、上記実施例10と同一の中間組成物である。実施例10−2については、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及びピロメリット酸無水物の配合量が異なる点を除いて、実施例10と同様の方法により調製した。
(実施例12−1〜12−2:PAA+4,4’−ジアミノジフェニルメタン+トリメリット酸無水物)
重量平均分子量25万のPAAをNMPに溶解させて、15質量%のPAA/NMP溶液を調製し、このPAA/NMP溶液12.7g(PAAのモノマー換算で26.5mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。フラスコ内に所定量の4,4’−ジアミノジフェニルメタンの50質量%NMP溶液を加えて室温にて30分間撹拌した後、100℃にて1時間撹拌した。その後、フラスコ内の反応混合物を室温まで冷却した。そして、フラスコ内に所定量のトリメリット酸無水物の10質量%NMP溶液を加えて、80℃にて30分間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例12−1〜12−2の中間組成物をNMP溶液の状態で得た。各実施例における多官能アミン及び多官能カルボン酸の配合量は表9に示すとおりである。
(剥離強度の評価、及び電池特性の評価)
各実施例の中間組成物を用いて、中間組成物から得られる高分子化合物を負極バインダーとする電極シートを作製し、得られた電極シートにおける負極活物質層の剥離強度を評価した。その結果を表8及び表9に示す。なお、電極シートの作製方法、リチウムイオン二次電池の作製方法、剥離強度の評価方法は試験1の方法と同じである。
また、得られた電極シートを用いてリチウムイオン二次電池を作製し、そのリチウムイオン二次電池の初期効率及びサイクル特性を評価した。
得られたリチウムイオン電池について、直流電流0.2mAで負極電極における正極電極に対する電圧が0.01Vになるまで放電を行い、放電が終了してから10分後に、直流電流0.2mAで負極電極における正極電極に対する電圧が1.0Vになるまで充電を行った。このときの放電容量を初期放電容量とするとともに、充電容量を初期充電容量とした。そして、下記式に基づいて初期効率を算出した。その結果を表8及び表9に示す。
初期効率(%)=(初期充電容量/初期放電容量)×100
また、上記の放電及び充電を1サイクルとして規定サイクルの充放電を行い、下記式に基づいてサイクル特性を算出した。その結果を表8及び表9に示す。
サイクル特性(%)=(規定サイクル後の充電容量/初期充電容量)×100
表8及び表9に示すように、多官能アミンに対する環状の分子構造を有する多官能カルボン酸の配合割合を高めるにしたがって、サイクル特性が向上する傾向が確認できた。
また、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸としてピロメリット酸無水物を用い、その多官能アミンに対する配合割合を「0.22」とした実施例10−2(試験例29)においては、中間組成物の調製時に、多官能カルボン酸が結晶化して相分離してしまい、目的の配合割合の中間組成物を得ることができなかった。
一方、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸として、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物を用いた場合、及びトリメリット酸無水物を用いた場合には、その多官能アミンに対する配合割合を「1.0」まで高めた場合においても、中間組成物の調製時に、多官能カルボン酸が結晶化して相分離することはなかった。
これらの結果から、サイクル特性の向上の観点においては、多官能アミンに対する環状の分子構造を有する多官能カルボン酸の配合割合を高めることが好ましいことが分かる。そして、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸として、中間組成物の調製時に結晶化して相分離し難いものを用いた場合の方が、上記配合割合を高めやすく、サイクル特性をより高い値まで向上させることができることが分かる。
なお、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物は、カルボキシル基を有する2以上の環状構造が連結された分子構造を有しており、その環状構造同士の連結部分において、分子内における回転等の運動が許容される。そのため、分子の柔軟性が高くなり、中間組成物の調製時において、結晶化が生じ難く、配合割合を高めることができると考えられる。トリメリット酸無水物は、その分子構造が非対称であることにより、中間組成物の調製時において、結晶化が生じ難く、配合割合を高めることができると考えられる。
次に、上記実施形態及び実施例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記高分子化合物を含有する負極用バインダー。
(ロ)蓄電装置の負極電極の製造方法であって、前記中間組成物と負極活物質とを含有する混合物を用いて、集電体上に負極活物質層を形成する活物質層形成工程と、前記負極活物質層を熱処理することにより、前記ポリアクリル酸と前記多官能アミンとを縮合させるとともに、前記多官能アミンと前記多官能カルボン酸とを縮合させる縮合工程とを有する負極電極の製造方法。

Claims (14)

  1. 蓄電装置の負極用バインダーとして用いられる高分子化合物であって、
    ポリアクリル酸と、下記一般式(1)に示す多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とが縮合してなることを特徴とする高分子化合物。
    (Yは、炭素数1〜4の直鎖アルキル基、フェニレン基、又は酸素原子であり、R1,R2はそれぞれ独立して、単数又は複数の水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基である。)
  2. 前記多官能カルボン酸は、カルボキシル基を有する2以上の炭素骨格からなる環状構造が連結された多環式の多官能カルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載の高分子化合物。
  3. 蓄電装置の負極用バインダーとして用いられる高分子化合物であって、
    ポリアクリル酸により構成される鎖状構造と、前記鎖状構造内又は鎖状構造間におけるカルボン酸側鎖同士を接続する架橋構造とを有し、
    前記架橋構造は、下記一般式(2)〜(4)から選ばれる少なくとも一種の架橋構造であることを特徴とする高分子化合物。
    (PAAは、ポリアクリル酸により構成される鎖状構造を示し、Xは、下記一般式(5)に示す構造である。)
    (Yは、炭素数1〜4の直鎖アルキル基、フェニレン基、又は酸素原子であり、R1,R2はそれぞれ独立して、単数又は複数の水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基であり、Zは、炭素骨格からなる環状構造であり、A1,A2はそれぞれ独立して水素原子又はカルボニル炭素であり、nは1〜5の整数である。)
  4. 前記架橋構造におけるZは、2以上の炭素骨格からなる環状構造が連結された多環式の環状構造であることを特徴とする請求項3に記載の高分子化合物。
  5. 蓄電装置の負極用バインダーとして用いられる高分子化合物の中間組成物であって、
    ポリアクリル酸と、下記一般式(1)に示す多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸と、非水溶媒とを含有し、液状をなすことを特徴とする中間組成物。
    (Yは、炭素数1〜4の直鎖アルキル基、フェニレン基、又は酸素原子であり、R1,R2はそれぞれ独立して、単数又は複数の水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基である。)
  6. 前記多官能カルボン酸は、カルボキシル基を有する2以上の炭素骨格からなる環状構造が連結された多環式の多官能カルボン酸であることを特徴とする請求項5に記載の中間組成物。
  7. 請求項3又は請求項4に記載の高分子化合物の製造方法であって、
    ポリアクリル酸と、下記一般式(1)に示す多官能アミンと、環状の分子構造を有する多官能カルボン酸とを、150℃〜230℃の温度で加熱することを特徴とする高分子化合物の製造方法。
    (Yは、炭素数1〜4の直鎖アルキル基、フェニレン基、又は酸素原子であり、R1,R2はそれぞれ独立して、単数又は複数の水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基である。)
  8. 前記ポリアクリル酸と、前記多官能アミンと、前記多官能カルボン酸と、非水溶媒とを含有する中間組成物を、40℃〜140℃の温度で予備加熱した後に、150℃〜230℃の温度で加熱することを特徴とする請求項7に記載の高分子化合物の製造方法。
  9. 蓄電装置の負極電極であって、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子化合物を含有する負極用バインダーと、負極活物質とを備え、
    前記負極活物質として、リチウムを吸蔵及び放出し得る炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、及びリチウムと合金化可能な元素を有する化合物から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする負極電極。
  10. 前記負極活物質として、CaSiから脱カルシウム化反応を経て得られるシリコン材料、Si、及びSiO(0>v>2)から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項9に記載の負極電極。
  11. 請求項9又は請求項10に記載の負極電極と、非水電解質とを備えることを特徴とする蓄電装置。
  12. 蓄電装置の負極電極の製造に用いられる負極電極用スラリーであって、
    請求項5又は請求項6に記載の中間組成物と、負極活物質と、溶剤とを含有し、
    前記負極活物質として、リチウムを吸蔵及び放出し得る炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、及びリチウムと合金化可能な元素を有する化合物から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする負極電極用スラリー。
  13. 蓄電装置の負極電極の製造方法であって、
    請求項12に記載の負極電極用スラリーを用いて、集電体に対して負極活物質層を形成することを特徴とする負極電極の製造方法。
  14. 前記負極電極用スラリーは、前記負極活物質として、CaSiから脱カルシウム化反応を経て得られるシリコン材料、Si、及びSiO(0>v>2)から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項13に記載の負極電極の製造方法。
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