JP2012102760A - 軸受用保持器 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸受内部空間における潤滑剤の流動性の向上と共に、潤滑剤の漏洩防止を図ることを可能にする軸受用保持器を提供する。
【解決手段】相対回転可能に対向配置された軌道輪2,4間に組み込まれた複数の転動体6を回転可能に保持しつつ、軸受回転中において、各転動体と共に軌道輪間に沿って公転する中空円環状の軸受用保持器8であって、軸受用保持器は、その内径面8in及び外径面8outの双方、或いは、いずれか一方が公転軸に沿った方向Tに対して所定角度θ1,θ2で傾斜し、かつ、当該内径面と外径面とで構成される当該保持器の輪郭は、公転軸に沿って先細り形状を成している。
【選択図】図1
【解決手段】相対回転可能に対向配置された軌道輪2,4間に組み込まれた複数の転動体6を回転可能に保持しつつ、軸受回転中において、各転動体と共に軌道輪間に沿って公転する中空円環状の軸受用保持器8であって、軸受用保持器は、その内径面8in及び外径面8outの双方、或いは、いずれか一方が公転軸に沿った方向Tに対して所定角度θ1,θ2で傾斜し、かつ、当該内径面と外径面とで構成される当該保持器の輪郭は、公転軸に沿って先細り形状を成している。
【選択図】図1
Description
本発明は、軸受内部空間における潤滑剤の流動性の向上と共に、潤滑剤の漏洩防止を図ることを可能にする軸受用保持器に関する。
従来、例えばラジアル軸受やスラスト軸受などの各種軸受には、当該軸受内部空間に沿って組み込まれた複数の転動体を回転自在に保持する種々の軸受用保持器が適用されている(例えば、特許文献1)。その一例として図5(a),(b)に示された軸受には、相対回転可能に対向配置された軌道輪2,4間(内輪2と外輪4との間)に組み込まれた複数の転動体6を回転可能に保持しつつ、軸受回転中(軌道輪2,4の相対回転中)において、各転動体6と共に軌道輪2,4間に沿って公転する中空円環状の軸受用保持器8が適用されている。
軸受用保持器8が適用された軸受において、転動体6としては、玉やコロを適用することができるが、ここでは一例として、転動体6として玉を適用した玉軸受を想定する。この場合、玉軸受には、複数の転動体(玉)6の両側に、軌道輪2,4間(内輪2と外輪4との間)に構成された環状の軸受内部空間を密封する密封板10が設けられている。各密封板10は、その基端10aが一方の軌道輪4(例えば、外輪4)に固定され、その先端10bが他方の軌道輪2(例えば、内輪2)に向けて延出して構成されている。これにより、玉軸受の軸受内部空間に封入された潤滑剤(例えば、グリース、油)は、双方の密封板10によって当該軸受内部空間に保持される。
ここで、密封板10としては、例えば、金属板をプレス加工して形成され、かつ先端が他方の軌道輪2(内輪2)に対して非接触状態に構成配置されるシールド、或いは、先端が他方の軌道輪2(内輪2)に対して接触状態或いは非接触状態に構成配置されるシールを適用することができる。図面では一例として、先端が他方の軌道輪2(内輪2)に接触せずに狭い隙間を保つように構成配置された非接触シールを示したが、これに代えて、先端が他方の軌道輪2(内輪2)に接触するように構成配置される接触シールを適用してもよい。なお、接触シール及び非接触シールのいずれにおいても、密封板10は、環状を成す心金10cの外表面に樹脂材料(ゴム)10dを被覆して構成されている。
また、軸受用保持器8としては、中空円環状を成す保持器本体8aの片側に周方向に沿って所定間隔(例えば、等間隔)で、複数の転動体(玉)6を1つずつ収容して保持可能な複数のポケット8pが構成された冠形保持器8が適用されている。この場合、各ポケット8pは、その一方側が開口8hされていると共に、その他方側が保持器本体8a(主部8bとも言う)によって閉塞されており、各ポケット8pの開口8hは、周方向両側から立ち上げられた一対の爪部8tによって、その開口径が狭められている。
このようなポケット8pにおいて、例えば一対の爪部8tに転動体(玉)6を位置付けた状態から開口8hに向けて転動体(玉)6を押し込むと、その押込力により一対の爪部8tが外側に弾性変形して開口8hが広がることにより、当該転動体(玉)6を開口8hを介してポケット8pに挿入することができる。そして、転動体(玉)6をポケット8pに挿入したとき、一対の爪部8tが元の形状に弾性的に復元し開口8hが再び狭められることにより、当該ポケット8pに挿入された転動体(玉)6は、一対の爪部8tにより脱落することなくポケット8p内に回転自在に収容されて保持される。
ところで、上記した従来の玉軸受(図5(a))では、軸受内部空間において、軸受用保持器8(即ち、冠形保持器8)の主部8b(一方側が開口8hされた各ポケット8pの他方側を閉塞する保持器本体8aの円環状部分)周りの空間領域が、当該冠形保持器8の内径側から外径側に向うに従って大きく広がるように構成されている。
かかる構成によれば、軸受内部空間に封入された潤滑剤を、軸受回転中(内外輪2,4の相対回転中)において、複数の転動体(玉)6を保持しつつ内外輪2,4間に沿って公転する冠形保持器8によって、当該冠形保持器8の内径側から外径側に向けてスムーズに流動させることができる。これにより、当該潤滑剤が、密封板10の先端10bと他方の軌道輪2(内輪2)との間から外部へ漏洩するのを確実に防止することができる。
しかしながら、かかる玉軸受の使用環境として、例えば電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)及びその発電機(ジェネレータ、オルタネータ)を想定した場合、かかる高温の雰囲気中での軸受の高速回転にも対応できるようにすることが要求されており、そのためには、軸受内部空間における潤滑剤の流動性の向上と共に、潤滑剤の漏洩防止を図ることを可能にする軸受用保持器8の開発が要望されている。
本発明は、このような要望に応えるためになされており、その目的は、軸受内部空間における潤滑剤の流動性の向上と共に、潤滑剤の漏洩防止を図ることを可能にする軸受用保持器を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明は、相対回転可能に対向配置された軌道輪間に組み込まれた複数の転動体を回転可能に保持しつつ、軸受回転中において、各転動体と共に軌道輪間に沿って公転する中空円環状の軸受用保持器であって、軸受用保持器は、その内径面及び外径面の双方、或いは、いずれか一方が公転軸に沿った方向に対して所定角度で傾斜し、かつ、当該内径面と外径面とで構成される当該保持器の輪郭は、公転軸に沿って先細り形状を成している。
本発明において、軸受用保持器は、中空円環状を成す保持器本体の片側に周方向に沿って所定間隔で、複数の転動体を収容して保持可能な複数のポケットが構成されており、各ポケットは、その一方側が開口されていると共に、その他方側が保持器本体によって閉塞されており、各ポケットの開口は、周方向両側から立ち上げられた一対の爪部によって、その開口径が狭められており、保持器本体の内径面及び外径面の双方、或いは、いずれか一方は、各ポケットの一方側に立ち上げられた一対の爪部から当該ポケットの他方側に向うに従って公転軸に沿った方向に対して所定角度で傾斜し、かつ、当該内径面と外径面とで構成される当該保持器本体の輪郭は、公転軸に沿って先細り形状を成している。
本発明において、内径面は、公転軸に沿った方向に対して所定角度で連続的に大径化するように傾斜しており、外径面は、公転軸に沿った方向に対して所定角度で連続的に小径化するように傾斜している。
本発明において、保持器本体には、各ポケットの他方側を閉塞する部分において、その内径側及び外径側の双方の端部にそれぞれR面取りが施されている。
本発明において、軸受用保持器は、ポリアミド樹脂及びその樹脂中にガラス繊維又は炭素繊維を10〜40質量%含有させた樹脂組成物、或いは、エンジニアリング樹脂及びその樹脂中にガラス繊維及び炭素繊維を10〜40質量%含有させた樹脂組成物を用いて形成されている。
本発明は、上記した軸受用保持器を適用した軸受であって、相対回転可能に対向配置された軌道輪と、軌道輪間に組み込まれた複数の転動体と、複数の転動体を回転可能に保持しつつ、軸受回転中において、各転動体と共に軌道輪間に沿って公転する中空円環状の軸受用保持器とを備えている。
本発明において、軸受用保持器は、中空円環状を成す保持器本体の片側に周方向に沿って所定間隔で、複数の転動体を収容して保持可能な複数のポケットが構成されており、各ポケットは、その一方側が開口されていると共に、その他方側が保持器本体によって閉塞されており、各ポケットの開口は、周方向両側から立ち上げられた一対の爪部によって、その開口径が狭められており、保持器本体の内径面及び外径面の双方、或いは、いずれか一方は、各ポケットの一方側に立ち上げられた一対の爪部から当該ポケットの他方側に向うに従って公転軸に沿った方向に対して所定角度で傾斜し、かつ、当該内径面と外径面とで構成される当該保持器本体の輪郭は、公転軸に沿って先細り形状を成している。
本発明において、内径面は、公転軸に沿った方向に対して所定角度で連続的に大径化するように傾斜しており、外径面は、公転軸に沿った方向に対して所定角度で連続的に小径化するように傾斜している。
本発明において、保持器本体には、各ポケットの他方側を閉塞する部分において、その内径側及び外径側の双方の端部にそれぞれR面取りが施されている。
本発明において、軸受用保持器は、ポリアミド樹脂及びその樹脂中にガラス繊維又は炭素繊維を10〜40質量%含有させた樹脂組成物、或いは、エンジニアリング樹脂及びその樹脂中にガラス繊維及び炭素繊維を10〜40質量%含有させた樹脂組成物を用いて形成されている。
本発明は、上記した軸受用保持器を適用した軸受であって、相対回転可能に対向配置された軌道輪と、軌道輪間に組み込まれた複数の転動体と、複数の転動体を回転可能に保持しつつ、軸受回転中において、各転動体と共に軌道輪間に沿って公転する中空円環状の軸受用保持器とを備えている。
本発明によれば、軸受内部空間における潤滑剤の流動性の向上と共に、潤滑剤の漏洩防止を図ることを可能にする軸受用保持器を実現することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る軸受用保持器について添付図面を参照して説明する。
なお、本実施形態は、図5に示された軸受用保持器8(即ち、冠形保持器8)の改良であるため、以下、改良部分の説明にとどめる。この場合、上記した冠形保持器8(図5)並びに当該保持器8が組み込まれた軸受(内外輪2,4、転動体(玉)6、密封板10など:図5)と同一の構成については、その構成に付された参照符号と同一の符号を本実施形態に用いた図面上に付すことで、その説明を省略する。
なお、本実施形態は、図5に示された軸受用保持器8(即ち、冠形保持器8)の改良であるため、以下、改良部分の説明にとどめる。この場合、上記した冠形保持器8(図5)並びに当該保持器8が組み込まれた軸受(内外輪2,4、転動体(玉)6、密封板10など:図5)と同一の構成については、その構成に付された参照符号と同一の符号を本実施形態に用いた図面上に付すことで、その説明を省略する。
「第1実施形態」
図1及び図2に示すように、本実施形態において、軸受用保持器8(即ち、冠形保持器8)は、その内径面8in及び外径面8outの双方が公転軸8s(図5(b)参照)に沿った方向T(公転軸8sと平行を成す方向T)に対して所定角度θ1,θ2で傾斜し、かつ、その傾斜した双方の内径面8inと外径面8outとで構成される当該保持器8の輪郭は、公転軸8s(即ち、公転軸8sに沿った方向T)に沿って先細り形状を成している。なお、公転軸8sとは、軸受回転中に内外輪2,4間に沿って軸受用保持器8が公転する際の中心軸であって、軸受の回転軸と平行を成す軸線を指す。
図1及び図2に示すように、本実施形態において、軸受用保持器8(即ち、冠形保持器8)は、その内径面8in及び外径面8outの双方が公転軸8s(図5(b)参照)に沿った方向T(公転軸8sと平行を成す方向T)に対して所定角度θ1,θ2で傾斜し、かつ、その傾斜した双方の内径面8inと外径面8outとで構成される当該保持器8の輪郭は、公転軸8s(即ち、公転軸8sに沿った方向T)に沿って先細り形状を成している。なお、公転軸8sとは、軸受回転中に内外輪2,4間に沿って軸受用保持器8が公転する際の中心軸であって、軸受の回転軸と平行を成す軸線を指す。
具体的に説明すると、冠形保持器8は、中空円環状を成す保持器本体8aの内径面8in及び外径面8outの双方が、各ポケット8pの一方側に立ち上げられた一対の爪部8tから当該ポケット8pの他方側(主部8b)に向うに従って公転軸8sに沿った方向Tに対して所定角度θ1,θ2で傾斜して構成されている。そして、その傾斜した双方の内径面8inと外径面8outとで構成される当該保持器本体8aの輪郭は、公転軸8s(即ち、公転軸8sに沿った方向T)に沿って先細り形状を成している。
この場合、内径面8inは、公転軸8sに沿った方向Tに対して所定角度θ1(>0°)で連続的に大径化するように傾斜しており、外径面8outは、公転軸8sに沿った方向Tに対して所定角度θ2(>0°)で連続的に小径化するように傾斜している。なお、内径面8inの傾斜角度θ1及び外径面8outの傾斜角度θ2は、例えば、当該冠形保持器8が適用される玉軸受の使用環境や使用目的、玉軸受の軸受内部空間に封入する潤滑剤の種類(例えば、グリースの基油粘度)、或いは、当該冠形保持器8の材質などに応じて設定されるため、ここでは特に数値限定しない。
以上、本実施形態によれば、内径面8inを所定角度θ1で連続的に大径化するように傾斜させると共に、外径面8outを所定角度θ2で連続的に小径化するように傾斜させ、当該内径面8inと外径面8outとで構成される軸受用保持器8(保持器本体8a)の輪郭を先細り形状とすることで、その内径面8inと内輪2の外周面2sとの間の隙間(距離)L1を、各ポケット8pの一方側に立ち上げられた一対の爪部8tから当該ポケット8pの他方側(主部8b)に向けて連続的に大きく広げることができる。
また、軸受用保持器8(保持器本体8a)の外径面8outと外輪4の内周面4sとの間の隙間(距離)L2を、各ポケット8pの一方側に立ち上げられた一対の爪部8tから当該ポケット8pの他方側(主部8b)に向けて連続的に大きく広げることができる。この結果、軸受用保持器8(保持器本体8a)の主部8bにおいて、当該主部8bと密封板10の基端10aとの間の隙間(距離)L3、並びに、当該主部8bと密封板10の先端10bとの間の隙間(距離)L4を広範囲に大きく確保することができる。
かかる構成によれば、図3に示すように、軸受内部空間に封入された潤滑剤は、軸受回転中(内外輪2,4の相対回転中)において、複数の転動体(玉)6を保持しつつ内外輪2,4間に沿って公転する軸受用保持器8及びその際に生じた遠心力によって、内径面8inに沿って主部8bに流動F1して、当該主部8bを経由F2した後、外径面8outに沿って流動F3して、各ポケット8p方向に導入F4されるようになる。
具体的に説明すると、軸受回転中(内外輪2,4の相対回転中)、潤滑剤には、冠形保持器8及び上記した遠心力が作用することで、当該潤滑剤は、軸受内部空間の外径方向に向って流動しようとする。この場合、内径面8inと内輪2の外周面2sとの間の隙間(距離)L1は、主部8bに向けて連続的に広がっているため、ここに存在する潤滑剤は、内径面8inに沿ってスムーズに主部8bまで流動F1する。
このとき、主部8bに到達した潤滑剤は、遠心力をダイレクトに受けることで、そのまま当該主部8bと密封板10との間に沿って外径方向に流動F2し、外径面8outと外輪4の内周面4sとの間に流動F3して流れ込む。この場合、外径面8outと外輪4の内周面4sとの間の隙間(距離)L2は、主部8bから離間するに従って連続的に狭まっており、流動し難い状態にあるため、外径面8outと外輪4の内周面4sとの間に流れ込んだ潤滑剤は、流動し易い方向である各ポケット8p方向に導入F4されることになる。
ここで、例えば、各転動体(玉)6の表面に付着していた潤滑剤が、冠形保持器8(保持器本体8a)の内径面8inで掻き取られた場合を想定すると、その掻き取られた潤滑剤は、上記した流動F1〜F3を介して再び各ポケット8pに導入F4される。この結果、各転動体(玉)6には、常に必要かつ充分な潤滑剤が供給され続けることとなるため、潤滑不良による焼き付き等の不具合が発生することはない。
また、従来の軸受用保持器8を適用した玉軸受(図5(a)参照)と、本実施形態の軸受用保持器8を適用した玉軸受(図1)との間で、潤滑剤漏れについての試験を行った。この場合、双方の玉軸受において、軸受内径を55mm、軸受外径を90mm、軸受幅を18mmとし、潤滑剤としてウレア系グリース(基油粘度:20mm2/sec)を軸受内部空間に封入した状態で、双方の玉軸受を100℃の雰囲気中にセットする。そして、この状態において、双方の玉軸受の内外輪2,4を相対的に、1分間に1万4千回転(1.4万rpm)させた。
かかる潤滑剤漏れ試験の結果によれば、従来の軸受用保持器8を適用した玉軸受(図5(a)参照)では、潤滑剤漏れが「27%」に達したのに対し、本実施形態の軸受用保持器8を適用した玉軸受(図1)では、潤滑剤漏れが「10%」程度に抑えられたことが確認された。なお、当該試験結果において、潤滑剤の漏れ割合(%)は、双方の玉軸受の軸受内部空間に封入した潤滑剤(ウレア系グリース)の総量を100%とした場合の漏れ量の割合として規定されている。
これによれば、内径面8inと外径面8outとで構成される軸受用保持器8(保持器本体8a)の輪郭を先細り形状とすることにより、軸受内部空間における潤滑剤の流動性の向上と共に、潤滑剤の漏洩防止を図ることを可能にする軸受用保持器8を実現することができる。この場合、上記した第1実施形態では、内径面8inと外径面8outの双方を所定角度θ1,θ2で傾斜させたが、これに代えて、内径面8inと外径面8outのいずれか一方を所定角度(θ1又はθ2)で傾斜させても、同様の作用効果を実現することができる。
「第2実施形態」
上記した第1実施形態では、軸受用保持器8(即ち、冠形保持器8)の材質について特に言及しなかったが、当該保持器8は、ポリアミド樹脂及びその樹脂中にガラス繊維(GF)又は炭素繊維(CF)を10〜40質量%含有させた樹脂組成物、或いは、エンジニアリング樹脂及びその樹脂中にガラス繊維(GF)及び炭素繊維(CF)を10〜40質量%含有させた樹脂組成物を用いて形成することが好ましい。
上記した第1実施形態では、軸受用保持器8(即ち、冠形保持器8)の材質について特に言及しなかったが、当該保持器8は、ポリアミド樹脂及びその樹脂中にガラス繊維(GF)又は炭素繊維(CF)を10〜40質量%含有させた樹脂組成物、或いは、エンジニアリング樹脂及びその樹脂中にガラス繊維(GF)及び炭素繊維(CF)を10〜40質量%含有させた樹脂組成物を用いて形成することが好ましい。
なお、ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン46、ナイロン66などを適用することができる。また、エンジニアリング樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのスーパーエンジニアリングプラスチック、或いは、ポリ四弗化エチレン(PTFE)などのエンジニアリングプラスチックを適用することができる。
ここで、従来の軸受用保持器8を適用した玉軸受(図5(a)参照)と、本実施形態の軸受用保持器8を適用した玉軸受(図1)との間で、潤滑剤漏れについての試験を行った。この場合、従来の玉軸受には、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン46)及びその樹脂中にガラス繊維(GF)を10〜40質量%含有させた樹脂組成物で形成した軸受用保持器8を適用する。
また、本実施形態の玉軸受として、異なる材質の軸受用保持器8を適用した2種類の玉軸受を用意する。即ち、第1実施品としての玉軸受には、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン46)及びその樹脂中にガラス繊維(GF)を10〜40質量%含有させた樹脂組成物で形成した軸受用保持器8を適用し、第2実施品としての玉軸受には、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン46)及びその樹脂中に炭素繊維(CF)を10〜40質量%含有させた樹脂組成物で形成した軸受用保持器8を適用する。
この場合、従来の玉軸受、並びに、第1及び第2実施品としての玉軸受において、軸受内径を55mm、軸受外径を90mm、軸受幅を18mmとし、潤滑剤としてウレア系グリース(基油粘度:20mm2/sec)を軸受内部空間に封入した状態で、これら3つの玉軸受を100℃の雰囲気中にセットする。そして、この状態において、各玉軸受の内外輪2,4を相対的に、1分間に1万4千回転(1.4万rpm)させた。
かかる潤滑剤漏れ試験の結果によれば、従来の玉軸受では、潤滑剤漏れが「27%」に達したのに対し、第1実施品としての玉軸受では、潤滑剤漏れが「10%」程度に、そして、第2実施品としての玉軸受では、潤滑剤漏れが「7%」程度に、それぞれ抑えられたことが確認された。なお、当該試験結果において、潤滑剤の漏れ割合(%)は、各玉軸受の軸受内部空間に封入した潤滑剤(ウレア系グリース)の総量を100%とした場合の漏れ量の割合として規定されている。
これによれば、内径面8inと外径面8outとで構成される軸受用保持器8(保持器本体8a)の輪郭を先細り形状とすることにより、軸受内部空間における潤滑剤の流動性の向上を図ることができると共に、当該軸受用保持器8をポリアミド樹脂及びその樹脂中にガラス繊維(GF)又は炭素繊維(CF)を10〜40質量%含有させた樹脂組成物、或いは、エンジニアリング樹脂及びその樹脂中にガラス繊維(GF)及び炭素繊維(CF)を10〜40質量%含有させた樹脂組成物を用いて形成することにより、潤滑剤漏れの抑制効果を飛躍的に向上させることができる。
この場合、上記した第2実施形態において、軸受用保持器8(保持器本体8a)の内径面8inと外径面8outの双方を所定角度θ1,θ2で傾斜させる場合、或いは、これに代えて、内径面8inと外径面8outのいずれか一方を所定角度(θ1又はθ2)で傾斜させる場合でも、同様の作用効果を実現することができる。
「第3実施形態」
また、図4に示すように、上記した第1及び第2実施形態の軸受用保持器8(具体的には、保持器本体8a)には、各ポケット8pの他方側を閉塞する部分(主部8b)において、その内径側(内径面8in側)及び外径側(外径面8out側)の双方の端部にそれぞれR面取り8rを施すことが好ましい。なお、各R面取り8rの大きさは、例えば保持器本体8aの主部8bの大きさや形状などに応じて設定されるため、ここでは特に数値限定しない。また、各R面取り8rの形状は、例えば円弧形状や楕円形状など丸味を帯びた形状とすればよい。
また、図4に示すように、上記した第1及び第2実施形態の軸受用保持器8(具体的には、保持器本体8a)には、各ポケット8pの他方側を閉塞する部分(主部8b)において、その内径側(内径面8in側)及び外径側(外径面8out側)の双方の端部にそれぞれR面取り8rを施すことが好ましい。なお、各R面取り8rの大きさは、例えば保持器本体8aの主部8bの大きさや形状などに応じて設定されるため、ここでは特に数値限定しない。また、各R面取り8rの形状は、例えば円弧形状や楕円形状など丸味を帯びた形状とすればよい。
これによれば、上記したF1からF2への潤滑剤の流動、及び、上記したF2からF3への潤滑剤の流動をし易くすることができる。この結果、軸受内部空間に封入された潤滑剤は、軸受回転中(内外輪2,4の相対回転中)において、上記した流動F1〜F3を介して再び各ポケット8pにスムーズに、かつ短時間に導入F4される。これにより、各転動体(玉)6には、常に必要かつ充分な潤滑剤が供給され続けることとなるため、潤滑不良による焼き付き等の不具合が発生することはない。
2 軌道輪(内輪)
4 軌道輪(外輪)
6 転動体(玉)
8 軸受用保持器
8s 公転軸
8in 軸受用保持器の内径面
8out 軸受用保持器の外径面
θ1 内径面の傾斜角度
θ2 外径面の傾斜角度
T 公転軸に沿った方向(公転軸と平行を成す方向)
4 軌道輪(外輪)
6 転動体(玉)
8 軸受用保持器
8s 公転軸
8in 軸受用保持器の内径面
8out 軸受用保持器の外径面
θ1 内径面の傾斜角度
θ2 外径面の傾斜角度
T 公転軸に沿った方向(公転軸と平行を成す方向)
Claims (6)
- 相対回転可能に対向配置された軌道輪間に組み込まれた複数の転動体を回転可能に保持しつつ、軸受回転中において、各転動体と共に軌道輪間に沿って公転する中空円環状の軸受用保持器であって、
軸受用保持器は、その内径面及び外径面の双方、或いは、いずれか一方が公転軸に沿った方向に対して所定角度で傾斜し、かつ、当該内径面と外径面とで構成される当該保持器の輪郭は、公転軸に沿って先細り形状を成していることを特徴とする軸受用保持器。 - 軸受用保持器は、中空円環状を成す保持器本体の片側に周方向に沿って所定間隔で、複数の転動体を収容して保持可能な複数のポケットが構成されており、
各ポケットは、その一方側が開口されていると共に、その他方側が保持器本体によって閉塞されており、各ポケットの開口は、周方向両側から立ち上げられた一対の爪部によって、その開口径が狭められており、
保持器本体の内径面及び外径面の双方、或いは、いずれか一方は、各ポケットの一方側に立ち上げられた一対の爪部から当該ポケットの他方側に向うに従って公転軸に沿った方向に対して所定角度で傾斜し、かつ、当該内径面と外径面とで構成される当該保持器本体の輪郭は、公転軸に沿って先細り形状を成していることを特徴とする請求項1に記載の軸受用保持器。 - 内径面は、公転軸に沿った方向に対して所定角度で連続的に大径化するように傾斜しており、外径面は、公転軸に沿った方向に対して所定角度で連続的に小径化するように傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受用保持器。
- 保持器本体には、各ポケットの他方側を閉塞する部分において、その内径側及び外径側の双方の端部にそれぞれR面取りが施されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の軸受用保持器。
- 軸受用保持器は、ポリアミド樹脂及びその樹脂中にガラス繊維又は炭素繊維を10〜40質量%含有させた樹脂組成物、或いは、エンジニアリング樹脂及びその樹脂中にガラス繊維及び炭素繊維を10〜40質量%含有させた樹脂組成物を用いて形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の軸受用保持器。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の軸受用保持器を適用した軸受であって、
相対回転可能に対向配置された軌道輪と、軌道輪間に組み込まれた複数の転動体と、複数の転動体を回転可能に保持しつつ、軸受回転中において、各転動体と共に軌道輪間に沿って公転する中空円環状の軸受用保持器とを備えていることを特徴とする軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010249339A JP2012102760A (ja) | 2010-11-08 | 2010-11-08 | 軸受用保持器 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2010249339A JP2012102760A (ja) | 2010-11-08 | 2010-11-08 | 軸受用保持器 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2012102760A true JP2012102760A (ja) | 2012-05-31 |
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ID=46393400
Family Applications (1)
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JP2010249339A Pending JP2012102760A (ja) | 2010-11-08 | 2010-11-08 | 軸受用保持器 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2012102760A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE102012010733A1 (de) * | 2012-05-31 | 2013-12-05 | Volkswagen Aktiengesellschaft | Kugelkäfig sowie Kugellager, insbesondere für den Kugelgewindetrieb einer Fahrzeuglenkung |
JP2017075695A (ja) * | 2015-10-13 | 2017-04-20 | 株式会社島津製作所 | 油潤滑軸受装置および真空ポンプ |
US20220090632A1 (en) * | 2020-09-18 | 2022-03-24 | Aktiebolaget Skf | Bearing cage and bearing |
-
2010
- 2010-11-08 JP JP2010249339A patent/JP2012102760A/ja active Pending
Cited By (4)
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US11655853B2 (en) * | 2020-09-18 | 2023-05-23 | Aktiebolaget Skf | Bearing cage and bearing |
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