JP6657758B2 - 中間組成物、負極電極用スラリー、及び負極電極の製造方法 - Google Patents
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Description
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の中間組成物において、前記混合溶媒を構成する非水溶媒は、アセトン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、エチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の中間組成物において、前記多官能アミンにおいて、前記一般式(1)におけるYは、酸素原子、又はオキソ基が結合された炭素数1〜4の直鎖アルキル基であることを特徴とする。
まず、蓄電装置の負極用バインダーとして用いられる高分子化合物について説明する。この高分子化合物は、(A)ポリアクリル酸と、(B)多官能アミンとが縮合してなる高分子化合物である。
Yが直鎖アルキル基である多官能アミンとしては、例えば、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、9、9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、パラローズアニリンが挙げられる。
(負極電極用スラリーの調製)
負極活物質と、負極用バインダーの中間組成物とを混合して、負極電極用スラリーを調製する。
多官能アミンは、上記高分子化合物の説明において記載した(B)多官能アミンと同じ一般式(1)に示す化合物である。なお、負極活物質層の乾燥時間を短縮するという観点において、一般式(1)におけるYは、酸素原子、又はオキソ基が結合された炭素数1〜4の直鎖アルキル基であることが好ましい。
上記の負極電極用スラリーを集電体に塗布して、集電体の表面に負極電極用スラリーからなる負極活物質層を形成する。
次に、負極活物質層に含有される溶媒(中間組成物に含有される混合溶媒、及び負極電極用スラリーの希釈溶媒)を除去して、負極活物質層を乾燥させる。このとき、負極活物質層に含有される溶媒を完全に除去することが好ましいが、溶媒が僅かに(例えば、4質量%以下)残留していてもよい。負極活物質層を乾燥させる乾燥処理の方法は、特に限定されるものではないが、例えば、常圧下又は減圧下において、熱風、赤外線、マイクロ波、高周波等の熱源を用いて加熱する方法が挙げられる。乾燥処理は、高温で素早く加熱するよりも、低温でゆっくりと加熱することが好ましい。このように加熱することにより、蓄電装置の特性(初期効率やサイクル特性)を高めることができる。
次に、負極活物質層を加熱処理することにより、負極活物質層内に高分子化合物を形成させて負極活物質層を硬化させる。この加熱処理は、上記の高分子化合物の製造方法における加熱処理に対応する工程であり、加熱処理によって、中間組成物に含有される(A)ポリアクリル酸と(B)多官能アミンとが縮合して、負極活物質層中に高分子化合物が形成される。その結果、高分子化合物を負極用バインダーとする負極電極が得られる。
(1)蓄電装置の負極用バインダーとして用いられる高分子化合物の中間組成物は、ポリアクリル酸と、一般式(1)に示す多官能アミンと、水及び非水溶媒の混合溶媒とを含有し、ポリアクリル酸及び多官能アミンが混合溶媒中に溶解した状態の組成物である。蓄電装置の負極電極の製造に用いられる負極電極用スラリーは、上記の中間組成物と、負極活物質とを含有する。
<試験1>
混合溶媒を構成する非水溶媒の種類を異ならせた中間組成物を調製した。また、比較として、混合溶媒に代えてNMPを用いた中間組成物を調製した。なお、以下では、ポリアクリル酸を「PAA」、N−メチル−2−ピロリドンを「NMP」、ジエチレングリコールジメチルエーテルを「ジグリム」、γ−ブチルラクトンを「GBL」、エチレングリコールモノブチルエーテルを「ブチルセロソルブ」と、それぞれ表記する。
重量平均分子量10万のPAA水溶液に対して、真空乾燥とアセトンによる溶媒置換により水分量が1質量%以下になるまで水分を除去した。水分を除去したPAAを、非水溶媒と水とを体積比10:90で混合させた混合溶媒に溶解させて、PAAの固形分濃度が20質量%のPAA溶液を調製し、このPAA溶液10g(PAAのモノマー換算で27.8mmol)を窒素雰囲気下のフラスコ内に分取した。また、別途、4,4’−ジアミノジフェニルメタンを、非水溶媒と水とを体積比10:90で混合させた混合溶媒に溶解させて、20質量%のアミン溶液を調製した。フラスコ内のPAA溶液を撹拌しながら、PAA溶液中にアミン溶液3.43g(3.47mmol)を滴下し、室温にて30分間撹拌を続けた。その後、ディーン・スターク装置を用いて、80℃にて3時間、加熱処理(予備加熱処理)することにより、実施例1の中間組成物を溶液の状態(固形分比20質量%)で得た。
(シリコン材料の作製)
0℃で氷浴したフッ化水素を1質量%の濃度で含有する濃塩酸20mlに、CaSi25gを加えて1時間撹拌した後、水を加えて更に5分間撹拌した。反応液を濾過して得られた黄色粉体を水及びエタノールで洗浄し、これを減圧乾燥することにより、層状ポリシランを得た。得られた層状ポリシランをアルゴン雰囲気下で500℃に加熱することにより、ポリシランから水素が離脱したシリコン材料を得た。
上記シリコン材料85質量部、アセチレンブラック5質量部、中間組成物50質量部(固形分10質量部相当)を混合し、この混合物に対して、総固形分比が40質量%となるように、希釈溶媒として、中間組成物の作製時に用いた混合溶媒と同じ組成の混合溶媒(参考例1についてはNMP)110質量部を加えて負極電極用スラリーを調製した。
集電体としての30μmの電解銅箔の表面に対して、ドクターブレード法を用いて負極電極用スラリーを膜状に塗布して、負極活物質層を形成した(負極活物質層形成工程)。そして、電解銅箔を80℃にて15分間、ホットプレート上に静置させることにより、負極活物質層中の混合溶媒を揮発させて除去した。その後、ロールプレス機を用いて、負極活物質層の厚さが20μmとなるように電解銅箔及び負極活物質層を圧縮することにより、電解銅箔と負極活物質層を強固に密着接合させた(接合工程)。この電極シートを直径11mmの円形に裁断して電極体とし、これを真空中(減圧下)にて180℃、2時間、加熱処理を行うことにより、負極活物質層を加熱硬化させた(縮合工程)。
得られた負極電極(評価極)と、厚さ500μmの金属リチウム箔を直径13mmの円形に裁断してなる正極電極との間にセパレータを挟装して電極体電池とした。電池ケース内に、電極体電池を収容するとともに非水電解質を注入して、電池ケースを密閉することにより、リチウムイオン二次電池を得た。なお、セパレータとしては、ヘキストセラニーズ社製ガラスフィルター及びセルガード社製celgard2400を用いた。非水電解質としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比1:1で混合した混合溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウムを1Mの濃度となるように溶解させた非水電解質を用いた。
得られたリチウムイオン電池について、直流電流0.2mAで負極電極における正極電極に対する電圧が0.01Vになるまで放電を行い、放電が終了してから10分後に、直流電流0.2mAで負極電極における正極電極に対する電圧が1.0Vになるまで充電を行った。このときの放電容量を初期放電容量とするとともに、充電容量を初期充電容量とした。そして、下記式に基づいて初期効率を算出した。その結果を表1に示す。
また、上記の放電及び充電を1サイクルとして規定サイクルの充放電を行い、下記式に基づいてサイクル特性を算出した。その結果を表1に示す。
次に、非水溶媒としてNMP又はGBLを用いた場合において、混合溶媒の混合割合、及びPAAと多官能アミンとの組成比を変更した場合について検討した。
表2〜5に示す混合割合の混合溶媒を用いた点、並びに表2〜4に示す組成比となる量のPAA溶液及びアミン溶液を用いた点を除いて、試験1と同様の方法により中間組成物を調製した。なお、中間組成物の調製時又は調整後に、固形物の析出が確認された場合については、中間組成物を調製することができないと判断して、以降の処理を行わなかった。
得られた中間組成物を用いて、試験1と同様の方法により電極シートを作製した。また、縮合工程前の負極活物質層に含まれる溶媒の残留量を算出した。その結果を表2〜5に示す。
得られた電極シートを用いて、試験1と同様の方法により、リチウムイオン二次電池を作製し、そのリチウムイオン二次電池の電池特性を評価した。その結果を表2〜5に示す。
次に、多官能アミンを変更した場合について検討した。
(中間組成物の調製)
表6〜9に示す多官能アミンを用いた点、及び表6〜9に示す混合溶媒を用いた点を除いて、試験1と同様の方法により中間組成物を調製した。なお、中間組成物の調製時又は調整後に、固形物の析出が確認された場合については、中間組成物を調製することができないと判断して、以降の処理を行わなかった。
得られた中間組成物を用いて、試験1と同様の方法により電極シートを作製した。また、縮合工程前の負極活物質層に含まれる溶媒の残留量を算出した。その結果を表6〜9に示す。
得られた電極シートを用いて、試験1と同様の方法により、リチウムイオン二次電池を作製し、そのリチウムイオン二次電池の電池特性を評価した。その結果を表6〜9に示す。
Claims (6)
- 蓄電装置の負極用バインダーとして用いられる高分子化合物の中間組成物であって、
ポリアクリル酸と、下記一般式(1)に示す多官能アミンと、水及び非水溶媒の混合溶媒とを含有し、
前記ポリアクリル酸及び前記多官能アミンが前記混合溶媒中に溶解していることを特徴とする中間組成物。
- 前記混合溶媒を構成する非水溶媒は、アセトン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、エチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の中間組成物。
- 前記混合溶媒における水の割合が33〜99体積%の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の中間組成物。
- 前記多官能アミンにおいて、
前記一般式(1)におけるYは、酸素原子、又はオキソ基が結合された炭素数1〜4の直鎖アルキル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の中間組成物。 - 蓄電装置の負極電極の製造に用いられる負極電極用スラリーであって、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の中間組成物と、負極活物質とを含有することを特徴とする負極電極用スラリー。 - 蓄電装置の負極電極の製造方法であって、
請求項5に記載の負極電極用スラリーを用いて、集電体に対して負極活物質層を形成する負極活物質層形成工程と、
前記負極活物質層に含まれる前記混合溶媒を除去した状態として、前記負極活物質層を前記集電体に押し付けて、前記集電体に対して前記負極活物質層を接合させる接合工程と、
前記負極活物質層を加熱して、前記ポリアクリル酸と前記多官能アミンとを縮合させる縮合工程とを有することを特徴とする負極電極の製造方法。
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