JP2017066027A - パルスレーザを用いてガラス基板に孔を形成する方法、および孔を有するガラス基板を製造する方法 - Google Patents

パルスレーザを用いてガラス基板に孔を形成する方法、および孔を有するガラス基板を製造する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】割れおよび欠けの発生を抑制して、現実的な時間でガラス基板に孔を形成する。
【解決手段】パルスレーザを用いてガラス基板に孔を形成する方法であって、(1)相互に対向する第1および第2の表面を有するガラス基板を準備する工程と、(2)前記ガラス基板の前記第1の表面の側に、第1の条件で、レンズを介してパルスレーザを照射することにより、前記第1の表面に、凹部を形成する工程と、(3)前記パルスレーザのエネルギー密度が前記ガラス基板の加工閾値以下となる第2の条件で、前記凹部に前記パルスレーザを照射して、孔を形成する工程と、を有する方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、パルスレーザを用いてガラス基板に孔を形成する方法、および孔を有するガラス基板を製造する方法に関する。
従来より、COレーザ等のレーザをガラス基板に照射することにより、ガラス基板に1または2以上の貫通孔を形成する技術が知られている。最近では、より微細な貫通孔を形成するため、レーザとしてパルスレーザを使用して、貫通孔加工を行うことが検討されている。
例えば、非特許文献1には、加工の際に、ガラス基板の表面にレーザ吸収のよい顔料を塗布することにより、パルスレーザのエネルギー密度を下げることが記載されている。
精密工学会誌 VOL64、NO7、1998、1062〜1066頁
パルスレーザを使用した場合、ガラス基板に、例えば直径が30μm以下程度の微細な孔を形成することが可能になる。
しかしながら、パルスレーザは、CW(連続波)レーザのようなレーザ光に比べてピークパワーが高いため、孔加工中および/または孔形成後に、ガラス基板に割れおよび/または欠けが生じやすいという問題がある。また、そのような割れおよび/または欠けが生じないようにするため、パルスレーザのエネルギー密度を低下させると、今度はガラス基板に孔を形成するまでの加工時間が長くなったり、孔が形成されなくなったりするという問題が生じる。
なお、発明者らの実験では、非特許文献1に記載の方法を使用した場合であっても、割れおよび/または欠けは生じ得る。
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、パルスレーザを使用して、ガラス基板に割れおよび/または欠けをあまり発生させずに、現実的な時間で孔を形成することが可能な方法を提供することを目的とする。
本発明では、パルスレーザを用いてガラス基板に孔を形成する方法であって、
(1)相互に対向する第1および第2の表面を有するガラス基板を準備する工程と、
(2)前記ガラス基板の前記第1の表面の側に、第1の条件で、レンズを介してパルスレーザを照射することにより、前記第1の表面に、凹部を形成する工程であって、
前記凹部は、前記第1の表面における直径φおよび深さdを有し、
前記直径φは、以下の(1)式

スポット径S=(4×λ×f×M)/(π×r) (1)式
(ここで、λは前記パルスレーザの波長であり、fは前記レンズの焦点距離であり、Mはエムスクエア値であり、rは前記レンズに入射される前記パルスレーザのビームの直径である)

で表される前記パルスレーザの前記第1の表面におけるスポット径S以上(φ≧S)であり、前記深さdは、前記直径φの0.7倍以上である、工程と、
(3)前記パルスレーザのエネルギー密度が前記ガラス基板の加工閾値以下となる第2の条件で、前記凹部に前記パルスレーザを照射して、孔を形成する工程と、
を有する方法が提供される。
また、本発明では、孔を有するガラス基板を製造する方法であって、
(1)相互に対向する第1および第2の表面を有するガラス基板を準備する工程と、
(2)前記ガラス基板の前記第1の表面の側に、第1の条件で、レンズを介してパルスレーザを照射することにより、前記第1の表面に、凹部を形成する工程であって、
前記凹部は、前記第1の表面における直径φおよび深さdを有し、
前記直径φは、以下の(1)式

スポット径S=(4×λ×f×M)/(π×r) (1)式
(ここで、λは前記パルスレーザの波長であり、fは前記レンズの焦点距離であり、Mはエムスクエア値であり、rは前記レンズに入射される前記パルスレーザのビームの直径である)

で表される前記パルスレーザの前記第1の表面におけるスポット径S以上(φ≧S)であり、前記深さdは、前記直径φの0.7倍以上である、工程と、
(3)前記パルスレーザのエネルギー密度が前記ガラス基板の加工閾値以下となる第2の条件で、前記凹部に前記パルスレーザを照射して、孔を形成する工程と、
を有する方法が提供される。
本発明では、パルスレーザを使用して、ガラス基板に割れおよび/または欠けをあまり発生させずに、現実的な時間で孔を形成することが可能な方法を提供することができる。
本発明の一実施形態による貫通孔形成方法の一過程におけるガラス基板の断面を模式的に示した図である。 本発明の一実施形態によるガラス基板に孔を形成する方法のフローを模式的に示した図である。 本発明の一実施形態による貫通孔形成方法に使用され得る装置の構成を概略的に示した図である。 本発明の一実施形態による貫通孔形成方法に使用され得る装置の構成を概略的に示した図である。 本発明の一実施形態による別の孔形成方法のフローを模式的に示した図である。 本本発明の一実施形態による別の孔形成方法に使用され得る装置の構成を概略的に示した図である。 例1〜例6において、第1照射段階後に形成された凹部の断面状態および表面状態をまとめて示した図である。 例10〜例14において、第1照射段階後に形成された凹部の断面状態および表面状態をまとめて示した図である。
本願の一実施形態では、パルスレーザを用いてガラス基板に孔を形成する方法であって、
(1)相互に対向する第1および第2の表面を有するガラス基板を準備する工程と、
(2)前記ガラス基板の前記第1の表面の側に、第1の条件で、レンズを介してパルスレーザを照射することにより、前記第1の表面に、凹部を形成する工程であって、
前記凹部は、前記第1の表面における直径φおよび深さdを有し、
前記直径φは、以下の(1)式

スポット径S=(4×λ×f×M)/(π×r) (1)式
(ここで、λは前記パルスレーザの波長であり、fは前記レンズの焦点距離であり、Mはエムスクエア値であり、rは前記レンズに入射される前記パルスレーザのビームの直径である)

で表される前記パルスレーザの前記第1の表面におけるスポット径S以上(φ≧S)であり、前記深さdは、前記直径φの0.7倍以上である、工程と、
(3)前記パルスレーザのエネルギー密度が前記ガラス基板の加工閾値以下となる第2の条件で、前記凹部に前記パルスレーザを照射して、孔を形成する工程と、
を有する方法が提供される。
本願の一実施形態では、パルスレーザを用いてガラス基板に孔を形成する際に、前記(2)および(3)の2段階の工程が実施される。ここで、それぞれの工程を、「第1照射段階」および「第2照射段階」とも称する。
以下、それぞれの照射段階について説明する。
まず、第1照射段階では、レンズを介して、ガラス基板に第1の照射条件でパルスレーザを照射することにより、ガラス基板の第1の表面に、凹部が形成される。
図1には、第1照射段階完了後のガラス基板の断面を模式的に示す。
図1に示すように、ガラス基板10は、第1の表面12および第2の表面14を有する。また、ガラス基板10の第1の表面12には、凹部20が形成されている。凹部20は、第1の表面12において直径φを有するとともに、深さdを有する。
ここで、凹部20の直径φは、以下の式で表されるスポット径S

スポット径S=(4×λ×f×M)/(π×r) (1)式
(ここで、λはパルスレーザの波長であり、fはレンズの焦点距離であり、Mはエムスクエア値であり、rはレンズに入射されるパルスレーザのビームの直径である)

と等しいか、それ以上の寸法を有する(条件A)。また、凹部20の深さdは、直径φの0.7倍以上である(条件B)。換言すれば、第1照射段階における第1の照射条件は、ガラス基板10の第1の表面12に、前記条件A、Bを満たす直径φおよび深さdを有する凹部20が形成されるように選定される。
なお、第1照射段階では、ガラス基板10に凹部20が形成されるものの、未だ所望の深さの孔は形成されていないことに留意する必要がある。
次に、第2照射段階では、パルスレーザのエネルギー密度がガラス基板10の加工閾値以下まで抑制される。また、そのような「低エネルギー密度」のパルスレーザが前記凹部20に向かって照射される。
ここで、通常の場合、エネルギー密度がガラス基板10の加工閾値以下まで抑制されたパルスレーザをガラス基板10に照射しても、ガラス基板10の表面は、ほとんど加工されない。
しかしながら、本発明では、第2照射段階において、パルスレーザは、前述のような形状を有する凹部20に照射される。この場合、パルスレーザは、凹部20の内壁での反射により、凹部20の先端22(図1参照)に集中的に照射されるようになる。そのため、加工閾値以下のパルスレーザの照射でも加工が進み、凹部20の先端22は、ガラス基板10の厚さ方向に進展することができる。また、凹部20の先端22が進展を続けて、ガラス基板10の第2の表面14に到達した際に、ガラス基板10に貫通孔を形成することができる。
なお、上記メカニズムは、発明者らが現時点で考察したものであって、実際の孔の形成挙動は、その他のメカニズムで説明されても良い。
このように、本発明では、第1照射段階および第2照射段階を介して、ガラス基板に孔を形成する。このような方法では、加工閾値を超えるエネルギー密度でガラス基板にパルスレーザを照射し続けて孔を形成する方法とは異なり、第2照射段階において、加工閾値以下のエネルギー密度を有するパルスレーザを使用することができる。このため、孔加工中および/または孔加工後に、ガラス基板に割れおよび/または欠けが生じる可能性を有意に抑制することができる。
また、このような方法では、第1照射段階において得られた凹部20を利用して、第2照射段階において、ガラス基板の加工が継続される。このため、単にエネルギー密度が抑制されたパルスレーザを照射し続ける方法において生じるような、有意な時間では所望の深さの孔が形成されないという問題を回避することができる。
このように、本願の一実施形態では、ガラス基板に生じ得る割れおよび/または欠けをできる限り抑制して、現実的な加工時間で孔を形成することが可能となる。
(凹部20について)
前述のように、第1照射段階で生じる凹部20は、直径φおよび深さdを有する。
凹部20の直径φは、例えば、3μm〜30μmの範囲であり、11μm〜21μmの範囲であることが好ましい。また、凹部20の深さdは、例えば、2.1μm〜120μmの範囲であり、13μm〜42μmの範囲であることが好ましい。
また、深さdと直径φの比d/φは、0.7以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.5以上が特に好ましく、2.0以上が最も好ましい。比d/φは、4.0以下であることが好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下が特に好ましい。比d/φが4を超えるように凹部20を形成すると、割れおよび/または欠けが生じやすくなるからである。
(本発明に使用されるパルスレーザについて)
本発明の一実施形態では、使用されるパルスレーザの波長λは、200nm〜1200nmの範囲であっても良い。パルスレーザの波長λは、例えば355nmであっても良い。
また、本発明の一実施形態では、前述の(1)式で表されるスポット径Sは、2μm〜25μmの範囲であっても良く、5〜22μmの範囲であっても良く、10〜20μmの範囲であっても良い。
(第1の実施形態)
次に、図2乃至図4を参照して、本発明の第1の実施形態によるガラス基板に孔を形成する方法について、より詳しく説明する。
図2には、本発明の第1の実施形態によるガラス基板に孔を形成する方法(以下、「第1の孔形成方法」という)のフローを概略的に示す。
図2に示すように、第1の孔形成方法は、
(1)相互に対向する第1および第2の表面を有するガラス基板を準備する工程(ガラス基板準備工程)(工程S110)と、
(2)前記ガラス基板の前記第1の表面の側に、第1の条件で、レンズを介してパルスレーザを照射することにより、前記第1の表面に、凹部を形成する工程であって、前記第1の条件は、前記パルスレーザのエネルギー密度が前記ガラス基板の加工閾値を超えるように選定される、工程(凹部形成工程)(工程S120)と、
(3)前記パルスレーザのエネルギー密度が前記ガラス基板の加工閾値以下となる第2の条件で、前記凹部に前記パルスレーザを照射して、孔を形成する工程(孔形成工程)(工程S130)と、
を有する。
以下、図3および図4を参照して、各工程について説明する。なお、図3および図4には、第1の孔形成方法を実施する際に使用され得る装置の構成が概略的に示されている。
(工程S110)
まず、被加工用のガラス基板が準備される。
ガラス基板の組成は、特に限られない。
ガラス基板の厚さは、特に限られないが、例えば0.05mm〜0.7mmの範囲である。
(工程S120)
次に、ガラス基板の第1の表面に、第1の条件で、パルスレーザが照射される。また、これにより、ガラス基板の第1の表面に、凹部が形成される。なお、この工程S120は、前述の第1照射段階に相当する。従って、以下の説明では、工程S120を、第1の照射段階とも称する。
図3には、工程S120、すなわち第1の照射段階に使用され得る装置の構成を概略的に示す。
図3に示すように、この装置100は、ファンクションジェネレータ120と、レーザ発振器130と、レンズ140とを有する。
ファンクションジェネレータ120は、入力されたゲート信号Imに対して、所定の矩形波信号OPを出力する役割を有する。
レーザ発振器130は、ファンクションジェネレータ120から出力された矩形波信号OPに基づいて、パルスレーザビームPLを出射する役割を有する。
レーザ発振器130から出射されたパルスレーザビームPL(パルスレーザビーム135とも称する)は、レンズ140に照射される。レンズ140は、被加工対象となるガラス基板10の第1の表面12に、パルスレーザビーム145を集光する役割を有する。
このような装置100を用いて、ガラス基板10に凹部20を形成する際には、まず、装置100に、ガラス基板10が設置される。ガラス基板10は、レンズ140のレーザ発振器130とは反対の側に配置される。ガラス基板10は、例えば、XYステージを有するホルダ(図示されていない)の上に配置されても良い。ガラス基板10は、第1の表面12の側がレーザ照射側となるようにして配置される。
次に、前述の第1照射段階として、ファンクションジェネレータ120に、ゲート信号Imが入力される。ファンクションジェネレータ120は、入力されたゲート信号Imに対して、所定の矩形波信号OPを出力する。
例えば、図3の例では、ファンクションジェネレータ120にゲート信号Imが入力され、ファンクションジェネレータ120から、電圧Vを有する矩形波OP〜OPが出力される。矩形波OP〜OPは、いずれも時間幅tc1を有し、隣接する矩形波同士の間隔は、tp1である。ただし、矩形波信号OPにおいて、矩形波の数、各矩形波の電圧V、時間幅t、および隣接する矩形波同士の間隔tは、所定の値に調整できる。
次に、ファンクションジェネレータ120から出力された矩形波信号OPは、レーザ発振器130に入力される。レーザ発振器130は、入力された矩形波信号OPに基づいて、パルスレーザビームPLを出射する。
例えば、図3の例では、レーザ発振器130は、入力された矩形波信号OPに基づいて、3つのパルス波PL〜PLを有するパルスレーザビームPLを出射する。各パルス波PL〜PLは、パルスエネルギーEおよび時間幅τc1を有し、隣接するパルス波同士の間隔は、τp1である。ここで、パルスエネルギーE、すなわち縦軸Eの単位は、(J)である。
なお、パルスレーザビームPLにおいて、パルス波の数、各パルス波のパルスエネルギーE、時間幅τ、および隣接するパルス波同士の間隔τは、所定の値に調整できる。
次に、レーザ発振器130から出射されたパルスレーザビームPL(パルスレーザビーム135とも称する)は、レンズ140に照射される。レンズ140に照射されたパルスレーザビーム135はここで集光され、パルスレーザビームPF(パルスレーザビーム145とも称する)となり、ガラス基板10に照射される。これにより、ガラス基板10の第1の表面12に、スポット149が形成される。
スポット149のスポット径Sは、

スポット径S=(4×λ×f×M)/(π×r) (1)式

で表される。ここで、λはパルスレーザビーム135の波長であり、fはレンズ140の焦点距離であり、Mはエムスクエア値であり、rはレンズ140に入射されるパルスレーザビーム135の直径(図3参照)である。
レーザのエネルギー密度Eは、レーザ発振器130から出力されるパルスレーザビームのパルスエネルギーEをスポット径Sで表わされる面積で割ることで算出される。つまり、

エネルギー密度E=E/(π×(S/2)) (2)式

で表わされる。ここで、エネルギー密度E、すなわち図3におけるパルスレーザビームPFの波形を表す縦軸E'の単位は、(J/mm)である。
エネルギー密度Eは、ガラス基板10の加工閾値Eを超えるように選定される。例えば、パルスレーザビームPLに含まれる各パルス波PL〜PLが、100μJ以上のパルスエネルギーEを有するとする。この場合、焦点距離50mm、パルスレーザビーム135の直径rを2.5mmとすることで、エネルギー密度Eは、ガラス基板10の加工閾値Eを超えることになる。
パルスレーザビーム145の照射により、ガラス基板10の第1の表面12に、凹部20が形成される。
前述のように、パルスレーザビーム145の照射条件は、
(A)凹部20の直径φが前記(1)式で表されるスポット径Sと等しいか、それ以上の寸法を有し、
(B)凹部20の深さdが直径φの0.7倍以上となる
ように選定される。
第1照射段階におけるパルスレーザビーム145の照射回数(以降、ショット数とする。)は、例えば、1回〜300回が好ましく、5回〜100回が好ましく、11回〜50回程度がより好ましい。
(工程S130)
次に、ガラス基板10の凹部20に、第2の条件で、パルスレーザビームが照射される。また、これにより、ガラス基板10の第1の表面12に、所望の深さの孔が形成される。なお、この工程S130は、前述の第2照射段階に相当する。従って、以下の説明では、工程S130を、第2の照射段階とも称する。
図4には、工程S130、すなわち第2の照射段階の様子を模式的に示す。図4に示すように、第2の照射段階では、ファンクションジェネレータ120から出力される矩形波信号OPが第1の照射段階のものから変更され、これにより、レーザ発振器130から出射されるパルスレーザビームPL(パルスレーザビーム135)の波形が第1の照射段階のものから変更される。
第1照射段階から第2照射段階におけるパルスレーザビームPLの波形の変更の方法は、特に限られない。例えば、パルスレーザビームPLは、PWM制御方式、出力変調方式または周波数変調方式により、波形が変更されても良い。
以下、一例として、PWM制御方式により、パルスレーザビームPLの波形を変更する方法について説明する。
この場合、図4に示すように、ファンクションジェネレータ120から出力される矩形波信号OPは、電圧Vを有する矩形波OQ〜OQを有するように変更される。各矩形波OQ〜OQは、いずれも時間幅tc2を有し、隣接する矩形波同士の間隔は、tp2である。
ここで、図3に示した第1照射段階における矩形波信号OPと、図4に示した第2照射段階における矩形波信号OPを比較した場合、時間幅tc2<時間幅tc1であり、および隣接する矩形波同士の間隔tp2>間隔tp1であっても良い。
次に、ファンクションジェネレータ120から出力された矩形波信号OPがレーザ発振器130に入力される。これにより、レーザ発振器130から、出力が変調されたパルスレーザビームPLが出射される。
より具体的には、図4に示すように、パルスレーザビームPLは、3つのパルス波PQ〜PQを有する。各パルス波PQ〜PQは、パルスエネルギーEおよび時間幅τc2を有し、隣接するパルス波同士の間隔は、τp2である。
ここで、パルスエネルギーEは、レンズ140により集光されたパルスレーザビームPFの各パルス波PG〜PGのエネルギー密度Eが、ガラス基板10の加工閾値E以下となるように選定される。エネルギー密度Eは、例えば、加工閾値Eの1/10から1/2の範囲であっても良い。
このように、パルスレーザビームPL、すなわちパルスレーザビーム135は、レンズ140により集光されてパルスレーザビーム145となり、これがガラス基板10の凹部20に照射される。
前述のように、第2照射段階では各パルス波PG〜PGのエネルギー密度Eがガラス基板10の加工閾値E以下であっても、ガラス基板10の加工を進めることができる。そのため、ある程度のショット数でパルスレーザビーム145を照射した後には、ガラス基板10に所望の深さを有する孔160が形成される。図4では、貫通した孔160が形成される例が示されている。
第2照射段階におけるパルスレーザビーム145のショット数は、凹部20の先端22が所望の深さまで進展する回数にすればよい。好ましいショット数は、所望する孔の深さやガラス基板10の厚さによって異なる。例えば、ショット数は1回〜3000回が好ましく、1回〜1500回程度がより好ましい。
以上の工程により、ガラス基板10に、所望の深さの孔を形成することができる。
第1の孔形成方法では、現実的な時間で孔を形成することができるとともに、割れおよび/または欠けの発生を有意に抑制することができる。
また、孔形成後にガラス基板10をアニール処理し、その後にエッチング処理することで孔径を拡大したり、孔内部を平滑にしたり、ガラス基板表面のデブリを除去したりすることも可能である。
(第2の実施形態)
次に、図5および図6を参照して、本発明の第2の実施形態によるガラス基板に孔を形成する方法について、より詳しく説明する。
図5には、本発明の第2の実施形態によるガラス基板に孔を形成する方法(以下、「第2の孔形成方法」という)のフローを概略的に示す。
図5に示すように、第2の孔形成方法は、
(1)相互に対向する第1および第2の表面を有するガラス基板を準備する工程(ガラス基板準備工程)(工程S210)と、
(2)前記ガラス基板の前記第1の表面に、吸収層を設置する工程(吸収層設置工程)(工程S220)と、
(3)前記ガラス基板の前記第1の表面の側に、第1の条件で、レンズを介してパルスレーザを照射することにより、前記第1の表面に、凹部を形成する工程であって、前記第1の条件は、前記パルスレーザのエネルギー密度が前記ガラス基板の加工閾値以下となるように選定される、工程(凹部形成工程)(工程S230)と、
(4)前記パルスレーザのエネルギー密度が前記ガラス基板の加工閾値以下となる第2の条件で、前記凹部に前記パルスレーザを照射して、孔を形成する工程(孔形成工程)(工程S240)と、
を有する。
以下、各工程について説明する。
(工程S210)
まず、被加工用のガラス基板が準備される。なお、この工程は、前述の第1の孔形成方法の工程S110と同様であるため、ここではこれ以上説明しない。
(工程S220)
次に、ガラス基板の第1の表面に、吸収層が設置される。
吸収層は、工程S230で利用されるパルスレーザの少なくとも一部のエネルギーを吸収する機能を有する限り、その材料は、特に限られない。吸収層は、例えば、合成樹脂インクやカーボンブラック等を含む顔料であってもよい。
吸収層は、例えばスプレーコート法やインクジェット法などにより、ガラス基板の第1の表面に設置される。
(工程S230)
次に、ガラス基板の第1の表面に、第1の条件で、パルスレーザが照射される。また、これにより、ガラス基板の第1の表面に、凹部が形成される。なお、この工程S230は、前述の第1照射段階に相当する。従って、以下の説明では、工程S230を、第1の照射段階とも称する。
図6には、工程S230、すなわち第1の照射段階における様子を模式的に示す。なお、図6には、明確化のため、吸収層は示されていない。
図6に示すように、この第1の照射段階は、前述の図3に示したような、第1の孔形成方法における第1の照射段階とほぼ同様である。
例えば、図6の例では、ファンクションジェネレータ120にゲート信号Imが入力され、ファンクションジェネレータ120から、電圧Vを有する矩形波OR〜ORが出力される。矩形波OR〜ORは、いずれも時間幅tc3を有し、隣接する矩形波同士の間隔は、tp3である。また、図6の例では、レーザ発振器130において、入力された矩形波信号OPに基づいて、3つのパルス波PM〜PMを有するパルスレーザビームPLが出射される。各パルス波PM〜PMは、パルスエネルギーEおよび時間幅τc3を有し、隣接するパルス波同士の間隔は、τp3である。ここで、パルスエネルギーE、すなわち縦軸Eの単位は、(J)である。
ただし、工程S230では、ガラス基板10に照射されるパルスレーザビーム145を構成する各パルス波PH〜PHのエネルギー密度Eは、ガラス基板10の加工閾値E以下となるように選定される。
これは、第2の孔形成方法では、吸収層の存在により、パルスレーザビーム145のエネルギー密度Eがガラス基板10の加工閾値E以下であっても、前述のような特徴を有する凹部20を形成することができるためである。
すなわち、第2の孔形成方法では、工程S220において、ガラス基板10の第1の表面12に、吸収層(図6には示されていない)が設置される。このような吸収層がガラス基板10の第1の表面12に存在すると、吸収層によるパルスレーザビーム145の吸収により、ガラス基板10の第1の表面12のエネルギー密度が低くても比較的容易にアブレーションされるようになる。そして、前述のような特徴を有する凹部20、すなわち、条件(A)および(B)を満たす凹部20が形成される。
第2の孔形成方法の第1照射段階におけるパルスレーザビームのショット数は、例えば1回〜300回が好ましく、21回〜50回程度がより好ましい。
(工程S240)
次に、ガラス基板10の凹部20に、第2の条件で、パルスレーザが照射される。また、これにより、ガラス基板10に、所望の深さの孔が形成される。なお、この工程S240は、前述の第2照射段階に相当する。従って、以下の説明では、工程S240を、第2の照射段階とも称する。
この工程S240は、前述の第1の孔形成方法の工程S130とほぼ同様である。すなわち、この工程S240では、レーザ発振器130から、各パルス波PN〜PNを有するパルスレーザビームPLが、レンズ140に照射される。また、レンズ140により集光された各パルス波PK〜PKが、ガラス基板10の凹部20に照射される。
パルスレーザビームPLを構成する各パルス波PN〜PNは、エネルギーEを有する。換言すれば、パルスレーザビームPFを構成する各パルス波PK〜PKは、エネルギー密度Eを有する。そして、このエネルギー密度Eは、ガラス基板10の加工閾値E(吸収層を有さない場合の加工閾値を意味する。以下同じ)以下となるように選定される。エネルギー密度Eは、例えば、ガラス基板の加工閾値Eの1/10から1/2の範囲であっても良い。
前述のように、第2照射段階では、凹部20の存在のため、各パルス波PK〜PKのエネルギー密度Eがガラス基板10の加工閾値E以下であっても、ガラス基板10の孔加工を進めることができる。
なお、第2の孔形成方法では、工程S240、すなわち第2の照射段階におけるパルス波PK〜PKのエネルギー密度Eと、工程S230、すなわち第1の照射段階におけるパルス波PH〜PHのエネルギー密度Eとの大小関係は、特に限られない。
すなわち、両者のエネルギー密度は、E>Eであっても、E=Eであっても、E<Eであってもよい。
第2の孔形成方法においても、第1の形成方法と同様の効果、すなわち、現実的な時間で孔を形成することができるとともに、割れおよび/または欠けの発生を有意に抑制することができるという効果が得られることは、明らかであろう。
また、孔形成後にガラス基板10をアニール処理し、その後にエッチング処理することで孔径を拡大したり、孔内部を平滑にしたり、ガラス基板表面のデブリを除去したりすることも可能である。
以上、第1および第2の孔形成方法を例に、本発明の一実施形態による具体的な孔の形成方法の一例について説明した。ただし、本発明による孔の形成方法は、これらに限られるものではない。
例えば、上記記載では、第1照射段階から第2照射段階に移行する際に、パルスレーザビームPLの波形を、PWM制御方式により変化させた。ただし、PWM制御方式の代わりに、周波数変調方式を用いてもよい。具体的には、図3の各パルス間隔tp1と図4の各パルス間隔tp2を変える、すなわち時間間隔を変えることで実現できる。その結果、レーザから出力される各パルスの間隔τp1とτp2も同様の変化をし、時間間隔の異なるパルス列を照射する、すなわち周波数変調の加工ができることになる。
その他にも、各種変更が可能である。
また、以上の記載では、本発明の一実施形態による、パルスレーザを用いてガラス基板に孔を形成する方法について説明した。しかしながら、係る方法は、本発明の別の一実施形態による、孔を有するガラス基板を製造する方法に適用可能であることは明らかであろう。
次に、本発明の実施例について説明する。
(例1)
以下の方法により、パルスレーザを用いてガラス基板に貫通孔を形成した。
まず、厚さが0.2mmのガラス基板(無アルカリガラス)を準備した。
次に、このガラス基板を前述の図3に示したような装置100に設置した。装置100において、ファンクションジェネレータ120には、装置WW1281A(東洋テクニカ社製)を使用し、レーザ発振器130には、装置AVIA−X(コヒーレント社製)を使用した。レンズ140(光学系)には、焦点距離=50mmの合成石英製平凸レンズを使用した。
次に、前述の第1の孔形成方法における第1照射段階および第2照射段階を実施した。レーザ発振器130から出射させるパルスレーザの波長λは、355nmとし、パルス幅は、20nsとした。繰り返し周波数は、10kHzとした。また、パルスレーザビームのレンズ140に入射する際の直径rは、2.5mmとした。
従って、前述の(1)式で表されるスポット径Sは、M=1.2として、10.8μmである。
第1照射段階では、ガラス基板に、エネルギー密度Eが1.31μJ/mmのパルスレーザを50ショット照射した。なお、本実施例では、ガラス基板の加工閾値エネルギー密度Eは、1.09J/mmである。従って、E>Eである。
これにより、ガラス基板に凹部が形成された。
凹部の直径φは、約20.4μmであり、深さdは約41.9μmであった。従って、比d/φは約2.05である。
次に、第2照射段階のため、PWM制御方式により、レーザ発振器130から出射されるパルスレーザビームのエネルギー密度を変化させた。
第2照射段階では、第1照射段階で形成されたガラス基板の凹部に、エネルギー密度Eが0.22J/mmのパルスレーザを460ショット照射した。ここでE<Eである。
第2照射段階完了後に、ガラス基板を観察した。その結果、ガラス基板に貫通孔が形成されていることが確認された。ガラス基板には、割れおよび欠け等の異常は認められなかった。
(例2)
例1と同様の方法により、パルスレーザを用いてガラス基板に貫通孔を形成した。
ただし、この例2では、第1照射段階におけるパルスレーザのショット数を30回とした。その他の条件は、例1の場合と同様である。
第1照射段階で形成された凹部の直径φは、約18.1μmであり、深さdは約27.5μmであった。従って、比d/φは約1.51である。
第2照射段階完了後に、ガラス基板を観察した。その結果、ガラス基板に貫通孔が形成されていることが確認された。ガラス基板には、割れおよび欠け等の異常は認められなかった。
(例3)
例1と同様の方法により、パルスレーザを用いてガラス基板に貫通孔を形成した。
ただし、この例3では、第1照射段階におけるパルスレーザのショット数を20回とした。その他の条件は、例1の場合と同様である。
第1照射段階で形成された凹部の直径φは、約16.1μmであり、深さdは約17.6μmであった。従って、比d/φは約1.09である。
第2照射段階完了後に、ガラス基板を観察した。その結果、ガラス基板に貫通孔が形成されていることが確認された。ガラス基板には、割れおよび欠け等の異常は認められなかった。
(例4)
例1と同様の方法により、ガラス基板にパルスレーザを照射して、貫通孔の形成を試みた。
ただし、この例4では、第1照射段階におけるパルスレーザのショット数を10回とした。その他の条件は、例1の場合と同様である。
第1照射段階において形成された凹部は、直径φが約15.9μmであり、深さdが約10.7μmであった。従って、比d/φは約0.67である。
第2照射段階完了後に、ガラス基板を観察した。その結果、第1照射段階において形成された凹部から加工がほとんど進まず、ガラス基板に貫通孔は形成されていないことがわかった。
(例5)
例1と同様の方法により、ガラス基板にパルスレーザを照射して、貫通孔の形成を試みた。
ただし、この例5では、第1照射段階におけるパルスレーザのショット数を5回とした。その他の条件は、例1の場合と同様である。
第1照射段階において形成された凹部は、直径φが約14.5μmであり、深さdが約3.6μmであった。従って、比d/φは約0.24である。
第2照射段階完了後に、ガラス基板を観察した。その結果、第1照射段階において形成された凹部から加工がほとんど進まず、ガラス基板に貫通孔は形成されていないことがわかった。
(例6)
例1と同様の方法により、ガラス基板にパルスレーザを照射して、貫通孔の形成を試みた。
ただし、この例6では、第1照射段階におけるパルスレーザのショット数を3回とした。その他の条件は、例1の場合と同様である。
第1照射段階において形成された凹部は、直径φが約12.7μmであり、深さdが約2.9μmであった。従って、比d/φは約0.23である。
第2照射段階完了後に、ガラス基板を観察した。その結果、第1照射段階において形成された凹部から加工がほとんど進まず、ガラス基板に貫通孔は形成されていないことがわかった。
(例7)
例1と同様の方法により、パルスレーザを用いてガラス基板に貫通孔を形成した。
ただし、この例7では、第1照射段階におけるパルスレーザのエネルギー密度Eを、1.31J/mmとし、ショット数を50回とした。また、第2照射段階におけるパルスレーザのエネルギー密度Eを、1.31J/mmとし、ショット数を460回とした。
第1照射段階において形成された凹部は、直径φが約20.4μmであり、深さdが約41.9μmであった。従って、比d/φは約2.05である。
第2照射段階完了後に、ガラス基板を観察した。その結果、ガラス基板に貫通孔が形成されていることが確認された。しかしながら、ガラス基板には、割れがおよび欠けが生じていることが確認された。
以下の表1には、例1〜例7における第1照射段階および第2照射段階の条件、第1照射段階後の凹部の形状、ならびに第2照射段階後の貫通孔の形成状況およびガラス基板の状態を、まとめて示した。
また、図7には、例1〜例6において、第1照射段階後にガラス基板に形成された凹部の断面状態および表面状態をまとめて示した。
(例10)
以下の方法により、パルスレーザを用いてガラス基板に貫通孔を形成した。
まず、厚さが0.2mmのガラス基板(無アルカリガラス)を準備した。次に、このガラス基板の一方の表面に、吸収層を設置した。吸収層は、油性アクリルラッカー(H62−8808 65)とし、スプレー塗布により、ガラス基板に設置した。
次に、このガラス基板に対して、例1の場合と同様の方法により、前述の第2の孔形成方法における第1照射段階および第2照射段階を実施した。レーザ発振器130から出射させるパルスレーザの波長λは、355nmとし、パルス幅は、20nsとした。繰り返し周波数は、10kHzとした。また、パルスレーザビームのレンズ140に入射する際の直径rは、2.5mmとした。
従って、前述の(1)式で表されるスポット径Sは、M=1.2として、10.8μmである。
第1照射段階では、ガラス基板に、エネルギー密度Eが0.22J/mmでのパルスレーザを50ショット照射した。なお、本実施例では、ガラス基板の加工閾値エネルギー密度Eは、1.09J/mmである。従って、E<Eである。
これにより、ガラス基板に凹部が形成された。
凹部の直径φは、約12.1μmであり、深さdは約28.7μmであった。従って、比d/φは約2.37である。
次に、第2照射段階のため、PWM制御方式により、レーザ発振器130から出射されるパルスレーザのエネルギー密度を変化させた。
第2照射段階では、第1照射段階で形成されたガラス基板の凹部に、エネルギー密度Eが0.55J/mmのパルスレーザを460ショット照射した。ここでE<Eである。
第2照射段階完了後に、ガラス基板を観察した。その結果、ガラス基板に貫通孔が形成されていることが確認された。ガラス基板には、割れおよび欠け等の異常は認められなかった。
(例11)
例10と同様の方法により、パルスレーザを用いてガラス基板に貫通孔を形成した。
ただし、この例11では、第1照射段階におけるパルスレーザのショット数を30回とした。その他の条件は、例10の場合と同様である。
第1照射段階で形成された凹部の直径φは、約11.5μmであり、深さdは約13.0μmであった。従って、比d/φは約1.13である。
第2照射段階完了後に、ガラス基板を観察した。その結果、ガラス基板に貫通孔が形成されていることが確認された。ガラス基板には、割れおよび欠け等の異常は認められなかった。
(例12)
例10と同様の方法により、パルスレーザを用いてガラス基板に貫通孔を形成した。
ただし、この例12では、第1照射段階におけるパルスレーザのショット数を20回とした。その他の条件は、例10の場合と同様である。
第1照射段階で形成された凹部の直径φは、約10.9μmであり、深さdは約7.1μmであった。従って、比d/φは約0.65である。
第2照射段階完了後に、ガラス基板を観察した。その結果、ガラス基板に貫通孔が形成されていることが確認された。しかしながら、ガラス基板には、割れがおよび欠けが生じていることが確認された。
(例13)
例10と同様の方法により、パルスレーザを用いてガラス基板に貫通孔を形成した。
ただし、この例13では、第1照射段階におけるパルスレーザのショット数を10回とした。その他の条件は、例10の場合と同様である。
第1照射段階で形成された凹部の直径φは、約9.2μmであり、深さdは約3.3μmであった。従って、比d/φは約0.35である。
第2照射段階完了後に、ガラス基板を観察した。その結果、ガラス基板に貫通孔が形成されていることが確認された。しかしながら、ガラス基板には、割れがおよび欠けが生じていることが確認された。
(例14)
例10と同様の方法により、パルスレーザを用いてガラス基板に貫通孔を形成した。
ただし、この例14では、第1照射段階におけるパルスレーザのショット数を5回とした。その他の条件は、例10の場合と同様である。
第1照射段階で形成された凹部の直径φは、約6.6μmであり、深さdは約1.3μmであった。従って、比d/φは約0.19である。
第2照射段階完了後に、ガラス基板を観察した。その結果、ガラス基板に貫通孔が形成されていることが確認された。しかしながら、ガラス基板には、割れがおよび欠けが生じていることが確認された。
(例15)
例10と同様の方法により、パルスレーザを用いてガラス基板に貫通孔を形成した。
ただし、この例15では、第1照射段階におけるパルスレーザのショット数を50回とした。また、第2照射段階におけるパルスレーザのエネルギー密度を1.31J/mmとし、ショット数を460回とした。その他の条件は、例10の場合と同様である。
第1照射段階で形成された凹部の直径φは、約12.1μmであり、深さdは約28.7μmであった。従って、比d/φは約2.37である。
第2照射段階完了後に、ガラス基板を観察した。その結果、ガラス基板に貫通孔が形成されていることが確認された。しかしながら、ガラス基板には、割れがおよび欠けが生じていることが確認された。
以下の表2には、例10〜例15における第1照射段階および第2照射段階の条件、第1照射段階後の凹部の形状、ならびに第2照射段階後の貫通孔の形成状況およびガラス基板の状態を、まとめて示した。
また、図8には、例10〜例14において、第1照射段階後にガラス基板に形成された凹部の断面状態および表面状態をまとめて示した。
このように、適正に定められた条件でパルスレーザによる第1照射段階と第2照射段階を実施することにより、ガラス基板に生じる割れおよび欠けを有意に抑制した状態で、貫通孔が形成できることが確認された。
10 ガラス基板
12 第1の表面
14 第2の表面
20 凹部
22 凹部の先端
100 装置
120 ファンクションジェネレータ
130 レーザ発振器
135 パルスレーザビーム
140 レンズ
145 パルスレーザビーム
149 スポット
160 貫通孔

Claims (10)

  1. パルスレーザを用いてガラス基板に孔を形成する方法であって、
    (1)相互に対向する第1および第2の表面を有するガラス基板を準備する工程と、
    (2)前記ガラス基板の前記第1の表面の側に、第1の条件で、レンズを介してパルスレーザを照射することにより、前記第1の表面に、凹部を形成する工程であって、
    前記凹部は、前記第1の表面における直径φおよび深さdを有し、
    前記直径φは、以下の(1)式

    スポット径S=(4×λ×f×M)/(π×r) (1)式
    (ここで、λは前記パルスレーザの波長であり、fは前記レンズの焦点距離であり、Mはエムスクエア値であり、rは前記レンズに入射される前記パルスレーザのビームの直径である)

    で表される前記パルスレーザの前記第1の表面におけるスポット径S以上(φ≧S)であり、前記深さdは、前記直径φの0.7倍以上である、工程と、
    (3)前記パルスレーザのエネルギー密度が前記ガラス基板の加工閾値以下となる第2の条件で、前記凹部に前記パルスレーザを照射して、孔を形成する工程と、
    を有する方法。
  2. 前記(2)の工程における前記第1の条件は、前記パルスレーザのエネルギー密度が前記ガラス基板の加工閾値を超えるように選定される、請求項1に記載の方法。
  3. さらに、前記ガラス基板の前記第1の表面に、吸収層を設置する工程、
    を有し、
    前記(2)の工程における前記第1の条件は、前記パルスレーザのエネルギー密度が前記ガラス基板の加工閾値以下となるように選定される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記第2の条件における前記パルスレーザのエネルギー密度は、前記第1の条件における前記パルスレーザのエネルギー密度と同等、またはより大きい、請求項3に記載の方法。
  5. 前記第2の条件における前記パルスレーザのパルス列は、変調されている、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の方法。
  6. 前記パルスレーザの波長λは、1200nm以下である、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の方法。
  7. 前記直径φは、3μm〜30μmの範囲である、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の方法。
  8. 前記深さdは、2.1μm〜120μmの範囲である、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の方法。
  9. 前記スポット径Sは、15μm以下である、請求項1乃至8のいずれか一つに記載の方法。
  10. 孔を有するガラス基板を製造する方法であって、
    (1)相互に対向する第1および第2の表面を有するガラス基板を準備する工程と、
    (2)前記ガラス基板の前記第1の表面の側に、第1の条件で、レンズを介してパルスレーザを照射することにより、前記第1の表面に、凹部を形成する工程であって、
    前記凹部は、前記第1の表面における直径φおよび深さdを有し、
    前記直径φは、以下の(1)式

    スポット径S=(4×λ×f×M)/(π×r) (1)式
    (ここで、λは前記パルスレーザの波長であり、fは前記レンズの焦点距離であり、Mはエムスクエア値であり、rは前記レンズに入射される前記パルスレーザのビームの直径である)

    で表される前記パルスレーザの前記第1の表面におけるスポット径S以上(φ≧S)であり、前記深さdは、前記直径φの0.7倍以上である、工程と、
    (3)前記パルスレーザのエネルギー密度が前記ガラス基板の加工閾値以下となる第2の条件で、前記凹部に前記パルスレーザを照射して、孔を形成する工程と、
    を有する方法。
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