JP2017075695A - 油潤滑軸受装置および真空ポンプ - Google Patents

油潤滑軸受装置および真空ポンプ Download PDF

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Abstract

【課題】撹拌抵抗の発生を抑えることができる油潤滑軸受装置の提供。【解決手段】油潤滑軸受装置は、内輪82が固定されたシャフト10に設けられ、内輪82に向かって上り勾配のテーパ面102aが形成されたテーパ部材であるコーン型ナット102と、内輪82に対してコーン型ナット102が設けられた側に配置されるウィック101と、テーパ面102aに接触してウィック101の潤滑油をテーパ面102aに供給する接触部101aと、を備える。そして、保持器84は、外輪側開口と内輪側開口とを有して転動体83を保持するポケットと、ポケットの内周面に形成され、転動体83の表面に付着した潤滑油を掻き取る掻き取り部840bと、外輪側開口に隣接する保持器外周面に形成され、ウィック101に向かって上り勾配のテーパ面841と、を備える。【選択図】図5

Description

本発明は、油潤滑軸受装置および真空ポンプに関する。
高速回転の転がり軸受においては、微量の潤滑油を供給し続けることによって転動面の潤滑が維持され、かつ、転動面には必要以上の潤滑油の付着を防止することが要求される。潤滑に必要となる以上の潤滑油が転動面に付着すると、潤滑油の撹拌抵抗が発生し、発熱の原因となる。
真空ポンプにおける転がり軸受の潤滑方法としては、特許文献1に記載のような方法が提案されている。特許文献1に記載の転がり軸受では、内輪と共に回転するシャフトにテーパーコーン状の部材を設け、そのテーパーコーン状の面に潤滑貯蔵装置に設けられたフェルト状の部材を接触させて、遠心力により潤滑油を内輪に供給する構造が採用されている。潤滑油は転動体(ボール)を介して内輪の転動面(軌道面とも呼ばれる)から外輪の転動面へと供給され、外輪の転動面から溢れ出た余剰潤滑油を潤滑貯蔵装置に戻すような構成とされている。
特許第5303137号公報
しかしながら、転動面から溢れ出た余剰潤滑油を潤滑貯蔵装置に戻す構成であるため、潤滑油が溢れ出る状態においては転動面で潤滑に必要とされる以上の潤滑油が存在することになり、撹拌抵抗の発生が避けられない。
本発明の好ましい実施形態による油潤滑軸受装置は、内輪、外輪、転動体および前記転動体の間隔を維持する保持器を有し、回転軸を支持する転がり軸受と、前記内輪が固定された前記回転軸に設けられ、前記内輪に向かって上り勾配(回転半径を増加させるように設けられる傾斜)の第1傾斜面が形成されたテーパ部材と、前記内輪に対して前記テーパ部材が設けられた側に配置される潤滑油貯蔵部と、前記テーパ面に接触して前記潤滑油貯蔵部の潤滑油を前記第1傾斜面に供給する接触部と、を備え、前記保持器は、外輪側開口と内輪側開口とを有して前記転動体を保持するポケットと、前記ポケットの内周面に形成され、前記転動体の表面に付着した潤滑油を掻き取る潤滑油掻き取り部と、前記外輪側開口に沿って前記内周面に形成され、前記潤滑油貯蔵部に向かって上り勾配の第2傾斜面と、を備える。
さらに好ましい実施形態では、前記潤滑油掻き取り部は、前記内周面の前記外輪側開口の側の領域に周方向に並ぶように形成された複数の凸部を備える。
さらに好ましい実施形態では、前記第2傾斜面には前記傾斜面から突出する突起が形成されている。
さらに好ましい実施形態では、前記テーパ部材は、前記回転軸に着脱自在に設けられ、前記内輪を前記回転軸に固定する内輪固定部材である。
さらに好ましい実施形態では、前記保持器よりも外輪側に配置されて前記潤滑油貯蔵部および前記外輪と接触し、前記第2傾斜面から飛散した潤滑油を前記潤滑油貯蔵部に誘導する潤滑油誘導部を備える。
本発明の好ましい実施形態による油潤滑軸受装置は、内輪、外輪、転動体および前記転動体の間隔を維持する保持器を有し、回転軸を支持する転がり軸受と、前記内輪が固定された前記回転軸に設けられ、前記内輪に向かって上り勾配の第1傾斜面が形成されたテーパ部材と、前記内輪に対して前記テーパ部材が設けられた側に配置される潤滑油貯蔵部と、前記第1傾斜面に接触して前記潤滑油貯蔵部の潤滑油を前記第1傾斜面に供給する接触部と、を備え、前記保持器は、保持器内周面から保持器外周面に貫通し、前記転動体を保持するポケットと、前記保持器外周面に形成され、前記潤滑油貯蔵部に近づくにつれて軸芯からの距離が増加する上り勾配の第2傾斜面と、前記保持器内周面に形成され、前記潤滑油貯蔵部から遠ざかるにつれて軸芯からの距離が増加する下り勾配の第3傾斜面と、前記潤滑油貯蔵部とは反対側の保持器端部に形成され、前記第2傾斜面と前記第3傾斜面とを接続する接続面と、を備える。
さらに好ましい実施形態では、前記第2傾斜面には、隣接する一対の前記ポケットの間を通って前記接続面の側から前記潤滑油貯蔵部の方向に峰状に延在する突起部が形成されている。
さらに好ましい実施形態では、前記ポケットの少なくとも1箇所が、周囲が閉じた内輪側開口から周囲が閉じた外輪側開口へと貫通している。
さらに好ましい実施形態では、前記保持器は、2以上の部材を結合して一体化されている。
本発明の好ましい実施形態による真空ポンプは、上述した油潤滑軸受装置と、前記回転軸が設けられたポンプロータと、を備える。
本発明によれば、撹拌抵抗の発生を抑えることができる。
図1は、ターボ分子ポンプの断面図である。 図2は、油潤滑軸受装置の部分を拡大して示した図である。 図3は、保持器の外観形状を示す斜視図である。 図4は、転動体および保持器の動きを説明する図である。 図5は、潤滑油の循環経路を説明する図である。 図6は、掻き取り部の形状の具体例を示す図である。 図7は、掻き取り部の変形例を示す図である。 図8は、掻き取り部の第3の変形例を示す図である。 図9は、テーパ面に形成された突起を示す図である。 図10は、保持器に形成される傾斜面の他の例を示す図である。 図11は、潤滑油誘導部の他の例を示す図である。 図12は、第2の実施の形態における油潤滑軸受装置を示す図である。 図13は、保持器の分解斜視図である。 図14は、保持器の面形状を説明する図である。 図15は、ポケットの保持器軸方向上側が開いている場合の保持器を示す図である。 図16は、第2の実施の形態の変形例を示す図である。
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1は本発明に係る油潤滑軸受装置の一実施の形態を示す図であり、油潤滑軸受装置を搭載したターボ分子ポンプ1の断面図である。なお、ターボ分子ポンプ1には電力を供給する電源ユニットが接続されるが、図1では図示を省略した。
図1に示すターボ分子ポンプ1は、排気機能部として、タービン翼を備えたターボポンプ部P1と、螺旋型の溝を備えたHolweckポンプ部P2とを備えている。もちろん、本発明は、排気機能部にターボポンプ部P1およびHolweckポンプ部P2を備えた真空ポンプに限らず、タービン翼のみを備えた真空ポンプや、ジーグバーンポンプやHolweckポンプなどのドラッグポンプのみを備えた真空ポンプや、それらを組み合わせた真空ポンプにも適用することができる。
ターボポンプ部P1は、ポンプロータ3に形成された複数段の回転翼30とベース2側に配置された複数段の固定翼20とで構成される。一方、ターボポンプ部P1の排気下流側に設けられたHolweckポンプ部P2は、ポンプロータ3に形成された円筒部31とベース2側に配置されたステータ21とで構成されている。円筒状のステータ21の内周面には螺旋溝が形成されている。複数段の回転翼30と円筒部31とが回転側排気機能部を構成し、複数段の固定翼20とステータ21とが固定側排気機能部を構成する。
ポンプロータ3はシャフト10に締結されており、そのシャフト10はモータ4により回転駆動される。モータ4には例えばDCブラシレスモータが用いられ、ベース2にモータステータ4bが設けられ、シャフト10側にはモータロータ4aが設けられている。シャフト10とポンプロータ3とから成る回転体ユニットRは、永久磁石6a,6bを用いた永久磁石磁気軸受6と転がり軸受であるボールベアリング8とにより回転自在に支持されている。
永久磁石6a,6bは、軸方向に磁化されたリング状の永久磁石である。ポンプロータ3に設けられた複数の永久磁石6aは、同極同士が対向するように軸方向に複数配置されている。一方、固定側の複数の永久磁石6bは、ポンプケーシング12に固定された磁石ホルダ11に装着されている。これらの永久磁石6bも、同極同士が対向するように軸方向に複数配置されている。ポンプロータ3に設けられた永久磁石6aの軸方向位置は、その内周側に配置された永久磁石6bの位置よりも若干上側となるように設定されている。すなわち、回転側の永久磁石の磁極は、固定側の永久磁石の磁極に対して軸方向に所定量だけずれている。この所定量の大きさによって、永久磁石磁気軸受6の支持力が異なる。図1に示す例では、永久磁石6aの方が図示上側に配置されているため、永久磁石6aと永久磁石6bとの反発力により、ラジアル方向の支持力と軸方向上向き(ポンプ排気口側方向)の力とが回転体ユニットRに働いている。
磁石ホルダ11の中央には、ボールベアリング9を保持するベアリングホルダ13が固定されている。図1では、ボールベアリング8,9に深溝玉軸受を用いているが、これに限らず、例えばアンギュラコンタクトの軸受を用いても良い。ボールベアリング9は、シャフト上部のラジアル方向の振れを制限するタッチダウンベアリングとして機能するものである。定常回転状態ではシャフト10とボールベアリング9とが接触することはなく、大外乱が加わった場合や、回転の加速時または減速時にシャフト10の振れ回りが大きくなった場合に、シャフト10がボールベアリング9に接触する。
ボールベアリング8は、ベース2にボルト固定されるベアリングホルダ114に保持されている。ボールベアリング8の外周側にはリング状のラジアルダンパー116が設けられている。ラジアルダンパー116の材料にはゴム等のエラストマーが用いられる。ボールベアリング8は油潤滑式の転がり軸受であり、ボールベアリング8に潤滑油を供給するための潤滑油貯蔵部であるウィック101を備えている。ウィック101は、ベアリングホルダ114と下蓋15との間に保持されている。
図2は、ボールベアリング8やウィック101等を含む油潤滑軸受装置100の部分を拡大して示した図である。ボールベアリング8は、内輪82が、テーパ部材として機能するコーン型ナット102によりシャフト10に固定されている。コーン型ナット102は、雄ネジが形成されたシャフト10の下端に着脱自在に設けられている。ボールベアリング8の外輪81は、ベアリング押え103によってベアリングホルダ114に固定されている。転動体83は保持器84により保持されている。
コーン型ナット102の外周面は、ボールベアリング8の内輪82に当接する側から先端に向けて先細りのテーパ面102aとなっている。すなわち、テーパ面102aは、内輪82に向かって上り勾配の傾斜面となっている。リング状のウィック101の内周面には内側に突出した接触部101aが形成されており、この接触部101aがコーン型ナット102のテーパ面102aに接触している。ウィック101は、潤滑油が保持可能なフェルト状やスポンジ状の部材で構成され、潤滑油を保持している。ボールベアリング8の外輪81とウィック101との間には、それらに接触するように円管部材104が設けられている。円管部材104は、毛細管現象を利用して外輪81の潤滑油をウィック101へ伝達する部材である。例えば、円管の内周面に多孔質体を形成したものでも良いし、フェルトのような繊維状のものを使用しても良いし、スポンジや焼結金属のような多孔質物質等で形成されていても良い。
図3は保持器84の外観形状を示す斜視図である。保持器84には、転動体83が保持されるポケット840が複数形成されている。図3に示す保持器84は冠型保持器であって、ポケット840は、保持器84の軸方向上側の一部が開いた貫通孔となっている。なお、本実施の形態では冠型保持器を例に説明するが、この形式の保持器に限定されるものではない。
保持器84の外周面には、ポケット840の外輪側開口840cに隣接してテーパ面841が形成されている。図2の断面図に示すように、テーパ面841は、保持器84の潤滑油貯蔵部(ウィック101)側の端部840e(図3参照)に近づくにつれて保持器84の中心軸(軸芯J)から遠ざかるように傾斜している。すなわち、テーパ面841は外輪側開口840cに隣接する保持器外周面に形成され、ウィック101に向かって上り勾配の傾斜面となっている。テーパ面841の下端841aよりも下側の外周面は半径が減少するテーパ面842となっており、テーパ面841の下端841aは保持器84の最外径になっている。
また、ポケット840の内周面840aには、転動体83の表面に付着している潤滑油を掻き取る為の掻き取り部840bが形成されている。なお、掻き取り部840bは微小な凹凸形状を成しており、図3では、点線で掻き取り部840bが形成されている範囲を示した(後述する図4の場合も同様である)。掻き取り部840bの具体的な形状については後述する。
図4は、ボールベアリング8が回転したときの転動体83および保持器84の動きを説明する図である。図4(a)は平面図であり、図4(b)はA矢視図である。転動体83は、内輪82の転動面82aおよび外輪81の転動面81aに接触している。内輪82が矢印R1のように反時計回りに回転すると、転動体83は時計回りに自転しながら反時計回りに公転運動する。転動体83が反時計回りに公転運動すると、転動体83に押されるように保持器84も反時計回りに回転することになる。ポケット840の内周面840aに形成された掻き取り部840bは、公転方向側の内周面840aに形成されている。図4も図3の場合と同様に、符号840bを付した破線は、掻き取り部840bが形成される範囲を示している。
上述したように、R1方向に公転運動する転動体83は、保持器84の掻き取り部840bが形成された側の内周面840aに当接しながらR2方向に自転している。そのため、転動体83の表面に付着している潤滑油の一部が掻き取り部840bによって掻き取られる。保持器84は高速でR1方向に回転しているので、掻き取られた潤滑油には遠心力が作用し、転動体83と保持器84の内周面840aとの隙間を通って外周面側に移動する。なお、保持器84はR1方向に内輪82の半分の角速度で回転している。転動体83が滑らずに転がりで回転する限りにおいて、転動体83の内輪接触点は軸(シャフト10)と同じ角速度であり、外輪接触点では角速度ゼロであるので、その中間位置の転動体中心の公転速度は内輪82の半分の角速度となる。
図5は、潤滑油の循環経路を説明する図である。矢印R3は潤滑油の移動経路(循環経路)を示している。上述したように、潤滑油はウィック101に貯蔵されている。ウィック101に形成された接触部101aがコーン型ナット102のテーパ面102aに接触することで、接触部101aの潤滑油がテーパ面102aに付着する。テーパ面102aは、コーン型ナット102の先端から内輪82に近づくほど径が大きくなるテーパ面、すなわち、内輪82に向かって上り勾配のテーパ面となっている。そのため、コーン型ナット102がシャフト10と一体に高速回転すると、遠心力の作用によりテーパ面102a上の潤滑油は、より半径の大きな方向に移動することになる。すなわち、潤滑油は、矢印R3のようにテーパ面102aを内輪82の方向に移動する。
テーパ面102aから内輪82に移動した潤滑油は、内輪82の転動面82aに入り込み、転動面82aを潤滑すると共に、転動体83にも付着する。潤滑油が付着した転動体83が自転すると、上述したように、転動体83に附着した潤滑油の一部が、保持器84に形成された掻き取り部840bによって掻き取られる。掻き取られた潤滑油が保持器84の外周側に形成されたテーパ面841に移動すると、遠心力によりテーパ面841上をより径の大きな図示下側(ウィック側)に移動する。テーパ面841上を下側に移動した潤滑油が下端841aに達すると、潤滑油は遠心力により飛散して外輪81の内周面や円管部材104に付着する。
上述したように、円管部材104は、毛細管現象を利用して外輪81の内周面またはこの面に向かって飛散して来る潤滑油をウィック101へ誘導する部材であるので、ターボ分子ポンプ1の取り付け姿勢に影響されることなく、保持器84から飛散した潤滑油をウィック101に戻すことができる。このように、潤滑油はウィック101からボールベアリング8に供給され、ボールベアリング8からウィック101に回収される。
ところで、掻き取り部840bを設けない従来と同様の保持器の場合、内輪82の転動面82aに供給された潤滑油は、転動体83の回転により外輪81の転動面81aに移動する。また、外輪81の転動面81aの潤滑油も回転する転動体83に付着して内輪側に移動するが、ボールベアリング8の内輪82や保持器84は高速回転しているため、潤滑油に作用する遠心力により外輪側に潤滑油が溜まりやすい。その結果、外輪81の転動面81aにおいて潤滑油が過剰になりやすく、撹拌抵抗の発生による発熱が問題となる。
一方、本実施の形態では、掻き取り部840bによって転動体83に付着した潤滑油の一部を、特に潤滑油量が多くなり、転動体83の表面に形成される油膜厚さが増加すれば、それに応じて掻き取っているので、外輪81の転動面81aにおける潤滑油が過剰になるのを抑制することができ、撹拌抵抗の発生を低減することができる。
また、保持器84の外周面にウィック側に拡がる形状(すなわち、ウィック側に上り勾配)のテーパ面841を形成しているので、掻き取り部840bで掻き取られた潤滑油は、遠心力の作用によってテーパ面841上をウィック側に移動することになる。ウィック側に移動した潤滑油はテーパ面841の下端841aから飛散し、最終的にはウィック101に回収されることになる。
(掻き取り部840bの具体的形状)
図6は、掻き取り部840bの形状の具体例を示す図である。図6(a)は、保持器84の一部、すなわち、ポケット840の掻き取り部840bが形成されている部分を示す図である。図6(b)は、掻き取り部840bが形成され内周面840aを平面状に展開して示した図である。二点鎖線で示した円は転動体83を示す。ポケット840の内周面840aは転動体83の球面に応じて湾曲しているが、図6(b)では、その湾曲する内周面840aを平面的に記載している。
図6に示す例では、掻き取り部840bは、矩形断面を有する細長い凸部843を、間隔を空けて内周面840aの周方向に複数配置したものである。なお、図6(a)では、複数の凸部843の一部については図示を省略した。凸部843の延在方向(長手方向)は、保持器84の軸方向とほぼ直交する方向となっている。複数の凸部843は、内周面840aの縁に沿って外輪側開口840cの周方向に並ぶように配置されている。転動体83は、破線矢印R2で示すように軸方向に対して直交する方向に自転する。符号830で示す一点鎖線は、自転する転動体83のいわゆる赤道に相当するラインであり、転動体表面の回転方向への移動速度は赤道付近が最も大きく、そこから上下に離れるほど小さくなる。そのため、潤滑油の掻き取りが効果的に行われるように、複数の凸部843はライン830を中心として上下に配置されている。
掻き取り部840bの凸部843によって掻き取られた潤滑油90は、転動体表面と潤滑油90との間の粘性力や潤滑油に作用する遠心力によって、凸部843の間の隙間844を通ってテーパ面841側に移動する。テーパ面841に移動した潤滑油90は、遠心力によりテーパ面841のより径の大きな方向(図示下側)へ移動する。図5に示したように、図示下側にはウィック101が配置されている。なお、隙間844の溝深さは図6に示すように一定としてもよいが、潤滑油の掻き取る量が増加する場合にも対応できるように、テーパ面841に近づくほど深くなるように構成しても良い。
図7は、図6に示した掻き取り部840bの変形例を示す図である。図6に示す構成では、図示上下に並んだ複数の凸部843をテーパ面841に沿うように、内周面840aの右端(外輪側開口840c)に沿って並べて配置した。一方、図7(a)に示す第1の変形例では、複数の凸部843を保持器84の軸方向に沿って配置した。ただし、凸部843とテーパ面841との距離が離れすぎていると、隙間844を通って図示右側に移動した潤滑油がテーパ面841に付着せずに、転動体83に再び付着する可能性が高かくなるので、図6に示すように、テーパ面841に近接して凸部843を配置するのが好ましい。
図7(b)は掻き取り部840bの第2の変形例を示す図であり、凸部843の断面形状を三角形とした場合を示す。なお、転動体83とポケット840の内周面840aとは、厳密には曲面全体が接触するわけではなく、一般的に自転する転動体83の赤道部分(図6の符号830で示す部分)において内周面840aと接触している。そのため、赤道部分に対応する領域だけに凸部843を設けた場合には、転動体83と内周面840aとが相対的に軸方向(図示上下方向)に移動すると、凸部843による潤滑油の掻き取りが不十分となる。そのため、本実施の形態では、赤道部分に対応する中央位置だけでなく中央位置から上下にずれた領域にも凸部843を配置させるようにしている。
図8は掻き取り部の第3の変形例を示したものであり、図8(b)はC−C断面図である。第3の変形例では、半球形状の凸部843bを形成するようにした。図8(a)の展開図に示す例では、内周面840aに沿って配置した複数の凸部843bを、転動体83の自転方向R2に2列配置した。なお、自転方向R2の列数は2列に限らず、図8(c)のように1列でも良いし、3列以上設けても良い。
なお、掻き取り部840bの形状は、図6〜8に示した構成に限定されるものではなく、種々の形状が可能である。
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)油潤滑軸受装置100は、内輪82が固定されたシャフト10に設けられ、内輪82に向かって上り勾配のテーパ面102aが形成されたテーパ部材であるコーン型ナット102と、内輪82に対してコーン型ナット102が設けられた側に配置されるウィック101と、テーパ面102aに接触してウィック101の潤滑油をテーパ面102aに供給する接触部101aと、を備える。そして、保持器84は、図3に示すように、外輪側開口840cと内輪側開口840dとを有して転動体83を保持するポケット840と、ポケット840の内周面840aに形成され、転動体83の表面に付着した潤滑油を掻き取る掻き取り部840bと、外輪側開口840cに隣接する保持器外周面に形成され、ウィック101に向かって上り勾配のテーパ面841と、を備える。
このように、保持器84に掻き取り部840bを設けることで、転動体83から外輪81の転動面81aに移動する潤滑油を抑制することができる。その結果、外輪81の転動面81aにおいて潤滑油が過剰になるのを防止することができ、撹拌抵抗による発熱を抑制することができる。特に排気負荷に応じて回転速度を変更して運転するポンプでは、コーン型ナット102による潤滑油の輸送液量も変動するため、どのような条件でも潤滑油量が確保される設計にした場合には、最高回転数では必要以上の輸送液量になる一方、攪拌抵抗による温度の上昇は顕著になる。そのため、回転速度が高い場合においても掻き取る量を確保することは、回転の維持にとって重要な要素になるが、回転速度が高い場合には、転動体83が保持器84の掻き取り部840bに接する回数も増加するので好都合である。
さらに、ウィック101に向かって上り勾配のテーパ面841を、ポケット840の外輪側開口840cに隣接する保持器外周面に形成したので、掻き取り部840bで掻き取られてテーパ面841に付着した潤滑油は、ウィック101の方向に移動して飛散する。その結果、余分な潤滑油としてボールベアリング8から排出された潤滑油は、ウィック101に回収されることになり、潤滑油の供給および回収が可能な潤滑油循環系を構成することができる。
また、特許文献1に記載の装置のように潤滑油が潤滑油貯蔵部と異なる方向に排出する構成では、排出された潤滑油を潤滑油貯蔵部に戻すための経路をポンプベース側に形成する必要があり、構成が複雑になると共にコストアップを招く。しかしながら、上述した実施の形態では、掻き取り部840bが形成された保持器84から掻き取られた潤滑油を潤滑油貯蔵部(ウィック101)側に排出するようにしているので、ポンプベース側に複雑な経路を形成する必要がない。
なお、図3に示す保持器84では、保持器84の外周面の一周にわたってテーパ面841を形成した。しかし、図10に示すように、ポケット840の外輪側開口840cに隣接する周囲外周面のみを、ウィック101に向かって上り勾配の傾斜面(テーパ面841)としても良い。
また、図3に示した例では、内周面840aの内で、自転方向R2が内輪側から外輪側となる領域に掻き取り部840bを形成した。この理由は、図4(b)に示すように内輪82がR1方向に回転したときに、一般的にこの領域に転動体83が当接するからである。ただし、内輪82がR1方向に回転したときに、転動体83が常に図3の掻き取り部840bが形成された側に当接するとは限らず、保持器84に対して相対的に遅れて公転している転動体83もある。そのため、図9に示すように、回転方向R1(正回転時の保持器84の回転方向)の側の内周面840aだけでなく、回転方向R1と反対側の内周面840aにも掻き取り部840bを形成しても良い。
(2)潤滑油を掻き取る掻き取り部840bは、例えば図6に示すように、内周面840aの外輪側開口840cの側の領域に周方向に並ぶように形成された複数の凸部843を備える。掻き取り部840bの凸部843を外輪側開口840cの側の領域に形成することで、掻き取られた潤滑油が効果的にテーパ面841に移動する。また、転動体83は、その軸方向中央部分を中心とする領域が外輪81および内輪82の転動面81a,82aと接触するので、周方向に並ぶように複数の凸部843を形成することで、転動体83に付着した潤滑油を効率良く掻き取ることができる。なお、掻き取り部840bの形状は図6〜8に記載の構成に限定されず、種々の凹凸形状が適用できる。
(3)さらに、図9に示すように、テーパ面841に突起845を形成するようにしても良い。図9に示す例では、テーパ面841のウィック101側の端部に突起845が形成されている。突起845は斜面845a,845bを有し、最もウィック101に近い側(図示下端)に尖った頂部845cを備えている。掻き取り部840bにより掻き取られてテーパ面841に付着した潤滑油90は、遠心力の作用により、例えば矢印Dで示すようにテーパ面841を下り、突起845の斜面845a,845bを昇って頂部845cに移動する。このような頂部845cに付着している潤滑油は、面上に付着した潤滑油に比べて飛散しやすくなる。なお、図9に示す例では頂部845cが尖っているが、尖っていなくても構わない。
突起845を形成する場所としては、掻き取り部840bで掻き取られた潤滑油が集まりやすい領域が好ましく、例えば、掻き取り部840bに近いテーパ面841の上であって、テーパ面841の最も径の大きくなった端部領域に形成するのが良い。
(4)また、図5に示すように、保持器84の外周面よりも外周側に配置されてウィック101および外輪81と接触し、テーパ面841から飛散した潤滑油をウィック101に誘導する潤滑油誘導部としての円管部材104を備えるのが好ましい。このような円管部材104を設けることで、テーパ面841から飛散した潤滑油を、ウィック101に確実に回収することができる。その結果、ポンプ姿勢に依らず、例えばポンプを横向き姿勢や倒立姿勢で使用した場合においても、ウィック101への潤滑油の回収を確実に行うことが可能となる。
なお、図5に示した円管部材104では、外輪81の内周面まで達するように構成されているが、図11(a)に示すように、外輪81の下端面とウィック101とに接触するように円管部材104を設けるようにしても良い。また、図11(b)に示すように、ベアリング押え106を外輪81の下側に設け、そのベアリング押え106を焼結金属のような多孔質材料で形成するようにしても良い。または、多孔性電解メッキを施した金属板をベアリング押え106として用いても良い。潤滑油は多孔性電解メッキ層によりウィック101に導かれる。
なお、多孔性電解メッキを適用する場合には、図2に示す構成で、外輪81とウィック101との間に介在するベース部に多孔性電解メッキ層を形成すれば、そのメッキ層を潤滑油誘導部として利用することが可能である。
−第2の実施の形態−
ところで、高速回転している軸受においては、転動体の移動速度が非常に速くなる。そして、その際の条件によっては、転動体に付着する潤滑油の量よりも、内輪の転動面から転動体によって跳ね上げられる潤滑油の量の方が多くなる場合がある。内輪の転動面には遠心力が作用するため、特に転動面の溝の端部に近い位置の潤滑油が他より少しでも多い箇所があると、転動体の通過がトリガとなって、そのような現象が生じやすい。このように転動体で跳ね上げられた潤滑油が外輪内周面に付着すると、外輪転動面における潤滑油量が過剰になるおそれがある。
第2の実施の形態では、このような跳ね上げられた潤滑油に起因する外輪側転動面の潤滑油過剰を、効果的に防止できる油潤滑軸受装置について説明する。図12は、第2の実施の形態における油潤滑軸受装置100を示す断面図である。図12は、上述した図5と同様の部分の断面図である。油潤滑軸受装置100は、ボールベアリング8、テーパ面102aが形成されたコーン型ナット102、接触部101aを有するウィック101および円管部材104を備えている。
第2の実施の形態では、コーン型ナット102、ウィック101および円管部材104については、上述した第1の実施の形態の対応する部材と同一構成であり、ボールベアリング8の保持器84の構成が第1の実施の形態と異なっている。
図13は、保持器84の分解斜視図である。保持器84は2つの部品(84a,84b)で構成されている。以下では、これら2つの部品を、下部保持器84aおよび上部保持器84bと称することにする。下部保持器84aおよび上部保持器84bは種々の材料で構成することが可能であり、例えば、ポリイミド等の合成樹脂材で形成される。
下部保持器84aと上部保持器84bとが互いに当接する一対の面の一方には貫通孔847aが形成され、他方の面にはスナップフィット式の結合部847bが形成されている。図12,13に示す例では、下部保持器84aの当接面846に貫通孔847aが形成され、上部保持器84bの当接面846(図では見えない)に結合部847bが形成されている。結合部847bが貫通孔847aに結合されることにより、下部保持器84aと上部保持器84bとが一体とされる。
図12,13に示す例では、保持器84を、2つの部品を結合して一体とする構成としたが、一つの部品で一体としても良いし、3つ以上の部品を結合して一体としても良い。また、結合構造は、結合部847bおよび貫通孔847aで示すようなスナップフィット方式に限らず、種々の方式を用いることができる。
図14は、保持器84の面形状を説明する図である。外輪81に対向する保持器84の外周面、すなわち、一体とされた下部保持器84aおよび上部保持器84bの外周面には、第1の実施の形態と同様の形状の傾斜面であるテーパ面841が形成されている。すなわち、テーパ面841は、潤滑油貯蔵部であるウィック101に近づくにつれて保持器84の軸芯Jからの距離が増加し、ウィック101に向かって上り勾配の傾斜面になっている。そして、下部保持器84aのテーパ面841の下端には、テーパ面841から外側に突出したリング状の突起部841bが形成されている。
一方、内輪82に対向する保持器84の内周面、すなわち、下部保持器84aおよび上部保持器84bの内周面には、ウィック101から軸方向に遠ざかるにつれて軸芯Jからの距離が増加する傾斜面であって、図示上側に向けて下り勾配の傾斜面(848a,848b)が形成されている。図14に示す例では、下部保持器84aの内周面に傾斜面848aが形成され、上部保持器84bの内周面に傾斜面848bが形成されている。さらに、ウィック101とは反対側の保持器端部(図14の図示上側の保持器端部)には、テーパ面841と傾斜面848bとを接続する湾曲した接続面849が形成されている。内周面の傾斜面848b,テーパ面841、およびこれらを接続する湾曲した接続面849等の表面には、親油性を向上させるような表面の改質を行っても良い。改質方法には、塗装・熱融着・コーティング等により、潤滑油との親和性に優れたアルキル基を多く含む高分子膜を形成したり、ポリオレフィン等の微細繊維の表面層を形作る方法等がある。このようにすれば、一旦付着した潤滑油は移動途中で遠心力により飛散することなく、突起部841bまで移動し、ここから飛散するため、潤滑油の戻りをより確実にする効果が期待できる。
ウィック101からコーン型ナット102のテーパ面102aに供給された潤滑油は、遠心力の作用により、図14の破線矢印R3に示すようにテーパ面102aの上を内輪82側の方向へと移動する。テーパ面102aから内輪82に移動した潤滑油は、内輪82の転動面82aに入り込む。内輪82の転動面82aに溜まった潤滑油は、高速で移動する転動体83により跳ね上げられ、矢印R4,R5のように転動面82aの縁から飛散する。飛散した潤滑油は、内輪82に対向する保持器84の内周面に形成された傾斜面848aおよび848bに付着する。
保持器84は転動体83と共に高速で回転するので、傾斜面848aに付着した潤滑油は、遠心力の作用により軸芯からの距離が増加する図示上方向に移動する。移動した潤滑油は、転動体83に付着する。なお、下部保持器84aの傾斜面848aについては、この部分が無くても構わない。すなわち、傾斜面848aの部分が無い場合や短い場合には、矢印R4方向に飛散した潤滑油は、殆どがウィック101方向に飛散するので、外輪における潤滑油過剰に対して影響しない。
一方、傾斜面848bに付着した潤滑油は、遠心力の作用により軸芯Jからの距離が増加する図示上方向に移動し、矢印R7のように傾斜面848bから接続面849へと移動する。接続面849は、保持器84の外周面に形成されたテーパ面841に接続しているので、接続面849上の潤滑油は、矢印R7のように移動してテーパ面841へと移動する。
テーパ面841は、ウィック101に近づくにつれて軸芯Jからの距離が増加し、ウィック101に向かって上り勾配の傾斜面となっている。そのため、テーパ面841上の潤滑油は、軸芯Jからの距離が増加する図示下方向に遠心力によって移動する。テーパ面841の下端に達した潤滑油は、遠心力によって突起部841bの先端に集まり、矢印R8のように外輪方向に飛散する。飛散した潤滑油は、矢印R9のように円管部材104を介してウィック101へ戻る。
このように、内輪82の転動面82aから飛散した潤滑油は、傾斜面848a,848bによって捕捉される。特に、矢印R5方向に飛散した潤滑油は、もし上部保持器84bが装着されておらず、傾斜面848bによって捕捉されなかった場合、外輪81に達してそこに付着する可能性が高い。その場合には、外輪81の転動面81aにおいて潤滑油が過剰となり、撹拌抵抗が増大するという問題が生じる。
本実施の形態の場合、傾斜面848bで捕捉された潤滑油は、接続面849を介してテーパ面841に接続しているので、傾斜面848bに付着した潤滑油は、遠心力によって「傾斜面848b→接続面849→テーパ面841→突起部841b→円管部材104」のように移動する。その結果、R5方向に飛散した潤滑油を、保持器84の表面を利用してウィック101へ戻すことができる。このように、本実施の形態では、飛散した潤滑油による転動面81aの潤滑油過剰を防止することができる。
なお、本実施の形態では、保持器84を上下に分割した2つの部品(下部保持器84aと上部保持器84b)で構成した。一般的に、深溝玉軸受の場合には、このように分割構造とすることで組み付けが可能となる。もちろん保持器84を一体で形成しても良く、特に、アンギュラコンタクト型の玉軸受の場合には、一体型であっても容易に組み付けることが可能である。
また、図15に示すように、ポケット840が、保持器84の軸方向上側の一部が開いた貫通孔となっている場合にも、同様に適用することができる。すなわち、保持器84の内周面に傾斜面848a,848bを形成する。テーパ面841には、下端部分に突起部841bが形成されている。なお、保持器84の上端に形成された接続面850は平面状であるため、接続面850とテーパ面841および傾斜面848bとの接続部分は尖った形状となっている。このように、尖った部分があると潤滑油が集まりやすく、そこから飛散しやすくなる。そのため、二点鎖線で示す接続面849のように湾曲した面形状とし、接続面849とテーパ面841および傾斜面848bとを滑らかに接続するのが好ましい。なお、この図では二点鎖線で示す接続面849は円輪状で示しているが、ポケット840の開口部を残す形状であっても良い。開口部を通過してしまう飛散油は捕捉できない分、効果は減じるものの、それでもある程度の飛散油を戻す効果が期待できる。
(変形例)
図16は、第2の実施の形態の変形例を示す図である。上述した第2の実施の形態では、保持器84の外周面にテーパ面841を形成し、内周面に傾斜面848a,848bを形成すると共に、テーパ面841と傾斜面848bとを接続する接続面849を形成した。図16に示す変形例では、さらに外周側のテーパ面841に突起部851を形成した。突起部851は、接続面849の側からウィック101側の端部(突起が形成されている端部)の方向に、峰状に延在して形成されている。
図16に示す突起部851の場合には、接続面849から突起部841bまで形成されているが、軸方向長さをより短くしても構わない。また、突起部851は、2つの斜面851a,851bが交差する尖った頂部を有する凸形状となっているが、なだらかな頂部を有する凸形状であっても良い。
図16の破線矢印R10のように、内周面側の傾斜面848bから接続面849を経て外周面側に移動した潤滑油は、接続面849から突起部851の斜面851aに移動する。これは、テーパ面841よりも突起部851のほうが軸芯Jからの距離が大きいので、より大きな遠心力が潤滑油に働くことに起因する。斜面851a上の潤滑油は、遠心力によって突起部851の頂部に近づきつつ突起部841bの方向に移動する。そして、最終的には突起部841bから外輪方向に飛散する。
そのため、保持器84の内周面側から外周面側に移動した潤滑油は、再びポケット840内の転動体(不図示)に付着する確率が小さく、殆どが突起部851を通って外輪方向に飛散され、図14の矢印R9のようにウィック101へ戻されることになる。このように、突起部851を設けたことにより、傾斜面848bにより外周面側に導かれた潤滑油は、外輪81の転動面81aに溜まることなく、効果的にウィック101へ戻される。なお、図15に示す保持器形状の場合にも、外周側のテーパ面841に突起部851を設けることで同様の効果を奏することができる。
上述したように、第2実施の形態では、図14に示すように、内輪82の転動面82aから矢印R5方向に飛散した潤滑油は、保持器内周面に形成された傾斜面848bに付着する。傾斜面848bは、潤滑油貯蔵部であるウィック101から遠ざかるにつれて軸芯Jからの距離が増加する下り勾配の傾斜面なので、ウィック101から遠ざかるように接続面849方向に移動する。ウィック101とは反対側の保持器端部に形成された接続面849は、保持器外周面に形成されたテーパ面841と傾斜面848bとを接続しているので、接続面849方向に移動した潤滑油は、接続面849を通ってテーパ面841へ移動する。テーパ面841はウィック101に近づくにつれて軸芯Jからの距離が増加する上り勾配の傾斜面なので、テーパ面841に移動した潤滑油は、テーパ面841上をウィック101方向に移動し、テーパ面841のウィック側端部(軸方向下側の端部)から飛散する。
このように、内輪82の転動面82aから飛散して傾斜面848bに付着した潤滑油は、外周面側のテーパ面841のウィック側端部から飛散するので、外輪81の転動面81aの潤滑油が過剰になるのを防止することができる。
さらに、図16に示すように、テーパ面841には、隣接する一対のポケット840の間を通って接続面849の側からウィック101の方向に峰状に延在する突起部851が形成されている。その結果、内周面側の傾斜面848bからテーパ面841に移動した潤滑油は、遠心力によって突起部851方向に移動し、突起部851の峰に沿ってウィック側の端部へと移動する。そのため、潤滑油がテーパ面841からポケット840の外輪側開口に入るのを抑制することができる。
さらに、図16では、ポケット840は、周囲が閉じた内輪側開口から周囲が閉じた外輪側開口へと貫通しているので、図15のようにポケット840の上側(ウィック101が配置されている側とは反対側)が開いているポケット840の場合と比較して、保持器の強度が向上する。また、図15のようにポケット840上側が開いていると、その部分に飛散した潤滑油は外輪側に到達しやすいという欠点があるが、図16のように閉じている場合にはそのような外輪側への飛散を防止することができる。ポケット840は,すべてのポケット840が,周囲が閉じた内輪側開口から周囲が閉じた外輪側開口へと貫通している必要はなく,一部のポケット840上側が開いていても良い。ポケット840の開放個数は,保持器の強度と潤滑油の飛散防止効果によって選択される。
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態ではターボ分子ポンプを例に説明したが、ターボ分子ポンプに限らず種々の真空ポンプの油潤滑軸受装置に、さらには、真空ポンプ以外の装置の油潤滑軸受装置にも本発明は適用することができる。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
1…ターボ分子ポンプ、3…ポンプロータ、8,9…ボールベアリング、10…シャフト、81…外輪、81a,82a…転動面、82…内輪、83…転動体、84…保持器、84a…下部保持器、84b…上部保持器、90…潤滑油、100…油潤滑軸受装置、101…ウィック、101a…接触部、102…コーン型ナット、102a,841,842…テーパ面、104…円管部材、840…ポケット、840a…内周面、840b…掻き取り部、840c…外輪側開口、840d…内輪側開口、843,843b…凸部、845…突起、847a…貫通孔、847b…結合部、849,850…接続面、851点突起部

Claims (10)

  1. 内輪、外輪、転動体および前記転動体の間隔を維持する保持器を有し、回転軸を支持する転がり軸受と、
    前記内輪が固定された前記回転軸に設けられ、前記内輪に向かって上り勾配の第1傾斜面が形成されたテーパ部材と、
    前記内輪に対して前記テーパ部材が設けられた側に配置される潤滑油貯蔵部と、
    前記第1傾斜面に接触して前記潤滑油貯蔵部の潤滑油を前記第1傾斜面に供給する接触部と、を備え、
    前記保持器は、
    外輪側開口と内輪側開口とを有して前記転動体を保持するポケットと、
    前記ポケットの内周面に形成され、前記転動体の表面に付着した潤滑油を掻き取る潤滑油掻き取り部と、
    前記外輪側開口に隣接する保持器外周面に形成され、前記潤滑油貯蔵部に向かって上り勾配の第2傾斜面と、を備える油潤滑軸受装置。
  2. 請求項1に記載の油潤滑軸受装置において、
    前記潤滑油掻き取り部は、前記内周面の前記外輪側開口の側の領域に周方向に並ぶように形成された複数の凸部を備える、油潤滑軸受装置。
  3. 請求項1に記載の油潤滑軸受装置において、
    前記第2傾斜面には前記第2傾斜面から突出する突起が形成されている、油潤滑軸受装置。
  4. 請求項1に記載の油潤滑軸受装置において、
    前記テーパ部材は、前記回転軸に着脱自在に設けられ、前記内輪を前記回転軸に固定すする内輪固定部材である、油潤滑軸受装置。
  5. 請求項1に記載の油潤滑軸受装置において、
    前記保持器よりも外輪側に配置されて前記潤滑油貯蔵部および前記外輪と接触し、前記第2傾斜面から飛散した潤滑油を前記潤滑油貯蔵部に誘導する潤滑油誘導部を備える、油潤滑軸受装置。
  6. 内輪、外輪、転動体および前記転動体の間隔を維持する保持器を有し、回転軸を支持する転がり軸受と、
    前記内輪が固定された前記回転軸に設けられ、前記内輪に向かって上り勾配の第1傾斜面が形成されたテーパ部材と、
    前記内輪に対して前記テーパ部材が設けられた側に配置される潤滑油貯蔵部と、
    前記第1傾斜面に接触して前記潤滑油貯蔵部の潤滑油を前記第1傾斜面に供給する接触部と、を備え、
    前記保持器は、
    保持器内周面から保持器外周面に貫通し、前記転動体を保持するポケットと、
    前記保持器外周面に形成され、前記潤滑油貯蔵部に近づくにつれて軸芯からの距離が増加する上り勾配の第2傾斜面と、
    前記保持器内周面に形成され、前記潤滑油貯蔵部から遠ざかるにつれて軸芯からの距離が増加する下り勾配の第3傾斜面と、
    前記潤滑油貯蔵部とは反対側の保持器端部に形成され、前記第2傾斜面と前記第3傾斜面とを接続する接続面と、を備える油潤滑軸受装置。
  7. 請求項6に記載の油潤滑軸受装置において、
    前記第2傾斜面には、隣接する一対の前記ポケットの間を通って前記接続面の側から前記潤滑油貯蔵部の方向に峰状に延在する突起部が形成されている、油潤滑軸受装置。
  8. 請求項6または7に記載の油潤滑軸受装置において、
    前記ポケットの少なくとも1箇所が、周囲が閉じた内輪側開口から周囲が閉じた外輪側開口へと貫通している、油潤滑軸受装置。
  9. 請求項8に記載の油潤滑軸受装置において、
    前記保持器は、2以上の部材を結合して一体化されている、油潤滑軸受装置。
  10. 請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の油潤滑軸受装置と、
    前記回転軸が設けられたポンプロータと、を備える真空ポンプ。
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