JP2017073935A - 消費電力量予測方法、装置及びプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】圧延工場における圧延機の電力系統の消費電力量、更には圧延工場の消費電力量を高精度に予測できるようにする。
【解決手段】消費電力量予測装置において、仕上ミルモータ消費電力量予測部101は、被圧延材である鋼材毎に、仕上ミルモータの消費電力量予測値を、鋼材情報を用いて、非線形関数で表わされるミルモータ消費電力量予測モデルにより求める。加算器102、200は、所定時間内に圧延される鋼材について、鋼材情報の総和と、ミルモータの消費電力量予測値の総和とを求める。仕上主機系統消費電力量予測部103は、仕上圧延機4の電力系統の所定時間の消費電力量予測値を、鋼材情報の総和と、仕上ミルモータの消費電力量予測値の総和とを用いて、仕上主機系統消費電力量予測モデルにより求める。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱延工場や冷延工場等の圧延工場における圧延機の電力系統の消費電力量、更には圧延工場の消費電力量を予測するのに利用して好適な消費電力量予測方法、装置及びプログラムに関する。
製鉄所のように大量の電力を消費する事業所では、電力会社と所定時間(例えば30分や60分)当たりの消費電力量の上限値を契約で取り決めている。この上限値は契約電力量と呼ばれ、契約電力量に基づき電気の基本料金(電気の使用量に関わらず支払わなければならない金額)が定まる。もし、消費電力量が現在設定されている契約電力量を上回ってしまった場合、その後1年間、契約電力量はその時の最大消費量となるため、これに連動して基本料金も上がってしまう。
このように、消費電力量が1時間でも契約電力量を超えると、1年間の基本料金が上がってしまうため、製鉄所では全工場の稼働状態を常に観察し、消費電力量を予測して、契約電力量を超えると予想されるときには、一部の工場の生産を一時的に停止する措置が行われる。これを電力制限と呼んでいるが、消費電力量の予測精度が低いと、無駄に工場を止めることになるため、消費電力量を高精度に予測し、必要最低限の時間のみ工場を停止することが望ましい。
製鉄所全体の消費電力のうち、熱延工場や厚板工場等の圧延工場の消費量が大きく、かつ、被圧延材に依って消費量が大きく異なる。したがって、圧延工場の消費電力量を高精度に予測することが、製鉄所全体の消費電力量の把握には重要である。
この種の技術として、特許文献1には、圧延工程の使用電力予測方法が開示されている。特許文献1では、スラブ1本毎の圧延電力を圧延加工量に基づいて予測し、所定時間内に圧延されるスラブと、このスラブを圧延するのに要する電力とを積算することにより使用電力を予測する。
また、特許文献2には、圧延工場における使用電力量の予測方法が開示されている。特許文献2では、予測すべき時間帯における被圧延材を、炭素含有量が0.05%以下、0.06〜0.15%、0.16%以上の3区分に分類し、分類毎に圧延加工予定量を求める。また、予測すべき時間帯における被圧延材の本数、予測すべき時間帯における各プロセス(圧延プロセス、精整プロセス及び酸洗プロセス)の稼動状況に応じた0〜1の数値を求める。そして、これらを入力として、予測すべき時間帯における使用電力量をニューラルネットワークによって算出する。
特開昭64−15201号公報 特開平6−262223号公報
しかしながら、特許文献1の手法は、スラブ1本毎の圧延電力を圧延加工量に基づいて予測するものであり、被圧延材の製造仕様等の情報を考慮していないため、消費電力量の予測精度が低くなる。
また、特許文献2の手法は、炭素含有量に応じて分類した圧延加工予定量等の情報を所定時間単位の値に集約してから所定時間の消費電力量を予測する。ニューラルネットワークは非線形モデルであるが、圧延加工予定量等の情報の総和と消費電力量との非線形しか考慮することができない。そのため、原理的に、被圧延材毎の圧延加工予定量等の情報と消費電力量との間の非線形性の影響を考慮することができず、消費電力量の予測精度が低くなる。例えば圧延加工予定量が20と40の2本スラブと、圧延加工予定量が共に30の2本のスラブとでは、消費電力量の予測値は同じになってしまう。
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、圧延工場における圧延機の電力系統の消費電力量、更には圧延工場の消費電力量を高精度に予測できるようにすることを目的とする。
上述した課題を解決するための本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 圧延機の電力系統の消費電力量を予測する消費電力量予測方法であって、
被圧延材毎に、圧延に必要となるミルモータの消費電力量予測値を、被圧延材情報を用いて、非線形モデルであるミルモータ消費電力量予測モデルにより求める第1の消費電力量予測ステップと、
所定時間内に圧延される被圧延材について、被圧延材情報の総和と、前記第1の消費電力量予測ステップで求めたミルモータの消費電力量予測値の総和とを求める総和算出ステップと、
前記圧延機の電力系統の前記所定時間の消費電力量予測値を、前記総和算出ステップで求めた被圧延材情報の総和と、前記総和算出ステップで求めたミルモータの消費電力量予測値の総和とを用いて、圧延機の電力系統消費電力量予測モデルにより求める第2の消費電力量予測ステップとを有することを特徴とする消費電力量予測方法。
[2] 前記ミルモータ消費電力量予測モデルをランダムフォレストモデルとすることを特徴とする[1]に記載の消費電力量予測方法。
[3] 圧延機と、他の設備とを備える圧延工場の消費電力量を予測する消費電力量予測方法であって、
[1]又は[2]に記載の消費電力量予測方法により求めた前記圧延機の電力系統の前記所定時間の消費電力量予測値と、所定の消費電力量予測方法により求めた前記他の設備の電力系統それぞれの前記所定時間の消費電力量予測値との総和を、前記圧延工場の前記所定時間の消費電力量予測値とすることを特徴とする消費電力量予測方法。
[4] 圧延機の電力系統の消費電力量を予測する消費電力量予測装置であって、
被圧延材毎に、圧延に必要となるミルモータの消費電力量予測値を、被圧延材情報を用いて、非線形モデルであるミルモータ消費電力量予測モデルにより求める第1の消費電力量予測手段と、
所定時間内に圧延される被圧延材について、被圧延材情報の総和を求める第1の総和算出手段と、
前記所定時間内に圧延される被圧延材について、前記第1の消費電力量予測手段で求めたミルモータの消費電力量予測値の総和を求める第2の総和算出手段と、
前記圧延機の電力系統の前記所定時間の消費電力量予測値を、前記第1の総和算出手段で求めた被圧延材情報の総和と、前記第2の総和算出手段で求めたミルモータの消費電力量予測値の総和とを用いて、圧延機の電力系統消費電力量予測モデルにより求める第2の消費電力量予測手段とを備えたことを特徴とする消費電力量予測装置。
[5] 圧延機の電力系統の消費電力量を予測するためのプログラムであって、
被圧延材毎に、圧延に必要となるミルモータの消費電力量予測値を、被圧延材情報を用いて、非線形モデルであるミルモータ消費電力量予測モデルにより求める第1の消費電力量予測処理と、
所定時間内に圧延される被圧延材について、被圧延材情報の総和と、前記第1の消費電力量予測処理で求めたミルモータの消費電力量予測値の総和とを求める総和算出処理と、
前記圧延機の電力系統の前記所定時間の消費電力量予測値を、前記総和算出処理で求めた被圧延材情報の総和と、前記総和算出処理で求めたミルモータの消費電力量予測値の総和とを用いて、圧延機の電力系統消費電力量予測モデルにより求める第2の消費電力量予測処理とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
本発明によれば、被圧延材情報とミルモータの消費電力量との非線形関係を反映させることができるので、圧延工場における圧延機の電力系統の消費電力量、更には圧延工場の消費電力量を高精度に予測することができる。
実施形態に係る消費電力量予測装置の機能構成を示す図である。 熱延工場な典型的な設備配置の例を示す図である。 鋼材毎の仕上ミルモータの消費電力量予測値を求める際に、線形モデル及び非線形モデルを適用した場合の結果を示す特性図である。 仕上ミルモータの1時間の消費電力量を予測する際に、鋼材情報の総和を入力変数とするモデルを用いる場合と、本発明のように仕上ミルモータ消費電力量予測モデルにより鋼材毎の消費電力量予測値を求めて、その総和をとることにより予測する場合との結果を示す特性図である。 実施例における本発明による予測手法での結果と、従来の予測手法での結果とを示す特性図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
本実施形態では、圧延工場の中でも特に消費電力の多い熱延工場を対象として説明する。
図2に、熱延工場な典型的な設備配置の例を示す。熱延工場は、スラブと呼ばれる鋼片を被圧延材として、所定の幅及び厚みに加工する工場である。具体的には、スラブを加熱炉1で所定の温度まで加熱し、サイジングプレス2で幅方向に成形する。次に、サイジングプレス2で成形したスラブを粗圧延機3、仕上圧延機4により所定の寸法となるよう圧延する。そして、圧延後の鋼板をROT5と呼ばれる水冷装置により所定の組織となるように制御し、コイラ6と呼ばれる設備でコイル状に巻き取る。また、熱延工場には、鋼板の表面検査等を行う精整設備7も存在する。なお、スラブや鋼板(以下、鋼材と呼ぶ)の表面に発生するスケールが加工により表面に食い込むことを防ぐため、加熱炉1の出側や、粗圧延機3の入側、仕上圧延機4の入側にデスケーラ8と呼ばれるスケールを除去する装置が設置される。
このようにした熱延工場の設備の中で、仕上圧延機4の電力消費量、特にミルモータ(以下、仕上ミルモータと呼ぶ)の電力消費量が最も多く、熱延工場全体の約4割の電力を消費する。
図1に、本実施形態に係る消費電力量予測装置の機能構成を示す。本実施形態では、図2で説明した熱延工場の所定時間の消費電力量を予測する例を説明する。通常、熱延工場では、設備毎に電力系統を分けて電力が供給される。消費電力量予測装置では、以下に詳述するように、熱延工場の設備の電力系統のそれぞれについて所定時間の消費電力量予測値を求め、その総和を熱延工場の所定時間の消費電力量予測値とする。所定時間は、例えば電力会社と契約している消費電力量の上限値を定める時間(例えば30分や60分)とすればよい。
100は仕上圧延機の消費電力量予測部であり、仕上圧延機4の電力系統(以下、仕上主機系統とも称する)の所定時間の消費電力量を予測する。
仕上圧延機の消費電力量予測部100は、仕上ミルモータ消費電力量予測部101と、加算器102と、仕上主機系統消費電力量予測部103とを備える。
仕上ミルモータ消費電力量予測部101は、被圧延材である鋼材毎に、圧延に必要となる仕上ミルモータの消費電力量予測値waを、式(1a)に示すように、鋼材の製造仕様等の情報(以下、鋼材情報と呼ぶ)を用いて、仕上ミルモータ消費電力量予測モデルにより求める。仕上ミルモータ消費電力量予測部101が、本発明でいう第1の消費電力量予測手段の例である。
仕上ミルモータ消費電力量予測モデルは非線形モデルであり、fa(・)は鋼材情報と仕上ミルモータの消費電力量との関係を表わす非線形関数である。非線形モデルとしては、例えばランダムフォレストモデルが挙げられるが、ニューラルネットワークやカーネル法を適用したものでもよい。
また、本実施形態では、鋼材情報として、サイズ(設定板厚、設定板幅等)、成分(例えばカーボン、シリコン、マンガン等の含有量)、制御圧延の有無を挙げるが、それらに限定されるものではない。例えば鋼材の重量、鋼材の強度等を含めるようにしてもよい。
なお、仕上圧延機が複数のスタンドにより構成される場合、スタンド毎に予測モデルを構築してもよいし、複数スタンドまとめて1つの仕上圧延機とみなして予測モデルを構築してもよい。
仕上ミルモータの消費電力量予測値wa
=fa(サイズ、成分、・・・、制御圧延有無)・・・(1a)
加算器102は、所定時間内に圧延される鋼材について、式(2a)に示すように、仕上ミルモータ消費電力量予測部101で求めた仕上ミルモータの消費電力量予測値waの総和を求める。加算器102が、本発明でいう第2の総和算出手段の例である。
仕上ミルモータの消費電力量予測値waの総和=Σwa…(2a)
ここで、200は加算器であり、所定時間内に圧延される鋼材について、式(3−1)〜(3−m)に示すように、鋼材情報の総和を求める。加算器200が、本発明でいう第1の総和算出手段の例である。
設定板厚の総和=Σ設定板厚…(3−1)
設定板幅の総和=Σ設定板幅…(3−2)
実績X成分の総和=Σ実績X成分…(3−3)
・・・
制御圧延有無の総和=Σ制御圧延有無…(3−m)
仕上主機系統消費電力量予測部103は、仕上圧延機4の電力系統の所定時間の消費電力量予測値(仕上主機系統の消費電力量予測値)WAを、式(4a)に示すように、加算器200で求めた鋼材情報の総和と、加算器102で求めた仕上ミルモータの消費電力量予測値waの総和とを用いて、仕上主機系統消費電力量予測モデルにより求める。仕上主機系統消費電力量予測部103が、本発明でいう第2の消費電力量予測手段の例である。
なお、仕上主機系統消費電力量予測モデルは重回帰のような線形モデルでも、ニューラルネットワークのような非線形モデルでもよい。本実施形態ではga(・)は非線形関数で表わされる。
仕上主機系統の消費電力量予測値WA
=ga(仕上ミルモータの消費電力量予測値waの総和、設定板厚の総和、設定板幅の総和、実績X成分の総和、・・・、制御圧延有無の総和)・・・(4a)
300は粗圧延機の消費電力量予測部であり、粗圧延機3の電力系統(以下、粗主機系統とも称する)の所定時間の消費電力量を予測する。
粗圧延機の消費電力量予測部300は、仕上圧延機の消費電力量予測部100と同様に、粗ミルモータ消費電力量予測部301と、加算器302と、粗主機系統消費電力量予測部303とを備える。
粗ミルモータ消費電力量予測部301は、鋼材毎に、圧延に必要となる粗ミルモータの消費電力量予測値wbを、式(1b)に示すように、鋼材情報を用いて、粗ミルモータ消費電力量予測モデルにより求める。
粗ミルモータ消費電力量予測モデルは非線形モデルであり、fb(・)は鋼材情報と粗ミルモータの消費電力量との関係を表わす非線形関数である。非線形モデルとしては、例えばランダムフォレストモデルが挙げられるが、ニューラルネットワークやカーネル法を適用したものでもよい。
粗ミルモータの消費電力量予測値wb
=fb(サイズ、成分、・・・、制御圧延有無)・・・(1b)
加算器302は、所定時間内に圧延される鋼材について、式(2b)に示すように、粗ミルモータ消費電力量予測部301で求めた粗ミルモータの消費電力量予測値wbの総和を求める。
粗ミルモータの消費電力量予測値wbの総和=Σwb…(2b)
粗主機系統消費電力量予測部303は、粗圧延機3の電力系統の所定時間の消費電力量予測値(粗主機系統の消費電力量予測値)WBを、式(4b)に示すように、加算器200で求めた鋼材情報の総和と、加算器302で求めた粗ミルモータの消費電力量予測値wbの総和とを用いて、粗主機系統消費電力量予測モデルにより求める。
なお、粗主機系統消費電力量予測モデルは重回帰のような線形モデルでも、ニューラルネットワークのような非線形モデルでもよい。本実施形態ではgb(・)は非線形関数で表わされる。
粗主機系統の消費電力量予測値WB
=gb(粗ミルモータの消費電力量予測値wbの総和、設定板厚の総和、設定板幅の総和、実績X成分の総和、・・・、制御圧延有無の総和)・・・(4b)
400は加熱炉の消費電力量予測部であり、加熱炉1の電力系統(以下、加熱炉系統とも称する)の所定時間の消費電力量を予測する。
加熱炉の消費電力量予測部400は、加熱炉系統消費電力量予測部401を備える。
加熱炉系統消費電力量予測部401は、加熱炉1の電力系統の所定時間の消費電力量予測値(加熱炉系統の消費電力量予測値)WCを、式(4c)に示すように、加算器200で求めた鋼材情報の総和を用いて、加熱炉系統消費電力量予測モデルにより求める。
なお、加熱炉系統消費電力量予測モデルは重回帰のような線形モデルでも、ニューラルネットワークのような非線形モデルでもよい。本実施形態ではgc(・)は非線形関数で表わされる。
加熱炉系統の消費電力量予測値WC
=gc(設定板厚の総和、設定板幅の総和、実績X成分の総和、・・・、制御圧延有無の総和)・・・(4c)
サイジングプレス2、ROT5、コイラ6、精整設備7、デスケ8といった他の設備についても消費電力量予測部が構成されており、加熱炉の消費電力量予測部400と同様に、各設備の電力系統の所定時間の消費電力量を予測する。
例えば500は精整系統の消費電力量予測部であり、精整設備7やコイラ6を含む電力系統(以下、精整系統とも称する)の所定時間の消費電力量を予測する。
精整系統の消費電力量予測部500は、精整系統消費電力量予測部501を備える。
精整系統消費電力量予測部501は、精整設備7の電力系統の所定時間の消費電力量予測値(精整系統の消費電力量予測値)WMを、式(4m)に示すように、加算器200で求めた鋼材情報の総和を用いて、精整系統消費電力量予測モデルにより予測する。
なお、精整系統消費電力量予測モデルは重回帰のような線形モデルでも、ニューラルネットワークのような非線形モデルでもよい。本実施形態ではgm(・)は非線形関数で表わされる。
精整系統の消費電力量予測値WM
=gm(設定板厚の総和、設定板幅の総和、実績X成分の総和、・・・、制御圧延有無の総和)・・・(4m)
また、電力系統は熱延工場毎に異なる構成であり、上記以外にも例えばサイジングプレス7等を含む粗補機系統や、ROT5を含む冷却設備系統、デスケ8を含むデスケ系統等が存在し、加熱炉系統消費電力量予測部400や精整系統電力消費量予測部500と同様に、それぞれの電力系統の消費電力予測部を構築することができる。
600は加算器であり、各消費電力量予測部100、300、400、・・・で求めた消費電力量予測値の総和を求める。ここで得られる設備毎の消費電力量予測値の総和が、熱延工場の所定時間の消費電力量予測値となる。
以上のように、消費電力の多い仕上圧延機4の所定時間の消費電力量を予測する際に、鋼材一本単位で非線形モデル(仕上ミルモータ消費電力量予測モデル)により仕上ミルモータの消費電力量予測値を求める。そして、所定時間内に圧延される鋼材について、鋼材情報の総和と、鋼材毎の仕上ミルモータの消費電力量予測値の総和とを求め、それらを入力変数として、仕上圧延機4の電力系統の所定時間の消費電力量予測値を求める。粗圧延機3についても同様の手法を用いる。
このように2段階の予測モデルとし、鋼材毎のミルモータの消費電力量予測値の総和を入力変数とすることにより、鋼材毎の鋼材情報とミルモータの消費電力量との非線形関係を反映させることができるので、圧延機の所定時間の消費電力量を高精度に予測することができる。
鋼材毎のミルモータの消費電力量予測値の総和を入力変数としない場合、鋼材個々の鋼材情報が総和として集約された後、圧延機の消費電力量の予測に用いられる。この場合に、鋼材情報とミルモータの消費電力量とに非線形関係があると、その非線形関係が圧延機の消費電力量の予測に反映できない。例えば設定厚みが3mmと5mmの2本の鋼材のミルモータの消費電力量の総和と、設定厚みが共に4mmの2本の鋼材のミルモータの消費電力量の総和とが異なったとしても、設定厚みの総和は共に8mmとなるため、両者が圧延機の消費電力量の予測では区別がつかず、消費電力量予測値が同じになってしまい、予測誤差を生じてしまうことになる。
また、鋼材毎のミルモータの消費電力量予測値の総和を入力変数とすることにより、次の観点からも、圧延機の所定時間の消費電力量を高精度に予測することができる。
例えば仕上主機系統は、仕上ミルモータの消費電力量を含んでおり、また、仕上主機系統に含まれる仕上ミルモータ以外の機器(補機)の消費電力量も、概ね仕上ミルモータの消費電力量と相関していると考えられる。例えば仕上ミルモータの消費電力量は鋼材のサイズや重量に依存して大きくなるが、スタンド間の冷却水の水量は鋼材の断面積に比例するため、冷却水を供給するためのポンプの消費電力量と、仕上ミルモータの消費電力量とには強い相関がある。他の補機も鋼材のサイズや重量に依存して消費電力量が多くなるため、仕上ミルモータの消費電力量との相関が高い。このように補機の消費電力量を予測する際にも、相関の高い仕上ミルモータの消費電力量予測値を入力変数に加えることで、予測精度が向上する。
なお、図1の例では、鋼材毎の仕上ミルモータの消費電力量予測値waの総和を、仕上主機系統消費電力量予測モデルの入力変数(説明変数)としてのみ用いたが、物理的見地から必要と判断される場合、他の設備の電力系統の消費電力量予測モデルの入力変数として用いるようにしてもよい。鋼材毎の粗ミルモータの消費電力量予測値wbの総和についても同様である。
例えば鋼材毎の仕上ミルモータの消費電力量予測値waの総和を、粗主機系統消費電力量予測モデルの入力変数として用いると、下式(4b)´のようになる。
粗主機系統の消費電力量予測値WB
=gb´(仕上ミルモータの消費電力量予測値waの総和、粗ミルモータの消費電力量予測値wbの総和、設定板厚の総和、設定板幅の総和、実績X成分の総和、・・・、制御圧延有無の総和)・・・(4b)´
また、例えば鋼材毎の仕上ミルモータの消費電力量予測値waの総和、及び鋼材毎の粗ミルモータの消費電力量予測値wbの総和を、加熱炉系統消費電力量予測モデルの入力変数として用いると、下式(4c)´のようになる。
加熱炉系統の消費電力量予測値WC
=gc´(仕上ミルモータの消費電力量予測値waの総和、粗ミルモータの消費電力量予測値wbの総和、設定板厚の総和、設定板幅の総和、実績X成分の総和、・・・、制御圧延有無の総和)・・・(4c)´
ただし、仕上ミルモータや粗ミルモータの消費電力量と相関の低い電力系統(例えば精整系統)において、鋼材毎の仕上ミルモータの消費電力量や粗ミルモータの消費電力量予測値の総和を入力変数に加えても効果は低い。
図3は、鋼材毎の仕上ミルモータの消費電力量予測値を求める際に、線形モデル及び非線形モデルを適用した場合の結果を示す。
4カ月間の熱延工場の操業実績データ(鋼材64937本)から予測モデルを作成し、2ヶ月間の操業実績データ(鋼材17430本)で精度評価を行った。図3は、2ヶ月間の操業実績データを用いて計算した予測値と実績値とを示す散布図である。
7スタンドからなる仕上圧延機の仕上ミルモータにおいて、鋼材毎の仕上ミルモータの消費電力量予測値を求める際に、図3(a)は仕上ミルモータ消費電力量予測モデルを線形モデル(重回帰モデル)としたケースを示し、図3(b)は仕上ミルモータ消費電力量予測モデルを非線形モデル(ランダムフォレストモデル)としたケースを示す。なお、図3において、仕上ミルモータの消費電力量は1時間当たりの熱延工場の平均電力量を100%としてスケーリングしている。
図3に示すように、線形モデルと非線形モデルとでは予測精度が大きく異なるため、鋼材毎の仕上ミルモータの消費電力量は、非線形モデルで予測すべき対象であることが確認できる。
なお、重回帰モデルとランダムフォレストモデルは、式(5a)、(5b)のように、電力原単位を予測するモデルとした。p(・)は電力原単位を出力する関数であり、重回帰モデルは線形式、ランダムフォレストモデルは500個の決定木から構成されるモデルとした。
電力原単位(kWh/t)=p(設定板厚、設定板幅、設定板長、設定重量、設定引張強度、実績X成分、制御圧延有無)・・・(5a)
仕上ミルモータ消費電力量(kWh)=電力原単位(kWh/t)×設定重量(t)・・・(5b)
図4は、仕上ミルモータの1時間の消費電力量を予測する際に、鋼材情報の総和を入力変数とするモデルを用いる場合と、本発明のように仕上ミルモータ消費電力量予測モデルにより鋼材毎の消費電力量予測値を求めて、その総和をとることにより予測する場合との結果を示す。なお、対象とする仕上圧延機、図4のスケーリング、仕上ミルモータ消費電力量予測モデルとするランダムフォレストモデルについては図3で説明したとおりであり、ここではその説明は省略する。
図4(a)は、式(5a)において、鋼材毎の鋼材情報を入力変数とする代わりに、それぞれの鋼材情報の1時間の総和を入力変数として、1時間内に圧延される鋼材の消費電力量を予測したケースを示す。ここで用いるモデルは、500個の決定木から構成されるランダムフォレストモデルとした。
図4(b)は、同じく式(5a)に示す鋼材情報を入力変数として、本発明のように仕上ミルモータ消費電力量予測モデルにより1時間内に圧延される鋼材毎に消費電力量を予測して、その総和を求めたケースを示す。
図4に示すように、鋼材毎に消費電力量を予測する手法により、仕上ミルモータの1時間の消費電力量の予測精度R2を0.9603%から0.9934%へ向上させることができる。
図5に、ある熱延工場の7スタンドからなる仕上主機系統の1時間の消費電力量の予測について、本発明による予測手法の結果と、従来の予測手法の結果を示す。なお、対象とする仕上圧延機、図5のスケーリング、仕上ミルモータ消費電力量予測モデルとするランダムフォレストモデルについては図3で説明したとおりであり、ここではその説明は省略する。
図5(a)は、従来の予測手法、すなわち仕上ミルモータ消費電力量予測モデルを用いずに、鋼材情報の総和を入力変数として、仕上主機系統消費電力量予測モデルを用いて消費電力量を予測したケースを示す。図1を参照していえば、加算器200で求めた鋼材情報の総和だけが、仕上主機系統消費電力量予測部103への入力となるケースである。
図5(b)は、本発明による予測手法、すなわち仕上ミルモータ消費電力量予測モデルを用い、鋼材情報の総和及び鋼材毎の仕上ミルモータの消費電力量の総和を入力変数として、仕上主機系統消費電力量予測モデルを用いて消費電力量を予測したケースを示す。
仕上主機系統消費電力量予測モデルは、式(5a)に示す鋼材情報それぞれの総和を入力変数として、仕上主機系統の所定時間の消費電力量予測値を求める重回帰モデルとし、4カ月間の操業実績データ(2372個)から作成した。
図5は、2ヶ月間の1時間毎の仕上主機系統の消費電力量(638個)に対して、予測値と実績値とを示す散布図である。図5に示すように、本発明による予測方法を用いることで、予測精度R2を0.9642から0.9828へ向上させることができる。
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
本発明を適用した消費電力量予測装置は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ装置により実現され、CPUがROMに記憶するプログラムをRAMに展開して実行することにより、図1に示した各部の機能が実現される。
また、本発明は、本発明の消費電力量予測装置としての機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
100:仕上圧延機の消費電力量予測部
101:仕上ミルモータ消費電力量予測部
102:加算器
103:仕上主機系統消費電力量予測部
200:加算器
300:粗圧延機の消費電力量予測部
301:粗ミルモータ消費電力量予測部
302:加算器
303:粗主機系統消費電力量予測部

Claims (5)

  1. 圧延機の電力系統の消費電力量を予測する消費電力量予測方法であって、
    被圧延材毎に、圧延に必要となるミルモータの消費電力量予測値を、被圧延材情報を用いて、非線形モデルであるミルモータ消費電力量予測モデルにより求める第1の消費電力量予測ステップと、
    所定時間内に圧延される被圧延材について、被圧延材情報の総和と、前記第1の消費電力量予測ステップで求めたミルモータの消費電力量予測値の総和とを求める総和算出ステップと、
    前記圧延機の電力系統の前記所定時間の消費電力量予測値を、前記総和算出ステップで求めた被圧延材情報の総和と、前記総和算出ステップで求めたミルモータの消費電力量予測値の総和とを用いて、圧延機の電力系統消費電力量予測モデルにより求める第2の消費電力量予測ステップとを有することを特徴とする消費電力量予測方法。
  2. 前記ミルモータ消費電力量予測モデルをランダムフォレストモデルとすることを特徴とする請求項1に記載の消費電力量予測方法。
  3. 圧延機と、他の設備とを備える圧延工場の消費電力量を予測する消費電力量予測方法であって、
    請求項1又は2に記載の消費電力量予測方法により求めた前記圧延機の電力系統の前記所定時間の消費電力量予測値と、所定の消費電力量予測方法により求めた前記他の設備の電力系統それぞれの前記所定時間の消費電力量予測値との総和を、前記圧延工場の前記所定時間の消費電力量予測値とすることを特徴とする消費電力量予測方法。
  4. 圧延機の電力系統の消費電力量を予測する消費電力量予測装置であって、
    被圧延材毎に、圧延に必要となるミルモータの消費電力量予測値を、被圧延材情報を用いて、非線形モデルであるミルモータ消費電力量予測モデルにより求める第1の消費電力量予測手段と、
    所定時間内に圧延される被圧延材について、被圧延材情報の総和を求める第1の総和算出手段と、
    前記所定時間内に圧延される被圧延材について、前記第1の消費電力量予測手段で求めたミルモータの消費電力量予測値の総和を求める第2の総和算出手段と、
    前記圧延機の電力系統の前記所定時間の消費電力量予測値を、前記第1の総和算出手段で求めた被圧延材情報の総和と、前記第2の総和算出手段で求めたミルモータの消費電力量予測値の総和とを用いて、圧延機の電力系統消費電力量予測モデルにより求める第2の消費電力量予測手段とを備えたことを特徴とする消費電力量予測装置。
  5. 圧延機の電力系統の消費電力量を予測するためのプログラムであって、
    被圧延材毎に、圧延に必要となるミルモータの消費電力量予測値を、被圧延材情報を用いて、非線形モデルであるミルモータ消費電力量予測モデルにより求める第1の消費電力量予測処理と、
    所定時間内に圧延される被圧延材について、被圧延材情報の総和と、前記第1の消費電力量予測処理で求めたミルモータの消費電力量予測値の総和とを求める総和算出処理と、
    前記圧延機の電力系統の前記所定時間の消費電力量予測値を、前記総和算出処理で求めた被圧延材情報の総和と、前記総和算出処理で求めたミルモータの消費電力量予測値の総和とを用いて、圧延機の電力系統消費電力量予測モデルにより求める第2の消費電力量予測処理とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
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