以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態に係る回転子部材10について説明する。なお、以下の説明においては、図中の軸線Oに沿う方向を軸方向とする。また、説明を容易とする観点から、図2の紙面左方を軸方向前方、紙面右方を軸方向後方とする。
しかしながら、以下の説明における軸方向前方、軸方向後方は、理解の容易の観点から便宜的に定めたものであって、回転子部材、電動機の前方、後方等の特定の方向を限定して示すものではない点に留意されたい。また、以下の説明における径方向とは、軸線Oを中心とする円の半径方向を示し、周方向とは、軸線Oを中心とする円の円周方向を示す。
図1および図2に示すように、回転子部材10は、磁石搭載部材12と、磁石搭載部材12の径方向外側において、周方向に並んで配置された複数の磁石14と、これら磁石14の径方向外側に配置された筒状の保持部材16とを有する。磁石14は、製造の都合や磁石の成形の都合に応じて軸方向に複数に分割されてもよい。図2に示すように、本実施形態においては、軸方向に2分割されている。
図3および図4に示すように、磁石搭載部材12は、軸線Oを有する筒状の部材であって、軸方向後方側(軸方向第1の側)の第1端部18と、軸方向前方側(軸方向第2の側)の第2端部20と、軸方向に沿って延びる円筒状の外周面22とを有する。磁石搭載部材12の軸方向後端に配置された、外周面22から径方向外側に突出する突部24は、製造時に磁石の軸方向の位置を揃え易くするための要素の一例である。
磁石搭載部材12は、例えばSS400またはS45Cといった、磁性体の金属材料から作製される。磁石搭載部材12は、第1端部18から第2端部20に向かうにつれて連続的に径方向外側に向かって拡がるテーパ状の内周面26を有する。本実施形態においては、この内周面26は、第1端部18から第2端部20までの、磁石搭載部材12の全軸方向区間に亘って、軸方向前方に向かうにつれてその内径が大きくなっている。
内周面26は、線形のテーパ面であってもよい。この場合、内周面26の半径は、第1端部18における半径R1から、第2端部20における半径R2まで、第1端部18から第2端部20に向かうにつれて、線形的に増大する。この場合の内周面26のテーパ率は、例えば、1/200〜1/30であってもよい。
一方、磁石搭載部材12の外周面22は、その外径が軸方向において一定となる円筒面である。したがって、磁石搭載部材12は、第1端部18から第2端部20に向かうにつれて、その径方向厚さが徐々に小さくなっている。
磁石搭載部材12には、計4つの切れ目28、30、32、および34が形成されている。これら切れ目28、30、32、および34の各々は、磁石搭載部材12の内周面26から外周面22まで、磁石搭載部材12を径方向に貫通するように形成されており、磁石搭載部材12は、切れ目28、30、32、および34にて、周方向に分断されている。切れ目28、30、32、および34の各々は、互いに周方向に当接する2つの壁面によって画定されている。切れ目28、30、32、および34の各々は、図4に示す軸方向区間36で延在している。なお、これら切れ目28、30、32、および34は、予め定められた周方向幅を有するように画定されてもよい。
この軸方向区間36は、第2端部20を含み、且つ第1端部18を含まない軸方向区間である。換言すれば、切れ目28、30、32、および34は、第2端部20から軸方向後方へ延び、第1端部18よりも予め定められた距離だけ軸方向前方の位置で、終端している。
本実施形態においては、切れ目28、30、32、および34は、周方向に略等間隔(すなわち、約90°の角度)で並ぶように配置されている。磁石搭載部材12は、これら切れ目28、30、32、および34にて周方向に分断されている。なお、これら切れ目28、30、32、および34の機能については、後述する。
図5に示すように、磁石14の各々は、弧状の部材であって、軸方向前方の端面38および軸方向後方の端面40と、周方向一方の端面42および周方向他方の端面44と、内周面46および外周面48とを有する。磁石14の内周面46は、予め定められた曲率半径の内径を有する円弧面である。その一方で、外周面48は、任意の曲面、または異なる曲率半径を有する複数の曲面の組み合わせであってもよい。
なお、図5の例では、理解の容易の観点から、端面42、44、46、および48を明確に図示しているが、これらの端面は、磁気回路設計や電動機の仕様等によって、曲面であったり、または極小面であったりする。このため、実際上は、これらの端面が明確に存在するとは限らない場合がある点に留意されたい。また、それぞれの面を形成する辺は、実際には面取りが施され、または曲面でなだらかに落とされており、明確な線で画定されるとは限らない点にも留意されたい。
図6に示すように、保持部材16は、軸線Oを有する筒状の部材である。具体的には、保持部材16は、軸方向前方の端面50および軸方向後方の端面52と、内周面54および外周面56とを有する。図6の例では、理解の容易の観点から端面50と端面52を明確に図示しているが、保持部材16の材料や構造、製造方法によっては、これらの端面が明確に存在するとは限らない点に留意されたい。
保持部材16は、径方向外側に向かって膨張するような変形に対して、強い強度を有する。換言すれば、保持部材16は、その半径が変化し難い。また、保持部材16は、磁束による発熱や、磁束の漏れによる性能低下を防止する観点から、非磁性材料から作製されることが好ましい。さらに、保持部材16は、回転によって生じる遠心力を小さくするために、小さい密度を有することが好ましい。
例えば、保持部材16の材料として、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、チタン合金繊維、超高分子量ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート繊維、およびこれらの2以上の組み合わせから選択した繊維を用いてもよい。代替的には、保持部材16の材料として、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、チタン合金繊維、超高分子量ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート繊維、およびこれらの2以上の組み合わせから選択した繊維を使用した繊維強化樹脂を用いてもよい。
再度、図1および図2を参照して、本実施形態に係る回転子部材10においては、計8個の磁石14が配置されている。具体的には、図1のAに示す周方向位置において、図2に示すように2つの磁石14が軸方向に隣り合うように配置されて一対となっている。同様に、図4のB、C、およびDに示す周方向位置において、それぞれ、2つの磁石14が軸方向に隣り合って一対となっている。
このように、4対の磁石14が、磁石搭載部材12の外周面22上において、周方向に略等間隔で並ぶように配置されている。軸方向後方側に位置する磁石14の各々は、例えば磁石搭載部材12に突部24等の構造を設けることによって、軸方向の位置を揃えて位置決めされる。これら磁石14の径方向外側には、全ての磁石14を径方向外側から環囲するように、保持部材16が配置されている。
磁石14は、磁石搭載部材12の外周面22に接着剤によって固定されてもよい。この場合、回転子部材10の分解を容易とする観点から、磁石14は、磁石搭載部材12の外周面22に、比較的に小さな力で剥離できる程度の接着力で接着される。なお、回転子部材の分解については、後述する。
磁石14と磁石搭載部材12とを固定することによって、回転子部材10の稼働時に、磁石14と磁石搭載部材12との間の相対移動を防止することができる。一方、接着剤を用いずに磁石14を磁石搭載部材12の外周面22に配置させる場合には、磁石14と磁石搭載部材12との間に、該磁石14と磁石搭載部材12との間の相対移動を防止するための移動防止要素を設けてもよい。
このような移動防止要素として、磁石搭載部材12の外周面22、および磁石14の内周面46の少なくとも一方に、突部または凹部を形成してもよい。または、磁石搭載部材12の外周面22と磁石14の内周面46の少なくとも一方に、高摩擦性樹脂塗料層、粘着性樹脂塗料層、サンドブラスト加工、摩擦係数を高める材料を含有した塗料層、摩擦係数を高める化学表面処理等の、摩擦係数を増大させる構成を形成しても良い。または、磁石14と磁石搭載部材12との間に、表面に摩擦係数を高める処理が施された摩擦シート、表面に粘着剤が塗布された粘着性シート、もしくは、NBRもしくはシリコーンからなるゴムシート等のタック性を有するシートを介挿してもよい。
磁石搭載部材12の切れ目28、30、32、および34の各々は、周方向に互いに隣り合う磁石14の間の位置に配置される。具体的には、切れ目28は、周方向位置Aに配置された一対の磁石14と、周方向位置Dに配置された一対の磁石14との間に配置されている。
同様に、切れ目30は、周方向位置Dに配置された一対の磁石14と、周方向位置Cに配置された一対の磁石14との間に配置され、切れ目32は、周方向位置Cに配置された一対の磁石14と、周方向位置Bに配置された一対の磁石14との間に配置され、切れ目34は、周方向位置Aに配置された一対の磁石14と、周方向位置Bに配置された一対の磁石14との間に配置されている。
また、図2に示すように、全ての磁石14は、軸方向区間36内に配置される。より具体的には、軸方向前方側に位置する磁石14の軸方向前方の端面38は、第2端部20よりも軸方向後方に位置するように配置され、且つ、軸方向後方側に位置する磁石14の軸方向後方の端面40は、切れ目28、30、32、および34の軸方向後端よりも、軸方向前方に位置するように配置されている。
次に、図7および図8を参照して、他の実施形態に係る磁石搭載部材62について説明する。この磁石搭載部材62は、上述の磁石搭載部材12の代替として、図1および図2に示す回転子部材10に適用され得る部材である。磁石搭載部材62は、軸線Oを有する筒状の部材であって、軸方向後方側の第1端部63と、軸方向前方側の第2端部64と、軸方向に延びる円筒状の外周面66と、第1端部63から第2端部64に向かうにつれて連続的に径方向外側に向かって拡がるテーパ状の内周面68とを有する。磁石搭載部材62の外周面66の軸方向後端には、該外周面66から径方向外側に突出する突部70が形成されている。この突部70は、上記突部24と同様に、製造時に磁石14の軸方向の位置を揃え易くするための要素の一例である。
磁石搭載部材62には、計4つの切れ目72、74、76、および78が形成されている。切れ目72、74、76、および78の各々は、磁石搭載部材62の内周面68から外周面66まで、磁石搭載部材62を径方向に貫通するように形成されており、且つ、磁石搭載部材62の軸方向区間80で延在している。この軸方向区間80は、第2端部64を含み、且つ第1端部63を含まない軸方向区間である。
より具体的には、切れ目72は、第2端部64から軸方向後方へ延びる隙間72aと、隙間72aの軸方向後端に形成された略円形の孔72bとを含む。隙間72aは、予め定められた周方向幅を有している。この隙間72aは、予め定められた周方向距離だけ離間しつつ、互いに周方向に対面する2つの壁面によって画定されている。孔72bは、隙間72aの周方向幅よりも大きな直径を有するように形成されている。
同様に、切れ目74、76、および78は、それぞれ、第2端部64から軸方向後方へ延びる隙間74a、76a、および78aと、該隙間74a、76a、および78aの軸方向後端に形成された孔74b、76b、および78bとを含む。本実施形態における軸方向区間80は、第2端部64から、孔72b、74b、76b、および78bの軸方向後端までの軸方向区間である。
磁石搭載部材62を図1に示す回転子部材10に適用した場合、磁石14は、軸方向区間80内に収まるように、磁石搭載部材62の外周面66上に配置される。また、切れ目72、74、76、および78は、周方向に互いに隣り合う磁石14の間の位置に配置される。
次に、図9および図10を参照して、他の実施形態に係る回転子部材300について説明する。なお、上述の実施形態と同様の要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。回転子部材300は、磁石搭載部材302と、磁石搭載部材302の径方向外側において、周方向に並んで配置された複数の磁石304と、これら磁石304の径方向外側に配置された筒状の保持部材16とを有する。
磁石搭載部材302は、軸線Oを有する筒状の部材であって、軸方向後方側の第1端部306と、軸方向前方側の第2端部308と、軸方向に延びる円筒状の外周面310と、第1端部306から第2端部308に向かうにつれて連続的に径方向外側に向かって拡がるテーパ状の内周面312とを有する。
磁石搭載部材302には、計8つの切れ目314、316、318、320、322、324、326、および328が形成されている。切れ目314、316、318、320、322、324、326、および328の各々は、磁石搭載部材302の内周面312から外周面310まで、磁石搭載部材302を径方向に貫通するように形成されている。
切れ目314、316、318、320、322、324、326、および328は、周方向に略等間隔(すなわち、約45°の角度)で並ぶように配置されている。磁石搭載部材302は、これら切れ目314、316、318、320、322、324、326、および328にて周方向に分断されている。
図10に示すように、切れ目314および318は、軸方向区間330で延在している。この軸方向区間330は、第2端部308を含み、且つ第1端部306を含まない軸方向区間である。換言すれば、切れ目314および318は、第2端部308から軸方向後方へ延び、第1端部306よりも予め定められた距離だけ軸方向前方の位置で、終端している。
また、切れ目322および326も、切れ目314および318と同様に、軸方向区間330で延在している。このように、切れ目314、318、322、および326は、軸方向区間330で延在する第1の切れ目を構成する。
一方、図10に示すように、切れ目314および318に対してそれぞれ周方向に隣接する、切れ目316および320は、軸方向区間332で延在している。この軸方向区間332は、第1端部306を含み、且つ第2端部308を含まない軸方向区間である。換言すれば、切れ目316および320は、第1端部306から軸方向前方へ延び、第2端部308よりも予め定められた距離だけ軸方向後方の位置で、終端している。
また、切れ目322および326に対してそれぞれ周方向に隣接する、切れ目324および328も、切れ目316および320と同様に、軸方向区間332で延在している。このように、切れ目316、320、324、および328は、第1の切れ目と周方向に隣接し、軸方向区間332で延在する第2の切れ目を構成する。
本実施形態においては、計16個の磁石304が配置されている。具体的には、図9のO、P、Q、R、S、T、U、およびVに示す周方向位置において、図10に示すように2つの磁石304を軸方向に隣り合うように配置して一対としている。磁石搭載部材302に形成された切れ目314、316、318、320、322、324、326、および328の各々は、周方向に互いに隣り合う磁石304の間の位置に配置される。
次に、図11および図12を参照して、さらに他の実施形態に係る磁石搭載部材82について説明する。この磁石搭載部材82は、上述の磁石搭載部材12の代替として、図1および図2に示す回転子部材10に適用される部材である。磁石搭載部材82は、軸方向後方側の第1端部84と、軸方向前方側の第2端部86と、軸方向に延びる円筒状の外周面85と、第1端部84から第2端部86に向かうにつれて連続的に径方向外側に向かって拡がるテーパ状の内周面87とを有する。
本実施形態に係る磁石搭載部材82は、4箇所に形成された切れ目88、90、92、および94を有している。本実施形態においては、これら切れ目88、90、92、および94は、第1端部84から第2端部86までの、磁石搭載部材82の全軸方向区間に亘って延在している。すなわち、磁石搭載部材82は、切れ目88、90、92、および94にて周方向に4個に分割され、周方向に整列する計4個のセグメント96から構成されている。
図13を参照して、磁石搭載部材82を構成する1つのセグメント96について説明する。セグメント96は、軸方向前方側の端部98および軸方向後方側の端部100と、周方向一方の端面102および周方向他方の端面104と、内周面106および外周面108とを有する。
セグメント96の内周面106は、端部100から端部98まで、軸方向前方へ向かうにつれて連続的に径方向外側に向かって拡がるテーパ面である(図12を参照のこと)。その一方で、セグメント96の外周面108は、その外径が軸方向において一定となる円弧面である。したがって、セグメント96は、端部98から端部100まで、軸方向前方へ向かうにつれて、その径方向厚さが徐々に小さくなっている。また、セグメント96の端部100には、外周面108から径方向外側へ突出する突部110が形成されている。
このセグメント96を、図11に示す周方向位置A〜Dの位置に、周方向に並べて配置することによって、筒状の磁石搭載部材82が構成される。この構成についてより具体的に述べると、周方向位置Aに配置されたセグメント96の周方向の端面104と、周方向位置Bに配置されたセグメント96の周方向の端面102とが互いに対面して配置され、これら端面104および端面102の間に、切れ目88が形成されることになる。
同様に、周方向位置Bに配置されたセグメント96の端面104と、周方向位置Cに配置されたセグメント96の端面102との間に切れ目90が形成され、周方向位置Cに配置されたセグメント96の端面104と、周方向位置Dに配置されたセグメント96の端面102との間に切れ目92が形成され、周方向位置Dに配置されたセグメント96の端面104と、周方向位置Aに配置されたセグメント96の端面102との間に切れ目94が形成される。
このように、計4個のセグメント96が配置されたとき、セグメント96の各々の軸方向後方の端部100が周方向に連なって配置され、磁石搭載部材82のリング状の第1端部84を形成する。一方、セグメント96の各々の軸方向前方の端部100が周方向に連なって配置され、磁石搭載部材82のリング状の第2端部86を形成する。また、セグメント96の各々の内周面106が周方向に連なって配置され、磁石搭載部材82のテーパ状の内周面87を形成する。一方、セグメント96の各々の外周面108が周方向に連なって配置され、磁石搭載部材82の円筒状の外周面85を形成する。
磁石搭載部材82を図1に示す回転子部材10に適用した場合、軸方向に並ぶ一対の磁石14が、セグメント96の各々の外周面108上に配置される。したがって、セグメント96を周方向に整列させたときには、切れ目88、90、92、および78は、必然的に、周方向に互いに隣り合う磁石14の間の位置に配置されることになる。
次に、図14〜図16を参照して、本発明の他の実施形態に係る回転子部材210について説明する。なお、上述の実施形態と同様の要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。回転子部材210は、磁石搭載部材212と、磁石搭載部材212の径方向外側において、周方向に並んで配置された複数の磁石214と、これら磁石214の径方向外側に配置された筒状の保持部材16とを有する。磁石搭載部材212は、周方向に整列する計8個のセグメント216から構成されている。磁石214は、セグメント216の各々と、保持部材16との間に配置されている。
次に、図17を参照して、磁石搭載部材212を構成する1つのセグメント216について説明する。セグメント216は、軸方向前方側の端部218および軸方向後方側の端部220と、周方向一方の端面222および周方向他方の端面224と、内周面226および外周面228とを有する。
セグメント216の内周面226は、端部220から端部218まで、軸方向前方へ向かうにつれて連続的に径方向外側に向かって拡がるように軸線Oに対して傾斜する、テーパ状の平面である。その一方で、セグメント216の外周面228は、軸線Oと平行に配置された(すなわち、軸方向において軸線Oからの距離が一定となるように配置された)平面である。セグメント216の端部220には、外周面228から径方向外側へ突出する突部230が形成されている。
次に、図18を参照して、本実施形態に係る磁石214について説明する。磁石214の各々は、軸方向前方の端面232および軸方向後方の端面234と、周方向一方の端面236および周方向他方の端面238と、内周面240および外周面242とを有する。磁石214の内周面240は、軸線Oと平行に配置される(すなわち、軸方向において軸線Oからの距離が一定となる)平面である。その一方で、外周面242は、予め定められた曲率半径を有する曲面である。なお、外周面242は、任意の曲面、または異なる曲率半径を有する複数の曲面の組み合わせであってもよい。
図19に示すように、軸方向に並べられた一対の磁石214が、セグメント216の外周面228の上に設置される。図19に示すように組み立てられたセグメント216および磁石214の組立体が、図14および図15に示す周方向位置E〜Lの位置に、周方向に略等間隔に並べて配置される。上述の実施形態と同様に、周方向に配列する磁石214は、それぞれの磁極が周方向に交互に入れ替わるように設置される。保持部材16は、全ての磁石214の外周面242を径方向外側から囲むように配置される。このようにして、図14および図15に示す回転子部材210が、構成される。
図14および図15に示すように計8個のセグメント216が周方向に配置されたとき、セグメント216の各々の軸方向後方の端部220が周方向に連なって配置され、磁石搭載部材212の軸方向後方の第1端部260(図16)が画定される。一方、セグメント216の各々の軸方向前方の端部218が周方向に連なって配置され、磁石搭載部材212の第2端部262(図16)が画定される。
また、互いに周方向に隣り合うセグメント216の間には、隙間244、246、248、250、252、254、256、258が形成される。これらの隙間244、246、248、250、252、254、256、および258は、磁石搭載部材212の第1端部260から第2端部262まで磁石搭載部材212の全軸方向区間に亘って延在する切れ目として機能し、磁石搭載部材212を周方向に分断する。
次に、図20〜図23を参照して、本発明の他の実施形態に係る回転子部材120について説明する。なお、上述の実施形態と同様の要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。回転子部材120は、楔部材124と、楔部材124の径方向外側に配置された磁石搭載部材122と、磁石搭載部材122の径方向外側に配置された複数の磁石14と、これら磁石14の径方向外側に配置された保持部材16とを有する。
図22に示すように、楔部材124は、軸線Oを有する筒状の部材であって、軸方向後方の端面126および軸方向前方の端面128と、内周面130および外周面132とを有する。内周面130は、端面126から端面128に向かうにつれて連続的に径方向外側に向かって拡がるテーパ面である。その一方で、外周面132は、軸方向においてその外径が一定となる円筒面である。したがって、楔部材124は、軸方向前方へ向かうにつれて、その径方向の厚さが徐々に小さくなっている。楔部材124にも、上述の磁石搭載部材と同様に、複数の切れ目を形成してもよい。
図23に示すように、磁石搭載部材122は、軸線Oを有する円筒状の部材であって、軸方向後方側の第1端部134および軸方向前方側の第2端部136と、内周面138および外周面140とを有する。磁石搭載部材122の外周面140の軸方向後端には、該外周面140から径方向外側に突出する突部142が形成されている。この突部142は、上述の突部24と同様に、製造時に磁石14の軸方向の位置を揃え易くするための要素の一例である。
磁石搭載部材122は、4箇所に形成された切れ目144、146、148、および150を有する。切れ目144、146、148、および150の各々は、磁石搭載部材122の内周面138から外周面140まで、磁石搭載部材122を径方向に貫通するように形成されており、且つ、磁石搭載部材122の軸方向区間152で延在している。この軸方向区間152は、第2端部136を含み、且つ第1端部134を含まない軸方向区間である。磁石搭載部材122の内周面138および外周面140は、軸方向において一定の半径を有する円筒面である。
次に、図24を参照して、本発明の一実施形態に係る電動機160について説明する。なお、図24の紙面左方を軸方向前方、紙面右方を軸方向後方とする。電動機160は、回転電機の一例である。電動機160は、内部空間162を画定するハウジング164と、ハウジング164の内部空間162に静止して配置される固定子166と、固定子166の径方向内側に回転可能に設置された回転子180とを備える。固定子166は、固定子鉄心168と、固定子鉄心168に巻回されたコイル170とを有する。固定子鉄心168は、例えば電磁鋼板の薄板を積層して作製される。
固定子166からは、コイル170に電気的に接続された動力線(図示せず)が引き出されており、動力線は、ハウジング164に設けられた貫通孔を介して、電動機160の外部に設置された動力源(図示せず)に接続される。回転子180は、軸線Oの周りに回転する。回転子180は、内部空間162において軸方向に延びる回転軸部182と、回転軸部182の径方向外側に固定された、上述の回転子部材10とを有する。
次に、図25を参照して、回転軸部182について説明する。回転軸部182は、軸線Oを有する筒状の部材であって、該軸線Oと同心となるように形成された中心孔184を有する。本実施形態に係る電動機160においては、工作機械の主軸に用いられるビルトインモータの用途に適用可能とするために、回転軸部182に、中心孔184を形成している。しかしながら、これに限らず、回転軸部を、中心孔を有さない中実部材によって構成してもよい。
回転軸部182の軸方向前方側の部分は、ハウジング164の前方側の壁部に取り付けられた軸受(図示せず)を介して、ハウジング164に回転可能に支持される。同様に、回転軸部182の軸方向後方側の部分は、ハウジング164の後方側の壁部に取り付けられた軸受(図示せず)を介して、ハウジング164に回転可能に支持される。
回転軸部182は、軸方向後方側から軸方向前方側に向かうにつれて、径方向外側に向かって連続的に拡がるテーパ状の外周面186を有する。なお、この外周面186は、線形のテーパ面、すなわち円錐面であることが好ましい。この場合、外周面186の外径は、軸方向前方に向かうにつれて、線形的に増加する。この場合の外周面186のテーパ率は、例えば、1/200〜1/30である。
回転子部材10は、磁石搭載部材12の内周面26と、回転軸部182の外周面186とが互いに面接触するように、回転軸部182の外周面186の上に固定されている。ここで、磁石搭載部材12の内周面26のテーパの度合いは、回転軸部182の外周面186のテーパの度合いに対応するように設定される。例えば、回転軸部182の外周面186、および磁石搭載部材12の内周面26が、ともに線形テーパ面である場合、外周面186および内周面26は、略同じテーパ率(例えば1/100)を有する。
回転子部材10を回転軸部182に圧入し、図24に示す回転子180が組み立てられると、磁石搭載部材12および磁石14が、回転軸部182によって押圧されて径方向外側に変位し、これにより、保持部材16に張力が与えられる。保持部材16に与えられた張力によって、保持部材16に弾性圧縮力が発生し、該弾性圧縮力によって、磁石14および磁石搭載部材12は、保持部材16と回転軸部182との間で堅固に挟持されることになる。
次に、図26〜図29を参照して、本発明の他の実施形態に係る電動機270について説明する。なお、上述の実施形態と同様の要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。また、図26の紙面左方を軸方向前方、紙面右方を軸方向後方とする。電動機270は、ハウジング164と、ハウジング164の内部空間162に配置される固定子166と、固定子166の径方向内側に回転可能に設置された回転子280とを備える。
回転子280は、軸線Oの周りに回転する。回転子280は、内部空間162において軸方向に延びる回転軸部282と、回転軸部282の径方向外側に固定された、上述の回転子部材210とを有する。
次に、図30および図31を参照して、本実施形態に係る回転軸部282について説明する。回転軸部282は、軸線Oを有する筒状の部材であって、該軸線Oと同心となるように形成された中心孔284を有する。なお、回転軸部を、中心孔を有さない中実部材によって構成してもよい。
回転軸部282は、外周面286a、286b、286c、286d、286e、286f、286g、および286hを含む。計8個の外周面286a〜286hの各々は、軸方向後方側から軸方向前方側に向かうにつれて、径方向外側に向かって連続的に拡がるように軸線Oに対して傾斜した、テーパ状の平面である。
外周面286aと286bの間には、突条部288aが形成されている。突条部288aは、外周面286aおよび286bから径方向外側へ突出し、軸方向へ延在している。同様に、外周面286bと286cの間、外周面286cと286dの間、外周面286dと286eの間、外周面286eと286fの間、外周面286fと286gの間、外周面286gと286hの間、および、外周面286hと286aの間に、それぞれ、突条部288b、288c、288d、288e、288f、288g、および288hが形成されている。
再度、図27〜図29を参照して、回転子280を組み立てた状態においては、外周面286a、286b、286c、286d、286e、286f、286g、および286hの各々の上に、図19に示すセグメント216と磁石214の組立体が設置される。そして、周方向に隣り合うセグメント216の間に形成された隙間244、246、248、250、252、254、256、および258に、それぞれ、突条部288a、288b、288c、288d、288e、288f、288g、および288hが嵌合している。セグメント216は、これら突条部288a〜288hによって周方向への移動が規制され、周方向に略等間隔で整列するように、所定の位置に位置決めされている。
次に、図32〜図35を参照して、回転子180の製造方法の例について説明する。ステップS1において、使用者は、計8個の磁石14を磁石搭載部材12の外周面22の上に配置する。具体的には、使用者は、図1の周方向位置Aに2個の磁石14を軸方向に並べて一対とし、磁石搭載部材12の外周面22の上に設置する。
同様にして、周方向位置B、C、およびDにおいて、それぞれ、2個の磁石14を軸方向に並べて一対とし、磁石搭載部材12の外周面22の上に設置する。このとき、磁石搭載部材12の切れ目28、30、32、および34の各々は、周方向に互いに隣り合う磁石14の間の位置に配置される。このように磁石14を所定の位置に配置するときに、使用者は、磁石14を周方向に等間隔に配置するための治具を用いてもよい。このような治具を用いることによって、作業を容易とすることができる。
周方向位置Aに設置した磁石14の磁界の方向は、内周面46側にS極、外周面48側にN極が配されるように、設定される。また、周方向位置Bに設置した磁石14の磁界の方向は、内周面46側にN極、外周面48側にS極が配されるように、設定される。
また、周方向位置Cに設置した磁石14の磁界の方向は、内周面46側にS極、外周面48側にN極が配されるように、設定される。また、周方向位置Dに設置した磁石14の磁界の方向は、内周面46側にN極、外周面48側にS極が配されるように、設定される。このように、周方向に配列する磁石14は、それぞれの磁極が周方向において交互に入れ替わるように、設置される。
磁石14は、このステップS1の前に、予め着磁されることが好ましい。これにより、磁石14の磁気吸引力によって、該磁石14を、磁性体である磁石搭載部材12の外周面22の所定の位置に設置する作業が、容易となる。
一方、図11および図12に示す磁石搭載部材82を用いる場合、このステップS1において、使用者は、2個の磁石14を軸方向に並べて一対とし、セグメント96の各々の外周面108上に設置する。また、図26に示す回転子280を製造する場合、このステップS1において、使用者は、2個の磁石214を軸方向に並べて一対とし、セグメント216の各々の外周面228上に設置し、図19に示すセグメント216と磁石214の組立体を作製する。
ステップS2において、使用者は、磁石14を径方向外側から覆うようして、保持部材16を磁石14の径方向外側に取り付ける。具体的には、磁石14の各々の外周面48に、保持部材16の内周面54が対面するように、保持部材16を磁石14の径方向外側に嵌め込む。
この時点では、保持部材16は、隙間嵌めで磁石14の外周に嵌め込まれてもよいし、または、適当な締め代を伴った締まり嵌めで磁石14の外周に嵌め込まれてもよい。保持部材16を締まり嵌めで取り付ける場合には、保持部材16が磁石14から脱落しない程度の締め代を保持部材16に与えればよい。
また、このステップS2において、保持部材16の材料を、磁石14の外周に直接巻き付けることによって、保持部材16を磁石14の外周に取り付けてもよい。例えば、糸状、帯状、またはシート状の材料を所定の径方向厚さになるまで複数回に亘って磁石14の外周に周回して巻き付けて、所定の径方向厚さを有する保持部材16を形成してもよい。
一方、図11および図12に示す磁石搭載部材82を用いる場合、このステップS2において、使用者は、適当な治具を用いてセグメント96を周方向に配列させた状態で、保持部材16を磁石14の外周に取り付ける。また、図26に示す回転子280を製造する場合、このステップS2において、使用者は、適当な治具を用いて、図19に示すセグメント216と磁石214の組立体を周方向に配列させた状態で、保持部材16を磁石214の外周に取り付ける。
ステップS2の結果、図1に示す回転子部材10が作製される。そして、ステップS3において、使用者は、回転子部材10を回転軸部182に圧入する。このステップS3について以下に詳細に説明する。まず、使用者は、上述のステップS2にて作製された回転子部材10を、回転軸部182の軸方向後方側から嵌め入れる。そうすると、図33に示すように、磁石搭載部材12の内周面26の軸方向前端と、回転軸部182の外周面186とが、当接部Pにて当接する。
この状態から、使用者は、磁石搭載部材12の第1端部18を軸方向前方へ押し、図34に示す位置P’まで、回転子部材10を軸方向前方側に向けてさらに圧入する。この回転子部材10の圧入動作に伴って、磁石搭載部材12は、回転軸部182から径方向外側へ向けた力を受ける。
ここで、上記したように、本実施形態に係る磁石搭載部材12には、軸方向区間36に亘って延在する切れ目28、30、32、および34が形成されている。これら切れ目28、30、32、および34によって、磁石搭載部材12は、回転軸部182から力を受けたときに、径方向外側へ容易に変形することができる。
このような磁石搭載部材12の変形の態様を、図35に概略的に示す。なお、図35においては、切れ目34の位置での磁石搭載部材12の変形を特に示している。図35に示すように、磁石搭載部材12は、切れ目34の位置で周方向に分離可能となっているので、回転軸部182から径方向外側に向けた力を受けると、図35の点線Eで示す状態から、実線Fで示す状態へ、図中の矢印Gに示す方向へ比較的小さな力で変形する。一方、磁石搭載部材12が径方向外側へ変形したときに、磁石搭載部材12から回転軸部182へ加えられる弾性復元力は、切れ目が形成されていない場合に比べて、大幅に小さくなる。
このようにして、回転子部材10を回転軸部182に圧入する間に、磁石搭載部材12は、回転軸部182によって径方向外側に押されて変形しようとし、これに伴って磁石14も径方向外側に向かって押される。その結果、保持部材16は、磁石14から力を受けて径方向外側へ僅かに膨張する。この反力として、保持部材16において径方向内側へ向けた弾性復元力が発生し、この弾性復元力によって、磁石14を径方向内側に向けて押し返す。こうして、磁石14および磁石搭載部材12は、回転軸部182と保持部材16との間で堅固に挟持される。
ここで、上述したように、磁石搭載部材12に形成された切れ目28、30、32、および34によって、磁石搭載部材12から回転軸部182へ加えられる弾性復元力は小さくなっている。このため、回転子部材10から回転軸部182へ加えられる径方向内側へ向けた力の大部分は、保持部材16による弾性圧縮力となる。すなわち、本実施形態に係る回転子180においては、保持部材16に与えられた締め代のみによって、回転子部材10を回転軸部182に締り嵌めで固定しているものと見做すことができる。
このように、本実施形態によれば、磁石搭載部材12が切れ目28、30、32、および34によって径方向に変形し易くなっているので、回転子部材10を回転軸部182に圧入するときに、磁石搭載部材12を変形させるのに要する力を大幅に低減できる。このため、回転子部材10を、より小さな圧入力で回転軸部182に固定することが可能となる。その結果、回転子180の組み立て作業を容易にすることができ、組み立て工数を削減することができる。
また、より直径の大きい、またはより全長の長い、従来では不可能であった寸法の回転子を組み立てることも可能となることから、よりトルクの大きな同期電動機を容易に組み立てることができるようになる。
また、本実施形態においては、切れ目28、30、32、および34が、磁石搭載部材12の軸方向区間36で延在するように形成されているので、磁石搭載部材12は、一体形状となる。このため、回転子部材10を1個の部品として取り扱うことができるので、回転子部材10の搬送や、回転子部材10回転軸部182に固定する作業を容易とすることができる。
磁石搭載部材を容易に変位させることができるという効果は、図7および図11に示す磁石搭載部材62、82を回転子部材10に適用した場合、ならびに、図9、図14、および図20に示す回転子部材300、210、および120においても、同様にもたらされる。例えば、磁石搭載部材62を回転子部材10に適用した場合、回転子部材10の圧入時に磁石搭載部材62が回転軸部182から径方向外側へ力を受けると、切れ目72、74、76、および78によって、磁石搭載部材62は、容易に変形することができる。
また、切れ目72、74、76、および78は、周方向幅を有する隙間72a、74a、76a、および78aから構成されているため、磁石搭載部材62の変形時に切れ目72、74、76、および78にて摩擦が発生することがない。このため、磁石搭載部材62は、さらに容易に径方向外側へ変形し易くなる。また、磁石搭載部材62が径方向外側へ変形したときに、磁石搭載部材62から回転軸部182へ加えられる弾性復元力は、磁石搭載部材12と比べて、さらに小さくなる。
また、隙間72a、74a、76a、および78aの後端にそれぞれ設けられた孔72a、74b、76b、および78bによって、磁石搭載部材62が変形したときに切れ目72、74、76、および78の後端に生じる応力集中を緩和することができる。これにより、回転子部材10を回転軸部182へ圧入する工程において、切れ目72、74、76、および78の後端において磁石搭載部材62に亀裂等が生じてしまうのを防止することができる。
一方、磁石搭載部材82は、切れ目88、90、92、および94にて周方向に分割されているので、回転軸部182から径方向外側へ力を受けると、何ら反力を与えることなく、径方向外側へ変位する。また、磁石搭載部材82が径方向外側へ変位したときに、磁石搭載部材82から回転軸部182へ加えられる弾性復元力は、発生しない。
このように、磁石搭載部材62、82を回転子部材10に適用した場合においても、回転子部材10を回転軸部182に圧入するときに、磁石搭載部材62、82を変位させるのに要する力を大幅に低減できる。このため、回転子部材10を、より小さな圧入力で回転軸部182に固定することが可能となる。
また、回転子280を製造する場合においても、回転子280の磁石搭載部材212は、上述の磁石搭載部材82と同様に、隙間244、246、248、250、252、254、256、および258にて周方向に分割されているので、回転子部材210を回転軸部282に圧入するときに、磁石搭載部材210を変位させるのに要する力を大幅に低減できる。このため、回転子部材210を、より小さな圧入力で回転軸部282に固定することが可能となる。
また、回転子280を製造する場合においては、磁石搭載部材212のセグメント216および磁石214は、外周面228および内周面240にそれぞれ平面を含むので、セグメント216および磁石214を作製するときの加工作業を容易とすることができる。これにより、製造コストを低減できる。
次に、図36を参照して、上記の回転子180を分解する方法の一例について説明する。ステップS11において、使用者は、保持部材16を、周方向に互いに隣り合う磁石14の間の位置で、軸方向に分断する。例えば、保持部材16が繊維から作製されている場合、使用者は、保持部材16の一部に軸方向に裂け目を入れることによって、保持部材16に生じている張力の作用により、該裂け目を起点にして保持部材16を軸方向全長に亘って破断させることができる。これにより、使用者は、保持部材16を磁石14の外周から容易に取り外すことができる。
ステップS12において、使用者は、磁石搭載部材12の第2端部20を軸方向後方へ押し、磁石搭載部材12を回転軸部182から取り外す。上述したように、回転子180においては、切れ目28、30、32、および34によって、磁石搭載部材12から回転軸部182へ加えられる弾性復元力は小さくなっている。このため、使用者は、磁石搭載部材12を比較的に小さな力で回転軸部182から取り外すことができる。
そして、使用者は、磁石14を磁石搭載部材12から取り外すことによって、回転子180を分解する。このように、本実施形態によれば、使用者は、保持部材16を切断するだけで、磁石14や磁石搭載部材12を回転子180から回収し、これら部品を再利用することができる。その結果、これら部材に用いられる資源を有効に活用することができる。このことは、例えばネオジムのような、産出量の限られた希土類元素を磁石の材料として使用している場合において、特に有益である。
磁石14と磁石搭載部材12とを接着剤を用いて固定している場合、このステップS12において、使用者は、互いに固定された磁石14および磁石搭載部材12を、一体となった部品として回収することができる。この場合において、ステップS12は、例えば溶剤を用いて接着剤を除去することによって、磁石14と磁石搭載部材12とを分離する工程を含んでもよい。一方、磁石14と磁石搭載部材12とを接着剤で固定していない場合は、使用者は、このステップS12において、磁石14と磁石搭載部材12とを別個に回収することができる。
なお、回転子は、磁石搭載部材が回転軸部に対して周方向に相対移動するのを防止するための手段をさらに備えてもよい。以下、図37を参照して、このような手段が設けられた回転軸部190について説明する。図37においては、理解の容易の観点から、軸方向へ延在する回転軸部190の一部のみを示している。また、図37の紙面左方を軸方向前方とする。
本実施形態に係る回転軸部190は、上述の回転軸部182と以下の構成において異なっている。すなわち、回転軸部190は、その外周面192から径方向外側へ突出するように形成された突部194、196、198および200を有している。これら突部194、196、198および200の各々は、外周面192の上を軸方向へ真直ぐに延びている。突部194、196、198および200は、回転軸部190の径方向外側に固定される磁石搭載部材の切れ目に対応する位置に形成される。本実施形態においては、計4個の突部194、196、198および200が、周方向に略等間隔(すなわち90°の間隔)で配置されている。
突部194、196、198および200は、回転軸部190に磁石搭載部材を圧入するときに磁石搭載部材をガイドする要素として機能するとともに、磁石搭載部材が固定された後には、該磁石搭載部材が回転軸部190に対して周方向に相対移動するのを防止するための要素としても機能する。この機能に関して、図7および図8に示す磁石搭載部材62を回転軸部190に固定する場合を例として、以下に説明する。
磁石搭載部材62を回転軸部190に軸方向後方側から圧入するとき、磁石搭載部材62の隙間72a、74a、76a、および78aの軸方向前方の開口が、回転軸部190の突部194、196、198および200の位置に一致するように、それぞれ位置決めされる。ここで、隙間72a、74a、76a、および78aの周方向幅は、突部194、196、198および200の周方向幅と同じ、またはそれよりも僅かに大きくなるように設定される。
この状態から、使用者が磁石搭載部材62を軸方向前方へ押して回転軸部190に圧入すると、突部194、196、198および200は、隙間72a、74a、76a、および78a内に受容され、隙間72a、74a、76a、および78aを画定する壁面と係合する。
磁石搭載部材62を回転軸部190に圧入している間、これら突部194、196、198および200は、隙間72a、74a、76a、および78aと係合することによって、磁石搭載部材62を軸方向前方へ真直ぐに移動するように案内する。これにより、磁石搭載部材62を回転軸部190に圧入する作業を円滑に行うことができる。
また、磁石搭載部材62を所定の固定位置に固定した後は、突部194、196、198および200は、隙間72a、74a、76a、および78aと係合することによって、回転子の稼働時において、磁石搭載部材62が回転軸部190に対して周方向に相対移動するのを防止する。
このようにして、突部194、196、198および200は、回転軸部190に磁石搭載部材を圧入するときのガイド要素として機能するとともに、該磁石搭載部材の回転軸部190に対する相対移動を防止する相対移動防止要素として機能する。
なお、上述した実施形態においては、計4つの切れ目が磁石搭載部材に形成されている場合について述べた。しかしながら、これに限らず、切れ目は、磁石搭載部材に1個形成されてもよいし、任意の個数だけ形成されてもよい。また、上述した実施形態においては、切れ目が周方向に略等間隔(具体的には約90°の角度)で並ぶように配置されている場合について述べた。しかしながら、これに限らず、磁石搭載部材の任意の周方向位置に形成されてもよい。
以上、発明の実施形態を通じて本発明を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、本発明の実施形態の中で説明されている特徴を組み合わせた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得る。しかしながら、これら特徴の組み合わせの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。さらに、上述の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることも当業者に明らかである。
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、工程、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。