以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る油圧制御装置のバルブボディアセンブリについて、実施形態毎に説明する。
[第1実施形態]
図1〜図4を参照しながら、第1実施形態に係るバルブボディアセンブリ1について説明する。図1は、バルブボディアセンブリ1の正面図、図2は、同バルブボディアセンブリ1の平面図、図3は、バルブボディアセンブリ1の内部構造を示す図1のA−A線断面図、図4は、後述のオリフィス23及びその周辺部を示す図3のB−B線断面図である。
[バルブボディアセンブリの全体構成]
図1〜図3に示すように、バルブボディアセンブリ1は、バルブボディ10と、該バルブボディ10に組み付けられたソレノイドバルブ2、スプールバルブ4及び後述するオリフィス部材6とを備えている。なお、図3の断面図では、発明の理解を容易にするために、ソレノイドバルブ2及びスプールバルブ4を仮想線(二点鎖線)で示している。
バルブボディ10は、車両に搭載される自動変速機及びトルクコンバータに供給される油圧を制御する油圧制御装置のバルブボディであり、自動変速機の変速機構(図示せず)を収容する変速機ケース(図示せず)に組み付けられる。
バルブボディ10は、従来の積層構造のものとは異なり、単一部材で構成されている。バルブボディ10の形状は特に限定されるものでないが、例えば、第1の幅方向D1とこれに直角な第2の幅方向D2の両寸法に比べて、第1及び第2の幅方向D1,D2に直角な厚み方向D3の寸法が小さい偏平な箱形とされている。
バルブボディ10は、例えば、その第1及び第2の幅方向D1,D2が水平に配置されると共に厚み方向D3が車体上下方向に沿って配置される姿勢で、変速機ケースの下面に取り付けられる。
ただし、バルブボディ10の取付け箇所及び取付け姿勢は特に限定されるものでなく、例えば、変速機ケースの上面又は側面にバルブボディ10が取り付けられてもよいし、厚み方向D3が車体上下方向に対して傾斜するか又は水平に配置される姿勢で変速機ケースに対するバルブボディ10の取付けが行われてもよい。
図1及び図2に示すように、バルブボディ10の上面10aには、ソレノイドバルブ2用のバルブ挿入穴32の周壁の上半部を構成する第1突出部11と、該第1突出部11よりも上方に突出した第2突出部12とが設けられている。第1突出部11は、第2の幅方向D2に間隔を空けて複数設けられ、それぞれ第1の幅方向D1に延びる半筒状に形成されている。第2突出部12は、平面視において第2の幅方向D2に延びる長尺状に設けられており、第2突出部12の上面は、変速機ケースへの取付面とされている。
バルブボディ10には、第2の幅方向D2の端面10b,10cから外側に張り出す例えば一対のフランジ部13,14が設けられている。フランジ部13,14の上面は、変速機ケースへの取付面とされている。
バルブボディ10には、該バルブボディ10を変速機ケースに固定するためのボルトが挿通される複数のボルト穴38が設けられている。ボルト穴38は、第2突出部12の上面とフランジ部13,14とに設けられている。なお、バルブボディ10には、ブラケット等の固定に用いられるボルトが挿通されるボルト穴(図示せず)がさらに設けられてもよい。
図3に示すように、バルブボディ10には、複数の油路52,53,54,55,56,57,58,59,60(52〜60)と、これらの油路52〜60に連絡された複数のバルブ挿入穴32,34及びオリフィス部材挿入穴36とが設けられている。なお、バルブボディ10には、その他の空洞部70,72も設けられており、これによってバルブボディ10の軽量化が図られている。
バルブ挿入穴32,34にはソレノイドバルブ2やスプールバルブ4が組み付けられ、オリフィス部材挿入穴36にはオリフィス部材6が組み付けられている。オリフィス部材6には複数のオリフィス21,22,23,24(21〜24)が設けられており、これらのオリフィス21〜24は、ソレノイドバルブ2、スプールバルブ4、及びバルブボディ10の油路52〜60などと共に油圧制御回路(図示せず)を構成している。
バルブボディ10の油路52〜60の一部は、第2突出部12の上面に開口した連通口46,47,48,49,50(46〜50)(図2参照)を介して、変速機ケースに設けられた油路(図示せず)に連絡されている。
図2に示す各連通口46〜50は、変速機ケースの油路を介して自動変速機やトルクコンバータの各部に連絡されるものである。具体的には、例えば、連通口46は機械式オイルポンプの吸い込み口に連絡され、連通口47は機械式オイルポンプの吐出口に連絡され、連通口48は変速制御用の油圧アクチュエータ(例えば、摩擦締結要素の油圧室)に連絡され、連通口49は変速機ケース内のギヤ同士の噛み合い部や軸受等の被潤滑部に連絡され、連通口50はトルクコンバータに連絡されるものである。
このようにして油圧制御回路が形成されていることにより、バルブ2,4の動作の制御によって、変速制御用の油圧アクチュエータの動作、変速機ケース内の各部への潤滑油の供給、並びに、トルクコンバータへのオイルの供給等が制御され得る。
なお、変速制御用の油圧アクチュエータの具体例としては、有段変速機のクラッチやブレーキ等の摩擦締結要素、ベルト式無段変速機のプーリ、デュアルクラッチトランスミッションのクラッチ等が挙げられる。また、ここでいう変速制御とは、変速やその準備等、変速に関連する動作の制御を意味し、例えば、摩擦締結要素の締結や解放、スリップ制御、或いは、プーリ径の拡大又は縮小等、油圧アクチュエータの各種動作によって変速制御が行われる。
また、バルブボディ10には、オイルストレーナ(図示せず)の吐出口に接続される連通口(図示せず)が更に設けられてもよく、この場合、例えばオイルパン(図示せず)に貯留されたオイルは、オイルストレーナを経由して、前記連通口からバルブボディ10の油路52〜60に導入される。
図1〜図3に示すように、本実施形態では、全てのバルブ挿入穴32,34及びオリフィス部材挿入穴36の軸心方向は前記第1の幅方向D1に平行であり、ソレノイドバルブ2用のバルブ挿入穴32は軸心方向D1の両側に開口しており、スプールバルブ4用のバルブ挿入穴34及びオリフィス部材挿入穴36は、軸心方向D1の同じ一方側に開口している。これにより、バルブ挿入穴32,34及びオリフィス部材挿入穴36の内周面を仕上げ加工するとき、全てのバルブ挿入穴32,34及びオリフィス部材挿入穴36に対して同じ方向から加工を行うことができる。
ソレノイドバルブ2用のバルブ挿入穴32は、例えば、厚み方向D3におけるバルブボディ10の上部に集約されて配置されている。これらのバルブ挿入穴32は、例えば、前記第2の幅方向D2に複数並ぶように、厚み方向D3のほぼ同じ高さに配置されている。
スプールバルブ4用のバルブ挿入穴34は、ソレノイドバルブ2用のバルブ挿入穴32に比べて小径かつ長尺である。スプールバルブ4用のバルブ挿入穴34は、例えば、厚み方向D3におけるバルブボディ10の下部に集約されて配置されている。これらのバルブ挿入穴34は、例えば、前記第2の幅方向D2に複数並ぶように、厚み方向D3のほぼ同じ高さに配置されている。
オリフィス部材挿入穴36は、例えば、厚み方向D3におけるスプールバルブ4用のバルブ挿入穴34とソレノイドバルブ2用のバルブ挿入穴32との間の位置、すなわち厚み方向D3におけるバルブボディ10の中央部に設けられている。オリフィス部材挿入穴36は、オリフィス部材6と同じ個数設けられ、本実施形態では、オリフィス部材6及びオリフィス部材挿入穴36は2つずつ設けられている。2つのオリフィス部材挿入穴36は、例えば、厚み方向D3のほぼ同じ高さに配置されている。
図3に示すように、オリフィス部材挿入穴36は、スプールバルブ4用のバルブ挿入穴34よりも小径とされているが、オリフィス部材挿入穴36の軸方向中間部には、該オリフィス部材挿入穴36を拡径してなるオイル収容空間37が形成されている。
バルブボディ10は、オイル収容空間37において例えば一対の筒状部15,17を備えている。これらの筒状部15,17は、オリフィス部材挿入穴36の軸方向に間隔を空けて、それぞれオリフィス部材挿入穴36の軸方向に延びるように配置されている。筒状部15,17の内側には、オリフィス部材挿入穴36に装着されたオリフィス部材6が嵌合されている。図の右側の筒状部17は、該筒状部17の外周面から径方向外側に延びる例えば一対の連絡部17a,17bを介して、オイル収容空間37の周壁部分と一体に連なっている。同様に、図の左側の筒状部15も、例えば一対の連絡部(図示せず)を介してオイル収容空間37の周壁部分と一体に連なっている。
ただし、各バルブ挿入穴32,34及びオリフィス部材挿入穴36の向きや大きさ、配置は任意であり、例えば、1つ以上のバルブ挿入穴34又はオリフィス部材挿入穴36の開口部を第1の幅方向D1の反対側に設けたり、1つ以上のバルブ挿入穴32,34又はオリフィス部材挿入穴36を第1の幅方向D1とは異なる方向に沿って配置したりしてもよい。また、例えば、1つ以上のソレノイドバルブ2用のバルブ挿入穴32をバルブボディ10の厚み方向D3の中央部又は比較的下側の部分に設けたり、1つ以上のスプールバルブ4用のバルブ挿入穴34をバルブボディ10の厚み方向D3の中央部又は比較的上側の部分に設けたり、1つ以上のオリフィス部材挿入穴36をバルブボディ10の比較的上側部分又は比較的下側部分に設けたりしてもよい。
油路52〜60の大部分は、例えば、適宜傾斜、湾曲ないし屈曲しながら概ね第2の幅方向D2に延びる油路52であり、その他の油路は、例えば、オリフィス部材挿入穴36とソレノイドバルブ2用のバルブ挿入穴32とを連絡させる油路53,54,55、オリフィス部材挿入穴36を別の油路52等に連絡させる油路56,57,58,59、及び、オリフィス部材挿入穴36とスプールバルブ4用のバルブ挿入穴34とを連絡させる油路60等である。
第2の幅方向D2に延びる油路52は、必要に応じた長さを有し、第1の幅方向D1及び厚み方向D3の位置によっては、複数の油路52が第2の幅方向D2に並べて配置されている。また、これらの油路52同士は、必要に応じて、連絡用の油路(図示せず)を介して互いに連絡されている。
さらに、バルブボディ10には、スプールバルブ4用のバルブ挿入穴34毎に、該バルブ挿入穴34に連通する複数のポート61が設けられており、各バルブ挿入穴34は、ポート61を介して油路52〜60に連通されている。
ソレノイドバルブ2は、コイルを収容した円筒状の電磁部2aと、電磁部2aよりも小径であり電磁部2aから軸方向に延びる円筒状の小径部2bとを備えている。ソレノイドバルブ2は、小径部2bがバルブ挿入穴32に差し込まれた状態でバルブボディ10に組み付けられる。
ソレノイドバルブ2としては、リニアソレノイドバルブ又はオンオフソレノイドバルブが用いられる。リニアソレノイドバルブは、例えば、摩擦締結要素等の油圧アクチュエータに供給される油圧を直接的に制御するバルブとして用いられ、オンオフソレノイドバルブは、例えば、スプールバルブ4の入力ポート61への油圧供給経路を開閉するバルブとして用いられる。
スプールバルブ4は、軸方向に移動可能なようにバルブ挿入穴34に収容されたスプール4aと、例えばピン(図示せず)によって移動が規制された状態でバルブ挿入穴34内の所定位置に装着されたストッパ4bと、軸方向に伸縮可能なようにバルブ挿入穴34内に装着され、軸方向の一方に向かってスプール4aに弾性力を付与するリターンスプリング4cとを備えている。
スプールバルブ4は、その制御用の入力ポート61に入力される油圧に応じてスプール4aが軸方向に移動することで、吐出圧を調整したり、油圧供給経路を切り換えたりする。具体的に、スプールバルブ4は、例えば、油圧供給先となる変速制御用の油圧アクチュエータを選択的に切り換える切換バルブ、機械式オイルポンプの吐出圧をライン圧に調整する調圧レギュレータバルブ、運転者によるシフトレバーの操作に連動して油圧供給経路を切り換えるマニュアルバルブ、ソレノイドバルブ2の故障時に所定の変速段を実現するように油圧供給経路を切り換えるフェールセーフバルブ等、種々の切換バルブとして機能し得る。
例えば、ソレノイドバルブ2の出力圧がスプールバルブ4の入力ポート61に入力される場合、ソレノイドバルブ2の制御によって、スプールバルブ4のスプール4aの軸方向位置が切り換えられ、これにより、スプールバルブ4の各出力ポート61が開閉される。開放された出力ポート61から吐出されたオイルは、先ず、該ポート61に接続された油路52に導かれ、その後、必要に応じて、別の油路52〜60等を経由して、最終的には、変速機ケースの油路への連通口46〜50(図2参照)に導かれる。
[オリフィスに関連する構成]
続いて、図3及び図4を参照しながら、上述のオリフィス21〜24に関連する構成について説明する。
図3に示すように、オリフィス21〜24は、1つのオリフィス部材6に複数設けられている。オリフィス部材6は、所定の軸心を有する例えば断面円形の棒状部材である。オリフィス部材6は例えば金属からなるが、オリフィス部材6の材料はこれに限定されるものでない。オリフィス部材6の所定の軸方向位置の外周面には、接線方向に延びる半筒状の係合溝6aが設けられており、該係合溝6aにバルブボディ10に取り付けられたピン20が係合することで、オリフィス部材挿入穴36に装着されたオリフィス部材6の軸方向移動及び軸心周りの回動が規制されている。
複数のオリフィス21〜24は、オリフィス部材6の軸方向に間隔を空けて配置されている。これらのオリフィス21〜24のうち最もオリフィス部材挿入穴36の開口部に近いオリフィス21の更に開口部側(図の左側)には、オリフィス部材6の外周面とオリフィス部材挿入穴36の内周面との隙間をシールするOリング28がオリフィス部材6の外周面に装着されている。
図4は、オリフィス部材6に設けられた複数のオリフィス21〜24のうちの1つのオリフィス23及びその周辺部を示す断面図である。
図4に示すように、オリフィス23は、オリフィス部材6の軸心に直交する方向(オリフィス部材6の径方向)に沿って該オリフィス部材6を貫通する穴で構成されている。これにより、オリフィス23の軸心は、オリフィス部材6の径方向に沿って配置されることになるが、オリフィス部材6の軸心方向から見たオリフィス23の軸心の向きは任意である。したがって、オリフィス部材6の軸心方向から見たとき、全てのオリフィス21〜24の軸心の向きが同じ方向に揃えられてもよいし、オリフィス21〜24毎に軸心の向きが異なっていてもよい。
オリフィス23は、オリフィス部材6の例えば軸心部において、オリフィス部材6の径よりも小さな深さを有するように設けられている。オリフィス部材6には、オリフィス23よりも大径の一対の連絡穴23aが、オリフィス23の深さ方向の一方側及び他方側にそれぞれ連なるように設けられている。各連絡穴23aは、オリフィス部材6の外周面に凹状に設けられた有底穴であり、オリフィス23に近づくに連れて小径となる椀状の底部23bを有する。
オリフィス23は、オリフィス部材6における一対の連絡穴23aの底部23b間に挟まれた薄肉部6bを貫通するように設けられている。これによりオリフィス23が浅く形成されることで、オイルの粘度による影響が抑制された安定した流量制限を行うことができる。
一方の連絡穴23aは、バルブボディ10に形成されたオリフィス23の上流側の油路54に連通するように、他方の連絡穴23aは、バルブボディ10に形成されたオリフィス23の下流側の油路57に連通するように、それぞれオリフィス部材6の周方向に位置決めされている。これにより、オリフィス23は、上流側及び下流側の油路54,57にそれぞれ連絡穴23aを介して連絡されている。
図3に示される他のオリフィス21,22,24も、オリフィス部材6における異なる軸方向位置において、図4に示すオリフィス23と同様に形成されており、それぞれ、各オリフィス21,22,24は、オリフィス部材6に設けられた比較的大径の連絡穴21a,22a,24aを介して、バルブボディ10に設けられた上流側及び下流側の油路53,56,58,59に連絡されている。なお、各オリフィス21〜24の径は、それぞれの機能に応じて適宜決定される。
図3に示すオリフィス部材6と同様、他方のオリフィス部材6にも少なくとも1つのオリフィス(図示せず)が設けられており、該オリフィスも、上記と同様にバルブボディ10の油路に連絡されている。
このようにして設けられたオリフィス21〜24によって流量が制限されたオイルは、例えば、ソレノイドバルブ2やスプールバルブ4の入力部への供給に用いられたり、潤滑油として用いられたりする。したがって、オリフィス21〜24による流量制限によって、例えば、潤滑油の供給量が適正化されたり、オリフィス21〜24の下流側において、スプールバルブ4の入力ポート61に入力される油圧の変動が抑制されることにより、スプール4aのハンチングが抑制されたりする。
なお、高温時等においてオイルの粘度が低いとき、オリフィス21〜24の上流側で高圧となったオイルが、本来の油路54,56,58から溢れ出してオリフィス部材6の外周面とオリフィス部材挿入穴36の内周面又は筒状部15,17の内周面16,18との隙間へリークしやすくなるが、これによりオリフィス部材6の外周面を伝い流れるオイルは、上述のOリング28によるシールによってバルブボディ10の外側へのリークが抑制されつつ、上述のオイル収容空間37に導かれて、該オイル収容空間37からドレン用油路60を経由してドレンされる。
[バルブボディアセンブリの製造方法]
先ず、バルブボディ10は、3Dプリンタを用いて、バルブ挿入穴32,34、オリフィス部材挿入穴36、油路52〜60、スプールバルブ4のポート61、及びその他の空洞部70,72を除いた全ての部分が一体に連なるように三次元積層造形法によって形成される。これにより、単一部材からなるバルブボディ10が形成される。
三次元積層造形法における具体的なプリント方式は特に限定されないが、バルブボディ10の材料としてアルミニウム等の金属を用いる場合は、例えば、敷き詰められた金属粉末の層の任意の位置に電子ビーム又はレーザを照射することで、該照射部分を焼結させて造形した後、次の層を敷き詰めるという動作を繰り返す粉末焼結積層造形法が採用され得る。
また、バルブボディ10の材料として樹脂を用いる場合、上記の粉末焼結積層造形法の他にも、インクジェット方式等、金属材料を用いる場合に比べて採用し得るプリント方式が多く知られており、ニーズに応じたプリント方式を採用すればよい。
三次元積層造形法によるバルブボディ10の造形は、バルブ挿入穴32,34及びオリフィス部材挿入穴36の軸心方向に沿った積層方向で行われる。また、この積層方向が上方に向かう方向となるような姿勢でバルブボディ10の造形が行われ、必要に応じて、造形中のバルブボディ10の製品部分を下側から支持するサポート部(図示せず)が製品部分と一体に形成される。
ただし、サポート部は必ずしも形成する必要はなく、特に樹脂材料を用いた造形を行う場合、採用するプリント方式(例えば粉末焼結積層造形法)によっては、サポート部を省略することが可能である。
バルブ挿入穴32,34及びオリフィス部材挿入穴36は、三次元積層造形法の積層方向に平行な軸心に沿って形成されるため、バルブボディ10の造形中に、バルブ挿入穴32,34及びオリフィス部材挿入穴36の内周が変形することなく安定して形成される。そのため、バルブ挿入穴32,34及びオリフィス部材挿入穴36を精度よく形成することができ、造形後に行われる仕上げ加工によって、これらの穴32,34,36の内径に関して高い寸法精度が得られる。したがって、これらの穴32,34,36でのオイルのリークが抑制されると共に、スプールバルブ4用のバルブ挿入穴34においてスプール4aの円滑な移動を実現でき、これにより、応答性に優れた油圧制御を実現できる。
三次元積層造形法によるバルブボディ10の造形が終了すると、前記サポート部が除去されると共に、該サポート部と繋がっていた部分の表面や、バルブ挿入穴32,34及びオリフィス部材挿入穴36の内周面及び端面の仕上げが機械加工によって施される。
続いて、該機械加工で生じる切り粉が例えばエアブローによってバルブボディ10の内部、すなわちバルブ挿入穴32,34、オリフィス部材挿入穴36、油路52〜60及びポート61から除去されて、バルブボディ10が製品として完成する。
その後、バルブボディ10のバルブ挿入穴32,34にソレノイドバルブ2及びスプールバルブ4が装着され、オリフィス部材挿入穴36にオリフィス部材6が装着されることで、バルブボディアセンブリ1が完成する。
オリフィス部材6の装着においては、オリフィス部材が所定の軸方向位置及び所定の周方向位置に位置合わせされるようにオリフィス部材挿入穴36に差し込まれ、その後、バルブボディ10に差し込まれるピン20がオリフィス部材6の係合溝6aに係合されることで、オリフィス部材6が軸方向及び周方向に位置決めされる。これにより、オリフィス部材6に設けられた各オリフィス21〜24は、対応する油路53〜59に連絡されるようにオリフィス部材6の軸方向及び周方向に位置決めされ、バルブボディアセンブリ1において、オリフィス21〜24を有する油圧制御回路が完成する。
なお、本実施形態では、三次元積層造形法によるバルブボディ10の形成時に、バルブ挿入穴32,34及びオリフィス部材挿入穴36の下穴が形成され、その後、該下穴の仕上げ加工によってバルブ挿入穴32,34及びオリフィス部材挿入穴36が形成されるが、下穴が無い状態のバルブボディ10が三次元積層造形法によって形成された後、該バルブボディ10に機械加工が施されることで、上記の挿入穴32,34,36が形成されてもよい。
[第1実施形態の効果]
以上で説明した第1実施形態に係る油圧制御装置のバルブボディアセンブリ1によれば、以下のような種々の効果を奏する。
先ず、上記のようにバルブボディ10が単一のバルブボディ構成部材で構成されるため、複数のバルブボディ構成部材が積み重ねられる従来のバルブボディに比べて、バルブボディ10の部材点数を低減できると共に、従来のバルブボディにおいて隣接するバルブボディ構成部材間に介装されるセパレートプレートを省略できる。
また、バルブボディ10における全ての油路52〜60の周壁部分が一体に連なるように形成されるため、油路の周壁部分を構成する部材が複数に分割された従来のバルブボディとは異なり、高圧時においても油路52〜60の途中でのオイル漏れが生じない。そのため、部材間の合わせ面でのオイル漏れを防ぐための締結ボルトや、合わせ面をシールするガスケットなど、リーク抑制のために従来から用いられている種々の部品を削減することができ、これにより、部品点数や組付け工程を低減できると共に、ボルトの削減に伴ってボルト穴やその周辺のボス部の形成に必要なスペースが低減されることで、バルブボディ10を小型化及び軽量化できる。
またさらに、三次元積層造形法によるバルブボディ10の形成においては、金型の型抜きを考慮する必要がないため、全ての油路52〜60を全長に亘って合わせ面に開口させなければならないなどといった制約を受けることがない。そのため、油路52〜60の形状や配置の設計において高い自由度が得られ、金型で成形される従来のバルブボディではなし得ないような油路構成も可能となる。
したがって、油路52〜60同士の干渉を回避しつつ、各油路52〜60を短く配索しやすくなり、これにより、管路抵抗の低減を図ることができると共に、油圧制御の応答性を高めることが可能になる。また、各油路52〜60の短縮が図られることによって、油路52〜60の空間の体積が全体的に縮小されることで、バルブボディ10の小型化及び軽量化がより効果的に図られる。
さらに、三次元積層造形法により形成されるバルブボディ10においては、油路の構想の自由度が高いことから、既存の油圧制御回路に新たな油路を追加するような設計変更を容易になし得る。しかも、油路の設計変更に際して金型を作り直す必要がないため、油路の設計変更を短期間かつ低コストで実現できる。
そして、油路の流量制限に用いられるオリフィス21〜24は、バルブボディ10とは別体のオリフィス部材6に設けられるため、三次元積層造形法によるバルブボディ10の造形後に、該バルブボディ10にオリフィス部材6が装着されていない状態、すなわちバルブボディ10にオリフィス21〜24が存在しない状態で、バルブ挿入穴32,34及びオリフィス部材挿入穴36の機械加工、及び、該機械加工によって発生する切り粉の除去作業を行うことができる。
したがって、その後、バルブ挿入穴32,34やオリフィス部材挿入穴36、油路52〜60等、バルブボディ10の内部から切り粉が良好に除去された状態でバルブボディ10にオリフィス部材6が装着されることで、該オリフィス部材6に設けられたオリフィス21〜24に切り粉が詰まることを防止できる。そのため、オリフィス21〜24の詰まりによって油圧制御不能となったり、オリフィス21〜24に詰まった切り粉がオイルと共に油圧制御回路内の別の箇所へ移動して詰まりが生じることで何らかの不具合を起こしたりすることを防止できる。
また、オリフィス部材6において、オリフィス21〜24は任意の方法で形成され得る。具体的には、例えば、オリフィス部材6の外周面に、オリフィス21〜24毎に一対の有底穴(連絡穴21a,22a,23a,24a)を穿孔した後、一対の有底穴(連絡穴21a,22a,23a,24a)に挟まれた薄肉部6bを貫通するように穿孔することで、オリフィス21〜24が形成される。これらの穿孔加工は、いずれもオリフィス部材6の軸心に直交する方向に沿って行われ、これにより、寸法精度の高いオリフィス21〜24を簡単に形成することができる。したがって、これらのオリフィス21〜24によって流量制限を精度よく行うことが可能になり、これにより、緻密な油圧制御を行うことができる。
さらに、複数のオリフィス21〜24が1つのオリフィス部材6に集約されることで、オリフィス部材6及びオリフィス部材挿入穴36の点数を削減でき、これにより、バルブボディ10に対するオリフィス部材6の組付け工数を削減できると共に、バルブボディ10のコンパクト化を図ることができる。
なお、本実施形態では、2つのオリフィス部材6及びオリフィス部材挿入穴36が設けられているが、全てのオリフィスを1つのオリフィス部材6に集約することで、オリフィス部材6及びオリフィス部材挿入穴36の個数を1つのみとしてもよく、この場合、より効果的にバルブボディ10のコンパクト化を図ることができる。ただし、3つ以上のオリフィス部材6及びオリフィス部材挿入穴36が設けられてもよい。
また、三次元積層造形法により形成されるバルブボディ10では油路52〜60の取り回し自由度が高いため、上記のように集約された複数のオリフィス21〜24に対して、これらに対応する各油路を容易に連絡させることができる。
[第2実施形態]
図5〜図8を参照しながら、第2実施形態に係る油圧制御装置のバルブボディアセンブリ100について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成要素については、図5〜図8において同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。
図5は、第2実施形態に係る油圧制御装置のバルブボディアセンブリ100を示す正面図、図6は、同バルブボディアセンブリ100の内部構造を示す図5のC−C線断面図、図7は、オリフィス180及びその周辺部を拡大して示す図6のD−D線拡大断面図、図8は、図5のバルブボディアセンブリ100における後述の第2構成部材120の合わせ面を示す平面図である。
図5〜図7に示すように、バルブボディアセンブリ100は、自動変速機の変速機ケースの外側に取り付けられるバルブボディ101と、該バルブボディ101に組み付けられたソレノイドバルブ2、スプールバルブ4及び所定のオリフィス部材106とを備えている。なお、発明の理解を容易にするために、図6の断面図ではスプールバルブ4を仮想線(二点鎖線)で示しており、図7の断面図ではソレノイドバルブ2及びスプールバルブ4の図示を省略している。
バルブボディ101は、ソレノイドバルブ2やスプールバルブ4が装着されるバルブ挿入穴132,134が全て集約されて設けられた第1構成部材110と、バルブ挿入穴132,134に連絡される油路152,160が全て集約されて設けられた第2構成部材120とを備え、これらを重ね合わせて締結することで形成されている。
第1構成部材110は、金型を用いて成形された金属製の部材であり、より具体的には、例えば、ダイキャストによって成形されたアルミニウム製の部材である。第1構成部材110の形状は特に限定されるものでないが、例えば、第1の幅方向D1とこれに直角な第2の幅方向D2の両寸法に比べて、第1及び第2の幅方向D1,D2に直角な厚み方向D3の寸法が小さい扁平なブロック状とされている。
第1構成部材110の上面110aには、ソレノイドバルブ2用のバルブ挿入穴132の周壁の上半部を構成する第1突出部111と、該第1突出部111よりも上方に突出した第2突出部112とが設けられている。第1突出部111は、第2の幅方向D2に間隔を空けて複数設けられ、それぞれ第1の幅方向D1に延びる半筒状に形成されている。第2突出部112は、平面視において第2の幅方向D2に延びる長尺状に設けられており、第2突出部112の上面は、変速機ケースへの取付面とされている。
第1構成部材110には、第2の幅方向D2の外側に張り出す例えば一対のフランジ部113,114が設けられている。フランジ部113,114の上面は、変速機ケースへの取付面とされており、フランジ部113,114には、該バルブボディ101を変速機ケースに固定するためのボルトが挿通されるボルト穴138が設けられている。
バルブ挿入穴132,134は、ダイキャストによって成形された第1構成部材110を加工することによって形成される。バルブ挿入穴132,134は、第1の幅方向D1に延びる筒状に形成されている。全てのバルブ挿入穴132,134の軸心方向D1は互いに平行であり、全てのバルブ挿入穴132,134は、第1構成部材110の同じ側面に開口されている。これにより、全てのバルブ挿入穴132,134を同じ方向からの加工によって形成することができる。
ソレノイドバルブ2が差し込まれるバルブ挿入穴132は、スプールバルブ4が差し込まれるバルブ挿入穴134よりも大径であり、これらのバルブ挿入穴132,134は、第2の幅方向D2に交互に並ぶように配置されている。このように比較的大径のバルブ挿入穴132の間に比較的小径のバルブ挿入穴134が挟み込まれるように配置されることで、これらのバルブ挿入穴132,134を第2の幅方向D2に密に配置することができ、第2の幅方向D2における第1構成部材110の寸法の短縮が図られる。
第1構成部材110の下面は第2構成部材120の上面との合わせ面とされており、第1構成部材110の下面には、バルブ挿入穴132,134に連絡された複数の連通口141が開口している。
一方、第2構成部材120は、三次元積層造形法によって形成されたものである。第2構成部材120の材料は限定されるものでないが、第2構成部材120を樹脂で構成することにより、第2構成部材120の軽量化が図られる。
第2構成部材120は、第1構成部材110の下面に重ね合わされる扁平なブロック状とされており、第2構成部材120の上面は第1構成部材110との合わせ面とされている。第2構成部材120には、第1構成部材110のフランジ部113,114の下面に重ね合わされる一対のフランジ部123,124が設けられている。フランジ部123,124には、第1構成部材110のフランジ部113,114のボルト穴138に対応する位置にボルト穴139が設けられており、これらのボルト穴138,139に下側から差し込まれるボルト(図示せず)によって、第1及び第2構成部材110,120が共に変速機ケースに固定される。
図8に示すように、第2構成部材120の上面には、油路152,160に連絡された複数の連通口142が開口している。第2構成部材120の上面では、第2の幅方向D2の複数箇所において、それぞれ複数の連通口142が第1の幅方向D1に並ぶように配置されている。各連通口142は、平面視において例えば第2の幅方向D2に長い長円状とされている。各連通口142は、第1構成部材110の連通口141に位置合わせされる。これにより、第1構成部材110のバルブ挿入穴132,134と第2構成部材120の油路152,160とが合わせ面の連通口141,142を介して互いに連絡されている。
第2構成部材120において、油路152,160や連通口142に干渉しない領域には、第1及び第2構成部材110,120を互いに締結するためのボルトが挿通される複数のボルト穴140が設けられており、これらのボルト穴140に対応するボルト穴(図示せず)が第1構成部材110にも設けられている。
ボルト穴140は連通口142の近傍に設けられている。そのため、第1及び第2構成部材110,120の連通口141,142の近傍でボルト締結が行われることで、連通口141,142の周縁部における第1及び第2構成部材110,120間の密着性が向上し、これにより、合わせ面でのオイルのリークが抑制される。なお、第1及び第2構成部材110,120の合わせ面にシート状のガスケットが介装されたり、連通口142の周縁部に、第2構成部材120と一体のシール部又は別体のシール部材が設けられたりしてもよく、これにより、連通口141,142間のシール性が向上する。
第2構成部材120に設けられる油路152,160の向き、長さ、配置、断面形状等、油路152,160の具体的な構成は特に限定されるものでないが、本実施形態において、大部分の油路152は、例えば第2の幅方向D2に延びるように互いに平行に配置されたものであり、一部の油路160は、後述のオリフィス180に連絡されるものである。
第2の幅方向D2に延びる油路152の断面形状は、第1の幅方向D1に長い長円状とされている。該油路152は、第1の幅方向D1及び厚み方向D3において複数ずつ並べて配置されている。各油路152は、第2の幅方向D2において必要に応じた長さを有し、一部の油路152は、第2の幅方向D2に複数並べて配置されている。これらの油路152は、必要に応じて、連絡用の油路(図示せず)を介して互いに連絡されている。
一端側においてオリフィス180に連絡される油路160は、他端側において、第2の幅方向D2に延びる油路152、又は第2構成部材120の上面に開口した上記の連通口142に連絡されている。
図6及び図7に示すように、第2実施形態では、第2構成部材120にオリフィス部材挿入穴136が設けられ、該オリフィス部材挿入穴136に、オリフィス180が設けられたオリフィス部材106が装着される。
オリフィス部材挿入穴136は、第2構成部材120において第2の幅方向D2に延びるように設けられており、その一端側において第2構成部材120の側面に開口している。オリフィス部材挿入穴136の軸心方向D2は、第1構成部材110のバルブ挿入穴132,134の軸心方向D1とは異なっているが、オリフィス部材挿入穴136の機械加工は、第1構成部材110に組み付けられていない状態の第2構成部材120に対して行われるため、これらの挿入穴132,134,136の軸心方向が異なることによって機械加工の作業性が悪くなることはない。
第2実施形態では、全てのオリフィス180が1つのオリフィス部材106に設けられている。オリフィス部材106は、所定の軸心を有する例えば断面円形の棒状部材である。オリフィス部材106は例えば金属からなるが、オリフィス部材106の材料はこれに限定されるものでない。オリフィス部材106には、第2構成部材120に取り付けられたピン122が貫通されており、これにより、オリフィス部材挿入穴136に装着されたオリフィス部材106の軸方向移動及び軸心周りの回動が規制されている。
複数のオリフィス180は、オリフィス部材106の軸方向に間隔を空けて配置されている。これらのオリフィス180のうち最もオリフィス部材挿入穴136の開口部に近いオリフィス180の更に開口部側(図7の左側)には、オリフィス部材106の外周面とオリフィス部材挿入穴136の内周面との隙間をシールするOリング128がオリフィス部材106の外周面に装着されている。
図6に示すように、オリフィス180は、第1実施形態と同様、オリフィス部材106の軸心に直交する方向(オリフィス部材106の径方向)に沿って該オリフィス部材106を貫通する穴で構成されている。オリフィス部材106の軸心方向から見た各オリフィス180の軸心の向きは任意であり、オリフィス部材106の軸心方向から見たとき、全てのオリフィス180の軸心の向きが同じ方向に揃えられてもよいし、オリフィス180毎に軸心の向きが異なってもよい。
第1実施形態と同様、各オリフィス180は、オリフィス部材106の例えば軸心部において、オリフィス部材106の径よりも小さな深さを有するように設けられており、オリフィス部材106の外周面に凹状に設けられた有底穴からなりオリフィス180よりも大径とされた一対の連絡穴182が、オリフィス180の深さ方向の一方側及び他方側にそれぞれ連なるように設けられている。オリフィス180は、第2構成部材120に形成された上流側及び下流側の油路160にそれぞれ連絡穴182を介して連絡されている。各オリフィス180の径は、それぞれの機能に応じて適宜決定される。
なお、オイルの粘度が低いとき、オリフィス180の上流側で高圧となったオイルが油路160から溢れ出してオリフィス部材106の外周面とオリフィス部材挿入穴136の内周面との隙間へリークしやすくなるが、このようにしてオリフィス部材106の外周面を伝い流れるオイルは、上述のOリング128(図7参照)によるシールによってバルブボディ101の外側へのリークが抑制される。
また、第2実施形態において、第2構成部材120には第1実施形態と同様のオイル収容空間37(図3参照)が設けられてもよく、この場合、上記のリークによりオリフィス部材106の外周面を伝い流れるオイルは、オイル収容空間に導かれた後、該オイル収容空間に連通するドレン用油路を経由してドレンされ得る。
以上のように構成されたバルブボディアセンブリ100は、次のようにして製造される。
先ず、第1構成部材110はダイキャスト等により成形され、該第1構成部材110に機械加工が施されてバルブ挿入穴132,134が形成された後、該機械加工で発生した切り粉の除去作業が行われる。
一方、第2構成部材120は、3Dプリンタを用いて三次元積層造形法により形成される。この三次元積層造形法による造形によって、第2構成部材120にはオリフィス部材挿入穴136の下穴が形成され、該下穴を仕上げる機械加工によって、オリフィス部材挿入穴136が形成される。その後、オリフィス部材挿入穴136の機械加工で発生した切り粉の除去作業が行われる。
上記のように切り粉の除去が完了した第1及び第2構成部材110,120は、複数のボルトを用いて互いに締結され、これにより、第1及び第2構成部材110,120からなるバルブボディ101が形成される。
そして、バルブボディ101のバルブ挿入穴132,134及びオリフィス部材挿入穴136にソレノイドバルブ2、スプールバルブ4及びオリフィス部材106がそれぞれ装着されることで、バルブボディアセンブリ100が完成する。
ただし、第2構成部材120のオリフィス部材挿入穴136へのオリフィス部材106の組付けは、オリフィス部材挿入穴136の機械加工で発生した切り粉が除去された後、第2構成部材120が第1構成部材110に組み付けられる前に行われてもよい。
以上で説明した第2実施形態に係る油圧制御装置のバルブボディアセンブリ100によれば、以下のような種々の効果を奏する。
先ず、第1構成部材110は、従来から一般的に行われているダイキャストによって成形できるため、長年培われてきた技術を利用して、十分な剛性を有する高品質の第1構成部材110を得ることができる。そして、剛性の高い第1構成部材110に加工が行われることにより、バルブ挿入穴132,134を精度よく形成することができる。また、剛性が高い第1構成部材110は、バルブ挿入穴132,134の加工後においても変形し難い。そのため、特にスプールバルブ4用のバルブ挿入穴134においてスプール4aの円滑な移動を実現でき、これにより、応答性に優れた油圧制御を実現できる。
さらに、バルブ挿入穴132,134の加工によって発生する切り粉は、細くて入り組んだ従来構造の油路に入り込むと排出し難くなるが、第2実施形態によれば、第2構成部材120に油路152,160が集約されていることにより、第1構成部材110にバルブ挿入穴132,134を加工するときに発生する切り粉が油路152,160に入り込むことを防止でき、バルブ挿入穴132,134の開口部や第2構成部材120との合わせ面に開口した連通口141から切り粉を容易に排出できる。
一方、油路152,160が集約された第2構成部材120は三次元積層造形法によって形成されるため、油路の形成に関して従来のような金型の型抜きを考慮した制約を受けることがなく、油路152,160の形状や配置等、油路152,160の具体的な構成の設計において高い自由度が得られる。したがって、図6及び図7に示すように大部分の油路152を第2の幅方向D2に延びるように配置することなどによって、従来に比べて個々の油路152,160を短く形成することができ、これにより、管路抵抗の低減を図ることができると共に、油圧制御の応答性を高めることが可能になる。また、各油路152,160の短縮が図られることで全体として簡素な油路構成となるため、油路152,160の空間の体積が全体的に縮小されることで、第2構成部材120の小型化及び軽量化が図られる。
また、油路152,160の構想の自由度が高いことから、油路152,160の設計を容易に変更できる。しかも、設計変更の際、金型を作り直す必要がないため、油路152,160の設計変更を短期間かつ低コストで実現できる。
また、第2構成部材120の油路152,160は、第1構成部材110との合わせ面において専ら連通口142を介してバルブ挿入穴132,134に連絡されるものであり、当該合わせ面において油路152,160の途中部分は開口していない。そのため、油路が全長に亘って合わせ面に開口された従来のバルブボディとは異なり、合わせ面において油路の開口部を塞ぐためのセパレートプレートを設ける必要がない。
そして、第1実施形態と同様、バルブボディ101とは別体のオリフィス部材106にオリフィス180が設けられるため、バルブボディ101の第1構成部材110や第2構成部材120にオリフィス180が存在しない状態で、バルブ挿入穴132,134及びオリフィス部材挿入穴136の機械加工、及び、該機械加工によって発生する切り粉の除去作業を行うことができる。
したがって、切り粉が良好に除去されたバルブボディ101にオリフィス部材106が組み付けられることで、該オリフィス部材106に設けられたオリフィス180に切り粉が詰まることを防止できる。そのため、オリフィス180の詰まりによって油圧制御不能となったり、オリフィス180に詰まった切り粉がオイルと共に油圧制御回路内の別の箇所へ移動して詰まりが生じることで何らかの不具合を起こしたりすることを防止できる。
また、第1実施形態と同様、オリフィス部材106の軸心に直交する方向に沿って行われる穿孔加工によって、寸法精度の高いオリフィス180を簡単に形成することができるため、該オリフィス180によって流量制限を精度よく行うことが可能になり、これにより、緻密な油圧制御を行うことができる。
さらに、全てのオリフィス180が1つのオリフィス部材106に集約されることで、オリフィス部材106及びオリフィス部材挿入穴136の点数を削減でき、これにより、第2構成部材120に対するオリフィス部材106の組付け工数を削減できると共に、第2構成部材120のコンパクト化を図ることができる。
ただし、第2実施形態において、オリフィス部材106及びオリフィス部材挿入穴136が複数ずつ設けられて、複数のオリフィス部材106にオリフィス180が分割して設けられてもよい。
また、三次元積層造形法により形成される第2構成部材120では油路152,160の取り回し自由度が高いため、上記のように集約された複数のオリフィス180に対して、これらに対応する各油路160を容易に連絡させることができる。
しかも、平面視において、第2構成部材120に形成されたオリフィス部材挿入穴136及びこれに装着されるオリフィス部材106は、第2の幅方向D2に延びるように設けられているため、第2の幅方向D2に並べて配置された複数のバルブ挿入穴132,134のいずれに対しても、オリフィス180を近距離に配置することができる。したがって、短くて簡素に配索された油路160を介して、バルブ挿入穴132,134とオリフィス180を連絡させることができる。
なお、第2実施形態では、第1構成部材110が、金型を用いて成形されたアルミニウム製部材とされているが、第1構成部材110は、アルミニウム以外の金属、又は、金属以外の材料(例えば樹脂)で構成されてもよい。また、第1構成部材110は、必ずしも金型を用いて成形されたものでなくてもよく、例えば、三次元積層造形法によって形成されたものであってもよい。
さらに、第2実施形態では、第2構成部材120が樹脂製とされているが、第2構成部材120は、三次元積層造形法によって形成されるものである限り、樹脂以外の材料で構成されてもよく、例えば、アルミニウム等の金属で構成されてもよい。
また、第2実施形態では、全てのバルブ挿入穴132,134が第1構成部材110に設けられ、全ての油路152,160が第2構成部材120に設けられているが、一部のバルブ挿入穴132,134が第2構成部材120に設けられたり、一部の油路152,160が第1構成部材110に設けられたりしてもよい。
[変形例]
図9の断面図を参照しながら、オリフィス部材に関連する構成の変形例について説明する。
図9に示す例では、三次元積層造形法によって形成されたバルブボディ200に、スプールバルブ204用のバルブ挿入穴とオリフィス部材挿入穴とを共通化してなる共通穴234が設けられており、該共通穴234に、スプールバルブ204と第1及び第2オリフィス部材207,217とが装着されている。
共通穴234は、スプールバルブ204と第1オリフィス部材207を収容する第1収容部235と、第2オリフィス部材217を収容する第2収容部236とを備えている。第1収容部235は、所定の軸心に沿って延びる筒状の内周面を有する穴であり、その一端側において開口されている。第1収容部235には、バルブボディ200に形成されたスプールバルブ204のポート253が連通されている。
第2収容部236は、第1収容部235における開口とは反対側の端部に連ねて設けられている。第2収容部236は、第1収容部235と同軸上に配置された筒状の内周面を有する穴である。第2収容部236は、第1収容部235に比べて軸方向に短く、小径とされている。
スプールバルブ204は、軸方向に移動可能なように第1収容部235に収容されたスプール205と、軸方向に伸縮可能なように第1収容部235内に装着され、軸方向の一方に向かってスプール205に弾性力を付与するリターンスプリング206とを備えている。そして、スプールバルブ204のストッパは、第1オリフィス部材207と一体に構成されている。
ストッパに一体化された第1オリフィス部材207は、スプール205と同軸上に配置された短尺の丸棒状部材であり、第1収容部235における開口近傍の所定位置に固定されている。第1オリフィス部材207の外周面には、例えば一対の半筒状の係合溝207a,207bがそれぞれ接線方向に沿って設けられており、一方の係合溝207bに係合するようにバルブボディ200に取り付けられたピン220によって、第1収容部235における第1オリフィス部材207の軸方向移動及び周方向移動が規制されている。
第1オリフィス部材207の軸心部には、例えば1つのオリフィス221が上述の第1及び第2実施形態と同様に設けられており、該オリフィス221は、その深さ方向の両側において第1オリフィス部材207に設けられた連絡穴222,223を介して、バルブボディ200に設けられた油路254,255に連絡されている。
第2オリフィス部材217は、第1オリフィス部材207よりも小型の丸棒状部材であり、例えば圧入によって第2収容部236に装着されている。第2オリフィス部材217の軸心部には、例えば1つのオリフィス231が上述の第1及び第2実施形態と同様に設けられており、該オリフィス231は、その深さ方向の両側において第2オリフィス部材217に設けられた連絡穴232,233を介して、バルブボディ200に設けられた油路256,257に連絡されている。
第2オリフィス部材217は、第1オリフィス部材207やスプール205に比べて小径であるため、その周長が短縮されていることによりバルブボディ200の油路256,257との連通部におけるオイルのリークが抑制されている。
図9に示す変形例によれば、オリフィス部材挿入穴とバルブ挿入穴とを共通化してなる共通穴234に第1及び第2オリフィス部材207,217とスプールバルブ204とが装着されるため、バルブボディ200に設けられる挿入穴の個数を削減することが可能になり、これによって、バルブボディ200のコンパクト化を図ることができる。
また、スプールバルブ204のストッパ207に第1オリフィス部材が一体化されているため、バルブボディ200の共通穴234に対してスプールバルブ204を組み付けることで、第1オリフィス部材も同時に組み付けられることになり、組付け工程を削減することができる。
ただし、第1オリフィス部材は、スプールバルブ204のストッパ207と別体であってもよく、この場合は、該ストッパ207に第1オリフィス部材が結合されることで、同様の効果が得られる。
なお、図9に示す変形例において、バルブボディ200は、第1実施形態と同様に単一部材で構成されてもよいし、第2実施形態と同様に複数のバルブボディ構成部材で構成されてもよい。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、以上の実施形態では、1つ又は2つのバルブボディ構成部材でバルブボディが構成される例を説明したが、本発明は、バルブボディが3つ以上のバルブボディ構成部材で構成される場合にも適用できる。
また、以上の実施形態では、セパレートプレートを廃止したバルブボディアセンブリについて説明したが、本発明は、セパレートプレートを備えたバルブボディアセンブリにも適用できる。
さらに、上述の実施形態では、自動変速機に搭載される油圧制御装置のバルブボディアセンブリについて説明したが、本発明は、自動変速機以外のあらゆる機器に搭載される油圧制御装置のバルブボディアセンブリにも同様に適用可能である。