JP2017044482A - 蛍光色素内包樹脂粒子溶液の選択方法および濃度調整方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、表面修飾済み蛍光色素内包樹脂粒子溶液を染色液として用いる際に、従来品と比べて染色後の輝点数のばらつきが少ない蛍光色素内包樹脂粒子溶液を生産するための方法を提供する。
【解決手段】(第1親和性分子を結合させた、一定量の溶液中に含まれる蛍光色素内包樹脂粒子に内包されている数と同数の蛍光色素単体での信号値)×(蛍光色素内包樹脂粒子一つ当たりに結合している表面親和性分子数)×{(蛍光色素内包樹脂粒子の発光強度)/(蛍光色素内包樹脂粒子に内包された色素単体での発光強度)}の値が0.5以上、1.2以下であるものを選択する工程、および当該選択工程の後、蛍光色素内包樹脂粒子溶液に含まれる蛍光色素内包樹脂粒子の表面積の総和(T)に対する信号値(S)の比の値(S/T)が所定の値となるように希釈し、蛍光色素内包樹脂粒子溶液の濃度を調整する工程を含む、蛍光色素内包樹脂粒子溶液の生産方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、免疫染色等に用いられる蛍光色素内包樹脂粒子溶液の選択方法および濃度調整方法に関する。
近年の抗体医薬を中心とした分子標的薬治療の広がりに伴い、分子標的薬をより効率的に使用するための正確な診断法への必要性が高まっている。従来から組織染色方法として、色素を用いるヘマトキシリン−エオジン〔HE〕染色、酵素を用いたDAB染色法が広くおこなわれてきたが、その染色濃度は温度、時間などの環境条件により大きく左右され、正確な定量測定は困難であるとされている。
そこで、検出目的の生体分子と結合可能な生体物質プローブを標識するための標識試薬として色素に代わり、蛍光色素が用いられるようになってきた。しかし、通常の蛍光色素を用いた場合では蛍光褪色による定量性低下の問題が生じることがある。そのため、酵素による蛍光・発光の増感などが行われているが、酵素の組織切片への非特異吸着などによる非特異の蛍光が問題となっている。そのような中で蛍光体を集積させたナノ粒子(蛍光色素内包樹脂粒子)は蛍光増感手段の一つの選択肢となっており、これを用いて染色を行うことで、従来の蛍光色素を用いた染色では得られない高い精度および定量性のある評価が可能となる。
例えば、特許文献1(国際公開WO2012/029342号パンフレット)には、蛍光色素内包樹脂粒子に生体物質プローブが結合されたものを染色試薬として用いる組織染色方法が開示されており、その実施例では、リンカー(ポリエチレングリコール鎖)を介して共有結合によって蛍光色素内包樹脂粒子が結合された抗体を用いて、検出対象を免疫染色する実施形態が開示されている。また、生体物質プローブと蛍光色素内包樹脂粒子とを、共有結合により直接結合させるのではなく、特異的に結合し合う親和性分子、たとえばストレプトアビジン(SA)とビオチンを介して間接的に結合させる手法も知られている。例えば、特許文献2(国際公開WO2014/203614号パンフレット)では、実施例において、1次抗体、ビオチンを結合させた2次抗体、およびストレプトアビジンを結合させた蛍光色素内包樹脂粒子を用いて、検出対象を免疫染色する実施形態が開示されている。
ここで、特許文献1に記載されているような従来技術では、表面を修飾した蛍光色素内包樹脂粒子溶液を染色液として免疫染色に用いる際、濃度、もしくは輝度を一定として染色液を調製していた。しかし、ロット(Lot)ごとに粒子の濃度、輝度、粒子の表面を修飾するものとの結合量が違うというこの方法では、ロット違いの表面修飾済み蛍光色素内包樹脂粒子を、粒子の輝度を一定にして染色を行うと±20%程度の輝点数ばらつきが発生し、濃度を一定としても同様に±15%程度のばらつきがあるという問題があった。また、粒子の表面状態を観察しても染色結果を予想することができず、表面修飾後の粒子の性能評価をおこなうためにはロット毎にそれぞれ病理染色を行う必要があった。
なお、特許文献3(特開2011−141232号公報)に記載されているような、ビオチン化プレートによる蛍光色素のビオチンに対するアビジンの親和性量測定は、蛍光色素一分子に対して、1つのアビジンが結合した蛍光色素に対する評価であって、本発明のように蛍光色素を集積させて、さらに表面に親和性分子を複数結合させた蛍光色素内包樹脂粒子の評価に使用した例はない。
国際公開WO2012/029342号パンフレット 国際公開WO2014/203614号パンフレット 特開2011−141232号公報
本発明は、上述したような課題を解決するために、ストレプトアビジン(SA)等の親和性分子による表面修飾済みの蛍光色素内包樹脂粒子を用いて染色液を調製する際に、従来品と比べて染色後の輝点数ばらつきが少ない蛍光色素内包樹脂粒子溶液の調整方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ビオチン化プレートとSA表面修飾済み蛍光色素内包樹脂粒子を用いて反応させることで発光する蛍光を信号値とした場合、複数の異なったロットのSA表面修飾済み蛍光色素内包樹脂粒子溶液の中から、所定の範囲に収まる信号値が得られるものを選択し、そのようなSA表面修飾済み蛍光色素内包樹脂粒子溶液を染色液として用いると、染色のばらつきが抑えられること、その理由として、上記のような所定の信号値を発するSA表面修飾済み蛍光色素内包樹脂粒子は、それぞれの蛍光色素内包樹脂粒子の表面積あたりにおけるストレプトアビジン結合量が同じになっていると考えられるため、この選択方法が表面修飾済み蛍光色素内包樹脂粒子溶液の調整法として非常に有力であることを見出した。
本発明は、上記課題を解決することのできる、例えば下記のような構成を有する、蛍光色素内包樹脂粒子溶液の選択方法およびその選択方法を利用した蛍光色素内包樹脂粒子溶液の濃度の調整方法、ならびにこれらの方法によって得られた蛍光色素内包樹脂粒子溶液を提供する。
[項1]
表面に第1親和性分子を結合させた蛍光色素内包樹脂粒子を一定濃度で含む一定量の溶液を、該第1親和性分子と特異的に結合可能な第2親和性分子を一定密度で固定化したプレートと反応させた際に、計測される信号値(S)が下記式を満たすものを選択する工程を含む、蛍光色素内包樹脂粒子溶液の生産方法。
0.5×A×B×(C/D) ≦ S ≦ 1.2×A×B×(C/D)
A:第1親和性分子を結合させた、前記一定濃度の一定量の溶液中に含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子に内包されている数と同数の蛍光色素単体を、前記プレートと反応させた際に計測される信号値
B:前記一定濃度の一定量の溶液に含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子の全表面に結合している第1親和性分子の全数を蛍光色素内包樹脂粒子数で割った、蛍光色素内包樹脂粒子1つあたりに結合される第1親和性分子の数
C:前記蛍光色素内包樹脂粒子1粒子あたりの発光強度
D:前記蛍光色素内包樹脂粒子1粒子に内包されている数の蛍光色素単体の発光強度
[項2]
表面に第1親和性分子を結合させた蛍光色素内包樹脂粒子を一定濃度で含む一定量の溶液を、該第1親和性分子と特異的に結合可能な第2親和性分子を一定密度で固定化したプレートと反応させた際に、計測される信号値(S)が下記式を満たす蛍光色素内包樹脂粒子溶液について、当該蛍光色素内包樹脂粒子溶液に含まれる蛍光色素内包樹脂粒子の表面積の総和(T)に対する、前記第2親和性分子を一定密度で固定化したプレートに前記蛍光色素内包樹脂粒子溶液を散布した際に計測される信号値(S)の比の値(S/T)が所定の値となるように希釈し、前記蛍光色素内包樹脂粒子溶液の濃度を調整する工程を含む、蛍光色素内包樹脂粒子溶液の生産方法。
0.5×A×B×(C/D) ≦ S ≦ 1.2×A×B×(C/D)
A:第1親和性分子を結合させた、前記一定濃度の一定量の溶液中に含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子に内包されている数と同数の蛍光色素単体を、前記プレートと反応させた際に計測される信号値
B:前記一定濃度の一定量の溶液に含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子の全表面に結合している第1親和性分子の全数を蛍光色素内包樹脂粒子数で割った、蛍光色素内包樹脂粒子1つあたりに結合される第1親和性分子の数
C:前記蛍光色素内包樹脂粒子1粒子あたりの発光強度
D:前記蛍光色素内包樹脂粒子1粒子に内包されている数の蛍光色素単体の発光強度
[項3]
前記蛍光色素内包樹脂粒子を構成する母体である樹脂がメラミン樹脂およびスチレン樹脂からなる群から選択される樹脂である、項1または2に記載の生産方法。
[項4]
前記蛍光色素内包樹脂粒子を構成する蛍光色素が有機色素である、項1〜3のいずれか一項に記載の生産方法。
[項5]
前記蛍光色素内包樹脂粒子を構成する蛍光色素がペリレンジイミドおよびフルオレセインイソチアネートからなる群から選択される、項1〜4のいずれか一項に記載の生産方法。
[項6]
前記蛍光色素内包樹脂粒子に結合している第1親和性分子がビオチン、アビジン、ストレプトアビジンおよびニュートラアビジン、抗ジニトロフェノール抗体および抗ジゴキシゲニン抗体からなる群から選択される、項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
[項7]
前記第1親和性分子が、高分子由来のスペーサーを介して前記蛍光色素内包樹脂粒子に結合している、項1〜6のいずれか一項に記載の生産方法。
[項8]
前記スペーサーがポリエチレングリコール(PEG)である、項7に記載の生産方法。
本発明の生産方法により、十分な染色性能を持った蛍光色素内包樹脂粒子溶液を選択し、さらに所定の方法で得られた信号値に基づいて蛍光色素内包樹脂粒子の濃度を調整することにより、一定の染色性能を持つ蛍光内包樹脂粒子溶液を得ることができる。例えばビオチン化プレートを用いて、SAで修飾された表面修飾後の蛍光色素内包樹脂粒子を用いた場合、プレートから得られた信号値とその粒子を用いて実際に免疫染色を行なった輝度の強さとの相関関係が高いことから、実際に染色をおこなわずとも粒子の染色性能を判断することがでる。さらに、蛍光色素内包樹脂粒子の表面積の総和(T)に対する、ビオチン化プレートに蛍光色素内包樹脂粒子溶液を散布した際に計測される信号値(S)の比の値(S/T)が所定の値となるように溶液を希釈することによって、蛍光色素内包樹脂粒子溶液の濃度を同等の染色性能を持つように調整することが可能となる。従って、異なったロットの蛍光色素内包樹脂粒子溶液を用いて病理染色を行なった場合でも、ばらつきのない染色結果を得ることが可能となる。
左図は実施例1によって選択されたSA結合蛍光色素内包樹脂粒子溶液を染色液として用いた場合、右図は比較例1によって選択されたSA結合蛍光色素溶液を染色液として用いた場合、それぞれについて免疫染色画像である。
−蛍光色素内包樹脂粒子溶液の生産方法−
本発明の蛍光色素内包樹脂粒子溶液の生産方法は、以下に述べる所定の「選択工程」および/または「濃度調整工程」を含む。「濃度調整工程」に用いられる所定の蛍光色素内包樹脂粒子溶液は、典型的には「選択工程」において選択されたものであり、したがって本発明の蛍光色素内包樹脂粒子溶液の生産方法は「選択工程」に続いて「濃度調整工程」を含む実施形態であってもよい。一方で、「濃度調整工程」に用いられる所定の蛍光色素内包樹脂粒子溶液は、本発明における「選択工程」とは別の手段によって選択されたもの、または「濃度調整工程」を含む蛍光色素内包樹脂粒子溶液の生産方法の実施者とは異なる実施者による(つまり「濃度調整工程」とは不連続な)「選択工程」によって選択されたものであってもよい。
また、本発明の蛍光色素内包樹脂粒子溶液の生産方法に用いられる蛍光色素内包樹脂粒子は、当該生産方法の一部として含まれる蛍光色素内包樹脂粒子の作製工程によって得られたものであってもよいし、当該生産方法の実施者とは異なる実施者による(つまり「濃度調整工程」とは不連続な)作製工程によって得られたものであってもよい。表面修飾蛍光色素内包樹脂粒子の作製工程は、典型的には、蛍光色素内包樹脂粒子の合成工程、およびその表面修飾工程によって構成される。
以下、表面に第1親和性分子を結合させた蛍光色素内包樹脂粒子(本明細書において「表面修飾蛍光色素内包樹脂粒子」と称することがある。)に関する合成工程および表面修飾工程、ならびに表面修飾蛍光色素内包樹脂粒子の溶液に関する濃度調整工程および選択工程の順で、本発明の蛍光色素内包樹脂粒子溶液の生産方法に関係する工程を説明する。
[蛍光色素内包樹脂粒子の合成工程]
(蛍光色素内包樹脂粒子)
蛍光色素内包樹脂粒子とは、詳しくは、樹脂でできた粒子(母体)中に、比較的多量の蛍光色素が内包(集積化)された構造を有するナノサイズの粒子である。蛍光色素は、好ましくは樹脂の分子構造(たとえばメラミン樹脂のような熱硬化性樹脂が有する三次元的な網目構造)によって粒子内に閉じ込められている。あるいは、蛍光色素が有する官能基ないし部位と樹脂が有する官能基ないし部位との間に静電的相互作用(イオン結合)が働いているか、またはそれらの間で共有結合が形成されていることが好ましい。このようにして蛍光色素が強固に樹脂粒子に固定化されている蛍光色素内包樹脂粒子は、濃度消光を起こしにくく、また蛍光観察時に一定時間蛍光を当て続けても褪色しにくいため、ノイズであるエオジンの蛍光や細胞自家蛍光に対して著しく高い輝度を有する。その上、組織染色の透徹工程で用いられる有機溶媒(キシレン)によって蛍光色素が粒子外に溶出してしまうことも抑制されるため、蛍光標識体として優れている。
蛍光色素内包樹脂粒子を形成する樹脂としては、例えば、スチレン樹脂、アクリロニトリル樹脂、フラン樹脂、または、これに類する樹脂、キシレン樹脂、ポリ乳酸、ポリグリシジルメタクリレート、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂、多糖類等、安定的に蛍光色素を内包できるものが挙げられる。蛍光色素をこのような粒子中に内包させることにより、蛍光色素単独よりも励起光の照射による劣化の起こりにくい(耐光性の強い)蛍光色素内包樹脂粒子を作製することができる。特に、スチレン樹脂およびメラミン樹脂は、耐光性の観点から蛍光色素内包樹脂粒子の母体として好ましい。
表面修飾蛍光色素内包樹脂粒子の作製に用いられる蛍光色素内包樹脂粒子の合成工程は、一般的な蛍光色素内包樹脂粒子と同様の、公知の重合方法を利用して行うことができる。
例えば、母体として熱硬化性樹脂を用いる場合、蛍光色素内包樹脂粒子は基本的に乳化重合法に従って、蛍光色素を用いることにより合成することができ、界面活性剤および重合反応促進剤を用いる重合方法により合成することが好ましい。母体として熱可塑性樹脂を用いる場合、蛍光色素内包樹脂粒子は、基本的にラジカル重合、イオン重合(アニオン重合、他)などに従って、蛍光色素を用いることにより合成することができ、例えばソープフリー乳化重合法に従った重合工程により合成することが好ましい。
このような合成方法により得られる内包型の蛍光標識用樹脂粒子において、大部分の蛍光色素は、望ましくは実質的に全ての蛍光色素は樹脂粒子に内包された状態で固定化されるが、一部の蛍光色素が樹脂粒子の表面に結合ないし付着した状態で固定化されることが排除されるものではない。また、蛍光色素が内包された状態において、どのような化学的または物理的な作用で蛍光色素が樹脂粒子に固定化されているかは限定されるものではない。上で例示した重合方法に従えば、合成工程に先立って、樹脂原料と蛍光色素とをあらかじめ共有結合させたり、樹脂原料に積極的に荷電した置換基を導入したりするための誘導体化工程を設けずとも、発光強度や耐光性に優れた蛍光色素内包樹脂粒子が得られるが、所望によりそのような工程を併用することも排除されるものではない。
(蛍光色素)
本明細書において「蛍光色素」とは、外部からのX線、紫外線または可視光線の照射を受けて励起し、励起状態から基底状態に到る過程において光を発光する物質一般を指す。したがって、本発明にいう「蛍光色素」は、励起状態から基底状態に戻るときの遷移態様の如何を問うものでなく、励起一重項からの失活に伴う発光である狭義の蛍光を発する物質であってもよいし、三重項からの失活に伴う発光である燐光を発する物質であってもよい。
また、本発明にいう「蛍光色素」は、励起光を遮断してからの発光寿命によって限定されるものでもない。したがって、硫化亜鉛やアルミン酸ストロンチウム等の蓄光物質として知られている物質であってもよい。本発明で用いる蛍光色素内包樹脂粒子に内包される蛍光色素としては有機蛍光色素または無機蛍光色素のどちらを選択してもよいが、粒径が小さく、母体である樹脂に効率よく内包させることが可能なことから、有機蛍光色素を用いるほうがより好ましい。
(有機蛍光色素)
蛍光色素としての使用可能な有機蛍光色素のとしては、ペリレン系色素分子、フルオレセイン系色素分子、ローダミン系色素分子、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、Cy(登録商標、GEヘルスケア社製)系色素分子、クマリン系色素分子、NBD(登録商標)系色素分子、エオジン系色素分子およびピレン系色素分子等を挙げることができる。
ペリレン系色素分子の具体例としては、ペリレンジイミドが挙げられ、フルオレセイン系色素分子の具体例としては、フルオレセインイソチアネート、5−カルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−フルオレセイン、5,6−ジカルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−2’,4,4’,5’,7,7’−ヘキサクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−2’,4,7,7’−テトラクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン、ナフトフルオレセイン等が挙げられる。
ローダミン系色素分子の具体例としては、5−カルボキシ−ローダミン、6−カルボキシ−ローダミン、5,6−ジカルボキシ−ローダミン、ローダミン 6G、テトラメチルローダミン、X−ローダミン等が挙げられる。
Alexa Fluor系色素分子の具体例としては、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 500、Alexa Fluor 514、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750等が挙げられる。
BODIPY系色素分子の具体例としては、BODIPY FL、BODIPY TMR、BODIPY 493/503、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665等が挙げられる。
Cy系色素分子の具体例としては、Cy5、Cy5.5、Cy7等が挙げられる。
クマリン系色素分子の具体例としては、メトキシクマリン、エオジン系色素分子の具体例としてはエオジン、NBD(登録商標)系色素分子の具体例としては、NBD、ピレン系色素分子の具体例としてはピレンが挙げられる。
これらの有機蛍光色素は、いずれかの種類を単独で用いても、複数種を併用してもよい。また、蛍光を発することができる範囲で、特に蛍光色素内包樹脂粒子の母体となる化合物との反応性を考慮して、誘導体化して用いてもよい。また特にペリレンジイミドおよびフルオレセインイソチアネートが好適に用いられる。
(無機蛍光色素)
蛍光色素としての使用可能な無機蛍光色素の例としては、量子ドットを挙げることができる。量子ドットとしては、II−VI族化合物、III−V族化合物、又はIV族元素を成分として含有する量子ドット(それぞれ、「II−VI族量子ドット」、「III−V族量子ドット」、「IV族量子ドット」ともいう。)のいずれかを用いることができる。具体的には、国際公開WO2012/133047号公報に例示されたCdSe等の粒子ドットを挙げることができる。これらの無機蛍光色素は、いずれかの種類を単独で用いても、複数種を併用してもよい。
蛍光色素内包樹脂粒子の平均粒径は特に限定されないが、通常10〜500nmであり、好ましくは30〜200nmである。また、粒径のばらつきを示す変動係数も特に限定されないが、通常は20%以下であり、好ましくは5〜15%である。
製造した蛍光色素内包樹脂粒子の平均粒子径の測定は、当該分野で知られた方法により行うことができ,例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電子顕微鏡写真を撮影し、蛍光色素内包樹脂粒子の断面積を計測し、その計測値を相当する円の面積としたときの直径(面積円相当径)として測定することができる。蛍光色素内包樹脂粒子の集団の粒子サイズの平均(平均粒径)および変動係数は、十分な数(たとえば1000個)の蛍光色素内包樹脂粒子について上記のようにして粒子サイズ(粒径)を測定した後、平均粒径はその算術平均として算出され、変動係数は式:100×粒径の標準偏差/平均粒径、により算出される。
[蛍光色素内包樹脂粒子の修飾工程]
蛍光色素内包樹脂粒子から表面修飾蛍光色素内包樹脂粒子を作製するための修飾工程は、一般的な表面修飾蛍光色素内包樹脂粒子と同様の、公知の修飾方法を利用して行うことができる。
(第1親和性分子)
本発明における第1親和性分子は、蛍光色素内包樹脂粒子の表面を修飾する分子であり、蛍光色素内包樹脂粒子を修飾でき、かつ後述する第2親和性分子に結合する分子であればとくに限定されるものではない。
第1親和性分子の第1グループとしては、ハプテン親和性分子、例えば、ビオチン、アビジンおよびその改変体(ストレプトアビジン、ニュートラアビジン等)、ならびに抗ハプテン抗体(抗ジニトロフェノール抗体、抗ジゴキシゲニン抗体等)が挙げられる。このような第1グループの第1親和性分子は、免疫染色において、ハプテンを結合させた1次抗体または2次抗体と、ハプテン親和性分子を結合させた蛍光色素内包樹脂粒子とを含む免疫複合体を形成させる実施形態において用いられる。あるいは、FISHにおいて、ハプテンを結合させた核酸分子(プローブ)と、ハプテン親和性分子を結合させた蛍光色素内包樹脂粒子とを含む複合体を形成させる実施形態において用いられる。このような汎用性および染色効率の高さから、本発明の第1親和性分子としては上記第1グループから選ばれるものが好ましい。
第1親和性分子の第2グループとしては、抗ハプテン抗体を除く抗原親和性分子のうち、病理診断等の免疫染色の検出目的とする生体分子を抗原として特異的に認識する抗体、いわゆる1次抗体が挙げられる。このような第2グループの第1親和性分子は、免疫染色において、抗原と、1次抗体を結合させた蛍光色素内包樹脂粒子とを含む免疫複合体を形成させる実施形態において用いられる。この際の1次抗体は、検出目的とする生体分子に対応したものを用いることができ、例えばHER2を検出目的とする免疫染色を行なう場合には、1次抗体として抗HER2抗体、好ましくは抗HER2モノクローナル抗体を用いればよい。
第1親和性分子の第3グループとしては、抗ハプテン抗体を除く抗原親和性分子のうち、上述した1次抗体を抗原として特異的に認識する抗体、いわゆる2次抗体が挙げられる。このような第3グループの第1親和性分子は、免疫染色において、抗原と、1次抗体と、2次抗体を結合させた蛍光色素内包樹脂粒子とを含む免疫複合体を形成させる実施形態において用いられる。この際の2次抗体は、1次抗体(IgG)を抗原として認識するものであればよく、1次抗体を産生した動物種に対応して、抗マウス、ラビット、牛、ヤギ、羊、犬、チキンIgG抗体を用いることができる。例えば、1次抗体として抗HER2ウサギモノクローナル抗体を用いる場合には、2次抗体として抗ウサギIgG抗体を用いればよい。
蛍光色素内包樹脂粒子と第1親和性分子との結合は、直接的な結合であってもよいし、他の分子を介在させる間接的な結合であってもよい。一般的な作製方法を用いて、蛍光色素内包樹脂粒子が結合した第1親和性分子を作製することができる。
蛍光色素内包樹脂粒子に対して第1親和性分子を直接的に結合させる態様としては、特に限定されず、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着及び化学吸着等が挙げられ、公知の方法で行うことができる。結合の安定性からは、樹脂が有する(本来的に有するものであっても、所定の方法で樹脂の合成後に導入されたものであってもよい)官能基と第1親和性分子が有する官能基とを反応させることによって生じる共有結合のように、結合力の強い結合が好ましい。
蛍光色素内包樹脂粒子に対して第1親和性分子を間接的に結合する場合の態様としては、両末端に官能基を有する高分子を用いて、それらの官能基を樹脂が有する官能基と第1親和性分子が有する官能基のそれぞれと反応させることにより、蛍光色素内包樹脂粒子と第1親和性分子とをその高分子由来のスペーサー(リンカー)を介して結合させる態様が挙げられる。特にこのような実施形態において、蛍光色素内包樹脂粒子表面の単位面積当たりに結合する第1親和性分子の量が変動しやすいため、本発明を適用することの有効性が高い。
例えば、アミンとカルボン酸の反応によるアミド化、マレイミドとチオールの反応によるスルフィド化、アルデヒドとアミンの反応によるイミン化、エポキシとアミンの反応によるアミノ化等を利用して、第1親和性分子と(必要に応じてスペーサーと)蛍光色素内包樹脂粒子とを共有結合させることができる。第1親和性分子、必要に応じて用いられるスペーサーの両端、蛍光色素内包樹脂粒子の表面のそれぞれに、上述した反応に関与する官能基を導入しておき、所定の条件下で反応させることで、共有結合によって連結することができる。
蛍光色素内包樹脂粒子に対して第1親和性分子を間接的に結合させるスペーサーとして使用される(高)分子は特に限定されるものではなく、スペーサーとして一般的に用いられている、適切な長さを有する(高)分子の中から選択することができる。疎水性高分子のスペーサーの例としては、ポリアミド、飽和炭化水素、疎水性ポリアミノ酸、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル等が挙げられ、親水性高分子のスペーサーの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアスパルトアミド、合成ポリアミノ酸等が挙げられる。またスペーサーは1種類の物質から形成されていてもよいし、2種以上の物質から形成されていてもよい。
これらのスペーサーのなかでは、非特異的吸着を抑制できることなどの観点から親水性高分子が好ましく、特にポリエチレングリコール(PEG)が、オキシエチレン単位の数により鎖長を設定しやすい観点から好ましい。PEGを用いる場合は、例えばサーモサイエンティフィック社等の市販のものを購入したり、化学構造の繰り返しの単位の数を設定して、試薬メーカー等に製造を依頼したりすることで任意の長さのものを入手することができる。
スペーサーの長さは、結合する蛍光色素内包樹脂粒子の粒径に応じて、適切な範囲で調整すればよい。単一の長さをもつスペーサーを用いてもよいし、それぞれ異なった2種類以上の長さをもつスペーサーを併用してもよい。単一のスペーサーを用いる場合、スペーサーの長さは1〜100nmが好ましい。2種類以上の長さを有するスペーサーを用いる場合、そのうちの少なくとも1種類のスペーサーの長さが1〜100nmであり、他のスペーサーの長さが0.1〜10nmであることが好ましい。
(第2親和性分子)
本発明において、第2親和性分子は、プレートに固定化され、第1親和分子と結合した蛍光色素内包樹脂粒子と反応することで発光する蛍光を信号値として計測するために用いられる分子であり、選択される第1親和性分子に対応した、それと特異的に結合する分子であればよい。このような第2親和性分子は、免疫染色を行なう際に、検出目的とする生体分子に対して直接的または間接的に結合させることで、第1親和性分子と結合した蛍光色素内包ナノ粒子と生体分子間の結合の仲立ちとなるために用いられる。
第1親和性分子の第1グループ(ハプテン親和性分子)に対応する、第2親和性分子の第1グループは、ハプテン親和性分子と特異的に結合する分子、すなわちハプテンであり、例えば、ビオチン、ジニトロフェノール、ジゴキシゲニンなどが挙げられる。
第1親和性分子の第2グループ(1次抗体)に対応する、第2親和性分子の第2グループは、1次抗体と特異的に結合する分子であって、免疫染色の検出目的とする生体分子であってもよいし、1次抗体を抗原とする2次抗体であってもよい。ただし、1次抗体が結合した蛍光色素内包樹脂粒子は、免疫染色の際に検出目的とする生体分子に直接結合させるので、そのための結合能をなるべく正確に評価するため、検出目的とする生体分子を第2親和性分子の第2グループとすることがより適切である。
第1親和性分子の第3グループ(2次抗体)に対応する、第2親和性分子の第3グループは、2次抗体と特異的に結合する分子、すなわち2次抗体の抗原となっている1次抗体である。
第2親和性分子を固定化したプレートは、市販のものを用いてもよいし、プレートと第2親和性分子とを用いて作製してもよい。第2親和性分子としてビオチンを固定化したプレートは、ビオチン化プレート(例えばG−BIOSCIENCE社の製品)として市販されている。また、第2親和性分子として1次抗体または2次抗体を固定化したプレートは、市販のマイクロプレート(例えばマキシソープ社の製品、フルオロヌンクモジュール&プレート)を利用して、所定のプロトコールに従って、所望の抗体を含む溶液をウェルに添加して反応させ、固定化することにより作製することができる。
[蛍光色素内包樹脂粒子溶液の選択工程]
本発明における選択工程は、表面に第1親和性分子を結合させた蛍光色素内包樹脂粒子を一定濃度で含む一定量の溶液を、該第1親和性分子と特異的に結合可能な第2親和性分子を一定密度で固定化したプレートと反応させた際に、計測される信号値(S)が下記式を満たすものを選択する工程である。
0.5×A×B×(C/D) ≦ S ≦ 1.2×A×B×(C/D)
式中、Aは第1親和性分子を結合させた、前記一定量の溶液中に含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子に内包されている数と同数の蛍光色素単体を、前記プレートと反応させた際に計測される信号値を示し、
Bは前記一定濃度の一定量の溶液に含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子の全表面に結合している第1親和性分子の全数を蛍光色素内包樹脂粒子数で割った、蛍光色素内包樹脂粒子1つあたりに結合している第1親和性分子の数を示し、
Cは前記蛍光色素内包樹脂粒子1粒子あたりの発光強度を示し、
Dは前記蛍光色素内包樹脂粒子1粒子に内包されている数の蛍光色素単体の発光強度を示す。
選択工程に先だって、第1親和性分子と結合させた蛍光色素内包樹脂粒子を任意のロット数用意し、それぞれについて適当な溶媒に懸濁して所定の濃度に調整した、蛍光色素内包樹脂粒子溶液を調製しておく。この際に用いる溶媒としては、例えばPBS、BSA含有PBSおよびH2O等が挙げられ、特にプレートへのタンパク質の非特異的な吸着を抑制できるという観点から、1%程度のBSA含有PBSが好適である。
上記Aの規定に含まれている、蛍光色素の「第1親和性分子を結合させた、前記一定濃度の一定量の溶液中に含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子に内包されている数」(a)は、次のようにして計算することが可能である。すなわち、一定濃度(例えば0.01nM、すなわち6.02×109粒子/mL)の一定量の蛍光色素内包樹脂粒子溶液(蛍光色素内包樹脂粒子標準液)と、それと同じ一定濃度(例えば0.01nM、すなわち6.02×109分子/mL)の蛍光色素溶液(蛍光色素標準液)を調製し、それぞれの溶液の発光ピーク波長における蛍光強度を測定する。ここで、蛍光色素内包樹脂粒子内には蛍光色素同士が高濃度で集積しているので、濃度消光と呼ばれる現象により、蛍光色素内包樹脂粒子内が発する蛍光が弱められている可能性がある。そのため、「蛍光色素内包樹脂粒子標準液の蛍光強度」に「蛍光色素単体での量子収率/蛍光色素内包樹脂粒子の量子収率」を乗ずることにより、濃度消光の影響が補正された蛍光色素内包樹脂粒子標準液の蛍光強度を算出することができる。この「補正後の蛍光色素内包樹脂粒子標準液の蛍光強度」を「蛍光色素標準液の蛍光強度」で割れば、言い換えれば「蛍光色素内包樹脂粒子標準液の蛍光強度/蛍光色素標準液の蛍光強度」×「蛍光色素単体での量子収率/蛍光色素内包樹脂粒子の量子収率」を算出することにより、「第1親和性分子を結合させた、前記一定濃度の一定量の溶液中に含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子に内包されている数」が求まる。なお、量子収率は公知の手段で、例えば「Quantaurus−QY」(絶対PL量子収率測定装置、浜松ホトニクス株式会社)を用いて、計測することができる。
上記aの値が算出できれば、その数の蛍光色素を含有する溶液を調製し、第2親和性分子が固定化されたプレートに塗布するなどして反応させることにより、その結果発せられる蛍光強度(信号値)(A)を計測することができる。
上記Bの規定に含まれている「一定濃度の一定量の溶液に含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子の全表面に結合している第1親和性分子の全数」(b1)は、その全表面に結合している第1親和性分子の総重量を、第1親和性分子の分子量で除することにより算出することができる。ストレプトアビジンに代表される第1親和性分子がタンパク質であるのに対し、蛍光色素内包樹脂粒子の母体は樹脂であるので、BCA法等のタンパク質の定量方法に基づいて、一定量の蛍光色素内包樹脂粒子溶液中のタンパク質(その全てが蛍光色素内包樹脂粒子の表面に結合しているものとする)の濃度を測定することができる。その測定された濃度に「一定量の溶液」の体積を掛ければ、前記タンパク質の総重量を算出することができ、その総重量を前記タンパク質の分子量(例えばストレプトアビジンの分子量は52000)で除すれば、Bの規定に用いられる前記タンパク質(前記第1親和性分子)の全数を算出することができる。
また、同じく上記Bの規定に含まれている、前記一定濃度の一定量の溶液に含まれる「蛍光色素内包樹脂粒子数」(b2)は、粒子カウンター(例えばリオン社製「Liquid Particle Counter」)で計測することが可能である。前項にある第1親和性分子の全数を蛍光色素内包樹脂粒子数で除することにより、蛍光色素内包樹脂粒子一つに結合している第1親和性分子の数を計算することが可能である。
上記b1およびb2の値が算出できれば、b1/b2により、蛍光色素内包樹脂粒子1つあたりに結合している第1親和性分子の数(平均値)(B)が求まる。
上記Cの「前記蛍光色素内包樹脂粒子1粒子あたりの発光強度」は、次のようにして計算することが可能である。すなわち、粒子カウンターを利用して、一定濃度(例えば0.01nM、すなわち6.02×109粒子/mL)の一定量の蛍光色素内包樹脂粒子溶液(蛍光色素内包樹脂粒子標準液)を調製し、発光ピーク波長における蛍光強度を測定する。蛍光色素内包樹脂粒子標準液の蛍光強度を、当該標準液中に含まれる蛍光色素内包樹脂粒子の数で除することにより、蛍光色素内包樹脂粒子1粒子あたりの発光強度が求まる。
上記Dの「前記蛍光色素内包樹脂粒子1粒子に内包されている数の蛍光色素単体の発光強度」は、次のようにして計算することが可能である。すなわち、一定濃度(例えば0.01nM、すなわち6.02×109分子/mL、蛍光色素の分子量をWとすればW×10-14g/mL)の一定量の蛍光色素溶液(蛍光色素標準液)を調製し、その溶液の発光ピーク波長における蛍光強度を測定する。蛍光色素標準液の蛍光強度に、「蛍光色素内包樹脂粒子1粒子に内包されている蛍光色素の分子数(ないしその重量)/蛍光色素標準液中の蛍光色素の分子数(ないしその重量)」を乗じ、さらに、前述したような濃度消光の影響を補正するため、「蛍光色素単体での量子収率/蛍光色素内包樹脂粒子の量子収率」を乗ずることにより、蛍光色素内包樹脂粒子1粒子に内包されている数(ないし同等の重量)あたりの蛍光色素単体の蛍光強度が求まる。
なお、上記CおよびDで規定する発光強度の測定方法は特に限定されるものではなく、一般的な蛍光光度計を用いて、適切な測定条件において測定すればよい。
信号値が上記式を満たす蛍光色素内包樹脂粒子溶液、換言すれば、相対値化された信号値:S/{A×B×(C/D)}が0.5〜1.2の範囲にある蛍光色素内包樹脂粒子溶液は、染色液として十分な染色性能があると考えられる。
[蛍光色素内包樹脂粒子溶液の濃度調整工程]
上記の方法で選択された蛍光色素内包樹脂粒子溶液に含まれる蛍光色素内包樹脂粒子の表面積の総和(T)に対する、前記工程で計測された信号値(S)の比の値(S/T)が所定の値となるように適当な溶媒で希釈することで、複数のロット由来であるにも関わらず、一定の染色性能を持つ蛍光色素内包樹脂粒子溶液を得ることができる。ここで用いられる溶媒は、選択工程に先だって第1親和性分子と結合させた蛍光色素内包樹脂粒子の溶液を調製する際に用いた溶媒と同じものでよく、例えば1%程度のBSA含有PBSが特に好適である。
上記Tで規定する蛍光色素内包樹脂粒子の表面積の総和は、蛍光色素内包樹脂粒子の平均粒径を基に、粒子を球と仮定して求めた蛍光色素内包樹脂粒子一つ当たりの表面積に、上記一定量の溶液中に含まれる蛍光色素内包樹脂粒子数をかけることで算出することができる。ここで、平均粒子径の測定方法は前述した通りである。
上記により得られた蛍光色素内包樹脂粒子の染色液としての用途は、特に限定されない。ここでは発明の一実施形態として、蛍光色素内包樹脂粒子を用いて目的とする抗原(膜タンパク質等)を定量する蛍光免疫染色について説明するが、このほかにも例えば、蛍光色素内包樹脂粒子を用いて目的とする核酸やリボ核酸分子(遺伝子)を定量する、ISH(In Situ Hybridization)等に用いることができる。
−蛍光色素内包樹脂粒子溶液の用途−
本発明の生産方法により得られた蛍光色素内包樹脂粒子溶液は、一般的な蛍光色素内包樹脂粒子溶液と同様の用途を有し、例えば蛍光免疫染色またはFISHのための染色液として用いることができる。具体的には、例えば、人体(患者)から採取した組織切片についてプレパラートを作製し、特定のタンパク質または遺伝子の発現状況を反映した染色像を観察することにより、そのタンパク質または遺伝子の発現量および発現部位等に基づいて病理診断のための情報を得ることのできる、組織免疫染色またはFISHのための染色液としての用途が挙げられる。蛍光免疫染色は、組織染色に限定されるものではなく、細胞染色に適用することも可能である。検出対象とする生体分子は、それと特異的に結合する物質が存在するものであれば特に限定されるものではない。
組織免疫染色は、一般的に、標本作製工程、標本前処理工程、免疫染色工程、標本後処理工程、および観察工程を含む。以下、本明細書では免疫染色工程、標本後処理工程、および観察工程について記載するが、これらの工程に関するより詳細な実施形態や、その他の工程および蛍光免疫染色(組織免疫染色)全般に関する実施形態、さらにFISHに関する実施形態については、たとえば、国際公開WO2013/035703号パンフレット、国際公開WO2013/147081号パンフレット、国際公開WO2014/136776号パンフレット等を参照することができる。
[免疫染色工程]
免疫染色工程において、第1親和性分子が結合した蛍光色素内包樹脂粒子を用いて特定の抗原に対する蛍光免疫染色を行うための手順は、第1親和性分子として前記第1〜第3のいずれのグループの分子を用いるかに応じて、適宜調整することができる。
第1親和性分子として第1グループの分子、例えばストレプトアビジンを用いる場合の手順を例に挙げて説明する。この場合に形成すべき免疫複合体は、(i)組織切片上の抗原/第2親和性分子としてビオチンが結合した1次抗体/第1親和性分子としてストレプトアビジンが結合した蛍光色素内包樹脂粒子、(ii)組織切片上の抗原/1次抗体/第2親和性分子としてビオチンが結合した2次抗体/第1親和性分子としてストレプトアビジンが結合した蛍光色素内包樹脂粒子、などとなる。(i)の場合は、第2親和性分子が結合した1次抗体を組織切片上の抗原と反応させ、続いて第1親和性分子が結合した蛍光色素内包樹脂粒子を反応させることにより、上記複合体を形成して抗原を蛍光標識することができる。(ii)の場合は、第2親和性分子を2次抗体に結合させる場合は、まず1次抗体を組織切片上の抗原と反応させ、続いて第2親和性分子が結合した2次抗体を反応させ、さらに第1親和性分子が結合した蛍光色素内包樹脂粒子を反応させるにより、上記複合体を形成して抗原を蛍光標識することができる。なお、第1親和性分子が結合した蛍光色素内包樹脂粒の作製方法は前述した通りであり、第2親和性分子が結合した1次抗体または2次抗体も、それと同様に一般的な方法に従って作製することができる。第1親和性分子として第2または第3グループの分子を用いる場合も、上記説明に準じた手順で行うことができる。
必要に応じて、免疫染色工程の前または後において、あるいは免疫染色工程と同時に、細胞ないし組織の形態観察用の染色液を用いた形態観察染色工程を行ってもよい。例えば、組織標本の形態を観察する場合、ヘマトキシリンを用いるヘマトキシリン染色(H染色)、またはヘマトキシリンおよびエオジンの2つの色素を用いるヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)が標準的に用いられる。形態観察染色はこれらの染色法に限定されるものではなく、他の形態観察染色としては、例えば細胞診に用いられるパパニコロウ染色(Pap染色)等が挙げられる。
[標本後処理工程]
標本後処理工程には、固定処理、脱水・透徹処理、封入処理、その他必要に応じて洗浄処理等が含まれる。
固定処理は、上記蛍光免疫染色工程における染色に用いられた蛍光色素内包樹脂粒子を、生体物質もしくは生体物質に結合した抗体等に固定化する処理である。固定化処理液で処理する事で、タンパク質の架橋や変性を行ない、蛍光色素内包樹脂粒子と生体物質もしくは生体物質に結合した抗体等とを、化学的、物理的により強固に結合し、安定した状態とできる。本発明において固定処理は、固定処理溶液に免疫染色工程後の組織切片を浸漬することにより行うことができる。例えば、希パラホルムアルデヒド水溶液中に、免疫染色工程後の組織切片を数分から数時間程度浸漬することにより行うことができる。
固定処理溶液として、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アセトン、エタノール、メタノール等の架橋剤、細胞膜透過物質等が挙げられる。この中では、強固に固定ができることから、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドが好ましく用いられる。
脱水・透徹処理は、染色した組織切片をPBS等の水系洗浄液で洗浄後、EtOH(エタノール)による脱水およびキシレン置換により行なわれる。EtOHによる脱水は、EtOHの水含有率を、例えば、50%、30%、10%、0%というように水含有率を下げたEtOHに、組織切片を順次漬けていき、EtOHに置換することで行なわれる。続いて、EtOH置換した切片をキシレンに漬ける事で、キシレン置換が行なわれ、切片が透徹される。
封入処理は、キシレン置換した切片に油系封入剤を載せ、カバーガラス等を載せる事で行なわれる。
[観察工程]
(i:明視野観察工程)
明視野観察工程は、細胞または組織内の染色対象とする生体分子(抗原等)の位置を特定するために形態観察染色処理を行った場合に、染色された組織切片に照明光を当て、組織切片に沈着した発色剤の色素を観察し、細胞膜の形状等に係る画像を取得する工程である。
(ii:蛍光観察工程)
蛍光観察工程は、免疫染色処理された組織切片中の蛍光色素内包樹脂粒子に励起光を照射することにより、内包されている蛍光色素の発する蛍光を観察し、細胞または組織内の染色対象とする生体分子の量(輝点数または発光強度等)に係る画像を取得する工程である。
励起光の照射手段は特に限定されるものではない。例えば、蛍光顕微鏡が備えるレーザー光源から、必要に応じて所定の波長を選択的に透過させるフィルターを用いて、適切な波長および出力の励起光を染色された組織切片に照射すればよい。
前記励起光は、組織切片の自家蛍光との関係で蛍光色素が発する蛍光が識別可能である限り特に限定されないものの、組織切片からの自家蛍光強度が高くなりすぎないようにする観点から、450nm〜700nmの波長を有する励起光が好ましい。また、前記蛍光色素を構成する蛍光物質としては当該励起光により480nm以上の範囲、好ましくは580〜690nmの範囲にピークを有する蛍光を発するものを用いる(したがってこの領域の発光波長を有する蛍光を測定するようにする)。
また、本工程において生体分子の分布情報は、迅速な観察が行えるよう(蛍光)顕微鏡の鏡筒から取得するようにしてもよいし、(蛍光)顕微鏡に設置されたカメラが撮影した画像を別途表示手段(モニタ等)に表示し、それを観察することにより取得するようにしてもよい。標識体として用いる蛍光色素を構成する蛍光物質によるが、顕微鏡の鏡筒からの目視により十分に生体分子分布情報を取得することができなくても、カメラが撮影した画像から生体分子分布情報を取得することが可能な場合もある。
前記生体分子の分布情報を取得することとしては、例えば、蛍光の輝点数または発光輝度を基に、一細胞あたりの染色対象の生体分子の数もしくは密度を計測することが挙げられる。前記蛍光色素の励起には、吸収極大波長および蛍光波長に対応した励起光源および蛍光検出用光学フィルターを選択すればよい。輝点数または発光輝度の計測には、市販の画像解析ソフト(例えば、全輝点自動計測ソフト「G−Count」(ジーオングストローム社製))を用いることが好適であるが、計測手段は特に限定されるものではない。
以下の手順に従って、蛍光標識体(表面に第1親和性分子を結合させた蛍光色素内包樹脂粒子、またはその対照物)を作製し、蛍光標識液(蛍光標識体の溶液)を調製した後、第2親和性分子を固定化したプレートを用いて蛍光標識液の試験を行い、免疫染色用の染色液としての性能を評価した。
各実施例において用いられた蛍光色素内包樹脂粒子はいずれも「ペリレンジイミド内包メラミン樹脂粒子」であり、その粒径は、蛍光色素内包樹脂粒子の合成工程における原料の樹脂量/色素量の比率を一定(0.04)として、樹脂量を変化させることで制御されている。
実施例1〜4および比較例1〜2において、第1親和性分子に相当する分子はストレプトアビジン(SA)であり、第2親和性分子に相当する分子はビオチンである。免疫染色では、抗原/1次抗体/ビオチン結合2次抗体/SA結合蛍光標識体の複合体が形成されている。
実施例5〜8および比較例3〜4において、第1親和性分子に相当する分子は1次抗体(抗HER2ウサギモノクローナル抗体)であり、第2親和性分子に相当する分子は2次抗体(抗ウサギIgG抗体)である。免疫染色では、抗原/1次抗体結合蛍光標識体の複合体が形成されている。
実施例9〜12および比較例5〜6において、第1親和性分子に相当する分子は2次抗体(抗ウサギIgG抗体)であり、第2親和性分子に相当する分子は1次抗体(抗HER2ウサギ抗体)である。免疫染色では、抗原/1次抗体/2次抗体結合蛍光標識体の複合体が形成されている。
[1.蛍光標識体の作製]
[作製例1]SA結合蛍光色素内包樹脂粒子−1
(1−1)蛍光色素内包樹脂粒子の合成工程
N,N'−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6,7,12−テトラフェノキシペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシジイミドを濃硫酸で処理し、ペリレンジイミドスルホン酸誘導体を作製した。これを酸クロリドに変換してペリレンジイミドスルホン酸クロリド誘導体とした。
ペリレンジイミドスルホン酸クロリド誘導体17.3mgを水22.5mLに加えた後、ホットスターラ―上で70℃20分間加熱し、メラミン樹脂「ニカラックMX−035」(日本カーバイド工業社製)0.78g(粒径150nm)を加え、さらに5分間加熱撹拌した。ギ酸100μLを加え、60℃20分間で加熱攪拌した後、室温放冷した。冷却後、反応混合物を遠心用チューブに入れて遠心分離機に12,000rpmで20分間かけ、上澄み除去した。回収された蛍光色素内包樹脂粒子(ペリレンジイミド内包メラミン樹脂粒子)の洗浄をエタノールと水で行なった。この蛍光色素内包樹脂粒子−1の平均粒子径(SEM像でカウントした100粒子についての粒子径の平均値)は200nmであった。
(1−2)第1親和性分子による修飾工程
上記合成工程(1)で得られた蛍光色素内包樹脂粒子−1、0.1mgをEtOH(エタノール)1.5mL中に分散し、アミノプロピルトリメトキシシランLS−3150(信越化学工業社製)2μLを加えて8時間反応させて表面アミノ化処理を行なった。
表面アミノ化処理された蛍光色素内包樹脂粒子−1を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mMの濃度で含有するPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ドデカエチレングリコール]エステル)を混合し、1時間反応させた。この混合液を10,000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mMの濃度で含有するPBS溶液を加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで末端にマレイミド基が付加された蛍光色素内包樹脂粒子−1を得た。
一方、ストレプトアビジン(和光純薬社製)をスクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA)を用いてチオール基付加処理を行ったのち、ゲルろ過カラムによるろ過を行い、蛍光色素内包樹脂粒子に結合可能なストレプトアビジン溶液を得た。
マレイミド基が付加された蛍光色素内包樹脂粒子−1を13nMの濃度で含有するPBS溶液1mLと、チオール基が付加されたストレプトアビジンを20mMの濃度で含有するPBS溶液1mLとを、EDTAを2mMの濃度で含有するPBS溶液中で混合し、1時間反応させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応ストレプトアビジン等を除去し、SA結合蛍光色素内包樹脂粒子−1を回収した。回収されたSA結合蛍光色素内包樹脂粒子−1は1%BSA含有PBS中で保存した。
[作製例2]SA結合蛍光色素内包樹脂粒子−2
蛍光色素内包樹脂粒子の合成工程(1)において、原料の量を、ペリレンジイミドスルホン酸クロリド誘導体14.4mg、メラミン樹脂「ニカラックMX−035」0.65g、ギ酸100μLに変更し、それ以外は実施例1と同様にして、蛍光色素内包樹脂粒子−2を得た。蛍光色素内包樹脂粒子−2の平均粒子径は150nmであった。続いて、実施例1の第1親和性分子による修飾工程(2)と同様にして、SA結合蛍光色素内包樹脂粒子−2を得て、保存した。
[作製例3]SA結合蛍光色素内包樹脂粒子−3
蛍光色素内包樹脂粒子の合成工程(1)において、原料の量を、ペリレンジイミドスルホン酸クロリド誘導体12.8mg、メラミン樹脂「ニカラックMX−035」0.58g、ギ酸100μLに変更し、それ以外は実施例1と同様にして、蛍光色素内包樹脂粒子−3を得た。蛍光色素内包樹脂粒子−3の平均粒子径は100nmであった。続いて、実施例1の第1親和性分子による修飾工程(2)と同様にして、SA結合蛍光色素内包樹脂粒子−3を得て、保存した。
[作製例4]SA結合蛍光色素内包樹脂粒子−4
蛍光色素内包樹脂粒子の合成工程(1)において、原料の量を、ペリレンジイミドスルホン酸クロリド誘導体9.3mg、メラミン樹脂「ニカラックMX−035」0.42g、ギ酸100μLに変更し、それ以外は実施例1と同様にして、蛍光色素内包樹脂粒子−4を得た。蛍光色素内包樹脂粒子−4の平均粒子径は50nmであった。続いて、実施例1の第1親和性分子による修飾工程(2)と同様にして、SA結合蛍光色素内包樹脂粒子−4を得て、保存した。
[作製例5]1次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−1>
第1親和性分子による修飾工程(2)において、ストレプトアビジンの代わりに1次抗体として抗HER2ウサギモノクローナル抗体(4B5、ベンタナ社製)を用い、チオール基が付加された当該1次抗体とマレイミド基が付加された蛍光色素内包樹脂粒子を反応させるようにし、それ以外は作製例1と同様にして、1次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−1を得て、保存した。
[作製例6]1次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−2
第1親和性分子による修飾工程(2)において、ストレプトアビジンの代わりに1次抗体として抗HER2ウサギモノクローナル抗体(4B5)を用い、チオール基が付加された当該1次抗体とマレイミド基が付加された蛍光色素内包樹脂粒子を反応させるよう変更し、それ以外は作製例2と同様にして、1次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−2を得て、保存した。
[作製例7]1次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−3
第1親和性分子による修飾工程(2)において、ストレプトアビジンの代わりに1次抗体として抗HER2ウサギモノクローナル抗体(4B5)を用い、チオール基が付加された当該1次抗体とマレイミド基が付加された蛍光色素内包樹脂粒子を反応させるよう変更し、それ以外は作製例3と同様にして、1次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−3を得て、保存した。
[作製例8]1次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−4
第1親和性分子による修飾工程(2)において、ストレプトアビジンの代わりに1次抗体として抗HER2ウサギモノクローナル抗体(4B5)を用い、チオール基が付加された当該1次抗体とマレイミド基が付加された蛍光色素内包樹脂粒子を反応させるよう変更し、それ以外は作製例4と同様にして、1次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−4を得て、保存した。
[作製例9]2次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−1
第1親和性分子による修飾工程(2)において、ストレプトアビジンの代わりに2次抗体として抗ウサギIgG抗体(LO−RG−1、フナコシ社製)を用い、チオール基が付加された当該2次抗体とマレイミド基が付加された蛍光色素内包樹脂粒子を反応させるよう変更し、それ以外は作製例2と同様にして、2次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−2を得て、保存した。
[作製例10]2次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−2
第1親和性分子による修飾工程(2)において、ストレプトアビジンの代わりに2次抗体として抗ウサギIgG抗体(LO−RG−1)を用い、チオール基が付加された当該2次抗体とマレイミド基が付加された蛍光色素内包樹脂粒子を反応させるよう変更し、それ以外は作製例2と同様にして、2次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−2を得て、保存した。
[作製例11]2次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−3
第1親和性分子による修飾工程(2)において、ストレプトアビジンの代わりに2次抗体として抗ウサギIgG抗体(LO−RG−1)を用い、チオール基が付加された当該2次抗体とマレイミド基が付加された蛍光色素内包樹脂粒子を反応させるよう変更し、それ以外は作製例3と同様にして、2次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−3を得て、保存した。
[作製例12]2次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−4
第1親和性分子による修飾工程(2)において、ストレプトアビジンの代わりに2次抗体として抗ウサギIgG抗体(LO−RG−1)を用い、チオール基が付加された当該2次抗体とマレイミド基が付加された蛍光色素内包樹脂粒子を反応させるよう変更し、それ以外は作製例4と同様にして、2次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子−4を得て、保存した。
[比較作製例1]SA結合蛍光色素
N,N'−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6,7,12−テトラフェノキシペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシジイミドと等量のスルホニルクロリドを反応させ、ペリレンジイミドクロリド誘導体(反応性色素)とした。ストレプトアビジン(SA)を1mg/mLとなるよう、1mLの0.1Mホウ酸バッファー(pH8.3)に溶かした。上記反応性色素をDMSOに10mg/mLとして溶かした。撹拌しているSA溶液に、ゆっくりと100μLの反応性色素を加え、室温中で撹拌し、1時間反応した。Zeba Spin Desalting Columnsを用い、溶媒にPBSを用いて余剰の色素を除去することで、蛍光色素としてペリレンジイミドを有するSA結合蛍光色素を得た。
[比較作製例2]SA結合樹脂粒子
樹脂粒子としてポリスチレン粒子を用いる場合、SA結合樹脂粒子はポリスチレン粒子とSAとの物理吸着により作製可能である。市販のCOOH末端のポリスチレン粒子(200nm、Life Technologies社)に、0.1Mホウ酸バッファー(pH8.3)に溶かしたSAを1000倍等量加え、撹拌することで、樹脂粒子としてポリスチレン粒子を有するSA結合樹脂粒子を得た。
[比較作製例3]1次抗体結合蛍光色素
SAの代わりに1次抗体として抗HER2ウサギモノクローナル抗体(4B5)を用い、反応性色素と当該1次抗体とを反応させるように変更し、それ以外は比較作成例1と同様にして、1次抗体結合蛍光色素を得た。
[比較作製例4]1次抗体結合樹脂粒子
SAの代わりに1次抗体として抗HER2ウサギモノクローナル抗体(4B5)を用い、ポリスチレン粒子に当該1次抗体を吸着させるように変更し、それ以外は比較作製例2と同様にして、1次抗体結合樹脂粒子を得た。
[比較作製例5]2次抗体結合蛍光色素
SAの代わりに2次抗体として抗ウサギIgG抗体(LO−RG−1)を用い、反応性色素と当該2次抗体とを反応させるように変更し、それ以外は比較作成例1と同様にして、2次抗体結合蛍光色素を得た。
[比較作製例6]2次抗体結合樹脂粒子
SAの代わりに2次抗体として抗ウサギIgG抗体(LO−RG−1)を用い、ポリスチレン粒子に当該2次抗体を吸着させるように変更し、それ以外は比較作成例2と同様にして、2次抗体結合樹脂粒子を得た。
[2.蛍光標識液の試験]
[実施例1〜4および比較例1〜2]SA結合蛍光標識液の試験
作製例1〜4のSA結合蛍光色素内包樹脂粒子および比較作製例1〜2のSA結合対照物(SA結合蛍光標識体)を用いて、次のような手順でそれらの溶液(SA結合蛍光標識液)を調製した後、ビオチンプレートを用いた試験を行った。実施例1〜4および比較例1〜2は、それぞれ作製例1〜4および比較例1〜2のSA結合蛍光標識溶液についての試験に対応する。
SA結合蛍光標識体の保存液を採取し、パーティクルカウンター「Liquid Particle Counter」(リオン社製)で粒子数を測定した後、濃度を0.05nMに調整した。市販のビオチン化プレート「Well−Coated Biotin, 96−well, Black」(G−BIOSCIENCE社製)をPBSで5回洗浄した後、当該プレート上に、上記の濃度を調整した溶液を、1ウェルにつき100μLずつ添加し、4℃で一昼夜反応させた。反応後のプレートをPBSで洗浄した後、マイクロプレートリーダー「プレートカメレオンV」(Hidex社製)を用いて、蛍光強度の信号値(S)を測定した。
[実施例5〜8および比較例3〜4]1次抗体結合蛍光標識液の試験
作製例1〜4および比較作製例1〜2のSA結合蛍光標識体の代わりに、作製例5〜8の1次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子および比較作製例3〜4の1次抗体結合対照物(1次抗体結合蛍光標識体)を用いたこと、およびビオチンプレートの代わりに下記の手順で作製した2次抗体(抗ウサギIgG抗体)プレートを用いたこと以外は、実施例1〜4および比較例1〜2と同様の手順で、1次抗体結合蛍光標識液を調製し、2次抗体プレートを用いた試験を行い、蛍光強度の信号値(S)を測定した。実施例5〜8および比較例3〜4は、それぞれ作製例5〜8および比較作製例3〜4の1次抗体結合蛍光標識溶液についての試験に対応する。
市販のプレート「フルオロヌンクモジュールプレートF16」(マキシソープ社製)に、20μg/mLの濃度に調製した抗ウサギIgG抗体(LO−RG−1)溶液を、1ウェルにつき100μLずつ添加し、プレートシールをして4℃で一晩静置した。続いて、1ウェルにつき200μLのPBSで洗浄し、1ウェルにつき200μLのブロッキング液(1%BSA含有PBS)を添加し、プレートシールをして4℃で保存した。なお、このようにして作製された2次抗体プレートは、6か月程度安定して使用可能である。
[実施例9〜12および比較例5〜6]2次抗体結合蛍光標識液の試験
作製例1〜4および比較作製例1〜2のSA結合蛍光標識体の代わりに、作製例9〜12の2次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子および比較作製例5〜6の2次抗体結合対照物(2次抗体結合蛍光標識体)を用いたこと、およびビオチンプレートの代わりに下記の手順で作製した1次抗体(抗HER2ウサギモノクローナル抗体)プレート)を用いたこと以外は、実施例1〜4および比較例1〜2と同様の手順で、2次抗体結合蛍光標識液を調製し、1次抗体プレートを用いた試験を行い、蛍光強度の信号値(S)を測定した。実施例9〜12および比較例5〜6は、それぞれ作製例9〜12および比較作製例5〜6の2次抗体結合蛍光標識溶液についての試験に対応する。
市販のプレート「フルオロヌンクモジュールプレートF16」(マキシソープ社製)に、20μg/mLの濃度に調製した抗HER2ウサギモノクローナル抗体(4B5)溶液を、1ウェルにつき100μLずつ添加し、プレートシールをして4℃で一晩静置した。続いて、1ウェルにつき200μLのPBSで洗浄し、1ウェルにつき200μLのブロッキング液(1%BSA含有PBS)を添加し、プレートシールをして4℃で保存した。なお、このようにして作製された1次抗体プレートも、6か月程度安定して使用可能である。
実施例1〜12および比較例1〜6のそれぞれについて得られた信号値(S)を、蛍光色素単体での信号値(A)×蛍光色素内包樹脂粒子1つあたりに結合している第1親和性分子の数(B)×{蛍光色素内包樹脂粒子1粒子あたりの発光強度(C)/(蛍光色素内包樹脂粒子1粒子に内包されている数の蛍光色素単体での発光強度(D)}で割り、相対値化したものを表1に示す。
蛍光色素単体での信号値(A)については、まず、各実施例および比較例に準じて、ペリレンジイミドに第1親和性分子を結合させた複合体を作製し、その複合体を0.05nMの濃度で含有する溶液を調製し、第2親和性分子を固定化したプレートと反応させた後に、同様の方法で蛍光強度の信号値を測定した。また、ペリレンジイミドの量子収率および蛍光色素内包樹脂粒子の量子収率を、Quantaurus−QY」(浜松ホトニクス株式会社)で測定した。これらの測定値を用いて、前述したような算出方法により、蛍光色素単体での信号値(A)を求めた。
蛍光色素内包樹脂粒子1つあたりに結合している第1親和性分子の数(B)は、0.05nM、100μLの溶液について、そこに含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子の総重量および粒子数、ならびに第1親和性分子の分子量を用いて求めた。
蛍光色素内包樹脂粒子1粒子あたりの発光強度(C)は、各実施例および比較例で用いた蛍光色素内包樹脂粒子を0.05nMの濃度で含有する溶液について、同様の方法で蛍光強度の信号値を測定することで求めた。
蛍光色素内包樹脂粒子1粒子に内包されている数の蛍光色素単体での発光強度(D)は、上記(A)で用いた複合体を0.05nMの濃度で含有する溶液について測定された蛍光強度の信号値および当該溶液に含まれる蛍光色素の分子数の計算値、蛍光色素内包樹脂粒子1粒子に内包されている蛍光色素の分子数の計算値、さらに上記(A)で測定された蛍光色素単体での量子収率および蛍光色素内包樹脂粒子の量子収率から算出した。
[3.培養細胞の染色]
<SA結合蛍光標識液を用いた場合>
実施例1〜4のSA結合蛍光色素内包樹脂粒子の溶液および比較例1〜2のSA結合対照物の溶液(SA結合蛍光標識液)を用いて、次のような手順で培養細胞を染色し、染色画像を取得した。
SK−BR−3細胞を用いた培養細胞スライド(HER2スコア3+;パソロジー研究所)を脱パラフィン処理した後、水に浸漬する洗浄を行った。洗浄した培養細胞スライドを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で121℃、5分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活性化処理を行った。賦活化処理後の培養細胞スライドを、PBSを用いて洗浄した後、湿潤箱中で1時間1%BSA含有PBSを用いてブロッキング処理を行った。
ブロッキング処理後、1%BSA含有PBSで0.05nMに希釈した抗HER2ウサギモノクローナル抗体(ベンタナ社製:4B5)を組織切片と室温で2時間反応させた。これをPBS緩衝液で洗浄後、1%BSA含有PBSで2μg/mLに希釈したビオチン標識抗ウサギモノクローナル抗体と室温で30分反応させた。
SA結合蛍光標識液を遠心分離し、上澄み液を除去し、0.6%αカゼイン+0.6%βカゼイン+3%BSA/TB 0.1%Tween20 0.015N NaN3に置換した後に、フィルター処理(孔径0.65μm:ミリポア社製)を行った。さらに1%BSA含有PBSで0.2nMに希釈し、前述の反応を行った培養細胞切片と、中性のpH環境(pH6.9〜7.4)、室温で3時間反応させた後、培養細胞スライドを、PBSを用いて洗浄した。
免疫染色後、形態観察染色を行った。免疫染色した培養細胞スライドをマイヤーヘマトキシリン液で1分間染色してヘマトキシリン染色を行った(H染色)。その後、該切片を45℃の流水で3分間洗浄した。その後、純エタノールに5分間漬ける操作4回行い、洗浄・脱水を行った。続いてキシレンに5分間漬ける操作を4回行い、透徹を行った。最後に、封入剤(「エンテランニュー」、Merck社製)を用いて組織切片を封入して観察用のサンプルスライドとした。
上記免疫染色および形態観察染色した培養細胞スライドに対して所定の励起光を照射して蛍光を発光させ、蛍光顕微鏡(BX−53,オリンパス社製)により観察および撮像を行った。上記励起光は、光学フィルターに通すことで575〜600nmに設定した。また、観察する蛍光の波長(nm)の範囲についても、光学フィルターに通すことで612〜682nmに設定した。
さらに、ジーオンオングストロング社製輝点計測ソフト、G−countを用いて輝点数および発光輝度を計測した。輝点についてはスライド中の8スポットについて各30細胞の輝点を計測することにより、その平均値を求め、発光輝度は、8スポットそれぞれについて視野全体の蛍光強度を合算し、その平均値を求めた。
顕微鏡観察、撮像時の励起波長条件は、580nmの励起では視野中心部付近の照射エネルギーが900W/cm2となるようにした。撮像時の露光時間は画像の輝度が飽和しないように任意(例えば4000μ秒)に設定した。
なお、形態観察染色による像を観察する際には、免疫染色用の蛍光色素を励起させるための励起光を照射する必要はないので、光学顕微鏡と同様の観察条件下で観察した。
<1次抗体結合蛍光標識液を用いた場合>
実施例5〜8の1次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子の溶液および比較例3〜4の1次抗体結合対照物の溶液(1次抗体結合蛍光標識液)を用いて、次のような手順で培養細胞を染色し、染色画像を取得した。
SK−BR−3細胞を用いた培養細胞スライド(HER2スコア3+;パソロジー研究所)を脱パラフィン処理した後、水に浸漬する洗浄を行った。洗浄した培養細胞スライドを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で121℃、5分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活性化処理を行った。賦活化処理後の培養細胞スライドを、PBSを用いて洗浄した後、湿潤箱中で1時間1%BSA含有PBSを用いてブロッキング処理を行った。
1次抗体結合蛍光標識液を遠心分離し、上澄み液を除去し、0.6%αカゼイン+0.6%βカゼイン+3%BSA/TB 0.1%Tween20 0.015N NaN3に置換した後に、フィルター処理(孔径0.65μm:ミリポア社製)を行った。さらに1%BSA含有PBSで0.4nMに希釈し、前述のブロッキング反応を行った培養細胞切片と、中性のpH環境(pH6.9〜7.4)、室温で一昼夜反応させた後、培養細胞スライドを、PBSを用いて洗浄した。
免疫染色後、形態観察染色を行った。免疫染色した培養細胞スライドをマイヤーヘマトキシリン液で1分間染色してヘマトキシリン染色を行った(H染色)。その後、該切片を45℃の流水で3分間洗浄した。その後、純エタノールに5分間漬ける操作4回行い、洗浄・脱水を行った。続いてキシレンに5分間漬ける操作を4回行い、透徹を行った。最後に、封入剤(「エンテランニュー」、Merck社製)を用いて組織切片を封入して観察用のサンプルスライドとした。
<2次抗体結合蛍光標識液を用いた場合>
実施例9〜12の2次抗体結合蛍光色素内包樹脂粒子および比較例5〜6の2次抗体結合対照物(2次抗体結合蛍光標識液)を用いて、次のような手順で培養細胞を染色し、染色画像を取得した。
SK−BR−3細胞を用いた培養細胞スライド(HER2スコア3+;パソロジー研究所)を脱パラフィン処理した後、水に浸漬する洗浄を行った。洗浄した培養細胞スライドを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で121℃、5分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活性化処理を行った。賦活化処理後の培養細胞スライドを、PBSを用いて洗浄した後、湿潤箱中で1時間1%BSA含有PBSを用いてブロッキング処理を行った。
ブロッキング処理後、1%BSA含有PBSで0.05nMに希釈した抗HER2ウサギモノクローナル抗体(ベンタナ社製:4B5)を組織切片と室温で2時間反応させた。これをPBS緩衝液で洗浄後、1%BSA含有PBSで2μg/mLに希釈した該抗体に結合するビオチン標識抗ウサギモノクローナル抗体と室温で30分反応させた。
2次抗体結合蛍光標識液を遠心分離し、上澄み液を除去し、0.6%αカゼイン+0.6%βカゼイン+3%BSA/TB 0.1%Tween20 0.015N NaN3に置換した後に、フィルター処理(孔径0.65μm:ミリポア社製)を行った。さらに1%BSA含有PBSで0.4nMに希釈し、前述の反応を行った培養細胞切片と、中性のpH環境(pH6.9〜7.4)、室温で一昼夜反応させた後、培養細胞スライドを、PBSを用いて洗浄した。
免疫染色後、形態観察染色を行った。免疫染色した培養細胞スライドをマイヤーヘマトキシリン液で1分間染色してヘマトキシリン染色を行った(H染色)。その後、該切片を45℃の流水で3分間洗浄した。その後、純エタノールに5分間漬ける操作4回行い、洗浄・脱水を行った。続いてキシレンに5分間漬ける操作を4回行い、透徹を行った。最後に、封入剤(「エンテランニュー」、Merck社製)を用いて組織切片を封入して観察用のサンプルスライドとした。
実施例1〜12および比較例1〜6のそれぞれについての免疫染色の結果を表1に示す。SK−BR−3細胞一つあたりの輝点数が10以上を○と評価する。
[4.染色液の濃度の調整]
[実施例13〜16]
実施例1〜4の蛍光色素内包樹脂粒子溶液に含まれる蛍光色素内包樹脂粒子(平均粒子径はそれぞれ200nm、150nm、100nmおよび50nm)の表面積の総和(T)に対する、ビオチンを一定密度で固定化したプレートに蛍光色素内包樹脂粒子溶液を散布した際に計測される信号値(S)の比の値(S/T)が所定の値(2×1012/nm2)となるように希釈することによって、濃度が調整された蛍光色素内包樹脂粒子溶液を得た。
[比較例7〜10]
実施例1〜4の蛍光色素内包樹脂粒子溶液を、蛍光色素内包樹脂粒子の濃度が0.05nMとなるように希釈することによって、濃度が調整された蛍光色素内包樹脂粒子溶液を得た。
[比較例11〜14]
実施例1〜4の蛍光色素内包樹脂粒子溶液について、まず蛍光色素内包樹脂粒子の濃度が所定の値(0.05nM)となるように希釈してその蛍光強度を測定し、その蛍光強度が等しくなるよう、それぞれの希釈液をさらに希釈することによって、輝度が調整された蛍光色素内包樹脂粒子溶液を得た。
[5.濃度が調整された染色液を用いた培養細胞の染色]
実施例13〜16および比較例7〜14それぞれの染色液を用いて、前記[3.培養細胞の染色]の手法と同様にして、細胞を染色し、染色画像を取得した。各実施例および比較例について、細胞の染色および染色画像の取得を9反復ずつ行い、染色後における輝点数のばらつきを計測した。
結果を表2に示す。S/T値を一定にした溶液を染色液として用いた場合、蛍光色素内包樹脂粒子の平均粒子径に依らず、輝点数のばらつきが±7%以下に抑えられた(実施例13〜16)。一方で、蛍光色素内包樹脂粒子の輝度を一定にした溶液を染色液として用いて染色を行うと、±20%程度の輝点数ばらつきが発生し、また蛍光色素内包樹脂粒子の濃度を一定にした溶液を染色液として用いても同様に±15%程度のばらつきが生じることがわかる(比較例5〜12)。

Claims (8)

  1. 表面に第1親和性分子を結合させた蛍光色素内包樹脂粒子を一定濃度で含む一定量の溶液を、該第1親和性分子と特異的に結合可能な第2親和性分子を一定密度で固定化したプレートと反応させた際に、計測される信号値(S)が下記式を満たすものを選択する工程を含む、蛍光色素内包樹脂粒子溶液の生産方法。
    0.5×A×B×(C/D) ≦ S ≦ 1.2×A×B×(C/D)
    A:第1親和性分子を結合させた、前記一定濃度の一定量の溶液中に含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子に内包されている数と同数の蛍光色素単体を、前記プレートと反応させた際に計測される信号値
    B:前記一定濃度の一定量の溶液に含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子の全表面に結合している第1親和性分子の全数を蛍光色素内包樹脂粒子数で割った、蛍光色素内包樹脂粒子1つあたりに結合している第1親和性分子の数
    C:前記蛍光色素内包樹脂粒子1粒子あたりの発光強度
    D:前記蛍光色素内包樹脂粒子1粒子に内包されている数の蛍光色素単体の発光強度
  2. 表面に第1親和性分子を結合させた蛍光色素内包樹脂粒子を一定濃度で含む一定量の溶液を、該第1親和性分子と特異的に結合可能な第2親和性分子を一定密度で固定化したプレートと反応させた際に、計測される信号値(S)が下記式を満たす蛍光色素内包樹脂粒子溶液について、当該蛍光色素内包樹脂粒子溶液に含まれる蛍光色素内包樹脂粒子の表面積の総和(T)に対する、前記第2親和性分子を一定密度で固定化したプレートに前記蛍光色素内包樹脂粒子溶液を散布した際に計測される信号値(S)の比の値(S/T)が所定の値となるように希釈し、前記蛍光色素内包樹脂粒子溶液の濃度を調整する工程を含む、蛍光色素内包樹脂粒子溶液の生産方法。
    0.5×A×B×(C/D) ≦ S ≦ 1.2×A×B×(C/D)
    A:第1親和性分子を結合させた、前記一定濃度の一定量の溶液中に含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子に内包されている数と同数の蛍光色素単体を、前記プレートと反応させた際に計測される信号値
    B:前記一定濃度の一定量の溶液に含まれる全蛍光色素内包樹脂粒子の全表面に結合している第1親和性分子の全数を蛍光色素内包樹脂粒子数で割った、蛍光色素内包樹脂粒子1つあたりに結合している第1親和性分子の数
    C:前記蛍光色素内包樹脂粒子1粒子あたりの発光強度
    D:前記蛍光色素内包樹脂粒子1粒子に内包されている数の蛍光色素単体の発光強度
  3. 前記蛍光色素内包樹脂粒子を構成する母体である樹脂がメラミン樹脂およびスチレン樹脂からなる群から選択される樹脂である、請求項1または2に記載の生産方法。
  4. 前記蛍光色素内包樹脂粒子を構成する蛍光色素が有機色素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の生産方法。
  5. 前記蛍光色素内包樹脂粒子を構成する蛍光色素がペリレンジイミドおよびフルオレセインイソチアネートからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の生産方法。
  6. 前記蛍光色素内包樹脂粒子に結合している第1親和性分子がビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、抗ジニトロフェノール抗体および抗ジゴキシゲニン抗体からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の生産方法。
  7. 前記第1親和性分子が、高分子由来のスペーサーを介して前記蛍光色素内包樹脂粒子に結合している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の生産方法。
  8. 前記スペーサーがポリエチレングリコール(PEG)である、請求項7に記載の方法。
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