JP2017061730A - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】700℃以上の高温環境においても、高い高温強度と、優れた耐水蒸気酸化性を有する、オーステナイト系ステンレス鋼を提供する。【解決手段】本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.02%超〜0.20%、Si:1.5%以下、Mn:1.0%以下、Cr:15.0〜20.0%未満、Ni:25.0〜45.0%未満、Nb:2.3〜7.0%を含有し、さらに、Ti:4.0%以下、Mo:8.0%以下、及び、W:16.0%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす。Ti+Mo/2+W/4≧2.0 (1)Ni(sf)/Ni(cp)>1.00 (2)式(2)中のNi(sf)には表面から5μm深さまでの範囲におけるNi含有量(質量%)が代入され、Ni(cp)には鋼全体の平均のNi含有量(質量%)が代入される。【選択図】図2

Description

本発明はステンレス鋼に関し、さらに詳しくは、オーステナイト系ステンレス鋼に関する。
近年、地球温暖化等の環境問題への関心が高まっている。そのため、発電プラントは、操業時のCO2排出量の低減を求められている。CO2排出量を低減する方法として、たとえば、石炭火力発電プラントは、蒸気を高温化及び高圧化する方法を採用している。
発電プラントのボイラの加熱器管及び再熱器管には、ボイラ用鋼管が使用される。蒸気の高温化及び高圧化に伴い、ボイラ用鋼管には、高温強度と、水蒸気による高温酸化への優れた耐性(耐水蒸気酸化性)とが求められる。
鋼管の耐水蒸気酸化性を高める技術は、たとえば、特開昭58−133352号公報(特許文献1)、特開昭49−135822号公報(特許文献2)、特開昭52−8930号公報(特許文献3)、特開昭63−54598号公報(特許文献4)、特開2004−132437号公報(特許文献5)、特開2009−68079号公報(特許文献6)に開示されている。
[鋼組織を細粒化する技術]
特許文献1は、組織を細粒化することにより耐水蒸気酸化性を向上させた鋼管を開示する。特許文献1で開示されるオーステナイトステンレス鋼管は、鋼管の平均結晶粒度番号が6以下の粗粒組織と、内面側の結晶粒度番号が7以上の細粒層とを有する。特許文献1で開示されるオーステナイトステンレス鋼管の細粒層部の(C+N)量は0.15%以上である。
[表面に吹き付け加工を施す技術]
特許文献2〜特許文献4は、表面に吹き付け加工を施すことにより鋼管の耐水蒸気酸化性を向上する技術を開示する。具体的には、特許文献2及び特許文献3は、ピーニング加工を施す製造方法を開示する。特許文献2で開示されるオーステナイトステンレス鋼は、最終熱処理後又は熱間圧延後、オーステナイトステンレス鋼表面に、流体による粒子吹き付けピーニング加工が施される。
特許文献3で開示されるオーステナイトステンレス鋼は、最終熱処理後又は熱間圧延後、オーステナイトステンレス鋼表面に、所定の吹き付け圧力及び吹き付け量で、流体による粒子吹き付けピーニング加工が施される。粒子には、炭素鋼、合金鋼又はステンレス鋼が用いられる。
特許文献4は、ショットブラスト加工を施す製造方法を開示する。特許文献4で開示されるステンレス管体は、まず既設ボイラから取り外され、溶体化熱処理が施される。その後、ステンレス管体は、内面の脱スケールを目的として、化学洗浄が施される。さらに、ステンレス管体内面に、冷間加工層形成を目的として、ショットブラスト加工が施される。
[高加工度の冷間加工を付与する技術]
特許文献5及び特許文献6は、鋼管に高加工度の冷間加工を付与して鋼管の耐水蒸気酸化性を高める技術を開示する。具体的には、特許文献5に開示された方法では、質量%で5〜30%のCrを含有するオーステナイト系耐熱鋼管に、内表面に超音波衝撃処理を施す。
特許文献6は、Crを8〜28質量%含有し、内表面に加工層を備える鋼管を開示する。加工層は、鋼管内表面からの深さが20μmの位置におけるビッカース硬度が、内表面からの深さがt/2(t:鋼管の肉厚)の位置におけるビッカース硬度の1.5倍以上となる硬さを有する。
特開昭58−133352号公報 特開昭49−135822号公報 特開昭52−8930号公報 特開昭63−54598号公報 特開2004−132437号公報 特開2009−68079号公報
しかしながら、特許文献1に開示された細粒層を有する鋼管は、700℃以上の高温環境において、耐水蒸気酸化性が低くなる場合がある。特許文献2〜6に開示された方法で製造された鋼も、同様に、700℃以上の高温環境において、耐水蒸気酸化性が低くなる場合がある。
発電プラントでは、さらなる発電効率の向上を目的として、将来的には、800℃程度での操業も予想される。したがって、発電プラント用途に用いられる鋼には、700℃以上の高温環境下においても、高い高温強度と、優れた耐水蒸気酸化性とが要求される。
本発明の目的は、700℃以上の高温環境においても、高い高温強度と、優れた耐水蒸気酸化性とを有する、オーステナイト系ステンレス鋼を提供することである。
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.02%超〜0.20%、Si:1.5%以下、Mn:1.0%以下、Cr:15.0〜20.0%未満、Ni:25.0〜45.0%未満、Nb:2.3〜7.0%、Al:0〜0.100%、Ca:0〜0.020%、Mg:0〜0.020%、Zr:0〜0.500%、B:0〜0.020%、及び希土類元素:0〜0.100%を含有し、さらに、Ti:4.0%以下、Mo:8.0%以下、及びW:16.0%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物のうち、P:0.020%以下、S:0.010%以下、及びN:0.030%以下であり、式(1)及び式(2)を満たす。
Ti+Mo/2+W/4≧2.0 (1)
Ni(sf)/Ni(cp)>1.00 (2)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。 式(2)中のNi(sf)にはオーステナイト系ステンレス鋼の表面から5μm深さまでの範囲におけるNi含有量(質量%)が代入され、Ni(cp)にはオーステナイト系ステンレス鋼全体の平均のNi含有量(質量%)が代入される。
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼は、700℃以上の高温環境においても、高い高温強度と、優れた耐水蒸気酸化性とを有する。
図1は、高温水蒸気酸化雰囲気で使用された、従来のオーステナイト系ステンレス鋼の表面を含む断面図である。 図2は、高温水蒸気酸化雰囲気で使用された、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の表面を含む断面図である。
本発明者らは、700℃以上の水蒸気酸化雰囲気(以下、高温水蒸気酸化雰囲気という)におけるオーステナイト系ステンレス鋼の耐水蒸気酸化性について調査及び検討を行い、次の知見を得た。
高温水蒸気酸化雰囲気中でオーステナイト系ステンレス鋼を使用した場合、図1に示すとおり、オーステナイト系ステンレス鋼の表面に酸化スケール2が形成される。酸化スケール2は、内層酸化スケール3と外層酸化スケール4とを含む。
内層酸化スケール3は、オーステナイト系ステンレス鋼1の表面に形成されている。内層酸化スケール3は、主としてFe及びCrの混合酸化物からなる。内層酸化スケール3はたとえば、80体積%以上の(Fe、Cr)34を含有する。外層酸化スケール4は、内層酸化スケール3上に形成されている。外層酸化スケール4は、主としてFe系酸化物からなる。外層酸化スケール4はたとえば、80体積%以上のFe34を含有する。
従来のオーステナイト系ステンレス鋼の場合、高温水蒸気酸化雰囲気中での使用時間に伴い、外部からオーステナイト系ステンレス鋼の表層に酸素が侵入する。また、オーステナイト系ステンレス鋼内部からFeが酸化スケールに移動する。そのため、酸化スケールが成長する。
オーステナイト系ステンレス鋼において、表層のNi含有量を鋼全体の平均Ni含有量よりも高くすれば、つまり、オーステナイト系ステンレス鋼が式(2)を満たせば、高温水蒸気酸化雰囲気中での酸化スケールの成長を抑制できる。
Ni(sf)/Ni(cp)>1.00 (2)
ここで、式(2)中のNi(sf)にはオーステナイト系ステンレス鋼の表面から5μm深さまでの範囲におけるNi含有量(質量%)が代入され、Ni(cp)にはオーステナイト系ステンレス鋼全体の平均のNi含有量(質量%)が代入される。
表層のNi含有量が鋼全体の平均Ni含有量よりも高いオーステナイト形ステンレス鋼を高温水蒸気酸化雰囲気中で使用した場合、図2に示す酸化スケール20が形成される。
図2の酸化スケール20では、内層酸化スケール30と外層酸化スケール40との界面に金属Ni層50が形成されている。ここで、金属Ni層とは、Ni含有量が80質量%以上で、残部がFe又はCrの酸化物からなる層を指す。内層酸化スケール30及び外層酸化スケール40の構成は、内層酸化スケール3と外層酸化スケール4と同じである。
金属Ni層は酸化スケールの成長を抑制し、耐水蒸気酸化性を高める。この理由は定かではないが、次の理由が考えられる。金属Ni層での酸素及びFeの拡散能は、酸化スケールでの酸素及びFeの拡散能よりも小さい。そのため、金属Ni層は、酸素の侵入を抑制し、Feの酸化スケールへの移動を抑制する。その結果、酸化スケールの成長が抑制され、耐水蒸気酸化性が高まる。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.02%超〜0.20%、Si:1.5%以下、Mn:1.0%以下、Cr:15.0〜20.0%未満、Ni:25.0〜45.0%未満、Nb:2.3〜7.0%、Al:0〜0.100%、Ca:0〜0.020%、Mg:0〜0.020%、Zr:0〜0.500%、B:0〜0.020%、及び希土類元素:0〜0.100%を含有し、さらに、Ti:4.0%以下、Mo:8.0%以下、及び、W:16.0%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物のうち、P:0.020%以下、S:0.010%以下、及びN:0.030%以下であり、式(1)及び式(2)を満たす。
Ti+Mo/2+W/4≧2.0 (1)
Ni(sf)/Ni(cp)>1.00 (2)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。式(2)中のNi(sf)にはオーステナイト系ステンレス鋼の表面から5μm深さまでの範囲におけるNi含有量(質量%)が代入され、Ni(cp)にはオーステナイト系ステンレス鋼全体の平均のNi含有量(質量%)が代入される。
上記オーステナイト系ステンレス鋼は、Al:0.001〜0.100%、Ca:0.0001〜0.020%、Mg:0.0001〜0.020%、Zr:0.0001〜0.500%、B:0.0001〜0.020%、及び希土類元素:0.0001〜0.100%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
上述のオーステナイト系ステンレス鋼はさらに、内層酸化スケールと、外層酸化スケールと、金属Ni層とを含有してもよい。内層酸化スケールは、オーステナイト系ステンレス鋼の表面に形成されている。外層酸化スケールは、内層酸化スケール上に形成されている。金属Ni層は、内層酸化スケールと外層酸化スケールとの界面に形成されており、界面の60%を占める。金属Ni層が、内層酸化スケールと外層酸化スケールとの界面を占める割合(面積率)、Ni占有率(%)と定義する。この場合、金属Ni層により、耐水蒸気酸化性がさらに高まる。
上記オーステナイト系ステンレス鋼はたとえば、鋼管である。
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。以下、特に断りがない場合、元素の含有量の「%」は、質量%を意味する。
[化学組成]
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼は、次の元素を含有する。
C:0.02%超〜0.20%
炭素(C)は炭化物を形成し、クリープ強度を高める。C含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Cは、Ni、Nb及びCrと結合して炭化物を形成する。そのため、C含有量が高すぎれば、Laves相に代表される、金属間化合物の析出量が低減する。さらに、炭化物は高温で長時間加熱されると凝集して粗大化する。粗大な炭化物は結晶粒内及び粒界の強度を低下させる。したがって、C含有量は0.02%超〜0.20%である。C含有量の好ましい下限は0.04%であり、より好ましくは0.06%である。C含有量の好ましい上限は0.15%であり、より好ましくは0.10%である。
Si:1.5%以下
シリコン(Si)は不可避的に含有される。Siは鋼を脱酸する。しかしながら、Si含有量が高すぎれば、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Si含有量は1.5%以下である。好ましいSi含有量は0.70%以下であり、さらに好ましくは0.50%以下である。
Mn:1.0%以下
マンガン(Mn)は不可避に含有される。MnはSiと同様に、鋼を脱酸する。Mnはさらに、Sと結合してMnSを形成し、鋼の熱間加工性を高める。しかしながら、Mn含有量が高すぎれば、Mnはシグマ(σ)相の生成を促進して鋼の熱間加工性を低下させる。したがって、Mn含有量は1.0%以下である。好ましいMn含有量は0.70%以下であり、さらに好ましくは0.50%以下である。
Cr:15.0〜20.0%未満
クロム(Cr)は、鋼の耐水蒸気酸化性を高める。高温水蒸気酸化雰囲気において、Crは、鋼の表面近傍にクロミア(Cr23)皮膜を形成する。鋼の表面に均一なクロミア皮膜が形成されることにより、鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。Cr含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、組織の安定性が低下して高温クリープ強度が低下する。したがって、Cr含有量は15.0〜20.0%未満である。上述のとおり本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼を高温水蒸気酸化雰囲気で使用すると、表面の酸化スケール内に金属Ni層が形成される。この金属Ni層により、20.0%未満のCr含有量であっても優れた耐水蒸気酸化性が維持される。Cr含有量の好ましい下限は15.0%よりも高く、より好ましくは16.0%であり、さらに好ましくは17.0%である。Cr含有量の好ましい上限は19.5%であり、さらに好ましくは19.0%である。
Ni:25.0〜45.0%未満
ニッケル(Ni)は、オーステナイトを安定化させる。Niはさらに、鋼の耐水蒸気酸化性及び耐食性を高める。Ni含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、これらの効果が飽和するだけでなく、熱間加工性が低下する。Ni含有量が高すぎればさらに、原料コストが高くなる。したがって、Ni含有量は25.0〜45.0%未満である。Ni含有量の好ましい下限は25.0%よりも高く、より好ましくは26.0%であり、さらに好ましくは28.0%である。Ni含有量の好ましい上限は42.0%であり、さらに好ましくは40.0%である。
Nb:2.3〜7.0%
ニオブ(Nb)は、Niと結合してγ“相(Ni3Nb)を形成する。Nbはさらに、Feと結合してLaves相(Fe2Nb)を形成する。これらの金属間化合物(γ“相及びLaves相)が、高温環境中において粒界及び粒内に析出することにより、材料の高温クリープ強度が高まる。Nb含有量が低すぎれば上記効果が得られない。一方、Nb含有量が高すぎれば、鋼の靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、Nb含有量は2.3〜7.0%である。Nb含有量の好ましい下限は2.3%よりも高く、より好ましくは2.5%であり、さらに好ましくは2.8%である。Nb含有量の好ましい上限は7.0%未満であり、より好ましくは6.5%であり、さらに好ましくは6.0%である。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成はさらに、Ti、Mo、及びWからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する。
Ti:4.0%以下
チタン(Ti)は、Niと結合してγ”相(Ni3Ti)を形成する。Tiはさらに、Feと結合してLaves相(Fe2Ti)を形成する。これらの金属間化合物は、材料の高温クリープ強度を高める。一方、Ti含有量が多すぎれば、鋼の靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、Ti含有量は4.0%以下である。Ti含有量の好ましい上限は3.8%以下であり、さらに好ましくは、3.5%以下である。
Mo:8.0%以下
モリブデン(Mo)は、Feと結合してσ相(FeMo)を形成する。FeMoは材料の高温クリープ強度を高める。Mo含有量が多すぎれば、鋼の靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、Mo含有量は8.0%以下である。Moの含有量の好ましい上限は6.0%以下であり、さらに好ましくは5.0%以下である。
W:16.0%以下
タングステン(W)は、Feと結合してLaves相(Fe2W)を形成する。Fe2Wは材料の高温クリープ強度を高める。W含有量が多すぎれば、鋼の靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、W含有量は16.0%以下である。Wの含有量の好ましい上限は14.0%以下であり、さらに好ましくは12.0%である。
[式1について]
T、Mo、及びW含有量はさらに、式(1)を満たす。
Ti+Mo/2+W/4≧2.0 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
F1=Ti+Mo/2+W/4と定義する。F1は、高温クリープ特性の指標である。Ti、Mo、及びWを含有する金属間化合物は、上述のとおり、鋼の高温クリープ強度を高める。F1が2.0未満であればこの効果が得られない。したがって、F1は2.0以上である。F1が2.0%以上であれば、Ti含有量、Mo含有量、W含有量の下限は特に限定されない。たとえば、F1が2.0以上であれば、Ti、Mo及びWのうちの少なくとも1種又は2種が含有され、他の元素が含有されなくてもよい。もちろん、Ti、Mo及びWが全て含有されていてもよい。F1の好ましい下限は2.2%であり、さらに好ましくは2.5%である。
F1含有量の好ましい上限は4.0%である。この場合、鋼の靭性及び熱間加工性の低下を抑制できる。F1のさらに好ましい上限は3.8%であり、より好ましくは3.5%である。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の残部は、Fe及び不純物である。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
不純物のうち、P、S、及び、Nの含有量は次のとおりである。
P:0.020%以下
燐(P)は不純物である。Pは鋼の熱間加工性及び延性を低下させる。したがって、P含有量は0.020%以下である。好ましいP含有量は0.010%以下である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。
S:0.010%以下
硫黄(S)は不純物である。Sは鋼の熱間加工性を低下させる。したがって、S含有量は0.010%以下である。好ましいS含有量は0.008%以下である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。
N:0.030%以下
窒素(N)は不純物である。Nは、Nbと結合して窒化物を形成する。そのため、上述のNbを含有する金属間化合物(γ“相及びLaves相)の析出量が減少し、高温クリープ強度が低下する。さらに、窒化物は高温で長時間加熱されると凝集して粗大化する。粗大な窒化物は鋼の高温クリープ強度を低下させる。したがって、N含有量は0.030%以下である。好ましいN含有量は0.010%以下である。N含有量はなるべく低い方が好ましい。
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成はさらに、Al、Ca、Mg、Zr、B、及び希土類元素からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
Al:0〜0.100%、
Ca:0〜0.020%、
Mg:0〜0.020%、
Zr:0〜0.500%、
B:0〜0.020%、及び
希土類元素:0〜0.100%
アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、ボロン(B)、及び希土類元素(REM)はいずれも任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、これらの元素はいずれも、鋼の強度、加工性及び耐水蒸気酸化性を高める。しかしながら、これらの元素含有量が高すぎれば、鋼の加工性及び溶接性が低下する。したがって、Al含有量は0〜0.100%であり、Ca含有量は0〜0.020%であり、Mg含有量は0〜0.020%であり、Zr含有量は0〜0.500%であり、B含有量は0〜0.020%であり、REM含有量は0〜0.100%である。
本明細書におけるREMは、Sc、Y、及びランタノイド(原子番号57番のLa〜71番のLu)の少なくとも1種以上を含有する。REM含有量は、これらの元素の合計含有量を意味する。
Al含有量の好ましい上限は0.080%未満であり、さらに好ましくは0.050%である。Al含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.005%である。
Ca含有量の好ましい上限は0.020%未満であり、さらに好ましくは0.015%である。Ca含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
Mg含有量の好ましい上限は0.020%未満であり、さらに好ましくは0.015%である。Mg含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
Zr含有量の好ましい上限は0.500%未満であり、さらに好ましくは0.400%である。Zr含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
B含有量の好ましい上限は0.020%未満であり、さらに好ましくは0.015%である。B含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
REM含有量の好ましい上限は0.100%未満であり、さらに好ましくは0.070%である。REM含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
[式2について]
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼はさらに、式(2)を満たす。
Ni(sf)/Ni(cp)>1.00 (2)
ここで、式(2)中のNi(sf)にはオーステナイト系ステンレス鋼の表層におけるNi含有量(質量%)が代入される。また、Ni(cp)にはオーステナイト系ステンレス鋼全体の平均のNi含有量(質量%)が代入される。本明細書において、オーステナイト系ステンレス鋼の表層とは、オーステナイト系ステンレス鋼における表面から5μm深さまでの範囲を意味する。
式(2)に示すとおり、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼では、表面のNi含有量が、鋼全体の平均Ni含有量より高い。この場合、上述のとおり、酸化スケール内に金属Ni層が形成され、高温水蒸気酸化雰囲気において、耐水蒸気酸化性が高まる。
F2= Ni(sf)/Ni(cp)と定義する。F2は、表層のNi濃化の指標である。F2の好ましい下限は1.01であり、さらに好ましくは1.02である。また、F2の上限は特に限定されないが、本実施形態の化学組成におけるF2の上限の一例は2.50である。
上述の表層のNi含有量Ni(sf)は次の方法で求められる。オーステナイト系ステンレス鋼の表面のうち、任意の5点(測定点)において、Ni(sf)を測定する。オーステナイト系ステンレス鋼を表面に対して垂直に切断して、上記測定点を含むサンプルを採取する。測定点において、表面から5μm深さまでの範囲(つまり表層)における平均Ni含有量をEDX(エネルギ分散型X線分光)により求める。求めた値をNi(sf)(%)と定義する。
上述の鋼全体の平均Ni含有量Ni(cp)は、次の方法で求められる。本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材の表面から垂直な断面における中央部で試験片を採取する。たとえば、オーステナイト系ステンレス鋼材が鋼板の場合、圧延方向に垂直な断面の中央部(中心軸部分)から試験片を採取する。同様に、オーステナイト系ステンレス鋼材が棒鋼又は線材である場合、中心軸部分から試験片を採取する。オーステナイト系ステンレス鋼材が鋼管である場合、肉厚中央部から試験片を採取する。採取された試験片に対して、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により、Ni含有量を求める。求めた値を鋼全体の平均Ni含有量Ni(cp)(%)と定義する。
本実施形態による、オーステナイト系ステンレス鋼の形状は、特に限定されない。オーステナイト系ステンレス鋼はたとえば、鋼板、鋼管、棒鋼、線材等である。オーステナイト系ステンレス鋼が鋼管である場合、オーステナイト系ステンレス鋼管はボイラ用配管等として使用される。
[製造方法]
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法の一例について説明する。
[中間材製造工程]
上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。溶鋼に対して、必要に応じて周知の脱ガス処理を実施する。
製造された溶鋼から造塊法によりインゴットを製造する。インゴットを熱間加工(熱間鍛造等)してスラブやブルーム、ビレット等の鋼素材を製造する。製造された溶鋼から連続鋳造法によりスラブやブルーム、ビレット等の鋼素材を製造してもよい。
製造された鋼素材を熱間加工して、中間材を製造する。たとえば、鋼素材を熱間圧延して鋼板や棒鋼、線材を製造する。また、熱間押出や穿孔圧延等により鋼管を製造する。上記のとおり、熱間加工の具体的な方法は特に限定されず、最終製品の形状に応じた熱間加工を実施すればよい。
熱間加工後の中間材に対して冷間加工を実施してもよい。中間材が鋼管である場合、冷間加工はたとえば、冷間引抜や冷間圧延である。中間材が鋼板である場合、冷間圧延等である。
[熱処理工程]
製造された中間材に対して熱処理を実施する。熱処理を実施することにより、中間材の表面に金属酸化物層が形成される。
熱処理温度は1000〜1200℃である。熱処理温度が低すぎれば、結晶粒の均一化が不十分となる。また、後述のNi表面濃化処理工程後にオーステナイト系ステンレス鋼の表面近傍でのNi濃化が不十分となる。その結果、式(2)が満たされない。また、熱処理温度が高すぎれば、結晶粒径が著しく粗大化するため、施工性が低下する。従って、熱処理温度は1000〜1200℃である。
熱処理時間は5〜60分である。熱処理時間が短かすぎれば、結晶粒の均一化が不十分となる。また、後述のNi表面濃化処理工程後にオーステナイト系ステンレス鋼の表面近傍でのNiの濃化が十分発生せず、式(2)が満たされない。また、熱処理時間が長すぎれば、結晶粒径が著しく粗大化するため、施工性が低下する。したがって、熱処理時間は5〜60分である。
熱処理雰囲気は、大気雰囲気又は酸化性のガス雰囲気が望ましい。酸化性雰囲気でない場合、上記効果が得られない恐れがある。
[Ni表面濃化処理工程]
熱処理後の中間材に対して、Ni表面濃化処理を実施する。Ni表面濃化処理では、浴を準備する。熱処理後の中間材を浴に浸漬して、熱処理により形成された金属酸化物層を除去する。このとき、中間材の表層のFe及びCrの酸化物を含む金属酸化物層が除去される。その結果、表層のNi濃度が増加する。
Ni表面濃化処理温度は5〜50℃である。Ni表面濃化処理温度が低すぎれば、鋼全体の平均Ni濃度に対して表面のNi濃度が増加しにくく、式(2)が満たされない。一方、Ni表面濃化処理温度が高すぎれば、表面のNi濃度が均一に増加せず、式(2)を満たさない。Ni表面濃化処理温度が5〜50℃であれば、表面のNi濃度が均一に増加して、Ni表面濃化処理後のオーステナイト系ステンレス鋼が式(2)を満たす。
Ni表面濃化処理時間は0.5〜10時間である。Ni表面濃化処理時間が短かすぎれば、表面のNi濃度が増加しにくく、式(2)が満たされない。一方、Ni表面濃化処理時間が長すぎれば、表面に濃化したNi層も溶解されるため、表面のNi濃度が均一に増加しにくく、式(2)が満たされない。Ni表面濃化処理時間が0.5〜10時間であれば、表面のNi濃度が均一に増加して、Ni表面濃化処理後のオーステナイト系ステンレス鋼が式(2)を満たす。
Ni表面濃化処理に用いる浴の種類は特に限定されない。好ましい浴は、塩酸、硫酸、及び硝酸からなる群から選択される1種と、フッ酸との混合溶液である。
以上の製造方法により、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼が製造される。上述の熱処理及びNi表面濃化処理により、中間材の表層では、Fe及びCrの酸化物を含む金属酸化物層が除去される。一方、表層のNiは残留する。その結果、オーステナイト系ステンレス鋼の表層において、Fe濃度及びCr濃度が減少し、Ni濃度が相対的に増加して、式(2)を満たす。
Ni表面濃化処理工程後に、オーステナイト系ステンレス鋼の表面に対して、投射材を用いたブラスト処理を実施してもよい。オーステナイト系ステンレス鋼管の場合、例えば、鋼管内面に対してブラスト処理を実施する。また、オーステナイト系ステンレス鋼板の場合、一表面に対してブラスト処理を実施する。この場合、オーステナイト系ステンレス鋼のブラスト処理が実施された表面に加工層が形成される。そのため、耐水蒸気酸化性がさらに高まる。
[高温水蒸気酸化雰囲気で使用中の本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼]
上述のオーステナイト系ステンレス鋼はたとえば、高温水蒸気酸化雰囲気中で使用される。たとえば、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼が、ボイラ用鋼管として、発電プラントのボイラの加熱器管及び再熱器管に使用される場合がこれに相当する。
高温水蒸気酸化雰囲気で使用された本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼10の表面には、図2に示すとおり、酸化スケール20が形成されている。酸化スケール20は、内層酸化スケール30と外層酸化スケール40とを含む。
内層酸化スケール30は、オーステナイト系ステンレス鋼10の表面に形成されている。内層酸化スケール30は、主としてFe及びCrの混合酸化物からなる。内層酸化スケール30はたとえば、80体積%以上の(Fe、Cr)34を含有する。外層酸化スケール40は、内層酸化スケール30上に形成されている。外層酸化スケール40は、主としてFe系酸化物からなる。外層酸化スケール40はたとえば、80体積%以上のFe34を含有する。
オーステナイト系ステンレス鋼10はさらに、内層酸化スケール30と外層酸化スケール40との界面に、金属Ni層50を含む。金属Ni層50は、80質量%以上のNiを含有する。金属Ni層50中のNi含有量は、EDXにより測定可能である。
金属Ni層50が形成されると、高温水蒸気酸化雰囲気中における酸化スケールの成長が抑制される。そのため、オーステナイト系ステンレス鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。この理由は定かではないが、上述のとおり、金属Ni層50により、外界からの酸化スケール20(内層酸化スケール30)へのOの侵入、及び、母材からのFeの酸化スケール20(外層酸化スケール40)への供給が抑制されるためと考えられる。
以上のとおり、金属Ni層50の形成により、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の耐水蒸気酸化性は高まる。
上記効果をより有効に得るために、金属Ni層50のNi占有率は面積率で60%以上が好ましく、さらに好ましくは65%以上である。この場合、高温水蒸気酸化雰囲気中における耐水蒸気酸化性がさらに高まる。
[試験方法]
表1に示す化学組成を有する溶鋼を、真空溶解炉を用いて製造した。
Figure 2017061730
表1中に示す各番号の溶鋼を用いて、インゴットを製造した。インゴットを熱間圧延して、中間材(鋼板)を製造した。
製造された中間材に対して、表2に示す熱処理及びNi表面濃化処理を実施してオーステナイト系ステンレス鋼板を製造した。
Figure 2017061730
[Ni(sf)/Ni(cp)測定]
各試験番号のオーステナイト系ステンレス鋼板を垂直に切断し、表面を含むサンプルを採取した。サンプルを樹脂に埋め込み、表面近傍の断面を含む観察面を研磨した。研磨後の観察面に対して、上述の方法を用いて表層(表面から5μm深さまでの範囲)のNi含有量を求めた。
さらに、各試験番号のオーステナイト系ステンレス鋼板の横断面の中央部から分析用試験片を採取し、ICP発光分光分析法により、Ni含有量を求め、これをNi(cp)と定義した。
[水蒸気酸化試験]
各試験番号のオーステナイト系ステンレス鋼板から、2mm×10mm×25mmの試験片を採取し、水蒸気酸化試験を実施した。
具体的には、試験片を治具に吊り下げた。続いて、試験片を吊り下げたまま、横型管状加熱炉に装入した。装入後、700℃の水蒸気雰囲気(溶存酸素量は100ppb)で2000時間保持された。
試験後、各試験片を切断した。切断面が観察面となるよう、切断された試験片を樹脂に埋め込んだ。その後、観察面を鏡面研磨した。鏡面研磨された観察面を、光学顕微鏡観察又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1000〜3000倍で観察し、試験片に形成された内層酸化スケールの平均厚さを求めた。具体的には、光学顕微鏡観察又はSEMを用いて、試験片の表面近傍を観察し、任意の10視野において、内層酸化スケールの厚さを測定した。上述のとおり、内層酸化スケールの組成は、外層酸化スケールの組成と異なる。そのため、内層酸化スケールは外層酸化スケールと区別可能である。各視野で測定された内層酸化スケールの厚さの平均を、内層酸化スケールの厚さと定義した。
さらに、水蒸気酸化試験後における、金属Ni層のNi占有率を測定した。具体的には、光学顕微鏡又はSEMを用いて、鏡面研磨された観察面を観察した。観察面の、内層酸化スケールと外層酸化スケールの界面上に存在する金属Ni層の長さを測定することで、界面全体の長さに対する金属Ni層の長さの比を金属Ni層のNi占有率と定義した。
[クリープ試験]
また、Ni濃化処理後のステンレス鋼板から、クリープ破断試験片を採取した。クリープ破断試験片は、厚さ方向中心部から採取した。クリープ破断試験片は丸棒試験片であり、直径は6mm、標点間距離は30mmであった。この試験片の長手方向は圧延方向とした。この試験片を用いて、クリープ破断試験を行った。クリープ破断試験は700〜800℃の大気雰囲気において実施した。得られた破断強度に基づいて、ラーソン−ミラーパラメータ法によって、700℃における1.0×104時間でのクリープ破断強度を求めた。
[試験結果]
表2に、金属Ni層の占有率、スケール厚さ、及びクリープ破断強度を示す。
試験番号3、7、10及び17〜22の化学組成は適切であり、F1が式(1)を満たした。さらに、製造条件も適切であったため、F2が式(2)を満たした。その結果、水蒸気酸化試験後の金属Ni層の占有率は60%以上であった。そのため、スケール厚さが10μm未満であり、優れた耐水蒸気酸化性を示した。さらに、クリープ破断強度が120MPa以上で、優れたクリープ強度を示した。
一方、試験番号1では、熱処理時間が短すぎた。そのため、F2が式(2)を満たさなかった。その結果、金属Ni層の占有率は60%未満であり、スケール厚さが10μmを超えた。
試験番号2では、Ni表面濃化処理での処理温度が高すぎた。そのため、F2が式(2)を満たさなかった。その結果、金属Ni層の占有率は60%未満であり、スケール厚さが10μmを超えた。
試験番号4では、Ni表面濃化処理での処理時間が長すぎた。そのため、F2が式(2)を満たなかった。その結果、金属Ni層の占有率は60%未満であり、スケール厚さが10μmを超えた。
試験番号5では、Ni表面濃化処理での処理温度が低すぎた。そのため、F2が式(2)を満たなかった。その結果、金属Ni層の占有率は60%未満であり、スケール厚さが10μmを超えた。
試験番号6では、熱処理での処理温度が低すぎた。そのため、F2が式(2)を満たさなかった。その結果、金属Ni層の占有率は60%未満であり、スケール厚さが10μmを超えた。
試験番号8では、Ni表面濃化処理での処理時間が短すぎた。そのため、F2が式(2)を満たさなかった。その結果、金属Ni層の占有率は60%未満であり、スケール厚さが10μmを超えた。
試験番号9では、熱処理での雰囲気がArであった。そのため、F2が式(2)を満たさなかった。その結果、金属Ni層の占有率は60%未満であり、スケール厚さが10μmを超えた。
試験番号11では、Ni含有量及びNb含有量が低すぎた。その結果、金属Ni層の占有率は60%未満であり、スケール厚さが10μmを超えた。また、クリープ破断強度が120MPa未満であった。
試験番号12では、Cr含有量が低すぎた。その結果、金属Ni層の占有率は60%未満であり、スケール厚さが10μmを超えた。
試験番号13及び16では、Nb含有量が低すぎた。その結果、クリープ破断強度が120MPa未満であった。
試験番号14では、Ni含有量が低すぎた。その結果、金属Ni層の占有率は60%未満であり、スケール厚さが10μmを超えた。
試験番号15では、F1が式(1)を満たさなかった。その結果、クリープ破断強度が120MPa未満であった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
1、10 オーステナイト系ステンレス鋼
2、20 酸化スケール
3、30 内層酸化スケール
4、40 外層酸化スケール
50 金属Ni層

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.02%超〜0.20%、
    Si:1.5%以下、
    Mn:1.0%以下、
    Cr:15.0〜20.0%未満、
    Ni:25.0〜45.0%未満、
    Nb:2.3〜7.0%、
    Al:0〜0.100%、
    Ca:0〜0.020%、
    Mg:0〜0.020%、
    Zr:0〜0.500%、
    B:0〜0.020%、及び、
    希土類元素:0〜0.100%を含有し、さらに、
    Ti:4.0%以下、
    Mo:8.0%以下、及び、
    W:16.0%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
    不純物のうち、P、S、及びNは、
    P:0.020%以下、
    S:0.010%以下、及び
    N:0.030%以下、であり、
    式(1)及び式(2)を満たす、オーステナイト系ステンレス鋼。
    Ti+Mo/2+W/4≧2.0 (1)
    Ni(sf)/Ni(cp)>1.00 (2)
    ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。式(2)中のNi(sf)には前記オーステナイト系ステンレス鋼の表面から5μm深さまでの範囲におけるNi含有量(質量%)が代入され、Ni(cp)には前記オーステナイト系ステンレス鋼全体の平均のNi含有量(質量%)が代入される。
  2. 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼であって、
    Al:0.001〜0.100%、
    Ca:0.0001〜0.020%、
    Mg:0.0001〜0.020%、
    Zr:0.0001〜0.500%、
    B:0.0001〜0.020%、及び
    希土類元素:0.0001〜0.100%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、オーステナイト系ステンレス鋼。
  3. 請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼であってさらに、
    前記オーステナイト系ステンレス鋼の表面上に形成された内層酸化スケールと、
    前記内層酸化スケール上に形成された外層酸化スケールと、
    前記内層酸化スケールと前記外層酸化スケールとの界面に形成され、前記界面の60%以上を占める金属Ni層とを備える、オーステナイト系ステンレス鋼。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼であって、
    前記オーステナイト系ステンレス鋼は鋼管である、オーステナイト系ステンレス鋼。

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