JP2017066105A - キトサン及び/又はキチンを含有する錠剤 - Google Patents

キトサン及び/又はキチンを含有する錠剤 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、高含有量のキチン及び/又はキトサンを含有していても、コーティング工程や流通に耐えうる硬度を備える錠剤を提供することである。
【解決手段】キチン及び/又はキトサンと水溶性セルロース誘導体とを配合し、且つ水分含量を6重量%以上に設定すると、錠剤を製造する際の圧縮成形性が向上し、高含有量のキチン及び/又はキトサンを含有していても、コーティング工程や流通に耐えうる硬度を備える錠剤が得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、キチン及び/又はキトサンを含有する錠剤に関する。より具体的には、本発明は、キチン及び/又はキトサンを含有していながらも、コーティング工程や流通に耐えうる硬度を備えている錠剤に関する。また、本発明は、当該錠剤の製造方法に関する。
キトサン及びキチンは、有用生理機能を有する食物繊維として知られている。具体的には、キトサンには、血清コレステロール値の改善、血清尿酸値の低減、脂肪吸収阻害、血圧上昇抑制、解毒・排毒、抗菌等の生理機能が知られている。また、キチンには、血清コレステロール値の改善、血圧上昇抑制、解毒・排毒免疫強化、高脂血症の改善等の生理機能が知られている。そこで、従来、キトサンやキチンを配合した食品や医薬品が開発されている。
しかしながら、キトサン及びキチンには、製剤性が悪いという特有の性質があり、特に、圧縮成形性が悪く打錠して錠剤に製剤化にすると、硬度が十分に得られず、表面が摩損し易くなるという欠点がある。
更に、キトサン及びキチンには、吸湿性が高く、口腔内で唾液を吸収し易いという特性がある。このような口腔内での唾液の吸収は、服用感の低下に繋がるので、キトサン及び/又はキチンを含む錠剤を提供する場合には、錠剤の表面にコーティングを施し、服用感を向上させることが望ましい。しかしながら、前述するように、キトサン及び/又はキチンを含む錠剤では、十分な硬度を備えることができないため、コーティング工程で欠けや摩損が生じ易くなるという問題点がある。
キトサン及び/又はキチンを含む錠剤において、硬度を向上させるには、結合剤等の含有量を増加させることが有効になるが、結合剤等の含有量を増加させると、キトサン及び/又はキチンの含有量が低下し、その結果、1回当たりの服用錠数の増大等を招き、服用者に負担を強いることになる。服用者の負担を減らしつつ、キトサン及び/又はキチンが有する有能生理機能を効果的に享受させるには、キトサン及び/又はキチンの含有量を高めた製剤を提供することが有効になるが、錠剤の場合には、キトサン及び/又はキチンの含有量を高めると、硬度の低下の問題が顕著になるので、従来技術では、高含有量のキトサン及び/又はキチンを含む錠剤を実用化できていないのが現状である。
一方、従来、圧縮成形性に劣る物質から高い硬度の錠剤を製造する方法について、いくつか報告されている。例えば、特許文献1には、圧縮成形性に劣る粉末状の機能性物質に対して微細化された水溶性セルロースを付着させた後に造粒して顆粒を得て、それを打錠することにより、高い硬度の錠剤が得られることを報告している。また、特許文献2には、圧縮成形性の劣る薬物及び賦形剤を、賦形剤及び結合剤を溶解又は懸濁させた液を用いて湿式造粒して顆粒を得た後に、これを打錠することにより、打錠障害がなく錠剤を製造できることが報告されている。しかしながら、キトサン及び/又はキチンを含む錠剤に対して特許文献1及び2に開示されている製剤化技術を適用しても、コーティング工程や流通に耐えうる硬度を備えさせることができないのが現状であり、キトサン及び/又はキチンを含む錠剤の製剤化技術については更なる検討が必要とされている。
このような従来技術を背景として、高含有量のキチン及び/又はキトサンを含有していても、コーティング工程や流通に耐えうる硬度を備えている錠剤を製造する技術の開発が切望されている。
特開2010−285381号公報 特開2007−137802号公報
従来、錠剤は、打錠障害の抑制や製剤安定化等のために、水分含量が4重量%程度以下であることが望ましいと考えられており、前記特許文献1でも、錠剤の水分含量は3.0重量%以下に設定することが開示されている。また、従来、キチン及び/又はキトサンを含む錠剤において、水分含量と硬度との関係については明らかにされていない。
このような状況の下、本発明の目的は、高含有量のキチン及び/又はキトサンを含有していても、コーティング工程や流通に耐えうる硬度を備える錠剤を提供することである。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、意外にも、キチン及び/又はキトサンと水溶性セルロース誘導体とを配合し、且つ水分含量を敢えて6重量%以上に設定すると、錠剤を製造する際の圧縮成形性が向上し、高含有量のキチン及び/又はキトサンを含有していても、コーティング工程や流通に耐えうる硬度を備える錠剤が得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)キトサン及び/又はキチン、並びに(B)水溶性セルロース誘導体を含有し、水分含量が6重量%以上であることを特徴とする、錠剤。
項2. 前記(B)成分がヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の錠剤。
項3. 前記(B)成分の平均分子量が4万〜14万である、項1又は2に記載の錠剤。
項4. 前記(A)成分が65〜95重量%含まれる、項1〜3のいずれかに記載の錠剤。
項5. 前記(A)成分がキトサンである、項1〜4のいずれかに記載の錠剤。
項6. 項1〜5のいずれかに記載の錠剤を素錠として含む、コーティング錠。
項7. (A)キトサン及び/又はキチン、並びに(B)水溶性セルロース誘導体を含有し、水分含量が6重量%以上である錠剤の製造方法であって、
前記(A)成分の全量と、前記(B)成分の一部又は全量を湿式造粒し、造粒物を得る工程A、並びに
前記工程Aで得られた造粒物、或は前記工程Aで得られた造粒物と前記(B)成分の残部の混合物を打錠成型に供し、水分含量が6重量%以上の錠剤を得る工程B
を含む、製造方法。
本発明の錠剤は、高含有量のキチン及び/又はキトサンを含有していても、十分な硬度を備えることができるので、流通に耐えうる物理的強度を備えることに加え、配合する結合剤等の含有量を低減でき、少ない服用錠数で、キチン及び/又はキトサンが有する生理機能を効果的に享受することが可能になる。
また、本発明の錠剤は、コーティング工程に耐えうる硬度を備えているので、容易にコーティングを施すことができ、これによってキチン及び/又はキトサンの唾液の吸収による服用感の低下を抑止し、服用し易い錠剤を提供することも可能になる。
本発明の錠剤は、キトサン及び/又はキチン(以下、(A)成分と表記することもある)、並びに水溶性セルロース誘導体(以下、(B)成分と表記することもある)を含有し、水分含量が6重量%以上であることを特徴とする。以下、本発明の錠剤について、詳述する。
(A)キトサン及び/又はキチン
本発明の錠剤は、キトサン及び/又はキチンを含有する。従来技術では、キトサン及び/又はキチンは、圧縮成形性に劣り、錠剤に製剤化すると、硬度を低下させる要因になっていたが、本発明では、後述する(B)成分と所定の水分含量を充足することにより、キトサン及び/又はキチンを含んでいても、コーティング工程や流通に耐えうる硬度を備える錠剤を得ることが可能になっている。
キトサンとは、グルコサミンがβ1,4結合によって連結した構造を主に有しており、グルコサミン以外にもN−アセチルグルコサミンが構成成分として含まれることがある多糖類である。
本発明で使用されるキトサンの由来については、特に制限されないが、例えば、エビ、カニ等の甲殻類の甲殻;イカの甲等から、カルシウムやタンパク質等を除去することにより得られたキチンを脱アセチル化したものを使用することができる。
また、本発明で使用されるキトサンの脱アセチル化度については、特に制限されないが、例えば、50〜100%、好ましくは60〜100%、更に好ましくは80〜100%が挙げられる。ここで、キトサンの脱アセチル化度は、コロイド滴定法によって測定される値である。
また、本発明で使用されるキトサンの平均分子量については、特に制限されないが、例えば、0.5w/v酢酸水溶液に0.5重量%となるように溶解させた際の20℃での粘度が、50mPa・s程度以上、好ましくは50〜1000mPa・s程度、更に好ましくは100〜1000mPa・s程度が挙げられる。ここで、20℃での粘度は、B型粘度計を使用して、回転数60rpm(ローターNo.2(50mPa・s以上100mPa・s未満)、回転数30rpm(ローターNo.2(100mPa・s以上400mPa・s未満)、ローターNo.3(400mPa・s以上4000mPa・s以下))にて測定される値である。
キチンとは、N−アセチルグルコサミンがβ1,4結合によって連結した構造を主に有しており、N−アセチルグルコサミン以外にも、グルコサミンが構成成分として含まれることがある多糖類である。
本発明で使用されるキチンの由来については、特に制限されないが、例えば、エビ、カニ等の甲殻類の甲殻;イカの甲等から、カルシウムやタンパク質等を除去することにより得られたものを使用することができる。
本発明で使用されるキチンの平均分子量についても、特に制限されないが、例えば、2000〜500万程度、好ましくは10000〜100万程度が挙げられる。ここで、キチンの平均分子量は、極限粘度法によって測定される重量平均分子量である。
本発明の錠剤は、(A)成分として、キトサン又はキチンのいずれか一方を単独含んでいてもよく、キトサン及びキチンの双方を含んでいてもよい。キトサンには、血清コレステロール値の改善、血清尿酸値の低減、脂肪吸収阻害、血圧上昇抑制、解毒・排毒、抗菌等の生理機能があり、機能性が高い食物繊維であるので、本発明の錠剤に高い機能性を備えさせるという観点から、(A)成分の中でも、好ましくはキトサンが挙げられる。
本発明の錠剤における(A)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば65〜95重量%が挙げられる。特に、キトサン及び/又はキチンを高含有量で含む場合には、圧縮成形性が著しく悪くなり、従来技術では、高い硬度の錠剤を製造することがとりわけ困難であったが、本発明の錠剤では、このような従来技術の問題点が克服されており、キトサン及び/又はキチンを高含有量で含む場合であっても、コーティング工程や流通に耐えうる硬度を備える錠剤を得ることが可能になっている。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明の錠剤における(A)成分の含有量として、好ましくは65〜90重量%、更に好ましくは80〜90重量%が挙げられる。
(B)水溶性セルロール誘導体
本発明は、水溶性セルロース誘導体を含有する。本発明の錠剤では、キトサン及び/又はキチンと共に、水溶性セルロース誘導体を配合し、且つ後述する特定の水分含量を満たすことによって、コーティング工程や流通に耐えうる硬度を備える錠剤を得ることが可能になる。
水溶性セルロース誘導体とは、セルロースの水酸基の水素原子の一部を、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基等の置換基で置換した水溶性高分子である。本発明で使用される水溶性セルロース誘導体としては、可食性のもの又は薬学的に許容されるものであることを限度として、特に制限されないが、具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等)の等が挙げられる。
また、水溶性セルロース誘導体の平均分子量については、特に制限されないが、例えば、2万〜20万、好ましくは4万〜15万、更に好ましくは4万〜14万が挙げられる。ここで、水溶性セルロース誘導体の平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される重量平均分子量である。
本発明の錠剤では、1種の水溶性セルロース誘導体を単独で使用してもよく、また2種以上の水溶性セルロース誘導体を組み合わせて使用してもよい。
水溶性セルロース誘導体の中でも、錠剤の硬度をより一層向上させるという観点から、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等)が挙げられる。
本発明の錠剤において、(A)成分と(B)成分の比率については、特に制限されないが、例えば、(A)成分100重量部当たり(B)成分が1.5〜13重量部が挙げられる。錠剤の硬度をより一層向上させるという観点から、(A)成分と(B)成分の比率として、(A)成分100重量部当たり、(B)成分が好ましくは2〜11重量部、更に好ましくは2〜8重量部が挙げられる。
本発明の錠剤における(B)成分の含有量については、特に制限されず、前述する(A)成分と(B)成分の比率を目安として適宜設定すればよいが、例えば1.5〜8重量%が挙げられる。錠剤の硬度をより一層向上させるという観点から、(B)成分の含有量として、好ましくは1.7〜8重量%、更に好ましくは1.7〜6.5重量%が挙げられる。
水分含量
本発明の錠剤は、水分含量が6重量%以上に設定される。このような水分含量を充足することによって、(A)成分を含んでいても、水分と(B)成分との相互作用によって、コーティング工程や流通に耐えうる硬度を備えさせることが可能になる。
錠剤の硬度をより一層向上させるという観点から、本発明の錠剤の水分含量として、好ましくは6〜10重量%、更に好ましくは8〜10重量%が挙げられる。ここで、錠剤の水分含量は、赤外線水分計を用いた乾燥減量法により測定される値である。
本発明の錠剤における水分含量の調節は、製造時の乾燥条件を適宜設定することによって行われる。
その他の成分
本発明の錠剤には、前述する成分の他に、本発明の効果を妨げない範囲で、錠剤への製剤化に必要な他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、賦形剤、流動化剤、滑沢剤、崩壊剤、結合剤((B)成分以外)等が挙げられる。
このような添加剤としては、具体的には、結晶セルロース、澱粉、リン酸水素カルシウム、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、乳糖、ショ糖、グルコース、二酸化ケイ素、含水無水ケイ酸、カオリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、澱粉、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、部分α化澱粉、クロスポピドン、プルラン、グアガム、アラビアガム、キサンタンガム等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤を含有させる場合、その含有量については、添加剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、配合される添加剤が総量で3.5〜27重量%、好ましくは3.5〜15重量%、更に好ましくは6〜10重量%が挙げられる。
本発明の錠剤は、前述する成分の他に、(A)成分以外の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、食品や医薬品に使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬、生薬エキス末、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて適宜設定される。
錠剤の物性
本発明の錠剤は、十分な硬度を備えることができ、コーティング工程や流通に耐えうる特性を備えている。本発明の錠剤の硬度としては、具体的には、11kgf以上、好ましくは11kgf〜50kgf、更に好ましくは13kgf〜30kgfが挙げられる。ここで、錠剤の硬度は、ロードセル式錠剤硬度計(破断端子の試験スピード0.5mm/秒)によって測定される値を指す。
錠剤のコーティング
本発明の錠剤は、必要に応じて、コーティングが施して、コーティング錠として提供してもよい。本発明の錠剤に含まれるキトサン及び/又はキチンは、吸湿性が高く、口腔内で唾液を吸収することにより服用感を低下させる要因になっているが、コーティングが施されている場合には、このような服用感の低下を抑制することが可能になる。また、錠剤の硬度が低い場合には、コーティング工程で摩損が生じるが、本発明の錠剤は、コーティング工程に耐えうる十分な硬度を備えているので、コーティング錠としての素錠として好適に使用できる。
本発明の錠剤を素錠として使用してコーティング錠にする場合、公知の手法に従って、糖衣コーティング又はフィルムコーティングを施せばよい。
本発明の錠剤に糖衣コーティングを施す場合、使用される糖衣コーティング剤としては、特に制限されず、食品や医薬品において一般的な糖衣コーティングに使用されているものを使用できる。糖衣コーティング剤として、具体的には、ショ糖、果糖、乳糖、水飴、糖アルコール(例えば、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、還元パラチノース)、オリゴ糖(例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イヌロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖)、ポリデキストロース、デキストリン、難消化性デキストリン、還元難消化性デキストリン等の糖類が挙げられる。これらの糖類は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、当該糖衣コーティング剤には、必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよい。
また、本発明の錠剤にフィルムコーティングを施す場合、使用されるフィルムコーティング剤としては、特に制限されず、食品や医薬品において一般的なフィルムコーティングに使用されているものを使用できる。フィルムコーティング剤に使用される基剤としては、具体的には、シェラック、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。また、フィルムコーティング剤には、前記基剤の他に、必要に応じて、可塑剤、着色剤、光沢化剤、甘味料等の添加剤が含まれていてもよい。
本発明の錠剤を素錠としてコーティングを施す場合、素錠とコーティング剤の比率については、一般的なコーティング錠の場合と同様に設定すればよいが、例えば、素錠100重量部当たり、コーティング剤が0.7〜2.0重量部、好ましくは0.7〜1.8重量部、更に好ましくは0.7〜1.5重量部が挙げられる。
錠剤の用途・形状
本発明の錠剤は、キトサン及び/又はキチンによる有用な生理機能がもたらされるので、食品や医薬品として使用される。
本発明の錠剤の1錠あたりの重量については、1回当たりの服用量、(A)成分の含有量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば120〜350mg程度が挙げられる。
錠剤の製造方法
本発明の錠剤は、公知の製造方法に従って得ることができる。本発明の錠剤の製造方法の好適な一例として、下記工程A及びBを経て製造する方法が挙げられる。
工程A:前記(A)成分の全量と、前記(B)成分の一部又は全量を湿式造粒し、造粒物を得る工程、
工程B:前記工程Aで得られた造粒物、或は前記工程Aで得られた造粒物と前記(B)成分の残部の混合物を打錠成型に供し、水分含量が6重量%以上の錠剤を得る工程。
工程Aでは、(A)成分の全量と、(B)成分の一部又は全量を湿式造粒に供する。工程Aにおいて(B)成分の一部を湿式造粒に供し、(B)成分の残部は工程Bにおける打錠成型に直接供することによって、より一層硬度が高い錠剤を得ることが可能になる。工程Aにおいて(B)成分の一部を湿式造粒に供する場合、工程Aに供される(B)成分の割合については、特に制限されないが、錠剤に含まれる(B)成分の総量100重量部に対して、前記工程Aに供される(B)成分が20〜75重量部程度、好ましくは25〜70重量部程度、更に好ましくは30〜60重量部程度であればよい。
また、工程Aにおける湿式造粒は、(A)成分及び(B)成分を、溶媒に溶解又は懸濁させた原料液を使用して行われる。当該原料液に使用される溶媒については、湿式造粒に使用可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、水、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの溶媒の中でも好ましくは水が挙げられる。
また、湿式造粒に供される原料液において、(A)成分及び(B)成分と溶媒との比率については、特に制限されないが、(A)成分及び(B)成分の総量100重量部当たり、溶媒が70〜300重量部程度、好ましくは75〜280重量部程度、更に好ましくは78〜280重量部程度であればよい。
工程Aでは、前記原料液を湿式造粒に供して乾燥することにより造粒物を得る。工程Aで得られる造粒物の水分含量については、工程Bにて添加される成分の量を勘案して、最終的に得られる錠剤の水分含量が6重量%以上となるように設定すればよい。湿式造粒で得られた造粒物を乾燥する際の温度については、特に制限されないが、例えば、40〜90℃程度、好ましくは50〜90℃程度、更に好ましくは60〜90℃程度が挙げられる。
工程Aで得られる造粒物の粒径については、打錠成型に供することができることを限度として、特に制限されないが、例えば平均粒子径が30〜200μm程度、好ましくは50〜150μm程度、更に好ましくは60〜150μm程度であればよい。
工程Bでは、工程Aで得られた造粒物、或は工程Aで得られた造粒物と(B)成分の残部の混合物を用いて打錠成型を行う。また、本発明の錠剤に、(A)成分及び(B)成分以外の成分を配合する場合には、これらの成分は、工程Bにおいて混合されて打錠成型に供される。
工程Bにおける打錠成型は、単発錠剤機、ロータリー式錠剤機、高速回転式錠剤機等の装置を用いて行うことができる。また、打錠成型する際の打圧については、錠剤を成形可能である限り、特に制限されないが、通常0.9〜2.0t程度、好ましくは1.0〜2.0t程度、更に好ましくは1.2〜2.0t程度に設定すればよい。
斯くして工程A及びBを行うことによって、本発明の錠剤が得られる。本発明の錠剤をコーティング錠にする場合には、工程Bの後に、使用するコーティング剤の種類に応じたコーティング工程に供すればよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の試験例及び製造例において使用した主な成分の入手元は以下の通りである。
キトサン:日本化薬フードテクノ株式会社(脱アセチル化度:85%以上、粘度:100mPa・s以上(0.5%溶液、B型粘度計、20℃))
ヒドロキシプロピルセルロース(重量平均分子量40000):日本曹達株式会社(製品名:セルニーSSL)
ヒドロキシプロピルセルロース(重量平均分子量100000):日本曹達株式会社(製品名:セルニーSL)
ヒドロキシプロピルセルロース(重量平均分子量140000):日本曹達株式会社(製品名:セルニーL)
ヒプロメロース(平均分子量100000):信越化学工業株式会社(製品名:メトローズ60SH50)
結晶セルロース:旭化成ケミカルズ株式会社(製品名:セオラスST−100)
試験例1
1.錠剤の製造
表1及び2に示す組成の錠剤を製造した。具体的な製造方法は以下に示す通りである。先ず、水溶性セルロース誘導体の全量を重量比で40倍量の水に溶解させて造粒水を得た。次いで、撹拌造粒機を用いてキトサンの全量を撹拌しながら、前記造粒水を除々に加え攪拌造粒した。その後、流動層乾燥機を用いて乾燥することにより、造粒物(平均粒子径110μm程度)を得た。得られた造粒物と他の成分を所定量混合し、打錠機(ロータリー方式、AQUA3、株式会社菊水製作所)を用いて、打錠圧を1.8tに設定して打錠成型に供することにより、錠剤(φ8mm)を製造した。なお、水分含量については、流動層乾燥機を用いた乾燥時の乾燥時間をコントロールすることによって調節した。
2.錠剤の水分含量、硬度、及びコーティング適性の評価
以下の方法に従って、錠剤の水分含量、硬度、及びコーティング適性を評価した。
<水分含量>
赤外線水分計FD−240(株式会社ケット科学研究所)を用いて試料2gを20分測定することにより、錠剤の水分含量を測定した。なお、錠剤の水分含量は、錠剤を粉砕したものを試料として使用して測定した。
<硬度>
ロードセル式錠剤硬度計PC−30(岡田精工株式会社)を用いて、破断端子の試験スピード0.5mm/秒に設定して、錠剤の硬度を測定した。測定された硬度の値から、以下の判定基準に従って、錠剤の硬度を分類した。
錠剤の硬度の分類基準
◎:15kgf以上
○:13kgf以上15kgf未満
△:11kgf以上13kgf未満
×:11kgf未満
<コーティング適性>
各錠剤をコーティング用のパンで回転させた後に、錠剤の表面を目視で観察し、以下の判定基準に従って、コーティング適性を評価した。
コーティング適性の判定基準
○:表面が摩損した錠剤がない。
×:表面が摩損した錠剤がある。
3.結果
得られた結果を表1及び2に示す。この結果から、キトサンと水溶性セルロース誘導体を含み、且つ水分含量が6重量%以上の錠剤は、硬度が11kgf以上であり、コーティング工程に耐えうる強度を備えていた(実施例1〜12)。特に、キトサンと水溶性セルロース誘導体を含んでいても、水分含量が8〜10重量%の錠剤では、硬度が13kgf以上であり、コーティング工程や輸送に耐えうる十分な硬度を備えていた(実施例3〜12)。一方、キトサンと水溶性セルロース誘導体を含んでいても、水分含量が6重量%未満の錠剤では、硬度が11kgf未満になり、コーティング工程に耐えうるものではなかった(比較例1)。また、水溶性セルロース誘導体を含まない場合にも、コーティング工程に耐えうる硬度を備えることができなかった(比較例2)。
試験例2
1.錠剤の製造
表3に示す組成の錠剤を製造した。具体的な製造方法は以下に示す通りである。先ず、 (i)に示す水溶性セルロース誘導体の全量を重量比で40倍量の水に溶解させて造粒液を得た。次いで、撹拌造粒機を用いてキトサンの全量を撹拌しながら、前記造粒水を除々に加え攪拌造粒した。その後、流動層乾燥機を用いて乾燥することにより、造粒物(平均粒子径110μm程度)を得た。得られた造粒物、(ii)に示す水溶性セルロース誘導体、及び他の成分を所定量混合し、打錠機(ロータリー方式、AQUA3、株式会社菊水製作所)を用いて、打錠圧を1.8tに設定して打錠成型に供することにより、錠剤(φ8.0mm)を製造した。なお、水分含量については、流動層乾燥機を用いた乾燥時の乾燥時間をコントロールすることによって調節した。
2.錠剤の水分含量、硬度、及びコーティング適性の評価
前記試験例1と同様の方法で、錠剤の水分含量、硬度、及びコーティング適性を評価した。
3.結果
得られた結果を表3に示す。この結果からも、キトサンと水溶性セルロース誘導体を含み、且つ水分含量が6重量%以上の錠剤は、コーティング工程や輸送に耐えうる強度を備えていることが確認された(実施例13〜15)。また、実施例13〜15の錠剤は、前記試験例1において得られた実施例3、4〜6、及び8〜12に比べて、水分含量が同じであるにも拘わらず、錠剤の硬度が向上していることから、水溶性セルロース誘導体をキトサンとの造粒時と打錠成型時の2回に分けて添加した場合には、錠剤の硬度がより一層向上することも明らかとなった。
製造例
表4に示す組成の錠剤を前記試験例1と同様の条件で製造した。得られた錠剤は、いずれも、コーティング工程や輸送に耐えうる十分な硬度を備えていた。

Claims (7)

  1. (A)キトサン及び/又はキチン、並びに(B)水溶性セルロース誘導体を含有し、水分含量が6重量%以上であることを特徴とする、錠剤。
  2. 前記(B)成分がヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の錠剤。
  3. 前記(B)成分の平均分子量が4万〜14万である、請求項1又は2に記載の錠剤。
  4. 前記(A)成分が65〜95重量%含まれる、請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤。
  5. 前記(A)成分がキトサンである、請求項1〜4のいずれかに記載の錠剤。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の錠剤を素錠として含む、コーティング錠。
  7. (A)キトサン及び/又はキチン、並びに(B)水溶性セルロース誘導体を含有し、水分含量が6重量%以上である錠剤の製造方法であって、
    前記(A)成分の全量と、前記(B)成分の一部又は全量を湿式造粒し、造粒物を得る工程A、並びに
    前記工程Aで得られた造粒物、或は前記工程Aで得られた造粒物と前記(B)成分の残部の混合物を打錠成型に供し、水分含量が6重量%以上の錠剤を得る工程B
    を含む、製造方法。
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JP2019216683A (ja) * 2018-06-22 2019-12-26 大日精化工業株式会社 錠剤及びその製造方法

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