JP2017057968A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】転がり軸受から発生する摩耗粉(鉄粉等)等の異物を、より確実に捕捉する。
【解決手段】外輪1及び内輪2と、転動体3と、外輪1若しくは外輪1に固定された部材に取り付けられ、軸受空間内から軸受外へ通じる潤滑油通路を覆うシール部材40と、シール部材40に設けられ軸受空間内から軸受外へと流出する潤滑油に遠心力を付与する遠心力付与流路51と、遠心力により潤滑油内から分離された異物を捕捉する異物捕捉部52とを備える転がり軸受とした。シール部材40は軸受空間に沿う円環状であり、遠心力付与流路51は、シール部材40の円環に沿って形成された螺旋形状である。
【選択図】図3
【解決手段】外輪1及び内輪2と、転動体3と、外輪1若しくは外輪1に固定された部材に取り付けられ、軸受空間内から軸受外へ通じる潤滑油通路を覆うシール部材40と、シール部材40に設けられ軸受空間内から軸受外へと流出する潤滑油に遠心力を付与する遠心力付与流路51と、遠心力により潤滑油内から分離された異物を捕捉する異物捕捉部52とを備える転がり軸受とした。シール部材40は軸受空間に沿う円環状であり、遠心力付与流路51は、シール部材40の円環に沿って形成された螺旋形状である。
【選択図】図3
Description
この発明は、オイル潤滑される転がり軸受に関し、特に、潤滑用のオイルに含まれる異物の捕捉する機能を備えた転がり軸受に関するものである。
輸送機器や産業機械、その他各種機器の可動部には、転がり軸受が組み込まれている。このような機器の中には、油潤滑される転がり軸受以外に潤滑が必要な作動機構部を有し、その作動機構部と転がり軸受とが、共通のオイルで潤滑される構造となっているものがある。作動機構部としては、例えば、ギヤ同士の噛み合い部分や部材同士の摺接部分等が挙げられる。
例えば、オイルポンプ等は、機器の内部に転がり軸受と作動機構部とを有している。また、特に、オイルポンプは、その転がり軸受と作動機構部とを備えた機器の外部にある他の作動機構部に向かって、内部の潤滑油を送り出す機能を備えている。
ところで、転がり軸受の軸受空間からは、摩耗粉(鉄粉等)等の異物が発生することがある。この異物が、潤滑油の循環経路の途中にある作動機構部に侵入すると、異物の噛み込みによって、機器の耐久性を低下させる場合がある。また、場合によっては、機器の動作不良・故障・破損に繋がることもある。
そこで、例えば、特許文献1には、鉄粉等からなる異物が循環経路内に流通する潤滑油に混入した場合に、その異物をセンサが備える磁石に吸着させ、吸着した異物が堆積していくことにより金属製のケーシングと磁石とが電気的に導通した場合に、警報を発信する潤滑油の鉄粉汚濁検知方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
上記のように、転がり軸受から発生する摩耗粉(鉄粉等)等の異物が、潤滑油の循環経路の途中にある作動機構部に侵入することは好ましくない。特に、オイルポンプ用の転がり軸受において、軸受から発生する大きな剥離片は、そのオイルポンプ自身の作動機構部や、そのオイルポンプによって送り出される潤滑油の循環経路内にある他の作動機構部の部品に対して、動作不良・故障・破損の原因となる。このため、転がり軸受内からの異物の流出防止や、その異物が発生した際の異物の検出が必要となる。
上記特許文献1に記載の技術では、センサが備える磁石は、潤滑油の循環経路内に臨んでいる。しかし、この技術では、循環経路内の潤滑油に含まれる異物の多くは、センサの磁石に吸着することなく、その傍らを通過してしまう可能性がある。また、特許文献1に記載の技術では、異物の捕捉は、潤滑油内の異物の混入度合いを検知するのに必要な最小限度の量にとどまり、その結果、残りの異物の作動機構部への侵入を阻止できないという問題もある。
そこで、この発明の課題は、転がり軸受から発生する摩耗粉(鉄粉等)等の異物を、より確実に捕捉することである。
上記の課題を解決するために、この発明は、外輪及び内輪と、前記外輪と前記内輪との間の軸受空間に配置される転動体と、前記外輪若しくは前記外輪に固定された部材、又は、前記内輪若しくは前記内輪に固定された部材の一方に取り付けられ、前記軸受空間内から軸受外へ通じる潤滑油通路を覆うシール部材と、前記シール部材に設けられ前記軸受空間内から軸受外へと流出する潤滑油に遠心力を付与する遠心力付与流路と、前記遠心力により潤滑油内から分離された異物を捕捉する異物捕捉部と、を備える転がり軸受を採用した。
この構成において、前記シール部材は前記軸受空間に沿う円環状であり、前記遠心力付与流路は、前記シール部材の円環に沿って形成された螺旋形状である構成を採用することができる。
これらの各構成において、前記外輪は固定側、前記内輪は回転側であり、前記内輪に前記遠心力付与流路に臨む羽を備え、前記遠心力は前記内輪の回転に伴う羽の運動により付与される構成を採用することができる。
また、これらの各構成において、前記異物捕捉部は、前記遠心力付与流路の外周部に備える凹状のポケットである構成を採用することができる。
さらに、これらの各構成において、前記異物捕捉部に、異物を検出するセンサ装置を備える構成を採用することができる。
前記異物捕捉部は、前記異物捕捉部検出閾値未満の大きさの異物を軸受外へ排出する異物排出口を備え、前記センサ装置は、前記異物排出口の上流側に位置し互いに間隔を置いて配置される対の電極と、前記対の電極からそれぞれ配線が伸びて電源に至る電気回路と、前記対の電極間への金属からなる異物の付着に伴う前記電気回路の電気的出力の変化を検出することによって潤滑油に含まれる金属片の状態を検知する出力検出装置とを備える構成を採用することができる。
また、前記対の電極の間に絶縁体を密着して備え、前記絶縁体を挟んで両方の前記電極に跨る漏斗状の凹部を備え、前記異物排出口は漏斗状の凹部の底に位置する構成を採用することができる。
この発明は、軸受空間内から軸受外へと通じる潤滑油通路を覆うシール部材に、潤滑油に遠心力を付与する遠心力付与流路と、遠心力により潤滑油内から分離された異物を捕捉する異物捕捉部とを備えたので、潤滑油に含まれる質量の重い大きな異物は、遠心力により流路の外周部に自然に集まるので捕捉しやすい。このため、シンプルな構造で、より確実に異物の捕捉が可能となる。
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態は、シールリング40を取り付けた軸受ユニット20を備えたオイルポンプ装置10である。
オイルポンプ装置10は、機器の内部に転がり軸受を複数備えた軸受ユニット20と、オイルポンプの作動機構部30とを有している。
軸受ユニット20は、ハウジング11の内部に、油潤滑される3つの転がり軸受21,22,23を並列して備えている。これらの転がり軸受21,22,23によって、オイルポンプの作動機構部30に通じる軸部材32を、固定のハウジング11に対して軸周り回転自在に支持されている。
各転がり軸受21,22,23は、外側軌道輪1と内側軌道輪2の各軌道面1a,2aの間に、転動体3が組み込まれている。転動体3は、保持器によって周方向に保持されている。以下、外側軌道輪1を外輪1と、内側軌道輪2を内輪2と称する。
外輪1はハウジング11の内径面に圧入されて、そのハウジング11に対して相対回転不能に固定されている。内輪2は、軸部材32の外周に圧入されて、その軸部材32に対して相対回転不能に固定されている。
この実施形態では、転がり軸受21,22,23として、転動体3として円すいころを用いた円すいころ軸受を採用しているが、円すいころ軸受以外の転がり軸受を採用してもよく、また、その転がり軸受21,22,23の並列数は、装置の仕様に応じて自由に設定できる。
オイルポンプの作動機構部30は、ポンプケーシング内に互いに相対回転することにより潤滑油を循環経路へ送り出すポンプ用ロータ(図示せず)を備える。ポンプ用ロータは、軸部材32の端部に設けた接続部材31に接続され、これにより、軸部材32の軸周りに回転可能な状態である。ロータへの駆動力は、図示しない駆動源から別途のルートで入力される。
図1に示すように、並列する転がり軸受21,22,23のうち軸方向一方側、すなわち、作動機構部30寄りの2つの転がり軸受21,22は、円すいころの小径側端面同士が軸方向に沿って同じ側、すなわち、作動機構部30の反対側になるように配置されている。
また、並列する転がり軸受21,22,23のうち軸方向他方側、すなわち、作動機構部30から最も遠い転がり軸受23は、円すいころの小径側端面が作動機構部30側になるように配置されている。すなわち、転がり軸受21,22と転がり軸受23とは、円すいころの小径側端面同士が背面合わせになるように配置されている。このため、内側軌道輪2の軌道面2aと外側軌道輪1の軌道面1aとは、3列の転がり軸受21,22,23のうち一方側の二つは、軸方向一方側から他方側へ向かって互いの距離が狭まるように設けられ、他方側の一つは、軸方向一方側から他方側へ向かって互いの距離が拡がるように設けられている。
図1に示すように、軸方向に隣り合う転がり軸受21,22,23同士の間には、間座5,6,7が配置されている。
並列する転がり軸受21,22,23のうち軸方向一方側の2つの転がり軸受21,22の間には、内径側に、両側の内輪2,2の端面に当接する間座5が、外径側に、両側の外輪1,1の端面に当接する間座6が配置されている。
また、並列する転がり軸受21,22,23のうち軸方向他方側の2つの転がり軸受22,23の間には、内径側に、両側の内輪2,2の端面に当接する間座が、外径側に、両側の外輪1,1の端面に当接する間座7が配置されている。図1では、転がり軸受22,23の間における内径側の間座は図示していないが、転がり軸受22,23の周方向に沿って、潤滑油の循環経路13bの外径側の開口部以外の部分に、間座が配置されている。
並列する転がり軸受21,22,23の両端は、軸方向一方側では、軸部材32の端部に設けたフランジ状の接続部材31の端面によって、また、軸方向他方側では、押え部材8の端面によって、軸部材32に対して軸方向へ動かないように固定されている。これらの接続部材31と押え部材8との固定によって、各円すいころ軸受には予圧が付与されている。
転がり軸受21,22,23によってハウジング11に支持された軸部材32は、オイルポンプの作動機構部30に接続されている。また、オイルポンプは、外部にある他の作動機構部に向かって、内部の潤滑油を送り出す機能を備えている。送り出した潤滑油は、潤滑油の通路に沿って流れて各部の作動機構部を潤滑した後、やがてオイルポンプに戻ってくる。
また、このオイルポンプにおいては、ポンプ内の作動機構部30と軸受ユニット20とが、共通の潤滑用のオイルで潤滑されるようになっている。オイルポンプ側の作動機構部30と軸受ユニット20側の軸受空間とは、軸方向一方側の転がり軸受21の軸方向一端側の軸受空間の開口、及び、潤滑油の循環経路12,13を通じて連通している。また、その潤滑油は、ポンプ外の作動機構部にも送り出される。
この実施形態において、循環経路13は、オイルポンプ側から軸部材32の軸心と同心となるように軸心方向に沿って設けられた軸方向潤滑経路13aと、その潤滑経路13aの端部から半径方向外側へ伸びて、軸部材32の外周面に開口する径方向潤滑経路13bを備える。径方向潤滑経路13bは、転がり軸受22,23の間に挟まれた環状空間Cに開口しているので、この環状空間Cを介して、循環経路13は、軸方向一方側(図中左側)へは転がり軸受21,22の各軸受空間に連通し、軸方向他方側(図中右側)へは転がり軸受23の軸受空間に連通している。
環状空間Cを経て、転がり軸受23の軸受空間を通過した潤滑油は、転がり軸受23の軸方向他端側の軸受空間の開口を通じて、転がり軸受23の軸方向他端側に設けられたハウジング端部空間Bに入り込む。その後、ハウジング11内の外径寄りの部分に形成された潤滑油の循環経路12によって、オイルポンプの作動機構部30側へと戻っていく。
循環経路12は、ハウジング端部空間Bから半径方向外側へ伸びる径方向潤滑経路12bと、その径方向潤滑経路12bから軸部材32の軸心方向に沿って設けられた軸方向潤滑経路12aとを備える。
また、環状空間Cを経て、転がり軸受22,21の軸受空間を通過した潤滑油は、転がり軸受21の軸方向一端側の軸受空間の開口Dを通じて、オイルポンプの作動機構部30側へと戻っていく。
これにより、オイルポンプの作動機構部30と、軸受ユニット20の転がり軸受21,22,23が、共通の潤滑油によって潤滑される。
ところで、転がり軸受21,22,23の軸受空間からは、摩耗粉(鉄粉等)等の異物が発生することがある。この異物が、オイルポンプの作動機構部30や、循環経路途中の他の作動機構部に侵入することは好ましくない。そこで、転がり軸受21の軸方向一端側の軸受空間の開口D、及び、循環経路12の軸方向一端側の開口12c、すなわち、軸方向潤滑経路12aの開口12cにシール部材40(以下、実施形態では、円環状のシール部材40を用いているので、これをシールリング40と称する)が取付られている。
シールリング40は、転がり軸受21の軸方向一端側の軸受空間の開口D、及び、循環経路12の軸方向一端側の開口12cを覆うように、ハウジング11及び外輪1に取付けられる。転がり軸受21の軸方向一端側の軸受空間の開口Dは、外輪1と内輪2の軌道面1a,2aに沿って環状に形成されているので、それを覆うシールリング40も環状を成すものとなっている。
シールリング40は、図1に示すように、ハウジング11の端面11aに当接するフランジ部41と、そのフランジ部41の内径側端部から軸方向に沿って一方側に伸びる円筒状部材からなる円筒部42と、円筒部42の筒軸方向端部から内径側に向かって立ち上がる壁部43とを備える。
また、フランジ部41の内径側端部から、さらに内側へ向かって係止部45が伸びている。係止部45は、この実施形態のように、全周に亘って連続的に設けられていてもよいし、周方向に沿って断続的に設けられていてもよい。
係止部45が外輪1の内径面に圧入され、その圧入により、シールリング40はハウジング11及び外輪1に固定される。フランジ部41は、ハウジング11の端面11aに当接する。なお、シールリング40に設けた突起等が、外輪1の内径面の大径側端部に設けたシール溝等に嵌合して、互いに固定されるようにしてもよい。
また、壁部43の内径側端部は、内輪2の大つば外径面に摺接するか、または、わずかな隙間を介して対向して、壁部43と内輪2との間にラビリンスシール構造を形成している。ラビリンスシール構造では、潤滑油は通過が許容されるが、潤滑油に含まれる異物の通過は阻止される。
シールリング40内の空間、すなわち、シールリング40と転がり軸受21の端面との間の空間は、軸受空間内から軸受外へと流出する潤滑油に遠心力を付与する遠心力付与流路51となっている。遠心力付与流路51は、シールリング40の全周に亘って連続する環状空間となっている。
また、循環経路12の軸方向一端側の開口12cは、側面視円環状を成す転がり軸受21の軸受空間の開口Dよりも外径側に位置する。この開口12cは遠心力付与流路51に臨んでいる。この実施形態では、循環経路12の軸方向潤滑経路12aは2本設けられており、周方向に沿って180°の間隔をおいて2箇所に開口12cを有している。各軸方向潤滑経路12aからの潤滑油は、シールリング40の係止部45に設けた通油孔46、又は、係止部45が周方向に断続的である場合は、隣り合う係止部45,45の間等を通じて、遠心力付与流路51内に流入する。
また、シールリング40には、遠心力により潤滑油内から分離された異物を捕捉する異物捕捉部52を備える。異物捕捉部52は、遠心力付与流路51に臨んで設けられる。または、異物捕捉部52は、遠心力付与流路51に流路を介して接続される。
この実施形態では、外輪1は固定側、内輪2は回転側である。このため、内輪2の回転によって、遠心力付与流路51内の潤滑油、すなわち、転がり軸受21の軸方向一端側の軸受空間の開口D、及び、循環経路12の軸方向一端側の開口12cから流出した潤滑油は、シールリング40の周方向に沿って流れるようになり、その流れによって、外径側へ向かって遠心力が発生する。
この実施形態では、内輪2に遠心力付与流路51に臨む羽50が備えられている。羽50は、内輪2の周方向に沿って複数設けられている。遠心力付与流路51内の潤滑油は、内輪2の回転に伴う羽50の運動(矢印a参照)によっても付与される。羽50は、回転側の軌道輪に設けられる。
潤滑油が遠心力付与流路51内を流れることにより生じた遠心力によって、潤滑油に含まれる異物は、外径側へ分離される。特に、転がり軸受21,22,23で生じた金属粉、金属片等は外径側へ溜まっていく。ここで、異物とは、潤滑油とは質量(密度)の異なる物質である。異物の質量(密度)は潤滑油の質量(密度)より大きいので、遠心力がより大きく作用し、異物は異物捕捉部52へ溜まり、軸受外へ流出する潤滑油から分離される。
さらに、この実施形態では、異物捕捉部52は、図2に示すように、遠心力付与流路の外周部に備える凹状のポケットである。ポケットは、遠心力付与流路51内の潤滑油の流れ方向(矢印b参照)に沿って、徐々に遠心力付与流路43から外径側へ離れる流路によって、遠心力付与流路43に接続されている。異物は、矢印cのように遠心力付与流路51から離れてポケットに捕捉される。
従来の転がり軸受のように、パンチングメタル等を使用したフィルタ付シールリングの設置では、大きな剥離片等の異物を効率的に捕捉することが困難であったが、この発明では、潤滑油に遠心力を付与することにより、質量の重い大きな異物はシールリング40の外周部に自然に集まり、シンプルな構造で確実な異物のフィルタリングが可能となる。
他の実施形態を図3に示す。この実施形態は、シールリング40に設けられる遠心力付与流路51を、そのシールリング40の円環に沿って形成された螺旋形状としたものである。
遠心力付与流路51を螺旋形状としたことにより、遠心力付与流路51の流路の長さが長くなるので、潤滑油及び潤滑油に含まれる異物に遠心力が付与される時間が長くなる。これにより、異物の分離、捕捉をより確実なものにすることができる。
また、図3の実施形態では、螺旋形状からなる遠心力付与流路51は、同じ長さ、同じ形状のものが2本設けられて、第一の遠心力付与流路51aと第二の遠心力付与流路51bとが、周方向に沿って180°ずれた方位に設けられている。すなわち、第一の遠心力付与流路51aの起点53aと第二の遠心力付与流路51bの起点53bとは、周方向に沿って180°の位相でずれた位置に設けられ、第一の遠心力付与流路51aの終点(出口)54aと第二の遠心力付与流路51bの終点(出口)54bとは、周方向に沿って180°の位相でずれた位置に設けられている。このため、2つの遠心力付与流路51の並列によって、異物を分離する能力が高くなっている。
この図3の実施形態において、第一の遠心力付与流路51aと第二の遠心力付与流路51bには、それぞれ異物捕捉部52;52a,52bが設けられている。異物捕捉部52は、図2と同様のものを採用することができる。
また、この実施形態では、第一の遠心力付与流路51aと第二の遠心力付与流路51bとを同じ長さ、同じ形状のものとして、それらの起点、終点を周方向に沿ってずらした構成としたが、第一の遠心力付与流路51aと第二の遠心力付与流路51bの長さや形状を互いに違えてもよい。また、遠心力付与流路51の数は、シールリング40内のスペースが許す限り、自由に設定できる。
また、上記の図1、図2、図3の各実施形態において、異物捕捉部52に、異物を検出するセンサ装置60を備えることができる。センサ装置60の例を、図4に示す。
異物捕捉部52は、凹状を成すポケットの奥部に、センサ装置60の検出閾値未満の大きさの異物を軸受外へ排出する異物排出口55を備える。この実施形態の異物排出口55は管状であり、その管の内径がセンサ装置60が検出する異物の最小径よりも小さく設定されている。
センサ装置60は、図4に示す分解斜視図ように、異物排出口55の上流側に位置し互いに間隔を置いて配置される対の電極53a,53bと、対の電極53a,53bからそれぞれ配線57,58が伸びて電源62の端子63,64に至る電気回路と、対の電極53a,53b間への金属からなる異物の付着に伴う電気回路の電気的出力の変化を、信号出力の端子61を通じて検出することによって、潤滑油に含まれる金属片の状態を検知する出力検出装置70とを備える。
この実施形態では、+側の電極53bは、配線57を通じて固定抵抗器59を経由した後に電源の+側の端子63に至り、−側の電極53aは、配線58を通じて電源の−側の端子(GND(アース))64に至る。
また、信号出力の端子61へ向かう配線は、電極53bと固定抵抗器59の間で分岐し、その分岐した配線が信号出力の端子61に接続されている。この信号出力の端子61は、分圧回路の一部を構成している。
電気回路の配線の一部は、転がり軸受21のシールリング40の外部に引き出され、その引き出された一部の電気回路や電源62、出力検出装置70等は、ハウジング11やその周辺のフレーム等の不動の部材に取付られている。また、出力検出装置70は、これらの電気回路を制御する機能も発揮する。
対の電極53a,53b間に、異物排出口55を通過できない大きさの金属からなる異物が付着することに伴って、出力検出装置70は、電気回路の電気的出力の変化を検出し、潤滑油に含まれる金属片の状態(含有量)を検知することができる。
出力検出装置70が検知する電気的出力は、電気回路における電圧の分圧出力である。分圧出力は、例えば、入力端子(電源)63の電位をE(V)、GND端子64の電位を0(V)とした場合における、その間に位置する出力端子61の電位で示される。
鉄粉や剥離片(鉄片)等の金属からなる異物の付着により、対の電極53a,53b間が電気的に短絡することによって、その電極間の抵抗値が小さくなる。一般的な傾向としては、付着量が少ないと電流が通過し得る部分の断面積が小さいので抵抗値が大きく、付着量が多いと電流が通過し得る部分の断面積が大きいので抵抗値が小さくなるので、上記の検出方法は、この傾向を利用して異物の付着量を把握するようにしたものである。異物の付着量が多ければ、潤滑油に含まれる金属片の含有量が多いと考えられる。
例えば、異物の吸着量が増えるにつれて、対の電極53a,53b間の電気抵抗値は小さくなる。すなわち、信号出力の端子61の電位は小さくなり、これにより出力検出装置70が取得する出力電圧は小さくなる。このため、入力側である+の端子63の電位と、−側であるGNDの端子64の電位に対して、信号出力の端子61の電位(分圧出力)を比較することによって、異物の吸着量を推定できる。ある異物の吸着量に対して、どの程度の出力電圧(信号出力の端子61の電位=分圧出力)になるかは、予め実験等で算出しておくことができる。図4(b)では、ある時間が経過した際に、急激に信号出力の電位が低下しており、この際に、異物が大量に付着したと推測できる。
このため、例えば、信号出力の電圧に予め閾値を設けておき、信号出力の端子61からの電気的出力が閾値以下になった場合に、出力検出装置70は、転がり軸受を異常状態と判断するように設定することもできる。
また、この実施形態では、対の電極53a,53bによって、異物捕捉部52のポケットの周壁部内面が形成されるようになっている。すなわち、異物捕捉部52の漏斗状の内面は、対の電極53a,53bと、その対の電極53a,53b間に設けられた絶縁体54とで構成されている。絶縁体54としては、樹脂やゴム、その他素材を採用できる。
図4の例では、対の電極53a,53bの間に絶縁体54を密着して備え、絶縁体54を挟んで両方の電極53a,53bに跨る漏斗状の凹部を備えている。また、異物排出口55は、漏斗状の凹部の底に位置する。
このように、異物捕捉部52の漏斗状の内面が、対の電極53a,53bと、その間に配置された絶縁体54とで構成されたので、様々の大きさの異物に対応することができる。すなわち、異物排出口55を通過できない大きさの異物は、その大きさに応じて、徐々に狭まる漏斗状の内面間のいずれかの部分に止まるので、確実に電極53a,53b間を短絡することができる。すなわち、検出閾値以上の大きさの異物を、効率良く捕捉、検出する。
なお、この実施形態では、対の電極53a,53b及び絶縁体54は、異物捕捉部52の異物排出口55の内面にも至っているが、異物排出口55の内面には対の電極53a,53b及び絶縁体54を露出させず、これを、異物排出口55よりも上流側のみの範囲にとどめてもよい。
また、上記の実施形態では、循環経路12の軸方向一端側の開口12cは、シールリング40内の遠心力付与流路51に臨む構成としたが、この開口12cを、シールリング40外の空間に臨むようにした構成を採用することもできる。
この場合、シールリング40は、循環経路12の開口12cのある方位にのみ、その開口12cを覆い、且つ、異物の通過を阻止するフィルタを備えた循環経路閉塞部を備える構成とすることが望ましい。循環経路閉塞部は、循環経路12の開口12cと同数設けられる。前述の実施形態のように、循環経路12の軸方向潤滑経路12aは2本設けられており、周方向に沿って180°の間隔をおいて2箇所に開口12cを有しているので、循環経路閉塞部も、周方向に沿って180°の間隔をおいて2箇所に設けられることとなる。なお、シールリング40とは別体の循環経路閉塞部をハウジング11に取り付けてもよい。
循環経路閉塞部に備えるフィルタは、例えば、多数の貫通穴を設けることにより、これらの貫通穴によって、転がり軸受23の軸受空間からの異物の通過を阻止し、潤滑油の通過は許容されるものとできる。このとき、貫通穴の内径の最大値は、作動機構部30側へ侵入しても影響がない程度の異物の通過は許容されるよう、適宜の寸法に設定される。具体的には、異物排出口55の内径と同じとできる。
また、この実施形態では、シールリング40はハウジング11と外輪1の両方に固定された形態となっているが、これを、ハウジング11には固定せず外輪1のみに取り付けた構成としてもよい。逆に、外輪1には固定せずハウジング11のみに取り付けた構成としてもよい。
また、この実施形態では、シールリング40は合成樹脂の成形品からなるものとしたが、金属、ゴム等の他の素材を用いてもよい。
さらに、これらの実施形態では、外輪1は静止側、内輪2は回転側であり、シールリング40は固定側である外輪1側に固定されるが、このシールリング40を、回転側である内輪2に嵌合等により固定することも可能である。あるいは、内輪2に固定された他の部材に固定することも可能である。
また、外輪1を回転側、内輪2を静止側とした転がり軸受にもこの発明のシールリング40を適用できる。この場合、シールリング40は、静止側である内輪2側に固定した構成とすることもできるし、回転側である外輪1に固定した構成とすることもできる。
また、この実施形態ではシール部材を円環状のシールリング40としたが、円環状以外のシール部材であっても、そのシール部材内に潤滑油の流路が設けられ、その流路が、軸受空間内から軸受外へと流出する潤滑油に遠心力を付与する遠心力付与流路を構成し、且つ、遠心力により潤滑油内から分離された異物を捕捉する異物捕捉部を備える限りにおいて、円環状のシール部材には限定されない。例えば、側面視における軸受空間の円周方向に沿って、C字状を成すシール部材等であってもよい。
また、この発明のシールリング40は、実施形態以外の各種の転がり軸受にも適用できる。さらに、そのシールリング40を備えた転がり軸受は、オイルポンプ以外の各種装置にも適用できる。特に、この発明の転がり軸受は、転がり軸受から発生する摩耗粉(鉄粉等)等の異物が、潤滑油の循環経路の途中にある作動機構部に侵入することを防ぐ必要がある種々の装置に適用できる。
1 外輪(外側軌道輪)
2 内輪(内側軌道輪)
3 転動体
5,6,7 間座
8 押え部材
10 オイルポンプ装置
11 ハウジング
12,13 循環経路
20 軸受ユニット
21,22,23 転がり軸受
30 作動機構部
31 接続部材
32 軸部材
40 シールリング
50 羽
51 遠心力付与流路
2 内輪(内側軌道輪)
3 転動体
5,6,7 間座
8 押え部材
10 オイルポンプ装置
11 ハウジング
12,13 循環経路
20 軸受ユニット
21,22,23 転がり軸受
30 作動機構部
31 接続部材
32 軸部材
40 シールリング
50 羽
51 遠心力付与流路
Claims (7)
- 外輪及び内輪と、
前記外輪と前記内輪との間の軸受空間に配置される転動体と、
前記外輪若しくは前記外輪に固定された部材、又は、前記内輪若しくは前記内輪に固定された部材の一方に取り付けられ、前記軸受空間内から軸受外へ通じる潤滑油通路を覆うシール部材と、
前記シール部材に設けられ前記軸受空間内から軸受外へと流出する潤滑油に遠心力を付与する遠心力付与流路と、
前記遠心力により潤滑油内から分離された異物を捕捉する異物捕捉部と、
を備える転がり軸受。 - 前記シール部材は前記軸受空間に沿う円環状であり、
前記遠心力付与流路は、前記シール部材の円環に沿って形成された螺旋形状である
請求項1に記載の転がり軸受。 - 前記外輪は固定側、前記内輪は回転側であり、
前記内輪に前記遠心力付与流路に臨む羽を備え、
前記遠心力は前記内輪の回転に伴う羽の運動により付与される
請求項1又は2に記載の転がり軸受。 - 前記異物捕捉部は、前記遠心力付与流路の外周部に備える凹状のポケットである
請求項1〜3のいずれか一つに記載の転がり軸受。 - 前記異物捕捉部に、異物を検出するセンサ装置を備える
請求項1〜4のいずれか一つに記載の転がり軸受。 - 前記異物捕捉部は、前記異物捕捉部検出閾値未満の大きさの異物を軸受外へ排出する異物排出口を備え、
前記センサ装置は、
前記異物排出口の上流側に位置し互いに間隔を置いて配置される対の電極と、
前記対の電極からそれぞれ配線が伸びて電源に至る電気回路と、
前記対の電極間への金属からなる異物の付着に伴う前記電気回路の電気的出力の変化を検出することによって潤滑油に含まれる金属片の状態を検知する出力検出装置と
を備える請求項5に記載の転がり軸受。 - 前記対の電極の間に絶縁体を密着して備え、
前記絶縁体を挟んで両方の前記電極に跨る漏斗状の凹部を備え、
前記異物排出口は漏斗状の凹部の底に位置する
請求項6に記載の転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015184916A JP2017057968A (ja) | 2015-09-18 | 2015-09-18 | 転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015184916A JP2017057968A (ja) | 2015-09-18 | 2015-09-18 | 転がり軸受 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017057968A true JP2017057968A (ja) | 2017-03-23 |
Family
ID=58391097
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015184916A Pending JP2017057968A (ja) | 2015-09-18 | 2015-09-18 | 転がり軸受 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2017057968A (ja) |
-
2015
- 2015-09-18 JP JP2015184916A patent/JP2017057968A/ja active Pending
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