JP2017058090A - 膨張弁及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
弁室内に配設される球状の弁部材は、弁室に開口する弁孔の弁座に対向し、パワーエレメントにより駆動される弁棒により操作されて、弁座との間の絞り通路の開度を制御する。
また、弁孔を通った冷媒は、出口ポートから蒸発器側へ送られる。蒸発器から圧縮機側へ戻る冷媒は、弁本体に設けられた戻り通路を通過する。
上蓋部材とダイアフラムで形成される圧力作動室には作動ガスが封入される。このとき、圧力作動室に作動ガスを封入するために、上蓋部材の頂部に穴を設け、この穴から作動ガスを封入した後に鋼球等で穴を塞ぎプロジェクション溶接手段などによって圧力作動室を封止する。
しかしながら、こうした従来の膨張弁では、例えば弁本体の頂部の開口部とパワーエレメントの底部とにそれぞれ雄ねじと雌ねじを形成し、これらをねじ締めして固定する方法が採用されていたため、膨張弁の高さは実質的に弁本体とパワーエレメントとを合計した高さとなっていた。
このような点を解決したものとして、弁本体の頂部に設けられた円筒部内にパワーエレメントを挿入し、該円筒部の上端をカシメ加工して形成されるカシメ部で固定することにより、パワーエレメントの小型化を図った膨張弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このとき、プレス加工でカシメ部を形成しようとすると、通常は円筒部を押圧するカシメ治具が当該円筒部の全周に同時に当接して、変形する材料の流れを拘束することとなる。
このとき、前記複数の加工領域は、互いが等間隔となるように配置するのが好ましい。
本発明の膨張弁の製造方法によれば、耐久性・耐腐食性が良好で、かつ製品として外観上の美観に優れた膨張弁を製造することができる。
また、クラックの発生を防止しながら長時間をかけて行うプレス加工に比較して、折曲部を形成するための加工時間も大幅に短縮することができる。
良好な耐久性及び耐腐食性という特徴を有する本発明による膨張弁の構造は、円筒部の上端に局部的な加圧を加えることによって得られるものである。そして、このような特徴は、加工後の部材を構成する金属原子の配列状況等がプレス加工でカシメ部を形成した場合と異なったものとなっていることに起因すると考えられる。
このため、本発明の膨張弁について、物の発明としての構成を物理的あるいは外形的な構造によって特定しようとすれば、例えば、局部的な加圧によって徐々に発生する金属原子の移動の状態等をすべて表記しなければならない。
しかしながら、このような点を表現することは、出願時点の技術水準からすると不可能である。
したがって、本願発明においては、物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するものである。
図1(a)に示すように、膨張弁1は、弁本体10の頂部に円筒部12及び折曲部12aを用いてパワーエレメント100が固定されている。
弁本体10は、パワーエレメント100、パワーエレメントを固定する円筒部12と、高圧の冷媒が導入される入口ポート20と、冷媒の出口ポート28と、冷媒の戻り通路30と、弁本体10を図1(a)の左右方向に貫通する2つの貫通穴70(図1(b)参照)と、弁本体10を他の部品に取り付けるための取付穴(あるいは取付用雌ねじ)80と、を有する。
また、弁室24には、側方から小径穴20aを介して入口ポート20が連通している。
また、弁孔26の弁室24側には、弁座25が形成されている。そして、弁室24内には、弁座25に対向する球状の弁部材40と、当該弁部材40を支持する支持部材42と、支持部材42をさらに支持するコイルスプリング44とが収容されている。
コイルスプリング44は、支持部材42に設けられたフランジ部42bの下面とプラグ50に形成された凹部52との間に弾発的に収容されており、これによって、弁部材40は支持部材42を介して弁座25に向けて付勢されている。
このプラグ50のねじ込み量を調整することにより、弁部材40を支持するコイルスプリング44のばね力を調整することができる。
また、プラグ50の外周部にはシール部材54が設けられ、これによって弁室24がシールされている。
本発明の膨張弁1を流通する冷媒は、入口ポート20から流入し、弁孔26を通過し、出口ポート28から送り出された後、蒸発器(図示せず)へ送られ、その後冷媒は蒸発器から圧縮機(図示せず)へ戻る。
そして、蒸発器から圧縮機に戻る冷媒は、図1(a)において戻り通路30の左側から入って右側に抜けるように通過する。
一方、円筒部12の中央部には戻り通路30に至る連通穴31が形成されている。
上蓋部材110とダイアフラム130との間には、圧力作動室112が形成され、この圧力作動室112内に例えば不活性ガス等の作動ガスが封入された後、封止栓114で封止される。
また、これら弁孔26、通し穴29及び連通穴31のそれぞれに挿通される態様で弁棒60が設けられている。
このような配置とすることにより、図1に示す膨張弁1は、パワーエレメント100の圧力作動室112における内圧の変動に応じて変形したダイアフラム130の動きを受け、ストッパ部材140が上下動し、当該ストッパ部材140の移動が弁棒60を介して弁部材40に伝達され、膨張弁としての役割を果たすことができる。
本発明による膨張弁においては、図1(a)の上下方向に直立している加圧加工前の円筒部12に対して、円筒部の内側に向けた局部的な加圧を施すことによって、折曲部12aを形成し、この折曲部12aによってパワーエレメント100を固定している。
また、図1(a)及び(b)で示した膨張弁は、あくまでも本発明の一例であり、本発明は図1(a)及び(b)で示した膨張弁に限定されるものではなく、弁本体の形状や材質等さまざまな変形が可能であることは言うまでもない。
その後、パワーエレメント100の上蓋部材110に当接するように弁本体10の円筒部12の先端に円筒部の内側に向けた局部的な加圧を加え、折曲部12aを形成し、パワーエレメント100を弁本体10に固定する。
そして、上記押圧具による局部的な加圧を円筒部12の円周全体について行えば、上記折曲部12aを円筒部12の全周にわたって形成することができる。
このため、押圧具の例としては、例えばローラー状の押圧具を用いてもよいし、先端の尖った押圧具を用いてもよい。これらの押圧具が円筒部12の上端に点接触あるいは所定の幅で線接触することによって、局部的な加圧が実現できる。
例えば、押圧具をローラーとした場合、円筒部12の上端との接触がローラーの円周上で移動することとなるため、ローラーの摩耗を抑制して寿命を延ばすことができる。
このような相対的な回転移動の例として、円筒部12を非回転とし、押圧具を当該円筒部12の中心軸まわりに回転させる場合や、押圧具の位置を固定とし、上記円筒部12の中心軸を中心として弁本体10を回転させる場合等も含まれる。
図2は、本発明による膨張弁を製造する際に用いる装置の一例を示す概略図であって、図2(a)は折曲部加工装置と膨張弁の円筒部を折曲部加工装置側から見た上面図、図2(b)は図2(a)に示した装置のA−A断面図を示す。
図2に示す一例において、中央軸部210は、図示を省略した位置決め機構に取り付けられ、弁本体10に嵌め込まれたパワーエレメント100に向けて、図2(b)の上下方向に進退自在に設けられている。
そして、図2(b)に示すように、中央軸部210の下端には環状凸部211が形成されており、当該環状凸部211がパワーエレメント100の上蓋部材110に当接することにより、折曲部加工装置200を位置決めすることができる。
この押圧力は、弁本体10とパワーエレメント100との間に配設されたシール部材64を押し潰すことにより、両者の密着性を高めるとともに弁本体10の内部の気密性を確保することができる。
また、内側筒部220は、図示を省略した昇降機構により、中央軸部210の中心軸に沿う方向に、中央軸に対して上下に摺動が可能となっている。
そして、内側筒部220のさらに外側には外側筒部221が配置され、当該内側筒部220と外側筒部221との間を、3つの押圧具230a〜230cのローラー軸231a〜231cがそれぞれ接続している。
このような構造により、内側筒部220と外側筒部221と押圧具230a〜230cとは、一体で中央軸部210の周囲を回転することができるとともに、内側筒部220と一体となった押圧具230a〜230cが中央軸部210の中心軸に沿う方向に、中央軸に対して上下に摺動が可能となっている。
このような配置を採用することにより、折曲部の加工における円筒部12の曲げ変形を偏りなく均一化することができる。このような効果を奏するためには、同時に局部的な加圧を行う加工領域の数を複数にすることが必要であるが、3つに限定される必要はない。
なお、図3では、弁本体10すなわち円筒部12を非回転とし、押圧具Tを円筒部12の中心軸まわりに移動させながら加工する場合を示している。
続いて、円筒部12の上部を内側に変形させて折曲部12aを形成するために、押圧具Tから円筒部12の上端に対して当該円筒部12の中心方向への押圧力F1を付与しつつ、押圧具Tを円筒部12の周方向Rに移動させる。
言い換えれば、加工領域Pは、円筒部12の周方向Rに移動する押圧具Tから(F=F1+F2)となる局部的な加圧力Fを受けて、当該局部的な加圧力Fの方向に変形する。
このため、円筒部12の折曲部12a等に微細なクラックが形成されるのを抑制でき、結果として膨張弁の製品外観を良好とすることができる。
図4は、図2(b)の二点鎖線で示した領域Dを、折曲部の形成工程ごとに示した図であって、図4(a)は折曲部形成工程の初期工程を示した図、図4(b)は折曲部形成工程の中間工程を示した図、図4(c)は折曲部形成工程の最終工程を示した図である。
なお、図4において、弁本体10及び円筒部12における断面位置は、図4(a)〜図4(c)において同一の位置とする。
このとき、R形状部235aの曲率は、弁本体10の円筒部12を局部的に加圧した後の折曲部12aの外表面の曲率と同一になるように設定されている。
そして、折曲部加工装置200のローラー232a〜232cは、弁本体10の円筒部12の上端を局部的に加圧するとともに、当該ローラー232a〜232cの公転に伴って、上記加工領域Pが円筒部12の周方向に沿って移動する。
このとき、上述の通り、折曲部加工装置200の中央軸部210は回転していないが、内側筒部220と外側筒部221と押圧具230a〜230cとからなる部分は一体となり、中央軸部210の中心軸線まわりに回転している。
このとき、上述のとおり、中央軸部210の下端に形成された環状凸部211が上蓋部材110の上面に接触して押圧力を付与することにより、パワーエレメント100は弁本体10に対して上下方向の位置決めがなされる。
そして、ローラー232aは中央軸部210のまわりに回転しているため、上記R形状部235aが円筒部12の上端と接触すると、ローラー232a自体もローラー軸231aまわりに回転する。
つまり、円筒部12の特定の位置において、第1のローラー232aによって局部的に加圧された後、公転により移動してくる第2のローラー232bによって局部的に加圧され、さらに公転により移動してくる第3のローラー232cによって局部的に加圧される、という動作を間欠的に繰り返すこととなる。
そして、上述のとおり、R形状部235aの境界部236aと中央軸部210の中心軸との距離は、弁本体10の円筒部12の外径と等しくなるように設定される。
そして、この曲げ変形は、中央軸部210まわりの公転によって、ローラー232aに続いて接触するローラー232b及び232cから加えられる局部的な加圧により間欠的に繰り返される。
すると、図4(a)で示した折曲部12aの上端部は、ローラー232a〜cとの局部的な加圧が間欠的に繰り返されることにより、上記ローラー232a〜232cのR形状部235a〜235cの形状に沿ってさらに内側に変形する。
このとき、通常パワーエレメント100の上蓋部材110は弁本体10の円筒部12の材料よりも高強度の材料(例えばステンレス鋼等)で形成されるため、アルミ合金からなる円筒部12は上蓋部材110の角部110aを中心として曲げ加工される。
折曲部加工装置200をさらに押し込むと、円筒部12の折曲部12aは、ローラー232a〜cとの局部的な加圧が間欠的に繰り返されることにより、ローラー232a〜232cのR形状部235a〜235cに沿って変形がさらに進み、やがて折曲部12aの内面が上蓋部材110の上面と接触する。
この位置で折曲部加工装置200の押し込みを停止すると、円筒部12の全周にわたって連続的に折り曲げられた折曲部12aが形成される。
このため、間欠的に接触するローラー232a〜232cが円筒部12の上端と接触する(局部的に加圧する)位置は常に変化することとなり、折曲部12aが受ける局部的な加圧力によるひずみも分散される。
また、折曲部12aは、ローラー232a〜232cのR形状部235a〜235cの形状を転写したものとなるため、折曲部の形成を行うのみでパワーエレメント100の最終の取付形状とすることができ、美観にも優れていることから、加工後の仕上げ加工等の工程を削減することが可能となる。
このとき、パワーエレメント100と弁本体10との間に介在されているシール部材64も上記環状凸部211の全周にわたって常に押圧されることとなる。
したがって、折曲部12aの形成工程後の膨張弁1において、パワーエレメント100と弁本体10との密着度を向上させるとともに弁本体10内部の気密性も確保できる。
また、押圧具を用いて円筒部に局部加圧することにより、加圧力を狭い加工領域に集中することができるため、円筒部の肉厚が厚い場合であっても、曲げ加工を実施することができる。
このため、円筒部の肉厚を厚くして全体の剛性を高めることができるとともに腐食の影響もこの肉厚内に留めることができる、耐食性をさらに向上させることもできるといった効果も有している。
例えば、押圧具230によって折曲部12aの外面が傷つけられることを回避する、あるいは押圧具230自体の摩耗を抑制することを意図して、押圧具230の円筒部12との接触部分にコーティング等で保護層を形成してもよい。
すなわち、押圧具の数は1つであっても複数であってもよい。また、膨張弁の弁本体を円筒部の中心軸まわりに回転させつつ押圧具に接触させることにより、局部的な加圧を行うこともできる。
その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施例に種々の改変を施すことも可能である。
10 弁本体
12 円筒部
12a 折曲部
20 入口ポート
24 弁室
25 弁座
26 弁孔
28 出口ポート
30 戻り通路
40 弁部材
42 支持部材
44 コイルスプリング
50 プラグ
60 弁棒
64 シール部材
100 パワーエレメント
110 上蓋部材
110a (上蓋部材の)角部
112 圧力作動室
120 受け部材
130 ダイアフラム
140 ストッパ部材
200 折曲部加工装置
210 中央軸部
211 環状凸部
220 内側筒部
221 外側筒部
230a、230b、230c 押圧具
231a、231b、231c ローラー軸
232a、232b、232c ローラー
233a、233b、233c (ローラーの)側面
234a、234b、234c (ローラーの)底面
235a、235b、235c R形状部
Claims (11)
- 高圧の冷媒が導入される入口ポートと、該入口ポートに連通する弁室と、該弁室に開口する弁孔と、該弁孔の入口に形成される弁座と、前記弁孔を通過した冷媒が送り出される出口ポートとを有する弁本体と、前記弁座に対向して配設される弁部材と、該弁部材を操作する弁棒を駆動する作動ガスを封入した圧力作動室を有するパワーエレメントとを備える膨張弁であって、
前記弁本体の頂部には、前記パワーエレメントを固定するための円筒部を有しており、
前記円筒部の上端は、前記円筒部の内側に向けた局部的な加圧によって、折曲部が形成され、
前記パワーエレメントは、前記折曲部によって前記円筒部内に固定されている
ことを特徴とする膨張弁。 - 前記局部的な加圧は、ローラーを用いた加圧加工である
ことを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。 - 前記折曲部は、前記円筒部の全周にわたって形成されている
こと特徴とする請求項1又は2に記載の膨張弁。 - 前記弁本体は押出成形部材であり、前記円筒部の中心軸の方向は、前記弁本体の押出成形方向と直交した方向となっている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の膨張弁。 - 弁本体とパワーエレメントとを備える膨張弁の製造方法であって、
前記弁本体は、前記パワーエレメントを固定するための円筒部を頂部に備え、
前記円筒部の内側に前記パワーエレメントを載置し、
前記円筒部の上端に対して押圧具を用いて内側に向けて局部的な加圧を行うことにより、前記円筒部に折曲部を形成し、
前記押圧具による局部的な加圧が前記円筒部の全周にわたって行われる
ことを特徴とする膨張弁の製造方法。 - 前記局部的な加圧は、前記円筒部の複数の加工領域を同時に押圧して行う
こと特徴とする請求項5に記載の膨張弁の製造方法。 - 前記複数の加工領域は、互いが等間隔となるように配置される
ことを特徴とする請求項6に記載の膨張弁の製造方法。 - 前記押圧具による局部的な加圧は、前記押圧具及び前記円筒部を相対的に回転移動させることにより、前記円筒部の全周にわたって行われる
ことを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の膨張弁の製造方法。 - 前記弁本体は押出成形部材であり、前記円筒部の中心軸の方向は、前記弁本体の押出成形方向と直交している
ことを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の膨張弁の製造方法。 - 前記押圧具は、ローラーであって、前記ローラーの側面が前記円筒部の上端と接触して前記局部的な加圧を行う
ことを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の膨張弁の製造方法。 - 前記ローラーの側面には、前記ローラーの底面との境界位置にR形状部が形成されており、前記R形状部が前記円筒部の上端と接触して前記局部的な加圧を行う
ことを特徴とする請求項10に記載の膨張弁の製造方法。
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