JP2017069132A - リチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液及びそれを用いたリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタ - Google Patents

リチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液及びそれを用いたリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタ Download PDF

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Abstract

【課題】広い温度範囲での電気化学特性を向上できるリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液を提供することを目的とする。【解決手段】非水溶媒にリチウム塩が1.1〜1.5M(mol/L)の量にて溶解されている非水電解液において、前記非水溶媒が、非水溶媒全体に対して、5〜20体積%のエチレンカーボネート、5〜25体積%のプロピレンカーボネート、20〜30体積%のジメチルカーボネート、10〜20体積%のエチルプロピオネート、および30〜40体積%のメチルエチルカーボネートを含有し、前記非水溶媒中における、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの合計含有量が20〜30体積%であり、ジメチルカーボネートとエチルプロピオネートとの合計含有量が30〜40体積%であり、前記非水電解液の引火点が20℃以上であることを特徴とするリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液を提供する。【選択図】 なし

Description

本発明は、広い温度範囲での電気化学特性を向上できるリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液及びそれを用いたリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタに関する。
近年、蓄電デバイス、特にリチウム二次電池及びリチウムイオンキャパシタは、携帯電話やノート型パソコン等の小型電子機器、電気自動車や電力貯蔵用として広く使用されている。これらの電子機器や自動車は、真夏の高温下(60℃程度)や極寒の極低温下(−40℃程度)等広い温度範囲で使用される可能性があるため、広い温度範囲でバランス良く電気化学特性を向上させることが求められている。
特に地球温暖化防止のため、CO排出量を削減することが急務となっており、リチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタからなる蓄電装置を搭載した環境対応車の中でも、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、バッテリー電気自動車(BEV)の早期普及が求められている。自動車は移動距離が長いため、熱帯の非常に暑い地域から極寒の地域まで幅広い温度範囲の地域で使用される可能性がある。従って、特にこれらの車載用のリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタは、高温から低温まで幅広い温度範囲で使用しても電気化学特性が低下しないことが要求されている。
尚、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。
リチウム二次電池は、主にリチウムを吸蔵及び放出可能な材料を含む正極及び負極、リチウム塩と非水溶媒からなる非水電解液から構成され、非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)等のカーボネートが使用されている。
このような非水溶媒を含む非水電解液を高温から極低温まで幅広い温度範囲で使用する場合、高温環境下において揮発しやすく引火点が低いこと、極低温環境下において凍結することが課題として挙げられる。非水電解液の引火点が低いと高温保存時の膨れの要因となり、膨れにより電池の望ましい電気化学的反応が阻害される。また、非水電解液が一部でも凍結すると、電池の電気化学反応が著しく低下してしまう。従って、これらの課題についての改善が求められている。
また、負極としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金等)や炭素材料が知られており、特にリチウムを吸蔵及び放出することが可能なコークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素材料を用いたリチウム二次電池が広く実用化されている。
例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の高結晶化した炭素材料を負極材料として用いたリチウム二次電池やリチウムイオンキャパシタは、非水電解液中の溶媒が充電時に負極表面で還元分解することにより発生した分解物やガスが電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、サイクル特性の低下を生じることが分かっている。また、非水溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、広い温度範囲で使用した場合における電気化学特性が低下しやすくなる。
更に、リチウム金属やその合金、スズ又はケイ素等の金属単体や酸化物を負極材料として用いたリチウム二次電池やリチウムイオンキャパシタは、初期の容量は高いもののサイクル中に微粉化が進むため、炭素材料の負極に比べて非水溶媒の還元分解が加速的に起こり、電池容量やサイクル特性のような電池性能が大きく低下することが知られている。また、これらの負極材料の微粉化や非水溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、広い温度範囲で使用した場合における電気化学特性が低下しやすくなる。
一方、正極として、例えばLiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePO等を用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の非水溶媒が充電状態で正極材料と非水電解液との界面において、局部的に一部酸化分解することにより発生した分解物やガスが電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、やはり広い温度範囲で使用した場合における電気化学特性の低下を生じることが分かっている。
以上のように、正極上や負極上で非水電解液が分解するときの分解物やガスにより、リチウムイオンの移動が阻害されたり、電池が膨れたりすることで電池性能が低下していた。そのような状況にも関わらず、リチウム二次電池やリチウムイオンキャパシタが搭載されている電子機器の多機能化はますます進み、電力消費量が増大する流れにある。そのため、リチウム二次電池の高容量化はますます進んでおり、電極の密度を高めたり、電池内の無駄な空間容積を減らす等、電池内の非水電解液の占める体積が小さくなっている。従って、少しの非水電解液の分解で、広い温度範囲で使用した場合における電気化学特性が低下しやすい状況にある。
特許文献1には、エチレンカーボネートを20〜35体積%、エチルメチルカーボネートを35〜45体積%、ジメチルカーボネートを15〜35体積%、及びジエチルカーボネート又はプロピレンカーボネートを3〜15体積%含む混合溶媒からなる非水電解液を用いたリチウム二次電池において、室温及び−30℃のサイクル特性が向上することが開示されている。
また特許文献2には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとプロピオン酸メチルを容積比で3:3:3:1で混合した溶媒に、LiPFを1Mになるように溶解し、ビニレンカーボネートを2質量%添加した非水電解液を用いたリチウム二次電池において、−30℃での出力特性が向上することが開示されている。
特開2005−353579号公報 特開2006−172775号公報
本発明は、広い温度範囲での電気化学特性を向上できるリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液及びそれを用いたリチウム二次電池及びリチウムイオンキャパシタを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の非水電解液の性能について詳細に検討した結果、前記特許文献1や前記特許文献2の非水電解液を用いたリチウム二次電池では、室温及び−30℃のサイクル特性を良好なものとすることができるものの、高温保存後の低温放電特性等の広い温度範囲での電気化学特性を向上させるという課題に対しては十分な効果が得られていないのが実情である。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、非水溶媒にリチウム塩が1.1〜1.5M(mol/L)の量にて溶解されている非水電解液において、前記非水溶媒が、非水溶媒全体に対して、5〜20体積%のエチレンカーボネート、5〜25体積%のプロピレンカーボネート、20〜30体積%のジメチルカーボネート、10〜20体積%のエチルプロピオネート、および30〜40体積%のメチルエチルカーボネートを含有し、前記非水溶媒中における、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの合計含有量が20〜30体積%であり、ジメチルカーボネートとエチルプロピオネートとの合計含有量が30〜40体積%であり、前記非水電解液の引火点が20℃以上であることにより、電気伝導度が非常に高いながらも、高温環境下において比較的溶媒が揮発し難い。しかも、各種カーボネートと、エステル(−COO−)の両端に2つのエチル基を有するエチルプロピオネートと、を特定の比率で含有する混合溶媒を用いることにより、該混合溶媒が初回充放電時等に還元分解することにより負極上に熱安定性が高い被膜を形成でき、これにより、高温から低温まで幅広い温度範囲でリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタの電気化学特性、特にリチウム電池の電気化学特性を改善できることを見出し、本発明を完成した。なお、このような作用効果は、前記特許文献1および前記特許文献2の技術では全くなしえなかったものであり、また、前記特許文献1および前記特許文献2にはまったく示唆されていないものである。
すなわち、本発明は、下記の(1)〜(4)を提供するものである。
(1)非水溶媒にリチウム塩が1.1〜1.5M(mol/L)の量にて溶解されている非水電解液において、
前記非水溶媒が、非水溶媒全体に対して、5〜20体積%のエチレンカーボネート、5〜25体積%のプロピレンカーボネート、20〜30体積%のジメチルカーボネート、10〜20体積%のエチルプロピオネート、および30〜40体積%のメチルエチルカーボネートを含有し、
前記非水溶媒中における、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの合計含有量が20〜30体積%であり、ジメチルカーボネートとエチルプロピオネートとの合計含有量が30〜40体積%であり、
前記非水電解液の引火点が20℃以上であることを特徴とするリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液。
(2)前記非水電解液の凝固点が−45℃以下である前記(1)に記載のリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液。
(3)正極、負極、及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えたリチウム二次電池において、該非水電解液が前記(1)または(2)に記載の非水電解液であることを特徴とするリチウム二次電池。
(4)正極、負極、及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えたリチウムイオンキャパシタにおいて、該非水電解液が前記(1)または(2)に記載の非水電解液であることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
本発明の非水電解液は、リチウム塩濃度を特定の範囲とし、かつ、特定の溶媒を特定の比率で混合することにより、高い引火点(20℃以上)を有し、かつ、凝固点が低く、及び高いイオン伝導率を示すものであり、そのため、本発明の非水電解液によれば、高温から極低温まで幅広い温度範囲で優れた特性を示すリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタを提供することができる。
本発明は、リチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液及びそれを用いたリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタに関する。
〔非水電解液〕
本発明の非水電解液は、非水溶媒にリチウム塩が1.1〜1.5M(mol/L)の量にて溶解されている非水電解液において、
前記非水溶媒が、非水溶媒全体に対して、5〜20体積%のエチレンカーボネート、5〜25体積%のプロピレンカーボネート、20〜30体積%のジメチルカーボネート、10〜20体積%のエチルプロピオネート、および30〜40体積%のメチルエチルカーボネートを含有し、
前記非水溶媒中における、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの合計含有量が20〜30体積%であり、ジメチルカーボネートとエチルプロピオネートとの合計含有量が30〜40体積%であり、
前記非水電解液の引火点が20℃以上であることを特徴とするリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液である。
〔リチウム塩〕
本発明に使用されるリチウム塩としては、下記のものが好適に挙げられる。
リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiPOF、LiBF、LiClO等の無機リチウム塩、LiN(SOF)〔LiFSI〕、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(iso−C7、LiPF(iso−C7)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF(SONLi、(CF(SONLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を有するリチウム塩等が好適に挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が好適に挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの中でも、LiPF、LiPO、LiBF、LiN(SOCF、LiN(SO、及びLiN(SOF)〔LiFSI〕から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、LiPFを用いることがもっとも好ましい。リチウム塩の濃度は、前記の非水溶媒に対して、1.1M(mol/L)以上であり、1.15M以上が好ましく、1.2M以上がより好ましい。またその上限は、1.5M以下であり、1.45M以下が好ましく、1.4M以下がより好ましい。
また、これらの電解質塩の好適な組み合わせとしては、LiPFを含み、更にLiPO、LiBF、LiN(SOCF、及びLiN(SOF)〔LiFSI〕から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が非水電解液中に含まれている場合が好ましく、LiPF以外のリチウム塩が非水溶媒中に占める割合は、0.001M以上であると、広い温度範囲での電気化学特性の向上効果が発揮されやすく、0.3M以下であると広い温度範囲での電気化学特性の向上効果が低下する懸念が少ないので好ましい。好ましくは0.01M以上、特に好ましくは0.03M以上、最も好ましくは0.04M以上である。その上限は、好ましくは0.3M以下、さらに好ましくは0.25M以下、特に好ましくは0.2M以下である。
また、一段と広い温度範囲での電気化学特性を向上させる目的で、リチウム塩として、さらに、シュウ酸骨格を有するリチウム塩及びS=O基を有するリチウム塩の中から選ばれる一種以上のリチウム塩を使用してもよい。
シュウ酸骨格を有するリチウム塩及びS=O基を有するリチウム塩の具体例としては、リチウム ビス(オキサラト)ボレート〔LiBOB〕、リチウム ジフルオロ(オキサラト)ボレート〔LiDFOB〕、リチウム テトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート〔LiTFOP〕、及びリチウム ジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート〔LiDFOP〕から選ばれる少なくとも一種のシュウ酸骨格を有するリチウム塩、リチウム トリフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ボレート〔LiTFMSB〕、リチウム ペンタフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ホスフェート〔LiPFMSP〕、リチウム メチルサルフェート〔LMS〕、リチウムエチルサルフェート〔LES〕、リチウム 2,2,2−トリフルオロエチルサルフェート〔LFES〕、及びFSOLiから選ばれる1種以上のS=O基を有するリチウム塩が好適に挙げられ、LiBOB、LiDFOB、LiTFOP、LiDFOP、LiTFMSB、LMS、LES、LFES、及びFSOLiから選ばれるリチウム塩を含むことがより好ましい。
シュウ酸骨格を有するリチウム塩及びS=O基を有するリチウム塩が非水溶媒中に占める割合は、0.001M以上0.5M以下である場合が好ましい。この範囲にあると広い温度範囲での電気化学特性の向上効果が一段と発揮される。好ましくは0.01M以上、更に好ましくは0.03M以上、特に好ましくは0.04M以上である。その上限は、更に好ましくは0.4M以下、特に好ましくは0.2M以下である。
〔非水溶媒〕
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、広い温度範囲で電気化学特性が相乗的に向上するという観点より、環状カーボネート、鎖状カーボネート、及び鎖状エステルを含有する混合溶媒を用いる。
環状カーボネートとしては、少なくとも、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートを用いる。
エチレンカーボネートの含有量は、電気伝導率向上の観点より、非水溶媒全体に対して、5体積%以上、好ましくは7体積%以上、より好ましくは9体積%以上である。また、エチレンカーボネートの含有量の上限としては、凝固点を低くするという観点より、非水溶媒全体に対して、20体積%以下、好ましくは17体積%以下、より好ましくは15体積%以下である。
プロピレンカーボネートの含有量は、高温環境下での電気化学特性向上の観点より、非水溶媒全体に対して、5体積%以上、好ましくは7体積%以上、より好ましくは9体積%以上である。また、プロピレンカーボネートの含有量の上限としては、電気伝導率向上の観点より、非水溶媒全体に対して、25体積%以下、好ましくは20体積%以下、より好ましくは17体積%以下、更に好ましくは15体積%以下である。
更に、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの合計含有量は、電気伝導率向上の観点より、非水溶媒全体に対して、20体積%以上、好ましくは22体積%以上である。また、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの合計含有量の上限としては、高温環境下での電気化学特性向上の観点より、非水溶媒全体に対して、30体積%以下、好ましくは27体積%以下である。
また、本発明の非水電解液に使用される非水溶媒中には、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート以外のその他の環状カーボネートが含まれていてもよい。その他の環状カーボネートとしては、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、トランスもしくはシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、2−プロピニル 2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシレート(PDC)及び4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オン(EEC)から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビニレンカーボネート、2−プロピニル 2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシレート(PDC)及び4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オン(EEC)から選ばれる1種又は2種以上がより好適である。
また、その他の環状カーボネートとして、炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合等の不飽和結合又はフッ素原子を有する環状カーボネートのうち少なくとも1種を使用すると高温環境下での電気化学特性が一段と向上するので好ましく、炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合等の不飽和結合を含む環状カーボネートとフッ素原子を有する環状カーボネートを両方含むことがより好ましい。炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合等の不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、VC、VEC、PDC、又はEECが更に好ましく、フッ素原子を有する環状カーボネートとしては、FEC又はDFECが更に好ましい。
炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合等の不飽和結合を有する環状カーボネートの含有量は、非水溶媒全体に対して、好ましくは0.07体積%以上、より好ましくは0.2体積%以上、更に好ましくは0.7体積%以上であり、また、その上限としては、好ましくは7体積%以下、より好ましくは4体積%以下、更に好ましくは2.5体積%以下であると、Liイオン透過性を損なうことなく一段と広い温度範囲での電気化学特性を増すことができるので好ましい。
フッ素原子を有する環状カーボネートの含有量は、非水溶媒全体に対して好ましくは0.07体積%以上、より好ましくは0.3体積%以上、更に好ましくは0.7体積%以上であり、また、その上限としては、好ましくは10体積%以下、より好ましくは7体積%以下、更に5体積%以下であると、Liイオン透過性を損なうことなく一段と広い温度範囲での電気化学特性を向上させることができるので好ましい。
これらの環状カーボネートは3種類以上を組み合わせて使用した場合に、高温環境下での電気化学特性の改善効果が更に向上するので好ましく、4種類以上を組み合わせて使用することが特に好ましい。これらの環状カーボネートの好適な組合せとしては、ECとPCとVC、ECとPCとFEC、ECとPCとVEC、ECとPCとEEC、ECとPCとVCとFEC、ECとPCとVCとVEC、ECとPCとVCとEEC、ECとPCとFECとVEC、ECとPCとFECとEEC、又はECとPCとVECとEEC等が好ましい。前記の組合せのうち、ECとPCとVC、ECとPCとFEC、ECとPCとEEC、ECとPCとVCとFEC、又はECとPCとVCとEEC等の組合せがより好ましい。
鎖状カーボネートとしては、少なくとも、メチルエチルカーボネート及びジメチルカーボネートを用いる。
メチルエチルカーボネートの含有量は、高温環境下での電気化学特性向上の観点より、非水溶媒全体に対して、30体積%以上、好ましくは33体積%以上である。また、メチルエチルカーボネートの含有量の上限としては、電気伝導率向上の観点より、非水溶媒全体に対して、40体積%以下、好ましくは37体積%以下である。
ジメチルカーボネートの含有量は、高温環境下での電気化学特性向上の観点より、非水溶媒全体に対して、20体積%以上、好ましくは23体積%以上である。また、ジメチルカーボネートの含有量の上限としては、電気伝導率向上の観点より、非水溶媒全体に対して、30体積%以下、好ましくは27体積%以下である。
また、本発明の非水電解液に使用される非水溶媒中には、メチルエチルカーボネート及びジメチルカーボネート以外のその他の鎖状カーボネートが含まれていてもよい。その他の鎖状カーボネートとしては、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルイソプロピルカーボネート(MIPC)、メチルブチルカーボネート、及びエチルプロピルカーボネートから選ばれる1種又は2種以上の非対称鎖状カーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、及びジブチルカーボネートから選ばれる1種又は2種以上の対称鎖状カーボネートが好適に挙げられる。
鎖状エステルとしては、少なくとも、エチルプロピオネートを用いる。
エチルプロピオネートの含有量は、電気伝導率向上の観点より、非水溶媒全体に対して、10体積%以上、好ましくは12体積%以上である。また、エチルプロピオネートの含有量の上限としては、高温環境下での電気化学特性向上の観点より、20体積%以下、好ましくは18体積%以下である。
また、本発明の非水電解液に使用される非水溶媒中には、エチルプロピオネート以外のその他の鎖状エステルが含まれていてもよい。その他の鎖状エステルとしては、メチルピバレート(MPv)、エチルピバレート、プロピルピバレート、メチルプロピオネート(MP)、プロピルプロピオネート、メチルアセテート、及びエチルアセテートから選ばれる1種又は2種以上の鎖状カルボン酸エステルが好適に挙げられる。中でも、エステルのα位の炭素の水素原子の全てがメチル基で置換された鎖状エステルであるメチルピバレート(MPv)、エチルピバレート、プロピルピバレートから選ばれる1種以上を含むと高温保存後の低温特性が更に良好となる。
また、ジメチルカーボネートとエチルプロピオネートの合計含有量は、電気伝導率向上の観点より、非水溶媒全体に対して、30体積%以上、好ましくは32体積%以上である。また、ジメチルカーボネートとエチルプロピオネートの合計含有量の上限としては、高温環境下での電気化学特性向上の観点より、非水溶媒全体に対して、40体積%以下、好ましくは37体積%以下である。
鎖状カーボネートと鎖状エステルの合計含有量は、特に制限されないが、非水溶媒全体に対して、70〜80体積%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が70体積%以上であれば非水電解液の粘度が高くなりすぎず、80体積%以下であれば非水電解液の電気伝導率が低下して広い温度範囲での電気化学特性が低下するおそれが少ないので上記範囲であることが好ましい。
鎖状カーボネート中に非対称鎖状カーボネートが占める体積の割合は、50体積%以上が好ましく、52体積%以上がより好ましい。その上限としては、80体積%以下がより好ましく、78体積%以下であると更に好ましい。上記の場合に一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましい。
環状カーボネートと鎖状カーボネートと鎖状エステルの割合は、高温下での電気化学特性向上の観点から、環状カーボネート:鎖状カーボネート:鎖状エステル(体積比)が(20〜30):(50〜60):(10〜20)が好ましい。上記の場合に一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましい。
また、本発明の非水電解液に使用される非水溶媒中には、環状カーボネート、鎖状カーボネート、及び鎖状エステル以外のその他の非水溶媒が含まれていてもよい。その他の非水溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等の鎖状エーテル、ジメチルホルムアミド等のアミド、スルホラン等のスルホン、及びγ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン、α−アンゲリカラクトン等のラクトンから選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。
その他の非水溶媒の含有量は、非水溶媒全体に対して、通常1体積%以上、好ましくは2体積%以上であり、また通常20体積%以下、好ましくは10体積%以下、更に好ましくは5体積%以下である。
一段と広い温度範囲での電気化学特性を向上させる目的で、非水電解液中にさらにその他の添加剤を加えることが好ましい。
その他の添加剤の具体例としては、以下の(A)S=O基含有化合物又は(B)リチウム塩化合物が好適に挙げられる。
(A)1,3−プロパンスルトン、1,3−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、2,2−ジオキシド−1,2−オキサチオラン−4−イル アセテート、又は5,5−ジメチル−1,2−オキサチオラン−4−オン 2,2−ジオキシド等のスルトン、エチレンサルファイト、ヘキサヒドロベンゾ[1,3,2]ジオキサチオラン−2−オキシド(1,2−シクロヘキサンジオールサイクリックサルファイトともいう)、又は5−ビニル−ヘキサヒドロ−1,3,2−ベンゾジオキサチオール−2−オキシド等の環状サルファイト、エチレンサルフェート、テトラヒドロ−4H−シクロペンタ[d][1,3,2]ジオキサチオール−2,2−ジオキシド、[4,4’−ビ(1,3,2−ジオキサチオラン)]2,2’,2’−テトラオキシド、(2,2−ジオキシド−1,3,2−ジオキサチオラン−4−イル)メチル メタンスルホネート、又は4−((メチルスルホニル)メチル)−1,3,2−ジオキサチオラン 2,2−ジオキシド等の環状サルフェート、ブタン−2,3−ジイル ジメタンスルホネート、ブタン−1,4−ジイル ジメタンスルホネート、又はメチレンメタンジスルホネート等のスルホン酸エステル、ジビニルスルホン、1,2−ビス(ビニルスルホニル)エタン、又はビス(2−ビニルスルホニルエチル)エーテル等のビニルスルホン化合物から選ばれる一種又は二種以上のS=O基含有化合物が挙げられる。
これら、スルトン、環状サルファイト、環状サルフェート、スルホン酸エステル、ビニルスルホンからなる群より選ばれる環状又は鎖状のS=O基含有化合物の中では、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、2,2−ジオキシド−1,2−オキサチオラン−4−イル アセテート、及び5,5−ジメチル−1,2−オキサチオラン−4−オン 2,2−ジオキシド、エチレンサルフェート、テトラヒドロ−4H−シクロペンタ[d][1,3,2]ジオキサチオール−2,2−ジオキシド、[4,4’−ビ(1,3,2−ジオキサチオラン)]2,2’,2’−テトラオキシド、(2,2−ジオキシド−1,3,2−ジオキサチオラン−4−イル)メチル メタンスルホネート、ブタン−2,3−ジイル ジメタンスルホネート、ペンタフルオロフェニル メタンスルホネート、及びジビニルスルホンからなる群より選ばれる一種又は二種以上が好ましい。更には、1,3−プロパンスルトン、2,2−ジオキシド−1,2−オキサチオラン−4−イル アセテート、エチレンサルフェート、テトラヒドロ−4H−シクロペンタ[d][1,3,2]ジオキサチオール−2,2−ジオキシド、[4,4’−ビ(1,3,2−ジオキサチオラン)]2,2’,2’−テトラオキシド、(2,2−ジオキシド−1,3,2−ジオキサチオラン−4−イル)メチル メタンスルホネート、及びペンタフルオロフェニル メタンスルホネートから選ばれる一種又は二種以上がより好ましく、エチレンサルフェート、テトラヒドロ−4H−シクロペンタ[d][1,3,2]ジオキサチオール−2,2−ジオキシド、及び[4,4’−ビ(1,3,2−ジオキサチオラン)]2,2’,2’−テトラオキシドから選ばれる一種又は二種以上の環状サルフェートがさらに好ましい。
S=O基含有化合物の含有量は、非水電解液中に0.001〜5質量%が好ましい。この範囲では、被膜が厚くなり過ぎずに十分に形成され、一段と広い温度範囲での電気化学特性が高まる。該含有量は、非水電解液中に0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、その上限は、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
(B)2,5,8,11−テトラオキサドデカン(以下、「TOD」ともいう)及び2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデカン(以下、「POP」ともいう)から選ばれる1種以上のエーテル化合物を配位子としたリチウムカチオンと、ジフルオロリン酸アニオンとからなる下記一般式(1)又は(2)で表されるリチウム塩化合物が挙げられる。
[Li(TOD)]2+[(PO (1)
[Li(POP)]2+[(PO (2)
中でも上記一般式(1)で表されるビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11−テトラオキサドデカン)ジリチウム(TOD錯体)がより好ましい。
リチウム塩化合物の含有量は、非水電解液中に0.01〜5質量%が好ましい。この範囲では、被膜が厚くなり過ぎずに十分に形成され、一段と広い温度範囲での電気化学特性が高まる。該含有量は、非水電解液中に0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、その上限は、4質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
〔非水電解液の製造〕
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記のリチウム塩及び該非水電解液にその他の添加剤を添加することにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒及び非水電解液に加える添加剤は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
本発明の非水電解液は、下記のリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタに使用することができ、非水電解質として、液体状のものだけでなくゲル化されているものも使用し得る。更に本発明の非水電解液は固体高分子電解質用としても使用できる。中でもリチウム二次電池用として用いることがより好ましい。
本発明の非水電解液は、上記各成分を上記した割合にて含有するものであるため、引火点が20℃以上であり、好ましくは20.5℃以上であり、高温環境下における安定性に優れたものである。
さらに、本発明の非水電解液は、上記各成分を上記した割合にて含有するものであるため、凝固点が好ましくは−45℃以下であり、より好ましくは−48℃以下、更に好ましくは−50℃以下であり、低温環境下における電気特性にも優れたものである。
加えて、本発明の非水電解液は、上記各成分を上記した割合にて含有するものであるため、25℃におけるイオン伝導率が好ましくは9mS/cm以上であり、より好ましくは9.1mS/cm以上、更に好ましくは9.3mS/cm以上であり、イオン伝導にも優れたものである。
そのため、本発明の非水電解液は、リチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタの非水電解液として、特に、幅広い温度範囲使用されるリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタの非水電解液として、好適に用いられるものである。
〔リチウム二次電池〕
本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。
本発明のリチウム二次電池は、正極、負極及び非水溶媒にリチウム塩が溶解されている前記非水電解液からなる。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、リチウム二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、及びニッケルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独で用いるか又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiCo1−x(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、及びCuから選ばれる1種又は2種以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiMn、LiNiO、LiCo1−xNi(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.5Mn0.3Co0.2Mn0.3、LiNi0.8Mn0.1Co0.1、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiMnOとLiMO(Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体、及びLiNi1/2Mn3/2から選ばれる1種以上が好適に挙げられ、2種以上がより好適である。また、LiCoOとLiMn、LiCoOとLiNiO、LiMnとLiNiOのように併用してもよい。
高充電電圧で動作するリチウム複合金属酸化物を使用すると、充電時における電解液との反応により高温環境下で電気化学特性が低下しやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電気化学特性の低下を抑制することができる。
特にNiを含む正極活物質の場合にNiの触媒作用により正極表面での非水溶媒の分解が起き、電池の抵抗が増加しやすい傾向にある。特に高温環境下での電気化学特性が低下しやすい傾向にあるが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電気化学特性の低下を抑制することができるので好ましい。特に、正極活物質中の全遷移金属元素の原子濃度に対するNiの原子濃度の割合が、10atomic%を超える正極活物質を用いた場合に上記効果が顕著になるので好ましく、20atomic%以上が更に好ましく、30atomic%以上が特に好ましい。具体的には、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.5Mn0.3Co0.2Mn0.3、LiNi0.8Mn0.1Co0.1、LiNi0.8Co0.15Al0.05等が好適に挙げられる。
更に、正極活物質として、リチウム含有オリビン型リン酸塩を用いることもできる。特に鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンから選ばれる一種又は二種以上を含むリチウム含有オリビン型リン酸塩が好ましい。その具体例としては、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、及びLiMnPOから選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。
これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩の一部は他元素で置換してもよく、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの一部をCo、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W、及びZrから選ばれる一種又は二種以上の元素で置換したり、又はこれらの他元素を含有する化合物や炭素材料で被覆することもできる。これらの中では、LiFePO又はLiMnPOが好ましい。
また、リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
また、リチウム一次電池用正極としては、CuO、CuO、AgO、AgCrO、CuS、CuSO、TiO、TiS、SiO、SnO、V、V12、VO、Nb、Bi、BiPb,Sb、CrO、Cr、MoO、WO、SeO、MnO、Mn、Fe、FeO、Fe、Ni、NiO、CoO、CoO等の、一種又は二種以上の金属元素の酸化物又はカルコゲン化合物、SO、SOCl等の硫黄化合物、一般式(CFnで表されるフッ化炭素(フッ化黒鉛)等が挙げられる。これらの中でも、MnO、V、フッ化黒鉛等が好ましい。
正極の導電剤は、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、又はサーマルブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。また、グラファイトとカーボンブラックを適宜混合して用いてもよい。導電剤の正極合剤への添加量は、1〜10質量%が好ましく、特に2〜5質量%が好ましい。
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラック等の導電剤、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレンプロピレンジエンターポリマー等の結着剤と混合し、これに1−メチル−2−ピロリドン等の高沸点溶剤を加えて混練して正極合剤とした後、この正極合剤を集電体のアルミニウム箔やステンレス製のラス板等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
正極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.5g/cm以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは2g/cm以上であり、より好ましくは、3g/cm以上であり、更に好ましくは、3.6g/cm以上である。なお、その上限としては、4g/cm以下が好ましい。
リチウム二次電池用負極活物質としては、リチウム金属やリチウム合金、及びリチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料〔易黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛など〕、スズ(単体)、スズ化合物、ケイ素(単体)、ケイ素化合物、もしくはLiTi12などのチタン酸リチウム化合物等を1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵及び放出能力において、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することがより好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm(ナノメータ)以下、特に0.335〜0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが更に好ましい。
特に複数の扁平状の黒鉛質微粒子が互いに非平行に集合又は結合した塊状構造を有する人造黒鉛粒子や、圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し与え、鱗片状天然黒鉛を球形化処理した粒子、を用いることが好ましい。
負極の集電体を除く部分の密度を1.5g/cm以上の密度に加圧成形したときの負極シートのX線回折測定から得られる黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比I(110)/I(004)が0.01以上となると一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましく、0.05以上となることがより好ましく、0.1以上となることが更に好ましい。また、過度に処理し過ぎて結晶性が低下し電池の放電容量が低下する場合があるので、ピーク強度の比I(110)/I(004)の上限は0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。
また、高結晶性の炭素材料(コア材)はコア材よりも低結晶性の炭素材料によって被膜されていると、広い温度範囲での電気化学特性が一段と良好となるので好ましい。被覆の炭素材料の結晶性は、TEMにより確認することができる。
高結晶性の炭素材料を使用すると、充電時において非水電解液と反応し、界面抵抗の増加によって低温もしくは高温における電気化学特性を低下させる傾向があるが、本発明に係るリチウム二次電池では広い温度範囲での電気化学特性が良好となる。
また、負極活物質としてのリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物としては、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Mg、Sr、又はBa等の金属元素を少なくとも1種含有する化合物が挙げられる。これらの金属化合物は単体、合金、酸化物、窒化物、硫化物、硼化物、リチウムとの合金等、何れの形態で用いてもよいが、単体、合金、酸化物、リチウムとの合金の何れかが高容量化できるので好ましい。中でも、Si、Ge及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものが好ましく、Si及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含むものが電池を高容量化できるので特に好ましい。
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
負極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.1g/cm以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは1.5g/cm以上であり、より好ましくは1.7g/cm以上である。なお、その上限としては、2g/cm以下が好ましい。
また、リチウム一次電池用の負極活物質としては、リチウム金属又はリチウム合金が挙げられる。
リチウム電池の構造には特に限定はなく、単層又は複層のセパレータを有するコイン型電池、円筒型電池、角型電池、ラミネート電池等を適用できる。
電池用セパレータとしては、特に制限はないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層又は積層の微多孔性フィルム、織布、不織布等を使用できる。
本発明におけるリチウム二次電池は、充電終止電圧が4.2V以上、特に4.3V以上の場合にも広い温度範囲での電気化学特性に優れ、更に、4.4V以上においても特性は良好である。放電終止電圧は、通常2.8V以上、更には2.5V以上とすることができるが、本願発明におけるリチウム二次電池は、2.0V以上とすることができる。電流値については特に限定されないが、通常0.1〜30Cの範囲で使用される。また、本発明におけるリチウム電池は、−40〜100℃、好ましくは−20〜80℃で充放電することができる。
本発明においては、リチウム電池の内圧上昇の対策として、電池蓋に安全弁を設けたり、電池缶やガスケット等の部材に切り込みを入れる方法も採用することができる。また、過充電防止の安全対策として、電池の内圧を感知して電流を遮断する電流遮断機構を電池蓋に設けることができる。
〔リチウムイオンキャパシタ〕
本発明のリチウムイオンキャパシタは、負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。リチウムイオンキャパシタ(LIC)と呼ばれる。正極は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気二重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられる。電解液には少なくともLiPF等のリチウム塩が含まれる。
以下、本発明の非水電解液の実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜8、比較例1〜8
〔非水電解液の物性測定〕
<引火点の測定>
表1、表2に記載の非水電解液の引火点をタグ密閉式の引火点試験機(田中科学機器製作株式会社製;型式ATG−7)を用いてJIS K−2265の規格に基づき測定した。
<凝固点の測定>
表1、表2に記載の非水電解液の凝固点を自動凝固点計(株式会社電気化学システムズ製;型式CP−2BX)を用いてJIS K−0065の規格に基づき測定した。
<電気伝導率の測定>
表1、表2に記載の非水電解液の電気伝導率を電気伝導率計(東亜ディーケーケー株式会社製;型式CM−30R)を用いて25℃の環境下で測定した。
各物性値を表1〜2に示す。
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
LiNi0.33Mn0.33Co0.34;93質量%、アセチレンブラック(導電剤);4質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cmであった。また、ケイ素(単体);5質量%、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質);85質量%、アセチレンブラック(導電剤);5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.6g/cmであった。また、この電極シートを用いてX線回折測定した結果、黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕は0.1であった。そして、正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、表1、表2に記載の組成の非水電解液を加えて、ラミネート電池を作製した。
〔高温充電保存後の低温特性の評価〕
<初期の放電容量>
上記の方法で作製したラミネート電池を用いて、25℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.35Vまで3時間充電し、−20℃に恒温槽の温度を下げ、1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電して、初期の−20℃の放電容量を求めた。
<高温充電保存試験>
次に、このコイン電池を60℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.3Vまで3時間充電し、4.35Vに保持した状態で14日間保存を行った。14日間の保存後、恒温槽から取り出した直後に電池膨れの有無を確認した。具体的には、保存前のラミネート電池の厚みを100%とした場合に保存後の厚みが110%以上を膨れ有りとした。その後、25℃の恒温槽に入れ、一旦1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電した。
<高温充電保存後の放電容量>
更にその後、初期の放電容量の測定と同様にして、高温充電保存後の−20℃の放電容量を求めた。
<高温充電保存後の低温特性>
高温充電保存後の低温特性を下記の−20℃放電容量の維持率より求めた。
高温充電保存後の−20℃放電容量維持率(%)=(高温充電保存後の−20℃の放電容量/初期の−20℃の放電容量)×100
電池特性を表1〜2に示す。
なお、表1〜3中、「EC」はエチレンカーボネート、「PC」はプロピレンカーボネート、「DMC」はジメチルカーボネート、「EP」はエチルプロピオネート、「MEC」はメチルエチルカーボネート、「MP」はメチルプロピオネート、「VC」はビニレンカーボネート、「FEC」は4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、「TCDD」はテトラヒドロ−4H−シクロペンタ[d][1,3,2]ジオキサチオール−2,2−ジオキシド、「TOD錯体」はビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11−テトラオキサドデカン)ジリチウムの略称である。
Figure 2017069132
Figure 2017069132
実施例9〜12、及び比較例9〜16
〔リチウムイオンキャパシタの作製〕
比表面積600〜3000m/gの活性炭粉末;92重量%、アセチレンブラック(導電剤);5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、正極シートを作製した。また、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質)95質量%を、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.5g/cmであった。また、この電極シートを用いてX線回折測定した結果、黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕は0.1であった。上記のように作成得られた正極と負極を加熱真空乾燥した後、負極については、負極活物質の単位重量あたり372mAh/gの電気量となるリチウムイオンを、電気化学的に吸蔵させた。そして、正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、表3に記載の組成の非水電解液を加えて、ラミネート電池を作製した。
〔高温充電保存後の低温特性の評価〕
<初期の放電容量>
上記の方法で作製したコイン電池を用いて、25℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.2Vまで3時間充電し、−20℃に恒温槽の温度を下げ、10Cの定電流下終止電圧3Vまで放電して、初期の−20℃のセル容量を求めた。
<高温充電保存試験>
次に、このコイン電池を60℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.3Vまで3時間充電し、4.3Vに保持した状態で7日間保存を行った。14日間の保存後、恒温槽から取り出した直後に電池膨れの有無を確認した。具体的には、保存前のラミネート電池の厚みを100%とした場合に保存後の厚みが110%以上を膨れ有りとした。その後、25℃の恒温槽に入れ、一旦10Cの定電流下終止電圧3Vまで放電した。
<高温充電保存後の放電容量>
更にその後、初期の放電容量の測定と同様にして、高温充電保存後の−20℃のセル容量を求めた。
<高温充電保存後の低温特性>
高温充電保存後の低温特性を下記の−20℃セル容量の維持率より求めた。
高温充電保存後の−20℃セル容量維持率(%)=(高温充電保存後の−20℃のセル容量/初期の−20℃のセル容量)×100
キャパシタ特性を表3に示す。
Figure 2017069132
上記実施例1〜8のリチウム二次電池は何れも、本願発明の非水電解液と異なる組成比で混合した非水溶媒を含む非水電解液を用いた場合の比較例1〜8のリチウム二次電池に比べ、広い温度範囲での電気化学特性が顕著に向上している。以上より、本発明の効果は、本願発明の特定の組成の非水電解液を用いた場合に特有の効果であることが判明した。
また、実施例9〜12と比較例9〜16の対比からリチウムキャパシタを用いた場合にも同様な効果であることが判明した。
更に、本発明の非水電解液は、リチウム一次電池の広い温度範囲での放電特性を改善する効果も有する。
本発明の非水電解液を使用すれば、広い温度範囲における電気化学特性に優れたリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタを得ることができる。特にハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、バッテリー電気自動車等に搭載されるリチウム二次電池等の蓄電デバイス用の非水電解液として使用すると、広い温度範囲で電気化学特性が低下しにくいリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタを得ることができる。

Claims (4)

  1. 非水溶媒にリチウム塩が1.1〜1.5M(mol/L)の量にて溶解されている非水電解液において、
    前記非水溶媒が、非水溶媒全体に対して、5〜20体積%のエチレンカーボネート、5〜25体積%のプロピレンカーボネート、20〜30体積%のジメチルカーボネート、10〜20体積%のエチルプロピオネート、および30〜40体積%のメチルエチルカーボネートを含有し、
    前記非水溶媒中における、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの合計含有量が20〜30体積%であり、ジメチルカーボネートとエチルプロピオネートとの合計含有量が30〜40体積%であり、
    前記非水電解液の引火点が20℃以上であることを特徴とするリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液。
  2. 前記非水電解液の凝固点が−45℃以下である請求項1に記載のリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液。
  3. 正極、負極、及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えたリチウム二次電池において、該非水電解液が請求項1又は2に記載の非水電解液であることを特徴とするリチウム二次電池。
  4. 正極、負極、及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えたリチウムイオンキャパシタにおいて、該非水電解液が請求項1又は2に記載の非水電解液であることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
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