JP2017064191A - トイレットペーパー及びトイレットペーパーの品質評価方法 - Google Patents

トイレットペーパー及びトイレットペーパーの品質評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】シングルエンボスを有するトイレットペーパーにおいて、意匠性及び拭き取り性の向上と、エンボス凸部を有する面のざらつき防止とを両立する。【解決手段】上記課題は、原紙1枚当たりの坪量が14〜26g/m2であり、 一方の面に、深さ0.3〜1.0mm、底部面積0.5〜3.8mm2のエンボス凹部のみが、エンボス密度30000〜300000個/m2かつ底部面積率3〜25%で形成されるとともに、他方の面にエンボス凹部と対応するエンボス凸部のみが形成されており、エンボス凹部を有する面における算術平均高さSaが0.020〜0.032mmであり、MD方向の伸び率が15〜23%である、ことを特徴とするトイレットペーパーにより解決される。【選択図】図1

Description

本発明は、トイレットペーパー及びその品質評価方法に関する。
トイレットペーパーにおいては、柔らかさを向上させるとともに、厚みを増加させてふんわり感や吸収性を高めるため、及び意匠を付与するために、型押しによりエンボスを付与することが行われる。また、エンボスの付与により、拭き取り性も向上する。
トイレットペーパーのエンボス付与態様の代表的なものとして、トイレットペーパーの一方の面から反対側に押し出すエンボス加工により、紙面の一方の面にエンボス凹部のみが形成され、他方の面にそのエンボス凹部と対応する(つまりエンボス凹部の窪みを形成するように反対側に突出する)エンボス凸部のみが形成されている。一方の面にエンボス凹部のみがあり、他方の面にエンボス凹部と対応するエンボス凸部のみがあるシングルエンボスが知られている(例えば特許文献1参照)。シングルエンボスは、トイレットペーパーが2プライ(原紙2枚積層)タイプであっても、1プライ(原紙1枚のみ)タイプであっても適用でき、簡素な形態として汎用されている。
しかし、シングルエンボスを付与したトイレットペーパーはエンボス凸部が突出する面を有しており、意匠性及び拭き取り性の向上を目的としてエンボスを深く付与しすぎると、エンボス凸部を有する面にざらつきを感じ、需用者は柔らかい質感と評価しないことが多い。
特開2012−170659号公報 特開2014−073420号公報 特開2012−013510号公報 特開2010−022480号公報
そこで、本発明の主たる課題は、シングルエンボスを有するトイレットペーパーにおいて、意匠性及び拭き取り性の向上と、エンボス凸部を有する面のざらつき防止とを両立することにある。
上記課題を解決するための手段及びそれらの作用効果は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
原紙1枚当たりの坪量が14〜26g/m2であり、
一方の面に、深さ0.3〜1.0mm、底部面積0.5〜3.8mm2のエンボス凹部のみが、エンボス密度30000〜300000個/m2かつ底部面積率3〜25%で形成されるとともに、他方の面にエンボス凹部と対応するエンボス凸部のみが形成されており、
前記エンボス凹部を有する面における算術平均高さSaが0.020〜0.032mmであり、
MD方向の伸び率が15〜23%である、
ことを特徴とするトイレットペーパー。
(作用効果)
上記シングルエンボスが付与された上記坪量のトイレットペーパーにおいては、エンボス凹部を有する面における算術平均高さSaが上記範囲内であり、かつMD方向の伸び率が上記範囲内であると、エンボスがしっかりと形成され、意匠性及び拭き取り性に優れるものでありながら、エンボス凸部を有する面のざらつきも防止される。
なお、エンボス凹部の深さ、底部面積、エンボス密度、底部面積率は、トイレットペーパーのミシン目や傷等の無い任意箇所で、MD方向5cm×CD方向全幅の領域を設定して計測する。トイレットロールの場合には、計測領域をロール外周部を除く任意の箇所(例えばロールテールシール部から5m内部)で、ミシン目や傷等の無い部分に設定し、1ロールについて1箇所の計測領域で計測する。エンボス凹部の深さ、底部面積は、エンボス凹部を100個任意に選択して計測し、その平均値とする。エンボス密度は、計測領域に含まれるエンボス凹部の総数を計測領域の面積で除して、1m2当たりに換算することにより求める。底部面積率は、エンボス密度に底部面積(前述の平均値)を乗じて求めることができる。
また、算術平均高さSaはISO25178に規定されるものであり、最もエンボス密度が高くなるMD方向24mm×CD方向18mmの評価領域を対象として計測されるものである。評価領域は、エンボス凹部が10個以上入るように設定する。トイレットロールの場合には、評価領域をロール外周部を除く任意の箇所(例えばロールテールシール部から5m内部)で、ミシン目や傷等の無い部分に設定する。評価対象のトイレットペーパーにおける評価領域の数は算術高さSaの原理上特に限定されず、一つの製品単位(例えばトイレットロールの1ロール)あたり1箇所での測定結果を計測値としても、また、複数個所(特に10カ所とすることが望ましい)で測定してその平均値を計測値としても良い。算術平均高さSaの計測には、接触式の計測装置及び非接触式の計測装置のいずれも用いることができるが、非接触式であるのが好ましく、例えばキーエンス社製ワンショット3D測定マイクロスコープVR−3000シリーズを用いることにより、計測することができる。
また、伸び率とは、トイレットペーパーが破断するまでMD方向である長手方向に引張力を付与した際の、単位長さ当たりの伸び量である。その測定は、JIS P 8113における引張破断伸びに準じて行う。試料の大きさは幅25mm、長さ150mmとし、2プライ以上の場合でも積層状態のまま測定する。測定装置としては、例えばミネベア株式会社製「万能引張圧縮試験機 TG−200N」を用いることができる。
<請求項2記載の発明>
前記エンボス凹部が千鳥状に配列されており、
隣接する前記エンボス凹部の底部同士を繋ぐように各エンボス凹部の底部からその四方に放射状に延びる谷溝が形成されており、
前記エンボス凹部の底部面積は1〜2.5mm2であり、前記エンボス凹部の底部のMD方向中心間隔及びCD方向中心間隔がそれぞれ4.5〜5.5mmである、請求項1記載のトイレットペーパー。
(作用効果)
本発明は、このようなパターンでシングルエンボスが付与されている形態に好適である。
<請求項3記載の発明>
前記エンボス凹部を有する面における最大山高さSpに対する前記算術平均高さSaの割合が22.0〜33.0%であり、かつ前記エンボス凹部を有する面の最大谷深さSvに対する前記算術平均高さSaの割合が5〜15%である、請求項1又は2記載のトイレットペーパー。
(作用効果)
最大山高さSpに対する算術平均高さSaの割合、及び最大谷深さSvに対する算術平均高さSaの割合が上記範囲内であると、エンボス凹部の均一性が高いためより好ましい。なお、最大山高さSp及び最大谷深さSvもISO25178に規定されるものであり、前述の算術平均高さSaと同様にして計測されるものである。
<請求項4記載の発明>
一方の面に、多数のエンボス凹部のみが間隔を空けて形成されるとともに、他方の面にエンボス凹部と対応するエンボス凸部のみが形成されたトイレットペーパーの品質評価方法であって、
前記トイレットペーパーの前記エンボス凹部を有する面における算術平均高さSaを計測するとともに、
この計測した算術平均高さSaが基準範囲内であるか否かにより、前記トイレットペーパーの品質を評価する、
ことを特徴とするトイレットペーパーの品質評価方法。
(作用効果)
算術平均高さSaは、XY両方向の計測データによりある程度広い評価領域の全体を対象としてエンボス凹部による凹凸の状態を計測できるため、測定箇所や方向、又は測定者による結果のバラツキなく、エンボスの品質(すなわち意匠性)を正確に評価することができる。算術平均高さSaの計測については前述したとおりであり、評価対象のトイレットペーパーにおける評価領域の数は、製品単位(例えばトイレットロールの1ロール)あたり1箇所での測定結果を計測値としても、また、複数個所(特に10カ所とすることが望ましい)で測定してその平均値を計測値としても良い。
<請求項5記載の発明>
前記トイレットペーパーの伸び率を計測し、前記算術平均高さSa及び伸び率がともに基準範囲内であるか否かにより、前記トイレットペーパーの品質を評価する、請求項4記載のトイレットペーパーの品質評価方法。
(作用効果)
上記のように伸び率についても評価基準とすることにより、意匠性及び拭き取り性の向上と、エンボス凸部を有する面のざらつき防止とを両立できているか否かを正確に評価することができる。
以上のとおり、本発明によれば、シングルエンボスを有するトイレットペーパーでありながら、意匠性及び拭き取り性の向上と、エンボス凸部を有する面のざらつき防止とを両立できる、等の利点がもたらされる。
トイレットペーパーのエンボスパターンを示す一部平面図である。 図2のA−A線断面図、B−B線断面図、C−C線断面図である。 トイレットペーパーのエンボスパターンを示す一部平面図である。 図4のX部分の拡大図及びその模式的な断面を示す図である。 トイレットペーパーのエンボスパターンを示す平面図である。 トイレットペーパーのエンボスパターンを示す平面図である。 トイレットペーパーのエンボスパターンを示す平面図である。 トイレットペーパーのエンボスパターンを示す平面図である。 トイレットペーパーのエンボスパターンを示す平面図である。 トイレットペーパーのエンボスパターンを示す平面図である。 トイレットペーパーロールの概略図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳説する。
<トイレットペーパーについて>
図1及び図2はトイレットペーパー10の一部平面及び断面を示している。このトイレットペーパー10は、一方の面(図1の正面)から反対側に押し出すエンボス加工により、一方の面にエンボス凹部20のみが形成され、他方の面にそのエンボス凹部20と対応する(つまりエンボス凹部20の窪みを形成するように反対側に突出する)エンボス凸部30のみが形成されている。このようなシングルエンボスは、金属製エンボスロールと、これを受ける弾性ロールとで構成されるスチールラバー方式のエンボス付与装置により形成するのが好ましい。また、その場合にはロール間の線圧は5〜30kg/cmとするのが好ましい。
トイレットペーパー10は、1プライ(原紙1枚のみ)の他、2〜4プライ(原紙2〜4枚積層)とすることもできる。特に1プライのものは、薄くコシがないため、本発明を適用することが好ましい。
トイレットペーパー10の原紙1枚当たりの坪量は14〜26g/m2とされる。原紙1枚当たりの紙厚10tは100〜350μm程度とすることができる。坪量とは、JIS P 8124(1998)の坪量測定方法によるものであり、紙厚は、JIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて異なる任意の五箇所を測定し、この五箇所の測定値の平均値をいう。坪量がこの範囲以下であると十分な乾燥引張り強度が得られず、この範囲を超えると、エンボス付与による柔軟化を考慮しても硬くなりすぎるためトイレットペーパーとして好ましくない。
エンボス凹部20の深さ20dは0.1〜1.0mm、好ましくは0.3〜1.0mmの範囲内とされる。エンボス凹部20が深すぎるとエンボス凸部30を有する面のざらつきが顕著となり、浅すぎると意匠性が不十分となる。
エンボス凹部20の底部21の面積は0.5〜3.8mm2、好ましくは0.8〜3.1mm2の範囲内とされ、エンボス凹部20のエンボス密度は30000〜300000個/m2、好ましくは40000〜150000個/m2とされ、エンボス凹部20の底部21の面積率(単位面積当たりの底部21の面積)は3〜25%、好ましくは3〜20%とされる。この範囲外であると、後述する算術平均高さSa及び伸び率が本発明の範囲内であっても、意匠性及び拭き取り性の向上と、エンボス凸部を有する面のざらつき防止とを両立するのが困難となる。なお、エンボス凹部20の底部の面積とは、エンボス凹部20を有する面側からの平面視の面積である。
特徴的には、エンボス凹部20を有する面における算術平均高さSaが0.020〜0.032mmとされる。算術平均高さSaは、主にエンボス凹部20の深さ20d、及びエンボス加工を行う際のロール間の線圧等により調整することができる。
また、トイレットペーパー10のMD方向の伸び率は15〜23%、好ましくは16〜21%とされる。トイレットペーパー10の伸び率が15%よりも低いと拭き取る際に破れやすくなり、23%よりも高いと、上記算術平均高さSaの範囲内であっても拭き取り性が低下する。この拭き取り性の低下は、拭き取りの際に紙が伸び、エンボスの凹凸が潰れるためと推測される。なお、MD方向とは、抄紙工程における流れ方向であり、トイレットペーパー10を構成するクレープ紙(原紙)ではそのクレープの山、谷の延在方向に対して直行する方向である。CD方向は、MD方向に直行する方向であり、クレープ紙ではそのクレープの山、谷の延在方向である。
各トイレットペーパー10の伸び率は、主に原紙のクレープに起因するところがあるため、シート製造時におけるクレープ率により調整することができる。クレープ率は適宜選択できるが、上記伸び率を得るためにはクレープ率を18〜23%とすることが好ましい。この範囲以下であると十分な伸びが得られず、加工時に断紙してしまう可能性があり、この範囲を超えると表面がざらつくことがあるため、トイレットペーパー10として好ましくない。なお、クレープ率とは、((ヤンキードライヤーの周速)−(巻き取りリールの周速))/(ヤンキードライヤーの周速)×100(%)で算出される値である。
上記シングルエンボスが付与された上記坪量のトイレットペーパー10においては、エンボス凹部20を有する面における算術平均高さSaが上記範囲内であり、かつMD方向の伸び率が上記範囲内であると、エンボスの凹凸がしっかりと形成され、意匠性及び拭き取り性に優れるものでありながら、エンボス凸部30を有する面のざらつきも防止される。
特に、エンボス凹部20を有する面における最大山高さSpに対する算術平均高さSaの割合が15〜40%、より好ましくは20〜35%であり、かつエンボス凹部20を有する面における最大谷深さSvに対する算術平均高さSaの割合が5〜15%、より好ましくは5〜10%であると、エンボス凹部20の均一性が高いためより好ましい。
エンボス凹部20の底部21の形状は、図1、図3、図5〜図10に各種形状を示すように適宜定めることができ、四角形等の多角形、円形、楕円形、長円形等、任意の形状とすることができる。特に多角形では、エンボス凸部30を有する面のざらつきが問題となりやすいため、本発明を適用するのに特に適している。また、本発明では、図10に示すように異なる底部形状のエンボスを組み合わせることもできるが、図1、図3、図5〜図9に示される形態のように、単一の底部形状のエンボスのみ付与される形態を用いることが望ましい。
エンボス凹部20の配列は適宜定めることができ、図1に示される形態のように千鳥状配置とする他、図3及び図5に示される形態のようにMD方向に波状に延びるエンボス凹部20の列がCD方向に平行に繰り返される形態や、図6〜図9に示される形態のように多数のエンボス凹部20が一定の平面形状をなすように配列されたエンボス凹部20群がMD方向及びCD方向に繰り返される形態、あるいは図10に示される形態のようにMD方向に直線的に延びるエンボス凹部20の列がCD方向に平行に繰り返される形態とすることもできる。中でも、図1等のように、エンボス凹部20が一様なエンボス密度で配列されているパターンが好ましい。
特に、図1に示されるように、エンボス凹部20が千鳥状に配列され、隣接するエンボス凹部20の底部21同士を繋ぐように各エンボス凹部20の底部21からその四方に放射状に延びる谷溝が形成される形態が好ましく、この場合、エンボス凹部20の底部21の面積は1〜2.5mm2とし、エンボス凹部20の底部21のMD方向中心間隔L9及びCD方向中心間隔L9はそれぞれ4.5〜5.5mmとするのが好ましい。また、エンボス凹部20の底部21形状を図示形態のように四角形とする場合には、当該底部21の対角線方向が、隣接する凹部の対角線方向と一致するように、四角形の各辺の寸法、及びエンボス凹部20の配置を定めると、隣接するエンボス凹部20間を繋ぐ谷溝の形状がきれいに形成されるため望ましい。さらに、エンボス凹部20を千鳥状に配列する場合、隣接するエンボス凹部20の中心を通る方向とCD方向との鋭角側交差角Bは40°〜50°とすることが好ましい。
本実施形態のトイレットペーパー10は、既知のトイレットペーパー10用のクレープ紙にエンボス加工をして形成できるが、そのクレープ紙の原料パルプは特に限定されず、古紙パルプが配合されていてもよい。好適には、柔らかさの点で、特にバージンパルプのみをパルプ原料とするのがよく、その場合、特にNBKP(針葉樹クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹クラフトパルプ)とを配合したものがよい。その配合割合(JIS P 8120)は、NBKP:LBKP=0:100〜20:80がよい。NBKPが少な過ぎると十分な乾燥引張強度が得られない。
トイレットペーパー10の原紙1枚あたりの乾燥引張強度は縦(MD方向)が100〜380cN、横(CD方向)が70〜170cNとすることが望ましい。この範囲よりも低いと拭き取りの際にシートの破れが発生し、この範囲よりも高いと硬くなりすぎるため好ましくない。
なお、本実施形態のトイレットペーパー10は、水解性を確保する必要がり、JIS P 4501で規定される、ほぐれやすさの試験方法における水解性の結果が3〜30秒であるのがよい。
なお、上記トイレットペーパー10は、図11に示すようにトイレットロール100とするのに適する。トイレットロール100には図示形態のように紙管とも称される管芯101に巻き取ったタイプと、管芯が無い芯無しタイプとがあり、いずれにも適用することができる。なお、図11に示すトイレットロール100では、先端部にのみエンボス凹部20が図示されているが、トイレットロール100の全長にわたりエンボス凹部が形成されるものである。トイレットロール100の外形は、一般的には、直径(巻径、外径と言われることもある)L4が100〜125mm、ロール幅(ペーパー幅と同一である)L3が105〜120mm、内径(紙管を有する場合はその直径)L5が35〜50mmとなっており、上記トイレットペーパー10もこのような外形のトイレットロール100とすることができる。なお、一般的なトイレットロール100では、トイレットペーパー10の長手方向が紙の縦方向(MD方向)であり、幅方向が横方向(CD方向)となる。トイレットロール100の巻き長さは適宜定めることができるが、上記直径でかつ1プライの場合は例えば45〜100mとすることができ、上記直径でかつ2プライの場合は例えば25〜50mとすることができる。
<トイレットペーパーの品質評価方法について>
上述のトイレットペーパー10は、算術平均高さSaがエンボスの品質により変化するものである。よって、トイレットペーパー製品の算術平均高さSaを計測するとともに、この計測した算術平均高さSaが基準範囲内であるか否かにより、トイレットペーパー10の品質を評価する方法についても提案する。算術平均高さSaは、XY両方向の計測データによりある程度広い評価領域の全体を対象としてエンボス凹部による凹凸の状態を計測できるため、測定箇所や方向、又は測定者による結果のバラツキなく、エンボスの品質(すなわち意匠性)を正確に評価することができる。
さらに、トイレットペーパー製品について算術平均高さSaとともに、伸び率を計測し、算術平均高さSa及び伸び率がともに基準範囲内であるか否かにより、トイレットペーパー10の品質を評価すると、意匠性及び拭き取り性の向上と、エンボス凸部を有する面のざらつき防止とを両立できているか否かを正確に評価することができる。
本発明の実施例のトイレットペーパーと、比較例のトイレットペーパーについて、下記のように、滑らかさの指標となるMMDを測定するとともに、エンボス凸部を有する面のざらつき、エンボス凹部を有する面の意匠性、拭き取り性について官能試験を行ない、また実際の拭き取りを模した拭き取り試験を行った。
MMDは、摩擦感テスター KES−SE(カトーテック株式会社製)を用いて摩擦係数を測定し、その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値をMMD値とした。
各例の算術平均高さSa、最大山高さSp、最大谷深さSvは、キーエンス社製ワンショット3D測定マイクロスコープVR−3000シリーズにより計測した。
「エンボス凸部を有する面のざらつき」の官能評価は、10人の使用者を被験者とし、各人に普段と同様に各例のトイレットペーパーを使用した際のざらつき感を、「良い」「どちらともいえない」「悪い」の3段階で評価してもらうこととした。「良い」と答えた人が7〜10人の場合は○、4〜6人の場合は△、0〜3人の場合は×と評価した。
「拭き取り性」の官能評価は、10人の使用者を被験者とし、各人に普段と同様に各例のトイレットペーパーでお尻を拭き取ってもらい、1回で「きれいに拭き取れた」「拭き取れた」「拭き残りがある」の3段階で評価してもらうこととした。「きれいに拭き取れた」と答えた人が7〜10人の場合は○、4〜6人の場合は△、0〜3人の場合は×と評価した。
「意匠性」の官能評価は、10人の使用者を被験者とし、各人に各例のトイレットペーパーを見てもらい、「エンボスがくっきり入っている」「エンボスが入っている」「エンボスがぼやけている」の3段階で評価してもらうこととした。「エンボスがくっきり入っている」と答えた人が7〜10人の場合は○、4〜6人の場合は△、0〜3人の場合は×とした。
「実験室での拭き取り試験」では、アクリル板に澱粉糊(不易糊工業株式会社製FC10)を0.07g塗布し、この澱粉糊を便と見立てて拭き取りを行い、「きれいに拭き取れた」を○、「拭き取れた」を△、「拭残りがある」を×とする3段階評価で拭き取り具合を評価した。
各例のトイレットペーパーのエンボスの仕様は全例共通で以下のとおりとした。
・エンボスパターン:図1(千鳥状)
・エンボス凹部20の底部21形状:正方形
・エンボス凹部20の底部21の寸法:MD方向1.25mm×CD方向1.0mm
・エンボス凹部20の底部21の面積:1.25mm2
・エンボス密度:75000個/m2
・エンボス凹部20の底部21面積率:9.375%
・エンボス凹部20の底部21のMD方向中心間隔L9:5.50mm
・エンボス凹部20の底部21のCD方向中心間隔L9:5.01mm
・エンボスパターン:図6(ドット状、実施例4)
・エンボス凹部20の底部形状:楕円形
・エンボス凹部20の底部寸法:MD方向2.00mm×CD方向1.0mm
・エンボス凹部20の底部21の面積:1.57mm2
・エンボス密度:120000個/m2
・エンボス凹部20の底部面積率:18.840%
・エンボス凹部20の底部のMD方向中心間隔:5.00mm
・エンボス凹部20の底部のCD方向中心間隔:4.50mm
その他の物性値と試験結果は下記表1に示すとおりである。
Figure 2017064191
表1に示されるとおり、本発明の実施例1〜3は、意匠性及び拭き取り性の向上と、エンボス凸部を有する面のざらつき防止とを両立できているのに対して、比較例1〜4は意匠性及び拭き取り性の向上と、エンボス凸部を有する面のざらつき防止とを両立できていないものであった。実験室での拭き取り試験から、エンボスが鮮明に見えるほど、エンボスの凹凸が大きく、肌に当たる部分の圧力が増すことで、きれいに拭き取れる傾向が判明した。また糊が凹部にトラップされやすい傾向にあった。一方で、紙の伸びが高いと、拭いた際にエンボスが潰れるため、きれいに拭き取れない傾向が判明した。
10…トイレットペーパー、20…エンボス凹部、30…エンボス凸部、21…底部、100…トイレットロール。

Claims (5)

  1. 原紙1枚当たりの坪量が14〜26g/m2であり、
    一方の面に、深さ0.3〜1.0mm、底部面積0.5〜3.8mm2のエンボス凹部のみが、エンボス密度30000〜300000個/m2かつ底部面積率3〜25%で形成されるとともに、他方の面にエンボス凹部と対応するエンボス凸部のみが形成されており、
    前記エンボス凹部を有する面における算術平均高さSaが0.020〜0.032mmであり、
    MD方向の伸び率が15〜23%である、
    ことを特徴とするトイレットペーパー。
  2. 前記エンボス凹部が千鳥状に配列されており、
    隣接する前記エンボス凹部の底部同士を繋ぐように各エンボス凹部の底部からその四方に放射状に延びる谷溝が形成されており、
    前記エンボス凹部の底部面積は1〜2.5mm2であり、前記エンボス凹部の底部のMD方向中心間隔及びCD方向中心間隔がそれぞれ4.5〜5.5mmである、請求項1記載のトイレットペーパー。
  3. 前記エンボス凹部を有する面における最大山高さSpに対する前記算術平均高さSaの割合が22.0〜33.0%であり、かつ前記エンボス凹部を有する面の最大谷深さSvに対する前記算術平均高さSaの割合が5〜15%である、請求項1又は2記載のトイレットペーパー。
  4. 一方の面に、多数のエンボス凹部のみが間隔を空けて形成されるとともに、他方の面にエンボス凹部と対応するエンボス凸部のみが形成されたトイレットペーパーの品質評価方法であって、
    前記トイレットペーパーの前記エンボス凹部を有する面における算術平均高さSaを計測するとともに、
    この計測した算術平均高さSaが基準範囲内であるか否かにより、前記トイレットペーパーの品質を評価する、
    ことを特徴とするトイレットペーパーの品質評価方法。
  5. 前記トイレットペーパーの伸び率を計測し、前記算術平均高さSa及び伸び率がともに基準範囲内であるか否かにより、前記トイレットペーパーの品質を評価する、請求項4記載のトイレットペーパーの品質評価方法。
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