JP2017048307A - ハードコートポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも片面にハードコート層を有するハードコートポリエステルフィルムであって、ハードコート層が水溶性アクリルポリオールと水溶性アミノ樹脂との反応生成物を含み、ハードコート層のマルテンス硬さが280〜600N/mm2であることを特徴とするハードコートポリエステルフィルムである。
【選択図】なし
Description
また、インラインコート法の場合、通常、縦延伸後に、ハードコート層用塗布液を塗布した後、プレ乾燥を行ってからテンターで横延伸を行う。このとき、プレ乾燥は、80〜120℃で数十秒程度と低温短時間であるので、このときに乾燥不足であったり、塗布液中の樹脂成分のTgが低かったりすると、テンターまでハードコートフィルムを導入するためのロールにフィルムが付着してしまう。こういった問題から、プレ乾燥後の塗膜のタックフリー性が重要となる。
Tgn:各モノマーのホモポリマーのTg(K)
アクリルポリオール中に導入された共重合成分の比率は、核磁気共鳴分光法(1H−NMR、13C−NMR:Varian Unity 400、Agilent社製)を用いて確認した。測定は、合成したアクリルポリオール中の溶媒を真空乾燥機にて除去した後、乾固物を重クロロフォルムに溶解させて行った。得られたNMRスペクトルから、メチルメタクリレート中のメチル基部位、ヒドロキシエチルアクリレート中のヒドロキシ基部位、およびメタクリル酸のカルボキシ基部位に帰属される化学シフトδ(ppm)のピークを同定した。得られた各ピークの積分強度を求め、各基の部位の水素数と積分強度から、アクリルポリオールに導入された共重合成分の組成比率(mol%)を確認した。
上記NMR測定で求めた共重合成分の組成比率と、前記したFoxの式から各アクリルポリオールのTgを求めた。
合成したアクリルポリオール(1)〜(10)を、固形分濃度が12質量%となるように、イソプロパノール30質量%と水70質量%の混合溶媒(25℃)中に投入した。次いで、系内の撹拌操作を10分間行い、アクリルポリオール(1)〜(10)が溶解しているかを、下記の基準にてアクリルポリオールの溶解性を目視で判断した。表1に評価結果を示した。
○:無色透明で溶液に変化は見られない。
△:溶液がやや微濁を呈する。
×:溶液が白濁しているかアクリルポリオールのゲル化・沈降等が見られる。
また、ハードコート層の塗布液(固形分濃度:12質量%)についても、上記基準で溶解性を判断し、表3,表4に評価結果を示した。
アクリルポリオールの造膜性を評価するため、合成したアクリルポリオール(1)〜(10)を固形分濃度が12質量%となるように、イソプロパノール30質量%と水70質量%の混合溶媒(25℃)中に投入して、アクリルポリオール単独の溶解液を調製した。その後、ポリエステルフィルム(A4100、東洋紡社製)の非易接着面にメイヤーバー#5で塗布した。次いで、塗布層(厚み6.5μm)を形成したフィルムサンプルを、温度60℃に設定した熱風循環オーブン中に30秒間静置して、プレ乾燥を行った。その後、フィルムサンプルをオーブンから取り出し、取り出したフィルム表面を目視にて観察し、下記の基準でランク分けしてアクリルポリオールの造膜性の評価を行った。結果を表1に示した。
○:塗膜に白化が見られない。
△:塗膜に僅かな白化が見られる。
×:塗膜が全体的に白化している。
アクリルポリオール自体のタックフリー性を評価するため、合成したアクリルポリオール(1)〜(10)を固形分濃度が12質量%となるように、イソプロパノール30質量%と水70質量%の混合溶媒(25℃)中に投入して、アクリルポリオール単独の溶解液を調製した。ポリエステルフィルム(A4100、東洋紡社製)の非易接着面に溶解液をメイヤーバー#5で塗布した。次いで、塗布層(厚み6.5μm)を形成したフィルムサンプルを、60℃に設定した熱風循環オーブン中に30秒間静置した後、フィルムサンプルをオーブンから取り出し、塗布層の表面を指で触診した。指触により得られた塗膜のベトツキ感を、下記の基準でランク分けしてアクリルポリオール自体のタックフリー性の評価を行った。結果を表1に示した。
○:ベトツキ感が全くない。
△:僅かにベトツキ感がある(触診時に指先に塗膜成分が付着しない)。
×:ベトツキ感が多分にある(触診時に指先に塗膜成分が付着する)。
ハードコート層用の塗布液(固形分濃度:12質量%)を調製後、溶媒蒸発を防げるサンプル瓶に保存した。その後、レオメーター(MCR−302、Anton Paar製)とコーンプレート(プレート径:50mm、角度:1°、Anton Paar製)を用いて、せん断速度1000s-1の条件下で塗布液のせん断粘度を測定した。測定は調液直後から48時間後まで一定時間毎に行い、下記式に基づいてせん断粘度の上昇率を算出した。なお、ηdは経時における剪断粘度で、η0は調液直後の剪断粘度である。せん断粘度の上昇率が20%以上となった時点を塗布液のポットライフとみなし、調液から48時間を経ても上昇率が20%未満の場合は、ポットライフは48時間とした。
剪断粘度の上昇率(%)=100×ηd/η0
アクリルポリオール自体の延伸適性を評価するため、合成したアクリルポリオール(1)〜(10)を、固形分濃度が12質量%となるように、イソプロパノール30質量%と水70質量%の混合溶媒(25℃)中に投入して、アクリルポリオール単体の溶解液を調製した。縦延伸のみを行ったポリエステルフィルムの表面に、メイヤーバー#5で溶解液を塗布した。次いで、塗布層(厚み6.5μm)を形成したフィルムサンプルを、温度60℃に設定した熱風循環オーブン中に30秒間静置してプレ乾燥を行った。その後、フィルムサンプルをオーブンから取り出し、サンプルを手廻し延伸装置(東洋紡エンジニアリング社製)にセットして、100℃の熱風循環オーブン中に入れ、ゆっくりと延伸操作を行った。延伸前の長さの4倍の長さになるまで延伸操作を行い、延伸装置を熱風循環オーブンから取り出した。その後、延伸後の塗膜を光学顕微鏡(倍率:200倍)にて観察し、下記の基準に従って、延伸によるクラッキングの有無を判断した。結果を表1に示した。また、ハードコート層用塗布液(固形分濃度:12質量%)についても、同様にして延伸適性を評価し、結果を表3、表4に示した。
○:クラックが全く見られない。
△:クラックがやや見られる(1本〜4本)。
×:5本以上のクラック、もしくは全面にクラックが見られる。
ハードコートポリエステルフィルムを10mm×20mmに切断した後、サンプル片をスライドガラス上に瞬間接着剤で貼り付け、このサンプル片の表面について、ダイナミック超微小硬度計(DUH−211S、島津製作所社製)を用いて、押し込み深さ設定負荷−除荷試験を行った。この測定から、下記式を用いてマルテンス硬さ(HM115)を求めた(n=3の平均値)。
HM115=1000×F/(26.43×h2)
(F:負荷、h2:押し込み深さ)
測定条件
(1)使用圧子:ダイヤモンド製正三角錐圧子(稜間角度:115゜)
(2)測定モード:押し込み深さ設定 負荷−除荷試験
(3)押し込み深さ:0.05μm
(4)測定雰囲気:25±1℃、65±5%RH
(5)測定n数:3
ハードコートポリエステルフィルムの表面に、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ハードコート層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をつける。次いで、セロハンテープ(登録商標;ニチバン社製;405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に密着させた。その後、垂直にセロハンテープをハードコート層から引き剥がし、基材フィルムから剥がれたハードコート層のマス目の数を目視で数え、下記の式から密着性を求めた。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数え、下記の基準でランク分けをした。
○:剥がれたマス目が0個
△:剥がれたマス目が1〜5個
×:剥がれたマス目が6個以上
JIS K 5600−5−4に準拠し、鉛筆引っかき試験機を用いて鉛筆硬度を測定した。試料とするハードコートポリエステルフィルム上に、鉛筆を45°の角度で750gfの荷重を掛けた状態で10mm程度引っかき、傷の付き具合を確認した。測定は5回行い、5回とも傷がなかったときの鉛筆の硬さを、鉛筆硬度とした。
ハードコートポリエステルフィルムを10cm角に切り取って平滑な面に置き、4隅の浮き上がり高さの平均値をカールの高さとして、下記の基準でランク分けをした。
○:4隅のカール平均高さ3mm未満
△:4隅のカール平均高さ3〜5mm
×:4隅のカール平均高さ5mm超
[アクリルポリオール(1)の合成]
撹拌機、還流式冷却器、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート(MMA)38質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)100質量部、メタクリル酸(MAA)11質量部およびイソプロピルアルコール(IPA)349質量部を仕込み、撹拌を行いながら80℃までフラスコ内を昇温した。フラスコ内を80℃に維持したまま3時間の撹拌を行い、その後、2,2−アゾビス−2―メチル−N−2−ヒドロキシエチルプロピオンアミド0.5質量部をフラスコに添加した。フラスコ内を120℃に昇温しながら窒素置換を行った後、120℃で混合物を2時間撹拌した。
次いで、120℃で1.5kPaの減圧操作を行い、未反応の原材料と溶媒を除去し、アクリルポリオールを得た。フラスコ内を大気圧に戻して室温まで冷却し、IPA水溶液(水含量50質量%)598質量部を添加混合した。その後、撹拌しながら滴下ロートを用いて、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を加え、溶液のpHが5.5〜7.5の範囲になるまでアクリルポリオールの中和処理を行い、固形分濃度が20質量%のアクリルポリオール(1)を得た。アクリルポリオール(1)のNMR測定による組成比率、溶解性、造膜性、タックフリー性、延伸適性を表1に併記した。
[アクリルポリオール(2)〜(10)の合成]
表1に示したように、MMA、HEMA、MAA、仕込み時IPA、希釈時IPA水溶液の量を変更した以外は合成例1と同様にして、固形分濃度が20質量%のアクリルポリオール(2)〜(10)を得た。なお、アクリルポリオール(10)は、MMAに代えて、2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)を用いた。アクリルポリオール(2)〜(10)のNMR測定による組成比率、溶解性、造膜性、タックフリー性、延伸適性を表1に併記した。なお、組成比率は、MMAまたはEHMAをl(単位)、HEMAをm(単位)、MAAをn(単位)として表した。
IPA水溶液(水含量70質量%)に、固形分濃度が12質量%となるように表2に示した材料を添加し、撹拌して、塗布液(1)〜(26)を調製した。なお、「エポクロス」、「ケミタイト」は日本触媒社の登録商標であり、「バーノック」はDIC社の登録商標である。
[フィルムの製膜と塗布液の塗工]
フィルム原料ポリマーとして、固有粘度が0.62dl/gで、かつ粒子を実質上含有していないポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂ペレットを、133Paの減圧下、135℃で6時間乾燥した。その後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、表面温度20℃に保った回転冷却金属ロール上で急冷密着固化させ、未延伸PETシートを得た。
この未延伸PETシートを加熱されたロール群および赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。
表3に示したように、乾燥後の塗布量や、塗膜厚み、塗布液の種類を変えた以外は、実験No.1と同様にしてハードコートポリエステルフィルムを得た。各塗布液の特性およびフィルムの特性を表3に示した。
表4に示したように、乾燥後の塗布量や、塗膜厚み、塗布液の種類を変えた以外は、実験No.1と同様にしてハードコートポリエステルフィルムを得た。各塗布液の特性およびフィルムの特性を表4に示した。
Claims (5)
- 少なくとも片面にハードコート層を有するハードコートポリエステルフィルムであって、ハードコート層が水溶性アクリルポリオールと水溶性アミノ樹脂との反応生成物を含み、ハードコート層のマルテンス硬さが280〜600N/mm2であることを特徴とするハードコートポリエステルフィルム。
- 上記水溶性アクリルポリオールが、全構成ユニット100モル%中、ヒドロキシ基を有する構成ユニットを40〜80モル%有する請求項1に記載のハードコートポリエステルフィルム。
- 上記水溶性アクリルポリオールが、カルボキシ基を有している請求項1または2に記載のハードコートポリエステルフィルム。
- 上記水溶性アクリルポリオールと水溶性アミノ樹脂との反応生成物は、水溶性アクリルポリオール100質量部と水溶性アミノ樹脂10〜70質量部の反応生成物である請求項1〜3のいずれかに記載のハードコートポリエステルフィルム。
- 上記水溶性アミノ樹脂がアルキル化メラミン樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載のハードコートポリエステルフィルム。
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