JP2013229160A - 蓄電デバイスの電極用バインダー組成物 - Google Patents

蓄電デバイスの電極用バインダー組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】充放電容量が大きく、充放電サイクルの繰り返しによる容量劣化の程度が少ない蓄電デバイスを与える、電極用バインダー組成物を提供すること。
【解決手段】 上記電極用バインダー組成物は、(A)ポリアミック酸およびそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体と、(B)分子内にカルボキシル基を1〜4個有する化合物およびその塩よりなる群から選択される少なくとも1種のカルボン酸化合物と、を含有し、そして、
上記(A)重合体の含有量をMa質量部、上記(B)カルボン酸化合物の含有量をMb質量部としたときに、Ma/Mb=50〜400であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は蓄電デバイスの電極用バインダー組成物に関する。より詳しくは、充放電容量が大きく、充放電サイクルの繰り返しによる容量劣化の程度が少ない蓄電デバイスを与える電極用バインダー組成物に関する。
電子機器の駆動用電源として、電圧が高く、エネルギー密度の高い蓄電デバイスが要求されている。この用途には、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタなどが期待されている。
蓄電デバイスに使用される電極は、通常、活物質と、電極バインダーとして機能する重合体と、を含有する組成物(電極用スラリー)を集電体表面へ塗布・乾燥することにより製造される。電極用バインダーとして使用される重合体に要求される特性としては、活物質同士の結合能力および活物質と集電体との密着能力、電極を巻き取る工程における耐擦性、その後の裁断などによっても、塗布・乾燥された組成物塗膜(以下、単に「活物質層」ともいう。)から活物質の微粉などが脱落しない粉落ち耐性などを挙げることができる。重合体がこれらの種々の要求特性を満足することにより、得られる電極の折り畳み方法、捲回半径の設定などの蓄電デバイスの構造設計の自由度が高くなり、デバイスの小型化を達成することができる。
なお、上記の活物質同士の結合能力および活物質と集電体との密着能力、ならびに粉落ち耐性については、性能の良否がほぼ比例関係にあることが経験上明らかになっている。従って本明細書では、以下、これらを包括して「密着性」という用語を用いて表す場合がある。
近年、このような蓄電デバイスの高出力化および高エネルギー密度化の要求を達成するために、リチウム吸蔵力の大きい材料を適用する検討が進められている。例えばケイ素は、リチウムと金属間化合物を形成することにより、リチウムを可逆的に吸蔵・放出することができる。このケイ素の理論容量は約4,200mAh/gであり、従来用いられていた炭素材料の理論容量約370mAh/gと比較して極めて大きいから、ケイ素材料を負極活物質として用いることによって蓄電デバイスの容量が大幅に向上するはずである。しかしながら、ケイ素材料は充放電に伴う体積変化が大きいから、従来使用されている電極バインダーをケイ素材料に適用すると、初期密着性を維持することができずに充放電に伴って顕著な容量低下が発生する。
このようなケイ素材料を活物質層に保持するための電極バインダーとして、ポリイミドを適用する方法が提案されている(特許文献1〜4)。これらの技術は、ポリイミドの剛直な分子構造でケイ素材料を束縛することによって、ケイ素材料の体積変化を押さえ込もうという技術思想である。特許文献1〜4には、ポリアミック酸を含有する電極用スラリーを集電体表面へ塗布して塗膜を形成した後、該塗膜を高温で加熱してポリアミック酸を熱イミド化することにより、ポリイミドが生成すると説明されている。
上記特許文献4の技術は、バインダーとともに大量の多価カルボン酸を用い、これによってケイ素材料とバインダーとの密着性を向上させようとの思想に基づく。しかしながらこの技術によると、形成される活物質層中に遊離の多価カルボン酸が残存し、蓄電デバイスの経時的な劣化が懸念される。
ところで、活物質は活物質層中において多くの場合粒子状で存在する。この活物質の粒子は、大気中の酸素や水分によって酸化され、あるいは二酸化炭素を吸着するなどして汚染されていることが通常である。集電体の表面も、通常は同様に汚染されている。活物質表面、集電体表面に汚染があると、活物質同士間および活物質と集電体と間の界面抵抗が増大し、その結果、充放電特性が損なわれることになる。特に、特許文献1〜3の技術によると、ポリアミック酸の熱イミド化によって塗膜中に水が発生し、しかもこのときに塗膜が加熱されているため、集電体表面および活物質表面の酸化がより進行し、本来の充放電特性の発現が困難となる。さらに、この加熱条件下の水の発生により、まだイミド化されていないアミック酸構造が加水分解してアミン化合物が副生することがある。活物質として上記のケイ素材料を用いる場合には、このアミンが該ケイ素材料を化学的に侵すため、この理由によっても充放電特性が損なわれることとなる。
特開2007−95670号公報 特開2011−192563号公報 特開2011−204592号公報 国際公開第2012/017738号パンフレット 特開2010−97188号公報 特開2004−185810号公報
化学便覧(改訂3版、日本化学会編、昭和59年6月25日、丸善(株))
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、充放電容量が大きく、充放電サイクルの繰り返しによる容量劣化の程度が少ない蓄電デバイスを与える、電極用バインダー組成物を提供することにある。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、
(A)ポリアミック酸およびそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体と、
(B)分子内にカルボキシル基を1〜4個有する化合物およびその塩よりなる群から選択される少なくとも1種のカルボン酸化合物と、
を含有し、そして、
上記(A)重合体の含有量をMa質量部、上記(B)カルボン酸化合物の含有量をMb質量部としたときに、Ma/Mb=50〜400であることを特徴とする、蓄電デバイスの電極用バインダー組成物によって達成される。
本発明によれば、充放電容量が大きく、充放電サイクルの繰り返しによる容量の劣化が可及的に抑制された蓄電デバイスを与える電極用バインダー組成物が提供される。
従って本発明の電極用バインダー組成物を用いて製造された蓄電デバイスは、高容量であり、寿命が長い。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変型例も含むものとして理解されるべきである。
1.電極用バインダー組成物
本発明の電極用バインダー組成物は、少なくとも(A)重合体と(B)カルボン酸化合物とを含有する。
1.1 (A)重合体
本発明の電極用バインダー組成物に含有される(A)重合体は、ポリアミック酸およびそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体である。該重合体は、蓄電デバイスの電極を構成する活物質層においてバインダーとなる。
本発明の電極用バインダー組成物に含有される(A)重合体がポリアミック酸のイミド化重合体を含有する場合、該イミド化重合体のイミド化率は、50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。電極用バインダー組成物に含有されるイミド化重合体のイミド化率を上記の範囲とすることにより、該バインダー組成物を用いて調整される電極用スラリーの安定性を損なうことがなく、密着性および充放電特性に優れる電極を製造することができることとなり、好ましい。
このイミド化率は、ポリアミック酸のアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ポリアミック酸のイミド化率は、H−NMRを用いて求めることができる。
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることがでる。また、ポリアミック酸の部分イミド化物は、上記ポリアミック酸のアミック酸構造の一部を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
本発明におけるポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオンなどを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを、それぞれ挙げることができるほか、特許文献5(特開2010−97188号公報)に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
前記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましい。本発明におけるテトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物のみからなるか、あるいは芳香族テトラカルボン酸二無水物および
脂環式テトラカルボン酸二無水物の混合物のみからなるものであることが、本発明の電極用バインダー組成物の安定性の観点から好ましい。後者の場合、脂環式テトラカルボン酸二無水物の使用割合は、全テトラカルボン酸二無水物に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
本発明におけるポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、特許文献5(特開2010−97188号公報)に記載のジアミンを用いることができる。
本発明におけるポリアミック酸を合成する際に用いられるジアミンは、芳香族ジアミンを、全ジアミンに対して、30モル%以上含むものであることが好ましく、50モル%以上含むものであることがより好ましく、特に80モル%以上含むものであることが好ましい。
前記ポリアミック酸を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸二無水物およびジミアンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。
前記分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物として、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルコハク酸無水物、n−ドデシルコハク酸無水物、n−テトラデシルコハク酸無水物、n−ヘキサデシルコハク酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;
モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下とすることがより好ましい。
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.9〜1.2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは1.0〜1.1当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0〜100℃において、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.5〜12時間行われる。
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノールおよびその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素など一般的にポリアミック酸の合成反応に使用できる有機溶媒を使用することができる。これら有機溶媒の具体例としては、上記非プロトン性極性溶媒として、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−t−ブチル−2−ピロリドン、N−メトキシエチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;
上記フェノール誘導体として、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
上記アルコールとして、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;
上記ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
上記エステルとして、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを;
上記エーテルとして、例えばジエチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコール−ジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを;
上記炭化水素として、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、それぞれ挙げることができる。
ポリアミック酸の脱水閉環反応は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法またはポリアミック酸を有機溶媒に溶解した溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
上記ポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは180〜250℃以下であり、より好ましくは180℃〜220℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるイミド化重合体の分子量が低下する場合がある。ポリアミック酸を加熱する方法における反応時間は、好ましくは0.5〜20時間であり、より好ましくは2〜10時間である。
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用割合は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜1,0モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用割合は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜1,0モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1〜10時間であり、より好ましくは2〜5時間である。
以上のようにして得られるポリアミック酸またはそのイミド化重合体は、これを濃度10重量%の溶液としたときに、2,000〜100,000mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、5,000〜30,000mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。この重合体の溶液粘度(mPa・s)は、これらの重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
以上のようにして得られたポリアミック酸またはそのイミド化物は、そのまま、または必要に応じて精製したうえで後述の電極用スラリーの調製に供される。
また、市販のポリアミック酸溶液も使用することができ、たとえばU―ワニスA(宇部興産(株)製)などを使用することができる。
1.2 (B)カルボン酸化合物
本発明の電極用バインダー組成物に含有される(B)カルボン酸化合物は、分子内にカルボキシル基を1〜4個有する化合物およびその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である。
(B)カルボン酸化合物の第一酸解離定数(pKa1)が25℃において2〜5であることが好ましい。この酸解離指数は、例えば市販の電位差滴定装置(例えば平沼産業(株)製の品名「COM−980Win」など)を使用する方法などにより測定することができるほか、
非特許文献1(化学便覧(改訂3版、日本化学会編、昭和59年6月25日、丸善(株))に記載の酸解離指数、コンピュドラッグ(Compudrug)社製のデータベース「pKaBASE」などを利用して調べることができる。
本発明の電極用バインダー組成物に含有される(B)カルボン酸化合物としては、分子量が40〜1,000程度の化合物であることが好ましい。その具体例としては、カルボキシル基を1個有するカルボン酸として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−エチルオクチル酸、デカン酸、オレイン酸などを;
カルボキシル基を2個有するカルボン酸として、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、トリメリット酸エチルエステルなどを;
カルボキシル基を3個有するカルボン酸として、例えばトリメリット酸、1,2,3−トリカルボキシプロパン、ピロメリット酸モノエチルエステル、3、3’、4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸モノエチルエステル、3、3’、4、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸モノエチルエステルなどを;
カルボキシル基を4個有するカルボン酸として、例えばピロメリット酸、3,3‘,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸のほか、特許文献5(特開2010−97188号公報)に記載のテトラカルボン酸二無水物を水和して得られるテトラカルボン酸などを、それぞれ挙げることができる。
分子内にカルボキシル基を1〜4個有する化合物の塩としては、上記に例示したカルボン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などを挙げることができる。
本発明における(B)カルボン酸化合物としては、1種のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の電極用バインダー組成物に含有される(B)カルボン酸化合物としては、分子内にカルボキシル基を2または4個有する化合物またはその塩よりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
本発明の電極用バインダー組成物がこのような(B)カルボン酸化合物を含有することにより、該組成物を使用して製造された蓄電デバイスは、極めて優れた充放電特性を示すこととなる。この効果の発現機構は明らかではないが、本発明者らは、以下のような複数の機構が重畳的に作用する結果であると推察している。
背景技術欄で述べたように、集電体表面および活物質の表面は汚染されていることが通常である。また、(A)ポリアミック酸およびそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含有する本発明の電極用バインダー組成物は、これを含有する電極用スラリーから活物質層を形成する過程でアミック酸構造がイミド化される場合があり、このような場合には塗膜中に水が発生して集電体表面および活物質表面が酸化されるなどして表面の汚染がさらに進行することも考えられる。(B)カルボン酸化合物の第1の機能として、この汚染物質を錯化もしくは溶解またはその他の機構によって除去することが考えられる。このことにより、活物質同士間および活物質と集電体と間の界面抵抗を本来の水準に戻すことができ、従って汚染物質によって損なわれた充放電特性が回復すると考えられる。
次に、本発明の電極用バインダー組成物のようにポリアミック酸・ポリイミド系の重合体を用いる場合には、電極用スラリーから活物質層を形成する過程で、アミック酸構造が加水分解してアミン化合物が副生することがある。前述のとおり、このアミン化合物は、活物質としてケイ素材料を用いる場合、これに悪影響を及ぼす。(B)カルボン酸化合物の第2の機能として、このアミン化合物を捕捉して、ケイ素材料を含有する活物質の劣化を抑制することが考えられる。このことにより、ケイ素材料を含有する活物質が材料本来の電気特性を発揮し得ることになると考えられる。
さらに、(B)カルボン酸化合物の利点として、上記2つの機能に関与しなかった余剰のカルボン酸化合物が容易に散逸し、活物質層中に残存し難いことを指摘することができよう。つまり、カルボン酸化合物は加熱によって脱炭酸され、容易に低分子化合物に分解するから、余剰の(B)カルボン酸化合物は活物質層形成工程における加熱によって分解除去される傾向にある。このことによって、得られる活物質層の電気特性に対する悪影響が可及的に低減されるものと考えられる。この点、特許文献4(国際公開第2012/017738号パンフレット)に記載された技術のように大量のカルボン酸を用いる場合には、形成される活物質層中に有意量のカルボン酸が残存することとなり、蓄電デバイスの充放電サイクル特性に悪影響を及ぼすことが懸念される。
本発明の電極用バインダー組成物における(B)カルボン酸化合物の使用割合は、組成物中の(A)重合体の含有量をMa質量部、(B)カルボン酸化合物の含有量をMb質量部としたときに、両者の比Ma/Mbは50〜400である。この値は50〜300となるような割合とすることが好ましい。この比Ma/Mbの値は、より好ましくは60〜280である。(B)カルボン酸化合物を上記の範囲で使用することにより、温和な条件下で(B)カルボン酸化合物の機能を発現させることができるから、過度の加熱による各成分の劣化を回避することができ、好ましい。
1.3 液状媒体
本発明の電極用バインダー組成物は、上記のような(A)重合体および(B)カルボン酸化合物を必須の成分とし、これらが好ましくは後述の液状媒体に溶解して含有される溶液状の組成物である。
本発明の電極用バインダー組成物に好ましく含有される液状媒体は、非水系媒体であり、その具体例としては、例えばn−オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、デカリン、ピネン、クロロドデカンなどの脂肪族炭化水素;
シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロペンタンなどの環状脂肪族炭化水素;
クロロベンゼン、クロロトルエン、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、グリセリンなどのアルコール;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、イソホロンなどのケトン;
メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;
γ−ブチロラクトン、δ−ブチロラクトンなどのラクトン;
β−ラクタムなどのラクタム;
ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの鎖状または環状のアミド化合物;
メチレンシアノヒドリン、エチレンシアノヒドリン、3,3’−チオジプロピオニトリル、アセトニトリルなどの、ニトリル基を有する化合物;
ピリジン、ピロールなどの含窒素複素環化合物;
エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール化合物;
ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルブチルエーテルなどのジエチレングリコールまたは誘導体;
ギ酸エチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、安息香酸メチル、酢酸メチル、アクリル酸メチルなどのエステルなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
本発明の電極用バインダー組成物は、水を含有していてもよいが、その割合は比較的少ないものであることが好ましい。本発明の電極用バインダー組成物における水の含有割合が組成物の全量に対して1質量%以下であれば、本発明の優れた効果が減殺されることがない。
本発明の電極用バインダー組成物が溶液状の組成物である場合における液状媒体の使用割合は、電極用バインダー組成物の固形分濃度(組成物中の液状媒体以外の成分の合計質量が組成物の全質量に対して占める割合)が、5〜50質量%となる割合とすることが好ましく、10〜40質量%となる割合とすることがより好ましい。
1.4 電極用バインダー組成物のpH
本発明の電極用バインダー組成物のpHは、5〜9であることが好ましく、6〜7であることがより好ましい。組成物の液性の調整には、公知の酸(ただし、(B)カルボン酸化合物に該当するものを除く。)または塩基を用いることができる。酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などを;
塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなどを、それぞれ挙げることができる。
従って本発明の電極用バインダー組成物は、(A)重合体、(B)カルボン酸化合物および液状媒体以外に、その他の成分として上記の酸または塩基を、pHの調整に必要な範囲で含有していてもよい。
1.5 電極用バインダー組成物の調製方法
本発明の電極用バインダー組成物は、上記の成分を含有するものである限り、どのような方法によって調製されたものであってもよい。
本発明の電極用バインダー組成物を調製するには、(A)重合体を合成した重合混合物に(B)カルボン酸化合物および必要に応じて加えられるその他の成分を添加する方法;
(A)重合体を合成した重合混合物から単離した重合体を、(B)カルボン酸化合物および必要に応じて加えられるその他の成分とともに液状媒体に溶解する方法など、適宜の方法によることができる。
これらのうち、前者の方法が便宜であることから好ましい。
2. 電極用スラリー
上記のような本発明の電極用バインダー組成物を用いて、電極用スラリーを製造することができる。電極用スラリーとは、集電体の表面上に電極活物質層を形成するために用いられる分散液のことをいう。本発明における電極用スラリーは、少なくとも本発明の電極用バインダー組成物と電極活物質とを含有する。
2.1 電極活物質
本発明の電極用バインダー組成物を用いて製造される電極用スラリーに使用される電極活物質としては、例えば炭素材料、リチウム原子を含む酸化物、ケイ素原子を含む活物質、鉛化合物、錫化合物、砒素化合物、アンチモン化合物、アルミニム化合物などを挙げることができる。
上記炭素材料としては、例えばアモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ピッチ系炭素繊維などを挙げることが得きる。
上記リチウム原子を含む酸化物としては、例えばコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、三元系ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、LiFePO、LiCoPO、LiMnPO、Li0.90Ti0.05Nb0.05Fe0.30Co0.30Mn0.30POなどを挙げることができる。
上記ケイ素原子を含む活物質としては、例えばケイ素単体、ケイ素酸化物、ケイ素合金などを挙げることができるほか、特許文献6(特開2004−185810号公報)に記載されたケイ素材料を使用することができる。上記ケイ素酸化物としては、組成式SiO(0<x<2、好ましくは0.1≦x≦1)で表されるケイ素酸化物が好ましい。上記ケイ素合金としては、ケイ素と、チタン、ジルコニウム、ニッケル、銅、鉄およびモリブデンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属との合金が好ましい。これらの遷移金属のケイ化物は、高い電子伝導度を有し、且つ高い強度を有することから好ましく用いられる。また、活物質がこれらの遷移金属を含むことにより、活物質の表面に存在する遷移金属が酸化されて表面に水酸基を有する酸化物となるから、バインダーとの結着力がより良好になる点でも好ましい。ケイ素合金としては、ケイ素−ニッケル合金またはケイ素−チタン合金を使用することがより好ましく、ケイ素−チタン合金を使用することが特に好ましい。ケイ素合金におけるケイ素の含有割合は、該合金中の金属元素の全部に対して10モル%以上とすることが好ましく、20〜70モル%とすることがより好ましい。ケイ素原子を含む活物質は、単結晶、多結晶および非晶質のいずれであってもよい。
本発明の電極用バインダー組成物を蓄電デバイスの負極を製造するために使用する場合、電極用スラリーが含有する活物質としては、ケイ素原子を含む活物質を含有するものであることが好ましい。ケイ素原子はリチウムの吸蔵力が大きいから、活物質がケイ素原子を含む活物質を含有することにより、得られる蓄電デバイスの蓄電容量を高めることができ、その結果、蓄電デバイスの出力およびエネルギー密度を高くすることができる。負極用の活物質としては、ケイ素原子を含む活物質と炭素材料との混合物からなることが好ましい。炭素材料は、充放電に伴う体積変化が小さいから、負極用活物質としてケイ素原子を含む活物質と炭素材料との混合物を使用することにより、ケイ素原子を含む活物質の体積変化の影響を緩和することができ、活物質層と集電体の密着性をより向上することができる。負極用活物質は、ケイ素原子を含む活物質とグラファイトとの混合物からなることが特に好ましい。
活物質100質量%中に占めるケイ素原子を含む活物質の割合は、1質量%以上とすることが好ましく、1〜50質量%とすることがより好ましく、5〜45質量%とすることがさらに好ましく、特に10〜40質量%とすることが好ましい。
活物質の形状としては、粒状であることが好ましい。粒子の粒径(平均メジアン粒径)としては、0.1〜100μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
活物質の使用割合は、電極用バインダー組成物中の重合体(A)の量が活物質100質量に対して、0.1〜25質量部となる割合とすることが好ましく、0.5〜15質量部となる割合とすることがより好ましい。このような使用割合とすることにより、密着性により優れ、しかも電極抵抗が小さく充放電特性により優れた電極を製造することができることとなる。
2.2 その他の成分
本発明における電極用スラリーは、電極用バインダー組成物および電極活物質以外に、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば導電付与剤、増粘剤、液状媒体などを挙げることができる。
2.2.1 導電付与剤
導電付与剤の具体例としては、リチウムイオン二次電池においてはカーボンなどを挙げることができる。カーボンとしては、活性炭、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維、フラーレンなどを挙げることができる。これらの中でも、アセチレンブラックまたはファーネスブラックを好ましく使用することができる。導電付与剤の割合は、活物質100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは1〜15質量部であり、特に2〜10質量部であることが好ましい。
2.2.2 増粘剤
電極用スラリーは、その塗工性を改善する観点から、増粘剤を含有することができる。増粘剤の具体例としては、例えば例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;
上記セルロース誘導体のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;
ポリ(メタ)アクリル酸、変性ポリ(メタ)アクリル酸などのポリカルボン酸;
上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩;
ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール系(共)重合体;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和カルボン酸と、ビニルエステルとの共重合体の鹸化物などの水溶性ポリマーなどを挙げることができる。
増粘剤の使用割合としては、電極用スラリー中の増粘剤の重量(Wv)と活物質の重量(Wa)との比(Wv/Wa)が0.001〜0.1となる割合である。この比(Wv/Wa)は、0.005〜0.05であることが好ましい。
2.2.3 液状媒体
電極用スラリーは、電極用バインダー組成物を含有するから、電極用バインダー組成物が含有していた液状媒体を含有することとなる。しかしながら電極用スラリーは、電極用バインダー組成物から持ち込まれた液状媒体に加えて、さらなる液状媒体を追加で含有してもよい。
電極用スラリーに追加含有される液状媒体は、電極用バインダー組成物に含有されていた液状媒体と同種であってもよく、異なっていてもよいが、電極用バインダー組成物における液状媒体について上述した液状媒体から選択して使用されることが好ましい。
電極用スラリーにおける液状媒体(電極用バインダー組成物からの持ち込み分を含む。)の使用割合は、電極用スラリーの固形分濃度(電極用スラリー中の液状媒体以外の成分の合計質量が電極用スラリーの全質量に占める割合をいう。以下同じ。)が、30〜70質量%となる割合とすることが好ましく、40〜60質量%となる割合とすることがより好ましい。
2.3 電極用スラリーの製造方法
電極用スラリーは、上記の各成分を含有するものである限り、どのような方法によって製造されたものであってもよい。
しかしながら、より良好な分散性および安定性を有する電極用スラリーを、より効率的且つ安価に製造するとの観点から、電極用バインダー組成物に、活物質および必要に応じて用いられる任意的添加成分を加え、これらを混合することにより製造することができる。
電極用バインダー組成物とその他の成分とを混合するためには、公知の手法による攪拌によって行うことができる。
電極用スラリーの調製(各成分の混合操作)は、少なくともその工程の一部を減圧下で行うことが好ましい。これにより、得られる正極層内に気泡が生じることを防止することができる。減圧の程度としては、絶対圧として、5.0×10〜5.0×10Pa程度とすることが好ましい。
電極用スラリーを製造するための混合撹拌としては、スラリー中に活物質粒子の凝集体が残らない程度に撹拌し得る混合機と、必要にして十分な分散条件とを選択する必要がある。分散の程度は粒ゲージにより測定可能であるが、少なくとも100μmより大きい凝集物がなくなるように混合分散することが好ましい。このような条件に適合する混合機としては、例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、脱泡機、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサーなどを例示することができる。
3.蓄電デバイス用電極の製造方法
上記のような電極用スラリーを用いて、蓄電デバイス用電極を製造することができる。
蓄電デバイス用電極は、金属箔などの適宜の集電体の表面に、本発明の電極用バインダー組成物を用いて製造された電極用スラリーを塗布して塗膜を形成し、次いで該塗膜から液状媒体を除去することにより、製造される。このようにして製造された電極は、集電体上に、前述の(A)重合体および活物質、さらに必要に応じて使用される任意添加成分を含有する活物質層が結着されてなるものである。電極用バインダー組成物および電極用スラリーに含有されていた(B)カルボン酸化合物は、液状媒体の除去工程の最中に分解・除去され、得られる活物質層における存在濃度は低いものと考えられる。
集電体の表面に、本発明の電極用バインダー組成物を用いて製造された電極用スラリーから形成された層を有する電極は、集電体と活物質層間と間の結着性に優れるとともに、電気的特性の一つである充放電レート特性が良好である。
3.1 集電体
集電体は、導電性材料からなるものであれば特に制限されない。リチウムイオン二次電池においては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの金属製の集電体が使用されるが、特に正極にアルミニウムを、負極に銅を用いた場合、本発明の正極用スラリーの効果が最もよく現れる。ニッケル水素二次電池における集電体としては、パンチングメタル、エキスパンドメタル、金網、発泡金属、網状金属繊維焼結体、金属メッキ樹脂板などが使用される。
集電体の形状および厚さは特に制限されない集電体の厚さは、1〜500μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましく、特に20〜80μmであることが好ましい。集電体の形状としてはシート状のものが好ましく使用される。
3.2 蓄電デバイス用電極の形成方法
本発明の蓄電デバイス用電極は、集電体上に、
少なくとも活物質、電極用バインダー組成物を含有する電極用スラリーを塗布して塗膜を形成し、次いで該塗膜を加熱して該塗膜から前記分散媒を除去する工程を経て前記基板上に活物質層を形成することにより、製造することができる。分散媒除去工程においては、(B)カルボン酸化合物のうちの余剰分も分解・除去されるものと考えられる。
電極用スラリーの集電体への塗布方法については、特に制限はない。塗布は、例えばドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、浸漬法、ハケ塗り法などの適宜の方法によることができる。電極用スラリーの塗布量も特に制限されないが、液状媒体を除去した後に形成される活物質層の厚さが、0.005〜5mmとなる量とすることが好ましく、0.01〜2mmとなる量とすることがより好ましい。
塗布後の塗膜からの液状媒体の除去方法についても特に制限されず、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥;真空乾燥;(遠)赤外線、電子線などの照射による乾燥などによることができる。乾燥速度としては、応力集中によって活物質層に亀裂が入ったり、活物質層が集電体から剥離したりしない程度の速度範囲の中で、できるだけ早く液状媒体が除去できるように適宜に設定することができる。
加熱温度は、塗膜中の電極用バインダー組成物の有するアミック酸構造が熱イミド化しない範囲とすることが好ましい。このような要請から、分散媒を除去する工程における加熱温度は、150℃を超えない温度とすることが好ましく、130℃を超えない温度とすることがより好ましい。加熱時間は、0.5〜20分とすることが好ましく、1〜10分とすることがより好ましい。
さらに、液状媒体除去後の集電体をプレスすることにより、活物質層の密度を高めることが好ましい。プレス方法としては、金型プレス、ロールプレスなどの方法が挙げられる。プレスの条件は、使用するプレス機器の種類および活物質層の密度の所望値によって適宜に設定されるべきである。この条件は、当業者による少しの予備実験により、容易に設定することができるが、例えばロールプレスの場合、ロールプレス機の線圧力は0.1〜10t/cm、好ましくは0.5〜5t/cmの圧力において、例えばロール温度が20〜100℃において、分散媒除去後の塗膜の送り速度(ロールの回転速度)が1〜80m/分、好ましくは5〜50m/分で行うことができる。
プレス後の活物質層の密度は、電極を正極として使用する場合には、1.5〜2.4g/cmとすることが好ましく、1.7〜2.2g/cmとすることがより好ましく;
電極を負極として使用する場合には、1.2〜1.9g/cmとすることが好ましく、1.3〜1.8g/cmとすることがより好ましい。
プレス後の塗膜は、さらに、減圧下で加熱して液状媒体を完全に除去することが好ましい。この場合の減圧の程度としては、絶対圧として50〜200Paとすることが好ましく、75〜150Paとすることがより好ましい。加熱温度としては、100〜200℃とすることが好ましく、120〜180℃とすることがより好ましい。加熱時間は、2〜12時間とすることが好ましく、4〜8時間とすることがより好ましい。
電極用スラリーを用いて集電体上に活物質層を形成するためのいずれの工程においても工程温度が200℃を超えないことが好ましく、180℃を超えないことがより好ましい。ここで、活物質層を形成するための工程とは、上記の電極用スラリーの塗布工程および塗膜からの分散媒の除去工程ならびに任意的に行われるプレス工程、減圧下における加熱工程、プレス工程など、およそ当業者が活物質層を形成するために行う工程のすべてを含む。上記工程温度とは、電極用スラリー、集電体または活物質層自体の温度、これらを囲繞する周囲雰囲気の温度、これらに接触または近接する装置・器具などの温度をいう。
このようにして製造された蓄電デバイス用電極は、集電体と活物質層との間の密着性に優れるとともに、電気的特性の一つであるサイクル特性が良好である。
4. 蓄電デバイス
上記のような本発明の蓄電デバイス用電極を用いて、蓄電デバイスを製造することができる。
蓄電デバイスは、前述した電極を備えるものであり、さらに電解液を含有し、セパレータなどの部品を用いて、常法に従って製造することができる。具体的な製造方法としては、例えば、負極と電極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に収納し、該電池容器に電解液を注入して封口する方法などを挙げることができる。電池の形状は、コイン型、円筒型、角形、ラミネート型など、適宜の形状であることができる。
電解液は、液状でもゲル状でもよく、負極活物質、電極活物質の種類に応じて、蓄電デバイスに用いられる公知の電解液の中から電池としての機能を効果的に発現するものを選択すればよい。
電解液は、電解質を適当な溶媒に溶解した溶液であることができる。
上記電解質としては、例えばリチウムイオン二次電池においては、従来から公知のリチウム塩のいずれをも使用することができ、その具体例としては、例えばLiClO、LiBF、LiPF、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、LiCFSO、LiCHSO、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウムなどを例示することができる。
上記電解質を溶解するための溶媒は、特に制限されるものではないが、その具体例として、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート化合物;
γ−ブチルラクトンなどのラクトン化合物;
トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル化合物;
ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド化合物などを挙げることができ、これらのうちから選択される一種以上を使用することができる。
電解液中の電解質の濃度としては、好ましくは0.5〜3.0モル/Lであり、より好ましくは0.7〜2.0モル/Lである。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の各合成例で得た重合体溶液の溶液粘度は、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した値である。
以下の各実施例で調製したバインダー組成物中の(B)カルボン酸化合物の含有割合は、以下の条件の液体クロマトグラフィーによって測定した。
測定装置:HLC−8220(東ソー(株)製)
デガッサ:SD−8000
検出器:UV8020(紫外線吸収型検出器)
カラム:TSKGEL α−Mおよびα−2500(ともに東ソー(株)製)を直列に接続して使用
展開液:LiBr30mmol/LおよびHPO10mmol/Lを含有するジメチルホルムアミド溶液
流速:1mL/分
<重合体の合成>
合成例1
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを備えた容量3Lのフラスコに乾燥窒素ガスを満たし、溶媒として予めモレキュラーシーブで脱水処理を施したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1,170g、テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物80g(0.25モル)およびジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル50g(0.25モル)を仕込み、25℃において3時間攪拌下に反応を行うことにより、ポリアミック酸P1を10質量%含有する重合体溶液を得た。
この重合体溶液の溶液粘度は12,000mPa・sであった。
合成例2
合成例1において、溶媒としてのNMPの使用量を1,059gとし、テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物40.3g(0.125モル)およびピロメリット酸二無水物27.3g(0.125モル)を、ジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル50.1g(0.25モル)をそれぞれ使用した以外は合成例1と同様に反応を行うことにより、ポリアミック酸P2を10質量%含有する重合体溶液を得た。
この重合体溶液の溶液粘度は10,800mPa・sであった。
合成例3
合成例1において、溶媒としてのNMPの使用量を942gとし、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物54.6g(0.25モル)、ジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル50.1g(0.25モル)をそれぞれ使用した以外は合成例1と同様に反応を行うことにより、ポリアミック酸P3を10質量%含有する重合体溶液を得た。
この重合体溶液の溶液粘度は11,500mPa・sであった。
合成例4
合成例1において、溶媒としてγ−ブチロラクトン(GBL)1257g、テトラカルボン酸二無水物として3,3’4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物89.6g(0.25モル)、ジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル50.1g(0.25モル)をそれぞれ使用した以外は合成例1と同様に反応を行うことにより、ポリアミック酸P4を10質量%含有する重合体溶液を得た。
この重合体溶液の溶液粘度は9,800mPa・sであった。
合成例5
上記合成例1と同様にして、ポリアミック酸を10質量%含有する重合体溶液1,300gを得た。
この重合体溶液に、ピリジン3.96gおよび無水酢酸5.11gを加え、110℃で4時間攪拌下にイミド化反応を行った。
得られた反応溶液をメタノールに投入して再沈殿を行って、ポリアミック酸のイミド化重合体P5を白色固体として得た。得られたイミド化重合体酸を、濃度10質量%となるようにNMPに溶解することにより、重合体溶液を得た。
この重合体溶液の溶液粘度は8,200mPa・sであり、該重合体溶液に含有される重合体P5について、以下のようにして測定したイミド化率は20%であった。
イミド化率は、得られた重合体溶液から減圧で溶媒を除去して回収した重合体を重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温で測定したH−NMRから、下記数式(1)により求めた。
イミド化率(%)=(1−A1/A2×α)×100 (1)
(数式(1)中、A1は化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、A2はその他のプロトン由来のピーク面積であり、αはイミド化重合体の前駆体であるポリアミック酸におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
<活物質の合成>
合成例6
粉砕した二酸化ケイ素粉末(平均粒径10μm)と炭素粉末(平均粒径35μm)との混合物を、温度を1,100〜1,600℃の範囲に調整した電気炉中で、窒素気流下(0.5NL/分)、10時間の加熱処理を行い、組成式SiOx(x=0.5〜1.1)で表される酸化ケイ素の粉末(平均粒径8μm)を得た。
この酸化ケイ素の粉末300gをバッチ式加熱炉内に仕込み、真空ポンプにより絶対圧100Paの減圧を維持しながら、300℃/hの昇温速度にて室温(25℃)から1,100℃まで昇温した。次いで、加熱炉内の圧力を2,000Paに維持しつつ、メタンガスを0.5NL/分の流速にて導入しながら、1,100℃、5時間の加熱処理(黒鉛被膜処理)を行った。黒鉛被膜処理終了後、50℃/hの降温速度で室温まで冷却することにより、黒鉛被膜酸化ケイ素の粉末約330gを得た。
この黒鉛被膜酸化ケイ素は、酸化ケイ素の表面が黒鉛で被覆された導電性の粉末(活物質)であり、その平均粒径は10.5μmであり、得られた黒鉛被膜酸化ケイ素の全体を100質量%とした場合の黒鉛被膜の割合は2質量%であった。
実施例1
(1)バインダー組成物の調製
(A)重合体として上記合成例1で得たポリアミック酸P1を含有する重合体溶液100g(ポリアミック酸P1を10g含有する。)に、(B)カルボン酸化合物としての酢酸を10質量%含有するNMP溶液1.0g(酢酸を0.1g含有する。)を添加して、バインダー組成物を調製した。
このバインダー組成物中の(B)カルボン酸化合物含有割合を上記の方法によって測定したところ、0.10質量%であった。
(2)バインダー組成物の密着性試験
上記で調製したバインダー組成物を、10cm四方の銅板上およびガラス板上に、溶媒除去後の膜厚が90μmになるようにそれぞれ塗布し、150℃において15分加熱することにより、銅板上およびガラス板上にそれぞれバインダーの薄膜を形成した。
上記で形成した2種類のバインダー薄膜について、JIS K5400に準拠した碁盤目剥離試験をそれぞれ行った。
具体的には、カッターを用いて、薄膜の表面から銅板またはガラス板に達する深さまでの切り込みを1mm間隔で縦横それぞれ11本入れ、薄膜を碁盤目状の100マスの領域に分割した。これら100マスの領域の全域の表面に粘着テープ((株)テラオカ製、品番「650S」)を貼り付けて直ちに引き剥がした後、残存したマス目数をカウントした。
評価結果は、100マス中の残存したマス目の数として表1に示した。
残存したマス目数が90個以上であるとき、密着性は良好と判断でき、残存したマス目数が90個未満であるとき、密着性は不良と判断できる。
なお、本発明者らの検討により、活物質層と集電体との密着性は、本試験における銅板と重合体フィルムとの間の密着性と比例の関係があることが経験的に明らかとなっている。また、活物質同士を結着するバインダーとしての結着性は、本試験におけるガラス板と重合体フィルムとの間の密着性と比例の関係があることが経験的に明らかとなっている。このため、ガラス板と重合体フィルムとの間の密着性が良好である場合、活物質同士を結着する重合体のバインダーとしての密着性が良好であると推定することができ、
Cu板と重合体フィルムとの間の密着性が良好である場合、集電体と活物質層の密着性が良好であると推定することができる。
この場合、残存するマス目の数が90個以上であれば密着性が良好であると判断することができ、
この数が95個以上であれば密着性が優良であると判断することができる。残存するマス目の数は、最も好ましくは碁盤目100個中100個である。
(3)電極用スラリーの調製
二軸型プラネタリーミキサー(プライミクス(株)製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)中に、負極活物質として、平均粒子径22μmのグラファイト(日立化成工業(株)製、製品名「SMG−HE1」)80質量部(固形分換算)および上記合成例6で調製した黒鉛被覆酸化ケイ素20質量部ならびに導電付与剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブラック50%プレス品」)1質量部を投入して20rpmで3分間混合した。次いでさらに上記で調製したバインダー組成物を100質量部およびNMP20質量部を投入して、60rpmで1時間攪拌を行った。
その後、攪拌脱泡機((株)シンキー製、商品名「ARV930−TWIN」)を使用して、絶対圧25kPaの減圧下において1,200rpmで10分間攪拌混合することにより、電極用スラリーを調製した。
(4)蓄電デバイス用電極の製造
厚み50μmの銅箔からなる集電体の表面に、上記「(3)電極用スラリーの調製」で調製した電極用スラリーを、溶媒除去後の活物質層の質量が9.80mg/cmになるように膜厚を調整してドクターブレード法によって均一に塗布し、120℃で5分間乾燥処理して塗膜を形成した。次いで上記塗膜を、ギャップ間調整式ロールプレス機(テスター産業(株)製、商品名「SA−601」)を用いて、ロール温度30℃、線圧力1t/cmおよび送り速度0.5m/分の条件でプレスした。さらに、絶対圧100Paの減圧下、160℃において6時間加熱して活物質層を形成することにより、蓄電デバイス用電極を得た。
この蓄電デバイス用電極における活物質層の密度は1.62g/cmであった。
(5)蓄電デバイスの製造
露点が−80℃以下となるようアルゴン置換されたグローブボックス内で、上記「(4)蓄電デバイス用電極の製造」において製造した電極を直径15.5mmに打ち抜き成型したものを、活物質層を上側にして、2極式コインセル(宝泉(株)製、商品名「HSフラットセル」)上に載置した。次いで、直径24mmに打ち抜いたポリプロピレン製多孔膜からなるセパレータ(セルガード(株)製、商品名「セルガード#2400」)を上記の電極上に載置し、さらに、空気が入らないように電解液を500μL注入した後、対電極として厚さ200μmのリチウム箔を直径16.6mmに打ち抜き成型したものを載置し、前記2極式コインセルの外装ボディーをネジで閉めて封止することにより、リチウムイオン電池セル(蓄電デバイス)を組み立てた。
ここで使用した電解液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/1(質量比)の溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解した溶液である。
この操作を繰り返し、合計2個の蓄電デバイスを製造した。このうちの1個を「(6)蓄電デバイスの評価(充放電サイクル特性の評価)」に供し、もう1個を「(7)活物質層の膜厚変化率の評価」に供した。
(6)蓄電デバイスの評価(充放電サイクル特性の評価)
上記「(5)蓄電デバイスの製造」で製造した蓄電デバイスにつき、定電流(0.2C)にて充電を開始し、電圧が0.01Vになった時点で引き続き定電圧(0.01V)にて充電を継続し、電流値が0.05Cとなった時点を充電完了(カットオフ)とした。次いで、定電流(0.2C)にて放電を開始し、電圧が2.0Vになった時点を放電完了(カットオフ)として、初回充放電を終了した。
次に、初回充放電を行った上記の蓄電デバイスにつき、0.5Cの充放電を、以下のようにして行った。
先ず定電流(0.5C)にて充電を開始し、電圧が0.01Vになった時点で引き続き定電圧(0.01V)にて充電を継続し、電流値が0.05Cとなった時点を充電完了(カットオフ)とした。次いで、定電流(0.2C)にて放電を開始し、電圧が2.0Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、0.5Cにおける放電容量(1サイクル目の0.5C放電容量=A)を測定した。
この0.5Cの充放電を繰り返し行い、100サイクル目の0.5C放電容量をBとしたとき、100サイクル後の容量維持率を下記数式(2)によって算出した。
容量維持率(%)=B/A×100 (2)
評価結果は表1に示した。
この100サイクル後の容量維持率の値が90%以上95%未満であれば充放電サイクル特性は良好であると判断することができ、そして
95%以上であれば、充放電サイクル特性は優良であると判断することができる。
(7)活物質層の膜厚変化率の評価
上記「(5)蓄電デバイスの製造」で得た蓄電デバイスにつき、定電流(0.2C)にて充電を開始し、電圧が0.01Vになった時点で引き続き定電圧(0.01V)にて充電を継続し、電流値が0.05Cとなった時点を充電完了(カットオフ)とした。次いで、定電流(0.2C)にて放電を開始し、電圧が2.0Vになった時点を放電完了(カットオフ)として、初回充放電を終了した。
次に、初回充放電を行った上記蓄電デバイスにつき、定電流(0.2C)にて充電を開始し、電圧が0.01Vになった時点で引き続き定電圧(0.01V)にて充電を継続し、電流値が0.05Cとなった時点を充電完了(カットオフ)とした。
この蓄電デバイスを露店が−60℃以下のドライルーム内(室温25℃)で解体し、蓄電デバイス用電極(負極)を取り出した。引き続きドライルーム内でこの電極をジメチルカーボネート中に1分間浸漬して洗浄した。電極をジメチルカーボネートから取り出した後、ドライルーム内に30分間静置することにより、ジメチルカルボネートを気化させて除去した。
この、充電後の電極の活物質層膜厚を測定し、予め測定しておいた製造直後の電極(未充電状態)の活物質層膜厚に対する充電後の電極の活物質層膜厚の比率を、下記式(3)によって算出した。
充電後の膜厚比率(%)=(充電後の膜厚)/(製造直後の膜厚)×100 (3)
評価結果は表1に示した。
この値が140%を超える場合には、活物質層において、充電に伴う活物質の体積膨張が緩和されていないことを示し、活物質に機械的応力が加えられると活物質が剥落する懸念がある。一方、この値が140%以下であると、充電に伴って活物質が体積膨張するにもかかわらず活物質が活物質層内に強固に保持されていることを示しており、活物質の剥落が抑制された良好な電極であると評価することができる。
実施例2〜7および比較例1〜6
実施例1において、(A)重合体および(B)カルボン酸化合物の種類および使用割合がそれぞれ表1に記載のとおりとなるように、上記合成例1〜5のうちのいずれかで得た重合体溶液およびカルボン酸化合物のNMP溶液(濃度=10質量%)を用いたほかは、実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製した。
実施例2および4〜6ならびに比較例1〜6における溶媒はNMPであり、一方、実施例3および7における溶媒は、GBLとNMPとの混合溶媒である。
上記で調製したバインダー組成物を用いて各種の評価を行った。ここで、「(3)電極用スラリーの調製」における活物質中の黒鉛被覆酸化ケイ素およびグラファイト(SMG−HE1)の使用割合、ならびに「(4)蓄電デバイス用電極の製造」における溶媒除去後の活物質層の質量が、それぞれ表1に記載の値となるようにしたほかは、実施例1と同様にして評価を行った。
評価結果は表1に示した。
実施例8
(A)重合体として市販のポリアミック酸(宇部興産(株)製、商品名「U−ワニスA」、ポリアミック酸のNMP溶液)を使用した。
メタノールを攪拌しながら、ここにU−ワニスAを滴下してポリアミック酸を凝固した。凝固したポリアミック酸を、絶対圧として4kPaの減圧下で25℃において5時間乾燥した。乾燥後のポリアミック酸の10gを濃度が10質量%となるようNMPに溶解し、さらにここに(B)カルボン酸化合物としての酢酸を10質量%含有するNMP溶液1.0g(酢酸を0.1g含有する。)を添加することにより、バインダー組成物を調製した。
このバインダー組成物中の(B)カルボン酸化合物含有割合を上記の方法によって測定したところ、0.10質量%であった。
このバインダー組成物を用いて、実施例1と同様の操作で各種の評価を行った。評価結果は表1に示した。
比較例7
メタノールを攪拌しながら、ここに市販のポリアミック酸溶液(宇部興産(株)製、商品名「U−ワニスA」)を滴下してポリアミック酸を凝固した。凝固したポリアミック酸を、絶対圧として4kPaの減圧下で25℃において5時間乾燥した。乾燥後のポリアミック酸を濃度が10質量%となるようNMPに溶解し、これをバインダー組成物とした。
このバインダー組成物を用いて、実施例1と同様の操作で各種の評価を行った。評価結果は表1に示した。
Figure 2013229160
Figure 2013229160
表1における各成分の略称は、それぞれ以下の意味である。
<(A)成分>
UVA:U−ワニスA(商品名、宇部興産(株)製、ポリアミック酸のNMP溶液)
<(B)成分>
B1:酢酸
B2:マレイン酸
B3:クエン酸
B4−1:ピロメリット酸
B4−2:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸
B5:ベンゼンペンタカルボン酸
B6:ベンゼンヘキサカルボン酸
BP:ポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製、重量平均分子量Mw=25,000)
<活物質>
C/SiO:上記合成例6で調製した黒鉛被覆酸化ケイ素
グラファイト:日立化成工業(株)製、品名「SMG−HE1」

Claims (7)

  1. (A)ポリアミック酸およびそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体と、
    (B)分子内にカルボキシル基を1〜4個有する化合物およびその塩よりなる群から選択される少なくとも1種のカルボン酸化合物と、
    を含有し、そして
    上記(A)重合体の含有量をMa質量部、上記(B)カルボン酸化合物の含有量をMb質量部としたときに、Ma/Mb=50〜400であることを特徴とする、蓄電デバイスの電極用バインダー組成物。
  2. 請求項1に記載の電極用バインダー組成物と、
    電極活物質と、
    を含有することを特徴とする、蓄電デバイスの電極用スラリー。
  3. 上記電極活物質が、ケイ素原子を含む活物質を含有するものである、請求項2に記載の電極用スラリー。
  4. 上記ケイ素原子を含む活物質が、ケイ素単体、ケイ素酸化物およびケイ素合金よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の電極用スラリー。
  5. 電極活物質100質量%中に占めるケイ素原子を含む活物質の占める割合が10〜40質量%である、請求項3または4に記載の電極用スラリー。
  6. 集電体と、
    前記集電体上に形成された活物質層と、
    を備える蓄電デバイスの電極であって、
    前記活物質層が請求項2〜5のいずれか一項に記載の電極用スラリーから形成されたものであることを特徴とする、前記電極。
  7. 請求項6に記載の電極を備えることを特徴とする、蓄電デバイス。
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