JP2017052983A - スパッタリングターゲット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非導電性酸化物であるMgOと導電性酸化物であるFeOとを含み、前記FeOの濃度を20〜60mol%の範囲内とすることにより、全体として導電性を有するスパッタリングターゲットを構成する。
【選択図】なし
Description
一方、反応性スパッタは、成膜速度は速いもの、反応性ガスの導入切り替え等の煩雑な工程を要し、成膜の均一性に劣る、アーキングが発生しやすい等の課題を有していた。
このため、非導電性の酸化物や窒化物を効率的に均一に成膜することができる方法が望まれている。
したがって、非導電性物質に導電性物質を添加して、ターゲット全体としては導電性物質とすることにより、これをDCスパッタのターゲットとして用いることが可能となる。
特許文献2には、MgOに、これと同じNaCl型の結晶構造を持ち、かつ格子定数が近い導電性のTiOを添加したターゲットでは、DCスパッタによる成膜が可能となることが記載されている。
特許文献3には、MgOに導電性のTiOが固溶した相からなるセラミックス焼結体が記載され、真空薄膜形成法により該セラミックス焼結体の薄膜を形成できることが記載されている。
また、TiCの格子定数は4.318ÅでMgOとのミスフィット率は2.61%、VCの格子定数は4.118ÅでMgOとのミスフィット率は2.14%、TiNの格子定数は4.249ÅでMgOとのミスフィット率は0.97%と、いずれも3%以下であり、上記の各導電性物質WCより小さく、MgOに含まれた状態のターゲットをスパッタして成膜する際に、薄膜中におけるMgOとの整合性の問題はないとも考えられる。
一方、上記特許文献2、3では、導電性物質にTiOを使用したターゲットが記載されているが、さらに高性能なターゲットとして、DCスパッタが可能で成膜速度も向上し、かつ、MgOとのミスフィット率が3%以下と十分に低く、形成された薄膜において、MgO自体の結晶構造が変化することがないターゲットが要望されている。
MgOにFeOを添加することにより、ターゲット全体が導電性を有し、DCスパッタが可能なターゲットを構成することができる。
上記範囲内の組成比であれば、安定的なDCスパッタを行うことができる。
また、本発明に係るスパッタリングターゲットによれば、例えば、MgOに導電性のTiOを添加したスパッタリングターゲットと比較して、高い成膜速度で薄膜を形成することが可能である。
本発明に係るスパッタリングターゲットは、非導電性酸化物であるMgOと導電性酸化物であるFeOとを含み、全体として導電性を有することを特徴とする。
このように、MgOを主成分とするターゲットに、MgOとのミスフィット率が低いFeOを導電性物質として添加することにより、ターゲット全体としては導電性を有するものとなり、DCスパッタが可能なターゲットが得られる。
FeOは、立方晶であり、結晶構造はNaCl型構造、格子定数は4.311Åである。したがって、MgOとのミスフィット率は2.45%で3%以下と小さい。また、MgOと同様に酸化物であり、MgOとの整合性も高いため、形成される薄膜の結晶構造がMgO単体の結晶構造と同様となると考えられる。
したがって、本発明に係るターゲットは、DCスパッタ用として好適に用いることができる。
FeOの組成比が20mol%未満では、ターゲット全体の比抵抗を、安定したDCスパッタを行うための目安となる0.1Ω・cm以下とすることが困難となることがある。
一方、MgOは、熱伝導率が58.8W/(m・K)と酸化物の中でも高く、FeOの熱伝導率は8.38W/(m・K)とMgOよりも低い。このため、MgOに添加するFeOの量を増やすと、その量に応じて、該ターゲットのスパッタにより形成される薄膜の熱伝導率が減少する。
FeOの組成比が60mol%を超える場合、該ターゲットのスパッタにより形成される薄膜の熱伝導率が約27W/(m・K)以下と、MgO単体の約1/2未満となり、実用性の面で問題となることがある。
図1から、この薄膜の結晶構造は、NaCl型構造が完全に保たれていることが認められる。MgOにTiNを添加した場合は、上述したように、MgOの結晶構造であるNaCl型構造以外の結晶構造が現れていることから(図2参照)、MgOにFeOを添加する方が、TiNを添加するよりも、結晶性の点で優れているといえる。
このように、本発明に係るターゲットによれば、MgO単体と同様のNaCl結晶構造を有する薄膜をスパッタにより形成することができる。
ここで、焼結とは、ホットプレス法、常圧焼結法、HIP法(熱間等方圧加圧法)、SPS法(放電プラズマ焼結法)等粉末を高温で固めることをいう。
[実施例1]
MgO粉に、FeO粉を濃度20mol%となるように添加し、ボールミルにて4時間撹拌して得られた混合粉を、ホットプレス炉にて焼結させ、直径3インチ、厚さ5mmのターゲットを作製した。
このターゲットの四探針抵抗測定による比抵抗は0.10Ω・cmであった。
このターゲットを用いて、スパッタリング装置にて、スパッタ基板にはシリカガラスを使用して、出力50WでDCスパッタを行ったところ、アーキングその他の異常もなく、成膜速度は2.7nm/分で、安定してスパッタすることができた。
また、前記スパッタによりシリカガラス基板上に生成した薄膜についてXRD測定を行ったところ、2本の明瞭なX線回折ピークが得られ、その回折角はMgOの基準ピークの回折角と一致することが確認された。
FeO粉の濃度を50mol%とし、それ以外については、実施例1と同様にして、ターゲットの作製及び評価を行った。
このターゲットの比抵抗は22mΩ・cmであった。
また、アーキングその他の異常もなく、成膜速度は4.9nm/分で、安定してスパッタすることができた。
また、スパッタにより生成した薄膜のXRD測定においても、2本の明瞭なX線回折ピークが得られ、その回折角はMgOの基準ピークの回折角と一致することが確認された。
MgO粉をそのままホットプレス炉にて焼結させ、直径3インチ、厚さ5mmのターゲットを作製し、実施例1と同様にして、ターゲットの評価を行った。
このターゲットの比抵抗は、ほぼ無限大であったため、スパッタリング装置にて、ター出力50WでDCスパッタを行うことができなかった。
なお、出力100WでRFスパッタを行ったところ、アーキングその他の異常もなく、成膜速度は0.6nm/分で、安定してスパッタすることができた。
また、前記RFスパッタにより生成した薄膜のXRD測定では、数本の明瞭なX線回折ピークが得られ、その回折角はMgOの基準ピークの回折角と一致することが確認された。
MgO粉に、TiN粉を濃度25mol%になるように添加し、ボールミルにて4時間撹拌して得られた混合粉を、ホットプレス炉にて焼結させ、直径3インチ、厚さ5mmのターゲットを作製し、実施例1と同様にして、ターゲットの評価を行った。
このターゲットの比抵抗は15mΩ・cmであった。
また、アーキングその他の異常もなく、成膜速度は1.5nm/分で、安定してスパッタすることができた。
しかしながら、スパッタにより形成された薄膜のXRD測定においては、多くの明瞭なX線回折ピークが得られ、その回折角の一部はMgOの基準ピークの回折角と一致したが、多くのピークはMgOの基準ピークと異なるものであった。
MgO粉に、TiO粉を濃度20mol%となるように添加し、ボールミルにて4時間撹拌して得られた混合粉を、ホットプレス炉にて焼結させ、直径3インチ、厚さ5mmのターゲットを作製した。
このターゲットの四探針抵抗測定による比抵抗は0.09Ω・cmであった。
このターゲットを用いて、スパッタリング装置にて、スパッタ基板にはシリカガラスを使用して、出力50WでDCスパッタを行ったところ、アーキングその他の異常もなく、成膜速度は1.9nm/分で、安定してスパッタすることができた。
また、前記スパッタによりシリカガラス基板上に生成した薄膜についてXRD測定を行ったところ、2本の明瞭なX線回折ピークが得られ、その回折角はMgOの基準ピークの回折角と一致することが確認された。
TiO粉の濃度を50mol%とし、それ以外については、比較例3と同様にして、ターゲットの作製及び評価を行った。
このターゲットの比抵抗は3.2mΩ・cmであった。
また、アーキングその他の異常もなく、成膜速度は1.9nm/分で、安定してスパッタすることができた。
また、スパッタにより生成した薄膜のXRD測定においても、2本の明瞭なX線回折ピークが得られ、その回折角はMgOの基準ピークの回折角と一致することが確認された。
また、成膜後の膜質はXRD測定においてMgOの基準ピークの回折角と一致するものを「○」、MgOの基準ピークの回折角以外のピークが確認されたものを「×」として評価した。
Claims (4)
- 非導電性酸化物であるMgOと導電性酸化物であるFeOとを含み、全体として導電性を有することを特徴とするスパッタリングターゲット。
- 前記FeOの濃度が20〜60mol%であることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
- 直流スパッタ用であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット。
- スパッタにより、NaCl型結晶構造を有する薄膜を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
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