本発明の実施形態について第1実施形態から第4実施形態の各々を例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、便宜上、図1に示すように、壁体11に沿う水平方向をX方向、壁体11と垂直な水平方向をY方向、壁体11に沿う鉛直方向をZ方向とする。また図1に示すように、X方向を左右方向、Z方向を上下方向として説明することがある。
1.第1実施形態
まず第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る半田付け装置の斜視図であり、図2は図1に示す半田付け装置を所定の仮想面(XZ方向に拡がる平面であって、鏝先5やガイド軸35を二分する面)で切断した断面図であり、図3は図1に示す半田付け装置に設けられた駆動機構の一部の分解斜視図である。なお、図1では、筐体及び支持部1の一部を切断し、半田付け装置の内部を表示するようにしている。また図1では、矢印で示すように、単独状態のカム部材33およびスライダー部34を追加表示している。
図1に示すように半田付け装置Aは、上方から糸半田Wを供給し、下部に設けられた鏝先5を利用して、鏝先5の下方に配置される配線基板Bdと、電子部品Epとを半田付けする装置である。半田付け装置Aは、支持部1、カッターユニット2、駆動機構3、ヒーターユニット4、鏝先5及び半田送り機構6を備えている。なお、ヒーターユニット4と鏝先5とを組み合わせたものが、半田鏝部を構成している。
半田付け装置Aは、治具Gjに取り付けられた配線基板Bdと、配線基板Bdに配置された電子部品Epの端子とに溶融半田を供給し、接続固定を行う。半田付けを行うとき、治具GjをX方向及びY方向に移動させ配線基板BdのランドLdとの位置決めを行う。また、半田付け装置AはZ方向に移動可能であり、位置決め後Z方向に移動することで、鏝先5の先端をランドLdに接触させることができる。
支持部1は、立設された平板状の壁体11を備えている。壁体11はXZ平面を有するように形成されている。支持部1は、壁体11のZ方向の下端部より上方にずれた位置に設けられた保持部12と、壁体11のZ方向の辺縁部(下部)に固定された摺動ガイド13と、壁体11のZ方向の端部(下端部)に設けられたヒーターユニット固定部14とを備えている。
カッターユニット2は、半田送り機構6によって送られた糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断するものである。カッターユニット2は、摺動ガイド13に固定されたカッター下刃22(固定刃部)と、カッター下刃22の上部に配置され、X方向に摺動可能に配置されたカッター上刃21(可動刃部)と、カッター上刃21に設けられ、カッター上刃21の摺動方向と交差する方向(Z方向)に摺動するプッシャーピン23(半田押部)とを備えている。図1に示すように、カッター上刃21は、摺動ガイド13によって、Z方向の移動が規制されているとともに、X方向に摺動可能となっている。
ここで、摺動ガイド13について、詳しく説明する。摺動ガイド13は、カッター下刃22のY方向の両端と接触する一対の壁部131、131を備えており、一対の壁部131は他方に向かって突出した抜け止め部132、132を備えている。抜止部132、132は先端が接触しないように、換言すると、摺動ガイド13の上部に開口を有している。この抜止部132、132がカッター上刃21のZ方向への移動を規制する。
図2に示すように、カッター上刃21は、半田送り機構6にて送られた糸半田Wが挿入される貫通孔である上刃孔211と、プッシャーピン23のロッド部231が挿入された貫通孔であるピン孔212とを備えている。上刃孔211の下端の辺縁部は切刃状に形成されている。カッター下刃22は、上刃孔211を貫通した糸半田Wが挿入される貫通孔である下刃孔221を備えている。下刃孔221の上端の辺縁部は切刃状に形成されている。上刃孔211と下刃孔221とは、糸半田Wが挿入されている状態で、糸半田Wと交差する方向にずれることで、互いの切刃によって糸半田Wが切断される。なお、詳細については、後述する。
プッシャーピン23は半田押部であり、カッター上刃21とカッター下刃22で切断されて下刃孔221に残った半田片Whを下方に押すものである。プッシャーピン23は、ピン孔212に摺動可能に支持されたロッド部231と、ロッド部231の端部に設けられたヘッド部232と、ロッド部231に巻き回されてヘッド部232とカッター上刃21との間に配置されたばね233とを備えている。さらに、プッシャーピン23には、ロッド部231のヘッド部232と反対側の端部に、ロッド部231のピン孔212からの抜けを抑制する抜け止めが設けられている。そして、プッシャーピン23は、ばね233の弾性力によって、常に上方に、すなわち、カッター下刃22と反対側に持ち上げられている。
図1、図2に示すように、駆動機構3は、保持部12に保持されたエアシリンダー31と、保持部12に設けられた貫通孔を貫通し、エアシリンダー31によってZ方向に摺動駆動されるピストンロッド32と、保持部12とカッター下刃22との両方に支持され、Z方向に延びる円柱状のガイド軸35を備えている。そして、そして、駆動機構3は、ガイド軸35にZ方向に摺動可能に支持されたカム部材33と、カム部材33に設けられた後述のピン332が係合するカム溝340を有するスライダー部34とを備えている。
エアシリンダー31は、外部から供給される空気の圧力でピストンロッド32を摺動駆動(伸縮)させるものであり、エアシリンダー31とピストンロッド32とが駆動機構3のアクチュエーターを構成している。ピストンロッド32は、ガイド軸35と平行に設けられており、ガイド軸35に沿って直線的に往復動する。ピストンロッド32の先端部は、カム部材33に固定されており、ピストンロッド32の伸縮によって、Z方向に摺動する。カム部材33の摺動は、ガイド軸35によってガイドされている。なお、駆動機構3のアクチュエーターとして空気圧を用いるものとしているが、これに限定されるものではなく、空気以外の流体(例えば、作動油)を用いるもの(油圧)であってもよいし、直線移動するモータ(リニアモータ)のような電動のものであってもよい。
図2に示すように、ガイド軸35は、下端部がカッター下刃22に設けられた凹穴に嵌合されており、カッター下刃22にねじ351でねじ止め固定されている。また、ガイド軸35の上部は、保持部12に設けられた孔を貫通しており、ピン352によって移動が規制されている。つまり、ガイド軸35はねじ351によってカッター下刃22と、ピン352によって保持部12と固定されている。
なお、本実施形態において、ガイド軸35は、ねじ351及びピン352によって固定されているが、これに限定されるものではなく、例えば、圧入、溶接等の固定方法で固定されるものであってもよい。また、本実施形態において、ガイド軸35として円柱状の部材としているが、これに限定されるものではなく、断面多角形状や楕円等を利用してもよい。
図2、図3に示すように、カム部材33は、矩形状の部材であり、長辺の一部を矩形状に切り欠いた凹部330と、カム部材33に連結し、ガイド軸35が貫通する貫通孔を備えた円筒形状の支持部331とを備えている。凹部330には、スライダー部34が(X方向及びZ方向に)摺動可能に配置される。また、支持部331はガイド軸35と平行する方向に延びる形状を有しており、カム部材33のがたつきを抑制するために設けられている。つまり、カム部材33がある程度厚みを有し、がたつきが発生しにくい構成の場合、円筒形状の部分を省略し、貫通孔だけで支持部331を構成してもよい。
そして、カム部材33は、凹部330の中間部分に設けられて中心軸がガイド軸35と直交する円柱状のピン332と、凹部330と隣接してプッシャーピン23を押すピン押し部333と、支持孔331内部に配置された軸受334とを備えている。ピン332は、スライダー部34に設けられた後述するカム溝340に挿入される。また、軸受334は、ガイド軸35に外嵌し、カム部材33ががたつかないように、円滑に摺動させる部材である。また更にカム部材33は、ピン332の近傍から上方へ突出した突出部335と、突出部335の上端に設けられたマグネット336を有している。
図2、図3に示すように、スライダー部34は、長方形状の板状の部材であり、カッター上刃21と一体的に形成されている。スライダー部34は、板厚方向に貫通するとともに長手方向に延びるカム溝340を備えている。カム溝340は、ガイド軸35と平行に延びる第1溝部341を上側に、同じくガイド軸35と平行に延びる第2溝部342を下側に設けている。そして、第1溝部341と第2溝部342とは、X方向にずれて設けられており、カム溝340は第1溝部341と第2溝部342とを接続する接続溝部343を備えている。
カム溝340には、カム部材33のピン332が挿入されており、カム部材33がガイド軸35に沿って移動することで、ピン332がカム溝340の内面を摺動する。ピン332がカム溝340の接続溝部343に位置するとき、接続溝部343の内面を押す。これにより、スライダー部34及びスライダー部34に一体的に形成されたカッター上刃21がカム部材33の摺動方向(Z方向)と交差する方向(X方向)に移動(カッター下刃22に対して摺動)する。
なお、本実施形態では、カム部材33にピン332、スライダー部34にカム溝340を備えた構成を挙げて説明しているが、実際には、カム部材にカム溝、スライダー部にピンを備えた構成であってもよい。
図2に示すように、ヒーターユニット4は、半田片Whを加熱し、溶融させるための加熱装置であり、壁体22の下端部に設けられたヒーターユニット固定部14に固定されている。ヒーターユニット4は、電気を通すことで発熱するヒーター41と、ヒーター41を取り付けるためのヒーターブロック42とを備えている。ヒーター41は円筒形状のヒーターブロック42の外周面に巻き回されている。
ヒーターブロック42は円筒形状を有しており、軸方向の端部に鏝先5をとりつけるための断面円形状の凹部421と、凹部421の底部の中心部から反対側に貫通した半田供給孔422とを備えている。ヒーターブロック42は、半田供給孔422と下刃孔221とが連通するように、カッター下刃22に接触して設けられている。ヒーターブロック42をこのように設けることで、半田片Whは、下刃孔221から半田供給孔422に移動する。
鏝先5は、円筒形状の部材であり、中央部分に軸方向に延びる半田孔51を備えている。鏝先5は、ヒーターブロック42の凹部421に挿入され、図示を省略した部材によって抜け止めがなされている。また、鏝先5の半田孔51は、ヒーターブロック42の半田供給孔421と連通しており、半田供給孔421から半田片Whが送られる。
鏝先5は、ヒーター41からの熱が伝達されており、その熱で半田片Whを溶融させる。そのため、鏝先5は、高い熱伝導率を有する材料、例えば、炭化ケイ素、窒化アルミ等のセラミックやタングステン等の金属で形成されている。半田付け装置Aにおいて、鏝先5は円筒形状のものとしているが、これに限定されるものではなく、断面多角形又は楕円形の筒形状のものを用いてもよい。半田付けを行う配線基板Bd及び(又は)電子部品Epの端子の形状に合わせて異なる形状のものを用意するようにしてもよい。
図1、図2に示すように、半田送り機構6は、糸半田Wを供給するものであり、糸半田Wを送る一対の送りローラ(61a、61b)(以下「送りローラ61」と総称することがある)と、送りローラ61で送られた糸半田Wをカッター上刃21の上刃孔211にガイドするガイド管62とを備えている。一対の送りローラ61は、支持部1に取り付けられており、糸半田Wを挟むとともに、回転することで糸半田Wを下方に送る。ガイド管62は、弾性変形可能な管体であり、上端は、送りローラ61の糸半田Wが送り出される部分に近接して配置されている。
また、ガイド管62の下端は、カッター上刃21の上刃孔211と連通するように設けられている。なお、ガイド管62の下端はカッター上刃21の摺動に追従して移動するものであり、ガイド管62はカッター上刃21が摺動する範囲で過剰に引っ張られたり、突っ張ったりしないように設けられている。送りローラ61は回転角度(回転数)によって、送り出した糸半田の長さを決定している。
図4は、半田送り機構6のより詳細な構成図である。図1、図2および図4に示すように、半田送り機構6の近傍には、スライドベアリングユニット81(図1に図示)、ラックギアユニット82、ストッパー83、第1歯車84、第2歯車85、ワンウェイクラッチ85aが設けられている。ラックギアユニット82は、スライドベアリングユニット81により上下にスライドするようになっており、下端はマグネット336に吸着して取り付けられる構成となっている。またラックギアユニット82は、スライド方向と直交して伸びた突起82aが設けられている。突起82aがストッパー83の上端に当たることで、ラックギアユニット82は、それより下方には移動出来ないようになっている。
またラックギアユニット82と第1歯車84は、直線運動を回転運動に変換するラックアンドピニオン機構を構成しており、ラックギアユニット82のスライドに伴って第1歯車84が回転する。また第1歯車84が回転することで、これに噛み合った第2歯車85も回転し、第2歯車85とワンウェイクラッチ85a(回転方向を一方向へ制限する部品)を介して連結した送りローラ61aも回転する。なお、ワンウェイクラッチ85aの作用により、送りローラ61aは、図2で見た場合の半時計方向には回転しない(第2歯車85が半時計方向に回転する間、送りローラ61aはどの方向にも回転しない)ようになっている。
半田付け装置Aで半田付けを行う場合、鏝先5の先端を半田付けを行う配線基板BdのランドLdに接触させ、鏝先5で、ランドLd及び電子部品Epの端子を囲む。このとき、鏝先5には、ヒーター41からの熱が伝達されており、鏝先5が接触することでランドLd及び電子部品Epの端子は、半田付けに適した温度に加温(プレヒート)される。なお、ヒーター41は常時同じ熱量を鏝先5に供給するように制御されていてもよいし、ランドLd及び電子部品Epの端子を加熱する間は熱量を小さくし、半田片Whが鏝先5の半田孔51に到達した後、供給する熱量を大きくするように制御されるものであってもよい。このように、糸半田Wの有無によって、ヒーター41から鏝先5に供給される熱量を変更することで、配線基板Bdや電子部品Epの過熱による不具合の発生を抑制することができる。
次に、本発明にかかる半田付け装置Aの動作について、図面を参照して説明する。図5は、半田送り機構6の近傍における動作の様子を示し、図6は、半田付け装置A全体の動作の様子を示している。
半田付け装置Aは、半田付けを行う直前、ピストンロッド32がエアシリンダー31の内部に収納された状態になっており、カム部材33がZ方向の上部(摺動範囲の最上部)にある。このとき、ピン332がカム溝340における上部に位置しており、カッター上刃21がガイド軸35に最も接近した位置にある。この位置を初期位置とする。また、半田付け装置Aでは初期位置にあるとき、上刃孔211が下刃孔221とZ方向に重なるようにカッター上刃21及びカッター下刃22が形成されている(図6(a)を参照)。
エアシリンダー31によりピストンロッド32が突出し、カム部材33が下方へ押され出すと、図5(a)に示すようにラックギアユニット82が降下し、これに伴って一対の送りローラ61が回転して糸半田Wを下方へ送り出す(図5(a)を参照)。そして突起82aがストッパー83に当たると、ラックギアユニット82の下降は停止し、同時に送りローラ61の回転も止まるため、糸半田Wの送り出しは停止する(図5(b)、図6(b)を参照)。
なお、ストッパー83の上下位置は調整可能であり、これにより、糸半田Wの送り出し量も調整可能となっている。更にカム部材33が下方へ押されると、ラックギアユニット82はマグネット336から離れ、カム部材33側だけがガイド軸35に沿って降下を続ける(図5(c)を参照)。
ピン332がカム溝340内に配置されているため、ピン332はカム軸340内を摺動する。ピン332が第1溝部341にあるとき、第1溝部341がピン332の移動方向(ガイド軸35の軸方向)と一致するため、スライダー34はカム部材33から力を受けず、カム部材34は静止している。そして、ピン332が第1溝部341から接続溝部343に到達すると、ピン332が接続溝部343の内面を押す。これにより、スライダー部34にX方向の力が加わり、スライダー部34及びスライダー部34と一体に形成されたカッター上刃21がX方向に移動(摺動)する。
カッター上刃21が摺動することで、上刃孔211と下刃孔221とがX方向にずれ、これらの孔のずれによって、上刃孔211の端部の縁に形成された切刃と下刃孔221の端部の縁に形成された切刃が交差し、糸半田Wが半田片Whに切断される(図6(c)を参照)。
ピストンロッド32がさらに突出すると、カム部材33がさらに下方に移動し、ピン332が接続溝部343から第2溝部342に移動する。第2溝部342もガイド軸35と平行に延びているため、カム部材33がガイド軸35に沿って下方に移動しても、ピン332がスライダー部34を押さなくなる。すなわち、カム部材33は移動するが、カッター上刃21及びスライダー部34は停止する。カッター上刃21はガイド軸35から最も離れた位置にある。この位置にあるとき、ピン孔212が下刃孔221とZ方向に重なるように、カッター上刃21及びカッター下刃22が形成されている。
ピストンロッド32がさらに突出すると、カム部材33が下方に摺動し、カム部材33のピン押し部333がプッシャーピン23のヘッド部232を押す(図6(d)を参照)。これにより、プッシャーピン23のロッド部231が下刃孔221に挿入される。このとき、下刃孔221に残っている半田片Whは、ロッド部231に押され、鏝先5に向かって移動する。なお、半田片Whは、切断時に自重によって下方に移動する場合もあるが、プッシャーピン23を利用することで、半田片Whを確実に鏝先5の半田孔51に供給することができる。
鏝先5には、ヒーター41からの熱が伝達されており、この熱によって半田孔51内で糸半田Wは溶融される。そして、鏝先5は、配線基板BdのランドLdと電子部品Epの端子とを囲んでいるため、溶融した半田は、ランドLdと電子部品Epの端子とに流れる。そして、半田付け装置AをZ方向に移動することで、鏝先5がランドLdから離れる。これにより、半田は外気によって冷却され、固化することで、ランドLdと電子部品Epの端子とが半田付けされる。
そして、半田付けが終了すると、エアシリンダー31はピストンロッド32を内部に収納する。これにより、カム部材33がZ方向上方に移動し、プッシャーピン23はばね233の弾性力により上方に押し上げられ、ロッド部231が下刃孔221から抜ける。この状態でカッター上刃21が摺動しても、プッシャーピン23は破損しない。そして、カム部材33のピン332がカム溝340の接続溝部343に到達し、スライダー部34及びカッター上刃21は、ガイド軸35に接近するように摺動する。
そして、ピン332がカム溝340の第1溝部341に到達したとき、半田付け装置Aは、初期位置に戻る。なお、カム部材33が上昇する過程において、ラックギアユニット82の下端部は再びマグネット336に吸着して取り付けられ、これらは一体となって上昇する(図5(d)を参照)。
2.第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態は、ラックギアユニットとカム部材の接続形態に関する点を除き、基本的に第1実施形態と同様である。以下の説明では第1実施形態と異なる部分の説明に重点をおき、共通する部分の説明を省略する。
図7は、第2実施形態に係るラックギアユニット82とカム部材33との接続箇所近傍の構成図である。本図に示すように、カム部材33の一部である突出部335の上側先端には、上方へ突き出た小突起336pが設けられている。小突起336pは、上側が略球状に形成されている。
またラックギアユニット82の下端部には、内壁が弾性(ばね性)を有した凹部82pが設けられている。凹部82pの内径は、小突起336pの略球状部分の外径よりやや小さくなっているが、凹部82pの内壁が弾性を有するため、図7に示すように凹部82p内へ小突起336pを進入させることができる。この状態では、凹部82pの内壁の弾性により、ラックギアユニット82は突出部335へある程度の強さで取り付けられる。
このように取り付けられた状態のラックギアユニット82が下降してストッパー83に当接すると、突出部335を降下させる力が凹部82p内壁の弾性に打ち勝って、ラックギアユニット82は突出部335から分離する。その後の復帰時において、突出部335が上昇してラックギアユニット82へ接近すると、再び小突起336pが凹部82pに嵌まり込み、ラックギアユニット82は突出部335へ取り付けられる。
このように小突起336pと凹部82pは、第1実施形態でのマグネット336と同様に、ラックギアユニット82を突出部335へ着脱可能に取り付けるために利用される。また小突起336pや凹部82pの形状については、ラックギアユニット82と突出部335を適切な強度で取り付け可能となるように設定すればよい。
3.第3実施形態
次に第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態は、カム部材およびその周辺の機構などに関する点を除き、基本的に第1実施形態と同様である。以下の説明では第1実施形態と異なる部分の説明に重点をおき、共通する部分の説明を省略する。
図8は第3実施形態に係る半田付け装置Aの外観斜視図である。本図に示すように半田付け装置Aは、第1実施形態に係るエアシリンダー31、カム部材33、スライダー部34、ラックギアユニット82、ストッパー83、およびこれらの関連部の代わりに、回転シリンダー91、カム部材92、スライダー部93、駆動レバー94、およびストッパー95を有している。また図8では、矢印で示すように、単独状態のカム部材92を追加表示している。
回転シリンダー91は、カム部材92を回転させるアクチュエーターとして機能し、これによりカム部材92は、軸92aを中心に回転する。なお、カム部材92に設けられたピン92bは、スライダー部93に設けられたカム溝93aに嵌め込まれている。これによりスライダー部93は、カム部材92が回転移動すると、カム溝93aの形状に応じて駆動する。
またカム部材92の先端付近(軸92aとは反対側)には、略棒状の駆動レバー94の一端側を吸着可能であるマグネット92cが設けられている。なお、駆動レバー94の他端側は、第1歯車84に連結している。駆動レバー94は、第1歯車84と同軸での回転が可能であり、駆動レバー94の回転に伴って第1歯車84も回転する。第1歯車84が回転すると半田送り機構6による半田送りが行われるのは、第1実施形態の場合と同様である。
カム溝93aの形状は、回転シリンダー91の駆動により、初期状態から、半田送り機構6による半田送り、カッターユニット2を用いた半田カット、およびプッシャーピン23を用いた半田プッシュの各動作を順に経て、初期状態への復帰がなされるように適切に設定されている。このような一連の動作について、図9を参照しながらより詳しく説明する。
図9(a)は、半田付け装置Aの初期状態を示している。この状態では、ピン92bがカム溝93aにおける上部に位置しており、カッター上刃21が最も左側にある。また、半田付け装置Aでは初期位置にあるとき、上刃孔211が下刃孔221と上下方向に重なるようにカッター上刃21及びカッター下刃22が形成されている。またマグネット92cにより、駆動レバー94はカム部材92に着脱可能に取り付けられており、駆動レバー94とストッパー95の間には一定の距離(駆動レバー94の可動範囲に相当する)がある。
回転シリンダー91が回転駆動(図9で見た場合の時計回りの回転駆動)を開始し、カム部材92が回転し出すと、図9(b)に示すように駆動レバー94は反時計回りに回転し、これに伴って半田送り機構6が駆動して糸半田Wを下方へ送り出す。そして駆動レバー94がストッパー95に当たると、駆動レバー94の回転は停止し、同時に半田送り機構6の駆動も止まるため、糸半田Wの送り出しは停止する。
なお、ストッパー83の位置は調整可能であり、これにより、糸半田Wの送り出し量も調整可能となっている。更にカム部材92が回転すると、駆動レバー94はマグネット92cから離れ、カム部材92側だけが回転を続ける。
その後、カム部材92が回転すると、ピン92bがカム溝93aの右側面に当たって右方へ押す格好となる。これにより、スライダー部93に右方向(X方向)の力が加わり、スライダー部93及びスライダー部93と一体に形成されたカッター上刃21が右方向に移動する。
カッター上刃21が摺動することで、上刃孔211と下刃孔221とがX方向にずれ、これらの孔のずれによって、上刃孔211の端部の縁に形成された切刃と下刃孔221の端部の縁に形成された切刃が交差し、糸半田Wが半田片Whに切断される(図9(c)を参照)。また、プッシャーピン23は下刃孔221の真上の位置に到達する。
更にカム部材92が回転すると、カム部材92の先端部分がプッシャーピン23のヘッド部232を押す(図9(d)を参照)。これにより、プッシャーピン23のロッド部が下刃孔221に挿入される。このとき、下刃孔221に残っている半田片Whは、プッシャーピン23に押され、鏝先5に向かって移動する。なお、半田片Whは、切断時に自重によって下方に移動する場合もあるが、プッシャーピン23を利用することで、半田片Whを確実に鏝先5の半田孔51に供給することができる。
鏝先5には、ヒーター41からの熱が伝達されており、この熱によって半田孔51内で糸半田Wは溶融される。そして、鏝先5は、配線基板BdのランドLdと電子部品Epの端子とを囲んでいるため、溶融した半田は、ランドLdと電子部品Epの端子とに流れる。そして、半田付け装置AをZ方向に移動することで、鏝先5がランドLdから離れる。これにより、半田は外気によって冷却され、固化することで、ランドLdと電子部品Epの端子とが半田付けされる。
そして半田付けが終了すると、カム部材92を逆回転(図9で見た場合の反時計回り)させるように回転シリンダー91が駆動する。これにより、プッシャーピン23はばねの弾性力により上方に押し上げられ、下刃孔221から抜ける。この状態でカッター上刃21が摺動しても、プッシャーピン23は破損しない。またカム部材92は駆動レバー94が再度取り付けられ、駆動レバー94を押し上げるようにして初期状態の位置に戻る。
このような過程を経て、半田付け装置Aは初期状態に復帰することとなる。なお、本実施形態においても、第2歯車85はワンウェイクラッチを介して送りローラ61aに連結しているため、当該復帰の過程において半田送り機構6が駆動することはない。
4.第4実施形態
次に第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態は、カム部材およびその周辺の機構などに関する点を除き、基本的に第1実施形態と同様である。以下の説明では第1実施形態と異なる部分の説明に重点をおき、共通する部分の説明を省略する。
図10は第4実施形態に係る半田付け装置Aの外観斜視図であり、図11は当該半田付け装置Aの構成図(一部を断面表示している)である。これらの図に示すように半田付け装置Aは、第1実施形態に係るエアシリンダー31、カム部材33、スライダー部34、ラックギアユニット82、ストッパー83、各歯車(84、85)およびこれらの関連部の代わりに、回転シリンダー101、円筒カム102、カムレバー103、駆動レバー104、ストッパー106、およびスライダー部107を有している。
回転シリンダー101は、左右方向(X方向)を軸として円筒カム102を回転させるアクチュエーターとして機能し、これにより円筒カム102は、回転シリンダー101と同軸で回転する。円筒カム102には、図11に示すように周方向へ一部蛇行して伸びるように、カム溝102aが設けられている。また円筒カム102には、カムレバー103が回転シリンダー101と同軸で回転可能に設けられている。カムレバー103は、図10に破線矢印で示す方向に、円筒カム102の回転に伴って同軸で回転する。
また送りローラ61aは、ワンウェイクラッチを介して駆動レバー104に連結されている。駆動レバー104は、回転シリンダー101と同軸で回転するように配置されている。駆動レバー104が、左方視点での時計回り方向へ回転すると、表面に滑り止め(凹凸)が施された送りローラ61aも回転し、他方の送りローラ61bと連携して糸半田Wを下方へ送り出す。なお、上記のようにワンウェイクラッチが設けられているため、駆動レバー104が当該方向とは逆向きへ回転するときには、送りローラ61aは回転しない。
なお、カムレバー103には、駆動レバー104を吸着可能としたマグネット103aが設けられている。駆動レバー104は、マグネット103aに吸着している状態(カムレバー103に取り付けられている状態)では、カムレバー103とともに回転することになる。またスライダー部107は、カッター上刃21に連結しており、スライダー部107の上端に設けられたカムフォロア107aはカム溝102a内に嵌め込まれている。これによりスライダー部107は、円筒カム102が回転移動すると、カム溝102aの形状に応じて駆動する。
カム溝102aの形状は、回転シリンダー101の駆動により、初期状態から、半田送り機構6による半田送り、カッターユニット2を用いた半田カット、およびプッシャーピン23を用いた半田プッシュの各動作を順に経て、初期状態への復帰がなされるように適切に設定されている。このような一連の動作について、図12を参照しながら説明する。なお、図12は、主にカムレバー103および駆動レバー104の動きを示している。
図12(a)は初期状態を示している。この状態では、駆動レバー104はカムレバー103に連結(マグネット103aにより吸着)しており、駆動レバー104とストッパー106の間には一定の距離(駆動レバー104の可動範囲に相当する)がある。なお、このときは図11に示すように、カッター上刃21は最も左側にあり、上刃孔211が下刃孔221と上下方向に重なるようにカッター上刃21及びカッター下刃22が形成されている。
回転シリンダー101が回転駆動(左方から見て時計回りの回転)を開始し、円筒カム102とカムレバー103が一緒に回転し出すと、図12(b)に示すように駆動レバー104が回転し、これに伴って半田送り機構6が駆動して糸半田Wを下方へ送り出す。そして駆動レバー104がストッパー106に当たると、駆動レバー104の回転は停止し、同時に半田送り機構6の駆動も止まるため、糸半田Wの送り出しは停止する。
なお、ストッパー106の位置は調整可能であり、これにより、糸半田Wの送り出し量も調整可能となっている。更にカムレバー103が回転すると、駆動レバー104はマグネット103aから離れ、カムレバー103側だけが回転を続ける。
その後、カムレバー103とともに円筒カム102が回転すると、先述したカム溝102aの蛇行形状により、カム溝102aの内面がカムフォロア107aを右方へ押す格好となる。これにより、スライダー部107に右方向(X方向)の力が加わり、スライダー部107及びスライダー部107と一体に形成されたカッター上刃21が右方向に移動する。
カッター上刃21が摺動することで、上刃孔211と下刃孔221とがX方向にずれ、これらの孔のずれによって、上刃孔211の端部の縁に形成された切刃と下刃孔221の端部の縁に形成された切刃が交差し、糸半田Wが半田片Whに切断されることになる。また、プッシャーピン23は下刃孔221の真上の位置に到達する。
更にカム部材92が回転すると、図12(c)に示すように、カムレバー103の先端部分がプッシャーピン23のヘッド部232を押す。これにより、プッシャーピン23のロッド部が下刃孔221に挿入される。このとき、下刃孔221に残っている半田片Whは、プッシャーピン23に押され、鏝先5に向かって移動する。なお、半田片Whは、切断時に自重によって下方に移動する場合もあるが、プッシャーピン23を利用することで、半田片Whを確実に鏝先5の半田孔51に供給することができる。
鏝先5には、ヒーター41からの熱が伝達されており、この熱によって半田孔51内で糸半田Wは溶融される。そして、鏝先5は、配線基板BdのランドLdと電子部品Epの端子とを囲んでいるため、溶融した半田は、ランドLdと電子部品Epの端子とに流れる。そして、半田付け装置AをZ方向に移動することで、鏝先5がランドLdから離れる。これにより、半田は外気によって冷却され、固化することで、ランドLdと電子部品Epの端子とが半田付けされる。
そして半田付けが終了すると、円筒カム102およびカムレバー103を逆回転(左方から見て反時計回り)させるように回転シリンダー91が駆動する。これにより、プッシャーピン23はばねの弾性力により上方に押し上げられ、下刃孔221から抜ける。この状態でカッター上刃21が摺動しても、プッシャーピン23は破損しない。またカムレバー103は駆動レバー104と再度連結し、駆動レバー104を押し上げるようにして初期状態の位置に戻る。このような過程を経て、半田付け装置Aは初期状態に復帰することとなる。
5.その他
以上に説明したように各実施形態の半田付け装置は、糸半田Wを切断した半田片Whが供給される半田孔を有するとともに当該半田孔で半田片Whを加熱溶融する半田鏝部と、前記半田孔に連通した半田保持孔を有する固定刃部と、糸半田Wを送り出して前記半田保持孔へ挿入させる半田送り部と、前記固定刃部に対して摺動して前記半田保持孔に挿入された糸半田Whを切断する可動刃部とを備えている。
更に当該半田付け装置は、一つのアクチュエーターの駆動により、糸半田Wを送り出すとともに、前記可動刃部を前記固定刃部に対して往復摺動させるように構成されている。そのため簡単な構造としながらも、精度よく且つ効率よく半田付けを行うことが可能である。
すなわち当該半田付け装置によれば、複数個のアクチュエーターを正確に同期して連動させる制御が不要であり、制御を簡略化することが可能である。また、糸半田を送り出す動作と糸半田を切断する動作の2つの動作が連続して行われるため、アクチュエーターの動作を切り替えるための時間が不要となり、それだけ、1回の半田付けに要する時間(タクトタイム)を減らすことができる。これにより、半田付けの効率を高めることが可能となる。
また各実施形態の半田付け装置は、前記可動刃部に取り付けられて前記半田保持孔の軸方向に移動可能に設けられる半田押部を備え、前記アクチュエーターの駆動により、前記可動刃部が前記固定刃部上を摺動して糸半田Wを切断した際に前記半田押部が前記半田保持孔上に配され、前記半田押部を前記半田保持孔に挿入する構成となっている。
第1および第2実施形態の半田付け装置では、アクチュエーターは直線運動を行うように駆動し、このアクチュエーターの直線運動を回転運動に変換するラックアンドピニオン機構が設けられている。そして前記半田送り部は、当該変換により得られた回転運動を用いて糸半田Wを送り出すようになっている。なお、第3および第4実施形態の半田付け装置では、アクチュエーターは回転運動を行うように駆動する。
また各実施形態の半田付け装置では、前記半田送り部は、送りローラの回転により糸半田Wを送り出すように形成されており、アクチュエーターの駆動に伴って回転する歯車を備えている。更に送りローラは、ワンウェイクラッチを介して当該歯車に連結されている。これにより、アクチュエーターを用いて糸半田Wを送り出すことが出来るとともに、当該送り出しの方向を一定とすることが可能である。
また各実施形態の半田付け装置では、アクチュエーターの駆動に付随して移動する付随移動部が備えられ、当該付随移動部の移動量に応じた量の糸半田Wが送り出される。そして付随移動部の可動範囲を変えることで、糸半田Wの送り出し量を調節可能としている。なお、第1および第2実施形態ではラックギアユニットが、第3および第4実施形態では駆動レバーが、それぞれ付随移動部に相当する。
また付随移動部は、アクチュエーターにより駆動する駆動部分(カム部材やカムレバー)に着脱可能に取付けられ、アクチュエーターの駆動中に所定のストッパーへ当たることによって、当該駆動部分から離れて停止するように構成されている。更に当該ストッパーの位置を変えることで、前記可動範囲が変わる。そのため、当該可動範囲を簡単に変更し、糸半田Wの送り出し量を容易に調節することが可能である。
なお、付随移動部は、内壁が弾性を有した凹部への突起の嵌め込み(第2実施形態の場合)、または、磁石を用いること(その他の実施形態の場合)により、前記駆動部分に着脱可能に取付けられるようになっている。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。