JP2017075219A - 接着剤組成物およびこれを用いた腕時計 - Google Patents

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Abstract

【課題】腕時計の外装部品を固定する場合、圧力下においても防水性を維持できる接着剤組成物を提供すること。いいかえると、圧力下においても接着剤にひびが入らず、外装部品が分離することのない密着性に優れた接着剤組成物を提供することを提供すること。【解決手段】本発明の溶液状の接着剤組成物は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)と、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)と、イミダゾール系硬化剤(C)とを含むことを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、接着剤組成物およびこれを用いた腕時計に関する。
腕時計は、時を知るための道具として広く世界中で使用されている。特に腕時計は、腕に装着して持ち運びが容易にできるため便利に使用されている。近年では、色、重さ、環境性能などさまざまな観点で特徴ある時計が販売されている。
腕時計は、ムーブメントと呼ばれる駆動装置を、外装部品からなる外装、すなわちベゼルおよびガラスと、ケースおよび裏ぶたとからなる外装で覆いヘッドと呼ばれる部分を形成し、これにバンドを装着して形成されている。ヘッドは、内部を守る構造の頑丈な構造の外装で、ムーブメントを守っている。
従来、腕時計の外装を製造するため、ベゼルとガラスとは市販の接着剤、たとえば紫外線硬化型接着剤で固定されていた。
なお、腕時計に使用できる接着剤、具体的には植え物を文字板用基体に固定するための接着剤としては、例えばエポキシ樹脂からなる主剤とアミン系硬化剤と超微粒子シリカとからなる精密部品用接着剤組成物がある(特開文献1)。
特開2004−99886号公報
しかしながら、時計すなわちヘッドに一定の力がかかると外装がたわみ、外装部品同士を固定している接着剤にひびが入り、結果としてガラスが本体から分離する、または防水性を維持できなくなるといった問題が生ずる場合がある。
また、薄さを追求した腕時計を設計した場合、着脱可能な裏ぶたは構造上厚みが必要となるため好ましくないことがあり、腕時計の製造の際には、ケースに対して着脱できないように耐圧板を貼り付けて形成することがある。このような薄型の腕時計においては、ヘッドに一定の力がかかると外装がよりたわみやすいため、上記問題が起こりやすく、旧来の紫外線硬化型接着剤では外装部品同士を接着することが難しい。
また、薄型のデザインの腕時計において、特開文献1に記載の精密部品用接着剤組成物を用いてケースとガラスとを接着し、一定の圧力をかけると、やはりたわみに耐えることができずガラスが本体から分離してしまう現象が起こる。
そこで、本発明の目的は、腕時計の外装部品を固定する場合、圧力下においても防水性を維持できる接着剤組成物を提供することにある。いいかえると、圧力下においても接着剤にひびが入らず、外装部品が分離することのない密着性に優れた接着剤組成物を提供することにある。また、上記接着剤組成物を用いた密着性に優れた腕時計を提供することにある。
本発明にかかる溶液状の接着剤組成物は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)と、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)と、イミダゾール系硬化剤(C)とを含むことを特徴とする。
本発明の接着剤組成物により腕時計の外装部品を固定すると、圧力下においても防水性を維持できる。いいかえると、圧力下においても接着剤にひびが入らず、外装部品が分離することがなく優れた密着性が維持できる。特に薄型の腕時計であっても、圧力下においても接着剤にひびが入らず、ベゼルおよびガラス、またはケースおよび耐圧板が分離することがなく優れた密着性が維持できる。また、本発明の腕時計は、上記接着剤組成物を用いているため密着性に優れる。特に薄型の腕時計であっても、上記接着剤組成物を用いているため密着性に優れる。
さらに、本発明の接着剤組成物により腕時計の外装部品を固定する際、接着剤組成物がはみ出した場合などには、適宜加温、溶剤への浸漬を行うと接着剤組成物を除去できる。本発明の接着剤組成物はこのようなリペア性にも優れる。
図1は、本発明の薄型の腕時計を説明するための図である。 図2は、本発明の薄型の腕時計を説明するための図である。
<接着剤組成物>
本発明の接着剤組成物は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)と、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)と、イミダゾール系硬化剤(C)とを含む。すなわち、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)とダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)とからなる主剤とイミダゾール系硬化剤(C)からなる硬化剤とを含む。なお、本明細書において、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)およびイミダゾール系硬化剤(C)をそれぞれ成分(A)、成分(B)および成分(C)ともいう。
また、本発明の接着剤組成物は溶液状である。溶液状とは、たとえば、接着剤組成物を配合してから、25℃において少なくとも4時間は0.5mm径のニードルを付けたディスペンサーにより吐出できる状態にあることをいう。腕時計の外装部品を接着する際に、このような接着剤組成物は部品同士の狭い隙間に均一に付着できるため、高い密着性で部品同士を固定できる。一方、粉末状の成分(たとえば硬化剤など)が含まれる接着剤組成物の場合は、ブリードして部品同士の狭い隙間に均一に付着できず、部品同士を強固に固定できないという問題がある。
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)は、ビスフェノールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるジグリシジルエーテルである。ビスフェノール型エポキシ樹脂は硬化すると硬度の高い樹脂となる。これは、ビスフェノールの部分構造中のフェニル環が耐熱性と固さを引き出している為である。また、構造中の酸素原子は部品同士の接着力を高める効果があり部品を強固に接着する為には好適である。
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、スフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。具体的には、jER825、jER806、jER807(以上商品名、三菱化学株式会社製)、EPICLON EXA850CRP(商品名、DIC株式会社製)、EP−4400、EP−4520S、EP−4530、EP−4901(以上商品名、株式会社ADEKA製)、YDF−170(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)が挙げられる。成分(A)は一種を用いても二種以上を混合して用いてもよい。
これらのうちでビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好適に用いられる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂はビスフェノールA型エポキシ樹脂に比較して粘度が低い場合が多く、構成される接着剤成分を混和させる為には好適である。
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)は通常25℃で液状であり、25℃の粘度が好ましくは10以上70以下、より好ましくは35ポイズ以上45ポイズ以下である。ここで粘度は回転粘度計により求めた値である。成分(A)の粘度がこの範囲にあると、外装部品の接着に好ましい接着剤組成物が調製できる。
また、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)は、エポキシ当量が好ましくは160以上200以下、より好ましくは160以上175以下である。
ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)は、ビスフェノールA型およびエピクロルヒドリンの縮合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂とダイマー酸との反応物(エステル)である。いいかえると、ビスフェノールA型エポキシ樹脂単位と、ダイマー酸単位(ダイマー酸のカルボキシ基1個からOH基がとれた単位またはダイマー酸のカルボキシ基2個両方からOH基がとれた単位)とを有する。ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)では、ダイマー酸構造がエポキシ樹脂中に導入されている為、分子中での反応部位が離れている。このため、成分(B)を含む接着剤組成物の硬化物は好ましい柔軟性を有する。
ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)としては、jER872(商品名、三菱化学株式会社製)、YD−172(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)が挙げられる。成分(B)は一種を用いても二種以上を混合して用いてもよい。
ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)は25℃で液状であることが好ましい。しかしながら、半固体や固体であっても、成分(A)と混合した際に溶液状となれば、そのような成分(B)を用いてもよい。ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)の75wt%キシレン溶液(75wt%の濃度となるようダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)をキシレンに溶解させた溶液)の25℃における粘度は好ましくは15ポイズ以上25ポイズ以下である。ここで粘度は回転粘度計により求めた値である。成分(B)の粘度がこの範囲にあると、外装部品の接着に好ましい接着剤組成物が調製できる。
また、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)は、エポキシ当量が好ましくは600以上700以下である。
イミダゾール系硬化剤(C)は、接着剤組成物にある程度の量で配合されていると、硬化の際には連鎖的に反応が進んでいく。また、イミダゾール系硬化剤(C)を用いると、接着剤組成物の粘度や硬化速度を調整しやすい。
イミダゾール系硬化剤(C)としては、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールが挙げられる。また、イミダゾール系硬化剤(C)として特開2010−168516号公報に記載されている、イミダゾール化合物と、亜リン酸、亜リン酸モノエステルおよび亜リン酸ジエステルからなる群から選択される、水酸基1つ以上を有する亜リン酸化合物1種以上とを必須成分として含む硬化剤組成物を用いてもよい。具体的には、フジキュアー7000、フジキュアー7001(以上商品名、株式会社T&K TOKA製)が挙げられる。成分(C)は一種を用いても二種以上を混合して用いてもよい。
イミダゾール系硬化剤(C)は25℃で液状であることが好ましい。しかしながら、半固体や固体であっても、成分(A)、(B)と混合した際に溶液状となれば、そのような成分(C)を用いてもよい。イミダゾール系硬化剤(C)の25℃における粘度は好ましくは10ポイズ以上35ポイズ以下である。ここで粘度は回転粘度計により求めた値である。成分(C)の粘度がこの範囲にあると、外装部品の接着に好ましい接着剤組成物が調製できる。
本発明の接着剤組成物は、上述したビスフェノール型エポキシ樹脂(A)、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)およびイミダゾール系硬化剤(C)を含む。主剤として成分(A)のみを用いると、接着剤組成物を付着させた部品を加熱して硬化させるときに該組成物が流れ落ちやすい。この為、適切な量の接着剤を塗布する場合には複数回の接着剤の塗布と、硬化を繰り返さなければならい。また、複数回塗布してケース部品にガラスを接着しても一定の圧力をかけると硬化した接着剤が硬すぎるために接着剤にひびが入りケースからガラスが剥離するといった不具合が発生しやすい。これに対して、本発明のように主剤として成分(A)と成分(B)とを組み合わせて用いると、接着剤組成物の粘度が高くなり、接着剤組成物が好適に塗布できるようになる。また、硬化後の接着剤も高い接着力を維持したまま適度に柔軟になり、圧力をかけても防水性を維持できる。具体的には、接着剤にひびが入らず、上記不具合の発生が抑えられる。このように、主剤として成分(A)と成分(B)とを組み合わせると、接着剤組成物としてのハンドリングも向上し、該組成物の硬化後の接着力も向上する。
また、薄型の腕時計では圧力がかかった際のたわみがより大きいが、該組成物は硬化後も適度な柔軟性を有するため防水性を維持できる。具体的には、圧力がかかってヘッドが大きくたわんでも、接着剤にひびが入らず、ベゼルおよびガラス、またはケースおよび耐圧板が分離することがなく、高い密着性が維持できる。
イミダゾール系硬化剤(C)は主剤に相溶する化合物である。工業的には長期間安定な硬化剤として、例えば粉末状の硬化剤がある。このような粉末状の硬化剤を主剤中に分散して安定化をすることもできるが、ケースとガラスの僅かな隙間に接着剤を流し込む必要がある時計においては、固体は隙間に入りにくい。この為、イミダゾール系硬化剤は、主剤に相溶していることが必要となる。いいかえると、本発明の接着剤組成物のように、成分(C)は成分(A)と成分(B)とともに溶液を形成していることが好ましい。また、イミダゾール系硬化剤(C)を用いると、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)を適切な柔軟性を有する硬化体とできる利点もある。
さらに、時計は精密機器であり、ファッション性も重視される。このため接着剤がはみだすと不良品となり商品として出荷できなくなる。一方、時計部品は精密加工してできた部品である為、高価で廃棄することは生産販売する上では考えにくい。このため、接着不良を起こした部品を再利用できることが好ましい。本発明の接着剤組成物はリペア性にも優れる。すなわち、接着剤がはみ出した場合などでも、一定の処理を行うと接着剤をきれいに除去できる。
具体的には、硬化した本発明の接着剤組成物が付着した外装部品をホットプレート上で120℃で10分間加温し、たとえば圧力をかけて部品を剥離する。次いで、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール等の溶剤に、上記部品を24時間浸漬すれば、部品よりも柔らかい器具(たとえば竹串)により付着した接着剤を除去できる。
本発明の接着剤組成物は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)およびダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)の合計を100重量部としたとき、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を好ましくは40重量部以上95重量部以下、より好ましくは60重量部以上80重量部以下の量で、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)を好ましくは5重量部以上60重量部以下、より好ましくは20重量部以上40重量部以下の量で含むことが望ましい。接着剤組成物のハンドリングと硬化した接着剤の柔軟性とのバランスの観点から成分(A)、成分(B)を上記量で用いることが好ましい。すなわち、接着剤組成物の粘度が適切になり、部品上に該組成物を適量塗布できるようになる。また、硬化後の接着剤も高い接着力を維持したまま適度に柔軟になる。なお、成分(B)が上記量よりも多すぎると、粘度が高くなりすぎ、部品上に接着剤を適量塗布できなくなる恐れがある。また、硬化後の接着剤も柔軟になりすぎ、接着強度が下がりガラスを固定できなくなる恐れがある。
また、本発明の接着剤組成物は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)およびダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)の合計100重量部に対して、イミダゾール系硬化剤(C)を5重量部以上40重量部以下、より好ましくは25重量部以上35重量部以下の量で含むことが望ましい。接着剤組成物の硬化速度と接着剤組成物の保存性とのバランスの観点から成分(C)を上記量で用いることが好ましい。なお、成分(C)が上記量よりも多すぎると、硬化速度が速くなり工業的な生産性は向上するものの、接着剤の保存性が低下する恐れがある。なお、イミダゾール系硬化剤(C)として上述したようなイミダゾール化合物と亜リン酸化合物などリン含有化合物とを含む硬化剤組成物を用いる場合は、該硬化剤組成物を上記量で用いることが好ましい。
本発明の接着剤組成物の調製方法は、溶液状の接着剤組成物が調製できれば特に制限されないが、たとえば、まずオーブンを用いてビスフェノール型エポキシ樹脂(A)およびダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)をそれぞれ60〜90℃に加温し、成分(B)を柔らかくし取扱い性を向上させる。次いで成分(A)および成分(B)を適量計量し、さらに60〜90℃で攪拌混合する。成分(A)および成分(B)を混合した後室温(たとえば25℃)に冷まし、さらにイミダゾール系硬化剤(C)を加え攪拌して接着剤組成物を得る。なお、成分(A)および成分(B)の混合においては、成分(A)は室温のままで成分(B)を60〜90℃に加温し、成分(B)を柔らかくし取扱い性を向上させ、次いで成分(A)および成分(B)を適量計量し、さらに60〜90℃で攪拌混合してもよい。
得られた接着剤組成物を保管する場合は冷凍(たとえば−18℃以下、好ましくは−40℃以下)で保管することが好ましい。これによりたとえば少なくとも数か月は変質せずに保管できる。
本発明の接着剤組成物を使用する際は、通常0〜30℃に戻してから外装部品の接着に用いることができるが、該組成物は、室温(たとえば25℃)に戻してから通常4時間以上、好ましくは8時間以上、より好ましくは16時間以上は良好に外装部品を接着でき、作業性にも優れる。
本発明の接着剤組成物は、上述した成分(A)、成分(B)および成分(C)のみからなっていてもよく、本発明の目的を損なわない範囲であれば、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、たとえば成分(A)、(B)と混合した際に溶液状となる成分、具体的には溶媒、不活性な色材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤(HALS)が挙げられる。
溶媒としては、より具体的にはキシレン、トルエン、アセトンなどの沸点150℃以下の揮発性溶媒が挙げられる。溶媒は一種を用いても二種以上を混合して用いてもよい。溶媒を用いる場合は、溶媒は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)およびダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)の合計100重量部に対して、たとえば0重量部を超え10重量部以下の量で含むことが望ましい。
溶媒以外の上述したその他の成分については、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)およびダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)の合計100重量部に対して、たとえば0重量部を超え5重量部以下の量で含むことが望ましい。
その他の成分を含む場合の接着剤組成物の調製方法は、溶液状の接着剤組成物が調製できれば特に制限されないが、たとえば、まず成分(A)および成分(B)の混合物にその他の成分を加え、次いで成分(C)を加えるか、または成分(C)にその他の成分を加え、次いで成分(A)および成分(B)の混合物を加えて接着剤組成物を得る。
本発明の接着剤組成物は、腕時計のヘッドを構成する外装部品を固定するための接着剤組成物として好適に用いられる。この場合、上記腕時計は、たとえば上記外装部品としてベゼル、ガラス、ケースおよび耐圧板を有しており、上記接着剤組成物により、上記ベゼルとガラスとが固定されるか、または上記ケースと耐圧板とが固定される。なお、具体的な腕時計の構成および接着方法などについては、時計およびその製造方法に関する説明において詳述する。
<時計およびその製造方法>
本発明の腕時計すなわち薄型の腕時計は、図1に示すように、ヘッド10を構成する外装部品としてベゼル12、ガラス14、ケース16および耐圧板18を有する。ここで図1は、ヘッドの断面片側を示している。耐圧板18は、通常の厚さを有するヘッドに用いられる着脱可能な裏ぶたと同じ機能を有するが、着脱できないようにケースに張り付けられ、高いヤング率を有する脆性材などから形成される板である。
このように、薄型の腕時計のヘッド10では外装部品の厚みもそれぞれ薄く、外装部品により構成される外装が安定にムーブメント20を保持するために特殊な構造となる。すなわち、ベゼル12およびガラス14で構成される部分と、ケース16および耐圧板18で構成される部分との2体構造となる。また、これら2つの部分はねじ22により固定されている。
なお、ヘッド10の中には、ムーブメント20の他に、文字板24などが備えられており、文字板24とガラス14との間は空間となっている。
上述したように、本発明の腕時計はヘッドの厚みが薄い。ヘッドの厚みとは、具体的には、図1に示すように文字板24と垂直方向であり、かつガラス14表面から耐圧板18表面までの距離であって、最も大きい距離をいう。一般の腕時計としては10mmのヘッドの厚さを基準としてプラス2mmマイナス2mmの範囲が標準で、12mmを超えると厚めの時計で、8mm未満は薄さを強調した時計となっている。本発明の腕時計では、ヘッドの厚さは通常4mm未満、好ましくは3mm未満である。
ベゼル12に接着し固定するとともに文字板24にかぶせるガラス14は、薄型の腕時計であっても強度が維持できる観点から、ミネラルガラス、クリスタルガラス、石英ガラスまたはサファイアガラスからなることが好ましい。
ガラス14の厚みは、強度と薄さのバランスの観点から、好ましくは450μm以上550μm以下であり、より好ましくは500μm以上550μm以下である。
薄型の腕時計の部品において比較的厚みの取れる外周部にあたるベゼル12およびケース16は、ステンレス(例えばSUS316L)、純チタンなどのチタンまたはサーメットで形成することが好ましい。これにより、薄型の腕時計であっても強度が維持できる。
裏面に当たるケース16は中心部が抜けた構造になっており、ここへ耐圧板18を接着固定することで強度を保つ。耐圧板18はヤング率200GPa以上の脆性材からなることが好ましい。耐圧板18を形成する脆性材のヤング率は、より好ましくは350GPa以上、さらに好ましくは400GPa以上である。これにより、薄型の腕時計であっても強度が維持できる。具体的には、サファイア(ヤング率約470GPa)、サーメット(ヤング率約440GPa)、タングステン(ヤング率約411GPa)、アルミナ(ヤング率約360GPa)、ジルコニア(ヤング率約200GPa)の材料を使用できる。
耐圧板18の厚みは、強度と薄さのバランスの観点から、好ましくは300μm以上500μm以下である。
本発明の腕時計においては、上述した溶液状の接着剤組成物により、ベゼル12とガラス14とが固定されているか、またはケース16と耐圧板18とが固定されている。好ましくは、上述した溶液状の接着剤組成物により、ベゼル12およびガラス14と、ケース16および耐圧板18との両方が固定されている。
上記2体構造を有する薄型の腕時計では、外装部品が圧力を受けた時に変形しやすい。時計が3気圧防水で販売されるのであれば、この圧力に耐える必要がある。しかしながら、薄型の腕時計の外装部品を接着する際に、従来の接着剤すなわち硬化後に硬くなる強固な接着剤を用いると、変形時にクラックが入り防水を維持できない。一方、変形に追従することのできる柔軟な接着剤を使用すると、柔らかすぎて接着強度が下がり部品が取れるなどして使用に耐えない。したがって、薄型の腕時計の外装部品に接着においては、硬化後の接着力と柔軟性とのバランスに優れる本発明の接着剤組成物が好適に用いられる。いいかえると、硬化後の接着剤が高い接着力を有するとともに適度に柔軟であり、圧力がかかっても防水性を維持できる本発明の接着剤組成物が好適に用いられる。
具体的な外装部品の接着においては、たとえばベゼル12に本発明の接着剤組成物を塗布してからガラス14を嵌め込む。また、たとえばケース16に本発明の接着剤組成物を塗布してから耐圧板18を嵌め込む。より具体的には、たとえばベゼル12に形成された断面L字状のガラス装着部(たとえばL字の隅部)に対して、ディスペンサーで接着剤組成物を環状に吐出させて塗布し、ガラス14を嵌め込む。ガラス14を嵌め込むと、接着剤組成物が装着部に沿ってL字状に広がり、ベゼル12とガラス14との間の図1でいえば黒く示した部分に付着した状態となる。同様に、ケース16の裏面側に形成された断面L字状の耐圧板装着部(たとえばL字の隅部)に対して、ディスペンサーで接着剤組成物を環状に吐出させて塗布し、耐圧板18を嵌め込む。耐圧板18を嵌め込むと、接着剤組成物が装着部に沿ってL字状に広がり、ケース16と耐圧板18との間の図1でいえば黒く示した部分に付着した状態となる。なお、ガラス14または耐圧板18に本発明の接着剤組成物を塗布してからそれぞれベゼル12またはケース16に嵌め込んでもよい。液状である本発明の接着剤組成物は部品同士の狭い隙間に均一に塗布できるため、高い密着性で部品同士を固定できる。
上記のように外装部品の間に接着剤組成物を付着させた後、通常80〜120℃で1〜3時間、組成物を硬化させ外装部品を接着させる。次いで、ねじ22により、ベゼル12およびガラス14とからなる部分と、ケース16および耐圧板18とからなる部分とを固定して、本発明の腕時計が製造される。なお、ムーブメント等のヘッド内部の他の部品の組み立てやバンドの装着は適宜公知の方法で行うことができる。
このようにして得られた本発明の腕時計は、上述した接着剤組成物により接着されているため、通常3気圧の防水性能を有する。また、好ましくは20kgf以上の固定力を有する。
さらに、本発明の腕時計はリペア性にも優れる。すなわち、上述した接着剤組成物がはみ出した場合などでも、一定の処理を行うと接着剤をきれいに除去できる。具体的な処理については、接着剤組成物の説明で述べたものと同じである。
本発明の腕時計は、図2に示すようなヘッド40を有する薄型の腕時計であってもよい。ここで図2は、ヘッドの断面片側を示している。ヘッド40は、ベゼル42およびガラス44で構成される部分と、ケース46で構成される部分との2体構造であり、ムーブメント48およびリュウズ50が備えられている。すなわちヘッド40は耐圧板を有しない。なお、これら2つの部分はねじにより固定されている。上述した溶液状の接着剤組成物により、ベゼル42とガラス44とが固定されている。具体的には、図2において黒く示した部分に上述した溶液状の接着剤組成物を付着させ、硬化させることによりベゼル42とガラス44とが固定されている。この場合も、硬化後の接着力と柔軟性とのバランスに優れる本発明の接着剤組成物を用いているため、外装部品が強固に接着されており、防水性が維持できる。
なお、ヘッド40の中には、文字板52などが備えられており、文字板52とガラス44との間は空間となっている。
また、本発明の腕時計のその他の態様として、厚さが4mm以上8mm未満の薄めヘッド、厚さが8mm以上12mm以下の通常のヘッドまたは厚さが12mmを超える厚めのヘッドを有する腕時計が挙げられる。これらの場合も、硬化後の接着力と柔軟性とのバランスに優れる本発明の接着剤組成物を用いているため、外装部品が強固に接着されており、防水性が維持できる。
また、本発明の腕時計のその他の態様として、ガラスに模様がある腕時計が挙げられる。ガラスに模様があると、腕時計の外装部品の接着に用いられる従来のUV硬化型接着剤では、紫外線による接着剤の硬化が進まず、ガラスとベゼルとを接着できない問題があった。しかしながら、本発明の接着剤組成物は加熱により硬化するため、ガラスとベゼルとを強固に接着できる。
以上より、本発明は以下に関する。
[1] ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)と、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)と、イミダゾール系硬化剤(C)とを含むことを特徴とする溶液状の接着剤組成物。
上記接着剤組成物によれば腕時計の外装部品を強固に接着できる。また、得られた腕時計は圧力下においても防水性が維持できる。
[2] ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)およびダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)の合計を100重量部としたとき、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を60重量部以上95重量部以下の量で、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)を5重量部以上40重量部以下の量で、イミダゾール系硬化剤(C)を5重量部以上35重量部以下の量で含むことを特徴とする上記[1]に記載の溶液状の接着剤組成物。
成分(A)および成分(B)は、接着剤組成物のハンドリングと硬化した接着剤の柔軟性とのバランスの観点から上記量で用いることが好ましい。また、成分(C)は、接着剤組成物の硬化速度と接着剤組成物の保存性とのバランスから上記量で用いることが好ましい。
[3] ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)がビスフェノールF型エポキシ樹脂であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の溶液状の接着剤組成物。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、構成される接着剤成分を混和させる為に好ましい粘度を有する。
[4] ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の25℃における粘度が35ポイズ以上45ポイズ以下であり、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)の75wt%キシレン溶液の25℃における粘度が15ポイズ以上25ポイズ以下であり、イミダゾール系硬化剤(C)の25℃における粘度が10ポイズ以上35ポイズ以下であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の溶液状の接着剤組成物。
成分(A)〜(C)の粘度がこの範囲にあると、外装部品の接着に好ましい接着剤組成物が調製できる。
[5] 上記接着剤組成物が、腕時計のヘッドを構成する外装部品を固定するための接着剤組成物であり、上記腕時計が、上記外装部品としてベゼル、ガラス、ケースおよび耐圧板を有し、上記接着剤組成物により、上記ベゼルとガラスとが固定されるか、または上記ケースと耐圧板とが固定されることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の溶液状の接着剤組成物。
上記接着剤組成物によれば腕時計の外装部品を強固に接着できる。また、得られた腕時計は圧力下においても防水性が維持できる。
[6] ヘッドを構成する外装部品としてベゼル、ガラス、ケースおよび耐圧板を有する腕時計であって、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の溶液状の接着剤組成物により、該ベゼルとガラスとが固定されているか、または該ケースと耐圧板とが固定されていることを特徴とする腕時計。
本発明の腕時計では上記接着剤組成物により外装部品が固定されているため、防水性および密着性に優れる。
[7] 上記ガラスが、ミネラルガラス、クリスタルガラス、石英ガラスまたはサファイアガラスからなることを特徴とする上記[5]に記載の溶液状の接着剤組成物または上記[6]に記載の腕時計。
[8] 上記耐圧板がヤング率200GPa以上の脆性材からなることを特徴とする上記[5]に記載の溶液状の接着剤組成物または上記[6]に記載の腕時計。
[9] 上記脆性材が、サファイア、サーメット、タングステン、アルミナまたはジルコニアであることを特徴とする上記[8]に記載の溶液状の接着剤組成物または上記[8]に記載の腕時計。
[10] 上記ベゼルおよびケースが、それぞれステンレス、チタンまたはサーメットからなることを特徴とする上記[5]に記載の溶液状の接着剤組成物または上記[6]に記載の腕時計。
ガラス、耐圧板、ベゼルおよびケースが上記材料から形成されていると、薄型の腕時計であっても強度が維持できる。
[11] 上記ヘッドの厚みが4mm未満であることを特徴とする上記[6]に記載の腕時計。
このようにヘッドが薄くても、本発明の腕時計では上記接着剤組成物により外装部品が固定されているため、防水性および密着性に優れる。
[12] 上記ガラスの厚みが450μm以上550μm以下であることを特徴とする上記[6]に記載の腕時計。
[13] 上記耐圧板の厚みが300μm以上500μm以下であることを特徴とする上記[6]に記載の腕時計。
ガラス、耐圧板の厚みが上記範囲にあると強度と薄さのバランスに優れる。
[14] ヘッドを構成する外装部品としてベゼル、ガラス、ケースおよび耐圧板を有する腕時計の製造方法であって、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の溶液状の接着剤組成物により、該ベゼルとガラスとを固定するか、または該ケースと耐圧板とを固定することを特徴とする腕時計の製造方法。
このようにして得られた腕時計では上記接着剤組成物により外装部品が固定されているため、防水性および密着性に優れる。
[15] 上記ヘッドの厚みが4mm未満であることを特徴とする上記[14]に記載の腕時計の製造方法。
このようにヘッドが薄くても、得られた腕時計では上記接着剤組成物により外装部品が固定されているため、防水性および密着性に優れる。
[16] 上記ガラスの厚みが450μm以上550μm以下であることを特徴とする上記[14]に記載の腕時計の製造方法。
[17] 上記耐圧板の厚みが300μm以上500μm以下であることを特徴とする上記[14]に記載の腕時計の製造方法。
ガラス、耐圧板の厚みが上記範囲にあると、得られた腕時計において強度と薄さのバランスが優れる。
[実施例]
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
<評価方法>
[作業性(作業可能な継続時間)]
調製後−40℃で保管されている接着剤組成物を25℃の室温に戻してから、4時間後、8時間後および16時間後において、接着剤組成物が精密塗布可能か評価した。精密塗布は、ベゼル(SUS316L製)に形成された断面L字状のガラス装着部(具体的にはL字の隅部)に、シリンジ先端に5mm径のニードルが備えられたディスペンサーで接着剤組成物を環状に吐出させて行った。すなわち、チューブを介してシリンジに空気圧を送り、シリンジ内に収めた接着剤組成物を吐出させた。吐出圧力は0〜0.2MPaまで変更可能であった。なお、下記評価基準では、0.2MPaまで圧力を上げても連続的に吐出できなかった場合を精密塗布できない場合とした。
評価基準 A1:4時間後、8時間後および16時間後において接着剤組成物が連続的に吐出でき精密塗布できた。
A2:4時間後および8時間後には接着剤組成物が連続的に吐出でき精密塗布できた。しかし、16時間後には連続的に吐出できなくなっており精密塗布できなかった。
A3:4時間後は接着剤組成物が連続的に吐出でき精密塗布できた。しかし、8時間後には連続的に吐出できなくなっており精密塗布できなかった。
B:4時間後にすでに連続的に吐出できなくなっており精密塗布できなかった。
[硬化性]
接着剤組成物を塗布後加熱したベゼルとガラスとからなるサンプルについて、接着剤組成物が硬化しているか評価した。硬化したか否かは、市販のハンドプレスおよびプッシュプルゲージを用いて、部品を剥離する方向に5kgfの外圧をかけ、次いで10kgfの外圧をかけ、さらに20kgfの外圧をかけて、部品が剥離しないかにより判断した。ここで、図1でいえば文字板が備えられる側からガラスに圧力をかけた。
評価基準 A1:1.5時間加熱したサンプル、2時間加熱したサンプルおよび5時間加熱したサンプルともに20kgfをかけても剥離しなかった。
A2:1.5時間加熱したサンプルは10kgfをかけても剥離しなかったが20kgfをかけると剥離した。2時間加熱したサンプルおよび5時間加熱したサンプルは20kgfをかけても剥離しなかった。
A3:1.5時間加熱したサンプルおよび2時間加熱したサンプルは10kgfをかけても剥離しなかったが20kgfをかけると剥離した。5時間加熱したサンプルは20kgfをかけても剥離しなかった。
A4:1.5時間加熱したサンプル、2時間加熱したサンプルおよび5時間加熱したサンプルともに5kgfをかけても剥離しなかったが10kgfをかけると剥離した。
[実施例1−1]
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)としてビスフェノールF型エポキシ樹脂であるjER807(以上商品名、三菱化学株式会社製)を、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)としてjER872(商品名、三菱化学株式会社製)を、イミダゾール系硬化剤(C)としてフジキュアー7001(商品名、株式会社T&K TOKA製)を用いた。
成分(A)と成分(B)とをあらかじめオーブンを用いて80℃に加温し、成分(B)を柔らかくし、取り扱い性を向上させた。成分(A)を90重量部、成分(B)を10重量部計量し、80℃に加温しながら攪拌混合した。得られた混合物を室温(25℃)に冷まし、成分(C)を5重量部加え攪拌して接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物は−40℃で保管した。ここで上記作業性の評価を行った。
次いで、ベゼル(SUS316L製)に形成された断面L字状のガラス装着部(具体的にはL字の隅部)に対して、5mm径のニードルを有するディスペンサーで室温(25℃)に戻した接着剤組成物を環状に吐出させて塗布し、次いでサファイアガラス(直径約30.5mm、厚み500mm)を嵌め込んだ。ここで、塗布は、具体的には作業性の評価方法において説明したように行った。このようにして、上記接着剤組成物をベゼルとガラスとの間(図1でいえば黒く示した部分)に付着させた。このようなサンプルを3個作製した。次いで、3個のサンプルについて、80℃のオーブン上でそれぞれ1.5時間、2時間および5時間加熱して、ベゼルとガラスとからなるサンプルを得た。ここで上記硬化性の評価を行った。
[実施例1−2]
成分(C)を10重量部加えたほかは、実施例1−1と同様にして接着剤組成物およびベゼルとガラスとからなるサンプルを得た。実施例1−1と同様にして上記作業性および硬化性の評価も行った。
[実施例1−3]
成分(C)を20重量部加えたほかは、実施例1−1と同様にして接着剤組成物およびベゼルとガラスとからなるサンプルを得た。実施例1−1と同様にして上記作業性および硬化性の評価も行った。
[実施例1−4]
成分(C)を25重量部加えたほかは、実施例1−1と同様にして接着剤組成物およびベゼルとガラスとからなるサンプルを得た。実施例1−1と同様にして上記作業性および硬化性の評価も行った。
[実施例1−5]
成分(C)を30重量部加えたほかは、実施例1−1と同様にして接着剤組成物およびベゼルとガラスとからなるサンプルを得た。実施例1−1と同様にして上記作業性および硬化性の評価も行った。
[実施例1−6]
成分(C)を35重量部加えたほかは、実施例1−1と同様にして接着剤組成物およびベゼルとガラスとからなるサンプルを得た。実施例1−1と同様にして上記作業性および硬化性の評価も行った。
[実施例1−7]
成分(C)を40重量部加えたほかは、実施例1−1と同様にして接着剤組成物およびベゼルとガラスとからなるサンプルを得た。実施例1−1と同様にして上記作業性および硬化性の評価も行った。
[実施例1−8]
成分(A)を30重量部、成分(B)を70重量部および成分(C)を30重量部用いたほかは、実施例1−1と同様にして接着剤組成物およびベゼルとガラスとからなるサンプルを得た。実施例1−1と同様にして上記作業性および硬化性の評価も行った。
[実施例1−9]
成分(A)を20重量部、成分(B)を80重量部用いたほかは、実施例1−8と同様にして接着剤組成物およびベゼルとガラスとからなるサンプルを得た。実施例1−1と同様にして上記作業性および硬化性の評価も行った。
[実施例1−10]
成分(A)を10重量部、成分(B)を90重量部用いたほかは、実施例1−8と同様にして接着剤組成物およびベゼルとガラスとからなるサンプルを得た。実施例1−1と同様にして上記作業性および硬化性の評価も行った。
実施例1−1〜1−10について、上記作業性および硬化性の評価結果を表1に示す。
Figure 2017075219
<評価方法>
[防水性]
時計は使用する上で水がかかることがある。このため防水性を持たせることが重要である。防水試験では、圧力をかけられる釜に模擬的なヘッドをセットし、水を注入して所定の圧力をかけた後、釜からヘッドを取り出し、接着剤にひびが入るなどによりヘッドの内部に水が浸入していないかを調べた。
模擬的なヘッドについて、まず2気圧での防水試験を行った後、釜から取り出したヘッドについて固定力試験も行った。次いで上記ヘッドについて再び2気圧での防水試験を行い、さらに3気圧での防水試験および5気圧での防水試験を続けて行った。
上記固定力試験では、ねじ(図1のねじ22に対応する。)をはずして、ベゼルとガラスとからなる部分と、ケースと耐圧板とからなる部分とに分解した。両者について、市販のハンドプレスおよびプッシュプルゲージを用いて、部品を剥離する方向に20kgfの外圧をかけて、部品が剥離しないかにより判断した。ここで、ベゼルとガラスとからなる部分の場合は、図1でいえば文字板が備えられる側からガラスに圧力をかけ、ケースと耐圧板とからなる部分の場合は、図1でいえばムーブメントが備えられる側から耐圧板に圧力をかけた。なお、固定力試験の後は、ベゼルとガラスとからなる部分と、ケースと耐圧板とからなる部分とを再びねじ止めし、ヘッドの状態として、さらに防水試験を行った。
なお、この一連の試験に合格した場合は、たとえば3気圧の防水性能を有している製品として販売できる。
評価基準 A:最初の2気圧での防水試験において、ヘッドの内部に水は浸入しなかった。2気圧での防水試験に続けて行った固定力試験において20kgfの外圧をかけても部品は剥離しなかった。さらに行った2気圧での防水試験、3気圧での防水試験および5気圧での防水試験においても、ヘッドの内部に水は浸入しなかった。
B:最初の2気圧での防水試験において、ヘッドの内部に水が浸入した。このため、その後の評価は行えなかった。
[リペア性]
模擬的なヘッドについて、ねじをはずし、ベゼルとガラスとからなる部分と、ケースと耐圧板とからなる部分とに分解し、ホットプレート上で120℃で10分間加温した。ベゼルとガラスとからなる部分については、ガラスがホットプレートに接するようにして、ケースと耐圧板とからなる部分については、耐圧板がホットプレートに接するようにして加温した。次いで、この2個の部分それぞれに圧力をかけてベゼル、ガラス、ケースおよび耐圧板を剥離した。次いで、これらの部品をエタノールに24時間浸漬し、その後付着している接着剤を部品よりも柔らかい竹串で除去した。接着剤がきれいに除去できたかを目視で評価した。接着剤がきれいに除去できなかったヘッドについて、さらにエタノールに24時間浸漬し、その後付着している接着剤を部品よりも柔らかい竹串で除去した。接着剤がきれいに除去できたかを目視で評価した。
評価基準 A1:1回目のエタノールへの浸漬後に、接着剤がきれいにすべて除去できた。
A2:1回目のエタノールへの浸漬後には、接着剤が一部残った。しかし、2回目のエタノールへの浸漬後に、接着剤がきれいにすべて除去できた。
[実施例2−1]
成分(C)を30重量部加えたほかは、実施例1−1と同様にして接着剤組成物を得た。
まず、室温(25℃)において、ベゼル(SUS316L製)に形成された断面L字状のガラス装着部(具体的にはL字の隅部)に対して、5mm径のニードルを有するディスペンサーで接着剤組成物を環状に吐出させて塗布し、次いでサファイアガラス(直径約30.5mm、厚み500mm)を嵌め込んだ。このようにして、上記接着剤組成物をベゼルとガラスとの間(図1でいえば黒く示した部分)に付着させた。また、ケース(SUS316L製、直径約38.5mm)の裏面側に形成された断面L字状の耐圧板装着部(具体的にはL字の隅部)に対して、5mm径のニードルを有するディスペンサーで接着剤組成物を環状に吐出させて塗布し、次いで耐圧板(サーメット製、直径30.0mm、厚み400mm)を嵌め込んだ。このようにして、上記接着剤組成物をベゼルとガラスとの間およびケースと耐圧板との間(図1でいえば黒く示した部分)に付着させた。なお、塗布は、具体的には作業性の評価方法において説明したように行った。
次に、ベゼルおよびガラスからなる部分と、ケースおよび耐圧板とからなる部分とについて、80℃のオーブンで1.5時間かけて接着剤組成物を硬化させ部品同士を接着した。次いで、ねじにより、ベゼルおよびガラスからなる部分と、ケースおよび耐圧板とからなる部分と固定し、厚みが3.0mm未満の模擬的なヘッドを得た。得られたヘッドについて上記防水性およびリペア性の評価を行った。
[実施例2−2]
成分(A)を80重量部、成分(B)を20重量部用いたほかは、実施例2−1と同様にして接着剤組成物および模擬的なヘッドを得た。実施例2−1と同様にして上記防水性およびリペア性の評価も行った。
[実施例2−3]
成分(A)を70重量部、成分(B)を30重量部用いたほかは、実施例2−1と同様にして接着剤組成物および模擬的なヘッドを得た。実施例2−1と同様にして上記防水性およびリペア性の評価も行った。
[実施例2−4]
成分(A)を60重量部、成分(B)を40重量部用いたほかは、実施例2−1と同様にして接着剤組成物および模擬的なヘッドを得た。実施例2−1と同様にして上記防水性およびリペア性の評価も行った。
[実施例2−5]
成分(A)を50重量部、成分(B)を50重量部用いたほかは、実施例2−1と同様にして接着剤組成物および模擬的なヘッドを得た。実施例2−1と同様にして上記防水性およびリペア性の評価も行った。
[実施例2−6]
成分(A)を40重量部、成分(B)を60重量部用いたほかは、実施例2−1と同様にして接着剤組成物および模擬的なヘッドを得た。実施例2−1と同様にして上記防水性およびリペア性の評価も行った。
[比較例2−1]
成分(A)を100重量部用い、成分(B)を用いなかったほかは、実施例2−1と同様にして接着剤組成物および模擬的なヘッドを得た。実施例2−1と同様にして上記防水性およびリペア性の評価も行った。
実施例2−1〜2−6および比較例2−1について、上記防水性およびリペア性の評価結果を表2に示す。
Figure 2017075219
なお、上記実施例において、ガラスとしてサファイアガラスの代わりにミネラルガラス、クリスタルガラスまたは石英ガラスを用いた場合、直径約30.5mmのガラス代わりに直径約32.0mmのガラスを用いた場合、耐圧板としてサファイアの代わりにサーメット、タングステン、アルミナまたはジルコニアを用いた場合、ならびにケースおよびベゼルとしてSUS316Lの代わりにチタンまたはサーメットを用いた場合についても、同様に上記評価を行った。評価結果は上記実施例と同様であった。
10: ヘッド
12: ベゼル
14: ガラス
16: ケース
18: 耐圧板
20: ムーブメント
22: ねじ
24: 文字板
40: ヘッド
42: ベゼル
44: ガラス
46: ケース
48: ムーブメント
50: リュウズ
52: 文字板

Claims (17)

  1. ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)と、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)と、イミダゾール系硬化剤(C)とを含むことを特徴とする溶液状の接着剤組成物。
  2. ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)およびダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)の合計を100重量部としたとき、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を60重量部以上95重量部以下の量で、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)を5重量部以上40重量部以下の量で、イミダゾール系硬化剤(C)を5重量部以上35重量部以下の量で含むことを特徴とする請求項1に記載の溶液状の接着剤組成物。
  3. ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)がビスフェノールF型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の溶液状の接着剤組成物。
  4. ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の25℃における粘度が35ポイズ以上45ポイズ以下であり、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)の75wt%キシレン溶液の25℃における粘度が15ポイズ以上25ポイズ以下であり、イミダゾール系硬化剤(C)の25℃における粘度が10ポイズ以上35ポイズ以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶液状の接着剤組成物。
  5. 前記接着剤組成物が、腕時計のヘッドを構成する外装部品を固定するための接着剤組成物であり、
    前記腕時計が、前記外装部品としてベゼル、ガラス、ケースおよび耐圧板を有し、
    前記接着剤組成物により、前記ベゼルとガラスとが固定されるか、または前記ケースと耐圧板とが固定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶液状の接着剤組成物。
  6. ヘッドを構成する外装部品としてベゼル、ガラス、ケースおよび耐圧板を有する腕時計であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶液状の接着剤組成物により、該ベゼルとガラスとが固定されているか、または該ケースと耐圧板とが固定されていることを特徴とする腕時計。
  7. 前記ガラスが、ミネラルガラス、クリスタルガラス、石英ガラスまたはサファイアガラスからなることを特徴とする請求項5に記載の溶液状の接着剤組成物または請求項6に記載の腕時計。
  8. 前記耐圧板がヤング率200GPa以上の脆性材からなることを特徴とする請求項5に記載の溶液状の接着剤組成物または請求項6に記載の腕時計。
  9. 前記脆性材が、サファイア、サーメット、タングステン、アルミナまたはジルコニアであることを特徴とする請求項8に記載の溶液状の接着剤組成物または請求項8に記載の腕時計。
  10. 前記ベゼルおよびケースが、それぞれステンレス、チタンまたはサーメットからなることを特徴とする請求項5に記載の溶液状の接着剤組成物または請求項6に記載の腕時計。
  11. 前記ヘッドの厚みが4mm未満であることを特徴とする請求項6に記載の腕時計。
  12. 前記ガラスの厚みが450μm以上550μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の腕時計。
  13. 前記耐圧板の厚みが300μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の腕時計。
  14. ヘッドを構成する外装部品としてベゼル、ガラス、ケースおよび耐圧板を有する腕時計の製造方法であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶液状の接着剤組成物により、該ベゼルとガラスとを固定するか、または該ケースと耐圧板とを固定することを特徴とする腕時計の製造方法。
  15. 前記ヘッドの厚みが4mm未満であることを特徴とする請求項14項に記載の腕時計の製造方法。
  16. 前記ガラスの厚みが450μm以上550μm以下であることを特徴とする請求項14項に記載の腕時計の製造方法。
  17. 前記耐圧板の厚みが300μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項14項に記載の腕時計の製造方法。
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