JP2017068928A - 有機発光装置および電子機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】長期に亘って、ダークスポットの発生に起因する発光特性の低下が抑制または防止された有機発光素子を備える有機発光装置、この有機発光装置を備えた信頼性の高い電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の有機EL装置(有機発光装置)100は、搭載基板(基板)35と、搭載基板35上に配置された有機EL素子(有機発光素子)30と、有機EL素子30を覆うことで封止する封止層34とを備えている。封止層34は、有機EL素子30側から順に、主として無機材料で構成される第1封止層34aと、主として樹脂材料で構成される緩衝層34bと、主としてシリコン酸窒化物で構成される第2封止層34cとが積層された積層体であり、第1封止層34aは、85℃、重水素雰囲気下での層中における重水素拡散係数が1.0×10−21/sec以上である。
【選択図】図4

Description

本発明は、有機発光装置および電子機器に関するものである。
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、陽極と、陰極と、これらの電極間に挟まれた有機発光層を含む機能層とを有する構成となっている。機能層は、陽極側から注入された正孔と、陰極側から注入された電子とが有機発光層において再結合することにより生ずるエネルギーが蛍光や燐光に変換されて発光する。
ところが、外部から陽極や陰極を介して機能層に水分や酸素等が浸入すると、有機発光層に対するキャリア(正孔や電子)の注入が阻害されて発光の輝度が低下したり、機能層が変質して発光の機能そのものが失われたりして、所謂ダークスポットと呼ばれる暗点が生ずる。
このような有機EL素子(有機発光素子)を備えた有機EL装置(有機発光装置)では、水分や酸素等の浸入を防止するために、複数の有機EL素子を覆う封止層が形成される。
この封止層として、例えば、特許文献1では、シリコン酸窒化物のような無機材料で構成される陰極保護層と、エポキシ樹脂のような樹脂材料で構成される緩衝層(平坦化層)と、シリコン酸窒化物のような無機材料で構成されるガスバリア層とを、陰極側からこの順で積層された3層構成を備える積層体とすることが提案されている。
かかる構成の封止層を備える有機EL装置では、陰極保護層とガスバリア層とが、ともに、シリコン酸窒化物のような無機材料で構成されるため、ガスバリア層ばかりでなく、陰極保護層も、ガスバリア層と同様に、水分や酸素等の浸入を防止するガスバリア性を発揮することがある。
したがって、陰極保護層もガスバリア性を発揮すると、この封止層は、陰極保護層とガスバリア層との2層がガスバリア性を有することとなるため、例えば、1層のガスバリア層が封止層を構成する場合と比較して、優れたガスバリア性を発揮する。
このように、陰極保護層とガスバリア層との双方にガスバリア性を発揮させると、一見、有機EL素子における、ダークスポット(暗点)の発生が防止され、有機EL装置の寿命特性が向上すると思われる。
しかしながら、通常、上述したような構成の陰極保護層およびガスバリア層では、一定の確率で、層中における異物の混入や、層中における構造に欠陥が生じることに起因して、局所的にガスバリア性が低下する欠陥部が発生することがある。
そこで、例えば、1層のガスバリア層が封止層を構成する場合、かかる欠損部が、ガスバリア層(封止層)に生じたとすると、欠損部から直ちに、機能層に水分や酸素等が浸入しダークスポットが発生する。そのため、このダークスポットの発生を初期不良として検出して、有機EL装置を出荷した後の使用中にダークスポットが発生する有機EL装置の信頼性上の課題とはならない。
これに対して、ガスバリア性を有する陰極保護層とガスバリア層との2層を備える封止層において、かかる欠損部が、これら2層の双方に生じたとする(特に、平面視において離間した位置で生じたとする)と、2つの欠陥部を通過して、機能層に水分や酸素等が浸入するには、一定の時間を要する。そのため、ダークスポットの発生が、初期不良として検出されず、有機EL装置を出荷した後の購入者による使用中にダークスポットが発生し、有機EL装置の信頼性が低下するという問題があった。
すなわち、ガスバリア性を有する陰極保護層とガスバリア層との2層を備える封止層を有する有機EL装置では、歩留まりは向上するものの、出荷後の比較的早期にダークスポットが発生するため、有機EL装置の使用中における信頼性が十分に得られないという問題があった。
特開2006−147528号公報
本発明の目的の一つは、長期に亘って、ダークスポットの発生に起因する発光特性の低下が抑制または防止された有機発光素子を備える有機発光装置、この有機発光装置を備えた信頼性の高い電子機器を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
[適用例1]
本発明の有機発光装置は、基板と、前記基板上に配置された有機発光素子と、前記有機発光素子を覆うことで封止する封止層とを備え、
前記封止層は、前記有機発光素子側から順に、主として無機材料で構成される第1封止層と、主として樹脂材料で構成される緩衝層と、主としてシリコン酸窒化物で構成される第2封止層とが積層された積層体であり、
前記第1封止層は、85℃、重水素雰囲気下での層中における重水素拡散係数が1.0×10−21/sec以上であることを特徴とする。
このような有機発光装置によれば、有機発光装置が備える有機発光素子において、ダークスポットの発生に起因する発光特性が低下するのを的確に抑制または防止することができる。
[適用例2]
本発明の有機発光装置では、前記無機材料は、シリコン酸窒化物、シリコン酸化物およびシリコン窒化物のうちの少なくとも1種を含有することが好ましい。
これらのものを用いることにより、第1封止層中における重水素拡散係数を1.0×10−21/sec以上に容易に設定することができる。
[適用例3]
本発明の有機発光装置では、前記無機材料は、シリコン酸窒化物であり、
前記第1封止層は、フーリエ変換型赤外分光光度計で測定した際の1000cm−1付近に生じるピークの透過率をA[%]とし、3200cm−1付近に生じるピークの透過率をB[%]としたとき、B/Aが0.6以上であることが好ましい。
これにより、第1封止層の重水素拡散係数を1.0×10−21/sec以上のものとなっているものとすることができる。
[適用例4]
本発明の有機発光装置では、前記第2封止層は、前記B/Aが0.01以上0.5未満の層を含むものであることが好ましい。
これにより、第2封止層を、より緻密な層とすることができ、水分(水蒸気)や酸素の透過を確実に許容しないものとすることができる。
[適用例5]
本発明の電子機器は、本発明の有機発光装置を備えることを特徴とする。
かかる構成の有機発光装置を有することで、電子機器は、信頼性の高いものとなる。
本発明の有機発光装置を、有機EL装置に適用した第1実施形態の電気的な構成を示す等価回路図である。 本発明の有機発光装置を、有機EL装置に適用した第1実施形態の構成を示す概略平面図である。 図1、2に示す有機EL装置における画素の配置を示す概略平面図である。 図2におけるA−A線に沿った有機EL装置の構造を示す概略縦断面図である。 本発明の有機発光装置を、有機EL装置に適用した第2実施形態の構造を示す概略縦断面図である。 本発明の電子機器をヘッドマウントディスプレイに適用した概略図である。 サンプル2、3、5の第1封止層におけるB/Aの大きさを示すグラフである。 サンプル2、3、5の第1封止層において得られた赤外線吸収スペクトルである。
以下、本発明の有機発光装置および電子機器を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下では、本発明の有機発光装置を、有機EL装置(アクティブマトリックス型有機EL装置)に適用した場合を一例に説明する。
<有機EL装置>
<<第1実施形態>>
図1は、本発明の有機発光装置を、有機EL装置に適用した第1実施形態の電気的な構成を示す等価回路図、図2は、本発明の有機発光装置を、有機EL装置に適用した第1実施形態の構成を示す概略平面図、図3は、図1、2に示す有機EL装置における画素の配置を示す概略平面図、図4は、図2におけるA−A線に沿った有機EL装置の構造を示す概略縦断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1〜図3の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言い、図4、5の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図1〜図4においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率等は適宜異ならせて記載してある。また、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
有機EL装置100は、図1に示すように、互いに交差する複数の走査線12および複数のデータ線13と、複数のデータ線13のそれぞれに対して並列する複数の電源線14とを有している。複数の走査線12が接続される走査線駆動回路16と、複数のデータ線13が接続されるデータ線駆動回路15とを有している。また、複数の走査線12と複数のデータ線13との各交差部に対応してマトリックス状に配置された複数のサブ画素18を有している。
また、サブ画素18は、発光素子である有機EL素子30と、有機EL素子30の駆動を制御する画素回路20とを有している。
有機EL素子30は、陽極として機能する画素電極31と、陰極として機能する対向電極33と、画素電極31と対向電極33との間に設けられた有機発光層を含む機能層32とを有している。このような有機EL素子30は電気的にダイオードとして表記することができる。
画素回路20は、スイッチング用トランジスター21と、蓄積容量22と、駆動用トランジスター23とを含んでいる。2つのトランジスター21,23は、例えばnチャネル型もしくはpチャネル型のMOSトランジスターや薄膜トランジスター(TFT;Thin Film transistor)を用いて構成することができる。
スイッチング用トランジスター21のゲートは走査線12に接続され、ソースまたはドレインのうち一方がデータ線13に接続され、ソースまたはドレインのうち他方が駆動用トランジスター23のゲートに接続されている。
また、駆動用トランジスター23のソースまたはドレインのうち一方が有機EL素子30の画素電極31に接続され、ソースまたはドレインのうち他方が電源線14に接続されている。
さらに、駆動用トランジスター23のゲートと電源線14との間に蓄積容量22が接続されている。
かかる構成の有機EL装置100において、走査線12が駆動されてスイッチング用トランジスター21がオン状態になると、そのときにデータ線13から供給される画像信号に基づく電位がスイッチング用トランジスター21を介して蓄積容量22に保持される。この蓄積容量22の電位すなわち駆動用トランジスター23のゲート電位に応じて、駆動用トランジスター23のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用トランジスター23がオン状態になると、電源線14から駆動用トランジスター23を介して画素電極31と対向電極33とに挟まれた機能層32にゲート電位に応じた量の電流が流れる。その結果、有機EL素子30は、機能層32を流れる電流量に応じて発光する。
なお、画素回路20の構成は、これに限定されず、例えば、画素電極31と駆動用トランジスター23との間に設けられ、画素電極31と駆動用トランジスター23との間の導通を制御する発光制御用トランジスターを備えていてもよい。
また、この有機EL装置100は、図2に示すように、素子基板10と、素子基板10に対向配置された対向基板41とを有している。
素子基板10には、表示領域E1(図中、破線で表示)と、表示領域E1の外側にダミー領域E2(図中、二点鎖線で表示)とが設けられている。ダミー領域E2の外側は非表示領域である。
表示領域E1には、サブ画素18がマトリックス状に配置されている。サブ画素18は、前述したように発光素子である有機EL素子30を備えており、スイッチング用トランジスター21および駆動用トランジスター23の動作に伴って、赤(R)、緑(G)、青(B)のうちいずれかの色の発光が得られる構成となっている。
本実施形態では、同色の発光が得られるサブ画素18が第1の方向に配列し、異なる色の発光が得られるサブ画素18が第1の方向に対して交差(直交)する第2の方向に配列した、所謂ストライプ方式のサブ画素18の配置となっている。なお、以下では、上記第1の方向をY方向とし、上記第2の方向をX方向として説明する。
なお、素子基板10におけるサブ画素18の配置はストライプ方式に限定されず、モザイク方式、デルタ方式であってもよい。
また、ダミー領域E2には、主として各サブ画素18の有機EL素子30を発光させるための周辺回路が設けられている。例えば、図2に示すように、X方向において表示領域E1を挟んだ位置にY方向に延在して一対の走査線駆動回路16が設けられている。一対の走査線駆動回路16の間で表示領域E1に沿った位置に検査回路17が設けられている。
素子基板10には、一対の走査線駆動回路16に沿ったY方向と検査回路17に沿ったX方向とに延在して、ダミー領域E2を囲むように配置された配線層29を有している。有機EL素子30が備える対向電極33は、複数の有機EL素子30すなわち複数のサブ画素18に亘って共通陰極として形成されている。また、対向電極33は、表示領域E1から非表示領域に至るように形成され、非表示領域において上記配線層29と電気的に接続されている。
素子基板10は、対向基板41よりも大きく、対向基板41からY方向にはみ出た一辺部(図2中の下方の素子基板10の端部とダミー領域E2との間の辺部であり、以降、「端子部11t」と言うこともある。)に、外部駆動回路との電気的な接続を図るための複数の接続用端子101がX方向に配列している。複数の接続用端子101には、フレキシブル回路基板(FPC)105が接続されている。FPC105には、駆動用IC110が実装されている。なお、駆動用IC110は前述したデータ線駆動回路15を含むものである。FPC105は、駆動用IC110の入力側に配線を介して接続される入力端子102と、駆動用IC110の出力側に配線を介して接続される出力端子(図示せず)とを有している。素子基板10側のデータ線13や電源線14は、接続用端子101およびFPC105を介して駆動用IC110に電気的に接続されている。走査線駆動回路16や検査回路17に接続された配線は、接続用端子101とFPC105を介して駆動用IC110に電気的に接続されている。共通陰極としての対向電極33もまた配線層29および接続用端子101、ならびにFPC105を介して駆動用IC110に電気的に接続されている。したがって、端子部11tに配列した複数の接続用端子101のいずれかに、駆動用IC110からの制御信号や駆動用電位(VDD)等が供給される。素子基板10側の複数の接続用端子101とFPC105側の出力端子とを電気的に接続する方法は、公知の方法を用いることができ、例えば熱可塑性の異方性導電フィルムを用いる方法や熱硬化型の異方性接着剤を用いる方法が挙げられる。
次に、サブ画素18の構成とその平面的な配置について、図3を参照して説明する。
有機EL装置100は、白色発光が得られる有機EL素子30と、赤(R)、緑(G)、青(B)の着色層を含むカラーフィルター36とを組み合わせて構成されている。
図3に示すように、赤(R)の発光が得られるサブ画素18R、緑(G)の発光が得られるサブ画素18G、青(B)の発光が得られるサブ画素18BがX方向に順に配列している。また、同色の発光が得られるサブ画素18はY方向に配列している。X方向に配列した3つのサブ画素18R,18G,18Bを1つの画素19として表示がなされる構成になっている。
なお、本実施形態において、X方向におけるサブ画素18R,18G,18Bの配置ピッチは5μm未満である。X方向に0.5μm〜1.0μmの間隔を置いてサブ画素18R,18G,18Bが配置されている。Y方向におけるサブ画素18R,18G,18Bの配置ピッチはおよそ10μm未満である。
サブ画素18における画素電極31は、本実施形態では、略矩形状であって、長手方向がY方向に沿って配置されている。なお、画素電極31を発光色に対応させて画素電極31R,31G,31Bと呼ぶこともある。各画素電極31R,31G,31Bの外縁を区画して各画素電極31R,31G,31B同士を絶縁するための隔壁として機能する絶縁層28が形成されている。これによって、各画素電極31R,31G,31B上に開口部28aが形成され、この開口部28a内において画素電極31R,31G,31Bのそれぞれが機能層32と接することとなる。開口部28aの平面形状もまた略矩形状となっている。なお、略矩形状とは、長方形、長方形の角部が丸くなった形状、長方形の短辺側が円弧になった形状等を含むものである。
また、カラーフィルター36の赤(R)の着色層36Rは、Y方向に配列する複数の画素電極31Rと重なるように形成されている。緑(G)の着色層36Gは、Y方向に配列する複数の画素電極31Gと重なるように形成されている。青(B)の着色層36Bは、Y方向に配列する複数の画素電極31Bと重なるように形成されている。すなわち、異なる色の着色層36R,36G,36Bは、Y方向に延在してストライプ状に形成され、かつX方向に互いに接して形成されている。
次に、有機EL装置100の構造について、図4を参照して説明する。
なお、図4は、表示領域E1におけるサブ画素18の構造、および、ダミー領域E2の外側における端子部11tの構造を示すものである。
図4に示すように、有機EL装置100は、表示領域E1において、基材11と、基材11上に順に形成された、画素回路20と、有機EL素子30と、複数の有機EL素子30を封止する封止層34と、カラーフィルター36とを含む素子基板10を備えている。また、素子基板10に対して対向配置された対向基板41を備えている。
対向基板41は、例えばガラス等の透明基板からなり、素子基板10において封止層34上に形成されたカラーフィルター36を保護すべく、透明樹脂層42を介して素子基板10に対向配置されている。
サブ画素18R,18G,18B(図4中ではサブ画素18Gを示す。)の機能層32からの発光は、後述する反射層25で反射されると共に、カラーフィルター36を透過して対向基板41側から取り出される。すなわち、有機EL装置100はトップエミッション型の発光装置である。
基材11は、有機EL装置100がトップエミッション型のため、ガラス等の透明基板や、シリコンやセラミックス等の不透明な基板を用いることができる。以降、画素回路20にMOSトランジスターを用いた場合を例に説明する。
基材11の表面を覆って第1絶縁膜11aが形成されている。第1絶縁膜11aを覆って駆動用トランジスター23の半導体層23aが形成されている。半導体層23aを覆ってゲート絶縁膜として機能する第2絶縁膜11bが形成されている。第2絶縁膜11bを介して半導体層23aのチャネル領域23cと対向する位置にゲート電極23gが形成されている。ゲート電極23gを覆って第1層間絶縁膜24が例えば300nm〜2μmの膜厚で形成されている。第1層間絶縁膜24は、画素回路20の駆動用トランジスター23等を覆うことによって生じた表面の凹凸を無くすように平坦化処理が施される。半導体層23aのソース領域23sとドレイン領域23dとにそれぞれ対応して、第2絶縁膜11bと第1層間絶縁膜24とを貫通するコンタクトホールが形成されている。これらのコンタクトホールを埋めるようにして導電膜が形成され、パターニングされて駆動用トランジスター23に接続される電極や配線が形成されている。また、上記導電膜は、光反射性の例えばアルミニウム、あるいはアルミニムとAg(銀)やCu(銅)との合金等を用いて形成され、これをパターニングすることによって、サブ画素18ごとに独立した反射層25が形成されている。図4では図示を省略したが、画素回路20におけるスイッチング用トランジスター21や蓄積容量22も基材11上に形成されている。
さらに、反射層25と第1層間絶縁膜24とを覆って例えば10nm〜2μmの膜厚で第2層間絶縁膜26が形成されている。また、画素電極31と駆動用トランジスター23とを電気的に接続させるためのコンタクトホールが第2層間絶縁膜26を貫通して形成されている。第1絶縁膜11a、第2絶縁膜11b、第1層間絶縁膜24、第2層間絶縁膜26を構成する材料としては、例えば、シリコンの酸化物や窒化物、あるいはシリコンの酸窒化物を用いることができる。
第2層間絶縁膜26に形成されたコンタクトホールを埋めるように、第2層間絶縁膜26を覆って導電膜(第1導電膜)が成膜され、この導電膜をパターニングすることによってコンタクト電極27が形成されている。さらに、このコンタクト電極27を覆って導電膜(第2導電膜)が形成され、この導電膜をパターニングすることによって画素電極31(31R,31G,31B)(図4中ではサブ画素18Gを示す。)が形成されている。なお、コンタクト電極(接続電極)27は、アルミニムやその合金を用いて形成され、また、画素電極31(31R,31G,31B)は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜を用いて形成されている。
各画素電極31R,31G,31Bの外縁部を区画して絶縁層(隔壁)28が形成されている。これにより、各画素電極31R,31G,31Bの絶縁性が確保されるとともに、画素電極31R,31G,31B上に開口部28aが形成されている。絶縁層28は例えばアクリル系の感光性樹脂を用いて、1μm程度の高さで各画素電極31R,31G,31Bをそれぞれ区画するように形成されている。
なお、本実施形態では、各画素電極31R,31G,31Bを互いに絶縁状態とするために感光性樹脂からなる絶縁層28を形成したが、酸化シリコン等の無機絶縁材料を用いて各画素電極31R,31G,31Bを区画してもよい。
機能層32は、各画素電極31R,31G,31B(図4中ではサブ画素18Gを示す。)に接するように、例えば、真空蒸着法やイオンプレーティング法等の気相プロセスを用いて形成され、絶縁層28の表面も機能層32で覆われる。なお、機能層32は絶縁層28のすべての表面を覆う必要はなく、絶縁層28で区画された領域に機能層32が形成されればよいので、必ずしも、図4に示すように、絶縁層28の頭頂部は機能層32で覆われる必要はない。
機能層32は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を有する。本実施形態では、画素電極31に対して、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を、それぞれ気相プロセスを用いて成膜し、順に積層することによって機能層32が形成されている。なお、機能層32の層構成は、これに限定されず、キャリアである正孔や電子の移動を制御する中間層を含んでいてもよい。
有機発光層は、白色発光が得られる構成であればよく、例えば、赤色の発光が得られる有機発光層と、緑色の発光が得られる有機発光層と、青色の発光が得られる有機発光層とを組み合わせた構成を採用することができる。
次いで、機能層32を覆って共通陰極としての対向電極33が形成されている。対向電極33は、例えばMgとAgとの合金を光透過性と光反射性とが得られる程度の膜厚(例えば10nm〜30nm)で成膜することによって形成されている。これにより、基材11の上側に複数の有機EL素子30が形成されている。
なお、対向電極33を光透過性と光反射性とを有する状態に形成することによって、サブ画素18R,18G,18Bごとの反射層25と対向電極33との間で光共振器を構成してもよい。光共振器は、サブ画素18R,18G,18Bごとに、反射層25と対向電極33との間の光学的距離を異ならせることにより、特定の共振波長の光が取り出されるものである。これによって、各サブ画素18R,18G,18Bからの発光の色純度を高めることができる。上記光学的距離は、光共振器を構成する反射層25と対向電極33との間に挟まれた各種の機能膜の屈折率と膜厚との積の合計として求められる。したがって、上記光学的距離をサブ画素18R,18G,18Bごとに異ならせる方法としては、画素電極31R,31G,31Bの膜厚を異ならせる方法や、反射層25と画素電極31R,31G,31Bとの間の第2層間絶縁膜26の膜厚を異ならせる方法が適用可能である。
次いで、水や酸素等の浸入を防止するために、複数の有機EL素子30を覆う封止層34が形成されている。
封止層34は、本発明では、対向電極33側から順に、第1封止層(陰極保護層)34aと、緩衝層(平坦化層)34bと、第2封止層(ガスバリア層)34cとが積層されたものである。
第1封止層34aおよび第2封止層34cは、本実施形態では、主としてシリコン酸窒化物(SiON)で構成され、緩衝層34bは、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、のような樹脂材料を主材料として構成される。
ここで、前述した背景技術で説明したように、第1封止層34aおよび第2封止層34cを、ともに、主としてシリコン酸窒化物で構成されるものとすると、第2封止層(ガスバリア層)34cばかりでなく、第1封止層(陰極保護層)34aも、水分や酸素等の浸入を防止するガスバリア性を発揮することがある。
この場合、例えば、層中における異物の混入や、層中における構造に欠陥が生じることに起因して、局所的にガスバリア性が低下する欠損部が、これら2層の双方に生じたとする(特に、平面視において離間した位置で生じたとする)と、2つの欠陥部を通過して、機能層32に水分や酸素等が浸入するには、一定の時間を要する。そのため、ダークスポット(暗点)の発生が、初期不良として検出されず、有機EL装置100を出荷した後の購入者による使用中にダークスポットが発生し、有機EL装置100の信頼性が低下するという問題があった。
これに対して、本願発明では、第1封止層34aおよび第2封止層34cのうち第1封止層34aを、85℃、重水素雰囲気下での層中における重水素拡散係数が1.0×10−21/sec以上であるものとしている。
本発明者の検討により、第1封止層34aを、このような重水素拡散係数を有するものとすることで、第1封止層34aは、水分(水蒸気)や酸素の浸入(透過)を許容するもの、すなわち、ガスバリア性を有しないものとなっていると言える。
そのため、本来、水分や酸素等の浸入を防止するガスバリア層として形成した、第2封止層(ガスバリア層)34cに、欠陥部が生じていると、この欠陥部をダークスポットの発生として早期に検出すること、すなわち、有機EL装置100の初期不良として検出することができる。このように、初期不良として検査により取り除くことで、検査を通過した有機EL装置100では、各サブ画素18が備える有機EL素子30は、長期に亘って、ダークスポットの発生に起因する発光特性の低下が抑制または防止されたものとなる。そのため、有機EL装置100の使用中における信頼性の向上を図ることができる。
また、本実施形態のように、第1封止層34aを、主としてシリコン酸窒化物で構成されるものとした場合、この第1封止層34aの重水素拡散係数が1.0×10−21/sec以上のものとなっている指標として、本発明者は、第1封止層34aを、フーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)で測定した際の1000cm−1付近に生じるピーク(SiONの主構造を示すピーク)の透過率をA[%]とし、3200cm−1付近に生じるピーク(Si−OH、NH振動を示すピーク)の透過率をB[%]としたとき、B/Aを0.6以上であるものとすることで可能であることを見出した。
すなわち、主としてシリコン酸窒化物で構成される第1封止層34aは、後述するように、イオンプレーティング法のような気相成膜法を用いて形成(成膜)される。このシリコン酸窒化物で構成される第1封止層34aでは、膜内のシリコン分子の一部が他のシリコン原子、酸素原子、窒素原子と結合されていない状態で成膜することも可能である。そして、結合されたシリコン原子に対する、結合されていないシリコン原子の割合を増やすことで、所定の重水素拡散係数に設定することが可能である。このような第1封止層34aにおいて、膜内の結合状態により、前記B/Aの大きさが変化し、さらに、前記B/Aの大きさを0.6以上に設定することで、第1封止層34aにおいて、疎な状態となっていると言え、その結果、第1封止層34aは、その全体において、ガスバリア性が低下する欠損部が均一に形成されているもの言うことができることを見出した。
なお、主としてシリコン酸窒化物で構成される第1封止層34aを、85℃、重水素雰囲気下での層中における重水素拡散係数が1.0×10−21/sec以上であることを満足するもの、すなわち、第1封止層34aを疎な状態となっているものとする形成方法については、後述する有機EL装置の製造方法において説明する。
また、前記B/Aの大きさは、0.6以上であれば、第1封止層34aの重水素拡散係数を1.0×10−21/sec以上とすることができるが、0.7以上であることが好ましい。これにより、水分(水蒸気)や酸素の透過を確実に許容して、第1封止層34aの重水素拡散係数を1.0×10−21/sec以上とすることができるともに、後述する有機EL装置の製造方法において、液相成膜法を用いて第1封止層34a上に緩衝層34bを形成する際に、液相成膜法に使用される液状材料の透過(浸入)が許容されるのを確実に防止することができる。すなわち、第1封止層34aに陰極保護層としての機能を確実に発揮させることができる。
第1封止層34aの平均厚さは、特に限定されないが、例えば、100nm以上2000nm以下程度であることが好ましく、200nm以上1000nm以下程度であることがより好ましい。これにより、前記B/Aの大きさを0.6以上に設定した際に、第1封止層34aを、確実に、水分(水蒸気)や酸素の透過を許容し、かつ、液状材料(液性成分)の透過を許容しないものとすることができる。
なお、本実施形態では、第1封止層34aが主としてシリコン酸窒化物で構成される場合について説明したが、第1封止層34aは、その層中における重水素拡散係数が1.0×10−21/sec以上のものであれば、各種無機材料を主材料として構成されるものであっても良い。無機材料を主材料として構成される第1封止層34aであれば、後述する有機EL装置の製造方法において、液相成膜法を用いて第1封止層34a上に緩衝層34bを形成する際に、液相成膜法に使用される液状材料の透過(浸入)が許容されるのを防止する陰極保護層としての機能を確実に発揮させることができる。
また、無機材料としては、シリコン酸窒化物の他、シリコン酸化物、シリコン窒化物、アルミニウム酸化物、タンタル酸化物、タンタル窒化物、タンタル酸窒化物、チタン酸化物、チタン窒化物、チタン酸窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、シリコン酸窒化物(SiON)、シリコン酸化物(SiO)およびシリコン窒化物(SiN)のうち少なくとも1種であることが好ましい。これらのものを用いることにより、第1封止層34a中における重水素拡散係数を1.0×10−21/sec以上に容易に設定することができる。なお、第1封止層34aを、シリコン酸化物およびシリコン窒化物のうち少なくとも1種で構成する場合、例えば、その膜厚を設定すること、さらには、気相成膜法を用いて成膜する際に低温で成膜すること等により、第1封止層34a中における重水素拡散係数を1.0×10−21/sec以上に設定し得る。
第2封止層(ガスバリア層)34cは、第1封止層(陰極保護層)34aと同様に、主としてシリコン酸窒化物(SiON)で構成され、水分や酸素等の浸入を防止するガスバリア性を有する層である。この第2封止層34cの機能により、封止層34は、機能層32への水分や酸素等の浸入を防止する。
この第2封止層34cの前記B/Aの大きさは、0.01以上0.5未満であることが好ましい。これにより、第2封止層34cを、より緻密な層とすることができ、水分(水蒸気)や酸素の透過を確実に許容しないものとすることができる。
また、第2封止層34cの平均厚さは、特に限定されないが、例えば、100nm以上2000nm以下程度であることが好ましく、400nm以上1000nm以下程度であることがより好ましい。これにより、前記B/Aの大きさを0.01以上0.5未満に設定した際に、第2封止層34cを、確実に、水分(水蒸気)や酸素の透過を許容しないものとすることができる。
緩衝層34bは、樹脂材料を主材料として構成される。
第1封止層34aと第2封止層34cとの間に、緩衝層34bが介在することで、第1封止層34aおよび第2封止層34cの双方の機能を確実に発揮させることができる。
また、緩衝層34bを、後述する有機EL装置の製造方法において、スクリーン印刷法等の印刷法や、定量吐出法等により塗布形成することで、緩衝層34bの表面(上面)を平坦化して平坦面で構成することができる。その結果、緩衝層34bは、第1封止層34aの表面の凹凸を緩和して、第2封止層34cを平坦なものとして形成する平坦化層としても機能する。
この緩衝層34bの構成材料としては、透明性を備える各種樹脂材料を用いることができ、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができるが、中でも、エポキシ系樹脂であることが好ましい。エポキシ系樹脂を用いることにより、緩衝層34bに、平坦化層としての機能をより確実に発揮させることができる。
また、緩衝層34bの平均厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上5μm以下程度であることが好ましく、3μm程度であることがより好ましい。これにより、緩衝層34bに、平坦化層としての機能をより確実に発揮させることができる。
封止層34上には、各色のサブ画素18R,18G,18Bに対応した着色層36R,36G,36B(図4中では着色層36Gを示す。)が形成されている。着色層36R,36G,36Bを含むカラーフィルター36の形成方法としては、色材を含む感光性樹脂材料を塗布して感光性樹脂層を形成し、これをフォトリソグラフィー法で露光・現像して形成する方法が挙げられる。着色層36R,36G,36Bの膜厚は、どの色も同じでもよいし、少なくとも1色を他の色と異ならせてもよい。
素子基板10と対向基板41とは、間隔を置いて対向配置され、当該間隔に透明樹脂材料が充填されて透明樹脂層42が構成される。透明樹脂材料としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ポリオレフィン系等の樹脂材料を挙げることができる。透明樹脂層42の厚みは10μm〜100μmである。
図4に示すように、有機EL装置100は、表示領域E1において、基材11と、基材11上に順に形成された、画素回路20と、有機EL素子30と、複数の有機EL素子30を封止する封止層34と、カラーフィルター36とを含む素子基板10を備えている。また、素子基板10に対して対向配置された対向基板41を備えている。
なお、素子基板10において、第1絶縁膜11a、半導体層23a、第2絶縁膜11b、第1層間絶縁膜24および第2層間絶縁膜26により画素回路20が構成され、画素電極31、機能層32および対向電極33により有機EL素子30が構成され、画素回路20および有機EL素子30により搭載基板35が構成されている。
次に、素子基板10の端子部11tとその周辺の構造について説明する。
図4に示すように、接続用端子101は、素子基板10の端子部11tにおいて、画素電極31と同様に、第2層間絶縁膜26上に形成されている。また、第2層間絶縁膜26に形成されたコンタクトホール26a内の導電膜を介して、第1層間絶縁膜24上に形成された配線層103と接続されている。図4には、基材11上における画素回路20や画素回路20に接続される信号配線、走査線駆動回路16等の周辺回路の構成について図示を省略しているが、複数の接続用端子101のそれぞれは、これらの回路や信号配線に対して配線層103を通じて電気的に接続されている。
配線層103は、第1層間絶縁膜24上に形成された導電膜を利用して、反射層25と一緒にパターニングされていることが好ましいが、反射層25と異なる構成材料で形成されていてもよい。
また、接続用端子101は、第2層間絶縁膜26上に形成された導電膜を利用して、画素電極31と一緒にパターニングされていることが好ましいが、画素電極31と異なる構成材料で形成されていてもよい。
素子基板10の端子部11tには、第1封止層34a、第2封止層34c、着色層36B、着色層36G、着色層36Rが順に積層形成され、接続用端子101上において、これらの層を貫通する開口部45が形成されている。接続用端子101上の少なくとも一部にはこれらの層が形成されておらず、開口部45内において接続用端子101が露出している。
換言すれば、封止層34のうち、無機材料からなる第1封止層34aおよび第2封止層34cは、表示領域E1(図2参照)において複数の有機EL素子30を覆うように形成されているだけでなく、端子部11tを覆うように形成されている。カラーフィルター36は、サブ画素18R,18G,18Bに対応して、赤(R)、緑(G)、青(B)の順に、着色層36R,36G,36Bが形成され、いずれの着色層36R,36G,36Bも表示領域E1だけでなく端子部11tを覆うように形成されている。そして、第1封止層34a、第2封止層34c、着色層36B、着色層36G、着色層36Rを貫通するように開口部45が形成されている。
3つの着色層36R,36G,36Bは、端子部11tの素子基板10の周縁側の外縁からダミー領域E2(図2参照)と表示領域E1の境界部分の絶縁層28に至るように形成されており、当該絶縁層28と重なった着色層36R,36G,36Bは、透明樹脂層42を介して対向基板41によって保護されている。
(有機EL装置の製造方法)
次に、第1実施形態の有機EL装置の製造方法について説明する。
有機EL装置100の製造方法は、画素回路形成工程と、有機EL素子形成工程と、封止層形成工程と、カラーフィルター形成工程と、封止層エッチング工程と、基板貼り合わせ工程とを有している。
[1]まず、基材11を用意し、この基材11上に、画素回路20を形成する(画素回路形成工程)。
なお、この画素回路20の形成の際に、周辺回路、信号配線、反射層25、コンタクト電極27等も併せて形成する。
また、基材11上に画素回路20等を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。
[2]次に、画素回路20上に、有機EL素子30を形成する(有機EL素子形成工程)。
なお、この有機EL素子30の形成の際に、絶縁層28等も併せて形成する。
また、画素回路20上に有機EL素子30等を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。
[3]次に、有機EL素子30が備える対向電極33と端子部11tとを覆う第1封止層34aを形成する。
第1封止層34aを形成する形成方法としては、特に限定されないが、例えば、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スパッタ法、レーザアブレーション法のような気相成膜法が挙げられるが、中でも、イオンプレーティング法であることが好ましい。
イオンプレーティング法を用いて第1封止層34aを形成することで、シリコン酸窒化物で構成される粒状体が対向電極33に積層する際に、対向電極33に飛来する膜成分を、対向電極33(基材11)の厚さ方向に沿って(平行)に飛来させることができる。すなわち、対向電極33の厚さ方向に沿って、優れた指向性をもって飛来させることができる。そのため、対向電極33および端子部11t上に均一な膜質の第1封止層34aを成膜することができる。
また、イオンプレーティング法を用いて第1封止層34aを形成し、この第1封止層34aを形成する際の成膜条件を適宜設定することで、層中における重水素拡散係数が1.0×10−21/sec以上の第1封止層34aを確実に形成することができる。
なお、第1封止層34aを形成する際に適宜設定する成膜条件としては、形成する第1封止層34aの膜厚、成膜する際の温度、圧力、放電電流値およびガンAr流量等が挙げられる。これらを適宜設定することで、第1封止層34a中における重水素拡散係数を1.0×10−21/sec以上に容易に設定し得る。
[4]次に、第1封止層34aを覆う緩衝層34bを形成する。
緩衝層34bは、透明性を有する樹脂材料で構成され、その形成方法としては、例えば、樹脂材料と、樹脂材料が可溶な溶媒とを含む液状材料(溶液)を用い、スクリーン印刷法等の印刷法や、定量吐出法のような液相成膜法で液状材料を塗布して乾燥する方法が好ましく用いられる。かかる方法を用いることにより、その上面が平坦化された、樹脂材料からなる緩衝層34bを優れた精度で形成することができる。
なお、本工程[4]では、第1封止層34a上に液状材料を供給することで、緩衝層34bが形成されるが、この際、前述の通り、第1封止層34aが液状材料の透過(浸入)を許容しない膜で構成されている。そのため、本工程[4]において、液状材料に機能層32が接触することによる機能層32の変質・劣化が生じるのを的確に抑制また防止することができる。
[5]次に、緩衝層34bを覆う第2封止層34cを形成する。
この第2封止層34cを形成する形成方法としては、第1封止層34aの形成方法として説明したのと同様の方法が用いられる。
この緩衝層34b上への第2封止層34cの形成の際には、第2封止層34cに水分や酸素等の浸入を防止するガスバリア性を備えるガスバリア層としての機能が付与されるように、第2封止層34cが成膜される。すなわち、第2封止層34cの層中における重水素拡散係数が1.0×10−21/sec未満、換言すれば、前記B/Aの大きさが0.6未満となるように、第2封止層34cを成膜する際の成膜条件を適宜設定して、第2封止層34cが成膜される。
なお、以上のような工程[3]〜[5]により、封止層形成工程が構成される。
[6]次に、青(B)の着色層36Bを形成する。
この着色層36Bは、例えば、青の色材を含む感光性樹脂をスピンコート法で塗布して乾燥することにより感光性樹脂層を形成して、この感光性樹脂層を露光・現像することにより形成することができる。
この着色層36Bは、各サブ画素18Bに対応する位置に形成されるようにパターニングするとともに、端子部11tにおける接続用端子101と重なる部分に開口部45が形成されるようにパターニング(露光・現像)することが好ましい。
[7]次に、緑(G)の着色層36Gを形成する。
着色層36Gは、着色層36Bと同様に形成され、各サブ画素18Gに対応する位置に形成されるようにパターニングするとともに、端子部11tにおける接続用端子101と重なる部分に開口部45が形成されるようにパターニング(露光・現像)することが好ましい。
[8]次に、赤(R)の着色層36Rを形成する。
着色層36Rは、着色層36Bと同様に形成され、各サブ画素18Rに対応する位置に形成されるようにパターニングするとともに、端子部11tにおける接続用端子101と重なる部分に開口部45が形成されるようにパターニング(露光・現像)することが好ましい。
なお、以上のような工程[6]〜[8]により、カラーフィルター形成工程が構成される。
[9]次に、開口部45において、残存する第1封止層34aおよび第2封止層34cを除去することにより、接続用端子101を露出させる(封止層エッチング工程)。
この第1封止層34aおよび第2封止層34cを除去する方法としては、例えば、着色層36R、36G、36Bをマスクとして用いた、ドライエッチング法が好ましく用いられる。
[10]次に、透明樹脂材料からなる透明樹脂層42を介して素子基板10と対向基板41とを貼り合わせる(基板貼り合わせ工程)。
この貼り合わせは、例えば、カラーフィルター36を覆うように接着性を有する透明樹脂材料を塗布し、その後、透明樹脂材料が塗布された素子基板10に対して対向基板41を所定の位置に対向配置した状態で、例えば対向基板41を基材11側に押圧することにより、行うことができる。
透明樹脂材料としては、例えば、熱硬化型のエポキシ樹脂が挙げられる。
また、透明樹脂層42の厚さは、特に限定されないが、10μm以上100μm以下程度に設定される。
以上のような工程[1]〜工程[10]の後に、図2に示すように、素子基板10の端子部11tにFPC105を実装することで、有機EL装置100を得ることができる。
<<第2実施形態>>
次に、本発明の有機発光装置を、有機EL装置に適用した第2実施形態について説明する。
図5は、本発明の有機発光装置を、有機EL装置に適用した第2実施形態の構造を示す概略縦断面図である。
以下、第2実施形態における有機EL装置100Bについて、前記第1実施形態における有機EL装置100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図5に示す有機EL装置100Bでは、絶縁層28が各画素電極31R,31G,31Bの外縁を覆って、コンタクト電極27よりもその高さを高くして設けられていること以外は、図1に示す有機EL装置100と同様である。
すなわち、第2実施形態の有機EL装置100Bにおいて、各画素電極31R,31G,31Bの外縁を覆う絶縁層28は、コンタクト電極27よりもその高さを高くして設けられる。
このような第2実施形態の有機EL装置100Bによっても、前記第1実施形態と同様に、本発明の有機発光装置を適用することができる。
<電子機器>
次に、本発明の電子機器を適用したヘッドマウントディスプレイについて説明する。
図6は、本発明の電子機器をヘッドマウントディスプレイに適用した概略図である。
図6に示すように、本発明の電子機器としてのヘッドマウントディスプレイ(HMD)1000は、左右の目に対応して設けられた2つの表示部1001を有している。観察者Mはヘッドマウントディスプレイ1000を眼鏡のように頭部に装着することにより、表示部1001に表示された文字や画像等を見ることができる。例えば、左右の表示部1001に視差を考慮した画像を表示すれば、立体的な映像を見て楽しむこともできる。
表示部1001には、上述した第1実施形態または第2実施形態の有機EL装置100、100Bが搭載されている。
したがって、ヘッドマウントディスプレイ1000は、長期に亘って、ダークスポットの発生に起因する発光特性の低下が抑制または防止された有機EL素子30を備える有機EL装置100、100Bを搭載している。そのため、信頼性の高いヘッドマウントディスプレイ1000を提供することができる。
なお、ヘッドマウントディスプレイ1000は、2つの表示部1001を有することに限定されず、左右のいずれかに対応させた1つの表示部1001を備える構成としてもよい。
また、本発明の電子機器は、図6のヘッドマウントディスプレイの他にも、例えば、パーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話機、時計、ディジタルスチルカメラ、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダー型、モニタ直視型のビデオテープレコーダー、ラップトップ型パーソナルコンピューター、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニター類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
以上、本発明の有機発光装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
例えば、本発明の有機発光装置および電子機器における各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.第1封止層の成膜
(サンプル1)
まず、p型シリコン結晶基板を用意し、その後、以下に示す条件でイオンプレーティング法により、シリコン酸窒化物(SiON)で構成される第1封止層を形成した。
<成膜条件>
・チャンバー内の圧力 :2.0Pa
・プロセスガス :N
・原材料 :SiO
・放電電流値 :130A
・ガンAr流量 :80mL/m
なお、得られた第1封止層の平均厚さは200nmであった。
(サンプル2)
イオンプレーティング法により、シリコン酸窒化物で構成される第1封止層を成膜する際の条件を以下のように変更して、サンプル1と同様にして、第1封止層を得た。
<成膜条件>
・チャンバー内の圧力 :1.8Pa
・プロセスガス :N
・原材料 :SiO
・放電電流値 :130A
・ガンAr流量 :80mL/m
なお、得られた第1封止層の平均厚さは200nmであった。
(サンプル3)
イオンプレーティング法により、シリコン酸窒化物で構成される第1封止層を成膜する際の条件を以下のように変更して、サンプル1と同様にして、第1封止層を得た。
<成膜条件>
・チャンバー内の圧力 :1.2Pa
・プロセスガス :N
・原材料 :SiO
・放電電流値 :130A
・ガンAr流量 :80mL/m
なお、得られた第1封止層の平均厚さは200nmであった。
(サンプル4)
イオンプレーティング法により、シリコン酸窒化物で構成される第1封止層を成膜する際の条件を以下のように変更して、サンプル1と同様にして、第1封止層を得た。
<成膜条件>
・チャンバー内の圧力 :0.8Pa
・プロセスガス :N
・原材料 :SiO
・放電電流値 :130A
・ガンAr流量 :80mL/m
なお、得られた第1封止層の平均厚さは200nmであった。
(サンプル5)
イオンプレーティング法により、シリコン酸窒化物で構成される第1封止層を成膜する際の条件を以下のように変更して、サンプル1と同様にして、第1封止層を得た。
<成膜条件>
・チャンバー内の圧力 :0.5Pa
・プロセスガス :N
・原材料 :SiO
・放電電流値 :130A
・ガンAr流量 :80mL/m
なお、得られた第1封止層の平均厚さは200nmであった。
2.有機EL装置の製造
(装置サンプル1)
前述した有機EL装置の製造方法の工程[1]〜[10]にしたがって、装置サンプル1の有機EL装置を製造した。
なお、この装置サンプル1の製造において、前記工程[3]では、第1封止層34aを、前記サンプル1の第1封止層を形成する際の条件と同一の条件で成膜した。
(装置サンプル2)
前記工程[3]において、第1封止層34aを、前記サンプル2の第1封止層を形成する際の条件と同一の条件で成膜したこと以外は、前記装置サンプル1と同様にして、装置サンプル2の有機EL装置を製造した。
(装置サンプル3)
前記工程[3]において、第1封止層34aを、前記サンプル3の第1封止層を形成する際の条件と同一の条件で成膜したこと以外は、前記装置サンプル1と同様にして、装置サンプル2の有機EL装置を製造した。
(装置サンプル4)
前記工程[3]において、第1封止層34aを、前記サンプル4の第1封止層を形成する際の条件と同一の条件で成膜したこと以外は、前記装置サンプル1と同様にして、装置サンプル2の有機EL装置を製造した。
(装置サンプル5)
前記工程[3]において、第1封止層34aを、前記サンプル5の第1封止層を形成する際の条件と同一の条件で成膜したこと以外は、前記装置サンプル1と同様にして、装置サンプル2の有機EL装置を製造した。
3.評価
3−1.ダークスポット発生の有無による評価
各装置サンプルNo.の有機EL装置を、それぞれ、100個ずつ用意し、これらを、65℃90%RH28hrの高温高湿の条件下に放置した後、初期不良が生じた有機EL装置をリジェクトした。
その後、65℃90%RH1000hrの条件で信頼性試験を実施し、各有機EL装置におけるダークスポットの発生の有無を確認し、各装置サンプルNo.の有機EL装置おいて、ダークスポットが発生している装置(パネル)の数を求めた。
その結果を、以下の表1に示す。
Figure 2017068928
表1に示す通り、装置サンプル1および装置サンプル2では、ダークスポットが発生したのに対し、装置サンプル3、装置サンプル4および装置サンプル5ではダークスポットが増加しないことが分かった。
以上のように装置サンプル2と装置サンプル3との間で、ダークスポットの発生の有無の境界が認められ、装置サンプル2が備える第1封止層よりも、疎な層を形成することで、第1封止層を、ガスバリア性(水蒸気バリア性)を有していないものとし得ると考えられた。
3−2.重水素拡散係数の測定
上述した有機EL装置におけるダークスポット発生の有無による評価において、ダークスポット発生の境界となっていた装置サンプル2および装置サンプル3が備える第1封止層に対応するサンプル2およびサンプル3の第1封止層について、それぞれ、85℃、重水素雰囲気下での第1封止層中における重水素拡散係数を測定した。
なお、重水素拡散係数の測定は、以下の通りに実施した。
<測定方法>
重水拡散係数の算出については、SIMS装置(カメカ社製、「IMS−7f」)を用いて、各サンプルについて85℃、重水素雰囲気下で膜中に拡散させた重水素量をSIMSにより測定し、その値から重水素拡散係数を算出した。SIMSによる測定は、Csの1次ビームを用い、Dの2次イオンを検出。なおDの測定にあたっては妨害イオンであるH2+の影響を除くため高質量分解能モードで測定した。
以上のようにして測定された、サンプル2、3の第1封止層における、それぞれのp型シリコン結晶基板側への重水素拡散係数から、サンプル2の第1封止層とサンプル3の第1封止層との間における重水素拡散係数の境界は、1×10−21(m2/sec)であることが判った。すなわち、第1封止層の重水素拡散係数が1×10−21(m2/sec)以上であれば、この第1封止層は、ガスバリア性(水蒸気バリア性)を有していないものであると言うことができ、有機EL装置を、かかる第1封止層を備えるものとすることで、ダークスポット発生に起因する発光特性の低下が抑制された有機発光素子を備える有機EL装置を得ることができる。
4.赤外線吸収スペクトルの測定
サンプル2、3、5の第1封止層について、それぞれ、フーリエ変換型赤外分光光度計により、赤外線吸収を測定した。
なお、フーリエ変換型赤外分光光度計による測定条件は、以下の通りである。
<測定条件>
・装置名 :サーモニコレー380
・光源 :高輝度セラミック光源(黒体放射で赤外光を出すものである)
・検出器 :MCT
・ビームスプリッタ:KBr
・分解能 :4.0cm−1
・プリズム :ダイヤモンド(屈折率=2.40)
・入射角 :45゜
・偏光 :無偏光
そして、測定結果は、ATRで測定したものを、“アドバンストATR補正”という装置付属のソフトで補正している。(これにより透過光測定と比較可能となる。)
また、ATR補正の条件は、
・クリスタル (Diamond)の屈折率=2.40
・サンプルの屈折率=1.50
・入射角=45.0°
・反射回数=1.0
であった。
サンプル2、3、5の第1封止層において、それぞれのB/Aを、以下の表2、図7に示す。
また、サンプル2、3、5の第1封止層において得られた赤外線吸収スペクトルを、それぞれ、図8に示す。
Figure 2017068928
表2、図7に示すように、サンプル2の第1封止層は、B/Aが0.6以上であった。
これに対し、サンプル3、5の第1封止層は、いずれも、B/Aが0.6を大きく下回るものであった。このことから、重水拡散係数1×10−21(m2/sec)以上は、FTIRにおける0.6以上に対応することが判った。
10…素子基板、11…基材、11a…第1絶縁膜、11b…第2絶縁膜、11t…端子部、12…走査線、13…データ線、14…電源線、15…データ線駆動回路、16…走査線駆動回路、17…検査回路、18…サブ画素、18B…サブ画素、18G…サブ画素、18R…サブ画素、19…画素、20…画素回路、21…スイッチング用トランジスター、22…蓄積容量、23…駆動用トランジスター、23a…半導体層、23c…チャネル領域、23d…ドレイン領域、23g…ゲート電極、23s…ソース領域、24…第1層間絶縁膜、25…反射層、26…第2層間絶縁膜、26a…コンタクトホール、27…コンタクト電極、28…絶縁層、28a…開口部、29…配線層、30…有機EL素子、31…画素電極、31B…画素電極、31G…画素電極、31R…画素電極、32…機能層、33…対向電極、34…封止層、34a…第1封止層、34b…緩衝層、34c…第2封止層、35…搭載基板、36…カラーフィルター、36B…着色層、36G…着色層、36R…着色層、41…対向基板、42…透明樹脂層、45…開口部、100…有機EL装置、100B…有機EL装置、101…接続用端子、102…入力端子、103…配線層、105…FPC、110…駆動用IC、1000…ヘッドマウントディスプレイ、1001…表示部、E1…表示領域、E2…ダミー領域、M…観察者、θ…角度

Claims (5)

  1. 基板と、前記基板上に配置された有機発光素子と、前記有機発光素子を覆うことで封止する封止層とを備え、
    前記封止層は、前記有機発光素子側から順に、主として無機材料で構成される第1封止層と、主として樹脂材料で構成される緩衝層と、主としてシリコン酸窒化物で構成される第2封止層とが積層された積層体であり、
    前記第1封止層は、85℃、重水素雰囲気下での層中における重水素拡散係数が1.0×10−21/sec以上であることを特徴とする有機発光装置。
  2. 前記無機材料は、シリコン酸窒化物、シリコン酸化物およびシリコン窒化物のうちの少なくとも1種を含有する請求項1に記載の有機発光装置。
  3. 前記無機材料は、シリコン酸窒化物であり、
    前記第1封止層は、フーリエ変換型赤外分光光度計で測定した際の1000cm−1付近に生じるピークの透過率をA[%]とし、3200cm−1付近に生じるピークの透過率をB[%]としたとき、B/Aが0.6以上である請求項1または2に記載の有機発光装置。
  4. 前記第2封止層は、前記B/Aが0.01以上0.5未満の層を含むものである請求項3に記載の有機発光装置。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の有機発光装置を備えることを特徴とする電子機器。
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