JP2017075117A - バリア機能改善剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】天然物由来の化合物の中からバリア機能改善作用を有するものを見出し、それを有効成分とするバリア機能改善剤を提供する。【解決手段】本発明のバリア機能改善剤の有効成分として、アスチルビンを含有させる。アスチルビンは、タイトジャンクション機能強化作用、クローディン−1発現促進作用、オクルディン発現促進作用、およびZO−2発現促進作用からなる群より選択される1または2以上の作用を有することが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、天然物由来の化合物を有効成分として含有するバリア機能改善剤に関するものである。
生体においてその内と外とを隔てる構造の一つに、上皮細胞から構成される上皮組織がある。上皮組織は、物質透過を制御するバリア機能を有しており、これにより生体において外界とは異なる内部環境を作り上げている。このようなバリア機能は、主に細胞間の接着により形成されるが、かかる接着の一つがタイトジャンクション(以下「TJ」と表記することがある。)である。TJは、隣接する上皮細胞同士を密着させるだけでなく、細胞と細胞との隙間をシールすることで物質の透過を制御する細胞間接着構造である。TJを構成しているのは、細胞膜タンパク質であるクローディンやオクルディン、裏打ちタンパク質であるZO−1やZO−2等であり、これらのタンパク質はTJストランドの骨格を構成し、TJのバリア機能を制御すると考えられている(非特許文献1参照)。
クローディンやオクルディンの発現が何らかの原因で減少した場合、TJの機能低下を引き起こす。例えば、消化管においてTJの機能が低下すると、食物アレルゲンや病原性微生物等が体内へ侵入してしまい、炎症性腸疾患や各種感染症などの一因になると考えられる。また、従来は、皮膚のバリア機能は角質層のみが担っていると考えられていたが、近年、表皮顆粒層に存在するTJの構成タンパク質を遺伝子レベルで欠損させると皮膚のバリア機能が崩壊することが見いだされ、TJも皮膚のバリア機能に重要な役割を担うと考えられるようになっている(非特許文献2参照)。ここで、クローディンやオクルディン等の発現が何らかの原因で減少した場合、TJの構造的な破壊が起こり、物質の透過バリアとして機能しなくなることによって、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎や各種感染症などの皮膚症状の一因になると考えられる。
そのため、クローディンやオクルディンの産生促進などを通じてTJの機能を強化することで、上皮組織におけるバリア機能を強化し、消化管においては炎症性腸疾患や食物アレルギー、各種感染症などを予防または改善することができ、一方表皮においては乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎や各種感染症などの皮膚症状を予防または改善することができると考えられる。クローディン産生促進作用およびオクルディン産生促進作用を有するものとして、アスパラサスリネアリス抽出物(特許文献1)等が知られている。
特開2009−256244号公報
日本香粧品科学会誌,2007年,vol.31,pp.296-301 J. Cell Biol.,2002年,vol.156,pp.1099-1111
本発明は、天然物由来の化合物の中からバリア機能改善作用を有するものを見出し、それを有効成分とするバリア機能改善剤を提供することを目的とする。
本発明のバリア機能改善剤は、アスチルビンを有効成分として含有することを特徴とする。前記アスチルビンは、タイトジャンクション機能強化作用、クローディン−1発現促進作用、オクルディン発現促進作用、およびZO−2発現促進作用からなる群より選択される1または2以上の作用を有することが好ましい。
本発明によれば、天然物由来の化合物であるアスチルビンを有効成分として含有させることにより、作用効果に優れたバリア機能改善剤を提供することができる。
TJ構成因子のmRNA発現に対するアスチルビンの影響を定量RT−PCRにて評価した結果を表すグラフである。 TJ構成因子のタンパク質発現に対するアスチルビンの影響をイムノブロット法にて評価した結果を表すグラフである。 炎症性サイトカインによる消化管バリア機能の損傷に対するアスチルビンの効果を経上皮電気抵抗の測定により評価した結果を表すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係るバリア機能改善剤は、アスチルビンを有効成分として含有するものである。
アスチルビン(astilbin)は、タキシフォリン3−ラムノシドとも呼ばれ、下記式で表される化学構造を有するジヒドロフラボノール配糖体である。
Figure 2017075117
アスチルビンは、アスチルビンを含有する植物抽出物から精製・単離することにより製造することができるし、合成により製造することもできる。
アスチルビンを含有する植物抽出物から精製・単離することにより、アスチルビンを製造する場合、このようなアスチルビン含有植物抽出物は、植物の抽出に一般に用いられている方法によって得ることができる。アスチルビンを含有する植物としては、例えば、黄杞(学名:Engelhardtia chrysolepis Hance)、オトギリソウ(学名:Hypericum erectum,Hypericum perforatum)などが挙げられる。
黄杞(Engelhardtia chrysolepis Hance)は、クルミ科黄杞属に属する常緑高木植物である。黄杞は古来より甘茶の一種として飲用されており、安全性の高い植物である。黄杞は、中国の南部から台湾にわたる地域で自生しており、これらの地域から容易に入手可能である。抽出原料として使用し得る黄杞の構成部位としては、枝部、葉部、枝葉部等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
オトギリソウ(Hypericum erectum,Hypericum perforatum)は、オトギリソウ科オトギリソウ属に属する多年生草本であって、本州、四国、九州等に自生しており、これらの地域から容易に入手することが出来る。抽出原料として使用し得るオトギリソウの構成部位としては、例えば、葉部、茎部、根部、花部、地上部又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは地上部又は全草である。
上記植物からの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用することが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を抽出溶媒として使用する場合には、水と低級脂肪族アルコールとの混合比が9:1〜1:9(容量比)であることが好ましく、7:3〜2:8(容量比)であることがさらに好ましい。また、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水と低級脂肪族ケトンとの混合比が9:1〜2:8(容量比)であることが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水と多価アルコールとの混合比が5:5〜1:9(容量比)であることが好ましい。
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
以上のようにして得られた抽出液、当該抽出液の濃縮物又は当該抽出液の乾燥物からアスチルビンを精製・単離する方法は、特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば、抽出物を展開溶媒に溶解し、シリカゲルやアルミナ等の多孔質物質、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やポリメタクリレート等の多孔性樹脂等を用いたカラムクロマトグラフィーに付して、アスチルビンを含む画分を回収する方法等が挙げられる。この場合、展開溶媒は使用する固定相に応じて適宜選択すればよいが、例えば固定相としてシリカゲルを用いた順相クロマトグラフィーにより抽出物を分離する場合、展開溶媒としてはクロロホルム:メタノール=95:5等が挙げられる。さらに、カラムクロマトグラフィーにより得られたアスチルビンを含む画分を、ODSを用いた逆相シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶、液−液向流抽出、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー等の任意の有機化合物精製手段を用いて精製してもよい。
一方、アスチルビンを合成により製造する場合、その方法としては、例えば、鈴木らによる方法(Tetrahedron Lett., 41, 5537−5541 (2000))が挙げられる。
以上のようにして得られるアスチルビンは、優れたバリア機能改善作用を有しているため、バリア機能改善剤の有効成分として用いることができる。本実施形態のバリア機能改善剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品等の幅広い用途に使用することができる。
なお、本実施形態に係るバリア機能改善剤の有効成分として、精製・単離したアスチルビンに替えて、アスチルビンを含有する組成物を用いてもよい。ここで、本実施形態における「アスチルビンを含有する組成物」には、アスチルビンを含有する植物を抽出原料として得られる抽出物等が含まれる。また、「抽出物」には、抽出処理により得られる抽出液、当該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、または当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物が含まれる。
本実施形態に係るバリア機能改善剤の有効成分として、アスチルビンを含有する組成物を用いる場合は、精製してアスチルビンの純度を高めたものを使用することが好ましい。アスチルビンの純度を高めたものを有効成分として使用することによって、より一層作用効果に優れたバリア機能改善剤を得ることができる。
アスチルビンが有するバリア機能改善作用は、例えば、タイトジャンクション機能強化作用、クローディン−1発現促進作用、オクルディン発現促進作用、およびZO−2発現促進作用からなる群より選択される1または2以上の作用に基づいて発揮される。ただし、アスチルビンが有するバリア機能改善作用は、上記作用に基づいて発揮されるバリア機能改善作用に限定されるものではない。
また、アスチルビンは、そのタイトジャンクション機能強化作用、クローディン−1発現促進作用、オクルディン発現促進作用、またはZO−2発現促進作用を利用して、それぞれタイトジャンクション機能強化剤、クローディン−1発現促進剤、オクルディン発現促進剤、またはZO−2発現促進剤の有効成分として使用してもよい。
本実施形態のバリア機能改善剤は、アスチルビンまたはアスチルビン含有組成物のみからなるものでもよいし、アスチルビンを製剤化したものでもよい。
本実施形態のバリア機能改善剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。バリア機能改善剤は、他の組成物(例えば、皮膚化粧料等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
本実施形態のバリア機能改善剤を製剤化した場合、アスチルビンの含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
なお、本実施形態のバリア機能改善剤は、必要に応じて、バリア機能改善作用を有する他の天然抽出物等を、アスチルビンとともに配合して有効成分として用いることができる。
本実施形態のバリア機能改善剤の患者に対する投与方法としては、経口投与、経皮投与等が挙げられ、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよいが、本実施形態のバリア機能改善剤は消化管のバリア機能改善に特に有効であるため、経口投与であることが好ましい。
また、本実施形態のバリア機能改善剤の投与量は、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
本実施形態のバリア機能改善剤は、有効成分であるアスチルビンが有するタイトジャンクション機能強化作用、クローディン−1発現促進作用、オクルディン発現促進作用、およびZO−2発現促進作用からなる群より選択される1または2以上の作用を通じて、消化管におけるバリア機能を改善し、炎症性腸疾患や食物アレルギー、消化管から感染する各種感染症などを予防または改善することができる。ただし、本実施形態のバリア機能改善剤は、これらの用途以外にもタイトジャンクション機能強化作用、クローディン−1発現促進作用、オクルディン発現促進作用、またはZO−2発現促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
また、本実施形態のバリア機能改善剤は、優れたバリア機能改善作用を有するため、例えば、経口用医薬組成物、飲食品等に配合するのに好適である。この場合に、アスチルビンまたはアスチルビン含有組成物をそのまま配合してもよいし、アスチルビンから製剤化したバリア機能改善剤を配合してもよい。
ここで、経口用医薬組成物としては、粘膜修復剤、整腸薬、健胃薬、消化管機能促進薬、消化管機能調整薬等が挙げられる。なお、これらに加えて、バリア機能改善以外の効能効果を標榜する経口用医薬組成物(例えば、抗炎症剤等)に、当該効能効果を補完する目的で、本実施形態のバリア機能改善剤を配合してもよい。
飲食品としては、その区分に制限はなく、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品)等を幅広く含むものである。
また、本実施形態のバリア機能改善剤は、優れたバリア機能改善作用を有するので、これらの作用機構に関する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
なお、本実施形態のバリア機能改善剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば,マウス,ラット,ハムスター,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,サル等)に対して適用することもできる。
以下、製造例および試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
〔製造例〕アスチルビンの製造
乾燥した黄杞葉部100gに10倍量の50容量%エタノールを加え、90℃で2時間還流抽出し、ろ過してろ液を得た。得られた抽出ろ液を減圧濃縮し、黄杞葉部抽出物(20.8g)を得た。得られた黄杞葉部抽出物20.0gに水を加え懸濁し、多孔性樹脂(ダイヤイオンHP−20,三菱化学社製)に付し、水200g、50容量%メタノール200g、メタノール200gの順で溶出させた。次いで、50容量%メタノール200gで溶出させた画分について溶媒留去および凍結乾燥を行い、黄杞葉部抽出物50%メタノール溶出画分(11.3g)を得た。
得られた50%メタノール溶出画分10.0gに対し70容量%メタノールを加え懸濁し、ODS(クロマトレックスODS DM1020T,富士シリシア化学社製)カラムを用いた逆相クロマトグラフィーに付し(移動相 70容量%メタノール,300g)、その溶出液を分画し脱溶媒して、粗精製画分(ジヒドロフラボノール画分,3.5g)を得た。得られた粗精製画分をさらに下記条件のリサイクルHPLCに付して分離・精製し、精製物(2.2g,試料1)を単離した。
<高速液体クロマトグラフィー条件>
使用機器:JAI LC−9201(日本分析工業社製)
固定相:JAIGEL GS310(日本分析工業社製)
カラム径:20mm
カラム長:250mm
移動相:メタノール
移動相流速:0.8mL/min
得られた精製物の比旋光度([α]D)、赤外吸収スペクトル(IR)、ならびに1H−および13C−核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定し、既知サンプルと比較した結果、精製物(試料1)がアスチルビンであることが確認された。
〔試験例1〕経上皮電気抵抗値の測定
製造例で得られたアスチルビン(試料1)について、以下のようにして経上皮電気抵抗(transepithelial electrical resistance,TER)の値を測定した。
ヒト消化管上皮細胞(Caco-2)を、10%FBS含有高グルコース(4.5 g/Lグルコース)DMEM培地を用いてトリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を13.5×104 cells/mLの細胞密度となるように、10%FBS含有高グルコースDMEM培地で希釈した後、12ウェルTranswellインサート(Coster社製)に1ウェルあたり250μLずつ播種し、13〜14日間培養し、Caco-2細胞の単層を形成した。以下の試験例では、このようにして単層培養したCaco-2細胞を用いた。
得られたCaco-2細胞単層培養系について、電気抵抗測定器(MILLIPORE社製,「ERS」)を用い、経上皮電気抵抗(TER)の値を測定した。まず、被験試料を添加していない状態にてTERを測定したところ800〜1000V_cm2であった。次いで、被験試料(試料1,試料濃度は下記表1を参照)を各ウェルに添加して培養を継続し、添加後1、3、6、12および24時間後にTERを測定し、被験試料添加前のTER値を100%としたときの比を算出した。なお、陽性対照としてケルセチンを用いた。結果を表1に示す。
Figure 2017075117
表1に示すように、アスチルビン(試料1)はCaco-2細胞の単層培養系においてTER値を増加させたことから、優れたタイトジャンクション機能強化作用を有することが確認された。
〔試験例2〕タイトジャンクション構成因子のmRNA発現に対する影響の評価
製造例で得られたアスチルビン(試料1)について、タイトジャンクション(TJ)構成因子のmRNA発現に対する影響を、以下のようにして評価した。
試験例1と同様に培養したCaco-2細胞に対し、被験試料(試料1,試料濃度は図1を参照)を各ウェルに添加し、30分間培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat.No.311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、SPTおよび内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。具体的には、cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ社製)を用いて逆転写を行い、得られたcDNAを鋳型として、下記表2に示すプライマーを用い、SYBR Green PCR Master Mix(タカラバイオ社製)により定量PCRを行った。増幅は、95℃10分による変性処理の後、95℃15秒・60℃1分を1サイクルとして40サイクルの条件で行い、検出にはリアルタイムPCR装置Smart CyclerII(Cepheid社製)を用いた。
Figure 2017075117
TJ構成因子のmRNA発現量は、各培養条件にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、ΔΔCt法により定量し、β−アクチンの値で補正した。結果を図1に示す。
図1に示すように、クローディン−1は、アスチルビンの濃度に依存してmRNA発現量が増加した。また、オクルディン、ZO−1およびZO−2は、50μmol/Lのアスチルビンを処理したときにmRNA発現量が増加した。一方、クローディン−4の発現量はアスチルビンの有無で変化が認められなかった。
〔試験例3〕TJ構成因子のタンパク質発現に対する影響の評価
製造例で得られたアスチルビン(試料1)について、TJ構成因子のタンパク質発現に対する影響を以下のようにして評価した。
試験例1と同様に培養したCaco-2細胞に対し、被験試料(試料1,試料濃度は図2を参照)を各ウェルに添加し、3、6および24時間それぞれ培養した。培養後、培地を除去し、0.5mLのPBS(−)緩衝液にて洗浄した後、150μLのM−PER(PIERCE社製)を使用して細胞を溶解し、タンパク質を抽出した。
得られた細胞溶解液をSDS−PAGE(Bio-Rad社製,Mini-Protean 4-20%)にて展開し、PVDF膜(Bio-Rad社製,Trans Blot Pack)に転写した。転写されたPVDF膜をウサギ由来の抗クローディン−1、抗オクルディンおよび抗ZO−2抗体、ならびにマウス由来の抗ZO−1の各抗体(いずれもZymed Laboratories社製)を用いてブロットした。なお、内部標準としてウサギ由来の抗GAPDH抗体(Merck社より購入)を用いた。次いで、抗ウサギIgG−HRP(Jackson Immno Research社製)または抗マウスIgG−HRP(Santa Cruz Biotechnology社製)とECL Plus Western Blotting Detection Reagents(GEヘルスケア社製)とを用いた化学発光法により、画像撮影装置(Bio-Rad社製,ChemiDoc XRS Plus)を用いてバンドを検出し、Image J(NIH製)にて定量的に測定した。結果を図2に示す。
図2に示すように、クローディン−1(図2A)、オクルディン(同B)、およびZO−2(同C)は、アスチルビン処理によりタンパク質量の増加が認められた。
試験例2および3の結果(図1,図2)から、アスチルビンは、優れたクローディン−1発現促進作用、オクルディン発現促進作用、およびZO−2発現促進作用を有すると確認された。
〔試験例4〕炎症性サイトカインによる消化管バリア機能の損傷に対するアスチルビンの効果
腫瘍壊死因子−α(TNF−α)やインターロイキン−6(IL−6)等の炎症性サイトカインは、消化管でのバリア機能に損傷を与えることが知られている。そこで、製造例で得られたアスチルビン(試料1)について、炎症性サイトカインによる消化管バリア機能の損傷に対し、どのように影響するのかを検討した。
試験例1と同様にして得られたCaco-2細胞単層培養系に対し、被験試料(試料1,50μmol/L)、および/または、TNF−α(100ng/mL)を各ウェルに添加して培養し、添加12時間後のTERを、試験例1と同様に測定した。
また、IL−6(100ng/mL)についても、TNF−αと同様に試験を行い、TERを測定した。
結果を図3に示す。
図3に示すように、TNF−α(図3A)およびIL−6(同B)によるTER値の減少は、アスチルビン(試料1)の同時処理により回復したことから、炎症性サイトカインによる消化管バリア機能の損傷をアスチルビンが回復することが明らかとなった。
本発明のバリア機能改善剤は、消化管におけるバリア機能の改善(炎症性腸疾患や食物アレルギー、消化管から感染する各種感染症等の予防または改善)などに大きく貢献できる。

Claims (2)

  1. アスチルビンを有効成分として含有することを特徴とするバリア機能改善剤。
  2. 前記アスチルビンが、タイトジャンクション機能強化作用、クローディン−1発現促進作用、オクルディン発現促進作用、およびZO−2発現促進作用からなる群より選択される1または2以上の作用を有することを特徴とする請求項1に記載のバリア機能改善剤。
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