図1は、本発明の一実施形態に係る車載装置の構成を示す図である。図1に示される車載装置1は、車両等の移動体に搭載されて使用される装置であり、情報配信装置2と通信回線網3を介して接続されている。なお、以下の説明では、車載装置1が搭載されている移動体を自車両と称する。情報配信装置2は、各地の道路に対する交通情報60や車線状況情報70を記憶しており、これらの情報を必要に応じて車載装置1に配信する。通信回線網3は、携帯電話回線等の無線通信網や、インターネット等の有線通信網などによって構成される。
車載装置1は、演算部10、記憶部20、通信部30、位置検出部40、およびメッセージ出力部50を備える。
演算部10は、車載装置1が自車両の運転者に対して車線変更案内を行うための各種処理や演算を行うための部分であり、マイクロコンピュータやその他の周辺回路によって構成されている。演算部10は、記憶部20に記憶されているデータを利用して所定のプログラムを実行することで、車線変更判定部101、経路計算部102および車線判定部103として機能する。
記憶部20は、各種のデータや情報等を記憶可能な記録媒体であり、ハードディスクやフラッシュメモリ等によって構成されている。記憶部20には、地図データ200、経路データ220および個人設定データ230が記憶されている。これらのデータは、必要に応じて演算部10により読み出され、演算部10が実効する処理や演算において利用される。経路データ220は、目的地までの自車両の走行経路を表すデータである。車載装置1は、ユーザに設定された目的地までの自車両の走行経路を地図データ200に基づいて計算し、その計算結果を経路データ220として記憶したり、情報配信装置2から経路データ220を取得して記憶したりすることができる。個人設定データ230は、ユーザの個人設定に関するデータである。車載装置1のユーザは、自身の嗜好に応じた個人設定データ230を予め設定しておくことができる。なお、地図データ200については、後で詳しく説明する。
通信部30は、情報配信装置2から通信回線網3を介して配信される情報を受信し、演算部10に出力する。情報配信装置2は、交通情報60として、たとえば自車両前方の道路での渋滞や交通規制に関する情報を車載装置1に配信する。また、車線状況情報70として、自車両前方の道路での車線状況に関する情報、たとえば特定の車線上に存在する落下物や故障車の情報を車載装置1に配信する。
位置検出部40は、自車両の位置を検出する。たとえば、位置検出部40にGPS受信機を設け、このGPS受信機によりGPSから送信されるGPS信号を受信して所定の演算処理を行うことで、自車両の位置を検出することができる。
メッセージ出力部50は、演算部10の制御により、車載装置1のユーザである自車両の運転者に対して車線変更案内を行うための情報(メッセージ)を出力する。なお、メッセージ出力部50から出力される車線変更案内のメッセージについては、後で詳しく説明する。
次に、演算部10が有する車線変更判定部101、経路計算部102および車線判定部103について説明する。
車線変更判定部101は、記憶部20に記憶されている地図データ200と、位置検出部40により検出された自車両の位置とに基づいて、自車両が走行中の道路における各車線の状況に応じた自車両の車線変更の必要性を判定する。なお、車線変更判定部101の詳細については、後で図4、5のフローチャートを参照して説明する。この車線変更判定部101による車線変更の必要性の判定結果に基づいて、メッセージ出力部50が車線変更案内のメッセージを必要に応じて出力する。
経路計算部102は、記憶部20に記憶されている地図データ200に基づいて、ユーザに設定された目的地までの自車両の走行経路を計算する。経路計算部102による走行経路の計算結果は、前述のように経路データ220として記憶部20に記憶される。
車線判定部103は、記憶部20に記憶されている地図データ200と、位置検出部40により検出された自車両の位置とに基づいて、自車両が道路上で走行中の車線(以下、「走行中車線」と称する)を判定するための処理を実行する。たとえば、自車両の位置に対応する道路とその車線数とを地図データ200から特定する。そして、カメラで自車両の前方または後方の路面を撮影し、その撮影画像から、自車両が道路上でどの車線を走行しているかを特定することにより、走行中車線の判定を行う。なお、自車両の走行中車線を適切に判定できれば、車線判定部103はどのような方法を用いてもよい。
次に、記憶部20に記憶されている地図データ200について説明する。地図データ200は、マッピングテーブル201、危険個所データ202および道路データ210を有する。
マッピングテーブル201は、道路データ210と情報配信装置2から配信される交通情報60および車線状況情報70とを対応付けるためのデータである。車載装置1は、情報配信装置2から交通情報60や車線状況情報70が配信されると、マッピングテーブル201に基づいて、道路データ210により表される道路や車線においてどの部分に渋滞や交通規制が存在するかを把握することができる。
危険個所データ202は、車両走行における注意を促すためのデータであり、たとえば事故多発地点などの情報を示す。車載装置1は、危険個所データ202に基づいて、自車両の走行中に運転者に対して注意喚起のメッセージ等を必要に応じて出力することができる。
道路データ210は、道路を表すデータであり、道路情報211とレーン情報212を含む。道路情報211は、並列する複数の車線(レーン)をまとめて、各地の道路を路線(リンク)単位で表現したデータである。レーン情報212は、道路情報211により表される各道路を個別の車線(レーン)単位で表現したデータである。
図2は、道路データ210の構成の一例を示すデータ構成図である。図2に示すように、道路データ210において道路情報211は、複数の道路リンク(ここではリンク1〜リンクNとする)の情報を表している。道路情報211が表す各道路リンクの情報には、レーン情報212がそれぞれ対応付けられている。図2では、リンク1に含まれるレーン1〜レーンMに関する情報がレーン情報212の例として示されている。レーン情報212は、各車線のレーン属性213として、車線変更の可否、レーン規制情報、レーン長、レーン種別、レーン増減属性などの情報を含む。
図3は、道路データ210の具体例を説明する図である。図3(a)は、現実世界における道路の例を示している。図3(b)は、図3(a)に示した道路を表すための道路情報211の概念図を示している。図3(c)は、図3(a)に示した道路の各車線を表すためのレーン情報212の概念図を示している。図3(d)は、図3(b)、図3(c)にそれぞれ示した道路情報211およびレーン情報212により構成される道路データ210のデータ構成図を示している。
図3(a)では、並列する3車線のうち左側の1車線が分岐し、1車線と2車線に分かれている道路の例を示している。この道路に対応する道路情報211は、図3(b)に示すように、分岐前の道路に対応する1つのリンクLi1と、分岐後の道路にそれぞれ対応する左右2つのリンクLi2、Li3とによって構成される。また、図3(a)の道路に対応するレーン情報212は、図3(c)に示すように、リンクLi1の左車線に対応するレーンLa11、La12と、リンクLi1の中央車線に対応するレーンLa13、La14と、リンクLi1の右車線に対応するレーンLa15と、リンクLi2の左車線と右車線にそれぞれ対応するレーンLa21、La22と、リンクLi3に対応するレーンLa31とによって構成される。なお、レーンLa11およびLa13は、図3(a)に示した車線変更禁止の開始地点よりも手前にあるリンクLi1の左車線と中央車線にそれぞれ対応し、レーンLa12およびLa14は、車線変更禁止の開始地点よりも先にあるリンクLi1の左車線と中央車線にそれぞれ対応する。このように、リンクLi1の左車線と中央車線の間には車線変更禁止の規制があるため、その開始地点の前後で車線の属性変化が生じる。レーン情報212では、こうした車線の属性変化点がある場合には、その前後を別々の車線で表している。図3(d)では、道路情報211としてリンクLi1〜Li3を示し、そのうちリンクLiのレーン情報212としてレーンLa11〜La15を示している。また、レーンLa11〜La15のうちレーンLa14のレーン属性213として、左隣のレーンLa12への車線変更が不可であり、レーン規制がなく、レーン長が100mであり、レーン種別が本線であり、レーン増減がないことを示している。
次に、車線変更判定部101の詳細について、図4、5のフローチャートを参照して説明する。図4は、車線変更判定部101において行われる車線変更判定処理のフローチャートである。車線変更判定部101は、所定のプログラムを一定の処理周期ごとに実行することで、図4のフローチャートに示す車線変更判定処理を行う。
ステップS110において、車線変更判定部101は、位置検出部40により検出された自車両の位置を取得する。
ステップS120において、車線変更判定部101は、ステップS110で取得した自車位置周辺の道路情報211とレーン情報212を記憶部20から読み出して取得する。
ステップS130において、車線変更判定部101は、ステップS110で取得した自車位置と、ステップS120で取得した道路情報211およびレーン情報212とに基づいて、自車両が走行中の道路と車線を車線判定部103から取得する。車線判定部103では、たとえば周知のマップマッチング手法を利用して自車両が走行中の道路を特定し、その道路でどの車線が走行中車線であるかを、カメラ等を用いた車線認識処理によって判定する。車線変更判定部101は、こうして判定された自車両の走行中車線の情報を車線判定部103から取得することで、自車両が走行中の道路において走行中車線を特定することができる。
ステップS140において、車線変更判定部101は、自車位置から目的地までの経路情報を取得する。経路情報は、経路計算部102により地図データ200から計算して求めてもよいし、外部から取得してもよい。ステップS140で取得された経路は、前述のように記憶部20に経路データ220として記憶される。なお、目的地が設定されておらずに経路が存在しない場合は、本処理をスキップしてもよい。
ステップS150において、車線変更判定部101は、ステップS130で取得した自車両の走行道路と、ステップS140で取得した経路情報とに基づいて、通行コストの算出範囲を決定する。たとえば、目的地までの経路全体を通行コストの算出範囲としてもよいし、自車位置から経路に沿った一定距離先までの範囲を通行コストの算出範囲としてもよい。通行コストの算出範囲を決定したら、車線変更判定部101は、その範囲に含まれる道路の各車線に対応するレーン情報212を記憶部20から読み出して取得する。
ステップS160において、車線変更判定部101は、ステップS150で取得した通行コストの算出範囲におけるレーン情報212に基づいて、各車線の状況に応じた通行コストを算出するための通行コスト算出処理を実行する。ここで算出される通行コストとは、算出範囲に含まれる道路の各車線を自車両が走行することに対する不適切度を示す指標である。すなわち、通行コストの値が高い車線ほど、自車両がその車線を走行するのが適切ではなく、他の車線への移動を運転者に促すことが好ましい。なお、ステップS160で実行される通行コスト算出処理の詳細については、後で図5のフローチャートを用いて説明する。
ステップS170において、車線変更判定部101は、ステップS110で取得した自車位置に基づいて、通行コストの比較範囲を各車線に設定する。ここでは、自車位置に対応する走行中車線上の地点と、走行中車線に並列する各車線上で当該地点にそれぞれ対応する各地点とを含むように、通行コストの比較範囲を設定する。なお、車線変更禁止の規制などにより走行中車線から移動できない車線がある場合は、その車線を含まないように通行コストの比較範囲を設定することが好ましい。
ステップS180において、車線変更判定部101は、ステップS170で設定した通行コストの比較範囲に基づいて、ステップS160で算出した各車線の通行コストのうち、走行中車線および車線変更可能な全車線の通行コストを、比較対象の通行コストとして取得する。なお、ステップS160の通行コスト算出処理では、後述するように各車線上の特定の範囲に通行コスト付与区間が設定され、この通行コスト付与区間ごとに通行コストが算出される。ステップS180では、通行コストの比較範囲内に通行コスト付与区間が存在する車線については、その通行コスト付与区間の通行コストを当該車線の比較対象の通行コストとする。一方、通行コストの比較範囲内に通行コスト付与区間が存在しない車線については、当該車線の比較対象の通行コストを0とする。この点については、後で図14〜図16を参照して詳しく説明する。
ステップS190において、車線変更判定部101は、ステップS180で取得した各車線の比較対象の通行コスト同士を比較する。この比較結果に基づいて、車線変更可能な車線の中に、走行中車線よりも通行コストが所定の閾値T以上低い車線があるか否かを判定する。その結果、車線変更可能な左右いずれかの車線の通行コストが走行中車線よりも低く、その差が閾値T以上である場合には、車線変更判定部101は、自車両の車線変更の必要性ありと判断し、ステップS200に進む。一方、車線変更可能な車線の中に走行中車線よりも閾値T以上低い車線が存在しない場合には、車線変更判定部101は、自車両の車線変更の必要性なしと判断し、図4の車線変更判定処理を終了する。なお、閾値Tには、0以上の任意の値を設定することができる。
ステップS200において、車線変更判定部101は、自車両の車線変更方向を判定する。ここでは、ステップS190で走行中車線よりも通行コストが閾値T以上低いと判定した車線について、走行中車線から当該車線への移動方向を、自車両が車線変更すべき方向として判定する。なお、ステップS190の判定条件を満たす車線が走行中車線の左右両方向に存在する場合には、車線変更判定部101は、いずれか一方向を車線変更方向として判定することが好ましい。たとえば、走行中車線からステップS190の判定条件を満たす各車線へ移動するまでに必要な車線変更回数を比較し、車線変更回数が最も少ない車線への移動方向を、車線変更方向として判定する。あるいは、通行コストが最も低い車線への移動方向を、車線変更方向として判定してもよい。
ステップS210において、車線変更判定部101は、メッセージ出力部50を用いて、ステップS200で判定された車線変更方向に対する車線変更案内のメッセージを出力する。メッセージ出力部50から出力されたメッセージは、不図示の表示装置や音声出力装置等の外部装置によって受信され、画像や音声等を用いてその内容が自車両の運転者に通知される。これにより、運転者は車線変更の必要性を判断し、自車両を走行中車線よりも走行に適した車線へと移動させることができる。なお、メッセージを受信した際に車線変更案内を行うかどうかを、外部装置において判定してもよい。たとえば、カメラやレーダ等のセンサによる検出結果に基づいて、自車両の周囲に車線変更の妨げとなる他車両や障害物が存在するか否かを判断し、その判断結果から車線変更案内を行うかどうかを判定してもよい。また、メッセージ出力部50から出力されたメッセージに基づいて、自車両が自動的に車線変更を行うようにしてもよい。
ステップS210を実行したら、車線変更判定部101は、図4の車線変更判定処理を終了する。
次に、ステップS160で実行される通行コスト算出処理について説明する。図5は、車線変更判定部101において行われる通行コスト算出処理のフローチャートである。
ステップS310において、車線変更判定部101は、通行コストの算出対象とする評価項目を選択する。ここでは、道路上で各車線の状況に影響を及ぼすことで通行コストの生成要因となる様々な評価項目の中から、以降の処理において通行コストの算出対象とする評価項目を選択する。たとえば、経路の分岐、車線数の増減、渋滞、交通規制、追い越し車線などを評価項目として、これらの評価項目の中からいずれかを選択する。なお、車線変更判定部101が選択可能な評価項目は上記の例に限らない。各車線の通行の不適切度に影響し、通行コストの生成要因となるものであれば、どのようなものを評価項目としてもよい。
ステップS320において、車線変更判定部101は、図4のステップS150で決定した通行コストの算出範囲に含まれる車線の中からいずれか一つの車線を、以降の処理対象とする車線(以下、「処理対象車線」と称する)として選択する。
ステップS330において、車線変更判定部101は、ステップS310で選択した評価項目に対応する通行コストの生成要因が処理対象車線上に存在するか否かを判定する。その結果、前述のような様々な通行コストの生成要因の中で選択した評価項目に対応するものを含む区間が処理対象車線上に存在する場合には、車線変更判定部101は、通行コストの生成要因ありと判定してステップS340に進む。一方、選択した評価項目に対応する通行コストの生成要因を含む区間が処理対象車線上に存在しない場合には、車線変更判定部101は、通行コストの生成要因なしと判定してステップS360に進む。
ステップS340において、車線変更判定部101は、ステップS310で選択した評価項目に対応する通行コスト付与区間を処理対象車線上に設定する。ここでは、ステップS330で処理対象車線上に存在すると判定した当該評価項目に対応する区間を、通行コスト付与区間として設定する。これにより、経路の分岐、車線数の増減、渋滞、交通規制、追い越し車線などの評価項目に対して、それぞれに対応する区間が通行コスト付与区間として設定される。
ステップS350において、車線変更判定部101は、ステップS340で設定した通行コスト付与区間に対する通行コストを算出する。ここでは、評価項目ごとに予め設定された通行コストの基準値に基づいて、通行コストを算出する。
ステップS360において、車線変更判定部101は、図4のステップS150で決定した通行コストの算出範囲に含まれる車線の中に、ステップS320で未選択の車線があるか否かを判定する。未選択の車線がある場合には、車線変更判定部101はステップS320に戻り、未選択の車線の中からいずれかの車線をステップS320で選択した後、前述のような処理を繰り返す。一方、ステップS320で全ての車線を選択済みである場合には、車線変更判定部101は、ステップS370に進む。
ステップS370において、車線変更判定部101は、図4のステップS150で決定した通行コストの算出範囲に含まれる車線の中から、通行コスト最小車線を特定する。ここでは、ステップS350で算出された通行コストが最小である車線を通行コスト最小車線として特定する。たとえば、通行コストの生成要因を含む区間が存在せず、そのためステップS340およびS350の処理が行われなかった車線がある場合には、車線変更判定部101は、当該車線を通行コスト最小車線として特定する。なお、複数の車線を通行コスト最小車線として特定してもよい。また、区間ごとに異なる車線を通行コスト最小車線として特定してもよい。
ステップS380において、車線変更判定部101は、ステップS370で特定した通行コスト最小車線以外の各車線について、当該車線から通行コスト最小車線までの車線変更回数を算出する。ここでは、図4のステップS150で取得したレーン情報212に基づいて、各車線から通行コスト最小車線までの間が何車線離れているかを求め、車線変更回数を算出する。なお、複数の車線が通行コスト最小車線として特定された場合には、車線変更判定部101は、その中で車線変更回数が最も少ない車線までの車線変更回数を各車線について算出する。
ステップS390において、車線変更判定部101は、ステップS380で算出した車線変更回数に基づいて、通行コスト最小車線以外の各車線について、車線変更に対する通行コスト付与区間を設定する。ここでは、車線変更回数が増えるほど長い区間が設定されるように、車線変更に対する各車線の通行コスト付与区間を設定する。たとえば、各車線の通行コスト最小車線までの車線変更回数をNとし、1回あたりの車線変更に必要な所定距離をLとすると、N×Lの長さに相当する区間を、車線変更に対する通行コスト付与区間として各車線に設定する。なお、Lの値には、運転者や自車両が余裕をもって1回の車線変更を実行できるだけの距離を設定することが好ましい。
ステップS400において、車線変更判定部101は、ステップS390で設定した通行コスト付与区間に対する通行コストを算出する。ここでは、前述のステップS350と同様に、評価項目ごとに予め設定された通行コストの基準値に基づいて、通行コストを算出する。なお、ステップS350とは異なる基準値を用いてもよい。
ステップS410において、車線変更判定部101は、ステップS310で未選択の評価項目があるか否かを判定する。選択可能な評価項目として予め定められた前述のような評価項目の中に、未選択の評価項目がある場合には、車線変更判定部101はステップS310に戻り、未選択の評価項目の中からいずれかの評価項目をステップS310で選択した後、前述のような処理を繰り返す。一方、ステップS310で全ての評価項目を選択済みである場合には、車線変更判定部101は、ステップS420に進む。
以上説明したステップS310〜S410の処理により、車線変更判定部101は、複数の評価項目について各車線に通行コスト付与区間を設定し(ステップS340、S390)、各車線の通行コスト付与区間ごとの通行コストを算出する(ステップS350、S400)。なお、評価項目ごとの通行コスト付与区間の具体的な設定例については、後で図6〜図12を参照して説明する。
ステップS420において、車線変更判定部101は、ステップS350、S400でそれぞれ算出した各車線の評価項目ごとの通行コストに基づいて、各車線の最終的な通行コストを算出する。ここでは、評価項目ごとに設定された各車線の通行コスト付与区間を繋ぎ合わせると共に、各通行コスト付与区間に対して元の通行コストをそれぞれ適用することで、各車線の最終的な通行コストを算出する。このとき、通行コストが異なる複数の通行コスト付与区間の一部または全部が重複する場合には、車線変更判定部101は、その中で最も高い通行コストを当該重複区間の通行コストとして採用する。なお、各車線の最終的な通行コストの具体的な算出例については、後で図13を参照して説明する。
ステップS420を実行したら、車線変更判定部101は、図5の通行コスト算出処理を終了し、図4のステップS170に進む。
次に、図5のステップS310〜S410における評価項目ごとの通行コスト付与区間の具体的な設定例について説明する。
図6は、経路の分岐を評価項目とした場合の通行コスト付与区間の設定例を説明する図である。図6では、3車線の道路が分岐点を境に分岐し、左側の1車線が左方向に、中央および右側の2車線が右方向にそれぞれ進む場合の例を示している。なお、図6(a)は左の分岐先に目的地方向がある場合の例であり、図6(b)は右の分岐先に目的地方向がある場合の例である。
図6(a)の場合、自車両が左側車線を走行していれば、分岐後にも目的地へ向かう経路を維持できる。しかし、中央車線または右側車線を走行していると、分岐地点の先で経路から外れてしまう。つまり、中央車線および右側車線は、分岐地点の手前の所定範囲では自車両が走行するのに不適切であることになる。そのため、車線変更判定部101は、通行コスト算出処理において、これらの車線に対して左側車線までの車線変更回数に応じた通行コスト付与区間を設定する。具体的には、図5のステップS390において、中央車線に対しては、左側車線までの車線変更回数が1回であるため、分岐地点から前述の距離L手前までの範囲に通行コスト付与区間610を設定する。また、右側車線に対しては、左側車線までの車線変更回数が2回であるため、分岐地点から距離2L手前までの範囲に通行コスト付与区間611を設定する。その結果、Lの値をたとえば300mとした場合には、分岐地点から300m手前までの区間が中央車線の通行コスト付与区間610として設定され、分岐地点から600m手前までの区間が右側車線の通行コスト付与区間611として設定される。
一方、図6(b)の場合、上記の例とは反対に、自車両が中央車線または右側車線を走行していれば、分岐後にも目的地へ向かう経路を維持できる。しかし、左側車線を走行していると、分岐地点の先で経路から外れてしまう。そのため、車線変更判定部101は、通行コスト算出処理において、左側車線に対して中央車線までの車線変更回数に応じた通行コスト付与区間を設定する。具体的には、図5のステップS390において、左側車線に対して、そこから最も近い目的地方向への車線である中央車線までの車線変更回数が1回であるため、分岐地点から距離L手前までの範囲に通行コスト付与区間620を設定する。その結果、Lの値をたとえば300mとした場合には、分岐地点から300m手前までの区間が左側車線の通行コスト付与区間620として設定される。
図5のステップS400では、車線変更判定部101は、上記の通行コスト付与区間610および611、または通行コスト付与区間620に対して、それぞれの通行コストを算出する。たとえば、経路の分岐に対する通行コストの基準値が5であれば、図6(a)の場合には、通行コスト付与区間610および611の通行コストをそれぞれ5と算出する。また、図6(b)の場合には、通行コスト付与区間620の通行コストを5と算出する。
図7は、経路の分岐を評価項目としたときに、分岐地点の手前において車線変更禁止の規制が存在する場合の通行コスト付与区間の設定例を説明する図である。図7でも図6と同様に、3車線の道路が分岐点を境に分岐し、左側の1車線が左方向に、中央および右側の2車線が右方向にそれぞれ進む場合の例を示している。なお、図7(a)は左の分岐先に目的地方向がある場合の例であり、図7(b)は右の分岐先に目的地方向がある場合の例である。
図7の場合、前述の図6の例とは異なり、分岐地点の直前で車線変更をしようとしても間に合わず、車線変更禁止の規制が開始される地点までに車線変更を完了しておく必要がある。そのため、車線変更判定部101は、通行コスト算出処理において、分岐地点の代わりに車線変更禁止の規制開始地点を基準として、図6で説明したのと同様に、車線変更回数に応じた通行コスト付与区間を設定する。
具体的には、図7(a)の場合には、車線変更判定部101は、図5のステップS390において、中央車線に対しては、左側車線までの車線変更回数が1回であるため、規制開始地点から距離L手前までの範囲に通行コスト付与区間710を設定する。また、右側車線に対しては、左側車線までの車線変更回数が2回であるため、規制開始地点から距離2L手前までの範囲に通行コスト付与区間711を設定する。一方、図7(b)の場合には、車線変更判定部101は、図5のステップS390において、左側車線に対して、そこから最も近い目的地方向への車線である中央車線までの車線変更回数が1回であるため、規制開始地点から距離L手前までの範囲に通行コスト付与区間720を設定する。
なお、図6や図7で説明したように、分岐地点や車線変更禁止の規制開始地点から手前に車線変更回数に応じた通行コスト付与区間を設定し、その通行コスト付与区間に対して通行コストを算出する際には、段階的に通行コストを変化させてもよい。図8は、段階的に通行コストを変化させる例を説明する図である。
図8の例では、車線変更判定部101は、中央車線および右側車線に対して分岐地点から手前にそれぞれ設定される通行コスト付与区間を、それぞれ2つに分けている。具体的には、中央車線については、分岐地点から所定距離L1手前までの区間を通行コスト付与区間810とし、さらにそこから所定距離L2手前までの区間を通行コスト付与区間811としている。また、右側車線については、分岐地点から距離2L1手前までの区間を通行コスト付与区間820とし、さらにそこから距離2L2手前までの区間を通行コスト付与区間821としている。
車線変更判定部101は、分岐地点に近い側にある通行コスト付与区間810、820に対しては、通行コストの値をたとえば5に設定する。一方、分岐地点に遠い側にある通行コスト付与区間811、821に対しては、通行コスト付与区間810、820よりも小さな通行コストの値として、たとえば3を設定する。このように段階的に通行コストを変化させることで、分岐地点や車線変更禁止の規制開始地点に近づくほど高い通行コストの値とすることができる。その結果、これらの地点に近づくほど、自車両が不適切な車線を走行することをより一層確実に回避できる。このように段階的に通行コストを変化させる手法は、経路の分岐に限らず、以降で説明するような他の様々な評価項目に対しても適用可能である。
なお、以上説明したように経路の分岐を評価項目とした場合には、分岐地点や車線変更禁止の規制開始地点の手前において、車線変更に対する通行コスト付与区間を設定すればよい。したがってこれらの場合、図5のステップS340では、通行コスト付与区間を0として設定してもよい。
図9は、車線数の増減を評価項目とした場合の通行コスト付与区間の設定例を説明する図である。図9では、3車線の道路において左側車線が消滅して2車線に減少する場合の例を示している。
図9の場合、自車両が左側車線を走行していると、レーン減少区間において中央車線へと強制的に車線変更させられる。そのときに合流先の車線に他車両が走行していると、減速や停止が必要となり、スムーズな車線変更ができない。そのため、車線変更判定部101は、通行コスト算出処理において、消滅する左側車線に対して通行コスト付与区間を設定する。具体的には、図5のステップS340において、レーン減少区間の開始地点から先に通行コスト付与区間910を設定する。また、ステップS390において、分岐地点から距離L手前までの範囲に、車線変更に対する通行コスト付与区間911を設定する。
車線変更判定部101は、上記の通行コスト付与区間910および911の通行コストを算出する。たとえば、車線数の減少に対する通行コストの基準値が3であれば、通行コスト付与区間910および911の通行コストをそれぞれ3と算出する。
図10は、渋滞や交通規制を評価項目とした場合の通行コスト付与区間の設定例を説明する図である。前述のように車載装置1は、通信回線網3を介して情報配信装置2から取得した交通情報60や車線状況情報70に基づいて、自車両が走行中の道路における渋滞や交通規制の状況を把握することができる。図10では、3車線の道路において左側車線の一部が渋滞しており、右側車線の一部が事故車両1020で塞がれて通行止めになっている場合の例を示している。
図10の場合、車線変更判定部101は、通行コスト算出処理において、渋滞が発生している左側車線と、事故車両1020による交通規制が発生している右側車線とに対して、それぞれ通行コスト付与区間を設定する。具体的には、左側車線に対しては、図5のステップS340において、渋滞区間を通行コスト付与区間1010として設定すると共に、ステップS390において、渋滞区間の最後尾から距離L手前までの範囲に、車線変更に対する通行コスト付与区間1011を設定する。また、右側車線に対しては、ステップS390において、事故車両1020から距離L手前までの範囲に、車線変更に対する通行コスト付与区間1021を設定する。
車線変更判定部101は、上記の通行コスト付与区間1010、1011および1021の通行コストをそれぞれ算出する。たとえば、渋滞に対する通行コストの基準値が4であれば、通行コスト付与区間1010および1011の通行コストをそれぞれ4と算出する。また、通行止めに対する通行コストの基準値が6であれば、通行コスト付与区間1021の通行コストを6と算出する。
図11は、追い越し車線を評価項目とした場合の通行コスト付与区間の設定例を説明する図である。図11では、3車線の道路において右側車線が追い越し車線である場合の例を示している。
図11の場合、自車両が追い越し車線の走行を不必要に続けると、交通法規に違反することになってしまうため、追い越し車線はできるだけ走行しないことが望ましい。そのため、車線変更判定部101は、通行コスト算出処理において、追い越し車線である右側車線に対して通行コスト付与区間を設定する。具体的には、図5のステップS340において、右側車線の全区間を通行コスト付与区間1110として設定する。そして、通行コスト付与区間1110の通行コストを、たとえば3と算出する。
図12は、いずれ車線変更が必要となる車線の全体を通行コスト付与区間に設定する例を説明する図である。図12(a)では、3車線の道路が分岐点を境に分岐し、左側の1車線が目的地方向に、中央および右側の2車線が目的地ではない方向にそれぞれ進む場合の例を示している。一方、図12(b)では、3車線の道路のうち左側の1車線が最初の分岐点において目的地ではない方向に進み、次の分岐点において中央車線が目的地方向に、右側車線が目的地ではない方向にそれぞれ進む場合の例を示している。
図12(a)の場合、自車両が左側車線を走行していれば、分岐後にも目的地へ向かう経路を維持できる。しかし、中央車線または右側車線を走行していると、分岐地点の先で経路から外れてしまう。そのため、車線変更判定部101は、通行コスト算出処理において、中央車線および右側車線の分岐地点までの区間を、通行コスト付与区間1210、1211にそれぞれ設定する。そして、これらの通行コスト付与区間に対して、目的地方向に進む左側車線への車線変更回数に応じた通行コストをそれぞれ算出する。たとえば、車線変更回数が1回である通行コスト付与区間1210の通行コストを1とし、車線変更回数が2回である通行コスト付与区間1211の通行コストを2とする。
図12(b)の場合、自車両が中央車線を走行していれば、分岐後にも目的地へ向かう経路を維持できる。しかし、左側車線または右側車線を走行していると、分岐地点の先で経路から外れてしまう。そのため、車線変更判定部101は、通行コスト算出処理において、左側車線の最初の分岐地点までの区間と、右側車線の次の分岐地点までの区間とに対して、通行コスト付与区間1220、1221をそれぞれ設定する。そして、これらの通行コスト付与区間に対して、目的地方向に進む中央車線への車線変更回数に応じた通行コストをそれぞれ算出する。たとえば、車線変更回数が1回であるため、通行コスト付与区間1220および1221の通行コストをいずれも1とする。
以上説明した図6〜図12の例のようにして、評価項目に応じた通行コスト付与区間を各車線に設定し、通行コストを算出することができる。なお、上記以外にも、自車両の走行に不適切な車線に関する情報を車載装置1に記憶させておき、これに基づいて通行コスト付与区間の設定や通行コストの計算を行うようにしてもよい。たとえば危険個所データ202を利用して、こうした手法の適用が可能である。
次に、図5のステップS420における各車線の最終的な通行コストの具体的な算出例について説明する。
図13は、各車線の最終的な通行コストの算出例を説明する図である。図13(a)、図13(b)、図13(c)は、前述のような処理によって3車線の道路の各車線に設定された評価項目ごとの通行コスト付与区間とその通行コストをそれぞれ示している。具体的には、図13(a)では、中央車線と右側車線に通行コストが5の通行コスト付与区間1310、1311がそれぞれ設定されている。図13(b)では、右側車線に通行コストが3の通行コスト付与区間1320が設定されている。図13(c)では、左側車線に通行コストが4の通行コスト付与区間1330が設定され、右側車線に通行コストが6の通行コスト付与区間1331が設定されている。
図13(d)は、上記の図13(a)〜図13(c)に示した通行コスト付与区間および通行コストから算出される各車線の最終的な通行コストを示している。図13(d)において、通行コスト付与区間の重複がない左側車線と中央車線では、通行コスト付与区間1330、1310の通行コストがそのまま最終的な通行コストとしてそれぞれ設定されている。一方、通行コスト付与区間1311、1320および1331が存在する右側車線では、これらの通行コスト付与区間を重ね合わせ、重複部分については通行コストの値が最も高いものを採用することで、最終的な通行コストが設定されている。
次に、図4のステップS180における比較対象の通行コストの具体的な取得方法について説明する。
図14は、図13(d)に示した通行コストの算出例における比較対象の通行コストの取得方法を説明する図である。図14では、自車両が左側車線を走行しており、自車位置1410に対して、図4のステップS170で通行コストの比較範囲1411が設定されたときの様子を示している。この場合、ステップS180で車線変更判定部101は、左側車線については、比較範囲1411内に通行コスト付与区間1330があるため、通行コスト付与区間1330の通行コストの値である4を、比較対象の通行コストとして取得する。一方、中央車線については、比較範囲1411内に通行コスト付与区間がないため、比較対象の通行コストを0とする。また、右側車線については、比較範囲1411内に通行コスト付与区間1320があるため、通行コスト付与区間1320の通行コストの値である3を、比較対象の通行コストとして取得する。このようにして、比較対象の通行コストを各車線について取得することができる。
ステップS190において、車線変更判定部101は、上記のようにして取得された各車線の比較対象の通行コスト同士を比較する。その結果、たとえば前述の閾値Tを2とした場合には、自車両が走行中である左側車線の通行コストは3であり、中央車線の通行コストは0であることから、車線変更判定部101は、自車両の車線変更の必要性ありと判断する。したがって、左側車線から中央車線への車線変更案内のメッセージがメッセージ出力部50から出力される。
図15は、別の例における比較対象の通行コストの取得方法を説明する図である。図15では、自車両が3車線の道路において、通行コストの値が4である通行コスト付与区間1510が設定された中央車線を走行しており、自車位置1511に対して、図4のステップS170で通行コストの比較範囲1512が設定されたときの様子を示している。この場合、ステップS180で車線変更判定部101は、左側車線については、比較範囲1512内に通行コスト付与区間がないため、比較対象の通行コストを0とする。一方、中央車線については、比較範囲1512内に通行コスト付与区間1510があるため、通行コスト付与区間1510の通行コストの値である4を、比較対象の通行コストとして取得する。なお、中央車線と右側車線の間には車線変更禁止の交通規制があるため、右側車線は比較範囲1512が設定されず、通行コストの比較対象とはされない。
図16は、さらに別の例における比較対象の通行コストの取得方法を説明する図である。図16の例では、4車線の道路のうち左側から2車線目と3車線目に、それぞれ通行コストの値が3である通行コスト付与区間1610、1611が設定されている。
図16の例において、たとえば自車両が左側から2車線目を走行しており、自車位置1620に対して、図4のステップS170で通行コストの比較範囲1621が設定されたとする。この場合、ステップS180で車線変更判定部101は、左端車線と右端車線については、比較範囲1621内に通行コスト付与区間がないため、比較対象の通行コストをそれぞれ0とする。一方、左側から2車線目と3車線目については、比較範囲1621内に通行コスト付与区間1610、1611がそれぞれあるため、これらの通行コスト付与区間の通行コストの値である3を、比較対象の通行コストとして取得する。
ステップS190において、車線変更判定部101は、上記のようにして取得された各車線の比較対象の通行コスト同士を比較する。その結果、たとえば前述の閾値Tを2とした場合には、走行車線の通行コストは3であり、左端車線および右端車線の通行コストは0であることから、車線変更判定部101は、自車両の車線変更の必要性ありと判断する。ここで、自車両は左側から2車線目を走行中であるため、右端車線への車線変更回数よりも左端車線への車線変更回数の方が少ない。したがって、ステップS200では左方向が車線変更方向として判定され、その結果、左方向への車線変更案内のメッセージがメッセージ出力部50から出力される。
また、図16の例において、たとえば自車両が左側から3車線目を走行しており、自車位置1630に対して、図4のステップS170で通行コストの比較範囲1631が設定されたとする。この場合、ステップS180で車線変更判定部101は、上記と同様に、左端車線と右端車線については、比較範囲1631内に通行コスト付与区間がないため、比較対象の通行コストをそれぞれ0とする。一方、左側から2車線目と3車線目については、比較範囲1631内に通行コスト付与区間1610、1611がそれぞれあるため、これらの通行コスト付与区間の通行コストの値である3を、比較対象の通行コストとして取得する。
ステップS190において、車線変更判定部101は、上記のようにして取得された各車線の比較対象の通行コスト同士を比較する。その結果、たとえば前述の閾値Tを2とした場合には、走行車線の通行コストは3であり、左端車線および右端車線の通行コストは0であることから、車線変更判定部101は、自車両の車線変更の必要性ありと判断する。ここで、自車両は左側から3車線目を走行中であるため、左端車線への車線変更回数よりも右端車線への車線変更回数の方が少ない。したがって、ステップS200では右方向が車線変更方向として判定され、その結果、右方向への車線変更案内のメッセージがメッセージ出力部50から出力される。
次に、以上説明したような車線変更判定部101の処理によって出力される車線変更案内に従って、自車両が車線変更を行いながら走行する様子について説明する。
図17は、自車両が走行する様子の一例を説明する図である。図17の例では、2車線から3車線に車線数が増加した後、左側車線が目的地方法である左方向に、中央車線および右側車線が右方向にそれぞれ分岐する道路を、自車両が走行していく様子を示している。このとき車線変更判定部101は、たとえば中央車線については、分岐地点の手前に通行コスト付与区間1710および1711を設定し、通行コスト付与区間1710の通行コストの値を5、通行コスト付与区間1711の通行コストの値を1としてそれぞれ算出する。一方、右側車線については、分岐地点の手前に通行コスト付与区間1712、1713および1714を設定し、通行コスト付与区間1712の通行コストの値を5、通行コスト付与区間1713の通行コストの値を2、通行コスト付与区間1714の通行コストの値を1としてそれぞれ算出する。
自車両が2車線の道路のうち左側の車線を走行していき、車線の増加地点を通過して自車位置1720に到達すると、ステップS170で車線変更判定部101は、通行コストの比較範囲1730を設定する。このとき、車線数が3車線に増加した道路の左側車線については、比較範囲1730内に通行コスト付与区間がないため、比較対象の通行コストを0とする。一方、中央車線については、比較範囲1730内に通行コスト付与区間1711があるため、通行コスト付与区間1711の通行コストの値である1を、比較対象の通行コストとして取得する。また、右側車線については、比較範囲1730内に通行コスト付与区間1713があるため、通行コスト付与区間1713の通行コストの値である2を、比較対象の通行コストとして取得する。
ステップS190において、車線変更判定部101は、上記のようにして取得された各車線の比較対象の通行コスト同士を比較する。ここで、増加車線への車線変更は危険が少ないため、増加車線が存在するときには閾値Tを通常よりも低い値、たとえば0に設定することが好ましい。この場合には、走行車線の通行コストは1であり、増加した左端車線の通行コストは0であることから、車線変更判定部101は、自車両の車線変更の必要性ありと判断する。その結果、左方向への車線変更案内のメッセージがメッセージ出力部50から出力される。
図18は、自車両が走行する様子の別の一例を説明する図である。図18の例では、3車線の道路が分岐し、左側車線が目的地方向である左方向に、中央車線および右側車線が右方向にそれぞれ分岐する道路を、自車両が走行していく様子を示している。このとき車線変更判定部101は、たとえば左側車線については、渋滞区間およびその手前に通行コスト付与区間1810を設定し、通行コスト付与区間1810の通行コストの値を3として算出する。一方、中央車線および右側車線については、分岐地点の手前に通行コスト付与区間1811、1812をそれぞれ設定し、これらの通行コスト付与区間の通行コストの値を5としてそれぞれ算出する。
自車両が左側車線を走行して自車位置1820に到達すると、ステップS170で車線変更判定部101は、通行コストの比較範囲1830を設定する。このとき、左側車線については、比較範囲1830内に通行コスト付与区間1810があるため、通行コスト付与区間1810の通行コストの値である3を、比較対象の通行コストとして取得する。一方、中央車線および右側車線については、比較範囲1830内に通行コスト付与区間がないため、比較対象の通行コストを0とする。
ステップS190において、車線変更判定部101は、上記のようにして取得された各車線の比較対象の通行コスト同士を比較する。その結果、たとえば前述の閾値Tを2とした場合には、走行車線の通行コストは3であり、中央車線および右側車線の通行コストは0であることから、車線変更判定部101は、自車両の車線変更の必要性ありと判断する。したがって、ステップS200では右方向が車線変更方向として判定され、その結果、右方向への車線変更案内のメッセージがメッセージ出力部50から出力される。
上記の車線変更案内に従って自車両が中央車線へと移動し、その後に走行を続けて自車位置1821に到達すると、ステップS170で車線変更判定部101は、通行コストの比較範囲1831を設定する。このとき、左側車線については、比較範囲1831内に通行コスト付与区間がないため、比較対象の通行コストを0とする。一方、中央車線および右側車線については、比較範囲1831内に通行コスト付与区間1811、1812がそれぞれあるため、これらの通行コスト付与区間の通行コストの値である5を、比較対象の通行コストとして取得する。
ステップS190において、車線変更判定部101は、上記のようにして取得された各車線の比較対象の通行コスト同士を比較する。その結果、走行車線の通行コストは5であり、左側車線の通行コストは0であることから、車線変更判定部101は、自車両の車線変更の必要性ありと判断する。したがって、ステップS200では左方向が車線変更方向として判定され、その結果、左方向への車線変更案内のメッセージがメッセージ出力部50から出力される。この車線変更案内に従って、自車両は左側車線へと移動し、目的地方向へと進むことができる。
以上説明した本発明の一実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)車載装置1は、地図データ200を記憶する記憶部20と、自車両の位置を検出する位置検出部40と、車線変更判定部101と、メッセージ出力部50とを備える。車線変更判定部101は、地図データ200と、位置検出部40により検出された自車両の位置とに基づいて、自車両が走行中の道路における各車線の状況に応じた自車両の車線変更の必要性を判定する。メッセージ出力部50は、車線変更判定部101による車線変更の必要性の判定結果に基づいて、自車両の運転者に車線変更案内を行うための情報を出力する。このようにしたので、各車線の状況を考慮した適切な車線変更案内を実現できる。
(2)地図データ200は、複数の道路リンクの情報を表す道路情報211と、複数の道路リンクにそれぞれ含まれる各車線の情報を表すレーン情報212とを含む。車線変更判定部101は、地図データ200に基づいて自車両の位置に対応する各車線の状況に応じた通行コストを算出し(ステップS160)、算出した各車線の通行コストの比較結果に基づいて、自車両の車線変更の必要性を判定する(ステップS190)。このようにしたので、各車線の状況を的確に反映した車線変更の必要性の判断を行うことができる。
(3)車載装置1は、自車両の位置に基づいて自車両の走行中車線を判定する車線判定部103をさらに備える。車線変更判定部101は、ステップS190において、走行中車線の通行コストよりも走行中車線の左右いずれかの車線の通行コストが低い場合に、当該車線への車線変更の必要性ありと判定する。メッセージ出力部50は、車線変更判定部101により車線変更の必要性ありと判定した車線への移動方向について、車線変更案内を行うための情報を出力する。このようにしたので、左右いずれかの車線への車線変更の必要性の有無を確実に判定し、その判定結果に応じた車線変更案内を行うことができる。
(4)車線変更判定部101は、ステップS190において、走行中車線の通行コストよりも走行中車線の左右いずれかの車線の通行コストが所定の閾値T以上低い場合に、当該車線への車線変更の必要性ありと判定する。このようにしたので、閾値Tを調節することにより、車線変更の必要性の判断基準を容易に変更できる。
(5)車線変更判定部101は、複数の評価項目について通行コストをそれぞれ算出し(ステップS350、S400)、算出した評価項目ごとの通行コストに基づいて各車線の最終的な通行コストを算出する(ステップS420)。このようにしたので、各車線の状況に影響を及ぼす様々な評価項目について、その各々による通行の不適切度を総合的に考慮した各車線の通行コストを算出することができる。
(6)車線変更判定部101は、各車線上に設定された通行コスト付与区間ごとに通行コストを算出し(ステップS350、S400)、自車両の位置に基づいて通行コストの比較範囲を各車線に設定する(ステップS170)。そして、比較範囲内に通行コスト付与区間が存在する車線については、その通行コスト付与区間の通行コストを当該車線の通行コストとし、比較範囲内に通行コスト付与区間が存在しない車線については、当該車線の通行コストを0として(ステップS180)、ステップS190において各車線の通行コストを比較する。このようにしたので、自車両の位置に応じて各車線の通行コスト同士を適切に比較することができる。
(7)車線変更判定部101は、各車線に通行コスト付与区間を設定する(ステップS340、S390)。このとき、自車両の前方に存在する交差点または分岐点から自車両の経路を外れる方向に進む車線に対しては、その交差点または分岐点の手前の所定区間を通行コスト付与区間に設定する。また、渋滞区間を含む車線に対しては、その渋滞区間および渋滞区間の手前の所定区間を通行コスト付与区間に設定する。さらに、事故車両による通行止めなど所定の交通規制に該当する対象地点を含む車線に対しては、その対象地点の手前の所定区間を通行コスト付与区間に設定する。このようにしたので、各車線の様々な状況に応じて、通行コストの算出対象である通行コスト付与区間を適切に設定することができる。
(8)車線変更判定部101は、ステップS390において、各車線から通行コストが最小となる車線までの車線変更回数に基づいて通行コスト付与区間を設定する。このようにしたので、通行に適した車線への車線変更案内を確実に実現できるように、通行コスト付与区間を適切に設定することができる。
なお、以上説明した本発明の一実施形態において、図5のステップS350やステップS400で通行コストの算出に用いるための評価項目ごとの通行コストの基準値を、ユーザが任意に設定可能としてもよい。たとえば、所定の設定メニューが選択されたときに、演算部10の処理により、車載装置1が接続された不図示の表示装置に、評価項目ごとに通行コストの値を設定するための設定画面を表示する。この設定画面において、ユーザはタッチパネル等の操作部材の操作により、評価項目ごとに任意の通行コストの基準値を設定することができる。こうして設定された通行コストの基準値は、車載装置1の記憶部20に個人設定データ230として記憶され、通行コストの算出時に記憶部20から読み出されて利用される。このようにすれば、ユーザの嗜好を反映した車線変更案内を実現することができる。
また、以上説明した本発明の一実施形態において、同一車線上に設定された複数の通行コスト付与区間同士の距離が近い場合には、これらの間にさらに追加の通行コスト付与区間を設定してもよい。以下に、図19を参照して説明する。
図19は、追加の通行コスト付与区間の設定方法を説明する図である。図19(a)は、追加の通行コスト付与区間を設定する前の様子の一例を示し、図19(b)は、追加の通行コスト付与区間を設定した後の様子を示している。
図19(a)に示す例では、2車線の道路のうち左側車線には、通行コストの値がそれぞれ4の通行コスト付与区間1910および1911が設定されており、右側車線には、通行コストの値が2の通行コスト付与区間1912が設定されている。このような状況で自車両が右側車線を走行して自車位置1920に到達すると、このときの比較対象の通行コストの値は、左側車線では0であり、右側車線では2である。そのため、たとえば閾値Tが2である場合には、自車両の車線変更の必要性ありと判断され、左方向への車線変更案内が行われる。
上記の車線変更案内に従って自車両が左側車線へと移動し、その後に走行を続けて自車位置1921に到達すると、このときの比較対象の通行コストの値は、左側車線では4であり、右側車線では2である。そのため、自車両の車線変更の必要性ありと判断され、今度は右方向への車線変更案内が行われる。したがって、通行コスト付与区間1910と通行コスト付与区間1911との間の距離が短い場合には、逆方向への車線変更案内が頻繁に行われることとなる。これは、運転者にとって煩わしいだけでなく、周囲車両の走行にも悪影響を及ぼしかねないため、好ましくない。
そこで、車線変更判定部101は、図5の通行コスト算出処理において、同一車線上に設定された複数の通行コスト付与区間同士の距離が近い場合には、これらの間にさらに追加の通行コスト付与区間を設定する処理を行うようにする。これにより、図19(b)に示すように、通行コスト付与区間1910と通行コスト付与区間1911との間に、さらに追加の通行コスト付与区間1913が設定される。この通行コスト付与区間1913の通行コストは、通行コスト付与区間1910および1911の通行コストに基づいて設定することができる。図19(b)では、通行コスト付与区間1913の通行コストを2として示している。
こうして追加の通行コスト付与区間1913が設定された状態で、自車両が右側車線を走行して自車位置1920に到達すると、このときの左側車線に対する比較対象の通行コストは、通行コスト付与区間1913の通行コストである。したがって、左側車線に対する比較対象の通行コストの値は、右側車線と同じ2となるため、自車両の車線変更の必要性なしと判断されて車線変更案内が行われない。これにより、自車両は左側車線へと移動することなく、右側車線を走行し続ける。その結果、上記のように逆方向への車線変更案内が頻繁に行われるのを防止できる。
なお、以上説明した実施形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。