JP2017073423A - 導電物被覆アルミニウム材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
1.アルミニウム材と、
前記アルミニウム材の表面の一部又は全部の領域に形成された炭素含有層と、
前記炭素含有層の表面上に形成された導電性高分子層とを有し、
前記アルミニウム材と前記炭素含有層との間の少なくとも一部の領域に、アルミニウム元素及び炭素元素を含む介在層を備える、導電物被覆アルミニウム材。
2.前記導電性高分子層を形成する導電性高分子単量体が、ピロール、チオフェン、アニリン、フェニレン、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする項1に記載の導電物被覆アルミニウム材。
3.前記アルミニウム材の表面の一部の領域に形成された炭素含有層と、前記炭素含有層の表面上に形成された導電性高分子層を有し、前記アルミニウム材の表面の前記炭素含有層が形成されていない領域に、絶縁体皮膜層を有する、項1又は2に記載の導電物被覆アルミニウム材。
4.前記絶縁体皮膜層は、アルミニウムの酸化物及び/又はアルミニウムの水酸化物を含む、項3に記載の導電物被覆アルミニウム材。
5.前記導電物被覆アルミニウム材は、電極構造体を構成するために用いられる、項1〜4のいずれかに記載の導電物被覆アルミニウム材。
6.前記電極構造体は、キャパシタの電極である、項5に記載の導電物被覆アルミニウム材。
7.前記電極構造体は、電池の電極である、項5に記載の導電物被覆アルミニウム材。
8.導電物被覆アルミニウム材の製造方法であって、下記工程1〜3を有することを特徴とする製造方法;
(1)アルミニウム材の表面の一部又は全部の領域に炭素含有層形成用組成物層を形成する工程1、
(2)前記炭素含有層形成用組成物層が形成されたアルミニウム材を、炭化水素含有物質を含む空間に配置して加熱することにより、炭素含有層を前記アルミニウム材の表面に形成し、且つ、アルミニウム元素及び炭素元素を含む介在層を前記アルミニウム材と前記炭素含有層との間に形成する工程2、
(3)前記炭素含有層の上に、電解重合により導電性高分子層を形成する工程3。
9.前記工程1又は2の後に、前記アルミニウム材の表面の前記炭素含有層形成用組成物層又は前記炭素含有層が形成されていない領域に、絶縁体皮膜層を形成する絶縁体皮膜層形成工程を有する項8に記載の導電物被覆アルミニウム材の製造方法。
本発明の導電物被覆アルミニウム材は、アルミニウム材と、前記アルミニウム材の表面の一部又は全部の領域に形成された炭素含有層と、前記炭素含有層の表面上に形成された導電性高分子層とを有し、前記アルミニウム材と前記炭素含有層との間の少なくとも一部の領域に、アルミニウム元素及び炭素元素を含む介在層を備えている。
アルミニウム材としては、特に限定されず、純アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることができる。このようなアルミニウム材は、アルミニウム純度が「JIS H2111:2009」に記載された方法に準じて測定された値で98質量%以上のものが好ましい。本発明で用いられるアルミニウム材は、その組成として、鉛(Pb)、珪素(Si)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ガリウム(Ga)、ニッケル(Ni)およびホウ素(B)の少なくとも1種の合金元素を必要範囲内において添加したアルミニウム合金、または、上記の不可避的不純物元素の含有量を限定したアルミニウムも含む。
炭素含有層としては、炭素を含む層であれば特に限定されない。炭素含有層を形成する化合物としては、例えば、後述する樹脂等の熱分解により生成する炭素前駆体、炭素単体、炭素を含む化合物等が挙げられる。また、それらの形態は特に限定されず、緻密であっても良く、粒子状、繊維状、ウイスカー状等の形状をとっていても良い。
介在層は、アルミニウム材と炭素含有層との間の少なくとも一部の領域に形成される、アルミニウム元素及び炭素元素を含む層である。介在層が存在することにより、アルミニウム材と炭素含有層とが強固に密着するので、これらの層が層間密着性に優れている。炭素含有層は、アルミニウム材に直接密着している部分も存在すれば、介在層3を介してアルミニウム材に密着している部分が存在していてもよい。
導電性高分子層は、炭素含有層の表面上に形成される層である。導電性高分子層を形成するために用いられる単量体(導電性高分子単量体)としては、電解重合法に用いられる電解液に含まれるものであり、電解重合法における酸化により、高分子化して導電性を示す化合物であれば特に限定されるものではない。このような単量体としては、例えば、ピロール、チオフェン、アニリン、フェニレン等の環式化合物、及びそのアルキル基、オキシアルキル基等の誘導体が挙げられる。その中でもピロール、チオフェン、アニリン及びその誘導体が好ましい。特にアニリンやその誘導体を含む導電性高分子の場合、製造が容易であり、導電性高分子として電気化学的に安定であるため、より好ましい。上記単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。
本発明の導電物被覆アルミニウム材は、電極構造体を構成するために用いられることが好ましい。また、上記電極構造体は、キャパシタの電極を構成するために用いられることが好ましい。これにより、キャパシタの容量特性、内部抵抗特性、充放電特性、寿命を高めることができる。キャパシタとしては、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等が例示される。
本発明の導電物被覆アルミニウム材の製造方法は、下記工程1〜3を有する製造方法である。
(1)アルミニウム材の表面の一部又は全部の領域に炭素含有層形成用組成物層を形成する工程1、
(2)前記炭素含有層形成用組成物層が形成されたアルミニウム材を、炭化水素含有物質を含む空間に配置して加熱することにより、炭素含有層を前記アルミニウム材の表面に形成し、且つ、アルミニウム元素及び炭素元素を含む介在層を前記アルミニウム材と前記炭素含有層との間に形成する工程2、
(3)前記炭素含有層の上に、電解重合により導電性高分子層を形成する工程3。
以下、詳細に説明する。
工程1は、アルミニウム材の表面の一部又は全部の領域に炭素含有層形成用組成物層を形成する工程である。
工程2は、炭素含有層形成用組成物層が形成されたアルミニウム材を、炭化水素含有物質を含む空間に配置して加熱することにより、炭素含有層を上記アルミニウム材の表面に形成し、且つ、アルミニウム元素及び炭素元素を含む介在層を前記アルミニウム材と前記炭素含有層との間に形成する工程である。
工程3は、上記炭素含有層の上に、電解重合により導電性高分子層を形成する工程である。
本発明の製造方法は、上記工程1又は2の後に、アルミニウム材の表面の、炭素含有層形成用組成物層又は炭素含有層が形成されていない領域に、絶縁体皮膜層を形成する絶縁体皮膜層形成工程を有していてもよい。絶縁体皮膜層形成工程を有することにより、アルミニウム材の表面の炭素含有層形成用組成物層が形成されていない領域に絶縁体皮膜層が形成され、電解重合時に絶縁体皮膜層が形成された領域に電流が流れないことで、炭素含有層が形成された領域のみに導電性高分子層を形成することができる。
(実施例1)
[アルミニウム材/介在層/炭素含有層の積層体の調製]
平均粒子径が300nmのカーボンブラック1質量部に対しブタノールを1質量部加えて塗工液を調製した。この塗工液を、アルミニウム材である厚みが30μmのアルミニウム箔(JIS H4000のA1050−H18)の両面に、全面に塗布し、100℃で10分間乾燥処理してカーボンブラックを付着させて、炭素含有層形成用組成物層を形成した。炭素含有層形成用組成物層の乾燥後の厚みは、片面で1μmであった。その後、メタン雰囲気中で600℃の温度で10時間保持することにより、アルミニウム材/介在層/炭素含有層の積層体を調製した。
溶媒として水を用意し、モノマーであるアニリン(関東化学工業株式会社製)を0.25mol/L、硫酸(東京化成工業株式会社製)を0.5mol/Lになるように溶解させて、重合電解液とした。
実施例1と同様にして、アルミニウム材/介在層/炭素含有層の積層体を調製した。
フタル酸ジエチルと酢酸エチル(混合体積比80:20)の混合溶媒を用いて、モノマーであるピロール(東京化成工業株式会社製)を0.1mol/L、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム(TBAPF6)(東京化成工業株式会社製)0.2mol/Lになるように溶解し、重合電解液とした。
実施例1において調整されたアルミニウム材/介在層/炭素含有層の積層体に代えて、重合作用電極として、アルミニウム材である厚みが30μmのアルミニウム箔(JIS H4000のA1050−H18)を用いた(介在層及び炭素含有層を形成しなかった)以外は実施例1と同様にして、水系溶媒におけるポリアニリン電解重合を行った。その結果、アルミニウム箔上にポリアニリンが点状に僅かに形成され、また、アルミニウム箔からポリアニリンが剥がれて、アルミニウム箔と導電性高分子層とが一体化した導電物被覆アルミニウム材を調製できなかった。
アルミニウム材である厚みが30μmのアルミニウム箔(JIS H4000のA1050−H18)の両面に、平均粒径が300nmのカーボンブラックと、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを95:5の割合で混合し、溶剤として同重量のN−メチル−2−ピロリドンを加えた塗工液を塗布し、温度100℃で10分間乾燥処理することにより付着させて、アルミニウム材/カーボンブラックを含有する樹脂層の積層体を調製した。このときの塗工液の塗布は、塗布層の乾燥後の厚みが片面1μmとなるように調整して行った。
実施例1及び2、比較例2の導電物被覆アルミニウム材を用いて、下記密着性評価を行った。なお、比較例1については、アルミニウム材と、ポリアニリンを含有する導電性高分子層とが積層された導電物被覆アルミニウム材が調製できなかったので、密着性評価を行わなかった。
テーピング法によって密着性を評価した。具体的には、各試料において、導電性高分子層の表面に、幅18mmの粘着テープ(セキスイ化学工業製、製品名「セキスイ セロテープ(登録商標)」)を押し当てた後、導電性高分子層の表面に対して180°の角度で粘着テープを引き剥がしたときの剥離状況を確認し、密着性を評価した。剥離の状況が、導電物被覆アルミニウム材を構成する層内での凝集剥離であれば、層間密着性が良好であるといえる。また、剥離の状況が、導電物被覆アルミニウム材を構成する層間での層間剥離であれば、層間密着性が劣っていると判断できる。
電解重合により形成された導電性高分子層の均一性を目視により観察し、下記評価基準に従って評価した。
A:導電性高分子層が層状に均一に形成されている
B:導電性高分子層が点状に形成されている
結果を表1に示す。
(実施例3)
[アルミニウム材/介在層/炭素含有層の積層体の調製]
平均粒子径が300nmのカーボンブラック1質量部に対しブタノールを1質量部加えて塗工液を調製した。この塗工液を、厚みが30μmのアルミニウム箔(JIS H4000のA1050−H18)に、両面の塗布箇所が一致するようにストライプ状に塗布することによりアルミニウム箔の露出部を設け、100℃で10分間乾燥処理してカーボンブラックを付着させて、炭素含有層形成用組成物層を形成した。炭素含有層形成用組成物層の乾燥後の厚みは、片面で1μmであった。
実施例1と同様にして、水系溶媒におけるポリアニリン重合電解液を調製した。続いて、調製された積層体の炭素含有層が形成された部分の面積と、アルミニウム箔の露出部の面積とが1:1となるように重合電解液に浸漬させて重合作用電極とした以外は実施例1と同様にして、導電物被覆アルミニウム材を調製した。その結果、炭素含有層の表面のみに導電性高分子層が形成され、露出しているアルミニウム箔の表面にはポリアニリンは形成されなかった。
[アルミニウム材/介在層/炭素含有層の積層体の調製]
実施例3と同様にして、アルミニウム材の表面の一部の領域に炭素含有層が形成されている、アルミニウム材/介在層/炭素含有層の積層体を調製した。この積層体の、アルミニウム箔の露出部を25℃の15wt%アジピン酸アンモニウム水溶液中に浸漬し、対極を白金板として、直流安定化電源(KENWOOD製PA70−1A)を用いて0.1mA/cm2の定電流を流した。電圧が10Vに到達後、10Vの定電圧で10分間保持して、アルミニウム箔の露出部に陽極酸化皮膜が形成された積層体を調製した。
実施例3と同様にして水系溶媒におけるポリアニリン電解重合を行い、アルミニウム材の表面の一部の領域に炭素含有層が形成されている導電物被覆アルミニウム材を調製した。その結果、炭素含有層の表面のみに導電性高分子層が形成され、露出しているアルミニウム箔の表面にはポリアニリンは形成されなかった。
[アルミニウム材/介在層/炭素含有層の積層体の調製]
実施例3と同様にして、アルミニウム箔の表面の一部の領域に、炭素含有層形成用組成物層を形成した。
実施例3と同様にして水系溶媒におけるポリアニリン電解重合を行い、アルミニウム材の表面の一部の領域に炭素含有層が形成されている導電物被覆アルミニウム材を調製した。その結果、炭素含有層の表面のみに導電性高分子層が形成され、露出しているアルミニウム箔の表面にはポリアニリンは形成されなかった。
[アルミニウム材/介在層/炭素含有層の積層体の調製]
実施例3と同様にして、アルミニウム箔の表面の一部の領域に、炭素含有層形成用組成物層を形成した。
実施例3と同様にして、導電物被覆アルミニウム材を調製した。その結果、炭素含有層の表面のみに導電性高分子層が形成され、露出しているアルミニウム箔の表面にはポリアニリンは形成されなかった。
[アルミニウム材/介在層/炭素含有層の積層体の調製]
アルミニウム箔の露出部に絶縁体皮膜を形成しなかった以外は実施例3と同様にして、アルミニウム材の表面の一部の領域に炭素含有層が形成されている、アルミニウム材/介在層/炭素含有層の積層体を調製した。
実施例3と同様にして水系溶媒におけるポリアニリン電解重合を行い、アルミニウム材の表面の一部の領域に炭素含有層が形成されている導電物被覆アルミニウム材を調製した。その結果、炭素含有層の表面にポリアニリンを含有する導電性高分子層が形成され、アルミニウム箔の露出部にもポリアニリンが形成された。なお、実施例7では、アルミニウム箔の露出部の表面に介在層が形成されており、介在層上にポリアニリンが形成されているので、アルミニウム箔の露出部とポリアニリンとの密着性が高くなっており、アルミニウム箔の露出部に形成されたポリアニリンは、比較例1のアルミニウム箔上に点状に形成されたポリアニリンの様に剥がれなかった。
Claims (9)
- アルミニウム材と、
前記アルミニウム材の表面の一部又は全部の領域に形成された炭素含有層と、
前記炭素含有層の表面上に形成された導電性高分子層とを有し、
前記アルミニウム材と前記炭素含有層との間の少なくとも一部の領域に、アルミニウム元素及び炭素元素を含む介在層を備える、導電物被覆アルミニウム材。 - 前記導電性高分子層を形成する導電性高分子単量体が、ピロール、チオフェン、アニリン、フェニレン、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の導電物被覆アルミニウム材。
- 前記アルミニウム材の表面の一部の領域に形成された炭素含有層と、前記炭素含有層の表面上に形成された導電性高分子層を有し、前記アルミニウム材の表面の前記炭素含有層が形成されていない領域に、絶縁体皮膜層を有する、請求項1又は2に記載の導電物被覆アルミニウム材。
- 前記絶縁体皮膜層は、アルミニウムの酸化物及び/又はアルミニウムの水酸化物を含む、請求項3に記載の導電物被覆アルミニウム材。
- 前記導電物被覆アルミニウム材は、電極構造体を構成するために用いられる、請求項1〜4のいずれかに記載の導電物被覆アルミニウム材。
- 前記電極構造体は、キャパシタの電極である、請求項5に記載の導電物被覆アルミニウム材。
- 前記電極構造体は、電池の電極である、請求項5に記載の導電物被覆アルミニウム材。
- 導電物被覆アルミニウム材の製造方法であって、下記工程1〜3を有することを特徴とする製造方法;
(1)アルミニウム材の表面の一部又は全部の領域に炭素含有層形成用組成物層を形成する工程1、
(2)前記炭素含有層形成用組成物層が形成されたアルミニウム材を、炭化水素含有物質を含む空間に配置して加熱することにより、炭素含有層を前記アルミニウム材の表面に形成し、且つ、アルミニウム元素及び炭素元素を含む介在層を前記アルミニウム材と前記炭素含有層との間に形成する工程2、
(3)前記炭素含有層の上に、電解重合により導電性高分子層を形成する工程3。 - 前記工程1又は2の後に、前記アルミニウム材の表面の、前記炭素含有層形成用組成物層又は前記炭素含有層が形成されていない領域に、絶縁体皮膜層を形成する絶縁体皮膜層形成工程を有する、請求項8に記載の導電物被覆アルミニウム材の製造方法。
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